2021年6月6日日曜日

ゼロの焦点

録画されていた 松本清張ゼロの焦点犬童一心監督,2009年)をみた。戦後,昭和32年の金沢や能登が舞台になっていて,当時の街の雰囲気がていねいに作られていた。金沢駅の構内アナウンスでは「0番線(七尾線)ホーム」が出ており,昔のホームの雰囲気が彷彿とされた。

雪の降る金沢市内の浅野川沿いの雰囲気,古い町並みと鉄製の広告看板,雪まじりの道のあるきにくさ,市電の4番線で野町や白菊町の工場に向かう様子,金沢弁の使い方など丁寧に描写されている。金沢市長選の婦人候補の陣営で支援者が歌う金沢市民の歌(昭和24年制定)が特に良かった。

ストーリーは,社会派推理作家の松本清張の特徴がはっきりとして,その後のサスペンス劇場の断崖クライマックスの嚆矢となるものだった。広末涼子,中谷美紀,木村多江がくすんだ北陸の冬景色の中に際立った色彩を放っていた。

能登金剛の巌門は小学校4年か5年の修学旅行でも定番のルートになっていたが,旧作のゼロの焦点(野村芳太郎監督,1961年,久我美子−高千穂ひづる−有馬稲子)では,巌門から15km北のヤセの断崖が舞台になっている。今回もそうだったのか。

アマゾンのこのレビューでは,映画の脚本上の違和感がいくつか指摘されており,概ね同感である。なお,金沢市の歌には他に金沢市歌(1923年)と金沢市民憲章の歌(1980年)がある。


写真:ヤセの断崖(能登 島宿せがわ から引用)

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