2018年12月31日月曜日

冷血(下):高村薫

冷血(上):高村薫からの続き

小晦日に,マンションの自転車置き場の自転車に来年用のシール(印刷が平成から西暦に変更された)を貼ろうとした。強風のせいなのか自分の自転車を含んで10台以上が将棋倒しになっていた。端から順に起そうとしたところ,最初の2台が絡み合っていて無理に力を入れたため,ぎっくり腰になってしまい往生している。この年末年始は要介護認定状態の予行演習で終わってしまいそうだ。

予想通り,冷血の下巻では上巻以上の何かはまったく生起しない。いろいろな登場人物のモノローグの集合で終わってしまった。しかもそのモノローグは,ほとんどが高村薫の口から直接に発せられているような同じ響きを帯びている。気になった単語は「とまれ」。ともあれかくもあれ→ともあれ→とまれ,さもあればあれ→さもあれ→さまれ,のとまれが地の文で多用されていた。戸田吉生の文中には「ともあれ」で出てきていたが,井上克美の文中に一ヶ所「とまれ」がでてきた。小説にカタルシスを求めるのであれば,「冷血」は期待外れとなるかもしれない。黒板への板書だけで授業を進めるように,ゆっくりと同じテーマを何度も塗り重ねて,アクティブ・リーディングを誘導するという意味ではありかなと思う。

法務に係わるものにせよ,科学に係わるものにせよ,教育に係わるものにせよ,自分たち自身を,自分たちのステークホールダーを,あるいは自分たちの振るまいを見る世間を,納得させるために,一定の因果関係とそれを物語る言葉を必要としているということだろう。物語を必要としないのは,結果をマネーで測定できる人達だけなのかもしれない。そして,我々は既存の物語が不要な世界を目指す船に乗っている。“その中においてですね” 歴史的事実や統計データや行政文書の隠蔽や改竄がしごくあたりまえのように遂行され,物語がいつのまにかすり替えられてしまう。みなが薄々気付いているはずだが,何も見なかった振りをするか,逆に,声高にニセの物語を語り始める。もう,それに対する歯止めはきかなくなっている。

「大晦日定めなき世の定めかな」(井原西鶴 1642-1693)


2018年12月30日日曜日

元号の予想(2)

元号の予想(1)の続き)

昨日からJuliaの配列と型について少しだけ前進した。Juliaはあらかじめ型指定をしなくても,定数が定義されたり,変数が値で束縛された場合に適当な型に定まるという優れものだが,それが話をややこしくしている。どうしても配列を宣言したい場合の基本は,型が T で次元が N の配列に対して,Array{T, N}(undef, dims) である。しかし,配列宣言を省略したい場合は,次のようなバリエーションもある。

(1) 定数として与える。a=[ 1, 2.0, 3//4, 'あ', "漢字"]
(2) 初期値定数を埋め込む。b=ones(Int64,10), c=zeros(2,300) や trues(), fill()など。
(3) 配列を空で作成し,d=Any[ ],push, insert など

で追加する。などなど。このあたりでさらに勉強したほうがよろしいかもしれない。

とりあえず,昨日のアルゴリズムに準じて作成中のコードは以下のようになるが,
結果からベスト50を取り出して整形すると,こんな感じ(*は未だ存在しないもの)。
カッコ内の数字は各文字の相対頻度の積である。この中では文元さんがよさそうである。

("天治", 0.179835)
("天和", 0.17037)
("天徳", 0.13251)
("天暦", 0.13251)
("天永", 0.13251)
("文治", 0.125103)
("永治", 0.125103)
("天安", 0.123045)
("天応", 0.123045)
("文和", 0.118519)
("永和", 0.118519)
("元治", 0.117284)
("天保", 0.11358)
("天元", 0.11358)
("元和", 0.111111)
("寛治", 0.109465)
("寛和", 0.103704)
("正治", 0.101646)
("正和", 0.0962963)
("文徳", 0.0921811)
("文暦", 0.0921811)
("文永", 0.0921811)
("永徳", 0.0921811)
("永暦", 0.0921811)
("永永", 0.0921811)*
("元徳", 0.0864198)
("元暦", 0.0864198)
("元永", 0.0864198)
("嘉治", 0.0860082)*
("延治", 0.0860082)*
("長治", 0.0860082)
("文安", 0.0855967)
("文応", 0.0855967)
("永安", 0.0855967)
("永応", 0.0855967)*
("嘉和", 0.0814815)*
("延和", 0.0814815)
("長和", 0.0814815)
("寛徳", 0.0806584)
("寛暦", 0.0806584)*
("寛永", 0.0806584)
("元安", 0.0802469)*
("元応", 0.0802469)
("文保", 0.0790123)
("文元", 0.0790123)*
("永保", 0.0790123)
("永元", 0.0790123)
("康治", 0.0781893)
("建治", 0.0781893)
("承治", 0.0781893)*

しかし,ここでちょっと問題が生じた。相対頻度の積の順位でみると,明治は159位,大正は445位,昭和は741位,平成は1939位なのだ。どんどん手垢のついていない名称が選ばれるようになってきた。つまり,頻度順リストでは意味がなかったのである・・・orz

P. S. 既存の元号との照合にはWikipediaを用いるのが便利そうだ。日本に加え中国・朝鮮・越南その他の東アジアの元号があるかどうか(俗用も?)をそこそこ確認できそうである。

P. P. S. 勧進元周辺の皆様方にはさらに努力していただき,5月ぎりぎりまで公表を延ばすように運動されて,その結果として元号から西暦への転換が進むことを期待します。


function gfrq(c,n,r,m)
#
# c input array of kanji char
# n size of c  
# r output array of sorted (kanji, count)
# m size of r
#
  sort!(c)
  k=0
  for j=2:n
    k=k+1
    if c[j]!=c[j-1]
      push!(r,(c[j-1],k))
      k=0
    end
  end
  sort!(r, by=x->x[2], rev=true)
  m=length(r)
  println((m,r))
end

g="大化,白雉,朱鳥,大宝,慶雲,和銅,霊亀,養老,神亀,天平,感宝,勝宝,宝字,神護,景雲,宝亀,天応,延暦,大同,弘仁,天長,承和,嘉祥,仁寿,斉衡,天安,貞観,元慶,仁和,寛平,昌泰,延喜,延長,承平,天慶,天暦,天徳,応和,康保,安和,天禄,天延,貞元,天元,永観,寛和,永延,永祚,正暦,長徳,長保,寛弘,長和,寛仁,治安,万寿,長元,長暦,長久,寛徳,永承,天喜,康平,治暦,延久,承保,承暦,永保,応徳,寛治,嘉保,永長,承徳,康和,長治,嘉承,天仁,天永,永久,元永,保安,天治,大治,天承,長承,保延,永治,康治,天養,久安,仁平,久寿,保元,平治,永暦,応保,長寛,永万,仁安,嘉応,承安,安元,治承,養和,寿永,元暦,文治,建久,正治,建仁,元久,建永,承元,建暦,建保,承久,承応,元仁,嘉禄,安貞,寛喜,貞永,天福,文暦,嘉禎,暦仁,延応,仁治,寛元,宝治,建長,康元,正嘉,正元,文応,弘長,文永,建治,弘安,文永,建治,弘安,正応,永仁,正安,乾元,嘉元,徳治,延慶,応長,正和,文保,元応,元亨,正中,嘉暦,元徳,元弘,正慶,建武,延元,興国,正平,建徳,文中,天授,弘和,元中,暦応,康永,貞和,観応,文和,延文,康安,貞治,応安,永和,康暦,永徳,至徳,嘉慶,康応,明徳,応永,正長,永享,嘉吉,文安,宝徳,享徳,康正,長禄,寛正,文正,応仁,文明,長享,延徳,明応,文亀,永正,大永,享禄,天文,弘治,永禄,元亀,天正,文禄,慶長,元和,寛永,正保,慶安,承応,明暦,万治,寛文,延宝,天和,貞享,元禄,宝永,正徳,享保,元文,寛保,延享,寛延,宝暦,明和,安永,天明,寛政,享和,文化,文政,天保,弘化,嘉永,安政,万延,文久,元治,慶応,明治,大正,昭和,平成,"
n=div(length(g),3)
a=fill(' ',n)
b=fill(' ',n)
for i=1:7:n*7
  a[div(i,7)+1]=g[i]
  b[div(i,7)+1]=g[i+3]
end
p=[ ]
q=[ ]
mp=0
mq=0
gfrq(a,n,p,mp)
gfrq(b,n,q,mq)
mp=length(p)
mq=length(q)
#
r=[ ]
for j in 1:mp
  for k in 1:mq
    if p[j][1]!=q[k][1]
      push!(r,(string(p[j][1],q[k][1]),p[j][2]*q[k][2]/(mp*mq)))
    end
  end
end
sort!(r, by=x->x[2], rev=true)
println((length(r),r))


(45, Any[('天', 23), ('文', 16), ('永', 16), ('元', 15), ('寛', 14), ('正', 13), ('嘉', 11), ('延', 11), ('長', 11), ('康', 10), ('建', 10), ('承', 10), ('弘', 7), ('応', 7), ('大', 6), ('宝', 6), ('貞', 6), ('仁', 5), ('安', 5), ('明', 5), ('享', 4), ('慶', 4), ('万', 3), ('保', 3), ('治', 3), ('久', 2), ('平', 2), ('暦', 2), ('神', 2), ('乾', 1), ('勝', 1), ('和', 1), ('寿', 1), ('徳', 1), ('感', 1), ('斉', 1), ('昌', 1), ('昭', 1), ('景', 1), ('朱', 1), ('白', 1), ('至', 1), ('興', 1), ('観', 1), ('霊', 1)])

(54, Any[('治', 19), ('和', 18), ('徳', 14), ('暦', 14), ('永', 14), ('安', 13), ('応', 13), ('保', 12), ('元', 12), ('仁', 8), ('長', 8), ('久', 7), ('禄', 7), ('平', 6), ('正', 6), ('亀', 5), ('延', 5), ('慶', 5), ('承', 5), ('享', 4), ('宝', 4), ('文', 4), ('中', 3), ('化', 3), ('喜', 3), ('寿', 3), ('政', 3), ('弘', 2), ('明', 2), ('観', 2), ('雲', 2), ('万', 1), ('亨', 1), ('吉', 1), ('同', 1), ('嘉', 1), ('国', 1), ('字', 1), ('寛', 1), ('成', 1), ('授', 1), ('武', 1), ('泰', 1), ('祚', 1), ('祥', 1), ('禎', 1), ('福', 1), ('老', 1), ('衡', 1), ('護', 1), ('貞', 1), ('銅', 1), ('雉', 1), ('養', 1)])


「妻すこし昼を睡りぬ小晦日)」(星野麦人 1877-1965)

元号の予想(3)に続く)

2018年12月29日土曜日

元号の予想(1)

朝起きると結城浩さんのこんなツイートをみかけたので,年末年始の学習課題を「次の元号を予想すること」に設定して,早速 Julia(プログラミング言語)でチャレンジしようとしたところ,私が Julia Language の型と配列を全く理解していないこと,が判明したので顔を洗って出直すことにする。

Wikipediaの元号制定の条件には次のような5条件が書いてある。
(イ) 元号は本邦はもとより言うを俟たず,支那,朝鮮,南詔,交趾(ベトナム)等の年号,その帝王,后妃,人臣の諡号,名字等及び宮殿土地の名称等と重複せざるものなるべきこと。
(ロ) 元号は、国家の一大理想を表徴するに足るものとなるべきこと。
(ハ) 元号は、古典に出拠を有し、その字面は雅馴にして、その意義は深長なるべきこと。
(ニ) 元号は、称呼上、音階調和を要すべきこと。
(ホ) 元号は、その字面簡単平易なるべきこと。
誰だ,MTSH以外の頭文字で漢字2文字なら良いといったのは。これから,古典の教養が欠落している場合には元号の予想は無理だ,というのが普通に理解できる。しかし,ネトウヨの勧進元があれだけ嫌中(今はむしろ嫌韓あおりモード一直線?)なのであれば,しかも勧進主がニセ歴史コピペ本を堂々と宣伝するような状態なのであれば,古典に依拠せず出典も明記せずにテキトーにでっちあげることも十分に予想される。

その場合は,理系の御用学者が次のようなアルゴリズムを考えることもあるだろう。
(1) 過去の日本の元号のリストAをつくる。
(2) Aの各要素から1文字目と2文字目の漢字の頻度順リストBとCをつくる。
(3) BとCから1文字取り出して,各頻度の積の順に候補リストDをつくる。
(4) 元号制定条件の(イ)の排除リストEでDをスクリーニングしたFをつくる。
(5) Fの上位から (ロ)〜(ホ)の条件は無視し,google検索で問題がないか確認する。
(6) 残った上位100位の中から勧進主が恣意的に決定する。
 (これでは高輪ゲートウェイとあまり変わらない・・・orz)

Wikipedia からひろって,4文字元号を2文字元号に勝手に縮減し,途中の分岐はすべて採用して200年ごとに7つに区切って並べるとおよそ次のようになる(*は30年以上継続したもので,13しかない)。下記の250の元号の平均の継続長は約5.5年であるから,昭和が如何に突出して長かったかがわかる。元号が流行ったのは11世紀から14世紀くらいであり,ほぼ終息に向っている。

621-830 (21)
 大化, 白雉, 朱鳥, 大宝, 慶雲, 和銅, 霊亀, 養老, 神亀,*天平,
 感宝, 勝宝, 宝字, 神護, 景雲, 宝亀, 天応,*延暦, 大同, 弘仁,
 天長,

831-1030 (36)
 承和, 嘉祥, 仁寿, 斉衡, 天安, 貞観, 元慶, 仁和, 寛平, 昌泰,
*延喜, 延長, 承平, 天慶, 天暦, 天徳, 応和, 康保, 安和, 天禄,
 天延, 貞元, 天元, 永観, 寛和, 永延, 永祚, 正暦, 長徳, 長保,
 寛弘, 長和, 寛仁, 治安, 万寿, 長元,

1031-1230 (64)
 長暦, 長久, 寛徳, 永承, 天喜, 康平, 治暦, 延久, 承保, 承暦,
 永保, 応徳, 寛治, 嘉保, 永長, 承徳, 康和, 長治, 嘉承, 天仁,
 天永, 永久, 元永, 保安, 天治, 大治, 天承, 長承, 保延, 永治,
 康治, 天養, 久安, 仁平, 久寿, 保元, 平治, 永暦, 応保, 長寛,
 永万, 仁安, 嘉応, 承安, 安元, 治承, 養和, 寿永, 元暦, 文治,
 建久, 正治, 建仁, 元久, 建永, 承元, 建暦, 建保, 承久, 承応,
 元仁, 嘉禄, 安貞, 寛喜,

1231-1430 (65)
 貞永, 天福, 文暦, 嘉禎, 暦仁, 延応, 仁治, 寛元, 宝治, 建長,
 康元, 正嘉, 正元, 文応, 弘長, 文永, 建治, 弘安, 文永, 建治,
 弘安, 正応, 永仁, 正安, 乾元, 嘉元, 徳治, 延慶, 応長, 正和,
 文保, 元応, 元亨, 正中, 嘉暦, 元徳, 元弘, 正慶, 建武, 延元,
 興国,*正平, 建徳, 文中, 天授, 弘和, 元中, 暦応, 康永, 貞和,
 観応, 文和, 延文, 康安, 貞治, 応安, 永和, 康暦, 永徳, 至徳,
 嘉慶, 康応, 明徳,*応永, 正長,

1431-1630 (26)
 永享, 嘉吉, 文安, 宝徳, 享徳, 康正, 長禄, 寛正, 文正, 応仁,
 文明, 長享, 延徳, 明応, 文亀, 永正, 大永, 享禄,*天文, 弘治,
 永禄, 元亀,*天正, 文禄,*慶長, 元和,

1631-1830 (26)
*寛永, 正保, 慶安, 承応, 明暦, 万治, 寛文, 延宝, 天和, 貞享,
 元禄, 宝永, 正徳,*享保, 元文, 寛保, 延享, 寛延, 宝暦, 明和,
 安永, 天明, 寛政, 享和, 文化, 文政,

1831-2030 (12)
 天保, 弘化, 嘉永, 安政, 万延, 文久, 元治, 慶応,*明治, 大正,
*昭和,*平成, ××

元号の予想(2)に続く)

2018年12月28日金曜日

プログラミング教育の欠点(1)

Juliaプログラミングの練習のため(なのか認知症予防のためなのか…)に,Bogumił KamińskiJulia Express を訳している。MITライセンスなのでわりと自由に利用できそうである。この記事には こJulia Expressから派生して修正した部分があるので,MITライセンスが適用されるものとする。

Julia Express の図1に,数値型の階層図があるので,それを再現すべく TikZ のコードを自力で書いてみた。ところで,上記で示したGit Hubのページには TeXソースが載っているので,自分で再現する必要は全くなかったのであることに,今ごろ気がついた。 しかし,それはそれで TikZ の練習になったのでよしとしよう。

#体系的な学習がなされていない例
\begin{tikzpicture}
[every node/.style={thick, minimum width=1.2cm, minimum height=0.5cm,
draw=black, top color=gray!0, bottom color=gray!15, rounded corners, align=center}]
\draw[help lines, step=0.5cm, color=gray!5] (0,0) grid (15.5,10);
\node at (5.75,9) (N) {\tt Number};
\node at (4,7.5) (L) {\tt Complex\{T:$<$Real\}};
\node at (7.5,7.5) (M) {\tt Real};
\node at (1.75,6) (H) {\tt Irrational\{sym\}};
\node at (5.75,6) (I) {\tt Rational\{T:$<$Integer\}};
\node at (9,6) (J) {\tt Integer};
\node at (14,6) (K) {\tt AbstractFloat};
\node at (6,4) (C) {\tt Bool};
\node at (8,4) (D) {\tt Signed};
\node at (10,4) (E) {\tt Unsigned};
\node at (12,4) (F) {\tt BigInt};
\node at (14,4) (G) {\tt Float16\\ \tt Float32\\ \tt Float64\\ \tt BigFloat};
\node at (8,2) (A) {\tt Int8\\ \tt Int16\\ \tt Int32\\ \tt Int64\\ \tt Int128};
\node at (10,2) (B) {\tt UInt8\\ \tt UInt16\\ \tt UInt32\\ \tt UInt64\\ \tt UInt128};
\draw (N) -- (L);
\draw (N) -- (M);
\draw (M) -- (H);
\draw (M) -- (I);
\draw (M) -- (J);
\draw (M) -- (K);
\draw (J) -- (C);
\draw (J) -- (D);
\draw (J) -- (E);
\draw (J) -- (F);
\draw (K) -- (G);
\draw (D) -- (A);
\draw (E) -- (B);
\end{tikzpicture}
背景にグリッドをおき,左下を原点としcmを単位とする座標系上に,目分量で読み取ったノードを配置したのだが,これは TikZ の階層図における木構造の概念を私がまったく理解していなかったためである。あるいは,フォントスタイルの一括指定ができていないので無駄なコードを書いている,などなど。残念!しかし,集中すれば1日でできる仕事だ。

プログラミング教育において,体系的な学習が欠落しても,別の代替方法で無理やり実現できることは普通によくあることなので,よほど注意しないといけない。この場合もだらだらした試行錯誤によって座標を調整した(もちろんその手の作業が必要な場合もあるが)。よほど十分に吟味された教材と方法と教員へのトレーニングを準備しないと,主体的というふれこみでバトンを渡された学習者が無駄な作業を繰り返し,それが習慣化されてしまう心配がある。そう,プログラミング教育は,そのほとんどの時間で論理的思考なんかを育まないのである。ゲームと同じで無限の試行錯誤が結果を導くのだ。論理的思考のかわりに獲得できるのは,ブラック企業での単純反復労働作業に適応できる忍耐力だろう。

注意点:
(1) 最初はノードの説明文の量によって複数のスタイルが必要なのかと思ったが, minimum width とか minimum height でフレキシブルに対応できた。
(2) ノードの背景に色のグラデーション=gradientをつけるのがわからなかったが,2つの色 top color とbottom color を指定して解決した。left color とright color でも可能。
(3) ノードのテキストに改行が必要な場合,\\ だけでは対応できず,tikzpictureのオプションに align=center(あるいはleft とか right とか)をつけると解決した。
(4) sibling distance に加えて level distance というものがあった。

2018年12月27日木曜日

素数鉛筆

京都大学生協限定素数価格577円で販売している素数ものさしは皆様よくご存知のことと思う。それでは素数えんぴつ(A Prime Pencil)はどうだろう。このあたりで販売しているようだ。本日twitterでWolfram Japanさんが宣伝していたのでさっそく試してみた。いや,購入したのではなくて,「Juliaでプログラミング教育をはじめよう(仮題)」の練習問題を作ったのだ。本家のほうはバリバリのMathematica関数プログラミングなので,スマートすぎておじぃさんには手に負えない。

注意点:今日も型の整合性のところで難渋した。適当な演算では自動型変換は行われないので,明示的に型を指定する必要があった。10^mが  Int128 (-2^{127} 〜 2^{127} - 1)を必要とする場面で,10^m → Int128(10)^mとすべきところに嵌まった。また,zeros()とかones() で配列を準備するところで,型指定が必要なのに気付かなかった。p = zeros(Int128,N)とか q = ones(Int,N) などとしなければならない。

結果は以下の通りで出力は省略するが,23桁には3つの素数( 96686312646216567629137, 57686312646216567629137,95918918997653319693967)があり,最大の24桁では1つの素数(357686312646216567629137)が得られた。これ以上はありません。これを鉛筆に焼いて左から削っていけばよい。そうそう,素数鉛筆に印刷されている切り捨て可能素数の定義を説明するのを忘れていた。与えられた素数の上位桁(または下位桁)から1桁づつとりのぞいた数が再び素数であり,最後に1桁の素数が残るものである。

P. S. @ksasaoさんが右から削る場合にも言及していたので,こちらも加えた。いずれも終了判定はしていないので人力でがんばってほしい。


using Primes

#左から削っていく場合の切り捨て可能素数
function pencil1(N)
  p=zeros(Int128,N)
  q=ones(Int,N)
  r=Int128(10)
  p[1]=3
  p[2]=7
  nb = 0
  nt = 2
  while max(nb,nt) < N-1
    nb=nb+1
    for j in 1:9
      k= (r^q[nb])*j+p[nb]
      if isprime(k)
        nt=nt+1
        p[nt]=k
        q[nt]=q[nb]+1
      end
    end
  end
  println(q)
  println(p)
end

#右から削っていく場合の切り捨て可能素数
function pencil2(N)
  p=zeros(Int128,N)
  q=ones(Int,N)
  r=Int128(10)
  p[1]=2
  p[2]=3
  p[3]=5
  p[4]=7
  nb = 0
  nt = 4
  while max(nb,nt) < N-1
    nb=nb+1
    for j in 1:9
      k= 10*p[nb]+j
      if isprime(k)
        nt=nt+1
        p[nt]=k
        q[nt]=q[nb]+1
      end
    end
  end
  println((q,p))

end

2018年12月26日水曜日

文学のふりかけ

齢を重ねると小説を書きたいという人が一定の割合で増えてくるような気がする。
以前,出席した同窓会でもそんな発言があってちょっとドキッとした。こんなにストレートに思いを表現しても良いのだ。さて,我が身を振り返ると,星新一賞はすでにご近所の方が獲得されてしまい,自分にはこれといった得意分野もなく,最近のSFはというと(例えば「トランスヒューマンガンマ線バースト童話集」)遠く先の方に進んでしまってとても追い付けそうにもない。

しかし,文章をあれこれ練るのは論文を書くのと同様にたいへん楽しい活動である(ということをこのブログによって再認識した)。そこで,安藤百福のように新しい方法がないかと考えたところ,第一の問題は材料である。比べるのも申し訳ないが,高村薫でも相当の取材をしてそこから文学のクッキングを始めているようだ。すでに自分の経験の中に材料があれば問題ない。そうではなくて,意気込みだけはあるが年金生活のために材料が買えない,とか,知的資産として蓄えるのを怠っていた場合になんとかできないかということ。

で,「文学のレシピ本舗(仮称)」が発売するインスタント知的食品「文学のふりかけ(2018.12.26 google未定義語)」を購入してもらう。様々なフレーバーのテキストを用意して,そこから形態素解析などで抽出した単語やセンテンスをフレーバーごとにパッケージ化する。この何種類かのスパイスを適当な割合で混ぜて,ベースとして埋め込んだページが標準で提示される。単語が薄い密度であらかじめ埋め込まれたページ群である。これらの言葉に自分のオリジナルな思考を結合し,消去し ,連想しながら言葉を書き加え,文章に編み込んでゆく。あとはシェフの腕次第。

古典フレーバーのパッケージもほしい。文楽浄瑠璃パッケージ(時代物編乾)とか文楽浄瑠璃パッケージ(世話物編坤)とか宇治拾遺物語パッケージ(仏教編空の巻)とか。というところで,形態素解析の古語版が必要だということに気がついた。そんなものがあるのか。ありました。国立国語研究所のUniDicである。商用利用は要相談だそうなので,落ち着いて試してから相談してみよう。というようなことをしている時間はもうあまりない。







2018年12月25日火曜日

クリスマス

メリー・クリスマス。

浄土真宗の檀家であるにも拘わらず,子どもの頃に通っていた金沢の若草幼稚園が基督教系だったせいもあって,クリスマスとの親和度は高かったような気がする。この幼稚園では,クリスマスの時期にキリスト生誕の劇をすることになっていた。私の妹も2,3年後に同じ幼稚園で主役のマリアさまを演じている。友達のD嶋君などは輝ける東方の三博士の1人の役であった。動物の役だと馬や牛のお面を被るため,それはそれでカッコイイのであるが,自分はその他大勢の羊飼いの役なのだ。茶色い風呂敷を頭から巻くと,あっという間に中東の荒野を彷徨う羊飼いのできあがり。マリアさまや三博士とは違い,写真撮影時には最右翼端に位置することになる。

近所に住んでいた祖母がこの幼稚園の園長先生の友達だったので,もう少し良い役が回ってきてもよさそうなものなのであるが,当時の私は引っ込み思案予備軍の幼稚園登園拒否児だったので,そうは問屋が卸さなかった。母の作ってくれたお弁当の時間や,腹巻き付きのオープン寝袋(立方体の展開図的な薄い布団のこと)によるお昼寝の時間は楽しかった。が,弱虫だったこともあり,砂場での土木建築作業や室内における体力強化のための身体大積木建設バトルは相当苦手だった。そうかといって,お絵書きの時間でも,人間の顔を描くのに肌色の絵の具が無くて泣き出す始末。三博士のD嶋君は「黄色でも大丈夫だよ」とたいへん適切なアドバイスをしてくれたのだが,それはイヤなのね。

小学校に入って1,2年生の頃,近所の羊飼い友達のM崎君と幼稚園に隣接している日本基督教団若草教会の日曜学校に通った。日曜の朝10時から始まり,牧師さんのお話と賛美歌があるのだが,手に持たされた聖書のページを指定されてもどこを見れば良いのかさっぱりわかりません。毎週毎週分かったふりをしてページを捲り続けるという困惑の時間が続くのだった。このような経験は皆さん多かれ少なかれありそうなので(そうでないのかもしれませんが…),誰もがわからない子どもの気持ちに共感してもよさそうなものである。しかし,残念なことに人間は物事が少しわかり出すと,まわりのことが見えなくなる。自分の認識座標系を相対論化することは大変困難な課題である(これも宿題)。

P. S. 賛美歌も著作権でガチガチに絞められていて,なかなかつらいものがある。

「おほかたは星の子の役聖夜劇」(伊藤トキノ 1936-)


2018年12月24日月曜日

Queen

昨日,夫婦でシネマサンシャイン大和郡山に「ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)」を観に行った。ウェブでシニアチケットを購入するのだが,トップバナーに阻害されて目的の作品にたどり着くまでのユーザフローがちょっと面倒。そんなことはあまり感じないであろう若い人にも人気だとのことで,確かにそんな客層だったかもしれない。終演後に聞こえてきた若者たちの感想もそんな風だったとのこと。

さて,クイーンである。クイーンが結成されたのは1971年だが,最初のアルバム「戦慄の女王」が出た1973年や初来日した1975年は,ちょうど自分が大学生のころで,すでに洋楽ポップスからは足を洗っていたため,リアルタイムで聴いた印象がない。勉強を教えていた中学生が好きなグループとしてベイ・シティ・ローラーズとクイーンをあげていたような気がする。同時期のロックバンドとしては好みでなかったキッスの方がヴィジュアルに目に刻まれている。

そのクイーンの音楽がいいなと思った最初のきっかけは,フレディ・マーキュリーが亡くなって15年後の2006年ごろに放映されたV6の「学校へ行こう!MAX」である。エアボーカル企画で佐賀大学の野球部が出演し「Don't Stop Me Now」や「Bicycle Race 」を歌っていて,ちょっとはまってしまった(微かな記憶だったが,インターネットでここまで辿れる)。

映画の方は,とても楽しめる音楽映画だった。自分が生で見た洋楽ポップスの主なコンサートは,1970年のフィフス・ディメンション(大阪万博),1972年のビージーズ(大阪),1979年のライブ・アンダー・ザ・スカイ(万博公園)くらいなのだが,1985年のクイーン(ウェンブリー・スタジアム)のライブ・エイドも堪能することができた。

2018年12月23日日曜日

カプレカ数

 しばらく前に,どこかで,カプレカ数(Kaprekar Number)を見かけた。Julia言語でプログラミングしようとすると,あれやこれやわかっていなくて難渋した。

 カプレカ数には複数の定義がある。(1)ある正整数の2乗を上位桁と下位桁の2数に分割して和をとったものが,もとの整数に等しいもの。分割の仕方がより一般的なものとより制限的なものの2種類がある。(2)ある正整数の桁を並べ替えてできる最大の数から最小の数を引いた(カプレラ写像した)ものがもとの整数と等しいもの。どのような3桁の数もカプレラ写像を繰り返すと0または495になる。また,同様に4桁の数は0または6174になる(西山豊 6174の不思議Mysterious Number 6174)。それ以外の桁の数では一定の範囲で反復するが収束しない場合もあるので,そこまで親切に面倒をみていないので残念な下記コードを動かす場合は注意が必要である。

 Julia は強力な型変換機能を持っているが,実数を整数化するような簡単な操作で逆につまずいた。ある実数の値の変数を Int() で整数化しようとするとエラーになる。その実数の値が整数と同じならば問題ない。例えば,x=1. ; print(Int(x)) は問題なしなのだが,x=1.5 ; print(Int(x)) は,InexactError: Int64(Int64, 1.5) となる・・・orz。整数除算の div(m,n) もちょっと見栄えがよくないかも。配列が 0 から始まらないのはまあいいか。


function kaprekar1(m)
#this is a kaprekar number http://oeis.org/A053816
#NOT the definition http://oeis.org/A006886
  m2=m^2
  n=Int(ceil(log10(m2+.1)))
  nun=zeros(Int,n)
  for k in 1:n
    nun[k]=m2 % 10
    m2=div(m2-nun[k],10)
  end
  n1=n%2
  n2=div(n,2)
  sum=nun[n-n2]*n1
  for k in 1:n2
    sum=sum*10+nun[n+1-k]+nun[n-n2+1-k-n1]
  end
  if m==sum
    println(sum)
  end
end

function kaprekar2(m)
#this is an another kaprekar number http://oeis.org/A099009
  n=Int(ceil(log10(m)))
  nun=zeros(Int,n)
  for k in 1:n
    nun[k]=m % 10
    m=div(m-nun[k],10)
  end
  min=sort(nun)
  dif=0
  for k in 1:n
    dif=dif*10+min[n-k+1]-min[k]
  end
  return dif
end

k=2 #inout data1
for i in 10^(k-1):10^k-1
  kaprekar1(i)
end

new=3833 #input data2
cnt=0
while old != new
  old=new
  new=kaprekar2(old)
  cnt=cnt+1
end
  println((cnt,new))

45
55
99
(7, 6174)


2018年12月22日土曜日

冬至

 冬至(Winter Solstice 今日までこんな単語は知らなかった)は,一年の内で最も昼の短い日。例えば,きょうこのあたりでは,日の出が7:00,日の入は16:50なので,昼は9時間50分(41%),夜は14時間10分(59%)である。冬至や夏至の前後では一日ずれると昼夜の時間が1分(0.07%)ほど変化するものと思われる。

 冬至の定義をもう少し丁寧に調べようとすると,次のように自分があまり正確には分かっていない言葉(概念)の連鎖が得られた。冬至(冬至日)→冬至点(春分点・夏至点・秋分点)→黄経270度→黄道(天頂・天底・白道)→ 定記法(二十四節気・恒気法)。でもWikipediaの網を用いることで,ある程度までは適当な精度で理解することができるように思える。

 Wikipediaに対しては,かなり有益,やや有益,中立,やや有害(あまり信用できない),かなり有害(まったく信用できない)という意見がある。利用する場面や対象によって,この価値判断スペクトルが虹色に変化する。教育や研究の場では「知識の安全性」を担保する必要があるので,否定的な考えのほうが多いかもしれない。

 「理解の精度」という概念を導入して,知識の信頼性と有用性を場面ごとに尺度変換して考えることはできないだろうか。ある知識のまわりに連結するネットワークの密度が高ければ高いほど,相互信頼性が増して理解の精度が高くなるということを定量的に扱うことができないかということ。次の夏至までの宿題にしよう(夏への扉)。

「行く水のゆくにまかせて冬至かな」(田川鳳朗 1762-1845)

2018年12月21日金曜日

加法定理の折り紙

Twitterに加法定理の折り紙が載っていたので,まねをして自分でも作ってみた。
\begin{equation*}
\begin{aligned}
\sin (\alpha+\beta) = \sin \alpha \cos \beta + \cos \alpha \sin \beta\\
\cos (\alpha+\beta) = \cos \alpha \cos \beta - \sin \alpha \sin \beta
\end{aligned}
\end{equation*}



\begin{equation*}
\begin{aligned}
\sin (\alpha-\beta) = \sin \alpha \cos \beta - \cos \alpha \sin \beta\\
\cos (\alpha-\beta) = \cos \alpha \cos \beta + \sin \alpha \sin \beta
\end{aligned}
\end{equation*}




2018年12月20日木曜日

細見綾子の冬銀河

再びは生まれ来ぬ世か冬銀河」(細見綾子 1907-1997)
細見綾子沢木欣一と再婚後10年近く金沢に住んでいたようだ(私の生まれた前後)。
その前には,大阪府池田市で転地療養している(私の住む50年前)。昔,一瞬俳句が趣味になりかけたときに(ならなかったけど),NHKで鷹羽狩行など共に細見綾子さんが出演していたのを見た記憶がある。阿修羅のごとくの大路三千緒のイメージとどこかで連結しているのだ。

大阪教育大学の採用時面接で下村先生に,趣味は何ですかときかれ,ハイク(ハイキング) ですと答えたら,俳句と勘違いされて話が迷走し大笑いになったことがある。面接は10分ほどで終わってしまった。簡単なものである。最近の選考面接では模擬授業と研究紹介を含め小一時間ある。

まだ凍てつく冬は到来していないので冬銀河には少し早かったかもしれない。



2018年12月19日水曜日

阿修羅のごとく

向田邦子−和田勉の1979「阿修羅のごとく」の再放送をNHKプレミアムカフェの録画でみた。ゲスト:太田 光(爆笑問題)山本 むつみ(脚本家), MC:渡邊 あゆみ(アナウンサー)の対談もついている公開録画。緒形拳がすごいなぁ。太田光も鋭いなぁ。

若き日の吉田簑助師匠が,日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)の清姫のガブを遣っている映像が第1話にある。1979年なので,これを放映当時そのまま見たかどうかはわからないが,1980年代には再放送か何かをみているはずだと思う。ドラマ人間模様の「あ・うん」なども。向田邦子がかかわるTVドラマでは,「時間ですよ」は集中してよく見ていたが(高校生から大学生にかけての時期),「寺内寛太郎一家」はたまにしかチャンネルを回さなかった。「時間ですよ」には,NHKの「天下御免」とならんでTVドラマの新しい波みたいなものを感じたのだが。

興福寺の阿修羅像を最初に見たのは奈良に住むようになる前だったろうか。堂内の床平面の高さに特別な配慮もなく普通に陳列されていた。拝観客も少なく,ガラスケースにぎりぎりまで近づいて四方から十分に拝顔することができた。その時は,ドラマの「阿修羅のごとく」とはあまり結びついていなかったかもしれない。実物の迫力にただただ圧倒される長い時間。その後,幾度か見る機会があったけれど,もう初回の感動に及ぶことはなかった。

2018年12月18日火曜日

WE the PEOPLE



辺野古岬 (Wikipediaより CC BY-SA 3.0)

沖縄の辺野古/大浦湾の埋め立て停止を求めるホワイトハウス宛ての請願が,12月8日(奇しくも)から始まった。その内容は次のようなものである。


沖縄の県民投票が実施されるまで,辺野古/大浦湾の埋め立てを停止せよ

トランプ大統領:民主的な県民投票が実施されるまで,沖縄での埋め立て作業を止めてください。 今年の初め,沖縄/大浦湾の建設を中止することを前提として,圧倒的支持により沖縄の人々は玉城デニー知事を選出しました。 大浦湾は沖縄の生態系のたいへん重要な部分の1つです。 しかし,日本政府と在日米軍はこれまで,玉城知事と沖縄県民の民主的意志を完全に無視してきました。 後戻りできない建設工事が12月14日(JST)に始まる予定です。 これが許されれば,沖縄の人々の間の強い反米感情は確実に高まり,米国と沖縄の関係を永遠に壊してしまうでしょう。 民主主義を優先して,工事の停止を命令してください。 アメリカが本当に尊敬に値する大国であることを沖縄県民に示してください。

先週,12月11日に投票した段階では,5,000票あったかどうか(記憶が定かでない)で,期限の1月7日までに10万を達成するのは難しいだろうなと思っていたのだが,12月18日のお昼頃には95,000票になりそうである。たぶん今日明日には達成されると思われる。
(P. S. 2018年12月18日15:30頃には100,000を越えた模様です。)

Rob Kajiwara氏のyoutube メッセージもある。

この他にもいろいろな取組みはあるようだ。ボーダーインク「新しい提案」


2018年12月17日月曜日

ジョン・ウィリアム・ニコルソン

2018-12-16 原子モデルとプランク定数の続き

「20世紀の物理学(L. M. Brown, A. Pais, B. Pippard:丸善)」の 第2章「原子と原子核の導入(A. Pais)」の85pには,ハースに続いてニコルソン(英国出身 John William Nicholson 1881-1955 )の1912年の論文が紹介されている。この論文は,ボーアの1913年の論文でも引用されている。

ニコルソンは質量$m$の$n$個の粒子からなる半径$a$のリングのエネルギー$E$と回転振動数$\omega$の比が角運動量$L$に等しいことに気付き,これがプランク定数$h$に比例する,すなわち角運動量が量子化されることを初めて示唆した。
\begin{equation*}
h=\dfrac{E}{\omega} = \dfrac{m n a^2 (2\pi\omega)^2}{\omega} = m n a^2 (2\pi \omega) \cdot 2\pi = L \cdot 2\pi
\end{equation*}
ニコルソンは,彼の原子モデルを使って星のスペクトルの説明を試みていたが,その過程で上の関係を考えたようだ。ボーアモデルまでの経緯については,森川亮の「量子論の歴史 − 原子の物理学へ − 量子論へのプレリュード −」が詳しいかも。また,角運動量の量子化については,J. H. O. Sales, A. T. Suzuki の "The Old Quantization of Angular Momentumfrom Planck's Perspective" を参照する。

2018年12月16日日曜日

原子モデルとプランク定数

2018-12-14「アルトゥル・エーリヒ・ハース」からの続き


 1913年にボーアの原子モデルが発表される以前。1910年にハースがプランク定数と原子半径を結びつける正しい式を提案していた。両者の違いについて整理してみる。

ハースは,プランクの作用量子$h$の物理的意味を原子の構造に求め,$h$を原子の大きさによって根拠づけようとした。トムソンの原子モデルから出発すると,電子が半径$a$の一様に分布した正電荷の表面を回転しているときが全エネルギーが最大である。このときの原子(振動子)のエネルギーがプランクの$h\nu$であるとして,初めてボーア半径の正しい式を導いた(対応するエネルギーの表式は正しくない)。

ボーアは,ラザフォードの原子モデルに対して,その大きさを決める特徴的な長さを与えると同時に線スペクトルを説明しようとした。プランクの振動子のエネルギー$nh\nu$に現れる振動数$\nu$と原子の回転振動数$\omega$を結びつける複数の仮定が共にボーア半径の式とリッツの結合則を与えることを示した。原子には定常状態(及び安定な基底状態)が存在するとして,状態間の遷移によって光子の放出吸収を理解したことが革新的であった。

\begin{equation*}
\begin{array}{ccc}
\hline
 & Haas & Bohr \\
\hline
モデル & トムソン原子モデル  &  ラザフォード原子モデル\\
電子に働く力 & F=-\dfrac{e^2 r}{a^3} & F = -\dfrac{e^2}{r^2}\\
ポテンシャル & V=\dfrac{e^2 r^2}{2 a^3} & V=-\dfrac{e^2}{r}\\
エネルギー基準点  & r=0 & r=\infty\\
運動エネルギー & T=\dfrac{1}{2}m v^2 &  T=\dfrac{1}{2}m v^2\\
速度vと振動数\omega^{1)} & v=2\pi r \omega &  v=2\pi r \omega\\ 
古典運動方程式^{2)} & ma(2\pi\omega)^2=\dfrac{e^2}{a^2} &  mr(2\pi\omega)^2=\dfrac{e^2}{r^2}\\
振動子(原子)の振動数 & \omega=\dfrac{1}{2\pi}\sqrt{\dfrac{e^2}{m a^3}} 
& \omega=\dfrac{1}{2\pi}\sqrt{\dfrac{e^2}{m r^3}}\\
全エネルギー(T+V) & E=\dfrac{e^2}{a} & E=-\dfrac{e^2}{2 r}\\
プランク定数との関係^{3)} &  E=h\omega & E=-\dfrac{n}{2} h \omega\\
\\
プランク定数の表式 & h=2\pi e\sqrt{ma}  &  h=\dfrac{2\pi e}{n}\sqrt{m r_n}\\
原子半径の表式 & a=\dfrac{h^2}{4\pi^2 me^2} & r_n=\dfrac{n^2h^2}{4\pi^2 me^2} \\
エネルギーの表式 & E=\dfrac{4\pi^2me^4}{h^2} & E_n=-\dfrac{2\pi^2me^4}{n^2 h^2} \\
\hline
\end{array}
\end{equation*}
1) 電子の回転振動数を$\omega$ とした。角振動数ではない。
2) Haasでは以下$r=a$の正電荷表面の軌道で考える。
3) ボーアは放出される光の振動数$\nu$が電子の基底状態の回転振動数$\omega$の1/2であると仮定して,光子のエネルギー$nh\nu$と原子の全エネルギー$E$を等置した。


2018-12-17「ジョン・ウィリアム・ニコルソン」に続く

2018年12月15日土曜日

冷血(上):高村薫

東京までの往復の車内で,新潮文庫の高村薫の冷血(上)を読んだ。第1章の事件と第2章の警察の475ページ。下巻が第3章個々の生または死が440ページである。分速1ページくらいで読める(でしか読めない)。最近,仕事に向う電車の車内(片道1時間)で,ほとんど文庫本が読めなくなってしまった。2008年の8月11日(母親の誕生日)に(米国から1年遅れで)ソフトバンクが日本で初めて発売したiPhoneを購入して以来,徐々に本を読む時間が,iPhoneでの情報摂取時間で置き換えられてしまった結果である。その前に読んだ小説は,マーガレット・アトウッドの侍女の物語,これは時間をかけて味わうことができたSFだ。今年はこの2−3冊で終わるのか・・・

さて冷血である。事件までの経緯や二人が逮捕されるまでの経緯は,上巻でほぼ明らかになっているので,下巻がどうなるかだ。少し読み始めたが,まだ様子はわからない。パチスロやクルマや警察無線と捜査人員編成の具体的なディーテイルが描き込まれている。アマゾンの書評はあまり芳しくない。しかし自分には高村薫を読めるだけでありがたいことなので,先日大阪キタの堂島アバンザにあるジュンク堂本店で発見したときには迷わず購入した。ちょっと気になったのは,筑波大学附属中学1年生の高梨あゆみが数学オリンピックを目指すような少女なので,数学についての用語がいくつかでてくるところ。悪くはないとおもうのだけど,ちょっとだけ違和感を感じる。これだけ入念に調査した専門的な内容であっても,その道の専門家がみれば・・・ということはあるのだろう。

事件の幕が開くのが2002年の12月17日で ,東京の地下鉄丸ノ内線の茗荷谷駅が出てくるのだが,この本を読み始めたのが,12月15日で,この日はたまたま筑波大学附属高校で日本物理教育学会の第3回理事会があったため,茗荷谷駅近くのお洒落な喫茶店Galleria Caffé U_Uでこの小説を読むというシンクロニティ(非因果的連関)があった。自分にとっての代表的なシンクロニティは,庄司薫の「さよなら怪傑黒頭巾」を1970年の5月の連休に高校2年生の自分が読んでいたというシチュエーションである。完全に非因果的とは言えないかもしれないけれど。さて「冷血」といえばトルーマン・カポーティの冷血が連想されたのだけど,読んだことはない。実際の事件を非常に丁寧に取材した小説らしい。高村薫のほうは,世田谷一家殺人事件との関係が指摘されてもいたが,あまり関係ないのではないかと思った。はやく下巻を読みたい。

冷血(下):高村薫に続く)

2018年12月14日金曜日

アルトゥル・エーリヒ・ハース

大学院の授業で「20世紀の物理学(L. M. Brown, A. Pais, B. Pippard:丸善)」の 第2章「原子と原子核の導入」を読んでいたら,''アーサー・ハースというウィーンの物理学者(チェコ出身の Arthur Erich Haas 1884-1941)がボーアより前の1910年に原子の量子仮説を導入した'' とあった。東欧なので,Wikipediaロシア語版の記述が最も詳しいようだ。

東海大学出版会から刊行されている,物理学古典論文叢書10「原子構造論」にハースの「プランクの輻射法則の電気力学的な意義および電気素量と水素原子の大きさに関する新しい決定について」という論文が採録されていた。長岡半太郎やボーアばかりに気をとられていたので,すっかり見落としていた。

あとでもう少し勉強してみよう(2018-12-16「原子モデルとプランク定数」に続く)。

P. S. この第2章はパイスが書いており,わかっている人が読むといろいろおもしろそうなことが書いてあるのだが,背景知識の少ない初心者が読むと,なにがなんだかわからない雑木林を彷徨っているような状態になりそうなので,授業で使うには対象者とのマッチングに注意したほうがよいかもしれない。


写真:A. E. ハース(Ceder Grove Cemetery から引用)


2018年12月13日木曜日

素数生成式


オイラーが,$f_q(n)=n^2+n+q$という式に次のような性質があることを発見した(オイラーの素数生成式の秘密  tujimotterのノートブック)。ある特別な数$q$に対して,変数(引数)として連続した整数$n$を代入すると,$q-1$個の式の値 $f_q(0), f_q(1), \cdots f_q(q-2)$ がすべて素数になるというのである。ここで,特別な数とは,$q=2,3,5,11,17,41$である。例えば,$f_5(0)=5○,\  f_5(1)= 7○, \ f_5(2)=11○,\  f_5(3)=19○,\  f_5(4)=25×$ なるほどね。

他にも,1変数の簡単な多項式で連続した整数を代入した値がすべて素数を与えるものがあるというので調べてみると,O. Cira, F. Smarandache の "Various Arithmetic Functions and their Applications(2016)"に行き着いた。今年 Ver 1.0を迎えて注目の(?)プログラミング言語 julia で確認してみた。 

using Primes                
                            
function euler(n)           
  local p1,p2,p3::Int64     
#arXiv:1603.08456v1  O. Cira and F. Smarandache (2016)
#Euler...40primes           
  p1=abs(n^2-n+41)          
#Fung, Ruby...45primes      
  p2=abs(36n^2-810n+2753)   
#Laudreu, Gupta...57primes  
  p3=abs((n^5-133n^4+6729n^3-158379n^2+1720294n-6823316)/4)
  (n,p3,isprime(p3))        
end                         
                            
for k=0:60                  
  println(euler(k))         
end                      

結果は
(0, 1705829, true)   
(1, 1313701, true)   
(2, 991127, true)    
(3, 729173, true)    
(4, 519643, true)    
(5, 355049, true)    
.....                
(50, 1404721, true)  
(51, 1707499, true)  
(52, 2071373, true)  
(53, 2505127, true)  
(54, 3018307, true)  
(55, 3621251, true)  
(56, 4325119, true)  
(57, 5141923, false) 
(58, 6084557, false) 
(59, 7166827, true)  
(60, 8403481, true)

そだね〜。

2018年12月12日水曜日

大阪府高等学校理化研究会70周年

今日は,標題の会合があるのです。
記念誌に寄稿したものを再掲してみます。

変化の時代と物理教育
 大阪府高等学校理化教育研究会が70周年を迎えられたこと,心からお慶び申し上げます。
 平成の30年間で最も大きな出来事の一つは,インターネットの出現とICTによる世界の構造的な変化の始まりだった。また,我が国では,インフラ劣化の進行にともなう災害被害の甚大化を象徴するかのように,東日本大震災に続く福島第一原発事故があった。それらの背景には物理学を基盤とする科学技術の問題があることから,科学を学ぶことの重要さが改めて示唆されている。
 一方,教育の現場をみると,急速な変化を続ける社会に対応するための改革が繰り返し試みられてきた。しかし,それらは必ずしも成功しておらず,むしろ混迷を深めているようにさえ見える。アクティブ・ラーニングが注目され,様々な手法が提案されているが,すべての生徒と教師に普遍的に適応した単一の方法論が存在するわけではなく,歴史的背景や社会的環境にあわせた個別の多様な取り組みを柔軟に進めていくしかないのだろう。
 その中でも社会の様々なセクターの連携は,重要な因子である。高校の理数科教育の周辺には,大学,予備校,中学校,教育委員会,企業,NPO,SNS上のコミュニティ,学会,など様々な組織に属する人々や個人がとりまいており,それらの連携の潜在的な可能性は大きい。これらの星々の相互作用によって銀河が構成されるだろう。必要なのは従来の慣習や組織の枠を少しだけはみ出して,これらのネットワークを媒介する若い人たちの活躍である。そして我々過去の若者に必要な役割は,ダークマターのように,それらの活動を背景から支えることなのかもしれない。
いよいよダークマターですか・・・

2018年12月11日火曜日

リップ・ヴァン・ウィンクル

 1970年の大阪万博で,中央環状線南東のエキスポランドにあった5並列ジェットコースターの名前がダイダラザウルスである。生まれて始めてのジェットコースター体験が,万博終了後何年かのちに縮小再開されたそれだった。最高点から走り出してまもなく,止めて頂戴ね,と思ったがもう遅かった。

 ダイダラザウルスは,日本民話のダイダラボッチに由来するらしいが,子どものときにこの話を見聞きしたことはない。かわりに親しんでいたのはアメリカ民話のポール・バニヤンという大男の豪快な物語であり,これは子ども雑誌で読んだ記憶がある(少年ブックの連載時から親しんでいた,手塚治虫のビッグXとイメージが重なるということはなかったですね)。

 ポール・バニヤンの隣に記憶されているのが,リップ・ヴァン・ウィンクルで,NHKテレビの子ども番組で見たことがある。日本の浦島太郎のような話で,山奥の不思議なところでボウリングと酒盛りにしばらく興じていると,地上では何年も経っていたという話。リップ・ヴァン・ウィンクルは,「時代遅れの人」,「眠ってばかりいる人」の代名詞になっているようだが,まさに,今の自分であることを痛感する。

 いつの間にか,High Sierra on MacBook Pro で特定のフォーマットの CD-ROMが読めなくなってしまい,Firewireもなくなって,Thunderbolt2とThunderbolt3=USB-Cのコネクタの変換が,オスメスとコネクタ端子サイズ条件を含めて無理筋なことに気付くのであった。

 今日の結論,時の経つのが早すぎるので,止めて頂戴ね。

2018年12月10日月曜日

MathJaxで数式表示(1)

Bloggerで数式を表示する(おもちゃ箱)を参考にして,
html の header を修正しました。例えば $e^{i \pi} = -1$ です。
あら \bm  が使えないのか。

【練習】
\begin{equation}
m_i \ddot{\boldsymbol{r}}_i = \boldsymbol{F}^{\rm{ex}}_i
+ \sum_{j=1}^N  \boldsymbol{F}^{\rm{in}}_{ji}
\end{equation}
\begin{equation}
\left\{
\begin{aligned}
\nabla\cdot\boldsymbol{B}=0 &\quad
\nabla\times \boldsymbol{E}+\dot{\boldsymbol{B}}=0\\
\nabla\cdot\boldsymbol{D}=\rho &\quad
\nabla\times \boldsymbol{H}-\dot{\boldsymbol{D}}=\boldsymbol{j}
\end{aligned}
\right.
\end{equation}
\begin{equation}
i\hbar\dfrac{\partial}{\partial t}\ \psi
= \big( -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2} +V\big)\  \psi
\end{equation}


2018年12月9日日曜日

木村栄の孫

日本経済新聞の私の履歴書,今月は茅陽一。物理学者の茅誠司の妻が,天文学者の木村栄(ひさし)の娘の伊登子であるとのこと。つまり,茅陽一は木村栄の孫になる。金沢市立泉野小学校では(校区内に木村栄の育った家があった),かつて,地球の緯度観測でZ項を発見し,第1回の文化勲章を受賞した木村栄の業績をたたえる行事を毎年行っていたのだけれど(そういえば木村博士の歌もあった),残念なことに泉野小学校の現在のホームページには木村栄についての記載はない。金沢市郊外の野田山にある大乗寺の山門参道前には,木村栄の養父の木村民衛(私塾の教師)の大きな碑があったのだが,これも何年か前に撤去されてしまっていた。


 

2018年12月8日土曜日

真珠湾攻撃から77年

1941年の12月8日に真珠湾攻撃,米英と開戦してから77年が経過した。
矢作俊彦-大友克洋の「気分はもう戦争」からはそのおよそ半分の38.6年ほど。

ラジオ放送(現NHK)による大本営陸海軍部発表(昭和16年12月8日午前6時)
「臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます。
大本営陸海軍部、十二月八日午前六時発表。帝国陸海軍は本八日未明、
西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり。」