物理系の運動=状態変化が,時間を変数とする力学変数に対する微分方程式系で表される。適当な初期条件の下で,この微分方程式系を時間で順次積分することにより物理系の運動状態変化が求まる。これとは異なって,初期条件と終期条件が固定されたすべての仮想的に可能な(状態変化)経路の中から変分原理によって物理的に実現される経路が定まると考えることもできる。
この系の力学変数のある関数を,経路にわたって時間で積分した量を構成する。これを作用とよぶ。あらゆる仮想的な経路についての作用の集合の中から,実際に実現される物理系の(状態変化)経路を選び出す条件は,作用が停留値を取ることであると考える。
これが停留作用の原理(最小作用の原理)とよばれるものであり,力学変数の関数をラグランジアンとよんでいる。
力学変数をq(t)≡{qi(t) (i=1, …n)}とし,経路はq(t) (t0≤t≤t1)である。また,始点と終点は,q(t0),q(t1)で表される。
ラグランジアンをL=L(q(t),˙q(t),t)とすると,作用Sは,S[q]=∫t1t0L(q(t),˙q(t),t)dt となる。これが停留値となって物理的に実現される経路をq(t)として,停留作用の原理が成り立つ条件を表すと,
q′(t)=q(t)+δq(t), ˙q′(t)=˙q(t)+ddtδq(t)≡˙q(t)+δ˙q(t)として,δq(t0)=δq(t1)=0 および,\\
δS=S[q′]−S[q]=∫t1t0{L(q′(t),˙q′(t),t)−L(q(t),˙q(t),t)}dt=0
これから,L(q(t),˙q(t),t)→L(u,v,t)=Lとして,
∫t1t0{∂L∂u|u=q,v=˙qδq(t) +∂L∂v|u=q,v=˙qδ˙q(t)}dt
=∫t1t0{∂L∂u|u=q,v=˙qδq(t) +ddt(∂L∂v|u=q,v=˙qδq(t))−ddt(∂L∂v|u=q,v=˙q)δq(t)}dt
=∫t1t0{∂L∂u|u=q,v=˙q−ddt(∂L∂v|u=q,v=˙q)}δq(t)dt+[∂L∂v|u=q,v=˙qδq(t)]t=t1t=t0=0
第3項は0であり,任意のδq(t) についてこの式が成り立つためには
∂L(u,v,t)∂u|u=q,v=˙q−ddt(∂L(u,v,t)∂v|u=q,v=˙q)=0 あるいは,∂L∂qi−ddt∂L∂˙qi=0 (i=1,…n)
このn本の連立微分方程式を オイラー・ラグランジュの方程式という。
ある物理系に対して同じラグランジアンや作用は一意的に定まらない。例えば,
L(q,˙q),t)→L′(q,˙q),t)=L(q,˙q),t)+ddtW(q,t) とすれば,作用には ∫t1t0ddtW(q,t)dt=W(q(t1),t1)−W(q(t0),t0)の項が付け加わるが,停留値の計算には影響しないので,同じ,オイラー・ラグランジュの方程式を与える。
電磁場中の荷電粒子,r={qii=1,2,3},電荷 q)が,スカラーポテンシャルϕ(r),t,ベクトルポテンシャルA(r,t)中を運動する場合,ラグランジアンはL(r,˙r,t)=m2˙r2−qϕ(r,t)+q˙r⋅A(r,t)となる。
オイラー・ラグランジュの方程式は,
0=∂L∂r−ddt∂L∂˙r=−q∂ϕ(r,t)∂r+q˙r⋅∂A(r,t)∂r−ddt(m˙r+qA(r,t))
0=−m¨r−q(∂ϕ(r,t)∂r+∂A(r,t)∂t)+q(˙r⋅∂A(r,t)∂r−∂A(r,t)∂r⋅˙r)
つまり,m¨r=qE(r,t)+q˙r×B(r,t)
ここで,E(r,t)=−∇ϕ(r,t)−∂A(r,t)∂t
および,B(r,t)=∑ijεijk(∇iAj−∇jAi)=∇×A(r,t)
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