情報物理(2)からの続き
図:科学と情報理論の書影(Amazonから引用)
物理実験学という学部の授業があった。実験ではなく講義だ。前期は,質量分析器が専門の緒方惟一先生,後期が川村研の邑瀬和生先生だった。たぶん。
緒方先生は,1950年代に世界最高性能の質量分析器をつくり,豊中では原子核実験施設の1階に大きめの質量分析器のスペースを確保していた。残念ながら隣を走る中国自動車道の振動のため,こちらでは十分な精度がでなかったらしい。後任の交久瀬五雄先生の頃には,阪神淡路大震災があって被害を受け,その後十分に復旧できないままに終ったようだ。その技術は教養部の松田久先生に引き継がれた。
さて,物理実験学の最初の授業だ。そろそろ定年が近かった緒方先生は,ズボンの後ポケットに手ぬぐいを下げた作業着姿で教室に入ってきた。まず学んだのは,阪大の理学部の部屋のドアは外開きに設計したという話だった。室内で爆発があったときの圧力開放のためだ。しごく納得。後年,大阪教育大学が柏原キャンパスに移転したとき,新しい研究室は残念ながら内開きであった。
後期の担当は川村研の邑瀬先生で,ばりばりの若手という雰囲気だ。授業内容も,大変斬新な,レオン・ブリルアンの「科学と情報理論」にそったものになった。みすず書房から日本語訳が出てまだまもないころだ。前期とはえらいちがいである。
これが,当時の学生にとってはなかなかハードルが高くチンプンカンプンなのだ。図書館で種本をみつけて,理学部の開放されたブルーコピーの機械で資料を青焼きしてみんなで回し読んだ。その結果,なんとか理解に至ったものもいたのだが,残念ながら自分の期末レポートの成績はイマイチのままで終った。
参考:科学と情報理論の目次(みすず書房から引用)
第1章 情報の定義
第2章 定義の応用と一般的議論
第3章 英語における冗長度
第4章 符号化の原理、通信路容量の議論
第5章 符号化の問題
第6章 誤り検出と訂正の符号
第7章 二、三の特殊な問題への適用
第8章 信号解析;Fourierの方法と標本化手順
第9章 熱力学の概要
第10章 熱運動とブラウン運動
第11章 電気回路の熱雑音;Nyquistの公式
第12章 情報の負エントロピー原理
第13章 Maxwellの魔物と情報の負エントロピー原理
第14章 一般物理学における情報の負エントロピー原理
第15章 観測と情報
第16章 情報理論、不確定性原理、および観測の物理的限界
第17章 電気通信における情報の負エントロピー原理
第18章 書きこみ、印刷、読みとり
第19章 計算の問題
第20章 情報、組織、およびその他の問題
第21章 不可避な誤差、決定論、および情報
第22章 微小距離の問題
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