2023年2月3日金曜日

ChatGPTと教育(1)

ChatGPTの近況(2)からの続き

OpenAIはChatGPTの教育利用でつまづくことを懸念し,かなり気をつかった文章を作成していた(Educator Considerations for ChatGPT)。その一部を引用して訳出してみた。

【教育関連のリスクと機会の例】

我々は,この技術がどのように使用され,人々がどのようなアプリケーションを探求するかを理解するための,まだ初期段階にいる。教育の場における生成AIの多くの応用に期待しているが,他のテクノロジーと同様,教育者の監督のもとで教室に導入することが重要だと考えている。また,多くの教育関係者が,この技術に何ができるのか,その限界は何なのかについて疑問を持っていることも理解している。

以下にその概要を紹介する。このリストは包括的なものではないが,この技術を採用する際に何を考慮すべきかについて,さらなる議論と意見の喚起につながることを期待している。なお,これらの検討事項について,添付の入力フォームでご意見を募集している。 
*効率的で個別化された教育

ChatGPTのようなツールを使って,教育者がどのように教え・学ぶかを模索しているいくつかの例を示す。

・授業計画やその他の活動の下書きやブレーンストーミング
・練習問題やその他の演習課題の設計の支援
・カスタム自習ツールの検証
・好みに合わせて教材をカスタマイズ(言語の簡単化,読解レベルの調整,興味に合わせたアクティビティの作成)
・文章読解に対する文法的または構造的なフィードバックの提供
・作文やプログラミングの分野におけるスキルアップ活動での使用(コードのデバッグ,文章の修正,説明の依頼)
・AIが生成したテキストに対する批評

上記のいくつかは,個別学習支援ツールとして求められるChatGPTの可能性を引き出す一方で,学生のプライバシー,偏見のある扱い,不健康な習慣の助長など,個別化に関連するリスクも存在する。学生が直接の指導監督なしにこれらのサービスを提供するツールを使用する前に,学生とその教育者は,以下に概説するツールの限界(以下の*)を理解する必要がある。

同様に,教師はChatGPTを利用して課題の作成を支援したり,学生の作文にコメントを提供したりすることに成功したと報告しているが,それ自体を評価ツールとして信頼すべきではない。むしろ,教師は入力と出力の両方を慎重に確認し,AIシステムを使用したり依存したりした場合は,利用規定に沿って開示する必要がある。

*不正行為と剽窃の検出(略)
*AI倫理とリテラシー(略)
*真実性(略)
*有害なコンテンツ,偏見,ステレオタイプ(略)
*評価(略)
*過度な信頼(略)

*公平性とアクセス

ChatGPTのような技術がますます普及しているため,学生がこれらのツールに等しくアクセスし,効果的に使用する方法を学ぶことが重要である。ChatGPTは,既存の不公平,特にデジタルデバイドに関連する不公平を悪化させる可能性がある一方で,その一部に対処する機会も提供する。例えば,文章を書くのが苦手な学生や英語が第二言語である学生にとって,ChatGPTはスペルミスを減らし,コミュニケーションを向上させるのに役立つ。

しかし,このモデルの性能のばらつきの問題(偏見,他言語での性能,非西洋的視点の取り込みなど)は,学生にとって公平な結果を得る機会にも悪影響を及ぼす可能性があある。さらに,ChatGPTに関連するコストや地理的なアクセス制限は,学生や教育者のアクセスに影響を与える可能性がある。

*雇用機会と展望(略)

*利用の公開

我々は、学生がChatGPTの使用状況をエクスポートし,教育関係者と共有できるような機能を開発中だ。現在,学生はサードパーティのブラウザ拡張機能でこれを行うことができる。
教育者は,学習教材を作成する際にもChatGPTの利用を公開し,課題や活動にChatGPTの利用を取り入れる際には,学生に公開するようお願いする必要がある。
学生はChatGPTを使用したことを以下のようにBibtex形式で引用することができる。

*教育関係者の意見

我々は,教育関係者と協力して,教室で何が起こっているかを知り,ChatGPTの能力と限界について議論している。私たちのアウトリーチでは,まず私たちが本社を置く米国の教育関係者に焦点を当ているが,私たちが学びながらその範囲を広げていく予定だ。

教師,管理者,保護者,学生,教育サービス提供者など,これらの問題に影響を受けている人々が見ているものについて,さらなる視点を歓迎している。この取り組みの一環として,教育関係者の皆様には,フィードバックフォームにご記入の上,開発中のリソースや参考になったリソース(コースガイドライン,オナーコードやポリシーのアップデート,インタラクティブツール,AIリテラシープログラムなど)をご紹介いただけると幸いである。

ChatGPTの月間アクティブユーザー(MAU*)は2022年11月30日の公開開始から2ヶ月の2023年1月には1億人に達した(*Monthly Active User:ある月に1回以上利用したユーザの数)。

※※ChatGPTは,月20ドルの有料版 ChatGPT Plusを米国で提供するとアナウンスした。ピークタイムでもすぐにアクセスできること,高速なレスポンスタイム,新機能や改良の優先的適用等のメリットがある。

[1] OpenAI CEO Sam Altman | AI for the Next EraSam Altman 1985-)

[2]ChatGPT Plus(OpenAI)

0 件のコメント: