橋本幸士さんの論文,A bound on energy dependence of chaos がarxivに掲載された。本編はわずか2ページ少々の短い論文(7ページのsupplementがついている)だが,非常に普遍的な内容を持っている。
我々の推測(conjecture)の主張は以下の通りである。ハミルトニアンが座標や場の変数の有限多項式で作られた任意のハミルトン系について,高エネルギー極限のエネルギー$E$ で測定した古典/量子リアプノフ指数 $\lambda (E)$は,エネルギー依存性において以下の上界を満たす。
$c \le 1 {\ \rm for\ } \lambda (E)\ \propto E^c \ ( E \rightarrow \infty )$ (1)
より正確には,与えられた系に対して,十分に大きなEに対して $|\lambda (E)|\le C E|$となる$C \gt 0$ が存在する。(1)をカオスエネルギー限界とよぶ。
そこで,リアプノフ指数を調べてみたら,意外にもWikipedia日本語版の記述がたいへんわかりやすく書かれていた。 リアプノフ指数 $\lambda$ は初期値がわずかだけ異なった2つの軌道が時間とともにどのように離れていくかを示す指標であり,1次元の場合は,$\|{\boldsymbol {\delta }}(t)\|\approx \|{\boldsymbol {\delta }}(0)\|e^{{\lambda t}}$ となっている。
1次元離散力学系が,写像 $x_{n+1} = f(x_n)$で与えられる場合のリアプノフ指数は,
$\lambda =\lim _{{n\to \infty }}{\frac {1}{n}}\sum _{{i=0}}^{{n-1}}\ln |f'(x_{i})|$
で与えられる(Wikipediaで数式をコピペするとlatex ソースがコピーできるのが有難い)。