放射性元素の崩壊系列は,質量数Aと原子番号Zを2軸とするダイヤグラムで表現されることが多い。一方,放射性元素の影響を特徴づけるのは,放出されるα線やβ線のエネルギーと,崩壊定数すなわち半減期である。
そこで,質量数Aと半減期 T (秒)の常用対数を2軸とするダイヤグラムで表わすとどうなるかを調べてみた。なお,複数の崩壊経路があるばあいは,分岐比の大きな方だけをたどっているが,半減期は両方の分岐を合わせたものを採用している。
放射性元素の崩壊系列は,質量数A=4n+mとして4系列に分類される。
青:4n+0:トリウム系列 232Th(141億年)→[α6β4]→208Pb(安定)42.6MeV
灰:4n+1:ネプツニウム系列 237Np(214万年)→[α8β4]→205Tl(安定)66.8MeV
赤:4n+2:ウラン系列 238U(45億年)→[α8β6]→206Pb(安定)51.7MeV
緑:4n+3:アクチニウム系列 235U(7億年)→[α7β4]→207Pb(安定)46.4MeV
図:崩壊系列における対数半減期と質量数(右→左へ遷移)
a = 3.1557*10^7; d = 24*3600.; h = 3600.; m = 60.;
s = 1.; ms = 10^-3; us = 10^-6; ns = 10^-9;
c[0] = Blue; c[1] = Gray; c[2] = Red; c[3] = Green;
r[0] = {{232, 1.405*10^10 a}, {228 + 0.2, 5.75 a}, {228, 6.15 h},
{228 - 0.2, 1.9116 a}, {224, 3.6319 d}, {220, 55.6 s},
{216, 0.145 s}, {212 + 0.2, 10.64 h}, {212, 60.55 m},
{212 - 0.2, 299. ns}, {208, 10^20 a}};
r[1] = {{237, 2.144*10^6 a}, {233 + 0.2, 26.967 d},
{233 - 0.2, 1.592 *10^5 a}, {229, 7340 a}, {225 + 0.2, 14.9 d},
{225 - 0.2, 10.0 d}, {221, 4.9 m}, {217, 32.3 ms},
{213 + 0.2, 45.59 m}, {213 - 0.2, 3.65 us}, {209 + 0.2, 3.253 h},
{209 - 0.2, 1.9*10^19 a}, {205, 10^20 a}};
r[2] = {{238, 4.468*10^9 a}, {234 + 0.2, 24.10 d}, {234, 1.17 m},
{234 - 0.2, 2.455*10^5 a}, {230, 7.538*10^4 a}, {226, 1600 a},
{222, 3.8235 d}, {218, 3.098 m}, {214 + 0.2, 26.8 m}, {214, 19.9 m},
{214 - 0.2, 164.3 us}, {210 + 0.3, 1.3 m}, {210 + 0.15, 22.20 a},
{210 - 0.15, 5.012 d}, {210 - 0.3, 138.376 d}, {206, 10^20 a}};
r[3] = {{235, 7.038*10^8 a}, {231 + 0.2, 25.52 h},
{231 - 0.2, 32760 a}, {227 + 0.2, 21.773 a}, {227 - 0.2, 18.72 d}, {223, 11.435 d}, {219, 3.96 s}, {215, 1.781 ms}, {211 + 0.2, 36.1 m},
{211 - 0.2, 2.14 m}, {207 + 0.2, 4.77 m}, {207 - 0.2, 10^20 a}};
Do[{q[i] =
Transpose[{Transpose[r[i]][[1]], Log10[Transpose[r[i]][[2]]]}],
g[i] = ListPlot[q[i], PlotStyle -> {PointSize[Large], c[i]}],
f[i] = ListPlot[q[i], Joined -> True, PlotStyle -> c[i]]},
{i, 0, 3}];
Show[Table[{g[i], f[i]}, {i, 0, 3}], PlotRange -> {{205, 240},
{-10, 30}}, Frame -> True, GridLines -> Automatic]
グラフを作図するため,到達点の安定な同位元素の寿命として,10^20年を入れた。ネプツニウム系列の最後から2番目には,半減期が1.9×10^19年(宇宙年齢の10億倍)の
ビスマス209がある。2003年まではこれは最も重い安定同位元素だと認識されていた。
全体の傾向はなくて半減期はバラついているのかと思ったが,実際にはすべての系列に共通して,長寿命から大きな谷を経由して再び長寿命(安定)に向かうカーブを描いている。これは原子核構造の大域的性質に関係あるのかもしれない。知らんけど。