ラグランジュ点(Lagrangian Points)というのは,天体力学における制限3体問題の平衡解を表している。つまり,2つの天体がその重心の回りに回転運動しているときに,その2つの天体との相対位置を保ったままで運動できる5つの点である。これらの点は,回転座標系において小物体に働く2天体の重力と遠心力の合力が0になるという条件で求めることができ,3つの直線解と2つの正三角形解から成り立つ。下図に基づいて考えてみよう。
まず2天体の重心の周りの角速度ωを求める。質量M1とM2の2つの天体がOとPの位置にあり,距離Rを保ちながら重心Gの周りを回転している。換算質量をμ=M1M2M1+M2とすると,相対運動に対する運動方程式 μRω2=GM1M2R2 より,ω2=G(M1+M2)R3である。
次に,小物体の質量をmとすると,Liにおける各遠心力はℓ≡GLiとしてmℓω2で与えられる。また,重心から各天体までの距離は,GO=M2RM1+M2,GP=M1RM1+M2である。
【直線解について】
a≡M2M1とおき,力の釣り合いの式を求めた後,両辺をGmM1で割る。
L1: PL1=rとすると,ωでの回転系における力の釣り合いの式より,
GmM1(R−r)2=GmM2r2+m(M1RM1+M2−r)ω21(R−r)2=ar2+1R2−r(1+a)R3
L2: PL2=rとすると,ωでの回転系における力の釣り合いの式より,
GmM1(R+r)2+GmM2r2=m(M1RM1+M2+r)ω21(R−r)2+ar2=1R2+r(1+a)R3
GmM1(R−r)2+GmM2(2R−r)2=m(M2RM1+M2+R−r)ω21(R−r)2+a(2R−r)2=aR2+(R−r)(1+a)R3
【正三角形解について】
(1)解は二等辺三角形の頂点にあること_。
遠心力は重心からラグランジュ点の方に向っているので,釣り合いが成立するためには重力の合力も重心方向に向わなければならない。
2つの天体OとPからLiの距離を,ℓ1とℓ2すると,OとPからの重力の大きさは,GmM1ℓ21とGmM1ℓ21となる。このとき,LiP方向とLiO方向の力ベクトルを合成したものがGに向わなければならない。
この条件は,GmM1ℓ21×M2M1×ℓ2ℓ1=GmM2ℓ22であることから,ℓ31=ℓ32,すなわち,ラグランジュ点LiはOPを底辺とする二等辺三角形の頂点にある。
(2) 解は正三角形の頂点になること_。
二等辺三角形の底辺から頂点を見込む角をθとして,重力の合力と遠心力をそれぞれθの関数として表して等置する。このとき二等辺三角形の等辺ℓは,ℓcosθ=R2となる。また,ラグランジュ点と重心の距離は,√(ℓsinθ)2+(R2−M2RM1+M2)2 である。したがって,遠心力の大きさは次式で与えられる。
Gm2R2√(M1+M2)2tan2θ+(M1−M2)2
一方,合成した重力ベクトルの成分は,(Gmℓ2(M1−M2)cosθ,Gmℓ2(M1+M2)sinθ)であるから,重力の大きさは次式のようになる。
Gm⋅8cos3θ2R2√(M1+M2)2tan2θ+(M1−M2)2
(4)式と(5)式が一致するのは,cosθ=12に限られ,そのときの角度θ=±60∘となって,ラグランジュ点L4とL5は天体Oと天体Pを頂点とする正三角形のもう一つの頂点(とそれを反転させたもの)となる。
等ポテンシャル曲面の断面図については,Lagrange Points of the Earth-Moon Systemが分かりやすい。
(ラグランジュ点(2)に続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿