2021年10月9日土曜日

円筒電荷分布の電場(1)

球殻のような 球対称の電荷分布については,電荷分布の外側ではそのすべての電荷が球の中心に集中したとして,クーロンの法則を適用した電場を考えればよい。また,電荷分布の内側では,電場を計算したい点より外側の(原点からより遠い)電荷による寄与はすべて打ち消しあい,その点より内側の(原点により近い)電荷だけを先ほどの方法で考えれば良いことがわかっている。

これは,同じ距離の逆二乗則に従うニュートンの万有引力についても同様であって,入試問題などでもよく扱われるし,大学初年級の力学の教科書でも取り上げられることが多い。ちょっと面倒だが,丁寧に積分すれば導けるし,球殻内の点から見込む立体角の性質を使えば,2つの領域からくる万有引力の打ち消し合いのイメージは直感的に理解できる。

ところで,電磁気学の問題で,無限に伸びた軸対称の円筒状の電荷分布による電場を求めるというものがある。球の場合と同様に電荷分布内部の点での電場は,その点より内側の電荷だけを考慮してガウスの法則を当てはめると,対称性を用いて簡単に電場を計算できる。

その,電場を計算する点より外側の電荷による寄与が無視できるということは,当たり前すぎるのか,対称性からゼロになると簡単に書いてあるだけで,あまり丁寧な説明にお目にかかったことがない。もちろん,積分による証明もそれほど見かけない。


図:軸対称円筒電荷が作る電場

ということで,簡単なイメージ図を書いてみた。無限円筒状電荷分布をz軸に垂直な面で切ったものであり,対称性から電場ベクトルはこの平面内で円の中心を通って電荷素片から外側または内側に向く成分だけが残ることになる。

ここにガウスの法則を当てはめれば,外側のF点では,DとEの電荷素片が作る電場要素が同じ大きさの寄与をして加えあう。また,内側のC点では,AとBの電荷素片が作る電場要素が互いに逆向きの寄与をするため打ち消しあう。

このとき,電場の大きさかける面積要素が左辺,電荷面密度かける面積要素を真空の誘電率で割ったものが右辺となる。例えば,右図の Fd+Feで考えれば,$E_r \cdot r \delta \Delta z = \dfrac{\sigma R \delta \Delta z}{\varepsilon_0} $。なお,$\delta$ は面積要素を見込む微小角度である。これから,$E_r  =  \dfrac{\sigma R}{r \varepsilon_0} = \dfrac{\lambda}{2 \pi \varepsilon_0}\dfrac{1}{r}$となる。ただし,$\lambda = 2 \pi R \sigma $は,電荷線密度である。

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