これらをスキップして,第三部の傾城恋飛脚(新ノ口村の段)と壇浦兜軍記(阿古屋琴責の段)を観てきた。そういえば,第一部は東大寺,第二部は吉野,第三部前半は新ノ口村と奈良県特集なのだ。さらに四月公演は,文楽協会六十周年記念の妹背山婦女庭訓の通し狂言が続くがこれも舞台は大和だ。なお,妹背山の四段目(道行恋苧環や金殿の段など)はなくて代わりに,近松門左衛門三百回忌として曾根崎心中が入っている。
近松の冥途の飛脚を菅専助らが改作したものが傾城恋飛脚だ。その舞台である,新ノ口駅(奈良県の運転免許試験場の最寄り駅)は,近鉄橿原線の大和八木駅の隣にあり,駅前には梅川忠兵衛の記念碑も立っている。近くに住む県民にとしては,新ノ口村の段はなじみ深いのだけれど,最近の大和平野は舞台設定のように雪に包まれることもない。
口は二階の御簾内の太夫と三味線から始まり,これは亘太夫かなと睦太夫の顔を想像しながら聴いていた。当たってないです。前は藤太夫と清志郎で,女房お福のちゃり場風のあたりから,父孫右衛門が登場するまでを担当した。切は,錣太夫と宗助。忠兵衛の養子先の養父への義理と自分の息子への愛情の葛藤というのが父孫右衛門のこころだ。しかしながら,封印切で得たお金のうちの40両(500万円)を20日で消費した忠兵衛の気持ちにはなかなか感情移入できない。
藤大夫は傾城(けいせん)と発音し,錣太夫は傾城(けいせい)だったので,ちょっと違和感があった。音曲の司にある床本だとどうやらそれが正しい。最後に,字幕の善知鳥が読めず聞き取れなかったが,これはウトウだった。臙脂色は濃い赤茶だし(大阪教育大学のシンボルカラーではないか),この歳にして世界は知らないことであふれている。
写真:新ノ口駅前にある梅川忠兵衛の碑(tetsudaブログから引用)
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