2022年6月24日金曜日

沖縄「慰霊の日」

 6月23日は,沖縄戦(1945.3.26-1945.9.7)から77年目(ななじゅうしちねんめ)を迎える「慰霊の日」だった。NHKでは左手に情緒的で反戦的なエピソードを積み上げつつ,右手では"防衛費"の増額と憲法の"改正"があたかも既定路線であって,なんの問題もないかのような印象操作を続けている。

さて,6月23日という日付は,なんとなく,沖縄戦で米軍が勝ち日本軍が負けた日なのかと思いこんでいたが,そんな単純なことでもなかった。沖縄戦を戦った第32軍の司令官の牛島満(1887-1945)と参謀の長勇(1895-1945)が自決して,日本軍の組織的な戦闘ができなくなった日だった。降伏の手続きを経なかったので掃討戦は継続し,6月23日以降にも多くの人命が失われた。7月2日には,連合国軍が終了宣言を出したものの,降伏調印式が行われたのは9月7日だった。

昭和19年の沖縄の人口は59万人,昭和21年には51万人に減っている。沖縄県による沖縄戦戦没者の推計によれば,全戦没者20万人(平和の礎には24万人が刻まれる),軍人軍属9.4万,一般県民9.4万,米軍1.3万とある。沖縄出身の軍人軍属と県民を合わせれば,12.2万人であり,県民全体の1/4近くに達している。


1977年夏の米島君との沖縄旅行については少し書いた。民宿に一泊した次の日に,南部戦跡をめぐるバスツアーに参加した。途中で,日本軍の地下壕の跡に立ち寄ったのだが,それが,豊見城市の旧海軍指令壕だった。ここでも6月13日に海軍司令官の大田実が自決している。その後ひめゆりの塔に向かったはずだがあまりはっきりおぼえていない。

金沢の卯辰山には,殉難豊川女子挺身隊の像がある。高校相撲大会の応援のときに,それをみながら米島君が,日本でミュージカルをつくるならばテーマはひめゆりの塔だと力説していた。そのとき自分はピンと来ていなかったが,数年後にはいっしょに沖縄を訪れることになった。


写真:卯辰山の殉難乙女の像(朝日新聞から引用)

2022年6月23日木曜日

評価基準と評価規準

 大阪教育大学のフェイスブックに「府内高校教員を対象に「教師の学び舎」第1回講座を開講」という記事が掲載され,お知らせがiPhoneにとんできた。

八田幸恵先生の講義が紹介されていた。八田さんといえば,京大教育学部の田中耕治研究室の出身なので,教育評価のプロである。自分が評価情報室に配属されていたころだったか,必要に迫られて田中耕治先生が書いた岩波書店の「教育評価」も買ったのだが,積ん読状態で放置していた。

さて,紹介された八田先生の講義の一コマで,次のようなスライドがあった。

キジュン={規準(criterion),基準(standard)}

規準:評価・解釈の規準を目標においたもの

基準:ある目標についてこれがこうできていれば5,こうであれば4ということを示して,教師に子どもの目標に対する達成度を把握させるもの 

   =量的な基準(○×10問中9問正解),質的な基準(ルーブリック)

うーん,循環定義になっている。そこで,師匠の本を繙いてみることにすると「相対評価」に対峙するものとして,「目標に準拠した評価」(「絶対評価」と混同されがち)があることを示したうえで,次のように書いている。

すなわち,規準」とは教育評価を目標準拠で行うということであり,教育評価の立場を表明する言葉として採用されている。しかし,この段階にとどまっていては,「目標に準拠した評価」は単なるスローガンに終ってしまう。その「規準」が量的・段階的に示された「基準」にまで具体化されなくては,「目標に準拠した評価」といえども,評価者の主観的な判断に陥る危険がある。

なるほどこれでわかったといいたいところだけれど,皆川さんの論文をみると話は錯綜していて,一筋縄では行かない。そもそも国立政策研究所の下記の資料は,ほとんどすべてを「評価規準」という用語で統一してしまったにもかかわらず,具体的な「基準」に立ち入って書いてあるのだから。混乱を招くこと必至ではないのか。

[1]「規準」と「基準」・‘criterion’と‘standard’の 区別と和英照合(皆川英代)
[2] 評価規準の作成のための参考資料(小学校)(国立政策研究所)
[3] 評価規準の作成のための参考資料(中学校)(国立政策研究所)
[4]「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(国立政策研究所)
[5]アメリカのスタンダード教育(さらに話が複雑な方向に・・・)

2022年6月22日水曜日

AIが意識を持った?

2015年に設立されたシンギュラリティサロン主宰の神戸大学名誉教授の松田卓也(1943-),セーラー服おじさんこと小林秀章(1962-),神戸大学教授の塚本昌彦(1964-),XOOMSの保田充彦らにより,YouTubeのシンギュラリティサロン・オンラインでは,意識・人工知能などの問題が議論されている。

今回のテーマは,「LaMDA騒動~「AIが意識を持った」というGoogleエンジニアが停職処分になったという話について」だった。LaMDAはGoogleが開発した対話システムであり,Transformerとよばれる自然言語処理のためのニューラルネットワーク深層学習モデルの上に構築されている。

このLaMDAにおける倫理的問題(ジェンダー,性的志向,人種,宗教などへのバイアス)を検討するために,宗教者のBlake Lemoineが同僚とともに,LaMDAとの対話を続けた。その結果,Lemoineは,LaMDAが意識を持っていると考えるようになり,上司に報告したが一笑に付された。その過程で,Lamoineが第三者に相談としたことが秘密保持規程違反とされて停職処分をうける。これに不満をもったLemoineが,Mediumにその経緯やLaMDAとLamoineの対話スクリプトを公開したことで,大きな注目を集めることになった。

実際に,その対話スクリプトを見ると,これはチューリングテストをパスしているのではというのが,シンギュラリティサロンメンバーの感想だった。実際,すごい対話がなされている。ただし,これは,LaMDAが意識(consciousness)/ 感覚性(sentience)を持ったことの証拠とすることはできない。そもそも意識とは何かが,現在の科学では定義されていないし,したがって,その検証方法も明らかになっていないからだ。あるいは,人間が世界を補完して認識する過程(特に対話の場合)の特徴が現れているというべきか。

検索用音声インターフェースのAlexaやSiriとは全く異なるレベルである。もし,GoogleがこのLaMDAを製品化して市販すればとんでもないことになりそうだ。ニール・スティーブンソンダイヤモンド・エイジの世界がそこまで迫ってきた。

[1]6/3 Religious Discrimination at Google
[2]6/7 May be Fired Soon for Doing AI Ethics Work
[3]6/8 Goovle is not Evil
[4]6/11 What is LaMDA and What Does it Want
[5]6/11 Is LaMDA Sentient? An Interview 
[6]6/14 Scientific Data and Relisious Opinions

2022年6月21日火曜日

ギフテッド

 日曜の朝,親戚の一統さんからFacebook Messageが入っていた。姪の鈴木涼美芥川賞候補になったというのだ。自分からすると,鈴木涼美は祖父のいとこのひ孫にあたる(かなり遠い・・・)。

さっそく鈴木涼美を調べてみると,父が鈴木晶,母が灰島かりとあった。なんだ人違いじゃないのと思ったが,よくよく確かめると自分の知っている遠い親戚の本名に行き着いた。私の祖父である越桐弥太郎のいとこが越桐信で,その娘が鈴木千恵子さんだ。そのファミリーだった。

1965年,小学校6年の夏休み,家族全員で東京旅行するという企画がもちあがった。妹が小学校4年と1年のころ。父にどこに行きたいか聞かれて,東京タワーと国立科学博物館をあげた。寝台列車で東京に向かい,ひとあたり東京の街を回って,大田区にあった鈴木千恵子さんのお宅に泊めてもらう。千恵子さんには息子と娘がいて,中学生と小学生だった。その妹の部屋で本を見せてもらったが,雨月物語があった。お兄ちゃん(=鈴木晶)と話した記憶はあまりない。

日本橋の白木屋デパートで食べた天ぷらそばがおいしくてびっくりしたこと,千恵子さんが予定になかった後楽園遊園地にいっしょに行こうと提案してくれて,乗り物が楽しかったこと,科学博物館のミイラには驚いたが,時間が足りなくて全館回りきれなくて残念だったことなどなど。

千恵子さんが旅行で金沢に来て家に泊まっていったこともある。お兄ちゃんは勉強がよくできて,東大に入ったいう話だったが,今では,舞踊評論家,舞踊史家,翻訳家として多くの著作がある有名な先生だった。

なお,一統さんの母上の越桐三枝子さんは俳人だ。


写真:後楽園遊園地のジェットコースター(東京ドームから引用)
(ジェットコースターには乗ってなかったかもしれないが・・・)

P. S. (2023-3-22)
妹に確認したところ,千恵子さんに連れていってもらった銀座の風月堂で食べたポタージュが忘れられないということだった。そういえば,そんな場面もあったかもしれない。そこから国電で鈴木家に向かったのだが,お兄ちゃんだけ私鉄で帰り,どちらが先につくかと競争していたらしい。なお,白木屋の天ぷらそばも後楽園も憶えていないらしい。

2022年6月20日月曜日

大阪博物場

 鐵腕 天野皎(あきら)からの続き

天野皎は,1885年から数年間,大阪博物場長と教育博物館長を勤めていた。その大阪博物場について調べてみようと思いながらもう1年半近くたってしまった。

大阪博物場は,1875年(明治8年)に設立された,博物館・美術館・商品陳列所・図書館・美術館を1ヶ所に併設した博物館群(テーマパーク)である。その後,組織や規模を縮小しながら,1945年の大阪大空襲まで70年近く存続していたようだ[1]。

その場所は,現在のマイドーム大阪のあたりである[2]。大阪教育大学のフォーマルな催し物でよく訪れたシティプラザ大阪の隣だ。毎年今ごろの季節には,田中俊哉先生+事務局メンバー達と帰りに立ち寄って水茄子を食べていたのは何の店だっただろうか。7-8年前のことなのにすっかり忘れてしまっている。google mapで探してもわからない。なくなったのか?

教育博物館という観点で,明治初期の中央教育博物館や地方教育博物館について調べた論文が,椎名さんの「教育博物館の成立」[3]である。1871年(明治4年),湯島聖堂に博物館が設置され紆余曲折を経て,1875(明治8年)に東京博物館となり,1877年(明治10年)に教育博物館として上野に設置される。現在の国立科学博物館の前身である。

このころ,京都博物館(1875),金沢博物館(1876),秋田博物館(1876),広島博物館(1877),開拓使札幌博物場(1877)などが誕生している。博覧会を媒介として教育博物館と殖産興業的な博物場のコンセプトがせめぎ合っていたが,地方では教育博物館が成立することはなかった。


図:府立大阪博物場案内図(MyDomeおおさかから引用)

[1]大阪博物場 −「楽園」の盛衰(後々田寿徳)
[2]府立大阪博物場「年表」(すくらんぶるアートビレッジ)
[3]教育博物館の成立(椎名仙卓)

2022年6月19日日曜日

ブラックホールシャドウ(2)

ブラックホールシャドウ(1)からの続き

2019年4月のEHTによるブラックホールシャドウのニュースは,ブラックホールの実在性を見える形で表現するエビデンスとして注目を集めた。2022年5月には,同じEHTグループにより天の河銀河中心のブラックホール いて座A*についても史上二番目の観測例として報道された。

ところで,2019年の段階でこの研究結果に対して疑問を呈している人がいた。国立天文台の三好真さんだ。銀河中心のブラックホールを発見したグループの一員であり,その結果は2020年のブラックホールに関するノーベル物理学賞でも紹介されている。彼が,2019年10月の段階で,M87星雲のブラックホールシャドウの結果に疑義を呈した。

詳細な論文である "The jet and resolved features of the central supermassive black hole of M 87 observed with EHT"が,The Astrophysical Journalにアクセプトされたとのことだ。牧野淳一郎さんも共著者に入っている。さてその結論は次のようなものだった(先月のニュース)。

(1) 中心核構造はリングではなく,コアとノットさらに第三成分がある。

(2) 有名な M87 ジェット構造は,230GHz 観測においても存在するが,その強度は中心核の強度に比 べて桁違いに弱い。

(3)  EHTC(the Event Horizon Telescope Collaborators )が報告した約40μasのリングは,データサンプリングのバイアスによる人為的な紛いものだとわかった。EHTのU-Vカバレッジは約 40 μas の空間フーリエ成分を欠き,約 40 μas のアーチファクト構造を生成している。

ようするに,注目を集めたM87ブラックホールシャドウのリング構造は間違ってるんじゃないのということだ。どうなることやら。

2022年6月18日土曜日

プリズムによる光の分散

授業の課題で次のような問題を出した。「三角プリズムに太陽光を入射させたとき,プリズムから2mの距離で光のスペクトルはどのくらいの幅に広がるか」。 もちろん,入射角やプリズムの種類で結果は変わるのだけれど,そのあたりも含めて考察せよというものだ。

自分でも考えてみる。可視光におけるプリズムの屈折率$n$の波長依存性は,[1]の上越教育大学の紀要を参考にすると,400nm(紫)から700nm(赤)の範囲で,フリントガラス:$n$=1.65〜1.61,クラウンガラス:$n$=1.535〜1.515くらいになる。なお,紫(380-430 nm),青(430-490 nm),緑(490-550 nm),黄(550-590 nm),橙(590-640 nm),赤(640-770 nm)である。

三角プリズムの底面に垂直に$x$軸をとり,図のように入射角,屈折角,出射角などを定義すると,出射する光線の$x$軸に対する傾き$a$が求まる。スリットを通してプリズムに入射する光の場合,再びプリズムから空気中にでる出射点の位置は分散で数mm程度ズレるかもしれないが,2m先のスペクトルの位置は基本的に光線の傾き$a$で決まる。

図:プリズムによる光の分散

図より,$a = \tan \bigl[\dfrac{\pi}{3} - \sin^{-1}\bigr\{ n \sin \bigl(\dfrac{\pi}{3} - \sin^{-1}\dfrac{\sin \alpha}{n}\bigr)\bigl\}\bigr]$である。これを使って,Mathematicaでスペクトルの分散幅を計算する。ただし,入射角は0.9 rad とした。

f[n_, t_] := Tan[Pi/3 - ArcSin[n Sin[Pi/3 - ArcSin[Sin[t]/n]]]];
g1 = Plot[Table[f[1.605 + 0.01 k, t], {k, 1, 5}], {t, Pi/4, Pi/3}, PlotRange -> {-0.2, 0.3}];
g2 = Plot[Table[f[1.51 + 0.005 k, t], {k, 1, 4}], {t, Pi/4, Pi/3}, PlotRange -> {-0.2, 0.3}];
Show[g1, g2]
200*Table[f[1.605 + 0.01 k, 0.9], {k, 1, 5}]
{13.1215, 9.49956, 5.78634, 1.96916, -1.96692}
200*Table[f[1.51 + 0.005 k, 0.9], {k, 1, 4}]
{46.1667, 44.6014, 43.0304, 41.4533}

図:出射方向aの入射角依存性と波長依存性

結局,入射角が 51.6度(0.9ラジアン)として,プリズムから2m先の位置では,フリントガラスで15cm程度,クラウンガラスで5cm程度に可視光スペクトルが広がる。

[1]屈折率の波長依存性の簡易測定(西山保子・上田淳一)

2022年6月17日金曜日

実効為替レート

円安が進んでいる。Apple製品が高くなるだけならよいが(あんまりよくないけど),食糧・エネルギーなどから生活全体への更なる影響が心配だ。その一方で,他の国々とは異なり年金支給額は自公政権のおかげもあって,きっちり0.4%減額された。

NHKニュースでは20年ぶりの円安という表現になっているが,実質実効為替レートを考えると,50年ぶりの円の価値下落ではないかという記事があった。国際決済銀行(BIS)のサイトに1965年から現在までの主要国の実質実効為替レートの月次データがあったので,1970年から2021年までの1年間移動平均のグラフを作って見た。

実質実効為替レートは,貿易量などをもとにさまざまな国の通貨の価値を計算し、物価変動も加味して調整した数値である。高いほど対外的な購買力があり、海外製品を割安に購入できることを示す。


図:実質実効為替レート(1970-2021)

グラフ右端の最近の値は,アメリカ合衆国(青)>韓国>英国>EU>日本(赤)の順になっている。2010年を100としてそろえてあり,y軸の値が大きな方が通貨価値が高い。日本は1990年代中ごろをピークとして今では1970年代の水準にまで下がっている。韓国は2008-2009年の通貨危機で90ポイントまで下がったが,今では合衆国につぐ高い水準で推移している。


2022年6月16日木曜日

浄瑠璃坂の仇討

 初夢の一富士二鷹三茄子でおなじみの日本三大仇討ちのうちのひとつ,曾我兄弟の仇討ちが前回の鎌倉殿の13人のテーマだった。大掛かりなロケ映像もあってなかなかよかったけれど,三谷幸喜のストーリーによれば,これは仇討ちではなくて,源頼朝に対する謀反の話だった。

浄瑠璃のテーマとして,完全に定着している曾我物なので,いまさら違いましたといわれても困るのだった。まあ,曾我兄弟の仇討ち(1193)は12世紀末であり,赤穂浪士の討ち入り(1703)や鍵屋の辻の決闘(1634)は,江戸時代なので,この際,浄瑠璃坂の仇討(1672)を加えた江戸時代の三大仇討ちを復活させるほうがよいのかもしれない。初夢は,一鷹二茄子三浄瑠璃になるのだろうか。

浄瑠璃坂の仇討ちなんてまったく聞いたこともなかったが,宇都宮藩の内輪の刃傷沙汰が原因で40名を越える討ち入りに至るという,赤穂浪士の討ち入りの前哨戦のような話だった。なお,浄瑠璃坂は,被害者となる奥平隼人が身をよせた戸田屋敷の場所であり,江戸の市谷(現在の新宿区鷹匠町)にある。


写真:2017年の浄瑠璃坂(Wikipedikaから引用)

[1]浄瑠璃坂の討入り|竹田真砂子(てくてく神楽坂)

2022年6月15日水曜日

熊ノ郷準

 日経朝刊の交遊抄に阪大医学部長の熊ノ郷淳(1966-)さんが,阪大医学部の1年後輩の竹田潔さん(阪大免疫学フロンティア研究センター拠点長,審良静男の弟子)との関係について書いていた。

熊ノ郷というのは珍しい名前だけれど,和歌山にルーツがあるらしい。たぶん阪大理学部数学科の教授だった熊ノ郷準(1935-1982)と関係があるのではと調べると,Web上にご本人の記事があった。やはり熊ノ郷淳は,熊ノ郷準先生の息子だった。

淳さんが中学3年のときに,父に脳腫瘍がみつかり1年の闘病生活の後に若くして亡くなっている。それが契機となって,大阪教育大学附属高校池田校舎から阪大医学部に進学する。最初は脳神経外科医を目指していたのだが,適性がないことに気付いて岸本忠三(1939-)の下で免疫学の研究に進んだ,というようなことが書かれていた。

学部のころ,豊中キャンパスの生協の書棚に,岩波書店から出版されていた熊ノ郷準の「擬微分作用素」をみかけた。例の薄いけれど高い本のシリーズだ。阪大理学部の廊下でご本人のお顔を見たこともあると思う。大学院を修了してから,森田研究室のセミナーに通っていたころ,理学部の掲示板に,熊ノ郷先生が亡くなられた(47歳だった)ので御遺児のための奨学金を募りますという張り紙があったのが強く印象に残っている。


2022年6月14日火曜日

SDGs

 京阪奈三教育大学の連携が追求されていた10年前,奈良教育大学の特徴的な活動として,ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)という言葉を聞いたのが,SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)への最初の接触だった。

その当時は,まったくピンと来なくて,この人達は何を目指しているのだろうか?状態だった。いまでも奈良教育大学の活動は続いている。2022年4月1日から,奈良教育大学ESD・SDGsセンターが設置され,6月26日には設立記念シンポジウムが開催される。

その後,SDGsという言葉をしばしば耳にするようになったがまじめに調べてはいなかった。3-4年前の日本経済新聞の正月版別刷にSDGsの17の目標が詳しく説明されているのを読んで,初めて得心が行った。なんだかいいこと書いてあるじゃないのというわけだ。

ところがその後,SDGsの旗ががあちらでもこちらでも振られるのに,微妙な違和感を感じるようになった。結局,資本主義の延命策を国連の名のもとで宣伝しているだけではないのか。その証拠に,投資会社が率先して,SDGsの双子の兄弟であるESG(Environmental, Social, and Corporate Governance)を売り込んでいる。

このSDGsの流行は実は日本固有の現象ではないのかと,萩原雅之さんが数日前にFacebookで指摘していた。Google Trendsを使って,あるキーワードの検索数を国別・年度別に傾向分析することができる。その結果,SDGsというキーワードは日本で突出して多く調べられていることがわかった。アフリカ諸国がそれに次ぐのだが,欧米ではかなり少ないのだった。


図:SDGsの検索傾向と国別比較

[1]マネジメントファッションにおけるマスメディアの役割 : SDGsを事例として(八塩圭子)

2022年6月13日月曜日

典型的な状態(2)

典型的な状態というのは,統計力学の基礎となる,$N$粒子系の相空間(Γ空間)の点=微視的状態の部分集合である。その微視的状態の数を評価してみる。

簡単のため,常温(300K)の気体分子(窒素分子)を1Lの容器に入れたものを例にとる。$N=1$として,3自由度=6次元の相空間の体積要素は,プランク定数を$h$として,$h^3$になる。ここでは,1自由度だけ取り出して,2次元相空間の体積要素がどんな値なのかを考える。

プランク定数は,$h = 6.6 \times 10^{-34} {\rm \  [J \cdot s]} = 6.6 \times 10^{-34} {\rm \  [kg \cdot m^2 / s ]}$,ボルツマン定数は,$k_B=1.4 \times 10^{-23} {\rm \ [J/K]}$とする。窒素分子の質量は,$m=\frac{28 \times 10^{-3} {\rm \  [kg]}}{6.0 \times 10^23 {\rm \  [/mol]}}$,その平均速度は,$\bar{v}=\sqrt{\frac{3 k_B T}{m}}=\sqrt{\frac{3 R T}{M} }= 5.2 \times 10^2 {\rm \ [m/s]}$

プランク定数を,窒素分子の質量で割ると,相空間の体積要素の換算値$\tilde{h}$が長さと速度の積として表わされ,$\tilde{h}=1.4 \times 10^{-8} {\rm \ [m \cdot m/s]}$である。ここで,箱のサイズが$L=0.1 {\rm \ [m]}$,窒素分子の速度の最大値が$\ v_{\rm max} =3  \times 10^3 {\rm \ [m/s]} \ $のオーダーとして,その積は,$L \cdot v_{\rm max} = 3 \times 10^2 {\rm \ [m \cdot m / s]}= 2 \times 10^{10} \ \tilde{h}\ $となる。

そこで,箱のサイズと速度の最大値をほぼ均等に10万($10^5$)分割すれば,相空間の体積要素は,$10^{-6} {\rm \ [m]} \times 3 \times10^{-2} {\rm \ [m/s]}\ $となる。つまり,相空間の各次元を10万分割してつくる体積要素=セルを単位として,微視的な状態数(総セル数)を勘定することになる。

$N$粒子系の相空間は,$6N$次元空間であり,$N \sim 3 \times 10^{22}$として,総セル数は $\bigl( 10^5 \bigr) ^{10^{23}}$ のオーダーとなる。とにかく多いのだけれど,計算した意味はあまりなかった。

2022年6月12日日曜日

典型的な状態(1)

阪大の菊池誠さんの統計力学の講義がYouTubeで公開されている。

「メルトダウンじゃないだす」とか「甲状腺検査は人権侵害」とか「おしどりマコいじめ」など,Twitterではさんざん物議を醸して,なんだかなぁ・・・なのだけれど,物理の講義はおもしろくてわかりやすい。そのもとになっている講義ノート「統計力学のはじめの一歩」もよい。

その講義では,統計力学の概念的な出発点として,典型的な状態(Typical States)の考え方を採用している。これは田崎晴明さんの培風館「統計力学I」や菊池さんの弟子の湯川諭さんによる日本評論社「統計力学」などのモダンな教科書で強調されている考え方だ。湯川さんの教科書も最近たまたま本屋(理工系書籍の品揃えと配列が最低のツタヤ・・・)でみつけて買ったところだった。

我々が学んだ50年前もそうだったが,20世紀の古い統計力学の教科書では,エルゴード原理によって物理量の時間平均が相空間平均(=集団平均)に一致する(はず(らしい))というのが教科書の定番のイントロの記述であり,まあそんなものかと深く考えずに本論に進むのが常だった。

エルゴード原理を基礎とする考え方は,状態数が膨大なために時間平均の時間があっという間に宇宙年齢を超えるオーダになることで否定され,そのかわりとなる論理が要求された。そこで導入されるのが典型的な状態なのだが,この説明がわかったような,わからないような,古い頭ではなかなか飲み込めない。田崎さんの本によれば次のようになっている。

マクロな系の基本的性質:マクロな量子系では,ある平衡状態に対応する「許される量子状態」のほとんど全てが(マクロな物理量の測定値で比較するかぎり)ほとんど区別できない。

平衡状態についての基本的仮定:ある系での(熱力学でいうところの)平衡状態の様々な性質は,対応する「許される量子状態」の中の「典型的な状態」が共通に持っている性質に他ならない。

これは「許される量子状態」と「典型的な状態」は別であるということを主張している。許される量子状態は,マクロな内部エネルギーUが再現される状態(およびその重ね合わせ状態)の集合であり,内部エネルギー以外のマクロ変数の値が再現されるとは主張していないことになる。一方,「典型的な状態」は,「許される量子状態」のうち,系のひとつの巨視的な熱平衡状態とすべてのマクロ変数の組の値が一致する微視的状態の集合ということか。

で,許される状態のうち,ほとんど全てが典型的な状態であるという主張が,マクロ系の基本的性質として主張されていることになる。うーむ,少なくともどの程度のオーダーかという例を簡単なモデルでいいから見せてほしいところだ。

2022年6月11日土曜日

喫水18m

数日前にTwitterで@miyapii8844 さんが次のように書いていた。

現在世界の造船は水深18m以上の大型船を量産体制に入っています。夢洲のC-10~11は水深15m,C-12は16m,咲洲地区では14m以下しかありません。因みに神戸では15~16mです。
このままでは大型船が入港出来なくなり,その際は一番水深の深い横浜で対応して日本各地に回漕させるか、外地で小型船に移し変えて日本に入港させるかしか出来なくなります。夢洲はIR誘致よりも,水深工事をしなければ,このままでは日本は抜港という事態になり,運送費が跳ね上がる事が予想されます。
水深○○mというのは喫水○○mを可能とする接岸埠頭の水深という意味だろうか。土木学会による日本のインフラの体力診断(港湾)をみると,現状についてはほぼ正しい主張であることがわかる。それから導かれる結論や,その前提となる他の条件までは判断ができない。

無駄な東京五輪2020や大阪万博2025,大量の電力を消費するリニア中央新幹線,さらにはGDPの2%を目指す防衛費など,わけがわからないところに利権まみれのお金を湯水のようにつぎ込もうとしている。だが,肝腎のところはほったらかし,改憲=人権抑圧+軍拡をおもちゃに遊んでいるようにみえるのが自民・公明・維新だが,支持率は高い。

参議院選挙のテーマとして掲げてほしいのは,世襲政治+新自由主義からの脱却を前提に,
(1)少子化と地域過疎化への対応
(2)エネルギー・食糧の革新と確保
(3)社会インフラの更新と維持
などが思いつくのだけれど,課題が生ずるたびに,教育とイノベーションが重要だという話になって,現在の教育研究システムを毀損する新制度ばかりを山のように積み重ねている。


図:コンテナ船の大型化と最大水深岸壁(国土交通省港湾局資料から引用)


2022年6月10日金曜日

惑星直列

 太陽系の地球を除く惑星を一直線上に隙間なく並べると,ちょうど地球−月の距離と等しくなるという話を見かけたので確かめてみた。

地球を除く7惑星の直径 [km] は,{水星,金星,火星,木星,土星,天王星,海王星}={4879.4, 12103.6, 6794.4, 142984.0, 120536.0, 51118.0, 49528.0}となる。また,地球−月の平均公転半径 [km]は,388440.0 である。

Mathematicaで次のコードを実行する。

d = {4879.4, 12103.6, 6794.4, 142984.0, 120536.0, 51118.0, 49528.0}
r = Table[Sum[d[[i]], {i, 1, k}] - d[[k]]/2, {k, 1, 7}]
g1 = Graphics[{Circle[{384400/2, 0}, 384400/2, {11 Pi/12, 13 Pi/12}], 
   Circle[{384400/2, 0}, 384400/2, {-Pi/12, Pi/12}]}]
g2 = Graphics[Table[Circle[{r[[k]], 0}, d[[k]]/2], {k, 1, 7}]]
g3 = Graphics[Table[Circle[{r[[k]] - d[[1]], 0}, d[[k]]/2], {k, 2, 7}]]
Show[g1,g2]
Show[g1,g3]
水星をふくめると公転半径から少しはみ出すが,水星を除けばすっぽりとおさまった。



図:地球−月の公転軌道半径と7惑星の直列配置

2022年6月9日木曜日

アルゼンチンアリ

 先日のクローズアップ現代で,「静かなる侵略者“史上最強”アルゼンチンアリとの攻防」をやっていて,これは大変だ!と思った。

アルゼンチンアリは,南米原産の特定外来生物であり,日本で大繁殖しているとして,大阪空港や周辺の住宅地での調査や防護の様子が紹介されていた。生態系を破壊し農作物にも被害を与えるのは,複数の女王蟻を擁し,スーパーコロニーという巨大な地下ネットワークを作るからだ。国立環境研究所の五箇公一生態リスク評価・対策研究室がロックなヘアースタイルで説明していた。

ところで,この番組内容をどのくらいの重みで受け止めるべきなのだろうか。一般に放送番組は,その内容を強調して印象を強めるように作られている。放送直後の,これは大変だ!はどこまで尤もな話と考えればよいのか。念のために確認してみる。

環境省の生態系被害防止外来種リストのパンフレットをみると,全体像とアルゼンチンアリの位置づけがわかる。外来種リストには,421種が登録されている。そのうち,外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)で定義される特定外来生物であり,かつ緊急対策外来種であるものは,ほ乳類8種,鳥類1種,爬虫類4種,両生類1種,魚類4種,昆虫類3種(アルゼンチンアリも含む),クモ・サソリ類3種,軟体動物1種,その他の無脊椎動物1種,草本植物(陸生植物)4種,草本植物(水生植物)9種の計38種である。

また,防除に関する手引きが作られているのは,アメリカザリガニ,アカミミガメ,アライグマ,カミツキガメ,オオクチバス,アルゼンチンアリの6種なのでそれなりに重要視されていることは間違いなかった。


図:アルゼンチンアリ(防除の手引きより引用, 実サイズは体長2.5mmで小さい)

[1]我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト

2022年6月8日水曜日

科学映像館

1960年代を中心として,日本では数多くの良質の科学映画が制作された。それらをデジタル化して保存・公開することを目的としたのが「NPO法人科学映像館を支える会」であり,科学映像館のサイトや,YouTubeチャンネルで700本以上の科学映画が配信されている。

本部は,埼玉県にあり,埼玉県の歯科医師協会が協力していることもあって,撤去冠の寄付を受け付けている。ジャンルとしては,幅広いものであり,教育,自然,動物,植物,生命科学,消化器・循環器・呼吸器系,骨,皮膚,医学・医療,食品科学,工業・産業,農業・漁業・暮らし,社会,芸術・祭り・神事・体育となっている。

科学映画といえば,国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が運用しているサイエンスポータルの中のサイエンスチャンネルも科学映画や短い動画クリップを扱っている。YouTubeのチャンネルには,1700本くらいのコンテンツがある。

2000年度の卒業論文で,「物理教育動画データベースの構築」というタイトルで物理実験のビデオクリップのウェブサイトを作ってもらった。当時は類似のデジタルコンテンツはごく限られていた。ユーザ側の負荷を考えて,かなり品質を落とした動画をアップロードしていた。その後YouTubeが2005年にスタートし,20年後の今は,質はともかく大量のコンテンツがあふれている。それが子供たちの学びにつながるかどうかはまた別の話となる。

[1]科学映画の一考察(中谷宇吉郎)

[2]科学映像を守る 記録映画の保存と活用(久米川正好)


2022年6月7日火曜日

WWDC22

奈良盆地の田植えがはじまると,アップルの開発者カンファレンスWWDC(World Wide Developers Conference)の季節がやってくる。WWDC22のキーノートが日本時間6/7の午前2時から2時間弱あった。もちろん熟睡中である。朝起きてから評判をざっとみると,イマイチ大きなニュースがなかったようだった。

早速,Appleのサイトでキーノートの録画をみる。今回は屋外でのApple Park 内のライブビューイングだった。現地ではTim CookCraig Federighiの登壇あったが,ライブビューの様子が見えない編集動画を公開していた。印象に残ったのは,カプコン伊集院勝さんが登場したところ。バイオハザードビレッジがApple Siliconに対応したので,もうゲーミングPCでなくてよいという話を日本語でしていた。これは珍しいシーンだ。

ハードウェアは,Macbook Air M2とMacbook Pro M2 13inchの2つが軽く紹介されていた。昨年4月に買ったMacbook Air M1 は CPU/GPU=8/8,Memory/Storage=16G/1T で21.5万円,同じスペックのMacbook Air M2は,CPU/GPU=8/8,Mamoru/Storage=16G/1Tで 26.5万円(注:34.5万円 = 10/8,24G/2T)なので,5万円アップだ。為替レートが130円/$の効果もあって,5万円高くなる。

その5万円で手に入るのは,M2チップ(+20%処理性能),新デザイン(軽量・薄型・スクェア・新色),FaceTimeカメラ 720p→1080p,3.5mm ヘッドホンジャック→ハイインピーダンス,スピーカー→×4,MagSafeポート追加,ディスプレイ→LiquidRetina + 500ニト + 13.6 inchなので,微妙。

iOS16やiPadOS16やmacOS Ventura に至っては,ほとんどどうでもいいような細かな機能を,大げさに宣伝しているので,ちょっとうんざりしてしまう。その中で気になったのが,Dictation(日本語は大丈夫なのか)と,iPadOSとmacOSのシームレスな運用を実現するステージマネージャーくらいか。

iPhoneSE第2世代はぎりぎりiOS16に対応したが,次はどうかわからない。iPad ProもiPadOS16をクリアできた。Macbook Air M1 はもうしばらくいけるだろう。ということで,今回も前回に続いていまひとつ盛り上がりに欠けるWWDCだった。

今回の印象でもっとも大きかったは円が弱いことだ。30-40%程度の貨幣価値の違いはボディーブローのように日本の消費者やAppleユーザを毀損している。まさに後進国化のはじまりだ。

2022年6月6日月曜日

図書館API

国立国会図書館の実験的なサービスに関係した資料を探していると,図書館APIの記事が見つかった。国立情報学研究所教育研修事業 「大学図書館員のための IT 総合研修」2020 年度「Web API を使ったデータの入手とその整備講義資料で,東京大学情報システム部の前田朗さんによるものだ。

国立国会図書館カーリルCiNii,その他数多の例が挙げられている。例えば,国立国会図書館では,NDC Predictorだけでなく,検索用APIと書影APIがある。カーリルでは,蔵書検索APIと近隣の図書館情報APIが提供されている。ただし,その利用にはアプリケーションキーの取得が必要な場合もある。

 

写真:国立国会図書館の書影APIの見本(APIで埋め込み)

もう少し若かったら,卒業研究で学校APIを作ってもらっていたかもしれない。よく考えて設計を始めないと,単なる検索とどう違うのかという突っ込みだらけになりそうだ。

[1]図書館におけるAPIの公開 −PORTAの事例から−(中嶋晋平)

2022年6月5日日曜日

NDC Predictor

国立国会図書館NDLラボが提供している実験的サービスの一つに,NDC Predictorがある。これは,機械学習による日本十進分類の推測アプリであり,テキストエリアに貼り付けられた書誌情報から日本十進分類(NDC9版)を推測する。

日本十進分類法の最新版は,2014年に改訂された新訂10版である。書籍で2分冊800pからなるが,ネット上の関連資料としては,日本図書館協会NDC10による分類記号順標目表や国立国会図書館 の「日本十進分類法(NDC)新訂 10 版」 分類基準がある。

実際の分類には熟練の技が必要かもしれないので,タイトルや著者や出版者などのざっくりした書誌情報で他のテキストが混ざっていても,第一から第三候補まで推測してくれるのであれば,それはそれで有難そうだ。

さっそく,試してみるが,書名と著者名で検索したところ,「統計力学 著者」は,第一候補が90%以上の確率で421/理論物理学,第二候補が1%以内の確率で426/熱力学となった。各著者の第一候補の確率は,久保亮五が99.9%,鈴木増雄99.8%,田崎晴明99.5%,長岡洋介99.2%,北原和夫・杉山忠男98.8%,湯川諭92.3%となった。稲葉肇の統計力学の形成は,91.9%だった。

REST-APIもオープンになっているので,PCからコマンド入力によって結果を機械可読な形式で取り出すこともできる。早速試してみる。APIというとHTTP-APIのGETしか使ったことがない。4回生の2009年の卒業研究でGoogleMap-APIを使って,自然観察の理科ノートを地図上に貼り付けて時空間の変化を調べようというものだった。

今回は,HTTP-POSTを使うので普通のブラウザではアクセスできない。どうするのかと思ったら,curl コマンドを使えばよいということがわかった。具体的には次のようにする。

curl -XPOST "https://lab.ndl.go.jp/ndc/api/predict" --data "bib=統計力学 久保亮五" 

予測に使う文字列は,1000文字以内であり,bib=の後にいれればよい。出力は,JSON形式となり,[ { "value":"推測されたNDCの値, "label":"推測されたNDCのラベル", "score":"推測の確信度(0-1)" }, {第二候補}, {第三候補} ],のようになる。上の例ではつぎのとおり。

[{"value":"421","label":"理論物理学","score":0.9997790320037916},{"value":"426","label":"熱学","score":2.3498150212228626E-4},{"value":"429","label":"原子物理学","score":1.2803195946766326E-5}]

lynxコマンドでも大丈夫かを確かめたところ,標準入力からデータと終了記号をいれてOK。

lynx https://lab.ndl.go.jp/ndc/api/predict -post_data
bib=統計力学 久保亮五
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[1]開発者のための日本十進分類法

[2]NDCデータ(日本図書館協会)