夏休み文楽特別公演の四日目の火曜日,平日の国立文楽劇場は初めてだったかな。お客さんの年齢層は高いがほぼ満員御礼状態。冷房が効きすぎていたのか休憩時間には男子トイレまで行列が絶えることがなかった。
演目の第二部は仮名手本忠臣蔵の五段目,六段目,七段目である。立川志の輔の中村仲蔵の落語でこの五段目に開眼し,前回(平成24年11月)の通し狂言も見ているので,ストーリーはある程度押さえているはずだけれど,まだおぼつかない。祇園一力茶屋のおかるは吉田蓑助になっていたが,二階の場面に少し出たあとは吉田一輔に交代したようだ。人間国宝になったばかりの豊竹咲太夫も,前回は一力茶屋の段の由良之助だったのが,今回は軽い身売りの段を勤めていた。まだ体調が十分ではないのかもしれない。早野勘平腹切りの段は,豊竹呂勢太夫。
一力茶屋の段の掛け合いの構成や最後の場面での斧九太夫の扱いなどを覚えていなかったので,新鮮だった。おかるの手鏡は丸いのかと思っていたら,四角いものであったし,おかるが由良之助の促されて二階からはしごを降りるところなども面白かった。最近は記憶が衰えてきたので,何度も新鮮な気持ちで見ることができる。いいのか悪いのか。
3列33番は,床の直下である。若手をはじめなかなかの迫力で聞き応えがあった。小住太夫も咲寿太夫もよかった。靖太夫は有望なのだけれど,最初の平板な入りをもう少し何とかしてほしいかも。藤太夫が見台と床本なしで,下手で鷺坂伴内を語っていた。こんな演出だったのか。
鷺坂伴内といえば,10年近く前の文楽入門講座か何かで,竹本相子太夫が鷺坂伴内の役を使って説明してくれたのが印象深かった。その当時はまだ,仮名手本忠臣蔵の面白い役回りだと認識していなかったころだ。2013年に相子太夫は文楽座を退座してしまった。残念だった。久しぶりだったので,人形遣いの若手で初めて見るような顔がいくつかあった。太夫の若手もはやく育ってほしい。
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