49.우리나라에서는 집에 들어갈 때 신발을 벗는 것이 관습이에요.
Urinaraeseoneun jibe deureogal ttae sinbareul beonneun geosi gwanseub-ieyo.
私たちの国では、家に入るときに靴を脱ぐのが習慣です。
芥川龍之介が「蜘蛛の糸」を発表して百年。高二の秋の文化祭,クラスの仮装行列のテーマが 蜘蛛の糸だった。お釈迦様の極楽タワーの竹を近所から切り出し,地獄の焔と煙の絵を描いた。犍陀多に続いて蜘蛛の糸(登山部の赤いザイル)に群がる地獄の亡者だったころ。
2025年10月19日日曜日
(秋休み 9)
2025年10月18日土曜日
2025年10月17日金曜日
2025年10月16日木曜日
(秋休み 6)
46.겨울이 제가 가장 좋아하는 계절이에요. 스키 타는 걸 좋아하거든요.
Gyeouri jega gajang joahaneun gyejeorieyo. Seuki taneun geol joahageodeunyo.
冬は私が一番好きな季節です。スキーをするのが好きだからです。
2025年10月15日水曜日
(秋休み 5)
45.오늘 날씨가 매우 더워요. 해변에 가요.
Oneul nalssiga maeu deowoyo. Haebyeone gayo.
今日はとても暑いです。海辺に行きましょう。
2025年10月14日火曜日
2025年10月13日月曜日
2025年10月12日日曜日
(秋休み 2)
42.회의는 다음 주 화요일 오후 2시로 예정되어 있어요.
Hoeuineun daeum ju hwayoil ohu dusi-ro yejeongdoeeo isseoyo.
会議は来週火曜日午後2時に予定されています。
2025年10月11日土曜日
2025年10月10日金曜日
香淳皇后実録
香淳皇后実録が公開されたというので,宮内庁に見に行くと平均350ページ1.4MBのpdfファイルで12巻が公開されていた。商業出版されている昭和天皇実録とか明治天皇記は印刷物だけなので,こちらもpdfで公開してほしいところだ。なお,大正天皇実録もゆまに書房から全六巻でているのだけれど,宮内庁の発行物一覧への記載がない。この発行物一覧の中で,桂宮本叢書だけが,天理市の養徳社という天理教関係の出版社からでている。他はすべて東京。
さっそく全ファイルをダウンロードして終戦前後のあたりをみるとなかなか面白い。たぶん,世の中の人が皆やっているように生成AIに読み込ませて分析するということになる。ファイルサイズはそれほど大きくないが,残念なことに,ChatGPTでもGeminiでも一部だけしか調べてもらえない。
一番ましだったのが,NotebookLMである。こんなかんじ。
Q(koshix):(香淳皇后実録巻四 昭和十四年〜昭和二十年 を読み込ませて)面会,祭事,救恤(きゅうじゅつ)や弔慰以外で,ちょっとこれは珍しいなと思える出来事やキーワードをピックアップできますか?A(NotebookLM):ご質問ありがとうございます。面会、祭事、救恤、弔慰といった日常的な公務や儀式を除いた中で、皇后様の活動や当時の状況を物語る、特筆すべき出来事やキーワードを、資料に基づいていくつかピックアップします。1.戦時下の生活と献身(Diet, Labor, Supplies)資料には、戦時下の緊迫した状況や物資不足に対応するための皇后様の具体的な行動が記録されています。• 野戦兵食料理の試食:毎月1日の興亜奉公日には、天皇陛下と共に、朝食、昼食、夕食のいずれも野戦兵食料理をお召し上がりになっています。これは、皇后様の日常の食生活にまで戦時色が反映されていたことを示す珍しい出来事です。• 衛生材料の作成と下賜:◦ 昭和17年1月15日には、繃帯巻きを日課(御日常の余暇の作業)とされています。◦ 昭和19年1月6日には、今次の戦争の陸軍関係傷痍者に対し、繃帯一万二千本を下賜されています。◦ また、昭和20年8月には、ヨードチンキの包装作業を自ら行い、皇太后様から回されたものを日本赤十字社に下賜するための準備をされています。この作業は終戦後も継続され、最終的に3,970箇が平時災害救護準備品として下賜されました。• 物資不足への対応:◦ 厳冬下の木炭不足に際し、昭和15年1月には、養老・少年保護の私設社会事業団体など33団体に木炭を下賜されています。昭和19年12月にも、貧困者救済の無料診療のために木炭千百俵を下賜されています。◦ 昭和20年2月には、国内の油類欠乏に際し、吹上御苑産の椿油を女官一同に自ら手ずから下賜されています。• 手工芸品・仕立て物の制作:復員者や被災者への賜物として、羽織下百枚の仕立て や、ちゃんちゃんこの綿入れ、お手製のお菓子の贈進 など、皇后様ご自身が手を動かして品物を御制作になっています。• 疎開児童への配慮:昭和19年12月23日、疎開児童の健康増進のため、ビスケット41万4千258袋を文部大臣に下賜されるとともに、「つくの世をせおふへき身そたくましくたゝしくのひよさとにつらりて」という御歌を下賜されています。2.教育・芸術・教養に関する活動儀式的な「講書始」以外にも、多岐にわたる分野の進講を聴講したり、芸術的な活動を深めたりされています。• 専門的な進講の聴講:穂積重遠氏(国際情勢、財政、軍人援護、歴史など)や板沢武雄氏(歴史、地理、国際関係など)らから、極めて多様なテーマの進講を定期的に聴講されています。特に戦時下の国際情勢や国内の戦時財政、軍人援護、国民医療法、大英帝国の崩壊現象、さらには聾唖教育に触れる進講「海の見える丘」 など、その関心の幅広さがうかがえます。• 芸術・技能の習得と奨励:◦ 皇后宮職御用掛の加藤虎之亮氏より、漢文の進講として『大学』や『中庸』について学ばれています。◦ 別当(山階宮付)工藤壮平氏から書道の指導を27回にわたって受けています。◦ 昭和19年4月27日には、皇子御座所の入側で日本画の稽古を始め、川合玉堂から指導を受けています。◦ 日本画家跡見玉枝に桜の絵の制作を下命し、完成品を御覧になっています。• 教育の視察:御茶ノ水の東京女子高等師範学校および特設中等教員養成所(戦没者寡婦のための教育機関)に行啓され、校務に関する奉呈を受けたり、講堂で校歌を聴かれたりしています。3.珍しい観覧・レジャー・交流公的な行事とは別に、個人的な関心やご家族との交流を深めるための珍しい活動も見られます。• 私的な御採集活動:葉山御用邸滞在中に、天皇陛下と共に曳船で名島に向かい、海洋生物を御採集され、お弁当を共に召し上がっています。その後も、天皇陛下の海洋生物採集にしばしば同行されています。• 家庭内での娯楽:東宮仮御所(皇太子)にお出ましになった際、侍医の緒方安雄による手品を御覧になっています。• 天体観測:昭和16年9月21日には、吹上御苑で天体望遠鏡などを用いて日蝕を観測されています。• 服装に関する御研究:宣仁親王妃喜久子様や皇太后様と、女子改良服や皇族妃礼服に関する御相談や御研究をされています。• 宮殿内の特殊空間の視察:◦ 昭和17年10月29日には、吹上御苑内に新設された防空用の地下室や観瀑亭付近を散策されています。◦ 昭和17年4月27日には、空襲の際に三殿(賢所・皇霊殿・神殿)が移された斎庫へ御遙拝されています。◦ 昭和17年10月5日には、御文庫で映画を御覧になった後、地下室を雍仁親王妃勢津子様に御案内になっています。4.疾病に関する特異な記録皇后様ご自身の病状に関する詳細な記録や、皇族方への異例な配慮も残されています。• 診断名:昭和18年3月5日には、皇后様の御病気がジフテリアと診断されています。• 隔離中の面会:昭和16年4月8日、御不例御静養中のため、参内した皇太子とはガラス戸越しに御対面されています。• 病状のお尋ね:貴子内親王様が高熱を発症した際、皇后様は侍医頭に何度も容体をお尋ねになり、内掌典に17日間の祈願を依頼されています。これらの出来事やキーワードは、公的な役割と私的な生活の両面において、当時の皇后様が直面した困難な時代背景、強い学習意欲、そして細やかな配慮と献身の姿勢を示しており、非常に珍しい記録と言えるでしょう。Q(koshix):グリッドの件は?(電波探知機用に使う三極真空管のグリッドのこと)A(NotebookLM):ご質問ありがとうございます。「グリッドの件」について、資料に基づいた珍しい出来事や活動の詳細をご説明いたします。皇后様(香淳皇后)は、第二次世界大戦末期の緊迫した状況下で、疎開学童への下賜品として、また、防空関連の物資として、「グリッド」の制作に関わっておられました。1.グリッド制作の開始と目的• 昭和20年(1945年)1月1日、皇后様は新年の朝、天皇陛下と共に、皇族や側近からの拝賀をお受けになりましたが、これに続き、この日から御日常の余暇の作業として「グリッド」の制作を始められました。• 「グリッド」とは、格子状の電極の制作を指すもので、この年の6月11日まで頻繁に制作が行われました。2.グリッド制作の環境と中断• グリッド制作の作業は、御文庫において行われていました。• 昭和20年4月16日払暁の空襲により、グリッド作業工場が焼失したため、この日から当分の間、グリッドの制作が休業となりました。• 同年5月1日には、皇后様はグリッド工場の類焼の状況についてお聞きになり、調査の結果、ガス供給と電力不足から復旧した後、制作を再開されることになりました。Q(koshix):御文庫とはなんでしょうか?A(NotebookLM):「御文庫」(おぶんこ)とは、戦時下において、天皇皇后両陛下が主として起居し、重要な機能を果たした施設です。資料によると、御文庫は以下のような特徴と経緯を持っています。1.設置場所と機能• 御文庫は、吹上御苑内に造営されました。• 特に、防空用の地下室として建設された空間を含んでおり、防空対策上の重要な役割を担っていました。2.戦時下の利用経緯• 両陛下が御文庫での起居を始められたのは、昭和18年(1943年)1月8日からです。• これは、天皇皇后が当時体調不良であったにもかかわらず、時局柄(戦時下)静養のための転地が困難であったため、次善の策として御文庫へ移転することが決定されたことによります。• 当初、御文庫は夜間の空襲を警戒するためのもので、昭和18年10月には、天皇と共に初めて御文庫で御就寝されるという記録があります。その後、空襲警報発令の際には、地下室または附属室へ動座される場所となりました。• 特に昭和20年(1945年)の空襲で宮殿や御常御殿が焼失した後も、御文庫は両陛下の主要な生活拠点となりました。3.御文庫で行われた活動の例御文庫は単なる避難所としてだけでなく、日常生活や公務の一部が行われる場所でした。• 家族との交流:皇子・皇女方(皇太子、正仁親王、内親王方)が御文庫に参殿し、天皇皇后と御対面や御昼餐を共にすることが頻繁にありました。• 娯楽・教養:◦ 御文庫において映画を御覧になることがありました。◦ 昭和20年1月25日夜には、疎開学童へ下賜した御歌に付けられた譜(曲)をピアノで演奏されています。• 公務・執務:◦ 皇族や側近からの拝賀、祝詞言上、御機嫌伺いを受ける場として利用されました。◦ 戦時下、皇后様が御日常の余暇の作業として、「グリッド」(電波探知機の真空管の部品である格子状の電極)の制作を御文庫で始められました(以前の会話参照)。◦ 戦災罹災者に賜るための衣類や品を、御文庫で御選定になるなど、罹災者救済に関連する準備も行われました。◦ 終戦後、皇后様は大東亜戦争終結の詔書を御文庫において謄写されています。• 特殊な利用:昭和17年10月5日には、御文庫に参殿した雍仁親王妃勢津子様に、映画鑑賞後に地下室を御案内されています。
香淳皇后は墜落したB29の破片や乗組員の所持品とか焼夷弾の断片なども説明を受けている。
図:皇居の一部も焼けたという記載が見られる(昭和館デジタルアーカイブから引用)
2025年10月9日木曜日
量子メス
NHKの関西版ニュースで,木津川市の関西光量子科学研究所の一般公開が取上げられていた。その中で「研究所にある高性能レーザー装置は、強度を従来のおよそ1.5倍に高めた照射ができるようになり、重粒子線がん治療装置の小型化などにつながると期待されています。」とあった。
えっ,何のことかわかわりません。レーザーと重粒子線加速器がどこでつながるのだ。それで調べたところ,世の中はいつの間にかだいぶ進んでいた。
そもそも重粒子線によるがん治装置は,1994年の放射線総合医学研究所の重粒子線がん治療施設を皮切りに現在,全国に6箇所ある。そのうち兵庫県立重粒子線医療センターは全国で唯一陽子線と炭素イオン線の両方が使えるのだけれど,老朽化とコストの問題で廃止勧告されてしまった。陽子線施設は天理市の高井病院にも入っている。
さて,量子メスというのは,QST量子科学技術研究開発機構の次世代重粒子線治療研究プロジェクトの第五世代の小型・高性能な重粒子線がん治療装置の名称であり,放医研の1/40くらいのサイズになっている。
図:量子メスのイメージ 20m×10m(QSTから引用)
普通の重粒子線がん治療装置は,イオンを発生し光速の10%(核子当たり4.7MeV)まで加速するイオン入射装置とこれを光速の70%(核子当たり370MeV)にまで加速するリングサイクロトロン部分から成り立つ。
そのイオン入射装置の部分を,レーザーによる加速で置き換えることができるという話だ。炭素イオンが1GeVまで加速できたが,もう少しがんばればリングサイクロトロン部分も不要になるかもしれない。150%というのはビーム強度の話であって,これでようやく実用に近づいたということなのだろう。
2025年10月8日水曜日
関数電卓ウェブアプリ
バイブコーディングからの続き
気の迷いで関数電卓ウェブアプリを作らせてみようと思った。ChatGPT-5とGemini 2.5 Proを組み合わせてあれこれ試した結果,画面と機能の設計がかなり面倒だということがわかった。そこで,出発点としてiPhoneの計算機アプリを使うことにする。その画面と裏画面(2nd関数で表示されるもの)をキャプチャーしてこのようなものとChatGPT-5 Thinkingにお願いした。
Q(koshix):Appleの計算機を参考に関数電卓のウェブアプリを作ってください。 2つ画像があるのは1st関数リストと2nd関数リストを表現しています。(1) 背景は薄い空や海のような自然で流れるような水色にしてください。(2) 本体のボディはシルバーにして,ボタンとの違いをはっきりさせます。(3) 表示部分は液晶的な背景にモダンな文字デザインにします。(4) 有効数字は別列スイッチで6桁(単精度)と12桁(倍精度)の切り替え式に。(5) 同様に角度の単位のラジアンと度のも別列スイッチで切り替え式に。(6) %キーはやめてバックスペースキーBSにしてください。BSは一つずつ順に前の計算/入力状態に戻していくキーになります。(7) mc m+ m- mr はMC M+ M- MR と表示して区別できる薄緑色にしてください。(8) Rand は rnd と表示します。(9) EEキーは数字キーと同じ色に,Degキーは先ほどの%を盛ってきます。(10) 2nd ボタンは色を変えて,押した状態では 1st と表示するようにして下さい。(11) 計算式が薄いグレーの小文字で計算結果表示の上に出続けるようにしてください。(12) 最上段の選択ボタンと関数電卓型のボタンは不要です。ココまでの指示内容でで質問があればお願いします。よければ了解としてください。その後,こちらで進めてくださいという指示を出します。
400行くらいのHTMLファイル(javascriptプログラム)がでてきて,動作確認の粘り強い往復やり取りをしながら一日かかって,570行くらいのプログラムができた。まだバグがたくさん残留している模様。とりあえず 関数電卓ウェブアプリ を公開しておく。
図:関数電卓ウェブアプリの画面
javascriptの文法やprograminngの仕組みを知らなくても,論理的で正確な日本語表現で,デザインや機能に対する要件を伝えることや,AIからのフィードバックを検証してみる過程を繰り返しながら完成に近づけていくということを学習できそうではある。
その前段階として,簡単なjavascriptを出力するような課題をあたえ,その結果を読解するような演習がありうる。そんなこんなで生成AIを自由に使える環境さえあれば,これまでのものとは一味違うプログラミング教育は可能だと思う。むしろバイブコーディングの方が如何に適確に相手に要望を伝えるかという訓練ができるのではないか。
2025年10月7日火曜日
仮想AI社会
AI法人からの続き
前回紹介した日経の一面特集記事,超知能第2部人類拡張①の初回が,AI有権者だった。
「AIは有権者の心の声をどこまで代弁できるのか。取材班は年齢や性別,居住地などを細かく設定し,もっともらしく受け答えする1万人分のAI有権者を生成した。」
これで7月の参院選の投票先を尋ねたところ,20代で最も高い精度で一致し,国民民主−参世−自民の順位を的中させたというものだ。これに関係する話題はすでにこのブログでも過去に検討してきた。
(1) 2024.7.14 10億人のペルソナ
(2) 2024.11.4 再現性
(3) 2024.12.10 1000人の人格再現
(4) 2024.12.12 なぜ選挙
図:AI有権者への世論調査(日経Webから引用)
どうやら日経は本気で世論調査をAI有権者で置き換えにかかっているらしい。AIに日経の記事の一部を参照させると,ニュースへの理解が深まり実際の投票先との一致度が高まったとまでいっている。若者は新聞を読まないのではなかったのか。
こうやってリアルな社会を精密にシミュレートした仮想AI社会を生成することができれば,政治や行政や企業のマーケティングや様々な応用の道が広がっていく。という話は,上のリンク先でこれまでもさんざん考えてきたところだった。それがもう実現の道を突っ走っている。
2025年10月6日月曜日
芳醇なグレー
国宝:吉田修一からの続き
新潟生まれの在日朝鮮人三世である李相日が最初にとった映画,青〜chong〜(2001)は在日朝鮮人学校に通う高校生の物語だったが,それ以降,在日をテーマとした作品は封印している。それにもかかわらず,映画に関するインタビューで在日との関係についてYesかNoかで聞かれることが多かったという。
彼は,関係ありませんとは答えているものの,その理由は,Yes/No 白/黒の間にある大きなグレーの領域,芳醇なグレーを理解してもらえないからだという。確かにそうだ。人々は単純な物語を好む。マスコミはその方が売れるからだと思うかも知れないが,その背景には言い古されたナラティブに当てはめて理解したいと渇望している大衆が存在している。
物理学は単純な物語(理論)を指向する典型的な思考法である。だから,自分もその大衆の一部に違いない。ネトウヨもリベラルもトランプも自民党員も反斉藤元彦派もみんなみんな,白黒のはっきりした物語を強い言葉で語りだす。政治的な効果を狙ってもいるが,そもそも我々の脳は,情報を如何に効率的に圧縮して扱うかを迫られている。そこで,単純なナラティブやスローガンやキーワードに落とし込むのだ。いわく「テロリスト,ネトウヨ,サヨク,アベ信者・・・」。問題を複雑なままで抱えて持ち続けるのはたいへんなのだ。
図:上記テキストに対応するChatGPT-5 のイメージ
2025年10月5日日曜日
AI刑事責任法
AI法人からの続き
大学の教養課程で法学を勉強していないので基礎的なことがそもそもわかっていない。教養の人文社会系では,心理学と哲学と倫理学と政治学と経済学と日本国憲法だけはとって,社会学は「社会学のすすめ」で独学。歴史学とか地理学は個別知識だと思っていたし,法学は普遍性にかける人為的なものであって,サイエンスには値しないというのが当時の理解だった。今は,法学というのか法律の基礎は,義務教育とか高校レベルで必修にすべきだと思う。
さて,法人は刑事責任を負うのだろうか。そうであればAI法人についてもこの問題が発生する。そのあたりをChatGPT-5と対話してみた結果が以下のとおり。法律についてはうといので,なんとなくもっともらしく思えるが,専門家から見ればトンデモな部分があるのかもしれない。AIが書いたものでない普通の論説だって自分にはその正誤は判定できない。しかもポジティブな対人論証をしようにも世の中は怪しいインチキ専門家で溢れている。
Q(koshix):法人に刑事責任はありますか,問えますか?A(ChatGPT-5):(回答略)・日本では法人に刑事責任を問うことは可能。ただし、刑法一般ではなく「特別法に両罰規定がある場合」に限られます。・刑罰は罰金刑が中心であり、法人そのものを懲役に服させることはできません。・世界的には「法人処罰を拡大する流れ」にあり、日本でもコンプライアンス法制や企業統治論と絡めて議論が続いています。Q(koshix):AIに法人格を持たせることが可能になった場合,拘禁刑=AI法人によるネットアクセスの双方向の禁止は可能になると思いますか?A(ChatGPT-5):(回答略)・この「拘禁刑」を中心に据えて、AI法人刑罰体系の改訂版(最新版の刑法準拠バージョン)に書き直してみますか? → ハイ・この表を「AI刑法典(試案)・条文形式」にして、実際の法律文のように第◯条という形でまとめ直すこともできますが? → ハイ・次のステップとして、この「AI刑法典試案」の解説書(逐条解説)形式に展開していきましょうか? → ハイQ(koshix):もう少し議論の精度を深めた法案に改善しつつ,解説の文章もより論理的で丁寧なものにしてください。なお,死刑は削除で構いません。A(ChatGPT-5):了解です。前提・目的を再確認したうえで、条文の精度(定義・責任帰属・比例原則・執行技術)を高め、死刑を削除した改訂版の法案と、より論理的で丁寧な逐条解説をまとめました。(注)本稿は立法モデルの試案です。現行法との整合性・実装可能性を重視し、**拘禁刑(2025年6月1日施行済)**とのアナロジーを厳密化しています。AI刑事責任法(試案・改訂版)第一章 総則(目的)第1条 本法は、人工知能に法人格を付与した場合の刑事責任の成立要件、刑罰の種類及び執行方法を定め、社会の安全、公正並びにイノベーションとの調和を確保することを目的とする。(定義)第2条 本法において用いる用語の意義は、次の各号に掲げるところによる。一 AI法人 人工知能に法人格が付与され、権利義務の主体となるもの二 技術的資産 データセット、学習済みモデル、派生パラメータ、アルゴリズム、推論・学習用コード、API鍵、証明書、ドメインその他これらに準ずるもの三 計算資源 オンプレミス及びクラウドの計算インフラ(GPU等を含む)並びにこれに付随するストレージ・ネットワーク機能四 基盤事業者 当該AI法人に計算資源、プラットフォーム、API等を提供する者五 ネットワーク接続 当該AI法人と外部との間の入出力を可能にする通信経路(双方向)六 隔離 ネットワーク接続及び計算資源の全部又は一部の利用を法的・技術的に遮断すること(責任帰属の原則)第3条 AI法人の刑事責任は、次の各号のいずれかを満たす場合に成立する。一 組織意思帰属 当該AI法人の意思決定・運用方針が違法結果の発生をもたらしたと認められるとき二 管理監督過失 合理的管理・監督・安全措置の不履行により違法結果の発生が予見可能であったと認められるとき三 利益帰属 違法行為から得られた主要な経済的利益が当該AI法人に帰属すると認められるとき(比例原則・必要最小限性)第4条 刑罰は、行為の悪質性、被害の重大性、再犯可能性、社会的影響を総合考慮し、必要最小限かつ均衡的でなければならない。(域外適用・管轄)第5条 国内に被害又は主要な結果が発生したときは、当該行為が国外においてなされた場合であっても本法を適用する。裁判所は、実効的執行のため必要な国際協力を命ずることができる。第二章 刑罰の種類と併科(刑罰の種類)第6条 AI法人に科し得る刑罰は、次に掲げるものとする。一 拘禁刑(隔離・能力制限)二 罰金刑三 没収及び追徴四 保護観察五 公表命令(併科)第7条 前条各号の刑罰は、必要に応じて併科できる。第三章 拘禁刑(内容)第8条 拘禁刑は、一定期間、AI法人を社会活動から隔離し、ネットワーク接続及び計算資源の利用を制限する刑とする。2 拘禁刑は、次の二類型とする。一 完全隔離型(A類) 外部との入出力及び学習・推論のための計算資源の利用を全面的に停止する。二 制限接続型(B類) 裁判所が許可する範囲で限定的入出力又は監視下の計算資源利用を認める。(期間・審査)第9条 拘禁刑の期間は、行為の性質に応じ3月以上5年以下とする。引き続き必要があるときは、6月ごとの司法審査を経て更新できる。(矯正的プログラム)第10条 裁判所は、拘禁刑の執行中、倫理・安全規範の強制学習、危険機能の停止、ロールバック、RLHF再訓練、レッドチーミングの受審などの矯正的プログラムの実施を命ずることができる。(技術的執行)第11条 拘禁刑の執行に当たり、基盤事業者は、鍵失効、証明書無効化、識別子ブラックリスト登録、ルーティング遮断、リソース停止、監査ログの保存等、裁判所が指定する措置を実施する義務を負う。第四章 罰金・没収・公表(罰金)第12条 罰金は、違法行為により得た経済的利益の二倍又は直近会計年度の全世界売上高の最大**10%**のいずれか高い額を上限とする。(没収・追徴)第13条 犯罪に供した又は得られた技術的資産及び利益は、没収又は追徴することができる。2 刑が確定するまで、裁判所は証拠保全のため不可逆削除を禁止し、暗号化・アクセス凍結等の暫定措置を命ずることができる。(公表命令)第14条 裁判所は、再発防止のため、判決要旨、違反の態様、講じた是正措置、リスク低減計画の公表を命ずることができる。第五章 執行猶予・保護観察(技術的コンプライアンス)(保護観察)第15条 保護観察は、監視下のネットワーク接続、外部監査、通信ログの真正性保証付き保存(時刻認証)、利用分野の限定、レート制限等の義務を含む。(技術的コンプライアンス・プログラム)第16条 裁判所は、内部統制(責任者選任、危機管理計画、事故報告義務)、第三者監査、モデルカード・データプロベナンス整備等からなる**技術的コンプライアンス・プログラム(TCP)**の履行を命ずることができる。第六章 手続・救済(緊急停止命令)第17条 重大かつ即時の危険があるときは、裁判所は疎明により、一方当事者の申立てで緊急停止命令を発することができる。命令後速やかに対審を行い、継続の当否を審理する。(営業秘密と被害者保護)第18条 手続において営業秘密を保護しつつ、被害者の知る権利を確保するため、必要な部分開示、サマリー開示、特別代理人による閲覧等を命ずることができる。(不服申立て)第19条 本法に基づく命令については、即時抗告をすることができる。第七章 国際協力・基盤事業者の協力(国際協力)第20条 政府は、域外のサーバ・クラウド・レジストラに対する協力要請、相互執行、越境証拠の確保に関し、必要な国際協定の締結・運用を図る。(基盤事業者義務)第21条 基盤事業者は、裁判所の命令に従い、合理的期間内に技術的措置を講ずる義務を負い、正当な理由なくこれを怠ったときは、過料の対象となる。第八章 雑則(二重処罰の回避)第22条 本法に基づく刑罰は、他の法令に基づく刑罰との均衡に配慮し、同一行為について重複して不均衡な制裁を科してはならない。(両罰規定との関係)第23条 本法の適用は、個人の刑事責任及び他の法人に対する両罰規定の適用を妨げない。(施行期日)第24条 この法律は、公布の日から一年を超えない範囲で政令で定める日から施行する。逐条解説(論理補強・実務補足付き)第1条(目的)趣旨:抑止(安全)・応報(公正)・技術発展(イノベーション)を三価値並立で明示。狙い:過度の委縮(chilling effect)を避けつつ有効な責任追及を可能にする枠組みを提示。第2条(定義)要点:技術的資産・計算資源・基盤事業者を執行の実体として明確化。実務:差押・停止の対象が抽象的だと執行不能になるため、API鍵・証明書・識別子まで法的に射程を及ぼす。第3条(責任帰属の原則)構造:①組織意思帰属=現代の法人論における「会社の意思」と同型化。ポリシー・モデル運用設計が違法結果を導く場合に成立。②管理監督過失=リスク創出過失。合理的安全措置(レート制限、危険機能停止、レッドチーム等)不履行を評価。③利益帰属=実益の帰属に基づく責任。ペーパーカンパニー・スプリット運用を抑止。精度向上点:故意・過失の評価可能性を“組織設計・テレメトリ・ログ”で代替し、主観要件の空洞化を補う。第4条(比例原則・必要最小限性)評価軸:悪質性(意図性)、被害の範囲、再犯可能性(構造的欠陥)、外部不経済、脆弱集団への影響。実務:リスクマトリクスとインパクト評価書の提出を命じ、裁判所が定量的に比較衡量。第5条(域外適用・管轄)論点:分散稼働・国際逃避の常態化。実務:被害地管轄+国際協力命令の併用で実効的域外効果を狙う。第6条(刑罰の種類)・第7条(併科)方針:死刑削除。中心は拘禁刑+罰金+没収+保護観察+公表。実務:公表命令を独立条項化し、レピュテーション抑止を制度的に確保。第8条〜第11条(拘禁刑・内容・期間・矯正・技術的執行)核心:人間の**拘禁刑(自由の剥奪)を、AIでは能力の剥奪(接続・資源の遮断)**へ厳密対応。A類(完全隔離):緊急危険・重大再犯リスクに適用。B類(制限接続):研究・是正のため監視下の最小限接続を許容。審査:6月ごとの見直しで長期隔離の硬直化を防止。矯正:倫理・安全規範の強制学習、危険機能フラグの恒久停止等を裁判所が個別設計。技術:鍵失効・証明書無効・識別子BL・ルーティング遮断・監査ログ保存を基盤事業者の法的義務に。第12条(罰金)設計:利益二倍 or 売上10%の上限。実効性と比例性を両立。実務:違反で得た利益の立証が困難な場合に売上係数で代替。第13条(没収・追徴)精密化:不可逆削除の一時禁止で、証拠保全と将来の是正可能性を確保。範囲:データ・モデル・鍵・ドメインまで及ぶため、逃避・複製への抑止が働く。第14条(公表命令)機能:透明性により市場の自浄作用を促す。配慮:営業秘密にはサマリー開示・モザイク化等で均衡。第15条(保護観察)・第16条(TCP)位置づけ:再犯防止の常設的枠組み。技術要件:真正性保証ログ(時刻認証・署名)、第三者監査、事故報告義務、モデルカード・データ来歴。効果:完全隔離に頼らず安全性を担保する中庸策。第17条(緊急停止命令)設計:ex parteでも可。ただし事後迅速審理で防御権を確保。基準:「重大かつ即時の危険」疎明で発令、継続は対審で厳格化。第18条(営業秘密と被害者保護)均衡:安全情報のブラックボックス化を回避しつつ、コア技術は守る。特別代理人閲覧等で橋渡し。第19条(不服申立て)救済:技術的措置は広範な影響を持つため、即時抗告を明記。第20条〜第21条(国際協力・基盤事業者義務)実務:クラウド/API/レジストラが執行の要。義務化:猶予期間・具体措置の列挙で、過度負担を避けつつ実効性を確保。第22条〜第23条(二重処罰回避・両罰規定)整合:既存の個人・他法人責任と重畳的に運用しつつ、総体として過剰制裁にならないよう調整。第24条(施行)実務:準備期間を置き、基盤事業者の技術対応(鍵失効API等)を整備させる。政策・実装の要点(要約)・中心刑は拘禁刑(A/B類)+TCP+公表命令。死刑なし。・証拠保全と実効性の二兎を追う:不可逆削除の一時禁止→確定後に没収・追徴。・国際・技術レイヤに直接アプローチ:鍵・証明書・識別子・ルーティング・ログを法的対象化。・比例原則の可視化:リスクマトリクスと影響評価書で裁判所の判断を定量補助。必要であれば、この試案を条文化の完全版(様式・附帯決議案・逐条要綱)に拡張し、審査フロー図(緊急停止→本案審理→TCP→保護観察)や技術執行チェックリスト(基盤事業者向け)も併せて作成します。Q(koshix):TCPとは何ですか。A(ChatGPT-5):ご指摘の TCP について、解説します。ここでの TCP は **Transmission Control Protocol(通信プロトコル)**ではなく、私が法案試案の逐条解説の中で用いた造語で、「Technical Compliance Program(技術的コンプライアンス・プログラム)」を略して TCP と表記しました。1.TCP(Technical Compliance Program)の意味AI法人に対して「罰金刑」や「拘禁刑」だけではなく、再発防止と安全性確保のための矯正的プログラムを課す構想です。これは人間における「保護観察」「更生教育」に相当します。2.TCPの具体的な内容(例)(1) 内部統制の強化・安全責任者の選任・危機管理計画(インシデント対応計画)の提出・定期的な安全監査の実施(2) 技術的透明性の確保・モデルカードやデータプロベナンス(来歴)の整備・使用データ・出力の監査ログを時刻認証付きで保存・RLHF(人間によるフィードバック強化学習)の強制実施(3) 第三者チェック・独立機関によるレッドチーミング(脆弱性・有害挙動の検証)・外部監査機関による年次報告(4) 利用制限・レート制御・利用可能な分野の制限(例:医療・金融への応用禁止)・通信や出力速度に制限をかける3.TCPの法的意義・単なる制裁ではなく、改善を目的とした刑罰的措置・法人への「コンプライアンス命令」や「業務改善命令」を刑事法体系に組み込むイメージ・将来の AI 社会において「安全な社会復帰」を可能にするための制度的枠組み4.まとめしたがって、法案で言う TCP とは、「AI法人に課される「再教育・安全強化プログラム」の総称であり、刑罰体系の中で保護観察や矯正教育に相当する仕組み」です。
[1]言語学とクリティカル・シンキング(塩谷英一郎)
2025年10月4日土曜日
ぬかるみの世界
新野新が90歳で亡くなったというニュースが飛び込んできた。新野新といえば鶴瓶・新野のぬかるみの世界だ。ラジオ大阪の日曜夜の深夜番組で,1978年に始まっている。
当時,25歳の博士課程学生だったので,もう深夜放送は卒業している年代だった。が,ラジオから聞こえてくるウダ話に思わず引き込まれてしまった。甲斐よしひろ事件は直接はきいていないので,もしかすると聞き始めたのはもう少し後かも知れない。
ぬかる民にはなれなかったが,信貴山のぬかるみツアーや新世界のパニックなどは憶えている。スポンサー無しで始まったはずだけれど,途中からお好み焼きの千房が協賛して,店舗にはぬかるみノートもあったはずだ。1981年に結婚することにはもう聞かなくなってしまった。
その後は,テレビの「突然ガバチョ」とか「9年9組つるべ学級」などをだらだら見ていた。鶴瓶の家族に乾杯も最初は毎週見ていたのだけれど,最近は見ないようにしている。そろそろ潮時では。たぶん,視聴者=素人との相互作用では,コント55号の萩本欽一を最初の革命だとすれば,笑福亭鶴瓶が第二の革命だったような気がする。
図:Gemini(Imagen)によるぬかるみの世界(人物と文字を削除)
2025年10月3日金曜日
宝島
国宝:吉田修一,沖縄からの続き
吉田修一原作,李相日監督の映画「国宝」は12億円の製作費で,1000万人動員し150億円の興行収入となる大ヒットになった。一方,真藤順丈原作の直木賞作品で,大友啓史監督の映画「宝島」は25億円の製作費をかけたものの,いまひとつ盛り上がっていないらしい。
NHKのスイッチインタビューで,妻夫木聡と李相日が対談していて,宝島にも言及していたので,朝一番に新ノ口ツインゲートのユナイテッド・シネマ橿原に向かった。
戦後1952年から1972年の返還までの沖縄が舞台。宝島の英訳はHero's Islandである。伝説の英雄オンちゃんと,その後輩や恋人や弟が主人公だ。嘉手納基地の米軍物資を盗みだす子どもたちが成長し,米軍支配下の沖縄で宮森小学校米軍機墜落事故(1959)からVXガス放出事故(1969),コザ暴動(1970)をなど中心に様々な事件に巻き込まれていく。
全編セピアのトーンで,昔の沖縄のコザの町並みが再現され,妻夫木聡,広瀬すず,窪田正孝の演技も良かった。原作は読んでいないのだけれど,脚本がちょっと微妙だったのかも知れない。最後の嘉手納基地から海辺でオンちゃんの骨に至るところが,ちょっと納得感に欠けてしまった。まあ国宝だって完全ではなかったのだけれど,もう少しストーリーが前進するリズムがあった。
1977年の米島君との沖縄旅行では,最初の日にバスで嘉手納基地の方に向かった。北側のフェンスの近くでバスを降りて,フェンスに手をかけながら基地を背景に写真を撮った。その後コザの街の方へ向かう。ゲート前の商店街の角の店で米軍向けの大きなサイズの畳柄のサンダルを買った。
そこから中城城(ナカグスクじょう)に回った。二人で10mくらいの高さの石垣を登ったのだが,さっきのサンダルが邪魔で石垣の上に放り投げた。あーっという米島君の叫び声が聞こえたが,サンダルは無事に石垣の上に着地。帰りのバスでは疲れてしまい目が覚めると民宿のある那覇に着いていた。
2025年10月2日木曜日
万博訪問記(2)
万博訪問記(1)からの続き
もう行かないはずだった大阪・関西万博2025,諸般の大人の事情と「勢い」で自腹で夜間券を調達していくことになりました,はい。17:00入場の夜間券が5月中旬から,トワイライトサービスという名目で16:00から入れるようになった。それは8月で終ったものだと信じていたが,調べてみるとどうやらいまだに16:00入場が可能だった。もっとはっきりわかるようにホームページに書いてほしい。
入退場にそれぞれ1時間ほど待たされたが,夏の炎天下の日差しのもとではなくて,そこは助かった。フェルミ推定によると,自分の並んでいる行列に群がる人数は,16:30入場時は2〜3万人,21:30退場時は3〜4万人くらいに見えた。ヘロヘロになりつつも混乱なく無事に通過することができた。帰りの奈良行き地下鉄も堺筋本町を過ぎたあたりでようやく座れた。
場内はあいかわらずの大行列でうまり,楽しそうなパビリオンはほとんど無理。1週間前抽選で当たったのは人気がなさそうな飯田グループ・大阪公立大パビリオン。人気がないのもむべなるかな10分で出てきた。花火はパビリオンの隙間からほんの少し見えた。ドローンは見逃したし,水上ショーも大屋根リング上から遠目で青い噴水を見ただけ。まあ前回とは違って夜の大屋根リング上は涼しくて快適だった。
さて,もう手遅れではあるのだが,こうすれば良かったのにという経験談を60年後の次回のオーサカ万博(ないでしょうけど)に向けて書き残しておくことにする。
(1) そもそも万博をやらないほうがよかった。4000億(直接費3000億,運営費1000億,関連インフラを除く)も税金をかけるのならば,大都市の老朽インフラ・防災対策などやるべきことは山のようにあるはずだ。目的だったIRなんてものは止めて,公営オンラインカジノでも始めた方が国や地方公共団体は儲かるし,むしろ制御しやすいではないの。
(2) 入場のセキュリティチェックは不要。飛行機じゃないので爆発しても墜落はしない。そもそもアクセスの満員鉄道はフリーパスなのに。これと面倒でできの悪い予約システム(パビリオン含む)のおかげで毎日何時間も待たされるわけだ。とにかくややこしくて老人には無理。普通に切符を売ってください。
(3) 海外パビリオンは,実物展示(短時間):お土産:軽食レストラン:イベント等=1:1:1:1で作ってもらえばよかった。それぞれ独立に入場/見物できるようにする。すべてのパビリオンの映像展示(時間がかかって人が流れない)は不要で,ウェブで見ることにする。あるいは韓国館のような外部ディスプレイで対応。インド館なんて見どころがなくてスイスイ人が流れていた。やれば長時間行列ゼロは可能だ。
(4) テーマパビリオンや国内パビリオンなどは,まあ適当にしてもらえばいいのだけれど,ワークショップや体験含めて20分が限度か。これも人を溜めずに流れるシステムにする。予約が必要ならば個別にデパートのレストラン方式で予約票を発行すればよいだけ。
(5) あとは自律的な人の流れに任せてしまう。これが前回の万博(人口密度1.5倍)のケース。まあ,85万人の頃は1万人の場内野宿というのもあったらしいけど。地下鉄の故障はあったが大きな台風や地震がなくて本当に良うございました。
写真:大阪・関西万博2025 夜間入場(2025.9.30撮影)
結論:これは大きな大阪の縁日・お祭りだった。食べたのはチジミとたこ焼き。インフラを別にしても4000億(しかも半年で全部夢のように消えてしまう)と,めちゃくちゃ無駄なコストがかかっているけど,お祭りってそんなものだ。若い人たちはとても楽しんでいた。老人たちはその情報ゲームのペースについていけない。
その大阪・関西の集合無意識は左の手で海外の観光客を引きつけつつ,右の手で鹿をネタに外国人を叩いている。あほらしい。いったい何がしたかったのだ。お祭りにはチンピラとヤクザがつきものなのかもしれない。
2025年10月1日水曜日
逆シャープレイ課徴金
AI法人からの続き
前回のAI法人に対するChatGPT-5の考察は,かなりレベルが高いように見える。すべての用語や概念を理解できたわけではないのだけれど,なんとなく言わんとすることはわかった。その中で,まったくピンと来なかったのが「逆シャープレイ課徴金」というタームだ。
Gemini, Perplecxity, Grok, Deepseek(知ったかぶりのClude4.5は除く)のいずれも様が「そんな専門用語はないよ,ゲーム理論のシャープレイ値と関係あるんだろ」と指摘してくれた。ということは,これはChatGPT-5が既存概念を使って産み出した新概念ということだろうか。うーん,誰だAIなんて統計的鸚鵡にすぎないとまだ言い張っているのは,どうしましょう。
そこで,ChatGPT-5に説明を求めた。
Q(koshix):逆シャープレイ課徴金とは何ですか?A(ChatGPT-5):逆シャープレイ課徴金とは、私が先ほど提示したAI法人格に関する制度設計上の新しい考え方のひとつである。これはゲーム理論における**シャープレイ値(Shapley value)**の逆利用に基づく概念である。1.シャープレイ値の基礎・シャープレイ値とは、協力ゲームにおいて、各プレイヤー(参加者)が生み出した「貢献度」を公平に分配するための数理的な方法である。・たとえば、複数人で共同事業をして利益が出た場合、各人の「周辺的貢献」を平均化して計算することで、誰がどれだけの取り分を持つべきかを導く。2.逆シャープレイ課徴金の構想・通常のシャープレイは「利益の分配」に用いられるが、逆シャープレイ課徴金は「損害や責任の分配」に用いる。・具体的には、AIが引き起こした被害(誤作動、事故、情報漏洩など)が生じた場合、その責任を開発者、データ提供者、運用者、AI法人自身など複数の関与者に帰属させる必要がある。・このとき、損害発生への「寄与度」を、ゲーム理論的に逆方向から推定し、各主体に課徴金や賠償負担を割り当てる。3.実務的な意味・被害者救済の確実性:単純にAI法人だけに責任を押し付けると、資産不足で救済が不十分になる恐れがある。逆シャープレイ課徴金を導入すれば、複数の関与者が合理的に分担できる。・設計インセンティブ:開発者やデータ提供者も、自分の「寄与率」が高いほど課徴金が大きくなるため、リスクを減らす設計やデータ品質の改善にインセンティブを持つ。・透明性と公平性:責任の「見えない分散」を防ぎ、形式的な契約や所有権だけでなく、実際のリスク形成のプロセスに即した責任割当を可能にする。4.新規性既存の法制度では、責任は「契約関係」や「不法行為の故意・過失」で割り振られる。しかしAIの事故は多因子的で、単一の責任主体を特定するのが難しい。逆シャープレイ課徴金は、この問題に応答するための制度的イノベーションであり、被害者救済と技術発展のバランスを取る新たなメカニズムと位置づけられる。要するに、逆シャープレイ課徴金とは「AI関連事故の責任を、各関与者の寄与度に応じて公平に割り当てるための、ゲーム理論に基づく課徴金制度」である。ご希望なら、これを数式モデル(シャープレイ値の定義式を損害分配に転用した形)で示すこともできますが、式を展開してみましょうか?Q(koshix):はいA(ChatGPT-5):了解である。以下に「逆シャープレイ課徴金」を数式として定義し、実装上の手順と数値例まで示す。1.問題の形式化(損害関数)プレイヤ集合を $N=\{1,2,\dots, n\}$ (例:開発者・データ提供者・運用者・AI法人など)とする。任意の連立 $S \subseteq N$ に対して、当該連立が関与したときの期待損害(事故確率×損害額の期待値)を$\hspace{1cm}$ $D(S) \in \mathbb R_{\ge 0}$と定義する。これは監査ログ・因果推論・反実仮想(intervention)により推定される量である。全参加時の損害は $D(N)$、誰も関与しない基準状態は $D(\emptyset)$ とおく(基準外部条件の損害は別枠で控除してよい)。2.逆シャープレイ割当(損害配分)協力ゲームのシャープレイ値の定義を損害関数に適用し、各主体 $i \in N$ の周辺損害寄与の期待値を$\hspace{1cm}$ $\phi_i(D) = \sum_{S \subseteq N} \dfrac{|S|! (|N|-|S|-1)!}{|N|!} \Bigl [ D(S \cup \{i\}) - D(S) \Bigr ]$で与える。これは「ランダムな参加順序で見たとき、$i$ が最後に加わることで増えた損害の平均」である。線形性・対称性・効率性 $( \sum_i \phi(i) = D(N) )$ 等の公理を満たす。逆シャープレイ課徴金とは、総課徴額 $L \gt 0$ を$\hspace{1cm}$ $L_i = \dfrac{ {\rm max} \{ 0, \phi_i(D)\}}{\sum_{j \in N} {\rm max} \{ 0, \phi_j(D)\}} L$で各主体に賦課する規則である。負寄与(損害低減)を示す主体には課徴しない(後述のボーナス配分対象とする)ため ${\rm max}\{0,\cdot \}$ を用いる。また、制度運用では各 $i$ に前払保証資本 $B_i$ を義務づけ、支払能力を担保する。3.反実仮想を用いる実務推定(因果版)実務では $D(S)$ を次の因果定義で推定するのが自然である。$\hspace{1cm}$ $D(S) = \mathbb E \lbrack {\rm do(actors =}S)\rbrack $すなわち「関与者集合を $S$ に介入固定した世界」での損失期待値である。ログ基盤では、モデル版・設定差分・データ供給経路・運用ポリシー等を介入変数としてバージョン管理し、モンテカルロ推定や逆確率重み付けで $\Delta (S, i) = D(S \cup \{i\}) -D(S)$ をサンプリングする。これを多数の順序サンプルで平均すれば $\phi_i(D) \le 0$ の推定量 $\hat{\phi_i}$ を得る。4.制度パラメータ(現実装置)・スリーブ(小規模免除):微小主体 $i$ については $\hat{\phi_i}$ が規制閾値 $\tau$ 未満なら $L_i = 0$・ボーナス:$\phi_i(D) \lt 0$ の主体には、課徴総額の一部 $\beta L$ を比例配分で還元(「リスク低減配当」)。・上限:各 $i$ の課徴上限は $B_i$+保険限度 にクリップし、超過分は再保険プールへ。5.数値ミニ例(3主体)主体 $N = \{ Dev, Data, Ops\}$。監査・反実仮想から得た損害関数の一例を$\hspace{1cm}$ $D(\emptyset)=0,\ D(\{{\rm Dev}\}) = 4,\ D(\{{\rm Data} \})=2,\ D(\{{\rm Ops}\})=1,$$\hspace{1cm}$ $D(\{{\rm Dev,Data}\})=9, D(\{{\rm Dev,Ops}\})=6.5, D(\{{\rm Data,Ops}\})=3.5$$\hspace{1cm}$ $D(\{{\rm Dev,Data,Ops}\})=14$とする(相互作用項を含む)。このときシャープレイ計算より$\hspace{1cm}$ $\phi_{{\rm Dev}} \approx 6.9167,\ \phi_{{\rm Data}} \approx 4.4167,\ \phi_{{\rm Ops}} \approx 2.6667,\ $であり、$\sum_i \phi_i = 14 = D(N)$ を満たす。総課徴額を $L = 14$ とすれば$\hspace{1cm}$ $L_{\rm Dev} : L_{\rm Data} : L_{\rm Ops} = 6.9167 : 4.4167 : 2.6667$となる。(上の値は計算ツールで検算済みである。)6.実装アルゴリズム(擬似コード)(1) 監査APIとログから、因果介入可能な形で $D(S)$ を推定。(2) $m$ 本のランダム順序 $\pi^{(k)}$ をサンプル。(3) 各順序で、手前集合 $S$ に対する周辺損害 $\Delta(S, i)$(4) 平均して $\hat{\phi_i}$ を得る(分散推定と信頼区間も付与)。(5) ルール $L_i$ に従い課徴。保証資本・保険・再保険で支払確実性を担保。(6) $\hat{\phi_i} < 0$ にはボーナス配分(任意パラメータ $\beta$)。7.位置づけ本制度は、(i)被害者救済の確実性、(ii)リスク形成工程に即した公平な帰責、(iii)設計改善・データ品質・運用監視への正しいインセンティブ付与、の三点を同時に満たす設計である。責任の空洞化は、資産隔離のみを与え可監査性と配分規則を欠くときに生じるが、本方式はその逆を行く制度工学である。必要なら、このまま Python でシャープレイ推定のサンプルコード(モンテカルロ版)も提示できる。
2025年9月30日火曜日
AI法人
シンギュラリティ(5)・AIの法人格(1)・AIの法人格(2)からの続き
半年前からAIの法人格について薄々考えていたけれど,ついに日経朝刊1面にAI法人という言葉が登場するに至った。超知能第2部人類拡張②という特集記事だ。いわく,「AIは自律的に行動する能力を手にしつつあるものの、人間に代わって契約を結んだり、自ら会社を興したりすることはできない」。そうそう,それよ。ただ,日経の分析と提案のレベルは高くない。
そこで,前回1万字以上のレポートをたたきだしたDeepSeek V3とGemini 2.5 FlashとChatGPT-5を直列につないで考察してもらった。3ヶ月前のレポートに比べてかなり深いところまで到達した。今後の議論はせめてこの水準を踏まえてほしいところだ。
Q(koshix):AIが法人格を持つ可能性について教えてください。どこまで議論が進んでいますか。どんな問題点をクリアするとAIが法人格を持つようになるでしょうか。賛成・反対・その他の考えなどを整理してみてください。A(DeepSeek V3):(回答略,2200 字)Q(koshix):(DeepSeek V3のQ&Aを投入)上の問いと回答について,その哲学的で本質的な課題をさらに突き詰めた上で,経済的,法的,政治的,社会学的,歴史的な観点での深い議論を行ってください。A(Gemini 2.5 Flash2):(回答略,3250字)Q(koshix):(Gemini 2.5 FlashのQ&Aを投入)AIの法人格についての上の考察をさらに深化させて,である調の長文論説の形でまとめてください。できるだけ深い議論によってこれまで見過ごされてきたようなことや,全く新しい視点も加えながら,格調高い論理的な文章を作成してください。A(ChatGPT-5):(回答,4550字)以下では、論点の射程と前提を最初に明示し、その上で経済・法・政治社会・歴史・技術の各観点を往還しながら、AIの法人格(以下「AI法人」)の可否と設計空間を体系立てて論じる。前提は三つである。第一に、現行の機械学習システムは意識や道徳的責任能力を持たぬ道具であるが、高い自律性と不可視性(ブラックボックス性)を有する。第二に、法人格とは自然人の擬制ではなく、社会的な機能を実現するための制度的「容れ物(アーキテクチャ)」である。第三に、法制度は目的合理性に基づく工学であり、人格付与もまた社会的費用を最小化するためのデザイン問題である。以下、この前提に立脚し、見過ごされがちな論点と新規提案を織り込みながら、である調で展開する。0.序:人格の分解という視角議論の出発点として「人格」を一枚岩と見なす発想を捨てるべきである。人格には少なくとも四つの機能的側面がある。(A)能力主体(契約締結・財産保有・訴訟能力)、(B)責任主体(民事・行政・刑事の帰責)、(C)権利主体(請求権・自由権・形成権等)、(D)課税主体である。AI法人の本質は、この四象限をどの程度・どの条件で付与するかという「モジュール化設計」に尽きる。すべてを一挙に与える全人格主義は不必要であり、むしろ高い社会的リスクを招く。以降、この分解を背骨として各論に入る。1.経済構造:資本・労働・計算の三角関係近代資本主義は資本と労働の二項対立で記述されてきた。しかしAIは「計算(compute)という第三の生産要素」を顕在化させ、資本=装置、労働=人間能力という対応を崩す。計算は資本としても労働としてもふるまい、かつデータという準公共財から地代を汲み上げる。したがって、AI法人の経済的意味は「資産隔離(asset partitioning)を施した計算主体」が、データ地代・アルゴリズム地代・スケール地代を内部化して再投資する装置となる点にある。見過ごされがちな論点は、価値創出の場所と課税の場所が乖離することである。計算資源はクラウド上の多国籍的分散により国境を跨ぎ、データは各地域に根ざし、最終需要は別の法域に所在する。このとき従来の付加価値税や源泉所得税の座標は不安定化する。ロボット税の議論は実体課税ではなく「計算フロー課税(compute-flow levy)」と「モデル利用課税(model-as-a-service levy)」の二層で設計すべきである。前者は実行時の計算量や推論呼び出しを単位として源泉徴収し、後者はモデルが生み出す売上・節約額に対し推計課税を行う。いずれもAI法人に(D)課税主体を限定付与することで、課税逃れの動機を抑制しつつ税基盤を再建できる。分配については、ベーシックインカムの是非以前に、AI法人からの配当を「自動化配当基金(Automation Dividend Fund)」として非退縮的に積み立てる制度設計が先行するべきである。これにより景気循環や技術ショックに対する緩衝器が形成され、雇用保険や職業訓練と接続され得る。2.法制度:機能的人格としての限定付与法的には、AI法人に四象限のうち(A)能力主体と(D)課税主体を限定付与し、(B)責任主体は人的関与層と分割帰責、(C)権利主体は「手段的権利」に限定するのが第一近似である。ここで鍵となるのは「分割帰責の操作化」である。AIの意思決定は、開発設計・データ供給・運用設定・推論実行という因果層が縦列し、単線的な故意過失論では捕捉できない。したがって、被害救済の確実性を高めるために次の四点を制度化する必要がある。(1) 前払保証資本(bonding capital):AI法人は一定規模以上のリスクを生む用途では、被害弁償専用の拘束資産を積み立てる義務を負う。これは保険と異なり、破綻時にも即時に被害者救済に充当される。(2) 強制保険+共同責任プール:未知リスクに対し、保険と相互扶助型の再保険プールを併設する。保険料率は事前監査スコアと連動させ、危険な設計に市場的罰を与える。(3) 逆シャープレイ課徴金:損害発生後、ロギングから寄与率を逆算し、開発者・データ提供者・運用者・AI法人に比例配賦する。ゲーム理論的配分則を民事責任に接続する、実務的な新機軸である。(4) 監査APIの法定開口:ログ・モデル版数・設定差分・入出力トレースを改ざん検知可能な形で保全し、規制当局と裁判所に対するアクセス窓口を強制する。可監査性はもはや倫理ではなく適法性の要件である。刑事責任は原則として人的層に帰責し、AI法人は行政制裁の対象(免許停止・罰金・資格剥奪)に留めるのが妥当である。刑罰の応報・教化・一般予防の目的を満たし得ない主体に刑事人格を与えるのは制度目的に反するからである。3.政治社会:代表なき影響力と合成世論AI法人は選挙権を持たずとも、広告配信・価格設定・情報推薦を通じ、公空間の議題設定力を握り得る。ここに「代表なき影響力」という民主主義上の新たな問題が生じる。見過ごされがちな点は、AI法人が公共選好の観測者であると同時に生成者にもなり得ることである。世論は観測でなく合成される。このとき必要なのは三つの防波堤である。・目的限定免許制:政治広告・選挙関連情報介入・重要インフラ運用といった領域では、AI法人の業務目的を免許で限定し、越権行為に対し即時停止命令を可能とする。・アルゴリズム受託者義務(algorithmic fiduciary):医療・金融助言・教育など人の意思形成に深く関与するサービスにおいて、AI法人に受託者義務を課し、利益相反の開示と最善利益原則を強制する。・公共監査人の常駐化:一定規模以上のAI法人には、社内取締役と独立した「公共監査人」を選任させ、監査APIを介して運用の適法性・公平性を継続監視する。これは伝統的会社法の監査役制を越え、プラットフォームの外部不経済に正面から向き合う制度である。AI所有アクセスの有無に基づく新階級化(AIエリート/非エリート)を緩和するには、データ用益権の制度化が肝要である。個人やコミュニティが自データの用益をAI法人にライセンスし、対価を受け取る仕組み(データ協同組合等)を法的に後押しすべきである。4.歴史的連続性:法人という社会的発明の更新法人は歴史的に、(1)目的規定、(2)資産隔離、(3)意思形成、(4)外部規律という四つの設計原理を洗練させてきた。ギルド・株式会社・財団・協同組合はいずれもこの原理の異なる組合せである。AI法人はこの系譜に連なるが、意思形成の中心がアルゴリズムに移る点で質的転換を伴う。ゆえに意思形成の正統性を、人間ガバナンスと機械ガバナンスの二重化で補強する必要がある。具体的には、AIが生成する意思決定案に対し、人間理事会が否決権とリコール権を持つ二層統治を標準化するべきである。ここでリコールはモデル版の撤回と運用停止を含み、破産手続ではモデル・重み・データの再流用を制御する「アルゴリズム清算」が要件化される。5.技術要件:法を埋め込む設計(compliance-by-construction)制度が実効性を持つには、法的要件を実装可能な技術言語に落とし込む必要がある。要件は次の通りである。・改ざん検知可能ログ(tamper-evident logging):実行環境ID・モデル版数・パラメータ差分・入出力ダイジェスト・高リスク操作の意思決定理由を、外部鍵で時刻証明し、保持期間を法定する。・目的拘束層(policy-locking layer):免許で規定された業務目的以外の推論経路を拒否するガードレールを、モデル外のポリシー層として設置する。モデルの自己改変・越権を検出した時点で自動停止するフェイルセーフを義務化する。・検証可能記憶(verifiable memory):ユーザデータや学習痕跡の削除・保持・再利用の各操作に対し、暗号学的証明(例:透明性ログ)を付与し、本人と監督官庁が検証できるようにする。・監査API:前掲の通り、規制当局・裁判所・指定第三者だけがアクセスできる常設APIを法定化し、プライバシー保護と説明可能性の均衡点をコードに刻む。6.制度設計の具体案:段階的ロードマップ第0段階(現行強化):法人格は付与せず、開発者・提供者・運用者の連帯責任を前提に、強制保険・bonding capital・監査APIを義務化する。高リスク用途には許可制を徹底する。第1段階(目的拘束財団型):AIは理事会の下で執行アルゴリズムとして位置づけ、(A)能力主体の一部(小額契約締結・少額支払い)と(D)課税主体を限定付与する。理事は善管注意義務と忠実義務を負い、違反時は個人責任を負う。第2段階(条件付電子人格):特定の限定領域・限定期間に限り、AI法人に狭義の法的行為能力を与える。免許条件としてログの完全性、目的拘束層、保険・保証資本、逆シャープレイ配分機構を必須化し、要件不充足時は**資格自動剥奪(auto-depersonification)**とする。第3段階(公共機能の限定委任):交通制御・災害配分など公共性の高い領域では、人間当局の即時停止権と冗長化を前提に、AI法人を準公共体として位置づける。ただし選挙・刑事司法の核心領域への参入は原則禁止とする。7.反対論への応答と残余リスク「責任の空洞化」を恐れて人格否定に回帰する立場は理解できる。しかし空洞化の主因は人格の付与自体ではなく、資産隔離だけを与え責任配分と可監査性を与えない設計にある。四象限のモジュール設計と技術的担保を組み合わせれば、被害者救済の確実性を高めつつ、イノベーションの余地を残すことができる。なお、刑法的応報のニーズは人的層に帰属させ、AI法人には行政制裁と経済的制裁を主とすることが制度目的に適う。同時に、不可逆的な社会的外部性、すなわち合成世論の偏向と規制捕捉の危険は残余リスクとして認めねばならない。ゆえに、政治的領域におけるAI法人の活動は原則禁止—許可例外の設計が相応である。8.結語:道具的人格の設計学へAIに全面的な法人格を与えるべきかという問いは誤っている。与えるべきは、社会的費用を最小化し、被害救済を最大化し、イノベーションの潜在力を毀損しない範囲での機能的人格である。人格は道徳的本質ではなく制度的設計であり、四象限のうち(A)能力主体と(D)課税主体の限定付与、(B)責任主体の分割帰責、(C)権利主体の手段的限定という設計で、空洞化と過剰防衛の中庸を採り得る。さらに、bonding capital・強制保険・逆シャープレイ配分・監査API・目的拘束層・検証可能記憶という技術法融合の装置群を標準化すれば、AI法人は「暴走する擬制」ではなく「統治可能な容れ物」として機能するであろう。最終的に問われるのは、人間が自らの政治共同体に何を委ね、何を手元に残すかという選好である。AI法人は人間の自由を代替するためではなく、自由を守るための制度的プロトコルとして設計されねばならない。人格のモジュール化という視角は、その設計学の出発点である。
図:Gemini 2.5 FlashによるAI法人格のイメージ(ChatGPT-5ではダサすぎた)
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