坪井さんの記事の趣旨は次のとおりである。一様重力場での放物運動では,斜方投射の投射角を45度としたときに質点を最も遠くまで投げることができる。しかし現実の現象(ゴルフ,野球,走り幅跳び,砲丸投げ)ではそうなっていない。空気抵抗で説明できる部分もあるがそうでない部分もある。スポーツ科学では初速度の大きさはが初速角に依存するという議論もある。そこで,これをモデル化して物理教育(初等力学)の題材にしようというものである。
図 運動物体からの斜方投射モデル
原点をOとする慣性系Sを考える。Sのx軸上を一様な速度uで正方向に運動している物体がある。この物体がS系の原点Oを通過した瞬間(t=0)に,質量mの質点を,物体に固定した座標系Mからみて図のように初速度v,投射角ϕでx-y平面内に投射する。この質点には一様な重力mgが y 軸負方向に働いている。放物運動した質点は原点からの距離がLであるx軸上の点まで到達したとする。なお,S系からみた質点の速度ベクトルwは図のように与えられる。
S系における原点からの距離Lを最も大きくするにはどうすればよいか。原点における物体の初速度を(Vx,Vy)とすれば,高等学校の物理では次の結果を得ている。L=2VxVyg
ところでこのVxとVyは今のモデルでは次のように与えられる。ただし,0<ϕ<π/2,0<θ<π/2とする。
Vx=wcosθ=u+vcosϕVy=wsinθ=vsinϕ
つまり,u,vが与えられたときに,Lを最大にするϕまたはθを求めるのがここでの問題となる。なお,wは,ベクトルの図に余弦定理をあてはめた次の式に従うため,θの関数であると考えることにする(ϕの関数とすることもできる)。
w2+u2−2wucosθ=v2
wについての2次方程式を解いて具体的なθの関数形を求め,さらにdwdθを計算しておく。
w=ucosθ+√v2−u2sin2θdwdθ=−usinθ+−u2sinθcosθ√v2−u2sin2θ=−usinθ √v2−u2sin2θ+ucosθ√v2−u2sin2θ=−usinθ w√v2−u2sin2θ
以下では,γ=uvとおく。
(1) L(ϕ)を最大にするϕに対する条件を求める。
L(ϕ)=2 (u+vcosϕ) vsinϕgdLdϕ=2vg{−vsin2ϕ+(u+vcosϕ)cosϕ}=02vcos2ϕ+ucosϕ−v=02cos2ϕ+γcosϕ+1=0∴cosϕ=√γ2+8−γ4
(2) L(θ)を最大にするθに対する条件を求める。
L(θ)=2 wcosθ wsinθg=w2sin2θgdLdθ=2wgdwdθsin2θ+2w2gcos2θ=0−usinθ sin2θ√v2−u2sin2θ+cos2θ=04u2sin4θ(1−sin2θ)=(v2−u2sin2θ)(1−2sin2θ)2v(1−2sin2θ)=usinθ2sin2θ+γsinθ+1=0∴sinθ=√γ2+8−γ4
従って,最大のLを与えるϕとθは,ϕ+θ=π2を満足している。
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