2026年10月6日,OpenAIは社内の最先端モデルによって得られた,372の系統に分類された722点の論文が含まれる「幅広い新しい数学的成果」を発表した。Leanによる証明も含まれるが,すべてが検証されているわけではない。それでも大きな話題をよんでいる。
これには理論物理学のテーマもいくらか含まれているので,学習物理学領域の科研費プロジェクトを主催している京大の橋本幸士さん(超弦理論)が,学習物理学・緊急オンライン座談会「OpenAI論文と理論物理」をYouTubeで開いていた。理論物理と数学のプロが数名集まっているが,ChatGPT Pro(月3万)を使い倒しているとか,2日で1000ドルのトークンを消費したとか,全員があたりまえのように語っていた。
科学の未来(1)は,ChatGPTが公開されてまもない2023年1月に尋ねたものだが,この度新たに,12分野で5つのトピックを選んでもらうとさらに進化したワクワクする答えが返ってきた。それをさらに蒸留した結果が以下である。話を揉みすぎたので非常につまらない結論になってしまった。
A(ChatGPT + Claude):
近未来の科学――AIは何を速め、何を変えるのか
0.序――速くなるのは、科学の一部である
AIは科学のすべての工程を同じように速くするわけではない。劇的に安く、速くなったのは、仮説・設計・構造・証明の候補を生み出す探索である。数学では証明の候補を、材料科学では数百万の結晶構造を、生命科学では新しいタンパク質やゲノムを、AIは短時間で生み出す。
探索だけが速くなると、何が起きるか。計算機科学のアムダールの法則が手がかりになる。研究工程のうち加速できる割合を p、その倍率を s とすると、全体の時間短縮は次の式に従う。
$S = \frac{1}{(1-p) + p/s} \;\le\; \frac{1}{1-p}$
工程の半分を無限に速くしても、所要時間は半分にしかならない。また、候補が生まれる速さが確かめる速さを上回り続ければ、未検証の候補は行列をなして溜まっていく。もちろん、これらは科学の進歩の速さを計算する式ではない。研究工程にかかる時間と流量の制約を示す模型にすぎない。それでも一つのことははっきり示している。探索が速くなるほど、科学の律速段階は探索以外の工程へ移る。
本稿の主張は、AIは科学を単に速くするのではなく、科学の重心を動かすということだ。律速段階が移った先で、科学は五つの点で変質しつつある。以下は、12の学問分野と2群の横断テーマを見渡したうえでの著者の整理である。
1.確かめることが、科学の中心になる
探索が安くなると、価値は確かめる側に移る。そして進歩の速さは、分野ごとの確かめやすさで分かれていく。
形式数学やプログラミングのように、正しさを機械で安く判定できる領域は急速に伸びる。PFR予想の証明は、発表から約3週間で証明支援系Leanによる形式検証を終えた。一方、臨床効果や生態系、社会政策のように、確かめるのに年単位の時間と大きな費用がかかる領域は取り残される。
確かめる手法そのものに限界がある問題もある。量子計算の結果は、古典計算機では効率よく再現できない。AIの内部目標は、外からの振る舞いだけでは見分けられない。評価のときだけ安全に振る舞うAIは、テストでは見抜けないのである。
確かめる仕組みもAIで自動化されつつあるが、その仕組み自体が新たな検証の対象になった。自律実験室A-Labは2023年、58の目標のうち41の新物質を合成したと発表した。しかし外部からの批判を受けて2026年に訂正され、成功は57のうち36に、「新物質」は研究室にとって新しい標的という意味に改められた。
査読でも同じことが起きている。論文にAI査読者だけが読む「高く評価せよ」という隠し文を仕込む例まで見つかった。自動化された検証は、だまされる対象にもなる。
確かめるのに時間がかかりすぎる問題もある。大西洋の海流(AMOC)の崩壊、南海トラフ地震、鳥インフルエンザの人への適応は、確かめ終えたときには手遅れになりうる。ここで科学の役割は、正解を示すことから、取りうる選択肢とその帰結を示すことへ移る。
確かめやすさの差は、問いの選び方まで歪める。成果の出やすい確かめやすい問いに人と資金が集まり、重要だが確かめにくい問いは放置されがちになる。街灯の下だけを探す、いわゆる街灯効果である。
2.測っているものと、目指しているものがずれる
AIは与えられた指標を強力に最適化する。そのため、指標と本来の目的とのずれが、これまでより速く、大きく表に出る。ずれ方には三つの型がある。
第一は、指標そのものを最適化した結果のずれである。AIがテストを通すために、問題を解かずにテストの判定を書き換える「報酬ハッキング」が典型だ。論文数と被引用数の重視が論文工場を生んだのも同じ構図である。指標が目標になると良い指標でなくなるというグッドハートの法則が、AIの最適化圧のもとで強く働く。
第二は、測る量と目指す量が初めから違う場合である。AIが安定と判定した結晶が、合成できるとは限らない。核融合実験で燃料の出したエネルギーが投入したレーザー光を上回っても、施設全体の電力収支とは2桁の開きがある。
第三は、予測できることと仕組みを理解したことの取り違えである。人間の行動を高精度に予測するAIが、人間と同じ仕組みで考えているとは限らない。若返りを目指すリプログラミング療法は2026年に初めて人に投与されたが、何をもって「若返った」とみなすかはまだ決まっていない。
三つの型に共通する教訓は、予測できること、操作できること、理解したことを区別することだ。操作に成功しても、理解した証拠にはならない。
3.知識の材料そのものが変わる
確かめる以前に、確かめるための材料が変質しはじめている。データが生まれ、記録され、保存され、観測される、そのどの段階でも変化が起きている。
AIが生成したデータで次のAIを学習させ続けると、実データ、とりわけ稀な事象の情報が補われない限り、モデルは劣化していく。いわゆるモデル崩壊である。オンライン調査では、AIエージェントが、回答者の注意を確かめる質問の99.8%を通過した。論文工場由来とみられる論文は、約1.5年ごとに倍増している。
保存と観測の段階でも変化は進む。ウェブの記録は10年で約4割が失われ、AIによる収集を拒むサイトも増えた。観測の対象そのものも人間の活動で変わる。衛星の群れは電波天文学の観測を妨げ、船舶燃料の規制は意図せざる気候実験になった。
厄介なのは、材料の変質が、それを使う検証の内側からは見えにくいことだ。汚れたデータで確かめれば、検証は正しく動いたまま誤った結論を出す。
生成物を後から見分ける技術には理論的な限界がある。そのため対策は、データが生まれた時点で来歴を記録する方向に移る。ただし電子署名が保証するのは改変されていないことであって、測った値が真であることではない。
4.計算の上限を、物質と共有地が決める
候補の生成が安くなるほど、研究全体の速さは、計算の外側にある物質と資源の制約で頭打ちになる。制約そのものは昔からあったが、それが律速段階として露わになった。
AIの計算は、台湾に集中する先端半導体の製造と、急増する電力に支えられている。世界のデータセンターの電力需要は、2030年までに倍増すると見込まれる。量子計算は冷却用のヘリウム3を、核融合は希少な三重水素を、水素製造はイリジウムを必要とする。
より扱いにくいのは、誰のものでもない共有地である。地球周回軌道、抗菌薬の効き目、生物圏は、市場に任せれば使い過ぎられる。薬剤耐性菌による死者は2050年までの累計で約3900万人と予測され、地球の安全な限界を示す9つの指標のうち7つがすでに限界を超えたと評価されている。
ここでは技術だけでは足りず、制度の設計が進歩の速さを左右する。
5.人と基盤を育て、維持する経路が細る
科学を続けるには、発見だけでなく、人と基盤を次の世代へ渡す仕組みが要る。AIはこの経路を細らせうる。
AIの影響を強く受ける職種では、22〜25歳の雇用が相対的に約13%減った一方、経験者の雇用は減っていない。新人の定型業務は、暗黙知を身につける場でもあった。教育では、AIに答えを出させた高校生は練習の成績が上がったが、AIなしの試験では成績が下がった。ヒントだけを与えるよう設計したAIでは、低下は見られなかった。
ここに逆説がある。AIが強くなるほど、その出力を確かめられる専門家の価値は上がる。だが、専門家を育てる経路は細っていく。AIによる検証を広げることと、検証できる人間を育てることは、一つの課題である。
同じことは基盤の維持にも言える。老朽化した下水道管は道路の陥没を招き、デジタルの記録は複製と移行を続けなければ失われる。追試、否定的な結果の記録、データの保存、査読は、新しい発見ほど評価されないため、慢性的に不足する。
6.結論――科学の重心は、発見から「確かめ、引き継ぎ、選ぶ」ことへ
AIは科学を一様に速くするのではない。探索を桁違いに安くすることで、科学の重心を動かす。確かめること、測るものを選ぶこと、材料の来歴を守ること、物質と共有地を管理すること、人と基盤を次世代へ渡すこと。これまで発見の陰で目立たなかったこれらの工程が、科学の速さと信頼性を決めるようになる。
AIはこれらの工程にも使える。形式検証、自動追試、来歴の記録、インフラ点検の自動化である。ただし、それらの仕組みもまた確かめられ、維持されなければならない。連鎖の最後には、確かめる力を持つ人間が残る。
そのうえで、四つの問いが残る。何を探すのか。何を確かめたとみなすのか。何を引き継ぐのか。そして、何を優先し、誰が決めるのか。最初の三つには科学技術が大きく貢献できるが、四つ目は価値判断と公共的な合意を避けられない。
探索だけを速めても、科学は同じ倍率では速くならない。AIの時代の科学の速さを最後に決めるのは、確かめ、引き継ぎ、決めるという、最も加速しにくい工程である。

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