2021年7月21日水曜日

MCMCへの道(3)

 MCMCへの道(2)からの続き

次は,MCMC法#3マルコフ連鎖である。昼食のメニューが3種類に限られていて,なおかつ当日のメニュー選択の確率が,前日のメニューだけによって定まるという例があげられていた。はい,この例は非常によくわかる。

問題は,Juliaの配列と行列の扱いだ。MahthematicaはすべてListと考えればよいのでわかりやすかったが,Juliaでは型として,ArrayもMatrixもある。見様見真似でとりあえずコードを書いたのだけれど,まだ十分理解できていない。このため,3x3行列の配列であるbをベクトルvにかけて得られる配列の転置ができなかったので,手動で転置している。

#using LinearAlgebra
using Plots

x=[zeros(3) for i in 1:11]
y=[zeros(11) for i in 1:3]
#
a=[0.2 0.1 0.3 ; 0.2 0.6 0.5 ; 0.6 0.3 0.2]
b=[zeros(3,3) for i in 1:11]
b[1]=[1 0 0 ; 0 1 0 ; 0 0 1]
v=[0.3,0.2,0.5]
#
for i in 2:11
  b[i]=a*b[i-1]
end

for j in 1:11
  x[j]=b[j]*v
end
#
for i in 1:11
  for j in 1:3
    y[j][i]=x[i][j]
  end
end
#
plot(y,legend=:bottom, xlim=(0,10),ylim=(0,0.6))




2021年7月20日火曜日

奈良文化財研究所

 奈良文化財研究所文化財総覧WebGISが今日から公開された。さっそく自宅の近所を調べてみたけれど,荒蒔古墳星塚古墳岩室池古墳も出てきません。橿原考古学研究所ではないので,古代には弱いのかもしれない。おなじ奈文研の全国遺跡報告書総覧のほうが有用な感じである。


図:文化財総覧WebGISの文化財一覧(奈文研より引用)



2021年7月19日月曜日

MCMCへの道(2)

 MCMCへの道(1)からの続き

さて,MCMC法#2棄却サンプリングである。手順は次の通り。

(1) 目標分布 p(x) を事後分布ともいう。これは既知の関数。

(2) 乱数発生計算が容易な分布 q(x) で, k q(x) ≧ p(x) を満たすものを選ぶ。 kは正定数。例えば,一様分布とか正規分布。

(3) q(x) にしたがう乱数 x' を発生する。

(4) [0, k q(x)] の一様分布にしたがう乱数 y' を発生する。

(5) y' ≦ p(x') ならx' を採用する。そうでなければ棄却する。

この(3) から(5) を必要なだけ繰り返す。


using Plots

function beta(x,a,b)
  return x^(a-1)*(1-x)^(b-1)
end

x= [k for k in 0.0:0.001:1.0]
y= beta.(x,10.2,5.8)
z= [0.00013 for k in 0.0:0.001:1.0]
scatter(x,y,xlim=(0,1.0),ylim=(0,0.00015),
  markershape = :circle,
  markersize = 1,
  markeralpha = 0.75,
  markercolor = :blue,
  markerstrokewidth = 0.1,
  markerstrokealpha = 0.1,
  markerstrokecolor = :white)

g1=scatter!(x,z,xlim=(0,1.0),ylim=(0,0.00015),
  markershape = :circle,
  markersize = 1,
  markeralpha = 0.75,
  markercolor = :orange,
  markerstrokewidth = 0.1,
  markerstrokealpha = 0.1,
  markerstrokecolor = :white)

n=3000
p=rand(n)
r=0.00013*rand(n)
q=ones(n)
for i in 1:n
  f=beta(p[i],10.2,5.8)
  q[i]=ifelse(f <= r[i],0,r[i])
end

g2=scatter(p,q,xlim=(0,1.0),ylim=(0,0.00015),
  markershape = :circle,
  markersize = 1,
  markeralpha = 0.75,
  markercolor = :green,
  markerstrokewidth = 0.1,
  markerstrokealpha = 0.1,
  markerstrokecolor = :white)

plot(g1,g2,legend=:left,aspect_ratio=6000)


図:ベータ分布 p(x) と一様分布 q(x) と定数 k=0.00013 による棄却法の例


2021年7月18日日曜日

女紅場

 法事で京都の街を歩いていたら,丸太町の鴨川縁に女紅場(にょこうば)の碑があった。京都府立第一高女がなんとかとあったので,調べてみた。

女紅場とよばれた女子の教育機関にはいくつかの類型があるようだが,この京都の女紅場は1872年に設置された日本最初の公立の女学校であり,後の京都府立第一高等女学校の前身だった。現在は京都府立鴨沂高等学校である。

大阪でこれに対応するのが,1874年に堺県に設置された女紅場であり,後の大阪府立泉陽高等学校だ。ここは大阪で2番めに古い高等女学校となった。なお,大阪で最も古い女学校というのは,1882年に設置された府立大阪師範学校の附属裁縫場を起源として大阪府女学校となった,現在の大阪府立大手前高等学校である。


写真:丸太町鴨川西岸にある女紅場の碑(Wikipediaより引用)

[1]女学校(Wikipedia) 

2021年7月17日土曜日

定偏角分散プリズム

ペラン・ブロッカなのかペリン・ブロッカなのかペロン・ブロッカなのかよくわからないが,定偏角分散プリズムというものがあることがわかった。いやあまりわかっていない。幾何光学をまともに勉強していないので。

とりあえず,イメージを掴むために,Mathematicaでプリズムの光路シミュレーションプログラムを書いてみた。わかったような,わからないような・・・それでも高等学校で学ぶ幾何光学の法則さえ知っていればコードは書ける。

プリズムは四角形であり原点(0,0)の内角は90度(直角),y軸上の点(0,2√3-2)は75度,(√3,1)にある点は135度,x軸上の点(√3+1/√3,0)は60度となっていて,その屈折率をnとする。

aは入射光の入射面からはかった入射角度,tbは入射光が屈折した光線の進行方向のプリズム底面に対する傾き,(x1, y1)は全反射する点の座標,tcは反射光の底面に対する傾きの絶対値,tdはプリズムからの出射光の底面からはかった出射角度の勾配,x2は出射点の座標である。

n = 1.6; a = 36.8699;
t1 = Tan[15 Degree]; t2 = Tan[30 Degree]; x3 = Sqrt[3] + 1/Sqrt[3];
tb[n_, a_] := Cos[a Degree]/Sqrt[n^2 - Cos[a Degree]^2]
x1[n_, a_] := Sqrt[3]*t1/(t1 + tb[n, a])
y1[n_, a_] := 1 + Sqrt[3]*t1*tb[n, a]/(t1 + tb[n, a])
tc[n_, a_] := (t2 + tb[n, a])/(1 - t2*tb[n, a])
td[n_, a_] := Sqrt[tc[n, a]^2 - n^2 + 1]/n
x2[n_, a_] := x1[n, a] + y1[n, a]/tc[n, a]

ro = Point[{(1 + 2*t1)/(1 + t1), (1 + 2*t1)/(1 + t1)}];
pol = Polygon[{{0, 0}, {0, 1 + t1}, {1, 1}, {x3, 0}}];

lin[n_, a_] := Line[{{- Sin[a Degree], 1 - Cos[a Degree]}, {0, 1.0}, {x1[n, a], y1[n, a]}, {x2[n, a], 0}, {x3, -td[n, a]*(x3 - x2[n, a])}}]
das[n_, a_] := Line[{{x2[n, a], 0}, {-0.5, -td[n, a] (-0.5 - x2[n, a])}}]

f[n_, a_] := Graphics[{LightGray, pol, Thick, Red, lin[n, a], Dashed, Blue, das[n, a],PointSize[0.03],ro}]

{f[n, a], td[n, a]/Tan[a Degree]}
Manipulate[{f[n, a], n, a, td[n, a]/Tan[a Degree]}, {a, 25, 50}]
図 Pellin-Broca PrismのMathematicaシミュレーション

なお,td[n,a]/Tan[a Degree] = 1ならば入射光と出射光が直交することになる。



2021年7月16日金曜日

人間国宝

例年このころに人間国宝(文化財保護法の重要無形文化財の各個認定保持者)の新規認定が発表される。今年は,人形浄瑠璃文楽人形の桐竹勘十郎さんが入っていた。

Wikipediaで調べてみると,文楽ではこれまでに次の方々が人間国宝に認定されていた。なお,初回は1955年である。文楽協会のページでは,太夫:三味線:人形=21:21:43で人形遣いの人数が多いのだけれど,人間国宝になるのは難しい。(以下は生年-人間国宝認定年-没年 を表す)

人形浄瑠璃文楽太夫
1 豊竹山城少掾(1878-1955-1967)
2 八世竹本綱太夫(1904-1955-1969)
3 六世竹本住太夫(1886-1955-1959)
4 十世豊竹若太夫(1888-1962-1967)
5 四世竹本津太夫(1916-1973-1987)
6 四世竹本越路太夫(1914-1971-2002)
7 七世竹本住太夫(1924-1989-2018)
8 九世竹本綱太夫→九世竹本源太夫(1932-2011-2015)
9 八世豊竹嶋太夫(1932-2015-2020)
10 豊竹咲太夫(1944-2019-)

人形浄瑠璃文楽三味線
1 四世鶴澤清六(1889-1955-1960)
2 六世鶴澤寛治(1887-1962-1974)
3 野澤松之輔(1902-1972-1975)
4 二世野澤喜左衛門(1891-1962-1976)
5 十世竹澤彌七(1910-1972-1976)
6 四世野澤錦糸(1917-1988-1988)
7 五世鶴澤燕三(1914-1985-2001)
8 八世竹澤團六→七世鶴澤寛治(1928-1997-2018)
9 鶴澤清治(1945-2007-)

人形浄瑠璃文楽人形
1 二世桐竹紋十郎(1900-1965-1970)
2 二世桐竹勘十郎(1920-1982-1986)
3 初代吉田玉男(1919-1977-2006)
4 吉田文雀(1928-1994-2016)
5 吉田簑助(1933-1994-)
6 吉田和生(1947-2017-)
7 三世桐竹勘十郎(1953-2021-)
なお,人形浄瑠璃文楽座は,重要無形文化財の芸能分野の総合認定を受けており,ユネスコの無形文化遺産にもなっている。大阪府・市の維新行政からはひどい扱いを受けているが・・・

2021年7月15日木曜日

カレル大学

石橋や池田に住んでいたころ,あるいは天王寺に通っていたころは,仕事帰りに本屋に寄るのが日課だった。天理に引っ越してからも,大和八木にはかろうじて本屋らしきものがあったので,毎日新刊をチェックすることができた。

でも本屋の消滅が進み始めたころに定年となったたため,本屋にいくのは2,3ヶ月に1度のペースになってしまった。アマゾンやグーグルでは目的の本を探せるかもしれないが,目的としない本に出会うことができない。ネット上でこれを可能にするにはVRが次の段階まで進化して,アーサー・C・クラーク(1917-2008)のダイアスパーの世界が実現するのを待たなければならない。

そんなとき,YouTubeの読書系チャンネルが未知の本を探すための補完になるかもしれない。ヨビノリたくみと斎藤明里のほんタメをみていたら,【全10冊】小説1000冊読んだ私が最近読んだ本というタイトルで,アンナ・ツィマ(1991-)のシブヤで目覚めてを先月末に紹介していた。そうか,深緑野分によればコニー・ウィリス(1945-)なのか。ますます読んでみたくなる。

そのアンナ・ツィマと訳者の阿部賢一・須藤輝彦を招き,実践女子大学文学部准教授のブルナ・ルカーシュが司会をする特別トーク・イベントがあった。アンナ・ツィマとブルナ・ルカーシュが卒業しているのが,プラハにあるカレル大学だ。1348年創設のドイツ語圏最古の大学である。

カレル大学は知らなかったけれど,ヤン・フス,ニコラ・テスラ,カレル・チャペック,フランツ・カフカ,ミラン・クンデラや,多くのノーベル賞学者を輩出しているヨーロッパの主要大学のひとつだった。アルバート・アインシュタインやエルンスト・マッハもこの大学の教員だった。


写真:歴史地区にある旧校舎=チェコ国立図書館(Wikipediaから引用)

2021年7月14日水曜日

MCMCへの道(1)

 そういえば,機械学習をまともに勉強していなかった。いや,そもそも統計学も確率論もあれもこれもである。先日の水素原子波動関数の可視化についても進んでいないのだけれど,どうやら,メトロポリス・ヘイスティング法を使うのが望ましいらしい(by tsujimotter)。そういえば,モンテカルロ法もまともに勉強してこなかった。

そこで,反省してMCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ法)の全体像をマスターすべく,いろいろ探したが,おこちゃま向けの適当なテキストがない。こうなるとYouTubeだのみだ。機械学習基礎理論独習というサイトがあったので,このPythonコードをJuliaで再現しながら学ぶことにした。

その1回目はMCMC法#1モンテカルロ法なので,これを再現してみた。

using BenchmarkTools
using Random
using Plots

function findpi(n)
  rng = MersenneTwister(0)
  count = 0
  for i in 1:n
    count += ifelse(rand(rng)^2+rand(rng)^2<=1.0,1,0)
  end
  return 4*count/n
end

#@btime findpi(10^6)
#@benchmark findpi(10^8)

function circle(n)
  x=rand(n)
  y=rand(n)
  c=zeros(n)
  for i in 1:n
    c[i]=ifelse(x[i]^2+y[i]^2<=1.0,0.0,1.0)
  end
  scatter(x,y,
  marker_z = c,
  markershape = :circle,
  markersize = 1,
  markeralpha = 0.2,
  markercolor = :grey,
  markerstrokewidth = 0.1,
  markerstrokealpha = 0.1,
  markerstrokecolor = :white,
  markerstrokestyle = :dot,
  aspect_ratio = 1.0,
  xlim=(0.0,1.0),
  ylim=(0.0,1.0),
  legend=:topright
  )
end

circle(10000)

jupyterlabを使っているが,多数のデータの描画で表示が重くなってかたまる現象がみられる。黒木さんは400msで10^8点のデータが計算できるとしていたが,こちらではメルセンヌツイスターアルゴリズムを用いて300msくらいかかってしまう。




図:単純なモンテカルロ法による円周率の計算

2021年7月13日火曜日

知の巨人

先日,立花隆(1940-2021)がなくなったときに, NHKをはじめてとしてマスコミが一斉に知の巨人というフレーズで紹介していたのが気持ち悪くて仕方なかった。たぶん田中角栄からはじまる政治・社会問題で名を上げた後に,科学の領域の評論に手を広げたことで,文系のジャーナリストたちが一目置いた的なことが発端のような気がする。あほらしい。

立花隆は,たしかにジャーナリストの嗅覚を働かせて様々な分野に興味を持ったのだけど,あくまでも表層をなぞっていただけとみえる。著書やNHK特集のタイトルとあらすじをみているとわかる。そもそも田中角栄の案件でさえ,アメリカの日本に対する謀略の中の一つの役割を担ったものであり,それが日本にとってよかったのかどうだか。

それでは,知の巨人にふさわしいのは誰かと考えてみたが,原子爆弾や電子計算機の開発や数学・量子力学の基礎論に重要な寄与をしたジョン・フォン・ノイマン(1903-1957)くらいであまり思い浮かばなかった。たまたま,田中康夫の横浜市長選挙出馬にかかわって茂木健一郎が話しているのをきいて,哲学者・論理学者・数学者・社会批評家・政治活動家のバートランド・ラッセル(1872-1970)を忘れていたことに気づいた。

高等学校では理数科だったため,社会の時間は少なくて,1年地理,2年世界史,3年倫理という選択をした。3年のときの倫理の先生は眼鏡の細川先生だった。1971年なのでちょうどバートランド・ラッセルが亡くなったところだったが,授業に分厚い箱入りのみすず書房の西洋哲学史市井三郎(1922-1989)訳の本を持ってきていて,なんだかすごいと感動したことがある。

細川先生は,学校を抜け出してとなりの食堂から帰ってきた生徒たちを発見しても,そのまま沈黙して通過させてしまうようなことで,寡黙で特徴のない方だったが,倫理の授業というか教科書は非常におもしろくて,現代国語の次に集中して受講した科目だった。


写真:バートランド・ラッセル(ノーベル文学賞のページから引用)

[1]Bertrand Russel(Stanford Encyclopedia of Philosophy)

2021年7月12日月曜日

三島喜美代

 晩夏・小暑・蓮始開(はすはじめてひらく)

先週の日曜美術館で,大阪の十三に住んでいる三島喜美代が取り上げられていた。88歳という年齢を感じさせない意欲を持つパワフルなおばちゃんだった。日本語のWikipediaページはないが,英語版はあるので訳してみた。

三島喜美代(1932-)は、日本の現代美術家であり,新聞や漫画、箱などの「壊れやすい印刷物」を陶土で再現した作品で知られている。1960年代初頭に画家として活動を開始した三島は、1971年から陶芸を始めた。 この頃から,新聞や広告ポスターのイメージをシルクスクリーンの技法で粘土に刷り込むようになる。製造物を用いた作品は、クレス・オルデンバーグやアンディ・ウォーホルの作品、戦後の日本の具体や独逸美術協会の作品と類似している。

三島喜美代は1932年に大阪で生まれ,1951年に大阪の公立扇町高校を卒業した。1986/87年、ロックフェラー奨学金ACCの助成を受けてニューヨークに留学。現在は大阪に在住。

夫の三島茂司(1920-1985)も画家であり,二人展が最近開かれていた。岐阜県の土岐市のアトリエはほとんどゴミの集積場のようだ。

東京の倉庫街にあるART FACTORY城南島に展示されている陶器製の新聞の束は天井まで高く積み上げられて迷路になっている。また,1万個の新聞記事を印刷したレンガが敷き詰められる作品を見て,1つ3000円でも3千万円かと思ったが,市場価格は1つ30万円のオーダーだった。

この情報の化石は,ハードディスクや半導体と違って,長く残り続けるのかもしれない。


写真:三島喜美代 《作品 21-A》2021年
陶にシルクスクリーン印刷,鉄(婦人画報から引用)

2021年7月11日日曜日

コラッツ予想

 コラッツ予想1億2千万円の懸賞金がかかった。胴元は音圧爆上げくんという音楽系ウェブサービス(料金が無料!)の会社だとのこと。クレイ数学研究所の7つのミレニアム懸賞問題(1件100万ドル)より懸賞金が高い。

それはいいとして,コラッツ予想とは次のようなものだ。ある自然数 n (n≧2) から出発してその次の自然数を,n が偶数のときは n/2 ,n が奇数のときは 3n+1 で定義する。こうして得られた自然数の列が最終的には1に到達するという予想である。

まだ証明はできていないが(だから懸賞金問題になるわけで),2^68 ≒ 3x10^20 まではコンピュータで確かめられている。奥が深そうなので,詳細には立ち入らずに,Juliaでコーディングしてみた。まったく工夫のないプログラムによって,1〜10^8までの奇数に対して1分以内で計算することができた。

なお,プログラミング教育と称して小中学校でモソモソする内容よりは,エクセルを使えるようにするほうが圧倒的に価値があるという説にはほとんど賛同したくなる今日このごろである。

using Plots

function collatz(m,n,p)
# m : number of call
# n : argument of function
# p : print switch
#
  if p==1
    print(n,"->")
  end
  m=m+1
  if mod(n,2)==0
    return m,div(n,2)
  else
    return m,3*n+1
  end
end

function sequence(m,n,p)
# n0: starting argument
# m : iteration number
#
  n0=n
  while n!=1
    m,n=collatz(m,n,p)
  end
  if p==1
    println(1,":",m)
  else
    return n0,m
  end
end

function counter(N,M)
  for i in 1:2:N
    n,m=sequence(0,i,0)
    if m > M
      println(n,":",m)
    end
  end
end

function plotter(N)
  x,y = zeros(N),zeros(N)
  for i in 1:2:N
    x[i],y[i]=sequence(0,i,0)
  end
  scatter(x,y,legend=:topleft)
end

@time counter(100000000,800)
plotter(1000)

図 コラッツ予想 奇数 n=3〜999までのシーケンス数の散布図

2021年7月10日土曜日

一読・十笑・百吸・千字・万歩

午前の昼寝から起きると, 高齢者の健康法というチラシが眼前に届けられました。杏林大学名誉教授石川恭三先生ご指導による日本医師会の健康プラザNo.481(日医ニュース)です。

一読:一日に一度はまとまった文章を読もう。✓(これはクリアできているかな,でもまとまった文章ってどのくらいの量をさすのだろうか,どうやら新聞の社説程度ということで,日経だと2000字弱だ。私の履歴書も同程度なので,文化欄読破というのがよさそうだ)

十笑:一日に十回くらいは笑おう。✓(家族LINEをみていればクリアできそうである)

百吸:一日に百回くらい(一度には十回くらい),深呼吸しよう。×(これはできていません)

千字:一日に千字くらいは文字を書こう。?(認知機能を高めるためにできるだけ漢字を使えとあるので,キーボードはカウントしないのかもしれない。なお千字というのは結構多くてこの日々のブログの平均値ではちょっと足りない)

万歩:一日に一万歩を目指して歩こう。△(目指してはいるのだけれど,毎日の朝の散歩は年平均で4500歩である。歩く日は45分以上で5000歩を超えるのだけれど雨の日もあるからなあ・・・)



2021年7月9日金曜日

球面調和関数(4)

 球面調和関数(3)からの続き

多くの疑問はよく探してみると答えになるウェブサイトがみつかるものだ。Juliaによる球面調和関数というか原子波動関数の可視化のための関数定義もここにある。面倒なのがラゲール陪関数の定義や規格化なのだけれど,とりあえずなんとかなった。あとは球面調和関数で磁気量子数が負の場合の扱いなど。

using GSL
using Plots
using LinearAlgebra

function Y(l,m,θ,ϕ)
# spherical harmonics
# l: orbital qn, m: magnetic qn
# θ,φ: spherical angular coordinate
#
  am=abs(m)
  if m <= 0 || mod(am,2) == 0
    p=1
  else
    p=-1
  end
#
  if am > l
    return 0
  else
    return p*sf_legendre_sphPlm(l,am,cos(θ))*exp(im*am*ϕ)
  end
end

function R(n,l,r)
# Z: nuclear charge (set 1 for hydrogen)
# n: principle qn, l: orbital qn
# r: Bohr radius unit a0 = ℏc/α・mc^2
#
Z=1
ρ=2*Z*r/n
  if n < l
    return 0
  else
    return sf_laguerre_n(n-l-1,2*l+1,ρ)*exp(-ρ/2)*ρ^l
  end
end

function norm(n,l)
# square of radial wave function norm
  return (2/n)^3 *factorial(n-l-1)/(2*n*factorial(n+l))
end

x=(0.0:0.1:25)
#
r10=(R.(1,0,x).*x).^2 .*norm(1,0)
r20=(R.(2,0,x).*x).^2 .*norm(2,0)
r21=(R.(2,1,x).*x).^2 .*norm(2,1)
r30=(R.(3,0,x).*x).^2 .*norm(3,0)
r31=(R.(3,1,x).*x).^2 .*norm(3,1)
r32=(R.(3,2,x).*x).^2 .*norm(3,2)
#
plot(x,r10,linewidth=1,legend=:topright)
plot!(x,[r20,r21],linewidth=1.5)
g1=plot!(x,[r30,r31,r32],linewidth=2,linestyle=:dash)

t1=(0.0:0.01:pi)
t2=(pi:0.01:2pi)
#
y10=abs2.(Y.(1,0,t1,0))
y11=abs2.(Y.(1,1,t1,0))
y20=abs2.(Y.(2,0,t2,0))
y21=abs2.(Y.(2,1,t2,0))
y22=abs2.(Y.(2,2,t2,0))
#
plot(t1,[y10,y11],proj=:polar,linewidth=2)
g2=plot!(t2,[y20,y21,y22],proj=:polar,linewidth=2)

plot(g1,g2)

図 水素原子の動径部分と角度部分


2021年7月8日木曜日

ワクチン接種統計のマジック

オリンピック開始まであと残りわずかとなった。今日,緊急事態宣言が東京・沖縄で8/22まで発出され,蔓延防止等重点措置が埼玉・千葉・神奈川・大阪で 8/22まで延長された。また,北海道・愛知・京都・兵庫・福岡については7/11までで蔓延防止等重点措置が解除された。


7時のNHKニュースの枠で,菅首相記者会見がだらだらと放送されている。気になったことがある。ワクチン接種のロジスティックスというか管理態勢は破綻していると思うのだが,総数としては必要分が確保されていて(地方自治体に滞留している)というところまではよい。ところで,現時点で1日あたり130-140万回のペースで接種が進んでいると菅は発言した

いや,いくらなんでもそれはないだろうと,首相官邸のワクチンのページをみると,なにやら内閣官房の新型ワクチンの統計のページの形式が変更されている。あやしい。しかも,新しく設けられている日別のファイルをみると(データ列が途中で入れ替わっているという単純ミスがある),確かに日平均130万回以上接種がすすんでいるかのように見える

で,よく調べてみると,これには,毎日の遡及入力が含まれない段階の各報告日の過小評価した合計の一覧がならんでいる。一方,それらの最終日において一定の遡及入力が加わったものを並べた結果とは違ってくる。このため,政府発表の数値は,最終的に遡及入力が収束するものと比べて,日々の増加分を過大評価することになっている。グラフでみたほうがわかりやすいだろう。


図 ワクチン接種統計のマジック(2021.7.8の政府統計より)
青が遡及入力を含むより現実的な値,橙は政府統計値

2021年7月7日水曜日

球面調和関数(3)

晩夏・小暑・温風至(あつかぜいたる)

球面調和関数(2)からの続き

あいからわず,球面調和関数に到達していない。Juliaで特殊関数を使うにはどうすればよいか調べる。まあ普通は SpecialFunctions.jl というパッケージを入れればよいと思うのだが,ここには限られたものしかなくて,直交多項式のたぐいは含まれていないので他を探すことになる。ちょっと面倒だ。

この点,Mathematicaはいいのかわるいのか統一的に管理されているので探し回る手間はない。その特殊関数のところをみると,ガンマ関数,ベータ関数,誤差関数,指数積分,直交多項式,ベッセル関数,ルジャンドル関数,双曲線関数,楕円積分,楕円関数,モジュラ形式,ゼータ関数,多重対数関数,マシュー関数,回転楕円体関数,ホイン関数…となっていた。

さて,Juliaである。なるべく多くの特殊関数を1つのパッケージで扱いたいので探したところ,GNU-Scienfitic Library のパッケージ GSL.jl を見つけた。早速試してみると,

using GSL
using Plots
using LinearAlgebra

f1(n,z)=sf_hermite_func(n,z)
x1=0.0:0.01:5.0
y3=[f1.(i,x3) for i=0:4]
g1=plot(x1,y1)

f2(l,z)=sf_legendre_Pl(l,z)
x2=0.0:0.01:1.0
y3=[f2.(i,x2) for i=0:4]
g2=plot(x2,y2)

f3(n,z)=sf_laguerre_n(n,0,z)
x3=0.0:0.1:5
y3=[f3.(i,x3) for i=0:4]
g3=plot(x3,y3)

f4(l,m,z)=sf_legendre_sphPlm(l,m,z)*2*sqrt(pi)
x4=0.0:0.01:1.0
y4=[f4.(i,i-1,x4) for i=1:4]
pushfirst!(y4,f4.(0,0,x4))
g4=plot(x4,y4)

plot(g1,g2,g3,g4,legend=:bottomright)
球面調和関数そのものではないが,球面調和関数の規格化因子を用いたルジャンドル陪関数が用意されているのでほぼそのまま使える。エルミート多項式のところには1次元の量子力学的調和振動子波動関数がそのまま定義されていた。さすがに水素原子波動関数はそうは問屋がおろさない。


図 Juliaでの特殊関数の例

2021年7月6日火曜日

東京オリンピック(3)

東京オリンピック(2)からの続き

東京都議会選で自民・公明が過半数割れして都民ファーストが踏みとどまったことから,東京五輪無観客作戦が進められているような報道がされている。結局は徳仁天皇の意向が微妙に無視しきれなかったからなのかもしれない。

その朝日新聞の説は,収容人員が50%で5000人を超える会場は無観客にするというものだ。ただし,IOC関係者やスポンサー枠など五輪貴族様は例外扱いで,犠牲になる小中学生もカウントにはいれないのだろう。それでも,とりあえず計算してみるとつぎのとおり。

   会場             収容定員 日数  延人数
1 オリンピックスタジアム    68,000  13  0
2 東京体育館          7,000  13  45,500
3 国立代々木競技場       10,200  16  0
4 日本武道館          11,000  11  0
5 東京国際フォーラム      5,000  10  25,000
6 国技館            7,300  15  54,750
7 馬事公苑           9,300  12  55,800
8 武蔵野の森総合スポーツプラザ 7,200  11  39,600
9 東京スタジアム        48,000  10  0
10 武蔵野の森公園        -
11 有明アリーナ         15,000  16  0
12 有明体操競技場        12,000  14  0
13 有明アーバンスポーツパーク  7,000    8  28,000
14 有明テニスの森        19,900    9  0
15 お台場海浜公園        5,500    5  13,750
16 潮風公園           12,000  15  0
17 青海アーバンスポーツパーク  8,400    9  37,800
18 大井ホッケー競技場      15,000  14  0
19 海の森クロスカントリーコース 16,000    1  0
20 海の森水上競技場       16,000  14  0
21 カヌー・スラロームセンター  7,500    6  22,500
22 夢の島公園アーチェリー場   5,600    9  25,200
23 東京アクアティクスセンター  15,000  27  0
24 東京辰巳国際水泳場      4,700  16  37,600
25 札幌大通公園         -
26 幕張メッセAホール・Bホール  9,000  20  90,000
27 釣ヶ崎海岸サーフィンビーチ  6,000    8  24,000
28 さいたまスーパーアリーナ   21,000  15  0
29 陸上自衛隊朝霞訓練場     3,200  10  16,000
30 霞ヶ関カンツリークラブ    25,000    8  0
31 江の島ヨットハーバー     3,000  11  16,500
32 伊豆ベロドローム       3,600    7  12,600
33 伊豆 MTBコース        11,500    2  0
34 富士スピードウェイ      22,000    3  0
35 福島あづま球場        14,300    3  0
36 横浜スタジアム        35,000  13  0
37 札幌ドーム          41,000    5  0
38 宮城スタジアム        49,000    6  0
39 茨城カシマスタジアム     40,000    8  0
40 埼玉スタジアム2002      64,000    8  0
41 横浜国際総合競技場      72,000    8  0

     合  計                        544,700

合計は,54万人ということになった。これに特別枠が加われば,ざっと100万人というところで,当初の目論見であった300万人の1/3にはなる。1日平均5万人の直接の人出効果に相当する。抽選の手間が省けて便利なのかもしれないが,開会式も閉会式も陸上も水泳もサッカーも野球も「いわゆる無観客」なのか。

2021年7月5日月曜日

球面調和関数(2)

球面調和関数(1)からの続き

ぜんぜん,球面調和関数にはなっていないけれど。JuliaのPlotsの散布図で色をつける方法がなんとなくわかった。各点の色に対応する配列 c を用意して,カラースキームを指定して,おまじないの marker_z = c,をオプションにすればいいようだ。

とりあえず,マーカーをcricleにして半径を関数値にあわせて変化させる。色についてはこれとは独立な関数を用意すればよい。α値なども同様に変えられるかもしれない。

using Plots
using Random
using ColorSchemes

Random.seed!(0)
N=10000

x, y, z, c, t, s = rand(N).-0.5, rand(N).-0.5, rand(N).-0.5, rand(N), rand(N), rand(N)
r = (x.*x .+ y.*y .+ z.*z).^0.5
t = acos.(z./r)
s = atan.(y./x)
c = 100 .* z.^2 .* exp.((-5).*r) .+ 0.5

#println(x[10],y[10],z[10],c[10])

scatter(x, y, z,
marker_z = c,
markershape = :circle,
markersize = c,
markeralpha = 0.5,
markercolor = :jet,
markerstrokewidth = 0.2,
markerstrokealpha = 0.3,
markestrokecolor = :white,markerstrokestyle = :dot,
legend = :right,
camera = (60,60)
)


図 Julia の Plots の散布図の例

2021年7月4日日曜日

国土地理院の空中写真

 国土地理院が,地図・空中写真閲覧サービスを提供している。これはタイムマシンみたいものだ。すべての年代を網羅しているわけではないけれど,今はなくなってしまった風景の一部を見ることができる。

早速,明治から1990年頃までの金沢の実家付近を探してみると,1946.11,1947.11,1948.5,1952.11,1953.4,1962.5,1966.7 ,1973.5,1975.10,1982.10,1983.5,1987.10 などのデータが見つかった。

空中写真については,「本サービスでダウンロード可能な空中写真は,出典の明示等を行っていただければ利用可能です(申請不要)」ということだ。

1962年にはここに住んでいたが(1957-1972),今はなき金沢市立工業高等学校とそのグラウンドが見える。泉野小学校,野田中学校,金沢泉丘高等学校の旧校舎もはっきりとわかる。



写真:1962.5の金沢寺町台(国土地理院の空中写真より)

2021年7月3日土曜日

球面調和関数(1)

tsujimotterさんが日曜化学:量子力学の基本と球面調和関数の可視化というテーマで python のmatplotlib を使ったコードを書いていたところ,東北大学の堀田さんに褒められていた。

なるほど,これをJuliaでやってみようかと思ったのだが,Plots の三次元散布図のカラーオプションの制御方法がわからなくてとりあえず挫折した。

Mathematicaだと簡単に実例が見つかるんだわこれが。

With[{lmax = 2}, Table[If[Abs[m] <= l,
SphericalPlot3D[
Abs[2 SphericalHarmonicY[l, l-m, t, p]]^2, {t, 0, Pi}, {p, 0,
2 Pi}, PlotRange -> {{-0.5, 0.5}, {-0.5, 0.5}, {-0.5, 0.5}},
BoxRatios -> {1, 1, 1}, PlotPoints -> 30, Axes -> False,
Boxed -> False, Mesh -> False, ColorFunctionScaling -> False,
ColorFunction ->
Function[{x, y, z, t, p, r}, Blend[{Blue, Orange}, (Cos[Arg[SphericalHarmonicY[l, l - m, t, p]]] + 1)/
2]]], Null], {l, 0, lmax}, {m, 0, lmax}]] //
GraphicsGrid[#, AspectRatio -> 1] &

図 球面調和関数の例 by Mathematica(筑波大学 武内修さんより引用)

 

2021年7月2日金曜日

失敗知識データベース

 畑村洋太郎さん(1940-)は,失敗学を提起し2002年には特定非営利活動法人の失敗学会を設立している。また,個人では,畑村創造工学研究所の名前でも活動している。

これに関連して,失敗学会には失敗知識データベースのページがある。明治時代から2008年までの様々な分野での失敗事例が,事例詳細,経過,原因,対処,知識化,背景などにわたって丁寧に記録分析されていて,たいへん有益である。その後の更新が止まっているのが残念だ。

福島原発事故が含まれておらず,医療・健康分野がその他にごくわずかな例しか取り上げられていないことも惜しい。せっかくだから,教育やその他の行政分野にわたっても失敗知識を蓄積してほしいところ。2chあがりのネトウヨ担当大臣がデジタル庁にうつつを抜かすくらいならば,失敗庁をつくるほうが日本の将来にとってよほど有益だろう。


2021年7月1日木曜日

日高川入相花王

 WOWOWのシネマ歌舞伎で,玉三郎日高川入相花王渡し場の段(2006)をやっていた。歌舞伎では,これは人形振り(役者が人形遣いに操られている人形のように振る舞う)で演じられることになっているらしい。15年前なので,清姫の坂東玉三郎も人形遣いの尾上菊之助もともに若い。船頭は,坂東薪車だった市川九團次だ。

17世紀はじめに出雲阿国によってはじまった歌舞伎であるが,現在も演じられている主要な作品の数々は,元禄時代に近松門左衛門,竹田出雲,三好松洛,並木宗輔らの戯作者によって人形浄瑠璃の演目として作られて大流行した作品が歌舞伎に移植されたものだ。歌舞伎の人形振りというのはその過程を反映しているのかもしれない。

日高川入相花王,文楽では何回か見ているが,玉三郎の所作は文楽での人形の動きを非常に丁寧にシミュレートしていて美しい。これがMIKIKOによるPerfumeの振り付けの源流になるのだろうか?

高野山から国道371号線を南に進むと,和歌山県と奈良県の県境にある護摩壇山に至る。日高川はこのあたりから始まって,椿山ダムを経て御坊市の河口まで続いている。河口の北には道成寺がある。安珍を追いかける清姫は日高川に飛び込んで蛇に化け,道成寺まで到達して鐘に隠れた安珍を焼き殺すわけだ。


図:伝土佐光重(土佐派)画『道成寺縁起』より

2021年6月30日水曜日

氷室開き

 NHKの列島ニュースで金沢局から氷室開きがとりあげられていた。冬の間に積もった雪や氷を室に蓄えて,夏にかけて利用する氷室の起源は,奈良県天理市福住町の都祁氷室にあるらしい。金沢でも,江戸時代には湯涌温泉あたりに氷室がいくつか設けられていた。

金沢の氷室からは,加賀藩が江戸の徳川将軍に氷を献上していた。7月1日がその献上する氷の出発の日であり「氷室の日」となっていて,その前日6月30日が氷室開きになっている。もっとも江戸時代は旧暦の六月朔日が氷室の日だったようだ。

いまではどうかわからないが,小学校のころは氷室の日に学校で氷室万頭が配られた。もしかすると半ドンくらいの勢いだったかもしれない。いまみると氷室万頭はけっこうおいしそうなのだけれど,当時はそれほどでもなかったな。


写真:湯涌温泉の氷室の仕込み初め(金沢市観光協会から引用)

P. S. 高木屋の茶色の氷室饅頭が小学校の記憶に最も近い。

[1]金沢ふるさと学習 指導資料(金沢市)

[2]金沢の人はどこの氷室饅頭を食べているのか(高井寧香)

2021年6月29日火曜日

音声合成機能(2)

音声合成機能(1)からの続き

 Macの音声合成機能のコマンドライン版 say はもう少し複雑な使い方ができる。なお,$ man -a say > sample.txt でマニュアルコマンドsayの全体をsample.txtに出力できる。以下はzshでなくbashでの例である,zshでは?を\?とエスケープすること。

(1) \$ say -v \? (出力されるVoice一覧)

(2) \$ say --file-format=\? (出力されるファイル形式一覧)

(3) \$ say --file-format=m4af --data-format=\? (あるファイル形式でのデータ形式一覧)

(4) \$ say --file-format=3gpp --bit-rate=\? (あるファイル形式でのビットレート一覧)

(5) \$ say -a \? (出力デバイス一覧)

(6) \$ say '現在の東京の天気は' `curl -s ja.wttr.in/Tokyo\?0 | sed -n 3p | cut -c 31-` 'です'

ビットレートについては,manの記述も微妙だし,うまく出力されないものがあるがよくわからない。例えば,say --file-format m4af --bit-rate ? が返ってこないんだけれど・・・

英語音声として SamanthaとTomをおすすめされた。Good News,Bad News,Cellos,Pipe Organの4つはそれぞれ特定の歌を歌ってくれるらしい。

[1]Mac の say コマンドの使い方(Qiita)
[2]Macのsayコマンドを使って英語スピーチを練習しよう(福野泰介)
[4]Speech Manager (Apple Developer)


2021年6月28日月曜日

音声合成機能(1)

 Macの音声合成機能については,編集メニューにスピーチがあって,アクセシビリティ機能拡張に読み上げコンテンツの設定があることは知っていた。しかし,これらがコマンドラインで使えるとは。それが say コマンドである。

$ say "こんばんは"
$ say -i (インタラクティブに入力)
$ say -f readme.txt
$ say -o output.m4a "こんにちは"
$ say "こんにちは [[slnc 1000]] さようなら"
$ say "こんにちは [[rate 100]] さようなら"
$ say "こんにちは [[pbas 250]] さようなら"

などが最も簡単な使い方である。日本語の音声としてはKyoko(女声)とOtoya(男性)とSiriう(声1)とSiri(声2)が用意されている。システム環境設定で設定された声が使われている。[[slnc 1000]] は 1000ms の無音時間を表している。[[rate 100]] は,一分当たりの発音回数が100であることを意味し,標準値 175に対して発音速度をゆっくりとさせる。[[pbas 250]]は,標準値175に対して,音の高さを高く発音させている。

漢字もいちおう読めるのだが,自分の姓はだめで,名のみOKだった。2012年のMacOSX Lionから実装されているのだけれども知らなかった。

[1]Mac OSX Lionのsayコマンドに感動した。(理想未来ってなんやねん)

2021年6月27日日曜日

ワクチン供給状況

 日本政府が確保しているワクチンは,ファイザー製が1億9400万回分(9700万人分),モデルナ製が5000万回分(2500万人分),アストラゼネカ製が1億2000万回分(6000万人分)である。いずれも国内で承認されているが,アストラゼネカは血栓の発症が海外で報告されているため,当面国内の公的接種には用いられない。台湾には124万回分提供したけれど・・・。

日本の人口は1億2600万人なので,ファイザーとモデルナの合計では400万人分不足するが,12歳未満のこどもが1170万人いることを考慮すれば,いちおう12歳以上の全国民が希望しても賄えるはずだ。

ところが,ファイザーとモデルナの供給スケジュールがここにきて頓挫しかけている。モデルナは職域接種・大学接種などにむけて提供されているが,供給不安から新規予約が一時保留とされた。どうして,もっときちんとシミュレーションできなかったのだろうか。

一方,厚生労働省のファイザー社ワクチン配送スケジュール(2021.6.3)によれば,医療関係従事者向けに963万回分配送している(接種回数は1033万回)。また,高齢者向けに,4410万回(5月末まで),3452万回分(6月分),2340万回分(7月分)の配送が予定されている。6月24日時点での高齢者の接種回数(追加遡及入力分を推計に含めない)は2689万回なので,少なくとも高齢者分に関しては目標の7200万回にはまだ余裕がある。

しかし,8月以降の9000万回分の配送計画が示されておらず,各自治体では供給が絞られることに対する不安が募っているようだ。もしかしてこれはまだ日本に届いていないのか?

[1]自治体のワクチン接種、一転ブレーキ 職域接種に続き…政府の見通しの甘さ露呈<新型コロナ>(東京新聞)

2021年6月26日土曜日

第2回ワクチン接種

第1回ワクチン接種からの続き

6月26日14:30に第2回のワクチン接種を予約していた。

前回の経験から多少早く行っても問題ないことがわかっていたので,14:15には天理市文化センターに到着した。検温,手指消毒,3階受付の移動と前回同様のルーティーンで進んだ。用意するものは,(1) ワクチン接種券と(2) 記入済み問診票と(3) 本人確認ができるものなのだが,免許証を忘れてしまった。別の書類にサインして事なきを得る。

前回よりスムーズに進んだ。3階のホールで待っていると,受付でもらった小さなプラスティックの番号札の番号で呼び出しがある。どうやら4人ずつ呼び出されるようだ。氏名を確認されて,1階のエレベータに誘導される。エレベータも感染防止のために4人ずつ四隅に乗るようになっている。

1階の接種コーナー前の椅子に座るとすぐに番号が呼び出されて接種コーナーに進む。前回は6ブース中2ブースがオープンしていたが,今回は4ブースで運用している。ここも待ちなしで問診,接種,接種証明書の発行と進み,最後に注意書きと待機時間が記載された書類をもらう。

15分の観察スペースに進んで,14:40にはすべてのワクチン接種プロセスが完了した。この間25分であり,非常に効率的に運営されていた。天理市の高齢者ワクチン接種率(6/24で第1回75%,第3回34%)は奈良県の市でトップの成績を収めている。


写真:天理市文化センターのワクチン集団接種会場(2021.6.3撮影)

2021年6月25日金曜日

LGBT法案問題

 夫婦別姓問題からの続き

先日の国会で自民党がつぶしたLGBT法案は,「LGBT理解増進法案」なのだけれど,案文をさがしても見つからない。一方,歩み寄った野党側が当初提案していたのは「LGBT差別禁止法案」であり,こちらのほうは「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」として内容をみることができた。


[1]LGBTの現状と課題(中西絵里,参議院法務委員会調査室)

[2]性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すためのわが党の基本的な考え方(自由民主党)

2021年6月24日木曜日

夫婦別姓問題

2021年6月23日に,夫婦同姓での届け出の根拠である民法750条と戸籍法74条の1が合憲であるという最高裁大法廷判決が出された。判決の主文と理由(49p)が公開されている。

理由は4項目から成り立つが,ようは平成27年にすでに判断はされていて,その後の状況からも変更する必要がないという素っ気ないものである。もちろん,この判断と夫婦の氏をどうするかという立法政策は別であり,これは国会で論ぜられ判断されるべき事柄であるとは述べている。ここまで1ページ半である。

その後,深山卓也,岡村和美,長嶺安政の補足意見が,4ページ半ある。夫婦同姓の規定が国会の裁量を超えるほど合理性に欠くと断ずることは困難というものだ。

さらに,三浦守の意見が続く。法が夫婦別姓の選択肢を設けていないことは婚姻の自由を不合理に制約する点で24条に違反する。しかし,原告の請求は棄却されるとする。なぜなら,必要な立法措置が講じられていない状況で,婚姻届は受理できないからというわけだ。10ページ強。

一方,宮崎裕子と宇賀克也及び草野耕一は原告の請求を認め,民法と戸籍法の規定は違憲だとする。前者は,26ページを費やして,人格権,人格的利益,女子差別撤廃などを根拠として,夫婦同姓を受け入れない限り当事者の婚姻の意思決定を法的に認めないとする制約に合理性があるとは言えず,不当な国家介入だとしている。また,草野耕一は,6ページにわたり,選択的夫婦別姓制度を導入することとしないことを考量している。導入しないことは個人の尊厳をないがしろにし,国会の立法裁量の範囲を超えるほどに合理性を欠くから憲法24条に違反するとしている。
日本国憲法
第二十四条
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

LBGT差別撤廃問題や夫婦別姓問題 は,日本会議などの右派が支える自民党主流派が保持する復古的政策の中心的課題なので,その牙城を切り崩すのは大変かもしれない。こうした合理性に欠ける政策に固執する限り,日本はその没落への道から逃れられない。

[1]選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について(法務省)

2021年6月23日水曜日

チャルダッシュ

 6月23日は沖縄慰霊の日。昨年のいまごろは,平沢進にハマっていた。最近は,チャールダーシュだ。いや,ヴィットリーオ・モンティ(1868-1922)作曲のチャルダッシュだ。もともとマンドリンのためにかかれた曲だが,ヴァイオリン+ピアノでの演奏をよく見かける。多分,どこかのコンサートで聞いたことがあるのかもしれないけれど,意識には刻まれていなかった。

それが,YouTubeのおかげで,毎日のようにチャルダッシュを聴きあさることになる。いや,ヴァイオリンだけでなく,様々な楽器でチャルダッシュが演奏されているというその多様性に驚いたからだ。例えば,次のようなことになっている。

1 マンドリン:Paris Perisinakis,https://www.youtube.com/watch?v=4XBC56a8QZ4
2 マンドローネ:肝付兼美,https://www.youtube.com/watch?v=w2HxvHKHTfA
3 ウクレレ:Brittni Paiva,https://www.youtube.com/watch?v=fxZY6y5ziT4
4 ギター:Dimitri Lavrentiev,https://www.youtube.com/watch?v=0ONndN-qdLA
5 エレキギター:Girarula,https://www.youtube.com/watch?v=OYcNoPwqUPk
6 1/16ヴァイオリン:篠崎史紀,https://www.youtube.com/watch?v=UOY2SFbikN0
7 ヴァイオリン:石川綾子,https://www.youtube.com/watch?v=sL0fZbUMvqE
8 ビオラ:Julie Park,https://www.youtube.com/watch?v=g-69xNZ8XqY
9 チェロ:Luka Sulic,https://www.youtube.com/watch?v=DsRSAip5ZLQ
10 コントラバス:Yu-Ka/Uu,https://www.youtube.com/watch?v=3knjxdcn8Lg
11 オカリナ:茨木智博,https://www.youtube.com/watch?v=JnvFOe1S5X8
12 ケーナ:ロベちゃん,https://www.youtube.com/watch?v=-IxGkeZ2RX8
13 リコーダ:Sarah Jeffery,https://www.youtube.com/watch?v=iU6Z3b6pLws
14 パンフルート:Raluca Patuleanu,https://www.youtube.com/watch?v=uTJLeKYD8QE
15 ピッコロ:Leonie Brockmann,https://www.youtube.com/watch?v=Mc4yRv4RG1A
16 フルート:高木綾子,https://www.youtube.com/watch?v=HBeDoaickYo
17 オーボエ:Garrett Hale,https://www.youtube.com/watch?v=m6vZ50wgHrM
18 クラリネット:Han Kim,https://www.youtube.com/watch?v=9rqsfzy9i6I
19 ファゴット:劉澤文,https://www.youtube.com/watch?v=KNdF-OwYkLQ
20 トランペット:Andrea Giuffredi,https://www.youtube.com/watch?v=it1a5euTYfY
21 トロンボーン:中川英二郎,https://www.youtube.com/watch?v=C0in4nGdxsU
22 ホルン:Eric Ruske,https://www.youtube.com/watch?v=UR3MEysCgnk
23 サクソフォン:Maxime Bazerque,https://www.youtube.com/watch?v=O0lzvqqmrSo
24 バリトンサックス:田中靖人,https://www.youtube.com/watch?v=RVOBQBamjDA
25 ユーフォニアム:David Childs,https://www.youtube.com/watch?v=nKaH-IlXnRA
26 チューバ:Oystein Baadsvik,https://www.youtube.com/watch?v=fYOsNp4O7AU
28 ハープ:Koki Cabanas,https://www.youtube.com/watch?v=QpG1ND9ybNk
30 ピアニカ:伊藤英,https://www.youtube.com/watch?v=BOLvaEnaVUo
31 オルガン:Vincent de Pol,https://www.youtube.com/watch?v=AjHTppc5Jt8
32 電子キーボード:Ashvin Varadharajan,https://www.youtube.com/watch?v=qkdUJlGnXiI
33 アコーディオン:Vilma Slattegard,https://www.youtube.com/watch?v=qVitiRTgIAM
34 ハーモニカ:浅見安二郎,https://www.youtube.com/watch?v=Ktk3LD4z3Hk
35 オルゴール:石澤潤,https://www.youtube.com/watch?v=QXI53MHxZBY
37 マリンバ:菅原淳,https://www.youtube.com/watch?v=ZXFbzcrlMcg
38 パーカッション:Percussion Performance Players,https://www.youtube.com/watch?v=awJ-d5x0Z88
42 中国琵琶:叶桜,https://www.youtube.com/watch?v=ocKf4Tw97Z4
43 津軽三味線:はなわちえ,https://www.youtube.com/watch?v=UZ6UvwJFiw0
44 13弦箏:清水範子,https://www.youtube.com/watch?v=kWw34IfRuB4
45 25弦箏:渡邊香澄,https://www.youtube.com/watch?v=v7BYqqGSF6k
47 ヴィオリラ:妃城みれい,https://www.youtube.com/watch?v=WuaJhK2Vq9s
49 笙ダイジェスト:真鍋尚之,https://www.youtube.com/watch?v=nIJ50l9tf1E
50 口笛:青柳呂武,https://www.youtube.com/watch?v=hbOm2Fa4nMA
52 太鼓の達人チャーリーダッシュ:はる〜〜ん,https://www.youtube.com/watch?v=2_uFV5aGybg 
53 ダンス:Liscsinszky Katinka,https://www.youtube.com/watch?v=DnekDd6Xwjg
54 はげしいやつ:Ciganski Diabli ,https://www.youtube.com/watch?v=8fot7ORv6ig

本来はマンドリンの曲だけれど,離散化されたマンドリンの音色はどれも音の十分な密度が足りないように感じる。上記リストにはあげなかったけれど,桐朋祭2020の超絶技巧選手権における飯塚歩夢さんのチャルダッシュと,バイオリンはじめちゃんねるのまなみ先生の7分解説チャルダッシュ練習用楽譜つきも欠かせません。

ヴァイオリンは今のところ,石川綾子さんの↑(別バージョンも)が一番良かった。管楽器では超難しいという話だったけれど,そんなことはなくて山のように演奏例がある。びっくりしたのはパーカッションとか口笛なので,ぜひ御覧ください。

2021年6月22日火曜日

東京オリンピック(2)

 東京オリンピック(1)からの続き

開催中止や無観客どころか,会場定員の50%で上限1万人+小中学生枠+大会関係者枠(スポンサー招待等含むかも)+酒類販売OKという悲惨な状況になっているけれど,マスメディアは,スポーツの時間になると急に表情を変えてオリンピックの宣伝に暇がない。

さて,これによって,どのくらいの新たな人出が発生するかを評価してみた。

   会場             収容定員 日数  延人数
1 オリンピックスタジアム    68,000  13  130,000
2 東京体育館          7,000  13  45,500
3 国立代々木競技場       10,200  16  81,600
4 日本武道館          11,000  11  60,500
5 東京国際フォーラム      5,000  10  25,000
6 国技館            7,300  15  54,750
7 馬事公苑           9,300  12  55,800
8 武蔵野の森総合スポーツプラザ 7,200  11  39,600
9 東京スタジアム        48,000  10  100,000
10 武蔵野の森公園        -
11 有明アリーナ         15,000  16  120,000
12 有明体操競技場        12,000  14  84,000
13 有明アーバンスポーツパーク  7,000    8  28,000
14 有明テニスの森        19,900    9  89,550
15 お台場海浜公園        5,500    5  13,750
16 潮風公園           12,000  15  90,000
17 青海アーバンスポーツパーク  8,400    9  37,800
18 大井ホッケー競技場      15,000  14  105,000
19 海の森クロスカントリーコース 16,000    1  8,000
20 海の森水上競技場       16,000  14  112,000
21 カヌー・スラロームセンター  7,500    6  22,500
22 夢の島公園アーチェリー場   5,600    9  25,200
23 東京アクアティクスセンター  15,000  27  202,500
24 東京辰巳国際水泳場      4,700  16  37,600
25 札幌大通公園         -
26 幕張メッセAホール・Bホール  9,000  20  90,000
27 釣ヶ崎海岸サーフィンビーチ  6,000    8  24,000
28 さいたまスーパーアリーナ   21,000  15  150,000
29 陸上自衛隊朝霞訓練場     3,200  10  16,000
30 霞ヶ関カンツリークラブ    25,000    8  80,000
31 江の島ヨットハーバー     3,000  11  16,500
32 伊豆ベロドローム       3,600    7  12,600
33 伊豆 MTBコース        11,500    2  11,500
34 富士スピードウェイ      22,000    3  30,000
35 福島あづま球場        14,300    3  21,450
36 横浜スタジアム        35,000  13  130,000
37 札幌ドーム          41,000    5  50,000
38 宮城スタジアム        49,000    6  60,000
39 茨城カシマスタジアム     40,000    8  80,000
40 埼玉スタジアム2002      64,000    8  80,000
41 横浜国際総合競技場      72,000    8  80,000

    合  計                      2,500,700

東京オリンピック2020によって,新型コロナ感染症が終息していない状況で新たに250万人の人出を持ち込むことになる。さらに,小中学生枠(東京都だけで約80万人) と大会関係者枠(スポンサー枠等?万人)が加わるので,およそ300万人のオーダーであり,直接的な影響としては一日あたり平均約15万人の人出が加わる。

東京都特別区部への通勤・通学による流入人口は約300万人なので,これと比べれば,5%の増加というイメージだ。この流れに付随してさまざまな活動が生起するとともに,「オリンピックやっているくらいだから大丈夫だよね」効果が間接的な影響として想定される。

P. S. 赤旗6/24によれば,一般観戦チケット(再抽選後)272万枚,スポンサー等関係者向け50万枚+α,学校関係59万内の合計最大381万枚ということだ。これなら,1日平均18万人の人出となる。

[1]オリンピック競技スケジュール
[2]オリンピック競技会場

2021年6月21日月曜日

対面授業再開

 大阪府の緊急事態宣言が蔓延防止等重点措置に変更され,大阪府からの大学に対するオンライン授業実施要請が解除されたことにともなって,6/21(月)から対面授業が再開された。大学としては,一般の授業の場合は全体の1/3以上を対面授業とするようにとのこと。文科省からネジを巻かれているのだろう。

そんなわけで,久しぶりの柏原キャンパス往復で疲れた。大学は特に変わったことはなかったが,非常勤講師控室の出勤簿やコピーカード返却箱の位置を軒並み忘れていてウロウロした。名札をどこにしまったかわからなくて焦ったけれど,これは自分の鞄の中だった。

授業は,久しぶりに立って声を出し続けたので大変だったが,受講登録した学生さんは欠けることなく出席している。普通だとこの時期には2/3になっているのに,いったいどうしたことでしょう。なお,授業中にチャイムがなって換気が強制される仕組みになっている。

電車の中で森田先生にあって,最近の話を少し聞いたけれど,あまり楽しそうな話題はなかった。コロナワクチンの職域集団接種は注射の打ち手の確保がネックになっていて進みにくいようだ。あと,学長選考の意向投票が廃止されて,学長選考会議議長も企業からの外部委員に置き換わったとのこと。

昨日だったか,NHKのおはよう日本で国立大学の学長に関して,「学長の大学運営で何が 学長の大学運営に反発の声相次ぐ…国公立大学でいま何が?」というニュースをやっていたばかりだが,全国的にこんな感じになっているわけね。公的セクター(社会的共通資本)としての大学は弱体化して,様々な形で民間に切り売りされていくというプロセスが進行していく。


写真;リニューアルされたエスカレータ3号機(2021.6.21 夏至)

2021年6月20日日曜日

教育データサイエンスセンター

文部科学省:青木栄一からの続き 

2021年の10月,国立教育政策研究所の下に教育データサイエンスセンターが設置される予定だ。定員が5名のごく小規模な組織である。その目的は,(1) 全国学力・学習状況調査のCBT(Computer Based Testing)化,(2) 教育データサイエンスの普及活動,(3) 教育データ利活用に関わる検討 などとなっている。

教育ビッグデータとは,児童・生徒・学生の学習履歴や行動履歴を広範に収集分析して,個人の学習活動にフィードバックするとともに,教育行政の改善につなげよういうものである。その大きな流れにおける文部科学省側の動きの一つが教育データサイエンスセンターだろう。

これについても,青木栄一さんが「文部科学省」の中で注意を促している。すなわち,文部科学省に対する間接統治の文脈で 268pに,

「間接統治」の「旨味」は,官邸の主である首相が代替わりしても忘れられることはないだろう。むしろ経産省以外の他官庁,その他の政治主体も教育・学術・科学技術の「間接統治」を目論む流れが強まっていくだろう。総務省は学校でのICT活用の主導権を経産省から取り戻そうとするかもしれないし,財務省は効率的(安上がり)な教育政策をさらに実現するかもしれない。また,学校の抱える多種多様で大量の個人データは,マイナンバーを通じた国民管理にはうってつけである。例えば,生徒個人の成績データや問題行動データ(暴力・暴言など)を犯罪抑止に使おうとすることは十分ありえる

権力の源泉は,情報ひと(人事)とかね(予算)である。情報を持つものが権力を掌握し,ひととかねを通じて支配構造を貫徹する。ビッグデータはその情報の部分の鍵なのだ。すでに張り巡らされた監視カメラとネットを流通するデータは補足されているが,GIGAスクール構想によって学校の中にもこの神経網が張り巡らされることになる。

2021年6月19日土曜日

文部科学省:青木栄一

 中公新書2635の「文部科学省 揺らぐ日本の教育と学術」を読了した。著者の青木栄一(1973-)さんは,東北大学教育学部教授で前職は国立政策研究所の研究員(2003-2010)だ。

「文部科学省」の目次は次のようになっている。

序 章 「三流官庁」論を超えて
第1章 組織の解剖−統合は何をもたらしたか
   1 幅広い業務,最小の人員
   2 組織構成から見る文部・科技のバランス
   3 揺らぐ機関哲学
第2章 職員たちの実像
   1 文科官僚−特急券をもつ者たち
   2 キャリアパスは変化したか
   3 融合は進んだか−幹部人事と出向人事から読み解く
第3章 文科省予算はなぜ減り続けるのか
   1 67万人の教員人件費,3万校の学校施設建築費
   2 高校無償化−政治に翻弄される4000億円予算
   3 国立大学の財政−年マイナス1%の削減
第4章 世界トップレベルの学力を維持するために
   1 ゆとり教育から学力向上へ
   2 教員の多忙化−過労死ライン6割超の衝撃
   3 教育委員会は諸悪の根源か?
第5章 失われる大学の人材育成機能
   1 高大接続−誰のための入試改革か
   2 大学改革−なんのためのグローバル化か
   3 先細る日本の学術・科学技術人材
終 章 日本の教育・学術・科学技術のゆくえ
2001年に文部省と科学技術庁が統合されて発足した,定員数が最も小さな文部科学省(定員2150人)の組織,人事,予算を説明した後,その政策について初等中等教育と高等教育にそれぞれ焦点をあてて非常にバランスよく説明している。自分の見聞・体験してきた分野とほぼ重なるので非常に読みやすく,飲み込みやすかった。

青木さんの専門分野は,教育行政学,地方自治論,公共政策論であり,現在の研究テーマは,官僚制のパネルデータ分析,教育と政治の関係,教員の労働時間とワークライフバランスなどであるため,第4章のゆとり教育の失敗や教員の多忙化のあたりが丁寧に分析されていた。

ただ,文部科学行政を牛耳ってきた自民党清和会の最近の極右的な傾向を反映した教科書検定の結果としての現状(従軍慰安婦記述など)や,その観点からの教員免許更新の意味,あるいは道徳教育の復活など,文科省がかかえる復古的な動きについてはほとんどスルーされているような気がした。

一方,第5章の大学の危機について。高等教育は著者の直接の専門分野ではないけれど,実体験に裏打ちされたリアリティのある記述が,直近の様々な事態までを含んで語られており,とても共感できるのであった。例えば,221ページ
まず政治家は危機を煽り改革を叫び,制度改革の機運を醸成する。いつの間にか既存制度の改革自体が目的となり,冷静な政策論議が忘れられる。企業は,こうした醸成された状況にキャッチアップし,受託を見据えた動きをする。ここに有識者が影に日向に関わっていく。
例としては,大学入試改革が,世代交代した新自由主義的傾向の強い文教族によって,民間委託の名のもとに売り払われようとしていることが挙げられている。そう,GIGAスクール構想などのEdTechの動きについてもまったく同様なのだった。そしてその端緒となる「インターネットの教育利用」に自らの手を貸していた私なのだった。

さらに,文科省の背後にいる,官邸,他省庁,政治家,財界の「間接統治」によってこうした政策(ロジスティクス軽視,前線依存)が進められていることが明らかにされていくが,これを防ぐものがいない。例えば,266ページ
不幸なことに,文科省のこうした思考と姿勢に注意を促す外部主体がいない。教職員組合は本来,文科省を叱咤激励するべき存在だが組織率が低下し弱体化してしまった。教育学者は「エビデンスの罠」に囚われてしまい迷走している。多くの教育学者はエビデンスが政治家や各省庁に都合よく使われる危険性に気づかず,エビデンス重視の流れに無批判に乗ってしまい,その結果,文科省の挙証責任ばかりが求められるようになった。教育メディアは改革の紹介記事を特集するが調査報道は不十分で,多くは「提灯記事」の域を超えない。他方,改革に対する批判の多くが感情的で,何らかの学術的知見に裏付けられたものではない。
最後に,これを打開するための著者のアイディアとして,シンクタンクの活動を呼びかけている。詳細は,本を買って読んでください。


写真:中公新書2635 文部科学省 青木栄一(amazonより書影引用)


2021年6月18日金曜日

コロナワクチン接種状況(3)

 コロナワクチン接種状況(2)からの続き

6/17に,6/20まで出されていた緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置の継続・変更・解除についての菅首相の記者会見があった。相変わらず,リスクコミュニケーションに失敗しているのだが,気になったのがワクチン接種100万回を達成したという部分

もし,首相官邸の新型コロナワクチンについてのデータが正しくて,それ以外の接種統計情報がないのであれば,菅首相の説明は誤っている。しかし,だれもこれを指摘していない。いや,リベラシオンとラジオ・フランスの特派員のKaryn Nishimuraさんがtwitterでつぶやいていた。その結果,当日の資料が公開された。


図 首相記者会見でのワクチン接種回数資料(2021.6.17)

6/16水と6/9水の差分が728万回なので,1日平均104万回に達したと書いてあるし,菅首相は自信満々で説明していた。 うーん,ホントなの? 政府のデータが,厚生労働省の新型コロナワクチンの接種実績(2/17-4/9=159万回)と首相官邸のこれまでのワクチン総接種回数だけであれば,首相記者会見で出された数字はおかしいように思われる。それ以外の情報が加わっていたり情報が加工されているのであれば,その限りではない

そもそも,注釈にある「土日は接種がないので金曜日分・月曜日分をつないで補完」とあるが,土日の情報が欠けているのは医療関係従事者等分であり,これも月曜分として,土日を含めた数字が計上されているため,注釈のような補完をすればダブルカウンティングになってしまう。

ただし,6/9-6/16の期間ではこの影響は高々36万回程度であって,大きな要因ではない。6/17付の政府公表データが正しいのであれば,新型コロナワクチン総接種回数は,6/9で2093万回(2038万回),6/16で2660万回(2766万回)なので,その差は567万回(728万回)となる(カッコ内は記者会見資料)。先程の本当は正しくない補完の効果を加えても,603万回にしかならないので,残念ながら菅首相のいう1日100万回には惜しくも到達しないのであった。

P. S. コロナワクチン接種状況(2)で指摘した,まだ加えられていない遡及入力分を評価しているから平均100万回/日突破は正しいという説があった。あるいはそうなのかも知れないので,来週もう一度確認してみることにしよう。