2022年6月13日月曜日

典型的な状態(2)

典型的な状態というのは,統計力学の基礎となる,$N$粒子系の相空間(Γ空間)の点=微視的状態の部分集合である。その微視的状態の数を評価してみる。

簡単のため,常温(300K)の気体分子(窒素分子)を1Lの容器に入れたものを例にとる。$N=1$として,3自由度=6次元の相空間の体積要素は,プランク定数を$h$として,$h^3$になる。ここでは,1自由度だけ取り出して,2次元相空間の体積要素がどんな値なのかを考える。

プランク定数は,$h = 6.6 \times 10^{-34} {\rm \  [J \cdot s]} = 6.6 \times 10^{-34} {\rm \  [kg \cdot m^2 / s ]}$,ボルツマン定数は,$k_B=1.4 \times 10^{-23} {\rm \ [J/K]}$とする。窒素分子の質量は,$m=\frac{28 \times 10^{-3} {\rm \  [kg]}}{6.0 \times 10^23 {\rm \  [/mol]}}$,その平均速度は,$\bar{v}=\sqrt{\frac{3 k_B T}{m}}=\sqrt{\frac{3 R T}{M} }= 5.2 \times 10^2 {\rm \ [m/s]}$

プランク定数を,窒素分子の質量で割ると,相空間の体積要素の換算値$\tilde{h}$が長さと速度の積として表わされ,$\tilde{h}=1.4 \times 10^{-8} {\rm \ [m \cdot m/s]}$である。ここで,箱のサイズが$L=0.1 {\rm \ [m]}$,窒素分子の速度の最大値が$\ v_{\rm max} =3  \times 10^3 {\rm \ [m/s]} \ $のオーダーとして,その積は,$L \cdot v_{\rm max} = 3 \times 10^2 {\rm \ [m \cdot m / s]}= 2 \times 10^{10} \ \tilde{h}\ $となる。

そこで,箱のサイズと速度の最大値をほぼ均等に10万($10^5$)分割すれば,相空間の体積要素は,$10^{-6} {\rm \ [m]} \times 3 \times10^{-2} {\rm \ [m/s]}\ $となる。つまり,相空間の各次元を10万分割してつくる体積要素=セルを単位として,微視的な状態数(総セル数)を勘定することになる。

$N$粒子系の相空間は,$6N$次元空間であり,$N \sim 3 \times 10^{22}$として,総セル数は $\bigl( 10^5 \bigr) ^{10^{23}}$ のオーダーとなる。とにかく多いのだけれど,計算した意味はあまりなかった。

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