「 鹿になる考えることのなくなる」 (阿部完市 1928-2009)
芥川龍之介が「蜘蛛の糸」を発表して百年。高二の秋の文化祭,クラスの仮装行列のテーマが 蜘蛛の糸だった。お釈迦様の極楽タワーの竹を近所から切り出し,地獄の焔と煙の絵を描いた。犍陀多に続いて蜘蛛の糸(登山部の赤いザイル)に群がる地獄の亡者だったころ。
2022年4月5日火曜日
2022年3月30日水曜日
Wordle(4)
Wordle(3)からの続き
Wordleをやっていると,そもそも英語の文章で出てくる単語のうち5文字である確率はどんなものか,また,最もよく出現するのは何文字の単語なのか,などなどが気になるようになった。
これを調べるために,与えられたテキストファイルやpdfファイルから単語を切り出して,その文字数の分布を調べるためのシェルスクリプトを作ってみた。
case \$3 in昨日のスクリプトを少しだけ修正すればよかったが,ポイントは,シェルスクリプト中の反復の記述法である。繰り返し変数は$をつけて,perlのワンライナーに受け渡すことができた。あとはこれを使って実験してみれば良いのだが,それはまた次回のお楽しみ。
"txt")
echo "txt";
;;
"pdf")
echo "pdf";
pdftotext \$2.pdf;
;;
*)
echo "undefined";
;;
esac
for ((i=1 ; i<=\$1 ; i++))
do
perl -nse 'while (/\b[a-z]{\$num}\b/ig) {print "\$&\n";}' -- -num=\$i \$2.txt | tr A-Z a-z > tmp.txt
cat tmp.txt | wc -l >> \$2-\s1.txt;
cat tmp.txt | sort | uniq | wc -l >> \$2-\s2.txt;
rm tmp.txt
done
2022年3月29日火曜日
Wordle(3)
Wordle(2) からの続き
Wordleは英語の勉強になる。簡単な5文字の英単語でも知らないものがたくさんあって,自分の語彙力はやはり10歳並みだということが確かめられる。そのため,辞書の助けがないと5-6回で答えに辿り着くことは出来ない。#! /bin/zsh
# usage: word.sh 5 sample pdf (tst, txt, pdf, html)
# output sample-5.txt
case \$3 in
"tst")
pwd;
ls -al \$1.txt;
ls -al \$2.*;
;;
"txt")
echo "txt";
perl -nse 'while (/\b[a-z]{\$num}\b/ig) {print "\$&\n";}' -- -num=\$1 \$2.txt | tr A-Z a-z > \$2-\$1.txt;
;;
"pdf")
echo "pdf";
pdftotext \$2.pdf;
perl -nse 'while (/\b[a-z]{\$num}\b/ig) {print "\$&\n";}' -- -num=\$1 \$2.txt | tr A-Z a-z > \$2-\$1.txt;
;;
"html")
echo "html";
textutil -convert txt \$2.html;
perl -nse 'while (/\b[a-z]{\$num}\b/ig) {print "\$&\n";}' -- -num=\$1 \$2.txt | tr A-Z a-z > \$2-\$1.txt;
;;
*)
echo "undefined"
;;
esac
2022年3月28日月曜日
ロフテッド軌道(3)
ロフテッド軌道(2)からの続き
初速度を第1宇宙速度$v=\sqrt{\frac{GM}{R}}$に固定した場合,Mathematicaによるプロットを試みる。このとき,$u(\varphi)=A(\theta) \cos \varphi + B(\theta) \sin \varphi +\frac{GM}{h^2}$,$A(\theta)= - \frac{1}{R \tan^2 \theta }$,$B(\theta) = -\frac{1}{R \tan \theta}$,$\frac{GM}{h^2}=\frac{1}{R \sin^2 \theta}$ であり,Mathematicaのコードは以下のとおり。
In[1]:= {G, R, M} = {6.67*10^-11, 6.37*10^6, 5.97*10^24}
Out[1]= {6.67*10^-11, 6.37*10^6, 5.97*10^24}
In[2]:= {g, v} = {G M /R^2, Sqrt[G M/R]}
Out[2]= {9.81344, 7906.43}
In[3]:= A[t_] := 1/R*(1 - 1/Sin[t]^2)
In[4]:= B[t_] := -1/(R*Tan[t])
In[5]:= GM[t_] := 1/(R Sin[t]^2)
In[6]:= r[s_, t_] := 1/(A[t] Cos[s] + B[t] Sin[s] + GM[t])
In[7]:=
Table[f1[i] = Plot[{r[s, i]/R, 1}, {s, 0, Pi},
GridLines -> Automatic, PlotRange -> {0, 2.0}];, {i, 0.1, 1.5, 0.2}];
In[8]:= Show[Table[f1[i], {i, 0.1, 1.5, 0.2}]]
In[9]:=
Table[f2[i] = PolarPlot[{r[s, i]/R, 1}, {s, 0, Pi},
GridLines -> Automatic, PlotRange -> {0, 2.0}];, {i, 0.05, 1.5, 0.2}];
In[10]:= Show[Table[f2[i], {i, 0.05, 1.5, 0.2}]]
In[11]:= f[t_] :=
NIntegrate[ 1/Sqrt[G M R Sin[t]^2] *1/(A[t] Cos[s] + B[t] Sin[s] + GM[t])^2, {s, 0.001, Pi/30}]
In[12]:= Plot[f[t], {t, 0, Pi/8}]
2022年3月27日日曜日
ロフテッド軌道(2)
ロフテッド軌道(1)からの続き
重力場中の質点に対する2次元極座標系$(r(t), \varphi(t))$でのニュートンの運動方程式は次のとおり。
$ \quad \quad m \bigl( \ddot{r} -r \dot{\varphi}^2 \bigr) = F_r = \frac{G M m}{r^2}$
$ \quad \quad m \frac{d}{dt} \bigl( r^2 \dot{\varphi} \bigr) = F_\varphi = 0$
第2式は角運動量保存則に対応しており,$r^2 \dot{\varphi} = h$ (一定) が成り立つ。
これを第1式に代入して,$ \dot{\varphi}$ を消去すると,$ \ddot{r} -\frac{h^2}{r^3} =\frac{G M}{r^2} $となる。そこで,$u(\varphi) =\frac{1}{r(\varphi)}$と置き,$\dot{\varphi} =h u^2$に注意して,運動方程式を,軌道の形を定める$\varphi$に関する微分方程式に書き換える。
$\dot{r} = \frac{d}{d\varphi} \bigl( \frac{1}{u} \bigr ) \dot{\varphi}= -\frac{1}{u^2} \frac{du}{d\varphi} \ h u^2 = -h \frac{du}{d \varphi}$
$\ddot{r} = \frac{d}{d\varphi} \bigl( -h \frac{du}{d \varphi} \bigr ) \dot{\varphi}= - h \frac{d^2 u}{d\varphi^2} \ h u^2 = -h^2 u^2 \frac{d^2 u}{d \varphi ^2}$
$\dot{\varphi}$を消去した運動方程式に代入すると, $-h^2 u^2 \frac{d^2 u}{d \varphi ^2} -h^2 u^3 = -GM u^2$,つまり,$\dfrac{d^2 u}{d \varphi^2} + u = \dfrac{GM}{h^2}$であり,一般解は,$u = A \cos \varphi + B \sin \varphi + \frac{GM}{h^2}$ である。
初期条件から$A,\ B$を定めるには,$\dot{r} = -h \frac{du}{d \varphi}$の表式が必要となる。一般解を右辺に代入すると,$\dot{r} = h (A \sin \varphi - B \cos \varphi )$
半径$R$の地球の中心Oを原点にとった座標系において,$(x,y)=(R,0); (r,\varphi)=(R,0)$から鉛直上方($x$軸正方向)となす角度$\theta$の方向に,初速度$v$で質量$m$の質点を投射する。このとき $r(0)=R$,$\dot{r}(0)=v_r=v \cos \theta$,$h = r(0)^2 \dot{\varphi}(0) = R v_\theta = R v \sin \theta$である。
これらから,$\frac{1}{R} = A+ \frac{g}{(v \sin \theta ) ^2}$,$v \cos \theta = - B R v \sin \theta$であり,$A=\frac{1}{R} - \frac{g}{(v \sin \theta ) ^2}$,$B = -\frac{1}{R \tan \theta}$となる。
なお,到達時間のオーダーは,$\frac{R \Delta \varphi}{v \sin \theta}= 800 \frac{ \Delta \varphi}{\sin \theta} $[s]となる。
2022年3月26日土曜日
ロフテッド軌道(1)
北朝鮮の火星17号弾道ミサイル実験でのロフテッド軌道は,高度6250kmで水平飛距離 1090km 飛行時間 67分というものだったと北朝鮮の労働新聞が報じたことをNHKが伝えている。地球の半径が6370kmだから,国際宇宙ステーション軌道の15倍以上の宇宙空間まで達している。
これを初速度 $v$を与えた鉛直投射によって地球半径$R$の高度まで達したと近似する。エネルギー保存則から,$\frac{1}{2}m v^2 - \frac{GMm}{R} = 0 - \frac{GMm}{2R} $より,$v=\sqrt{\frac{GM}{R}}$ となる(第1宇宙速度 7.9 km/s に一致するのか)。
地球半径のオーダの高度では,投射体に働く万有引力は地表の1/4まで減少するが,これを無視した$g=\frac{GM}{R^2}$の一様重力場とした。空気抵抗も無視して地球を平面と見なす。このとき,初速度が第1宇宙速度$ v $のミサイルを45度で斜方投射すると,最高度までの到達時間が $t=\frac{v}{\sqrt{2}g}$であり,水平到達距離$d$は,$d = 2 \frac{v}{\sqrt{2}} t = \frac{v^2}{g} = \frac{GM}{R} \frac{R^2}{GM} = R$ = 6400 km となる。飛行時間は,$2 t = \frac{\sqrt{2}v}{g} = 10^3\ {\rm s}$ = 17分。
この近似では,平壌からワシントンまでの11000 km には足りないのだった。もう少し真面目な計算をする必要がある。
2022年3月25日金曜日
Jxiv
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が,3月24日から日本発のプレプリントアーカイブサービス,Jxivの運用を始めた。コーネル大学が運用している arxiv の二番煎じだけれど,何もないよりはマシかもしれない。なお,arxivでも一応日本語の投稿はできるのをみたことがあるし,論文の定義も比較的緩く感じる。
Jxivには,研究者IDである,ORCIDまたはresearchmapのアカウントがあれば登録できる。ただ,researchmapは微妙に面倒なことになっている。そもそもユーザ名が自分では指定できない記号数字の組み合わせだ。所属機関からも登録できるようにするためには仕方ないのかもしれない。
まだ,どの分野の論文も登録されていない。投稿規定やガイドラインを見ると,なんとなく面倒臭そうな雰囲気が満ちているのであった。日本のお役所仕事はどうしてこんなにガードが固くなるのだろうか。そうでなければ利権まみれとかグダグダとかになってしまうのだ。
2022年3月24日木曜日
pandoc(3)
pandoc(2)からの続き
引き続き,markdown ファイル の活用例として,プレゼンテーション用のスライド作成に取り掛かる。見本(英文)は簡単に見つかって実行できたものの,日本語対応が面倒だと書いてある。あれこれ探してみても,出発点が RStudioの R Markdownというものが多いのだ。結局,日本語Markdownからスライド資料を作成する(Rcmdnk's Blog 2015)とBeamerスライドをMarkdownで簡単に作成(Tomokazu NOMURA's Web Page)を参考にした。
% kpsewhich beamerthemeSingapore.sty
% /usr/local/texlive/2021/texmf-dist/tex/latex/beamer/beamerthemeSingapore.sty
beamerのテーマファイルを上記のkpsewhichコマンド探し,これを編集して末尾に, \usepackage{luatexja} を加えることで日本語対応するということだった。設定ファイルに直接手を入れるのは気が進まないが,元のmarkdownファイルの1ページ目の yaml ヘッダで定義すれば十分であり,styファイルの修正は不要だった。その結果,次のコマンドで memo.md から memo.pdf というbeamerによるプレゼンテーションスライドが生成される。
pandoc -t beamer -o memo.pdf memo.md --pdf-engine=lualatex
memo.mdの1ページ目の yaml ヘッダは次のとおりであり,スライドの改ページは --- である。
---
title: "MarkdownからBeamer"
subtitle: "Pandocで変換"
author: "大阪教育大学 越桐國雄"
date: 2022/03/24
output:
beamer_presentation:
keep_tex: yes
latex_engine: lualatex
header-includes:
- \usepackage{bookmark}
- \usepackage{luatexja}
- \usetheme{Singapore}
---
2022年3月23日水曜日
pandoc(2)
pandoc(1)からの続き
とりあえず,markdown ファイルから pdf ファイルが生成できるようになった。tex ファイルや html ファイルも生成できるので,その手順をまとめてみる。
(1) tex ファイルの場合
pandoc -s test.md -o test.tex
このtexファイルに対して,ドキュメントクラスを日本語対応に変更する。すなわち,\documentclass[]{article} → \documentclass[]{ltjarticle}として,コマンドラインから,lualatex test.tex とすれば,test.pdf が得られる。
置き換えを perl のワンライナーで実行すれば,シェルスクリプトに落とし込むことができる。
perl -pi -e 's/{article}/{ltjarticle}/' test.tex
(2) htmlファイルの場合
pandoc -s test.md -o test.html --mathml
pandoc -s test.md -o test.html --mathjax
どちらでもよいのだが,数式のまわりのhtmlは,mathjaxの方が少しだけスッキリしているかもしれない。
そこで,これらを zsh のスクリプトとしてまとめたものが次である。md.sh input option とすればよい。optionには{pdf, tex, html}のいずれかが入る。入力ファイルは input.md であり,拡張子より前の部分を引数に取ればよい。以下は md.sh の内容である。
#! /bin/zsh
case \$2 in
"pdf")
echo "pdf";
iconv -f UTF-8-MAC -t UTF-8 \$1.md | pandoc -f markdown -o \$1.pdf -V documentclass=ltjarticle --pdf-engine=lualatex
;;
"tex")
echo "tex";
pandoc -s \$1.md -o \$1.tex;
perl -pi -e 's/{article}/{ltjarticle}/' \$1.tex
;;
"html")
echo "html";
pandoc -s \$1.md -o \$1.html --mathjax
;;
*)
echo "undefined"
;;
esac
2022年3月22日火曜日
pandoc(1)
マークダウン(2)からの続き
マークダウンの使い方をみていると,コマンドラインベースで各種のドキュメントを相互に変換することができる,pandocとの相性が良いらしい。ということで,pandoc をインストールしようとしたら,すでに homebrew で導入済みだった。念のために,brew reinstall pandocで,pandoc 2.17.1.1が入った。
変換できるファイルの種類のカテゴリーは,次のように多岐に渡る。Lightweight markup (.md),HTML (.html),Ebooks (.epub),Documentation,Roff,TeX (.tex),XML,Outline,Word processor (.docx), Interactive notebook (.ipynb),Page layout,Wiki markup (MediaWiki),Slide show (beamer),Data (.csv),Custom,PDF (.pdf)
厄介なことにマークダウンに関しては微妙に異なった方言が存在するのでなんだか意図した結果が出てこないと思っていたが,記法のミスだった。(1) 見出し,(2) 箇条書き,(3) 番号付き箇条書き,(4) 書体,(5) コード,(6) 数式,(7) 表,(8) 画像,(9) リンク,(10) 脚注 などが概ね機能している。見出しのレベルがまだはっきりわからない。番号付きリストの半角空白は3個にした。
iconv -f UTF-8-MAC -t UTF-8 test.md | pandoc -f markdown -o test.pdf -V documentclass=ltjarticle --pdf-engine=lualatex
上記が,macOS での pandoc の使用例である。入力ファイルは test.md,出力ファイルは test.pdf である。pdf 出力のためには lualatex を通す必要があることと,ファイルは標準の(macOS標準ではなく)UTF-8 形式にしておく必要があるのでiconvで漢字変換したものをpandocに食わせている(pdfファイルで濁点が分離してしまうのを防ぐらしい)。
.zshrcにパスを通して,md2pdf.sh という実行可能なシェルスクリプトを作ったので,引数を1つ指定すると,md2pdf.sh test1 のようにmdファイルからpdfファイルが生成できるようになった。
以下が,マークダウンファイル,test1.md の内容である。
# 見出し1(Title)
ここが段落の文章になる改行しても無視される
空行があるためこの文章は第二段落となる
## 見出し2(Chapter)
これでは
あれでは
### 見出し3(Section)
#### 見出し4(Subsection)
- リストA
- リストB
- 子リストB-a
- 孫リストB-a-a
- リストC
- リストの文章1です。
行の頭に半角スペースが二つあるので,
リストの内部要素です。
- リストの文章2です。
行の頭に半角スペースがないので新しい段落です。
1. 番号付きリスト A
1. 番号付き子リスト A-a
1. 番号付き子リスト A-b
1. 番号付き孫リスト A-b-α
1. 番号付き孫リスト A-b-β
1. 番号付き孫リスト A-b-γ
1. 番号付き子リスト A-c
1. 番号付きリスト B
*italic* **bold** ***italic+bold***
\`inline_code\`
\`\`\`
display style code block
function test(a,b) {
return a+b;
}
\`\`\`
\$\int_{-\infty}^\infty e^{-\alpha x^2}dx = \sqrt{\frac{\pi}{\alpha}}\$
\$\$
\int_{-\infty}^\infty e^{-\alpha x^2}dx = \sqrt{\frac{\pi}{\alpha}}
\$\$
|項目1|項目2|項目3|
|---|---|---|
|りんご| 10円| 3個|
|みかん| 50円|10個|
|いちご| |売り切れ|
|バナナ|100円| 2本|
[リンク先 https://pandoc.org/ をクリック](https://pandoc.org/)
画像![ALT これはアイコンです](sample.png)も表示させられます。
Markdown エディタ NowType は Ito によって作られ た。 [^1]
NowTypeにおいては、次のような入力支援を行います。
[^1]: Atsushi M. Ito, プラズマ・核融合学会誌, vol. X, No. Y, 2020.
2022年3月21日月曜日
知の対価のデフレ
東北大学の堀田昌寛さんがTwitterで「知の対価のデフレ」について発言したことが波紋を広げている。
インターネット上に無償の(物理や数学などの)専門知識コンテンツが溢れていることによって知の対価がデフレになっているとして,無償で学術コンテンツを公開している研究者やアマチュアに対して苦言を呈している。その趣旨は2つある。
(1)知識はタダで手に入るものという誤った考えが浸透することになり,知識生産(科学研究とその成果の解説や普及)やそれに携わる人たちの努力が報われなくなってしまう。これは,最終的に知的生産活動を毀損する方向に働くだろう。現に,専門書の市場がかなり縮小してしまい,売れなくなったとのことだ。
(2)人気のある無償コンテンツによって,量子力学の解問題などで典型的にみられる間違った知識が広がってしまう。なお,堀田さん自身のコペンハーゲン解釈の理解と解釈は正しいと主張している。無償コンテンツの流通が情報の質を低下させることに問題がある。
まあ,著作権法の精神がかなりビジネスサイドに歪められている状況で,著作権管理団体が主張している方向性に親和性のある発言である。彼自身が,投げ銭システムを使おうが,有償コミュニティを作ろうがそれはよろしいのだけれど,問題はこれまで無償で良質なコンテンツを公開してきた人に批判の矢を向けていることだ。実際,批難された人たちが様々なリアクションをしている。
堀田さんの量子力学の新しいタイプの教科書「入門 現代の量子力学 量子情報・量子測定を中心として」は,Twitterでの宣伝も功を奏してとても評判になったし,自分も購入している。それ以前の「量子情報と時空の物理」も買っており,量子力学の認識論的解釈という言葉に目を開かれる思いだった。
インターネットの黎明期から始まった知識情報やソフトウェア・データの民主化と公開化の流れや精神に自分は基本的に賛成であり,それらに非常に大きな恩恵を受けている。また,その結果として新しいビジネスモデルが展開されて,お金が動き始めることには全く問題はないと思う。しかし,原点である情報のオープン化に障害となるような発言を繰り返されるのは,影響力の大きな人だけに気になってしまう。なんだかなあ。
P. S. 1 Twitterでの堀田さんの発言はずっとウォッチしてきているが,微妙に道徳・宗教的なところや,変な理由で谷村省吾さんがサイエンス社のサイトで補足情報を出したことに噛み付いたりと,あまり良い印象のない部分がある。
P. S. 2 arxivやWikipediaやWeb Archiveにもお世話になっていて,わずかながら寄附したことはあるので,全くただノリをしているつもりはない。また,YouTubeには収益化機構があるので,これもOKだろう。
P. S. 3 堀田さん自身もお世話になっているはずの,オープンソースソフトウェアについて,彼はどう考えているのだろう。
2022年3月20日日曜日
マークダウン(2)
マークダウン(1)からの続き
markdownを使うためのエディタとして何がいいのかを調べてみた。【2022年版】Markdown(マークダウン)エディタ厳選まとめなど色々ある。
一つは,Visual Code Studio や Atom などの高機能プログラム開発用ソースコードエディタである。元々日常的に使っているのであればこれで良いのだけれど,このためだけに大掛かりな道具立てを持ってくるのは,ちょっと本末転倒な感じがして,markdown の簡素さと相容れない。
そうなると,ウェブアプリとかローカルアプリになる。Boostnote,Joplin,Bear,Quiverなどを眺めてみたけれど,どれも面倒な印象だ。その中では,有償ではあるが Typoraがデザインもすっきりしていて相対的にマシなように感じた。$14.99なのでそれほど高額ではない。とりあえず,3週間は無料でお試しできるので導入してみた。
一通りのことはできるが,inlineの数式ができない。調べてみると,環境設定に1つチェックをすればOKなので,これでほぼ目的は達成できそうだ。使い込んではいないので,もう少し様子を見ることに。
そうこうしていたら,なんのことはない,Jupyter notebookに Code モードとMarkdown モードがあることがわかった。モードを切り替えてみれば,簡単な数式入力は問題なかった。これでいいのだ。最も,その先のことや pdf 出力のことを考えると,Typoraの方が良いかもしれない。
2022年3月19日土曜日
マークダウン(1)
湯川諭さんの 統計力学の本を読んでいたら,カノニカル集団の章で,ラプラス逆変換の式が重要なポイントとして出てきた。フーリエ変換は教えているけれど,ラプラス変換の方は長い間ご無沙汰だったので,復習することにした。
YouTubeで探してみると,量子アニーリングで有名な大関真之さんの授業動画が見つかった。これについての紹介は別にするとして,その中でマークダウン(markdown)への言及があり,数式も使えるよということだった。
Githubを見ていると,コードのドキュメントは必ずmarkdownで書かれたファイル(readme.mdなど)だったので,存在は知っていたが,数式が扱えることまでは知らなかった。そこで,ちょっと試してみるべく色々探してみた。なんだかどこかで見たような・・・うーん・・・なかなか思い出せなかったが,Wikiにおけるマークアップ構文と同じ類ではないか。
昔,本家のMediaWikiはデータベースが必要で重すぎたので,PukiWiki(PHPベース)やFSWiki(Perlベース)などの軽量Wikiを自分のサーバにインストールしてあれこれ試用していた時代があった。特にFSWikiが軽くてよかった。
[2]新入生のためのMD(マークダウン)入門(矢根真二)
2022年3月18日金曜日
pdfファイルの結合
(以下はMac環境でのお話)
作業していると,複数のpdfファイルを結合する必要が生ずることが多い。例えば,プレビューを使って左側にサムネールを表示させると,任意のポイントに別のpdfファイルをドラッグ&ドロップして1つのファイルに結合することができる。この方法では,ファイル数が増えページ数が多くなると面倒だし上手くいかないことも多い。
そこで,これまでは,Autometerが内部で使っているpythonスクリプトである join.py をコマンドラインに引っ張り出して使ってきた。 "/System/Library/Automator/Combine PDF Pages.action/Contents/Resources/join.py"により,~/join.py -o x.pdf ~/Downloads/y-*.pdf などとしていた。
これが,この度のOSアップグレードで使えなくなってしまった。python2.7系列が存在しない。python3になっている。スクリプトのヘッダを#! /usr/bin/python3とするだけでいけるかと思ったが,そんな甘くはなくて,エラーだらけになってしまう。
そこで,別解を探してみたが,これがなかなか面倒だった。
(1) ImageMagickのconvertを用いると良いという話があった。ImageMagickをhomebrewで再インストールすると,convertが使えるようになった。試してみると直ぐに結果が出たので,これで解決と思ったら,結合前のpdfファイルに比べ,結合後のものは画像が荒すぎる。確かに上の参考リンク先にもこのことが書いてある。そこで,dpiを400とか300にして試したところ,処理時間やファイルサイズが10倍以上になってしまって使えない。
(2) pdf 結合 コマンドラインで探してみると,popplerというpdfレンダリングライブラリに,pdfファイルを複数結合するコマンドである,pdfuniteというのがあるということだ。これも早速インストールして実行してみると,エラーが出て進めない。
(3) さらに他のものをということで検索すると,pdftkというコマンドが見つかった。brew install pdftkではヒットしないので,brew search pdftkとすると,pdftk-javaが出てきたので,これをインストールしたところ,pdftkコマンドが使えるようになった。使い方の例は次の通り。pdftk input?.pdf cat output out.pdf である。outputという指示を加えることを忘れないようにしよう。ファイルサイズも問題なしだ。これでとりあえず問題は解決か。
2022年3月17日木曜日
メディア・ポートフォリオ(4)
メディア・ポートフォリオ(3)からの続き
話を元に戻して,昨今の世界情勢や社会情勢を理解するためのメディア選択における自分の現下の偏ったメディア・ポートフォリオについて振り返りながら反省する。
(1)旧メディアの新聞・テレビ:日本経済新聞はほぼ惰性で購読しているけれど,政治欄はあまり信用しない。NHKのニュースや報道番組は眉に唾をつけながら見続けているが,キッチリ洗脳されている。民放には,報道特集とサンデーモーニングくらいしかないが,後者はかなり微妙でおかしい場合も多い。
(2)YouTubeチャンネル:外国特派員協会(*)・日本記者クラブ(話を聞いてみたい人がときどきでてくる),一月万冊(同じネタを同じメロディーで繰り返しているので最近見なくなりつつある),菅野完(かなりバイアスがかかっているが,ときどき必要な視点を提供してくれる),じゅんちゃん(菅野完のパクリ的要素が見られるが,専門家に果敢にアクセスしている),横川圭希(DELIさんの番組で話がきける),町山智弘(バークレー在住,ほぼ納得できる)。
(3)Twitter,ブログ:コロラド先生(情報分析はまじめにやっている),なすこ(話題になる事象を的確にとらえて表現している),外山恒一(まともなことを話している場合が多い),小田嶋隆(文章の技術はすごいかも),孫崎享(外務省OBで金沢大学附属高出身)。
問題ごとに最適化された専門家を探して,プッシュ型で更新情報を取り入れる仕組みができればいいが,それを自動化するのは難しそうだ。本来はそれがマスメディアの機能なのだが,日本では壊滅状態かもしれない。ニュース番組は,自力での取材能力が欠如して思いの外ネット情報に依存してしまっている。だから怪しい専門家も平気で登場させている。となると,BBCやCNNなどの記事リストが一番ということになるのだろうか。
そういう意味で,ソーシャルニュースサイトのRedditには関心があるが,日本語コミュニティが形成されているのかどうか。いずれにせよ,インターネットの情報チャンネルは英米圏に極端に偏ってしまうのが難点だ。
P. S. 3月17日11:00-12:00,ウクライナでの核使用可能性(Ukraine and the Scourge of Nuclear Weapons)に関して,元広島市長の秋葉忠利(1942-)さんが,外国特派員協会に招かれて非常に流暢な英語で質疑応答に対応していた。MITの大学院で数学を学び,アメリカの大学で20年近く教鞭をとっていたのか。