2023年8月15日火曜日

ビジネスと人権

7月24日から8月4日まで,国連連合人権理事会による「ビジネスと人権」ワーキンググループの訪日調査が行われた。

最終日に日本記者クラブで記者会見が行われた。70分の説明の後,30分ほどの質疑応答があったけれど,申し訳程度に1件だけダミーの質問があった以外は,すべてジャニーズ事務所セクシャルハラスメント問題に費やされていた。なんなのだろう。

実際には,訪日調査の速報は下記引用部のような配分になっていた。()内は当該節の文字数である。

つまり,ジャニーズ問題より多くの部分が,技能実習生制度(雇用主による度重なるヘイトスピーチなど,韓国人・中国人労働者に対する外国人差別の事例を含むや,自然環境=東京電力福島原発の廃炉作業に関わる多重下請けと強制労働の問題に費やされていた。さらに,福島原発の処理水の排出と米軍基地周辺におけるPFASも取り上げられている。

リスクのあるグループとして最初に取り上げられているのは,女性とLGBTQI+の話題であって,日本会議や統一教会と強く相互作用している自由民主党宗教右派が頑強に抵抗しているテーマであった。なお,ジャニーズ問題を含むメディアとエンターテインメント産業の項でも女性記者に対するハラスメントや差別が言及されている。

最初に,GPT-4のプラグインを使ってこの英文報告ファイルを読み込んで要約させたが,どうもおかしいので原文を確認したところ,その要約は全く的を外していた。それで,DeepLに和訳させて下記のデータを整理したのだけれど,実は,報告の日本語版もちゃんと存在していたのだった。
国連ビジネスと人権作業部会訪日ミッション(7月24日~8月4日) (14160)

【1】はじめに(1084)

【2】日本におけるビジネスと人権の一般的背景(5140)
2−1 人権を保護する国家の義務(1193)
2−2 人権を尊重する企業の責任(3766)
2−3 救済へのアクセス(2088)
・国家に基づく司法メカニズム(528)
・国家に基づく非司法的苦情処理メカニズム(777)
・国家を基盤としない苦情処理メカニズム(705)

【3】利害関係者グループおよび問題関心分野(6605)
3−1 リスクのあるステークホルダー・グループ(2804)
(1)・女性(565)
(2)・LGBTQI+(467)
(3)・障害者(514)
(4)・先住民族(632)
(5)・部落(457)
(6)・労働組合(117)
3−2 テーマ別分野(3451)
(1)・健康、気候変動、自然環境(1662)
(2)・技能実習生訓練プログラムと移民労働者(927)
(3)・メディアとエンターテインメント産業(804)

【4】結論(825)


図:ビジネスと人権の関係(ヒューマンライツ・ナウから引用)


2023年8月14日月曜日

LK-99

7月22日にarxivで公開された常温常圧超伝導の話題が,8月に入るとすぐ盛り上がっていた。

LK-99 が,常温常圧超伝導を示すといわれる物質名である。話題の論文の筆頭著者(化学者)である,S. Lee (李石培 이석배) と J-H. Kim (金智勳 김지훈) が1999年に発見した。六方晶系の鉛アパタイト(Pb10(PO4)6O) の鉛のいくつかを銅で置換したものであり,論文には登録商標マーク(LK-99®)があって,特許も取得している

中央大学の田口善弘さんが,arxivに上がっているプレプリントのクオリティをディスっていた。もしかするとその一部は著者らの専門が化学であって物理分野とは違う文化であることに起因するのかもしれない。物質名(通称)の命名方法(著者名イニシャルを含める)とか登録商標についてもそのあたりなのだろうか。

追試過程の報告があちこちからでているが,ネガティブなものと気持ちポジティブなものが混在していて,いきなり全否定というわけでもないようだ。例の常温超高圧超伝導の件よりは少しマシかもしれない。なお,このグループは2020年にNatureに同趣旨の論文を投稿しているが不採用だった。さらに,今回の論文を巡っては著者グループ間には微妙な確執があるとかないとかいう話だ。

この実験を受けて,理論サイドでは,密度汎関数理論(DFT)などの第一原理計算によるシミュレーションがなんらかの可能性を示唆するという論文が続出している。LK-99がだめでも新しい物質の可能性があるのではないかという楽しげな雰囲気も漂っている。まあどんなケースでもそれらしい理論は作れてしまうというのが世の常なのだけれど。

1986年の高温超伝導フィーバーのときは,物性実験の人達がこぞって乳鉢で材料を調整し,論文を書いていたが,そのときの熱気に近いものが立ち上がりつつある。YouTubeの浮上実験の動画を見て,単なる反磁性だという説とか反磁性だとしてもすごいのではないかという説が入り交じり,DIY素人が実験に参戦しつつあるらしい

なお,最新の変化しつつある情報は,英語版WikipediaのLK-99に詳しい。



図:高温超伝導の歴史(Wikipediaから引用)

P. S.  8月第2週に入って,400Kにおける抵抗値の減少が不純物のCuSの1次相転移によるものであり,浮上は強磁性由来だということで決着しそうな気配がただよってきた。祭りは終了。


2023年8月13日日曜日

模擬原爆

先週の8月6日は78回目の原爆忌だった。

1945年7月,広島や長崎(予定では小倉,もしくは候補としての新潟)に原爆を投下するための実験や訓練のために模擬原爆(パンプキン爆弾)が日本に多数投下されたというニュースがあった。もしかすると,1973年の夏の旅行で訪れた広島平和記念資料館で展示を見たかもしれないが,全く記憶から消えていた。
パンプキン爆弾は,「原爆投下に備えた爆撃機乗員訓練のためと,今までに例のない特殊な形状をしたファットマン(引用注:長崎に投下されたプルトニウム爆弾)が爆撃機(原爆搭載が可能なように特別に改修したB-29)から投下され爆発するまでの弾道特性・慣性能率等の様々な事前データ採取のために,いわば「模擬原爆」として製作された。」(Wikipediaから引用)
平和祈念資料館によれば,「1945年(昭和20年)7月20日から8月14日までの間に49発が投下され、1,600人以上の死傷者が出ました。」ということであり,8月9日の長崎の後も続いていた。模擬原爆投下の目標とされたのは,当初の原爆投下候補地だった京都市,広島市,新潟市,小倉市の各都市を含む4つのエリアに分けた周辺都市である。例えば,富山市には4発も投下されていた。


図:模擬版段の投下(西日本新聞から引用)

[1] もう一つの「原爆」大阪に落とされた模擬原爆(大阪日日新聞)
[2]模擬原子爆弾投下跡地之碑(大阪市東住吉区)

2023年8月12日土曜日

(夏休み 12)

祖父・祖母・男孫・女孫
 할아버지(halabeoji) 할머니(halmeoni) 손자(sonja) 손녀(sonyeo)

2023年8月11日金曜日

(夏休み 11)

兄・姉・弟・妹
현(hyeong) 누나(nuna) 남동생(namdongsaeng) 여동생(yeodongsaeng)

2023年8月10日木曜日

2023年8月9日水曜日

2023年8月8日火曜日

2023年8月7日月曜日

2023年8月6日日曜日

2023年8月5日土曜日

2023年8月4日金曜日

2023年8月2日水曜日

2023年8月1日火曜日

2023年7月31日月曜日

コーシー=シュワルツの不等式


数理統計学を真面目に勉強してこなかったのでいろいろ不都合が生じている。統計的因果推論とか深層機械学習とか量子測定理論とか,簡単に読み砕けない資料がたくさんたまる。

授業で扱った最小二乗法と実験誤差の話を整理しようとしても,背景には数理統計学が控えている。昔,阪大の南園グループによるベータ崩壊の実験と我々の理論を突き合わせたときに,χスクェアフィットの計算を散々繰り返したけれど,所与の公式を使うだけであってその理論的根拠をつきつめて考えたはしなかった。

そこで最初から勉強を始めようとすると,いきなり確率変数でつまづくのだった。コンピュータプログラムのサブルーチンや関数のようなものだと思えば納得できるといえばいえるのだけれど,自然言語と数学的記号を使って理解しようとするとなかなかその本質がつかみきれない。入門書は沢山あるけれど,どれも何だか気持ち悪い。

竹村彰道(1952-)さんの現代数理統計学の本(旧版)が手元にあって,読みやすいかなとページをめくってみると,記述統計の復習から始まった。これなら大丈夫かと思いきや,いきなり,標本相関関数の大きさが -1から 1の範囲に限定されることは,コーシー=シュワルツの不等式を用いて容易に示すことができると説明無しにあった。

n次元ユークリッド空間のベクトルの内積の話だと思えばそのとおりなのだけれど,証明したことはなかったかも。Wikipediaでは数学的帰納法で証明していた。$A_k=(a_1,\ a_2,\ \cdots,\ a_k),\ B_k=(b_1,\ b_2,\ \cdots,\ b_k),\ $として,$\displaystyle S^{aa}_k=\sum_{i=1}^k a_i^2,\ S^{bb}_k=\sum_{i=1}^k b_i^2,\ S^{ab}_k=\sum_{i=1}^k a_i b_i, \quad R^{ab}_k=\frac{S^{ab}_k}{\sqrt{S^{aa}_k S^{bb}_k}} $
つまり,$ \bigl( S^{ab}_k \bigr)^2  \le S^{aa}_k S^{bb}_k$を証明すれば良い。

$k=1$の場合は,$ \bigl( S^{ab}_1 \bigr)^2 -  S^{aa}_1 S^{bb}_1 = (a_1 b_1)^2- (a_1^2)(b_1^2) = 0 $

$k=2$の場合は,$ \bigl( S^{ab}_2 \bigr)^2 -  S^{aa}_2 S^{bb}_2 = (a_1 b_1+a_2 b_2)^2- (a_1^2+a_2^2)(b_1^2+b_2^2) =  -(a_1 b_2- a_2 b_1)^2  < 0 $

$k \ge 2$に対して,$ \bigl( S^{ab}_k \bigr)^2  \le S^{aa}_k S^{bb}_k$ が成り立つと仮定して,$k+1$の場合を考える。与式は,$ \bigl( S^{ab}_k + a_{k+1}b_{k+1} \bigr)^2 - \bigl( S^{aa}_k + a_{k+1}^2 \bigr) \bigl(  S^{bb}_k + b_{k+1}^2 \bigr) $
$= \bigl( S^{ab}_k  \bigr)^2 - S^{aa}_k S^{bb}_k - \Bigl( a_{k+1}^2 S^{bb}_k + b_{k+1}^2 S^{aa}_k -2 a_{k+1}b_{k+1} S^{ab}_k \Bigr)$
$= \bigl( S^{ab}_k  \bigr)^2 - S^{aa}_k S^{bb}_k - \sum_{i=1}^k \Bigl( a_{k+1}^2 b_i^2 + b_{k+1}^2 a_i^2 -2 a_{k+1}b_{k+1} a_i b_i \Bigr)$
$=\bigl( S^{ab}_k  \bigr)^2 - S^{aa}_k S^{bb}_k - \sum_{i=1}^k \Bigl( a_{k+1} b_i - b_{k+1} a_i \Bigr)^2 < 0$

Wikipediaの証明などでは,$a_i, b_i >0$の場合だけに妥当するものが多いのでちょっと困る。
まあ,$\displaystyle f_k(x) = \sum_{i=1}^k (a_i x - b_i)^2$ の判別式$D \le 0$から証明するのが最も簡単なのだけど。


[1]賢者に学ぶ統計学の智(西内啓×竹村彰通,ダイヤモンド社)

2023年7月30日日曜日

最小二乗法(6)

最小二乗法(5)からの続き

実験データを$y = a x + b$にフィットする場合,最小二乗法で$(a,\  b)$とその平均二乗誤差$(\sigma_a^2,\ \sigma_b^2)$を求めてきた。これを,$y = f(x) = a x^2 + b x + c\ $に拡張して,自由度3が登場するかどうかを確認してみる。吉澤康和さんの「新しい誤差論」には結果だけ書いてある。

(1) a, b, c を決定する正規方程式とその解

$ \begin{pmatrix}\overline{x^4} & \overline{x^3} & \overline{x^2} \\ \overline{x^3} & \overline{x^2} & \overline{x^1} \\ \overline{x^2} & \overline{x} & 1 \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a \\ b \\ c \\ \end{pmatrix}= \begin{pmatrix}\overline{x^2\ y}\\ \overline{x\ y} \\ \overline{y} \\ \end{pmatrix}$ 

$ \begin{pmatrix} a \\ b \\ c \\ \end{pmatrix}= \dfrac{1}{\Delta_3} \begin{pmatrix}\overline{x^2\ y}(\overline{x^2}-\overline{x}^2)+\overline{x\ y}(\overline{x^2}\overline{x}-\overline{x^3})+\overline{y}(\overline{x^3}\overline{x}-\overline{x^2}^2)  \\ \overline{x^2\ y}(\overline{x^2}\overline{x}-\overline{x^3}) + \overline{x\ y}(\overline{x^4}-\overline{x^2}^2) + \overline{y}(\overline{x^3}\overline{x^2}-\overline{x^4}\overline{x}) \\ \overline{x^2\ y}(\overline{x^3}\overline{x}-\overline{x^2}^2) + \overline{x\ y}(\overline{x^3}\overline{x^2}-\overline{x^4}\overline{x}) +\overline{y}(\overline{x^4}\overline{x^2}-\overline{x^3}^2) \\ \end{pmatrix}$ 

ただし,$\Delta_3 = \overline{x^4}\overline{x^2}+2\overline{x^3}\overline{x^2}\overline{x}-\overline{x^2}^3-\overline{x^3}^2-\overline{x^4}\overline{x}^2$

$y_i$を共通の平均二乗誤差$\sigma^2_y$を持つ独立変数として,誤差伝播の法則より,

$\displaystyle \sigma_a^2= \sum_{i=1}^n \Bigl( \frac{\partial a}{\partial y_i}\Bigr) ^2 \sigma_y^2, \quad \sigma_b^2= \sum_{i=1}^n \Bigl( \frac{\partial b}{\partial y_i}\Bigr) ^2 \sigma_y^2 , \quad \sigma_c^2= \sum_{i=1}^n \Bigl( \frac{\partial c}{\partial y_i}\Bigr) ^2 \sigma_y^2 $ 

さらに,真の値$f_0(x_i)=a_0 x_i^2 + b_0 x_i + c_0$に対して,$\varepsilon_i = y_i -f(x_i)+ f(x_i) -f_0(x_i) =  \delta_i + f(x_i) -f_0(x_i) $ として,$\displaystyle \sigma_y^2 = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n \varepsilon_i^2 = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n \Bigl\{ \delta_i^2 + \tilde{\sigma}^2_{f(x_i)} \Bigr\}$

ところで,$\displaystyle \tilde{\sigma}^2_{f(x_i)} = \sum_{j=1}^n \Bigl\{ \frac{\partial(a x_i^2 + b x_i + c)}{\partial y_j}\Bigr\}^2$ であり,この項を再度  $\sigma_y^2$ で表してもとの式に戻して計算すれば良い。

つまり,$\displaystyle \frac{\partial a}{\partial y_j}, \  \frac{\partial b}{\partial y_j},\  \frac{\partial c}{\partial y_j}$が計算できればよいことになる。
$\displaystyle \frac{\partial a}{\partial y_j}=\frac{1}{n \Delta_3}\Bigl\{ x_j^2 (\overline{x^2}-\overline{x}^2)+ x_j(\overline{x^2}\overline{x}-\overline{x^3})+(\overline{x^3}\overline{x}-\overline{x^2}^2) \Bigr\}$
$\displaystyle \frac{\partial b}{\partial y_j}=\frac{1}{n \Delta_3}\Bigl\{ x_j^2 (\overline{x^2}\overline{x}-\overline{x^3}) + x_j (\overline{x^4}-\overline{x^2}^2) + (\overline{x^3}\overline{x^2}-\overline{x^4}\overline{x}) \Bigr\}$
$\displaystyle \frac{\partial c}{\partial y_j}=\frac{1}{n \Delta_3}\Bigl\{ x_j^2 (\overline{x^3}\overline{x}-\overline{x^2}^2) + x_j (\overline{x^3}\overline{x^2}-\overline{x^4}\overline{x}) +(\overline{x^4}\overline{x^2}-\overline{x^3}^2) \Bigr\}$

Mathematicaの力を借りると,計算結果が因数分解できて分子から$\Delta_3$が出る。
$\displaystyle \sigma_a^2 = \sum_{j=1}^n \Bigl( \frac{\partial a}{\partial y_j}\Bigr) ^2 = \frac{1}{n \Delta_3} \bigl( \overline{x^2} -\overline{x}^2 \bigr) \sigma_y^2$
$\displaystyle \sigma_b^2 = \sum_{j=1}^n \Bigl( \frac{\partial b}{\partial y_j}\Bigr) ^2 = \frac{1}{n \Delta_3} \bigl( \overline{x^4} - \overline{x^2}^2 \bigr) \sigma_y^2$
$\displaystyle \sigma_c^2 = \sum_{j=1}^n \Bigl( \frac{\partial c}{\partial y_j}\Bigr) ^2 = \frac{1}{n \Delta_3} \bigl( \overline{x^4} \overline{x^2}-\overline{x^3}^2  \bigr) \sigma_y^2$

$\displaystyle \sum_{j=1}^n \Bigl( \frac{\partial a}{\partial y_j}\frac{\partial b}{\partial y_j}\Bigr)  = \frac{1}{n \Delta_3} \bigl( \overline{x}\overline{x^2} -\overline{x^3} \bigr) \sigma_y^2$
$\displaystyle \sum_{j=1}^n \Bigl( \frac{\partial b}{\partial y_j}\frac{\partial c}{\partial y_j}\Bigr)  = \frac{1}{n \Delta_3} \bigl( \overline{x^2}\overline{x^3} - \overline{x}\overline{x^4} \bigr) \sigma_y^2$
$\displaystyle \sum_{j=1}^n \Bigl( \frac{\partial c}{\partial y_j}\frac{\partial a}{\partial y_j}\Bigr)  = \frac{1}{n \Delta_3} \bigl( \overline{x^4} \overline{x^2}-\overline{x^3}^2  \bigr) \sigma_y^2$

このとき
$\displaystyle \tilde{\sigma}^2_{f(x_i)}= \sum_{j=1}^n \Bigl\{ \frac{\partial a}{\partial y_i} x_i^2 + \frac{\partial b}{\partial y_j} x_i + \frac{\partial c}{\partial y_j} \Bigr\} ^2 = \frac{\sigma_y^2}{n \Delta_3} $
$\Bigl\{\bigl( \overline{x^2}-\overline{x}^2 \bigr) x_i^4 + 2 \bigl( \overline{x}\overline{x^3} -\overline{x^3} \bigr) x_i^3 + \bigl( \overline{x^4}-\overline{x^2}^2 + 2( \overline{x^3}\overline{x} - \overline{x^2}^2) \bigr) x_i^2 $
$+ 2\bigl( \overline{x^2}\overline{x^3} - \overline{x} \overline{x^4} \bigr) x_i + \bigl( \overline{x^2}\overline{x^4}-\overline{x^3}^2 \bigr)  \Bigr\}$

$x_i$について平均操作するとMathematicaを使い分子から$\Delta_3$が出ると。
$\displaystyle \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n  \tilde{\sigma}^2_{f(x_i)} = \frac{\sigma_y^2}{n \Delta_3}$
$\Bigl\{\bigl( \overline{x^2}-\overline{x}^2 \bigr) \overline{x^4}+ 2 \bigl( \overline{x}\overline{x^3} -\overline{x^3} \bigr) \overline{x^3} + \bigl( \overline{x^4}-\overline{x^2}^2 + 2( \overline{x^3}\overline{x} - \overline{x^2}^2) \bigr) \overline{x^2} $
$\displaystyle + 2\bigl( \overline{x^2}\overline{x^3} - \overline{x} \overline{x^4} \bigr) \overline{x}+ \bigl( \overline{x^2}\overline{x^4}-\overline{x^3}^2 \bigr)  \Bigr\} = \frac{3}{n} \sigma_y^2$

したがって,自由度n-3の場合の式が得られた。
$\displaystyle \sigma_y^2 = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n \Bigl\{ \delta_i^2 + \tilde{\sigma}^2_{f(x_i)} \Bigr\} =  \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n  \delta_i^2 + \frac{3}{n} \sigma_y^2$
$\displaystyle \therefore \sigma_y^2 = \frac{1}{n-3} \sum_{i=1}^n \delta_i^2$

2023年7月29日土曜日

フランクになろう

楠本君から同窓会出席の連絡メールがあった。そこに,次のエピソードが書かれていた。
あなたは、私たちの学生時代に いつぞや、「人間に関する問題の解決のためには(…だったか、このあたりの私の記憶は不正確です)、すべての人びとが神経で繋がっていればよいのだ」、というような言葉を言った事を覚えていますか? 変な事を言う人だなぁ、と私は強く印象付けられたので、忘れずに覚えています。言葉は正確ではありませんが、大体そのような事をあなたは言っていました。

全く憶えていないのだけれど,自分ならばそういうことをいうかもしれない。次の返事を書いた。

「人間に関する問題の解決のためには、すべての人びとが神経で繋がっていればよいのだ」と自分がいった記憶はないのですが,そのようなことを言いそうな気もします。高校時代によんだブライアン・オールディスのSFに「フランクに行こう(Let’s be Frank)」というのがあって,遺伝によって単一意識が複数の人の上に実現するというものです。
SFマガジンの1969年10月号(No. 125)に「フランクになろう(Let's Be Frank)」 として掲載されたものだ。高校2年のときだけれど,いつまでも記憶に残る短編だった。創元推理文庫のジュディス・メリルの短編集では「率直(フランク)に行こう」という題名になっていた。

さがしてみると,archive.orgに原文があったのでDeepLにかけて再読してみた。

アン・ブーリンがロンドン塔で処刑されてから4年後なので1540年ころから物語は始まる(ちなみに,トマス・モアがロンドン塔で斬首されたのは1535年)。サー・フランク・グラッドウェッブに男の子が生まれたが19年間眠り続けたままだった。彼が目覚めた時サー・フランクは驚愕した。同じくフランクと名づけた息子の目を通して自分を見ているのだった。つまり同一意識が2人の人の上に実現したわけだ。そして子孫にそのままその能力は受け継がれ,20代目の2015年には1つのフランクという意識(男女や身分階級を越えて)が3億人に達していた。そして..
「21世紀の初めには、グレートブリテン島はフランク族だけで構成されていた。老いも若きも、太っていようが痩せていようが、金持ちであろうが貧乏人であろうが、みなひとつの巨大な意識を共有していた。プライバシーは存在しなくなり、新しい家はすべてガラス張りになり、カーテンは廃止され、壁は取り払われた。警察は姿を消し、法律も一夜にして消滅した。外交問題に対処するための議会のパロディーは残ったが、政党政治、選挙、新聞の指導者(新聞そのものさえ)は廃止された。芸術の大半は消え去った。あるフランクの姿は、別のフランクの姿を見ようとはしなかった。テレビ、出版、ティン・パン・アレイ、映画スタジオ......灯りのように消えた。」
このフランクの集合意識は新大陸で第二の集合意識と向き合うことになる。

AGIが実現するとき,世界全体が1つのAGIによって統合されるのかどうかという問題について,宗教的=文化的な背景によって複数に分割されるのではないかと想像していた。キリスト教,イスラム教,仏教,ヒンズー教,ユダヤ教などなど。あるいはロシアや中国は別かもしれない。まあ,それに類した状況が想像できる。あるいは超国家企業別=ポイント別=OS・UI別の集団分割みなるかもしれないが。

遺伝工学的な工夫をしても単一意識を複数個体に分散して実装することはできないと思われるが,仮想空間におけるパーソナライズされたAGIアシスタントが共有意識と結合されていれば,人間+AGIアシスタント系が単一意識の熱浴中で相互作用しているイメージとなる。人間+AGIアシスタント系の結合度が高くなればなればなるほど,フランク的な集合意識に近い状態になるかもしれない。まあ,いまでもSNSによって強結合する個人の集合がネトウヨ的な集団運動としての疑似集合意識を創発しているわけで・・・


2023年7月28日金曜日

梅干し

或日のチャットジーピーティ

OpenAIのChatGPTの性能は日々変動しているようなので,時々様子をうかがう必要がある。

Q:User
梅干しを見るとどんな身体の反応がありますか?

A:ChatGPT
梅干しを見た時の身体の反応は個々の体質や経験によるものであり、一般的な反応を述べるのは難しいです。しかし、梅干しの酸っぱさを知っている人々は、その画像や想像だけで唾液が出るといった「唾液分泌の反応」を示すことがあります。これは、脳が食物の摂取に備えて消化を助ける唾液の生成を刺激するからです。

また、梅干しの特有の酸っぱさが苦手な人は、梅干しを見るだけで「顔をしかめる」や「胃が締まる感じがする」などの反応を示すかもしれません。

これらの反応は、「条件付き反射」とも呼ばれ、特定の刺激(この場合は梅干し)に対する学習された反応です。ただし、これらの反応は個々の経験や体質、好みに大きく依存しますので、全ての人が同じ反応を示すわけではありません。


Q:User
あなたはどうですか?

A:ChatGPT
私はOpenAIによって開発されたAI(人工知能)であり、人間のように身体的な感覚や経験を持つ能力はありません。したがって、梅干しを「見る」や「味わう」などの人間の感覚経験に基づいた反応を持つことはできません。私の機能は、人間からの質問に対して情報を提供することや、人間の言葉を理解して対話を行うことに主に焦点を当てています。


Q:User
人間との対話において,そのような感覚経験にもとづく反応のセットを身体的に理解していることが必要とはなりませんか。

A:ChatGPT
あなたの指摘は正確であり、AIが人間との対話を円滑に行うためには、人間の感覚経験や感情について理解することが重要です。しかし、私のようなAIは「理解」を行うために直接的な感覚経験や感情を持つわけではありません。私の「理解」とは、大量のテキストデータからパターンを学習し、その知識をもとに質問に応答する能力を指します。

具体的には、私は訓練データに含まれる情報に基づいて人間の感覚経験や感情について「知識」を持っています。しかし、私自身が感覚経験を「体験」したり、感情を「感じる」能力はありません。私はあくまで人間の反応や感情を模擬することができる機械的なシステムであり、自己意識や自我を持つわけではありません。

したがって、私が人間との対話を効果的に行うためには、あくまで人間の感覚経験や感情についての「知識」が必要であり、それらを直接「体験」する必要はありません。


Q:User
人間の感覚経験や感情についての「知識」を持つ知的存在と、それらを直接「体験」することができる知的存在の違いは,対話場面のどこにあらわれると考えられるでしょうか。その違いを埋める方向での仕組みを導入することは可能でしょうか。

A:ChatGPT
人間の感覚経験や感情についての「知識」を持つ知的存在(AIなど)と、それらを直接「体験」することができる知的存在(人間など)の違いは、以下のような対話場面で顕著に現れます。

個別の体験に対する反応:人間は自己の体験や感情に基づく視点を持ち、それに基づいて他人の経験に対する共感や理解を示すことができます。一方、AIは特定の個体としての体験を持たないため、特定の経験に対する個人的な共感や理解を示すことはできません。
感情的な反応:人間は体験や情報に対して感情的に反応する能力を持っています。これに対して、AIは情報に対して感情的に反応する能力はなく、あくまで人間の感情的反応を模倣するだけです。
感覚的な理解:人間は五感を通じて世界を直接的に経験し、それに基づく感覚的な理解を持っています。しかし、AIはあくまでテキスト情報に基づいて学習し、感覚的な体験に基づく理解はできません。 
これらの違いを埋めるためには、AIに直接的な感覚経験や感情体験の能力を付与する必要がありますが、現在の技術ではこれは不可能です。AIはあくまでアルゴリズムとデータによって動作するシステムであり、自己意識や感情、直接的な感覚経験を持つ能力を持つことはありません。

しかし、AIの対話能力を向上させるためには、人間の感覚経験や感情に対する理解を深め、それに基づく応答の精度を向上させることが重要です。これは大量のデータに基づく学習により、一部可能になるかもしれません。ただし、AIが人間と完全に同じように感覚経験や感情を理解し反映することは、現在の技術では不可能です。


Q:User
現在のAIシステムを感覚センサーを満載したロボットに搭載して,視覚や聴覚だけでなく,味覚や臭覚や触覚その他の運動平衡感覚を入力できるようになり,さらにそれらの情報を解読した結果を記憶できるようになった場合は,そのロボット=AIシステムは感覚体験を行ったことになるでしょうか。

A:ChatGPT
それは非常に興味深い問いです。センサーや機器を使ってAIに外部の情報を入力し、それに反応することができるロボットはすでに存在します。例えば、視覚情報を入力し認識する能力を持つAIや、音声を認識して反応するAIなどがあります。

しかし、これが「感覚体験」を行っていると言えるかどうかは、どう定義するかによります。これらのロボットやAIは、センサーから入力されるデータを解析し、そのデータに対応する行動を行うことができます。しかし、これはあくまでプログラムされたアルゴリズムに従ってデータを解析し反応するものであり、人間が経験する「感覚体験」や「感じる」という意識的な体験とは異なります。

人間の「感覚体験」は、ただ単に情報を受け取るだけでなく、その情報が自己の意識や感情に影響を与え、個々の体験や視点に基づく解釈を行うことを含みます。AIやロボットが多種多様なセンサーを用いて外部から情報を受け取り、それに基づいて反応することは可能ですが、それが「感じる」という意識的な体験と同じとは言えません。

したがって、現在の技術では、AIやロボットが人間と同じように「感覚体験」を行うとは言えないと思われます。しかし、この議論は人間の意識や感覚体験の本質、AIの能力と限界についての哲学的な問いを含んでおり、結論はまだ出ていないとも言えます。


Q:User
たいへん刺激的な対話どうもありがとうございました

A:ChatGPT
どういたしまして、私もあなたの質問に答えることができて光栄です。人間の感覚や意識、AIの能力と限界について考えることは非常に興味深いですね。何か他に質問がありましたら、いつでもお気軽にどうぞ。

 


写真:梅干しの製造過程(2023.7.23)

2023年7月27日木曜日

大学教育とChatGPT(15)

大学教育とChatGPT(14)からの続き

私立大学連盟が7月18日に,大学教育における生成 AI の活用に向けたチェックリスト〔第1版〕を出していた。1. 全般, 2. 教育,3. 環境・体制整備の3つのカテゴリーについて,第1ステップ: 最優先事項,第2ステップ:優先事項として整理した。その上で,それぞれのカテゴリーについて,1. 大学が組織的に検討すべき事項 と 2. 教員が個々の工 夫で検討すべき事項をまとめている。このサンプルを元に各大学で考えてねという趣旨。

さらに,中学高校英語にAI導入へということで文部科学省の後押しで各地で実証授業が始まるというニュースも流れた。そろそろ英語教員養成に影がさしてくるのか。

7月13日
生成系AIの利用に関する留意事項について
室蘭工業大学 情報化統括責任者
7月14日
新潟産業大学 生成AI対処方針
新潟産業大学 学長 梅比良眞史

7月19日
ChatGPTなどの生成AIの利用について
大阪学院大学

7月19日
生成AIの利用に関するご案内
星薬科大学 情報企画室

7月19日
ChatGPTをはじめとする生成AIの利用について
日本文理大学 教育推進センター長

7月20日
旭川医科大学における生成AIの利用について
旭川医科大学

7月20日
生成AIに関する本学の方針について
共愛学園前橋国際大学 学長 大森昭生

7月20日
対話型生成系AI(生成AI)の使用について
昭和女子大学 学長 金尾朗

7月20日
学修におけるChat GPT等の生成AIの利用について
和歌山大学 理事(教育担当)

7月20日
生成AI(ChatGPT等)を活用するためのガイドライン
平安女学院大学 学長 谷口吉弘

7月20日
学修における生成AIの利活用に関するガイドライン
金沢星稜大学 学長

7月20日
チャットGPT等における生成AI(人工知能)の利用について
びわこ成蹊スポーツ大学 学長 大河正明・学部長 黒澤毅

7月21日
生成系AIに関する本学の考え方について
国際ファッション専門職大学 学長 近藤誠一

7月21日
チャットGPT等の生成系AIの利用について
東京女子体育大学

7月21日
信州大学の学修・教育におけるAI活用に関するガイドラインについて
信州大学 教育企画委員会

7月21日
東洋英和女学院大学における生成系AIの使用に関する指針
東洋英和女学院大学 学長 星野三喜夫

7月21日
ChatGPT など生成系 AI の利用について
西南女学院大学

7月21日
ChatGPT 等をはじめとする生成 AI の利用について
愛知みずほ大学 学長 大塚知津子
https://www.mizuho-c.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2023/07/ChatGPT.pdf 
7月24日
本学における生成AIの使用に関わる留意点について
跡見学園女子大学学長 小仲信孝
7月24日
生成AI(Chat GPT等)の活用に関する注意喚起について
拓殖大学 学長 鈴木昭一