2021年12月10日金曜日

夏井いつき

 NHKのプロフェッショナル仕事の流儀夏井いつきをやっていた。なんだかんだって,結局民放(BSを除く)はほとんど見ずに,NHKばかり見ている。NHKがおかしくなっているのはニュースや報道番組なので,それ以外はEテレ含めて受信料を払う価値があるものも多い。

ただ,科学報道番組だからといっても安心はできない。マスメディアの機能とは本質的に情報の増幅作用(煽り)に過ぎないからだ。科学的な根拠や正確性や客観性やバランスよりも,いかに耳目を集めるか,情報量としてのニュース価値が優先された構成になってしまう。温暖化問題しかり,コロナ問題しかり。それが,ニュース報道系では中立性という幻想のもとに,ジャーナリスティックな批判色が抜けてしまい,単なる政府与党の主張の広報宣伝機能に終始することになってしまった。

話がそれた。夏井いつきは,毎日放送のプレバトで出演者の芸能人が作る俳句を辛口に添削することで一躍有名になったようだが,そもそもこの番組は一度も見たことがない。ただ,NHKの俳句番組にもたまに出てきて,同じような俳句批評をするのを見たことがあったので,面白いというのは理解できる。

そこで,YouTubeの夏井いつき俳句チャンネルで勉強することにしたら,最初からとてもためになるではありませんか。五・七・五の正しい数え方というタイトルで,「チューリップ」を理解すれば良いというのが結論だった。拗音(ゃゅょ)を含む音・促音(っ)・長音(ー)・撥音(ん)はそれぞれ一音と数えるということだ。したがって,「チュ・ー・リ・ッ・プ」は五音になる。

2021年12月9日木曜日

女系家族

 しばらく前に,映画版の女系家族(大映 1963)をみたが,最近テレビ朝日で二夜連続のドラマスペシャルで女系家族(2時間×2)をやっていた。

山崎豊子(1924-2013)の原作で,大阪船場の商店の婿養子の旦那が亡くなった後の遺産相続を巡るややこしい話だ。新しいテレビドラマの方も,宮沢りえと寺島しのぶががんばっていたけれど,何といっても昔の映画は,当時の時代の空気が感じられておもしろい。

番頭役の中村鴈治郎(二代目)のいやらしい目とか,主人公三人姉妹の叔母役の浪花千栄子の雰囲気がたまりませんね。ストーリー展開はほとんど(多分原作通りなのだろう)同じだった。二号さん役は,宮沢りえの方が若尾文子より,途中からの変貌ぶりがきわだっていたかもしれない。

2021年12月8日水曜日

日米開戦80周年

日米開戦80周年を迎えるが, 日中開戦90周年満州事変 1931.9.18)ではないのか。インターネットで検索しても前者は35件,後者は1件しか見つからない。岩波新書の日本の歴史(井上清)で,15年戦争というコンセプトを学んだような気がしていたが(日中15年戦争と読んだ),そんな章や節の題目はなかった。またもや自分の記憶が溶けているのかもしれない。

2019年12月8日に「真珠湾攻撃から77年」の記事でこのブログをスタートしてから3周年を迎えた。その1周年は「12月8日(Blogger 1周年)」であり,この時の全期間ページビュー(PV)は4867だった。統計情報によれば,現在の全期間PVが23363,過去12ヶ月PVが1.31万である。ということで,2019年:0.49万PV=13pv/d,2020年:1.42万PV=39pv/d,2021年:1.31万PV=36pv/dとなる。昨年は,コロナ感染症の話題で盛り上がっていたので,こんな結果になった。

これまでの全期間アクセスランキングでも,(1)「オーバーシュート」の見分け方(2020.4.2, 1798 PV),(2) 各国の感染者比(1)(2020.3.10, 1204 PV),(3) 感染症の数理シミュレーション(2)(2020.2.25, 1068 PV),(4) 児童生徒の自殺(2019.10.19, 779 PV),(5) 感染症の数理シミュレーション(1)(2020.2.24, 344 PV)となっている。

また,コロナの話題が落ち着いてしまった過去12ヶ月間のアクセスランキングでは,(1)「オーバーシュート」の見分け方(2020.4.2,  277 PV),(2) ab+bc+cd=n(2020.1.13,  88 PV),(3) 教育ビッグデータ(2)(2019.6.27,  77 PV),(4) TikZの円弧(2021.3.12,  63 PV),(5) 都道府県人口当たりのCOVID-19(3)(2021.3.19,  56 PV)であった。

新しい記事一本を投稿した直後の平均PV(7pv/d)の5倍程度の全PV(35pd/d)が1日にあるので,過去の記事がごくわずかづつでも参照されていることになる。さて,親戚縁者以外の誰がどこからアクセスしているのだろうか?(Twitterに放流すると,面白ければPVを10-20くらい稼げることは分かっている)


図:koshix.blogspot.com のページビュー(全期間)

15年という短いスパンで,国家は簡単に滅びてしまう。仮に平均寿命まで生きたとしても,あと12年,こんな風にブログを書き続けることができるのだろうか。


[1]日中戦争(1931-1937-1945)1937.9 支那事変閣議決定
[2]第二次世界大戦(1939-1945)1939.8 独ソ不可侵条約・1939.9 ポーランド侵攻
[3]太平洋戦争(1941-1945)1941.12.8 米國及英國ニ對スル宣戰ノ詔書
[4]大東亜戦争(1941-1945)1941.12.10 大本営政府連絡会議,12.12 閣議決定

2021年12月7日火曜日

インフルエンザの予防接種

 天理市からインフルエンザの予防接種の案内があったので(個別ではなくて広報誌なのだが),しばらく前に予約していたら,間の悪い事に久々の雨降りの午後が予約と重なってしまった。仕方がないので,車で天理市メディカルセンターに向かった。

これは高齢者(65歳以上)向けに,インフルエンザ予防接種の助成をするもので,2021年10月1日から2022年1月31日迄の期間,1500円で1回接種できるというものだ。

予約した1時30分の30分前にセンターに着いたが,もう15名くらいが椅子に座って待っている。体温を測って問診票を受付に出すと14番の書類が渡された。時間が来たらスイスイと接種が終了していく。これも痛くはありませんでした。

次は,コロナワクチンの3回目で,こちらの方は12月接種券配布,1月予約,2月接種というスケジュールになりそうだ。

2021年12月6日月曜日

宣伝大臣ゲッベルス

NHK映像の世紀プレミアムの第18集が「ナチス狂気の集団」だった。国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)は1919年にその前身が,反ユダヤ主義・社会主義・右翼の性格を持ったミュンヘンの酒場の鉄道員の集まりから始まっている。ヒトラーはその年に入党し,1920年にナチスと改名してハーケンクロイツをシンボルにしたころには主要なメンバーとなり,1921年には党首(総統)になっている。

その後,クーデター未遂事件のミュンヘン一揆(1923.11.8-9)を経て,1928年には初めて12名の国会議員を送り出し,世界大恐慌の中で党勢を拡大し,1930年には107名が当選して第2党に躍進する。1932年には第1党の座を確保し,1933年1月にヒトラーが首相に就任する。

1933年2月にはドイツ国会議事堂放火事件が起こって共産主義者がスケープゴートとされ,同3月には全権委任法が成立して,立法権が国会から一党独裁のナチス政府に移ってしまう。あっというまですね。日本の改憲勢力もその類似物を目指していると疑われても仕方がない。

1934年の長いナイフの夜で,政敵である突撃隊のレームを粛清し,1938年の水晶の夜で,反ユダヤ主義暴動によるユダヤ人の迫害がピークに達して,その後ヒムラーが主導したホロコーストへの扉が開かれる。1939年9月には,ドイツのポーランド侵攻により第二次世界大戦の火蓋が切られた。

これらの流れをドイツ国民の多くは支持したが,そこには,1933年に設置された国民啓蒙・宣伝省を使って,知識人であったゲッベルス宣伝大臣(ではなくてだった)が繰り広げたプロパガンダ国民ラジオ)が非常に重要な役割を果たしている。

振り返って現在の日本では,宣伝省を作るまでもなく,電通とその傘下のマスメディアが,自ら進んで権力への忖度に勤しんでいる。発祥の地のミュンヘンならぬ大阪でもテレビ新聞が総動員で大阪維新を宣伝し,日本共産党をディスり,民族差別を煽るタレント(大阪府知事を含む)を重宝しているのであった。

そんなことは考えていなかったが,92歳まで生きると1945年8月15日から100周年ということになる。1941年12月8日だと88歳,1937年7月7日だと84歳,1931年9月18日だと78歳。歴史は繰り返すのか?
ヘルマン・ゲーリング(1893-1946.10.15)国家元帥
ルドルフ・ヘス(1894-1987.8.17)ナチス総統代理
エルンスト・レーム(1887-1934.7.1)突撃隊幕僚長
ヨーゼフ・ゲッベルス(1897-1945.5.1)宣伝大臣
アドルフ・ヒトラー(1889-1945.4.30)ドイツ国総統(指導者兼首相)
ハインリヒ・ヒムラー(1900-1945.5.23)親衛隊全国指導者・全ドイツ警察長官
アドルフ・アイヒマン(1906-1962.6.1)親衛隊・ゲシュタポユダヤ人移送長官

2021年12月5日日曜日

ヨビノリ(3)

ヨビノリ(2)からの続き 

教育系YouTuberにならない方がいい7つの理由」というタイトルで,東大駒場祭でヨビノリたくみの講演があった。2017年から教育系ユーチューバとして,予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」というチャンネルを公開し,4年半になった。現在までに83万人が登録し,動画本数は700本,総再生回数が1.5億回,1日平均20万回再生に達している。

その7つの理由だが,(1) 視聴者の母数が少ない,(2) ライバルが多い,(3) 撮影がシンプルにつらい,(4) ミスが許されない,(5)  誰かに嫌われる,(6) 生活できない,(7) 仕事とプライベートの境目がなくなる。というものだった。受験に役立つ教育系ユーチューバの主なチャンネルだけでも120あって,そのうち収益が上がって運営できているのは5本程度だとのこと。

YouTubeは既にレッド・オーシャンになっているが,VR(メタバース)はブルー・オーシャンなのだろうか。そこで教育系のVRチャンネルが成立するのだろうか。思い至ったのが,情報のストック(リソース)情報のフロー(コミュニケーション)の違いだ。1990年代半ばにインターネットの商業化が始まって,インターネットの教育利用が話題になったときに,このキーワードで説明することがよくあった。

YouTubeはその基本機能が動画コンテンツ(リソース)の蓄積と配信であり,VR Chatのようなメタバースの特徴はアバターを通じたコミュニケーションの場というところにあるのではないか。メタバースにおける講義を収録したものがメタバース上で簡単に使えるならば,現在のYouTubeコンテンツと同様に扱えるのかもしれない。しかし,それはYouTubeと本質的には違わないような気がする。


2021年12月4日土曜日

夜間の授業(2)

 夜間の授業(1)からの続き

夕食をとって本屋や文房具屋を回ってもまだ1時間半あるので,MIOの11階のオープンスペースにあるガーデンカフェで時間を潰すことにする。

天王寺キャンパスで,出勤簿への押印や事務手続きを済ませて,2階の教室へ向かう。ここは以前デジタル教材シンポジウムを開いた部屋だった。教室のAV設備へは簡単にアクセスできるので,iPadの画面を表示できるのは助かった。

授業が始まって,聞いてみれば受講者のほとんどが文系で,高等学校理科は基礎科目しかやっていないようだ。授業中に自分の体調不良でトイレ休憩してしまうという災難があったが,なんとか終了。次回以降が心配だわ。

天王寺キャンパスの道路側のフェンスに,建築計画のお知らせと地元説明会のお知らせが貼り出されていた。大阪教育大学(天王寺)合築施設ができるということで,地上10階で延面積6000平米の建物が本館と西館の間にできる。2022年9月着工で,完成は2年後の2023年12月だ。

これは,大阪市教育委員会の新・大阪市総合教育センターが6-10階を,大阪教育大学の教職大学院が1-5階を使うというもので,栗林学長肝煎りの計画だ。現役時代その検討チームからは完全に外されていたのだが,施設課から内々に具体的なイメージのポンチ絵などを描いてと頼まれてこっそり作ったことがあった。もちろん今のプランにその痕跡はかけらもない。

大阪市の教育センターは,現在の10,000平米から3,000平米へと大幅なダウンサイジングになるので,組織もシュリンクするのだろう。大阪維新の考えそうな,喜びそうなプランである。

2021年12月3日金曜日

夜間の授業(1)

 天王寺キャンパスの初等教育教員養成課程の夜間コース後期の非常勤の授業が始まった。小学校教員を目指す学生(主に2回生)の理科の授業で,理科Ⅰが生物と化学の分野,理科Ⅱが地学と物理の分野に相当する内容を扱っている。

諸般の事情で,後半の物理分野のピンチヒッターで登板することになった。夜間コースの平日の授業は,18:00-19:30の6限と19:40-21:10の7限から成り立っていて,理科Ⅱは7限であり,受講者は30名程度である。

現役のときも,夜間の授業(コンピュータ演習など)の手伝いをしたことは何度かあったけれど,7限目は初めてかもしれない。午後一番には柏原キャンパスで非常勤の授業があるので,それが終わってから久しぶりに大阪に向かった。授業が始まるまで4時間以上あるので,どうやって過ごすかが問題だ。

上本町の近鉄百貨店のジュンク堂や天王寺MIOの紀伊國屋書店を回ったが,久しぶりに普通の本屋にいくと面白そうな本がたくさん並んでいる。やはりネットでは出会うことができなかった。あとはメタバースの本屋・読書ワールドができるの(あるのかもしれない)を待つだけかもしれない。

夕食は,阿倍野地下のラーメンと餃子の古潭に入る。1968年にオープンしているが,大学に入った1972年ごろに柳田さんに美味しいラーメン屋があるということで初めて連れて行ってもらった懐かしい店だ。当時はいつも行列ができるほど繁盛していたが,コロナのせいか,時間のせいか,場所柄のせいか店はとても空いていた。普通の味噌ラーメンと餃子にしたが,次は彩菜麺にしてみよう。

2021年12月2日木曜日

Connected Papers

30周年を迎え arxivの機能がいろいろと整備されてきたが,そのすべての機能にアクセスすることはなかなかできない。その中で,ひとつ目に付いたのが Connected Papersである。個別の論文の最下段のタブの一つが Related Papersであり,この中にConnected Papersがある。

How to read the graph
Each node is an academic paper related to the origin paper.
・Papers are arranged according to their similarity (this is not a citation tree)
・Node size is the number of citations
・Node color is the publishing year
・Similar papers have strong connecting lines and cluster together
論文の引用関係ではなくて,論文の類似度がベースになっている。実際には,キーワードで類似論文をまとめてサーベイすることの方が多いけれど,使いこなすことができれば便利かな。


図:arxivのConnected Papersの実例


2021年12月1日水曜日

Julia 1.7.0

11月30日にJulia 1.7.0がリリースされた。普段は,しばらく様子を見てからインストールするのだけれど,macOS Apple Siliconにネイティブ対応したようなので,早速試してみる。

メジャーバージョンアップの際には,いつも困ってしまうのだが,今回もすんなりとはいかなかった。とりあえず手順を書いてみるが,何度もやり直しているので,ヒステリシスがあるかもしれない。

 (1) julia 1.7.0 packege ダウンロード&インストール
 (2) .zshrcのパス変更 % cat .zshrc
export PATH=/Applications/Julia-1.7.app/Contents/Resources/julia/bin
 (3) ln -s /Applications/Julia-1.7.app/Contents/Resources/julia/bin/julia julia
 (4) julia -> using Pkg -> Pkg.add(“IJulia”) -> Pkg.build(“IJulia”)
 (5) brew install jupyter
 (6) jupyter kernetspec list -> jupyter kernetspec uninstall julia1.6.0
 (7) jupyter notebook -> OK
 (8) pip3 uninstall jupyterlab -> pip3 install jupyterlab
 (9) jupyter lab build -> OK


とりあえず,jupyter notebook も jupyter lab も動いたが,パッケージの整合性などからか,これまでのコードがすべてそのまま動くというわけにはいかなかった。ボチボチ様子見よう。

P. S. とりあえず,Plots 周りの不整合はなんとかなった。たいした処理をしていなくても,ときどきカーネルが死んでしまうのが問題だ。

2021年11月30日火曜日

防災省

 NHK午前の「みみより暮らし解説」で,富士山噴火における火山灰被害が取り上げられていた。首都圏の人にとっては非常に重要なテーマだ。調べてみると,NHKではしばらく前から,富士山噴火のリスクについての番組が多くなっている。どんな意図なのかわからないが(改憲時の緊急事態条項がらみか)キャンペーンを繰り広げている。

2001年の中央省庁再編の際に,運輸省,建設省,北海道開発庁,国土庁が統合して国土交通省ができたが,このときに国土庁にあった防災局が内閣府に移管されている。その内閣府の防災情報の火山対策のページの中に,2020年3月まで設けられていた大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループの資料がある。

これによれば,風向きにもよるが首都圏では最大10cmの降灰が数日でおこる。桜島の近くの鹿児島市の場合でもここ10年間の1月あたりの最大値が1650g/m^2なので(火山灰の平均密度を1g/cm^3として)高々1 mmの降灰である。その100倍のオーダーの火山灰が首都圏の4000万人に降りかかることになる。

その結果,(1) 電力網の漏電,(2) 火力発電所のエアフィルタ詰まり,(3) 上水道の汚染,(4) 下水道の詰まり,(5) 電車・列車運行の停止,(6) 自動車交通の渋滞・停止,(7) 航空機の停止,(8) 呼吸器などへの健康被害,(9) 火山性ガスによる金属腐食 などなど,社会生活への致命的ダメージが懸念される。沖縄などの軽石被害もたいへんだが,その比ではない。

どう考えても,防衛省の5兆や6兆の防衛費は,災害防衛費(感染症対策含む)に統合(組織も含めて)したほうが,日本の国土とそこに住む人々を守るにふさわしいような気がして,防災省で検索したところ,関西広域連合や石破茂によってそんな話題がすでに出ているのだった。


写真:1707年の宝永噴火絵図(NHK 富士山噴火降灰シミュレーションから引用)

2021年11月29日月曜日

スマートヘルメット

NHKスペシャル「中国新世紀(3)実験都市深圳 メイドインチャイナの行方」を見た。流通用AIロボットの会社である,Dorabot(ドラえもんにインスパイアされている)もすごかったけれど,びっくりしたのはスマートヘルメットだった。

スマートフォンの次に来る新しいイノベーションツールは何かとずっと考えていた。時代はズレるがストリンガーに潰されたSONYの旧AIBO(1999-2005)や,電脳コイル(2007)の電脳メガネが実体化したようなGoogleグラス(2013-2015)はその候補だった。けれど,いまだに登場していない。

いや,ドローンバーチャルリアリティヘッドセットのように,それは既に登場しているのかもしれない。しかし,スマートウォッチは,それだけでは完結しないものなので違うような気がする。やはり,スマートフォンを代替する単一のウェラブルデバイスが必要だ。

視覚や聴覚へのアクセスと常時身に付けられるという条件で思い浮かんだのが帽子である。スマートキャップ ,これならば常時装着することが可能だ。バイザーのところを工夫すればディスプレイにもなるし,将来的には脳インターフェースをとることもできる。

表面に可塑性を持つ太陽電池をコートすれば,充電もより容易になる。計算すると太陽定数から数Wというオーダーになったが,晴れた日に外にいる時間は短いだろうから現実的ではなかった。そもそも事故の時のスマートキャップのバッテリー破損の問題をクリアするほうが大変だろうか。それはスマートフォンでも同じか。

そんなところに,スマートヘルメットがでてきたので,先を越されたかと思った次第。紹介されていた自転車用のものはたいした機能はなかったが,バイク用は,日本製のCROSS HELMETもオーストラリア製のForciteも,それなりのポテンシャルを秘めているように見える。ヘッドアップディスプレイには,速度やルート,さらには後方の映像などの補助情報を準視線上に投影でき,外音取り込み可能なインナーイアーヘッドセットも使える。


写真:NSウェスト&SHOEIのスマートヘルメット(NSウェスト株式会社から引用)

2021年11月28日日曜日

中村歌右衛門

人間国宝の歌舞伎の中村歌右衛門(六代目:1917-2001)といえば,文化勲章受章者でもあり女形の最高峰として過去の映像をみるくらいなのだが,初代の中村歌右衛門(1714-1791)は,医師の子として金沢に生まれた。そんなわけで,屋号は加賀屋だったのが,四代目のときに成駒屋にかえている。

その初代中村歌右衛門の墓所が金沢にある。知りませんでした。東山寺院群の一角にある日蓮宗の真成寺(しんじょうじ)は,鬼子母神が祀られていることで有名とのこと。寺町寺院群にも浄土真宗の寺はなかったが,このあたりもそうなのか。


写真:金沢東山の真成寺(@19960912_maruさんのtwitterから引用)

2021年11月27日土曜日

21世紀への旅行

1960年代前半,自分が子供のころは日本の高度経済成長の時代と重なっていて,未来への夢や希望が色濃く感じられたものだ。やがて,万博が終わりオイルショックや不況を迎える1970年代にはその反動からか「モーレツからビューティフルへ」というCMが流れ,地球の寒冷化が話題になる短調の時代だった。

1962年(小学校3年のころ)に刊行された読売新聞科学報道本部と手塚治虫による「21世紀への旅行」は,鉄腕アトムのノンフィクション版のような趣があって,むさぼるように読んだものだ。

リアルな社会予想に基づく未来の世界のイメージは,小学館の科学図説シリーズの「未来の世界」でも読むことができた。まあ,台風の進路をコントロールするとか,原爆で運河を掘るとか,ベーリング海峡をつないでダムにするというたいそうな話も満載。

その科学図説シリーズは,ちょっと大人びたデザインで文字による情報量の多い図鑑であり,これも何冊か買ってもらって愛読した。たぶん太字のものは持っていたはずだがこの記憶にも若干微妙なところがある。

1) 動物の世界 (科学図説シリーズ ; 1) / 高島春雄, 今泉吉典 著[他] (小学館, 1960)
2) 昆虫と植物 (科学図説シリーズ ; 2) / 古川晴男, 矢島稔 著[] (小学館, 1962)
3) 生命のふしぎ (科学図説シリーズ ; 3) / 八杉竜一, 大滝哲也, 日高敏隆 著[他] (小学館, 1961)
4) 人類の誕生 (科学図説シリーズ ; 4) / 石田英一郎, 寺田和夫 著[他] (小学館, 1960)
5) 人体のすべて (科学図説シリーズ ; 5) / 岡本彰祐, 岡本歌子 著[他] (小学館, 1964)
6) 宇宙のすがた (科学図説シリーズ ; 6) / 畑中武夫 等著[他] (小学館, 1960)
7) 地球の科学 (科学図説シリーズ ; 7) / 畠山久尚 等著[他] (小学館, 1962)
8) 宇宙旅行 (科学図説シリーズ ; 8) / 原田三夫 著[他] (小学館, 1961)
9) 数の世界 (科学図説シリーズ ; 9) / 矢野健太郎 著[他] (小学館, 1963)
10) エネルギーと原子力 (科学図説シリーズ ; 10) / 崎川範行, 遠藤一夫, 島田豊治 著[他] (小学館, 1962)
11) 科学の歴史 (科学図説シリーズ ; 11) / 菅井準一 等著[他] (小学館, 1961)
12) 未来の世界 (科学図説シリーズ ; 12) / 高木純一, 岸田純之助 著[他] (小学館, 1963)


写真:21世紀への旅行の書影(復刻版しかみつからなかった)

2021年11月26日金曜日

世界の都市総合力ランキング

 最初に竹中平蔵の顔写真が出てきて辟易するのだが,森記念財団 都市戦略研究所が出している世界の都市総合力ランキング(GPCI)の2021年度版が公開された。

ここで注目したいのが,大阪維新に牛耳られるようになった大阪市の凋落ぶりである。橋下徹が2008年から2011年まで大阪府知事,2011年から2015年まではスイッチした大阪市長として君臨し,松井や吉村に引き継がれた時代である。世界の他の都市には類を見ないようなランキングの低下(2012年の17位から2021年の36位までの19ランクダウン)が認められる。

大阪のマスコミは完全に維新と一体化しているため,こうした状況やコロナの死亡数対人口比が全国でダントツであることは報じられず,吉村知事礼賛に終始するのであった。

2012->2021
1->1 London
2->2 New York
4->3 Tokyo
3->4 Paris
5->5 Singapore

7->6 Amsterdam
8->7 Berlin
6->8 Seoul
22->9 Madrid(+13)
14->10 Shanghai

xx->11 Melbourne
15->12 Sydney
9->13 Hong Kong
xx->14 Dubai
20->15 Copenhagen

23->16 Los Angels
11->17 Beijing
13->18 Barcelona
10->19 Vienna(-9)
21->20 Toront

18->21 Zurich
16->22 Stockholm
31->23 San Francisco
19->24 Brussels
12->25 Frankfurt(-13)

28->26 Chicago
27->27 Boston
xx->28 Dublin
24->29 Vancouver
xx->30 Helsinki

26->31 Geneva
37->32 Moscow
29->33 Mikan
25->34 Istanbul(+9)
35->35 Bangkok

17->36 Osaka(-19)
30->37 Washington, DC
32->38 Taipei
34->39 Kuaka Lumpur
xx->40 Buenos Aires

2021年11月25日木曜日

六人部暉峰

 日本経済新聞朝刊の文化欄に六人部暉峰(1879-1956)の話があった。他に情報がないかと探してみると,京大人文科学研究所の論文で「六人部暉峰について --竹内栖鳳門の女性画家--(2021)」が見つかった。著者は向日市文化資料館の里見徳太郎さんで,何のことはない日経文化欄の記事を書いた本人だった。

六人部暉峰は,京都の向日神社の神職の娘であり,10代前半に竹内栖鳳(1862-1942)に弟子入りして本格的に日本画を学び始めた。15歳から各種展覧会に出品し,パリ万博に出展された京都の女性画家の3名に,上村松園(1875-1949)と並んで選ばれるほど高い評価を得ていた。1898年から7人の竹内栖鳳の子供を産み,20代半ばにはその活動を終息させている。

栖鳳は,1942年に湯河原で最期を迎えるが,暉峰は晩年まで湯河原の栖鳳のそばで彼を支えていたようだ(京都の本邸には本妻の奈美がいる)。熱海の保善院には,栖鳳の筆塚や爪塚があり,暉峰の代表作である「白川殿攻落」が所蔵されている。


写真:六人部暉峰白川殿攻落」(向日市文化資料館ポスターより引用)

2021年11月24日水曜日

天狗刺し

 NHKの新人落語大賞NHK新人演芸大賞から派生している。今年は奇数年なので,大阪のNHKホールで開催された。東西107名の参加者から勝ち抜いた6名のファイナリストの中に,笑福亭松鶴(六代目)の弟子の笑福亭松喬(六代目)の弟子の笑福亭生喬の弟子の笑福亭生寿が出るというので珍しく落語の録画を見ていた。

抽選で最後になった,桂米朝(三代目)の弟子の桂米二の弟子の桂二葉が「天狗刺し」で大賞を獲得した。5名の審査員の評価は納得のいくもので,二葉は全員から満点の10点を得て,女性初の大賞となった。なお,笑福亭生寿は第2位の得点だった。

主人公が,新しい商売としててんすき屋(天狗のすき焼き屋)を始めるといって,材料の天狗を捕獲する(刺す)ために鞍馬山へ行く。奥の院の坊さんを天狗と間違えて捕まえた主人公は,京都の町に下りてくる。

さて,米朝の話では次のような下げになる。向うから大きな青竹を10本ばかり担いで来る奴がある。男はもう真似する奴が現れて天狗を捕まえに行くとのかと思い,商売仇を呼び止める。男「お前も鞍馬の天狗さしか」竹を持った男「いやあ、わしは五条の念仏ざしじゃ」

念仏尺(ねんぶつざし)とは,「近江の伊吹山から念仏塔婆が掘り出され,それに精確な尺度が刻んであったので,これを模して念仏尺と名づけた」あるいは「西本願寺大谷本廟のあたりで採れる竹を使っていたことから「念仏」の名称になったという。精密、精巧であったため、緒方洪庵もメートル法を尺貫法に換算する際、基準として用いた」という竹の物差しのことだ。しかし,今では誰も知らないので,これでは落ちない。そこで,二葉は,坊主の衣と天ぷらの衣をかけた下げにうまくアレンジしていた。


写真:鞍馬の天狗像(京都旅屋のページから引用)

2021年11月23日火曜日

三角関数の積

その鈴木貫太郎の問題で次の式の値を求めよというのがあった。

$\cos{\dfrac{\pi}{33}}\cos{\dfrac{2\pi}{33}}\cos{\dfrac{4\pi}{33}}\cos{\dfrac{8\pi}{33}}\cos{\dfrac{16\pi}{33}}$

三角関数の積和の式を繰り返し使うのか,それにしても面倒だろう,どうするのかなあと解答を見ると,$\sin{\dfrac{\pi}{33}}$をかけて倍角の公式からドミノ倒しのようにしてあっという間に解けてしまった。なるほどね。

そこでMathematicaで一般化してみた。

f1[n_, m_] := Product[Cos[2^k Pi/(2^n + 1)], {k, 0, m}] // Simplify
g1[j_] := Table[f1[j, i], {i, j - 1, 20, j}]
g1[5]
{1/32, -(1/1024), 1/32768, -(1/1048576)}

f2[n_, m_] := Product[Cos[2^k Pi/(2^n - 1)], {k, 0, m}] // Simplify
g2[j_] := Table[f2[j, i], {i, j - 1, 20, j}]
g2[5]
{-(1/32), -(1/1024), -(1/32768), -(1/1048576)}


2021年11月22日月曜日

フェルマーの小定理

フェルマーの小定理は,素数を$p$とし,$p$とは互いに素な整数を$a$として,$a^{p-1} \equiv 1 \quad (\mod p \ ) $というものである。

頭の体操のためによく見ている鈴木貫太郎の YouTubeチャンネルでは,ちょっと目には解きにくそうな整数問題に,縦横無尽にmodを使って条件を絞り込んでいくというパターンがよく見られる。自分が,高校生のときには,こんなふうにしてmodを活用するということがなかったので,新鮮な感じがしている。ここまで自由に使えれば便利には違いない。

そんなわけで,フェルマーの小定理あるいは,その他のmod問題の勘を養成するための1行コードをMathematicaで書いてみた。

f[n_] := Table[ Table[Mod[i^k, Prime[n]], {i, 1, Prime[n]}], {k, 1, Prime[n] - 1}]
g[n_] := Table[Table[Mod[i^k, n], {i, 1, n}], {k, 1, n - 1}]

Do[{Print[g[i], " "]}, {i, 2, 7}]
{{1,0}}
{{1,2,0},{1,1,0}}
{{1,2,3,0},{1,0,1,0},{1,0,3,0}}
{{1,2,3,4,0},{1,4,4,1,0},{1,3,2,4,0},{1,1,1,1,0}}
{{1,2,3,4,5,0},{1,4,3,4,1,0},{1,2,3,4,5,0},{1,4,3,4,1,0},{1,2,3,4,5,0}}
{{1,2,3,4,5,6,0},{1,4,2,2,4,1,0},{1,1,6,1,6,6,0},{1,2,4,4,2,1,0},{1,4,5,2,3,6,0},{1,1,1,1,1,1,0}} 


2021年11月21日日曜日

安倍晴明

安倍晴明(921-1005)といえば,先日はライバルの道魔法師(蘆屋道満)が活躍する芦屋道満大内鑑を国立文楽劇場で見たところだ。桜井市にある安倍文殊院を訪ねたとき,お堂の中に安倍晴明の坐像があったので,ここが出身地かと思っていたがそうではなかったようだ。

阪堺電車に乗って,大阪阿倍野の北畠あたりに散歩に行った帰りに,安倍晴明神社を発見した。それによると,出身地には諸説あるが(大和は含まれていない),大阪説が一番有力と主張している。その根拠は「葛の葉伝説」なのだが,それでいいのか。なお,京都の晴明神社は,安倍晴明の没後に邸跡に御霊を鎮めるために設けられたので,生誕地とは関係ない。

日曜午後の安倍晴明神社は,お参りの人や学習ツアーの団体などでかなり賑わっていた。よくわからないが,社務所の横にちょっと怪しい占いコーナというのがあって日替わりで相談に応じていた。

P. S. 神社の近所には,The MARKET Grocery というお店がオープンしたばかりで,美味しいリンゴとミカンを試食させてもらった。ミカンを買ってしまったのは,もしかすると葛の葉の狐に化かされたからかもしれない。


写真:安倍晴明神社の石碑(撮影 2021.11.21)