2020年1月28日火曜日

プログラミング的思考(1)

小学校のプログラミング教育がそもそも何を狙っているかという話。

プログラミング教育の欠点(2)でみたように,小学校学習指導要領の中には,「プログラミング」というキーワードが登場した。そして,この小学校学習指導要領の解説総則編の第3章 教育課程の編成及び実施,第3節 教育課程の実施と学習評価,1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善,(3)  コンピュータ等や教材・教具の活用,コンピュータの基本的な操作 やプログラミングの体験(第1章第3の1の (3))に,「プログラミング的思考」という重要謎キーワードが以下のようにしてプログラミング教育の本質として使われている。

プログラミング教育とは
子供たちに,コンピュータに意図した処理を行うように指示することができるということを体験させながら,将来どのような職業に就くとしても,時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育成するもの
プログラミング的思考とは
自分が意図する一連の活動を実現するために,どのような動きの組合せが必要であり,一つ一つの動きに対応した記号を,どのように組み合わせたらいいのか,記号の組合せをどのように改善していけば,より意図した活動に近づくのか,といったことを論理的に考えていく力
この言葉が,登場したのは平成28年(2016年)に開催された,小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議である。

第1回で,ヒアリングによばれた東京大学大学院工学系研究科特任准教授の松尾豊さんが,「プログラミング的な考え方を身に付けるというのを、非常に簡単なやり方でやることが重要なんじゃないかなというふうに思います」と発言し,ヤマハ株式会社事業開発部の隅井淳一さんが音楽教育とからめて「プログラミング的な考え方」といっている。

第2回では,ソニー・グローバルエデュケーション代表取締役社長の礒津政明さんが,コンピューテーショナル・シンキング=プログラミング的思考として,
プログラミング教育の本質が何であるかというと,御存じのとおり,コーディングというよりは,プログラミング的思考,先ほどもありましたが,コンピューテーショナル・シンキングと言われているところがプログラミング教育の本質ではないかと考えておりまして,この部分を強めるのが,プログラミング教育のあるべき姿だと感じているところです。
さらに,
少しまとめますと,いわゆるコンピューテーショナル・シンキング,プログラミング的思考というのは,日本の算数では,ある意味,既に内包されていまして,これ自体がプログラミング科目と言ってもいいんじゃないかというのが我々の結論です。
なお,この場で最初に,コンピューテーショナル・シンキングという言葉を持ち出したのは, その前に発言したマイクロソフト業務執行役員シニアディレクタ ーの中川哲さんだ。
コンピューターをよく理解している方がコンピューター屋とお話をして新しいインダストリーを作っていくということも,十分有効なことではないかなと思います。これをコンピューテーショナル・シンキングという考え方で分類されていて,アメリカの方ではよくお話をされていらっしゃいます。
こんな風にして,コンピューテーショナル・シンキング=プログラミング的思考がプログラミング教育の柱になる考え方として取り入れられていくことになる。 最後のほうにだめおしで,帝京大学教育学部で数学教育の清水静海さんが,次のようにまとめた。
論理的思考力や創造性,問題解決能力等の育成という大変広い視点からの整理と,それからコーディング,プログラム言語の方に寄り添った二つを例示されておりますけれども・・・プログラミング思考とかコンピューテーショナル・シンキング,これをこの二つの間に入れるべきではないかと。
コンピューテーショナル・シンキングが17回,プログラミング(的)思考 が8回登場した。

ところが,第3回では,コンピューテーショナル・シンキングという言葉は消えて,プログラミング的思考に用語が統一された。「プログラミング的思考」は議事録には26回,とりまとめ案には19回登場している。文科省の事務方や主査がこちらの用語でまとめることにしたのだろう。本来の流れでは,コンピューテーショナル・シンキング=プログラミング的思考だった。ここから,有識者会議で登場していたコンピューテーショナル・シンキングの概念からかなりずれた意味のプログラミング的思考(文部科学省が定義)の概念がはじまることになる。

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