大和の古道として全国的に有名なのは奈良盆地の東端で平地と山地の間を南北に走る山辺の道だ。これと並行して南北に三本走っているのが,東から上ツ道,中ツ道,下ツ道である。下ツ道は,平城京の朱雀大路と藤原京を結ぶ道で,近鉄天理線二階堂駅の西側を南北に貫いており,毎日の散歩コースでもよく歩いている。中ツ道は現在の奈良県道51号線天理環状線にほぼ重なっており,南は橘寺に至ることから近世には橘街道とも呼ばれていた。
その中ツ道と奈良盆地中央を東西を走る業平道が交差するあたりに,業平姿見の井戸があった。業平道とは,平安時代の貴族・歌人である在原業平が大和国と河内国を行き来した際に通ったとされる道筋の総称だ。姿見の井戸を東1km進んだ業平道の東端の起点あたりには,在原神社(在原寺跡)があって,ここにある井戸が伊勢物語で有名な筒井筒の井戸らしい,知らんけど。というわけで,姿見の井戸の方は筒井筒の井戸ではないので注意してほしい。
自宅から北西方向に往復60分強の朝の散歩の範囲でギリギリ到達できるあたりだ。天理市・大和郡山市から生駒郡にかけては在原業平ゆかりのポイントがたくさんある。以前在原神社を訪れたとき,筒井筒は教科書に載るくらい有名なので,天理市をあげて観光資源として売り出したらどうだろうとか話していたことがある。その際はヘルシーな業平饅頭を売り出して一儲けしたいものだ。