2019年12月21日土曜日

浮力の問題(3)

浮力の問題(2)では,皿の面に接地していることが皿面までの深さの水底の接地と同等とみなせるとした。和田さんから指摘されたとおりで,ここはやはりギャップがあった。実際の水底(水底でなくて水中の固定台上でもよいが)に置かれた物体についてはこの天秤操作ができないので,これはやはり上から吊るして張力で測定するしかない。

なお,物体の水中での重さの定義について,排除した水の重さを無視しているという指摘があった。有限サイズの容器では確かに問題になるが,物理では普通はそれは境界効果として排除し,広々とした空間で定義したいところである。

また,この定義では水底の秤とその直上の物体の間に未知の力が働いていてもこれを分離できないという説があるような気がしたが,その力が作用反作用の法則を満たす限り,秤には物体と水柱の重さの合計が加わるだけである。大気の重さを考慮しても測定対象と基準で同じとなるのでそれらは打ち消し合う。

問題と複数の解答を整理してみる。

◎超撥水材を貼り付けた軽い木片や水銀中の分銅の着底現象,海中の構築物にかかる力
 などをどう考えればよいだろうか。

◎水中の物体の重さはつねにアルキメデスの原理に従うか?
 ・「物体上部の水柱の重さ+物体の重さ」−「物体がないときの底からの水柱の重さ」
   を水柱の物体の重さとして定義すると,それは浮力と同じ大きさだけ軽くなる。
 ・有限サイズの容器では,排除した水の重さのために上記は成り立たない。
 ・あらかじめアルキメデスの原理にあうように恣意的な設定になっている。

◎水底面に置かれた物体には浮力が働くのか?
 ・アルキメデスの原理の公式があるので常に浮力が働く→多くの物理屋は反対
 ・物体と底面の間は完全には平坦にできず絶対に水がしみ込むので常に浮力が働く
 ・表面張力や分子間力のために浮力の消失にみえる現象が生じているだけである
 ・水がしみ込まない部分があり浮力はアルキメデスの原理のとおり働いていない

問題の整理はまだ不十分であった・・・orz

P. S. Mohazzabi がGrafの説をより簡単に説明していた。Limaの理論と実験がおもしろい。

[1]Archimedes, On the Floating Bodies I and selections from II
[2]アルキメデスの原理:浮力の正体の一考察(浜名湖観光局)
[3]Reconsidering Archimedes' Principle(Bierman, Kincanon 2003)
[4]Just What Did Archimedes Say About Buoyancy? (Graf 2004)
[5]Using Surface Integrals for Checking the Archimedes' Law of Buoyancy (Lima 2011)
[6]A Downward Buoyant Force Experiment (Lima, Venceslau, Brasill 2016)[7]Archimedes' Princile Revisited(Mohazzabi 2017)


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