ブラックホールシャドウ(1)からの続き
2019年4月のEHTによるブラックホールシャドウのニュースは,ブラックホールの実在性を見える形で表現するエビデンスとして注目を集めた。2022年5月には,同じEHTグループにより天の河銀河中心のブラックホール いて座A*についても史上二番目の観測例として報道された。
ところで,2019年の段階でこの研究結果に対して疑問を呈している人がいた。国立天文台の三好真さんだ。銀河中心のブラックホールを発見したグループの一員であり,その結果は2020年のブラックホールに関するノーベル物理学賞でも紹介されている。彼が,2019年10月の段階で,M87星雲のブラックホールシャドウの結果に疑義を呈した。
詳細な論文である "The jet and resolved features of the central supermassive black hole of M 87 observed with EHT"が,The Astrophysical Journalにアクセプトされたとのことだ。牧野淳一郎さんも共著者に入っている。さてその結論は次のようなものだった(先月のニュース)。
(1) 中心核構造はリングではなく,コアとノットさらに第三成分がある。
(2) 有名な M87 ジェット構造は,230GHz 観測においても存在するが,その強度は中心核の強度に比 べて桁違いに弱い。
(3) EHTC(the Event Horizon Telescope Collaborators )が報告した約40μasのリングは,データサンプリングのバイアスによる人為的な紛いものだとわかった。EHTのU-Vカバレッジは約 40 μas の空間フーリエ成分を欠き,約 40 μas のアーチファクト構造を生成している。
ようするに,注目を集めたM87ブラックホールシャドウのリング構造は間違ってるんじゃないのということだ。どうなることやら。
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