2023年3月3日金曜日

炭素年代測定法

ヤポネシアからの続き

14Cを用いた,炭素年代測定法について。

炭素14(0+1)から窒素14(1+0)へのガモフテラーベータ(−)崩壊半減期5730年(1.81*10^11 s)は,アイソバリックアナログ状態の酸素14(0+1)から窒素14(1+0)のベータ(+)崩壊/電子捕獲の半減期70.6秒に比べると9桁ほどと圧倒的に大きい。その理由は次のように説明される。

β+崩壊の方は,ほとんどが,0+1→0+0励起状態の許容フェルミ遷移になるため,1+0基底状態への分岐比は0.61%である。これを補正すれば 4桁回復する。また,遷移エネルギー差が大きく影響する位相空間からくる寄与(f値)を計算してみれば 4桁の差が縮まる。これらを考慮すると,荷電対称性から1になるべき遷移行列要素の比率が1桁以内に収まる(それでも結構な違いが残る)。

炭素年代測定法は,授業の課題でもたびたび取り上げたし,AMS(加速器質量分析)の話題とからめて入試問題も作成したので,馴染のはずだった。ところが,縄文人のDNA分析の話の中で,重要な補正項があることを始めて知った。

地球の炭素循環は大気圏,表層海洋圏,深層海洋圏,陸上生物圏,海洋生物圏などのブロックに分割できるが,それぞれの部分に蓄えられる炭素の割合と,その拡散時間が異なっている。そこで,これらの炭素リザーバーの効果を適切に評価する必要がある。例えば,海洋生物を主に食べているヒトの炭素では,深層海洋圏に長くとどまることで14Cの割合が減少した炭素が海洋生物圏に達し,その割合が大きくなることから,年代推定に影響を与えることになる等々。





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