角運動量演算子については,次の交換関係から出発して,固有値と固有状態の議論ができる。一般化された角運動量演算子Jはエルミート演算子であり,その成分は交換関係[Ji,Jj]=iℏϵijkJkを満足すると仮定する。このとき,J2=∑iJ2i=∑iJ†iJiも固有値が正のエルミート演算子となり,[J2,Ji]=0であることから,J2とJzの同時固有状態|λμ⟩が存在し,その固有値λℏ2,μℏは実数となる(λ≥0)。
J2|λμ⟩=λℏ2|λμ⟩Jz|λμ⟩=μℏ|λμ⟩
J†xJx+J†yJy=J2−J2zの左辺の |λμ⟩による期待値が正であることから,固有値 λ−μ2≥0が成り立つ。すなわち,−√λ≤μ≤√λである。
また,昇降演算子,J±≡Jx±iJyを定義すると,J±†=J∓, [J2,J±]=0,[Jz,J±]=±ℏJ±, [J+,J−]=2ℏJzなどが成り立つ。
ここで,J±|λμ⟩ がどんな状態かを調べると次のことがわかる。
J2J±|λμ⟩=λℏ2J±|λμ⟩JzJ±|λμ⟩=(μ±1)ℏJ±|λμ⟩
すなわち,J±|λμ⟩=C±λμℏ|λμ±1⟩。ここで,C±λμは比例定数であり,規格化条件を用いて,⟨λμ|J∓J±|λμ⟩=|C±λμ|2⟨λμ±1|λμ±1⟩ より,C±λμ=√λ−μ(μ±1)
ただし,J∓J±=J2−J2z∓ℏJzであることに注意する。
ある固有状態から出発して,昇降演算子J±を繰り返して作用すると,J2の固有値を共有し,Jzの固有値が離散的に変化する一連の固有状態のシリーズが得られるが,これは,固有値μに対する条件と矛盾することから,μの上限μmaxと下限μminにおいては比例定数C±λμが0となって,シリーズが中断される必要がある。すなわち,
J+|λμmax⟩=0,C+λμmax=√λ−μmax(μmax+1)=0J−|λμmin⟩=0,C−λμmin=√λ−μmin(μmin−1)=0
これから,μmax(μmax+1)=μmin(μmin−1)が成り立ち,因数分解すると,(μmax−μmin+1)(μmax+μmin)=0となる。μmaxとμminの差は整数n=0,1,2,⋯となることから,n2=jとおいて,この半整数 j=0,12,1,32,2,⋯に対して,μmax=j,μmin=−j,λ=j(j+1)となる。そこでこの場合のμをm=−j,−j+1,⋯j−1,jと書くことにする。
そこで,固有状態と固有値を表すシンボルをλ,μからj,mに変えてまとめると,
J2|jm⟩=j(j+1)ℏ2|jm⟩Jz|jm⟩=mℏ|jm⟩J±|jm⟩=√j(j+1)−m(m±1) ℏ|jm±1⟩
(角運動量の合成への道(2)に続く)
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