当時の総務大臣であった,経済安全保障担当大臣の高市早苗(1961-)が,参議院予算委員会の質疑の場でそれは捏造文書だと決めつけた。もし真正な文書なら大臣も議員もやめると大見えを切った数日後,現総務大臣の松本剛明(1961-)が行政文書であることを認めて政治的公平に関する文書(78p)として公開した。高市はさっそく議論のポイントをずらしながら逃げ切りを図っている。
もし仮にその行政文書が捏造であるならば,作成当時の総務大臣である高市早苗に責任があることになるのだが,まるで他人事のように,自分の名前が出てくる4ヶ所はでっち上げであると強弁している。どこかでみたと思ったら,大阪維新の橋下に始まり,松井,吉村の常套手段だった。自分が行政の責任者にもかかわらず,大阪府や市の行政担当者をあからさまに非難・攻撃してポピュリズム的な溜飲を下げる手口だ。今回とは少し種類や性質が違うにせよ,行政の責任体系の破壊という意味では共通だ。
行政文書は公文書等の管理に関する法律の第二条4項で次のように定義されている。
この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書(図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)を含む。第十九条を除き、以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。一 官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの二 特定歴史公文書等三 政令で定める研究所その他の施設において、政令で定めるところにより、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの(前号に掲げるものを除く。)
この行政文書と独立行政法人が管理する法人文書および特定歴史的公文書の総称が公文書ということになる。
この第12条に文書主義についての項がある。
(文書主義の原則)第12条 職員は、文書管理者の指示に従い、法第4条の規定に基づき、法第1条の目的の達成に資するため、総務省における経緯も含めた意思決定に至る 過程並びに総務省の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証するこ とができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成 しなければならない。
これが正しく機能していたおかげで,磯崎陽輔(1957-)が,放送法における政治的公平性の解釈を恣意的に変更しようと強要した過程が記録されることになった。松本総務大臣及び総務省は,礒崎−安倍−高市ラインの当時の蠢動は,公平性の解釈変更ではなく補充的説明であると言い張っている。普通に考えると,解釈変更であり,実際に発動はしていなくともその効果によって,テレビ界の言論が大きく萎縮しているのは間違いない。日曜のサンデーモーニングでは,このニュースは末尾に少しだけ取り上げられたが,強い意思表明などは全くなかった。
面倒なのは,奈良県知事選挙で高市が総務完了崩れを推選して奈良県自民党の分裂をまねいていることだ。天理市長は,反現知事派=高市派だしなあ。
2000.12 女性国際戦犯法廷
2001.01 NHK ETV特集「戦争をどう裁くか/問われる戦時性暴力」
2006.09 第一次安倍内閣発足(-2007.09)
2007.07 礒崎陽輔が参議院議員(大分県選挙区-2019.07)
2012.12 第二次安倍内閣発足(-2020.09)
2013.12 国家安全保障会議の設置
2014.04 礒崎陽輔が内閣総理大臣補佐官(-2015.10)
2014.11.20 「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」
自由民主党筆頭副幹事長 萩生田光一・報道局長 福井照
2014.11.21 衆議院解散
2014.11.26 礒崎陽輔から総務省放送政策課へのアクション開始
2014.12.14 衆議院選挙
2015.05 高市総務大臣が参議院総務委員会で調整版回答を答弁
[1]橋下劇場に関する批判的評論の分析 −ポピュリズム研究の進展のために−(有馬晋作)
[2]放送事業規制の日米比較と日本の問題点(鶴田達成)
[3]我が国のメディアの現状と課題(黒須俊夫)
[4]日本版公正原則の現在(魚住真司)
[5]「国民投票運動のための広告放送」等に関する資料(衆議院)
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