(1) 現在タンクにたまっているのは,1046基 134万㎥ のトリチウム汚染水 = ストロンチウム処理水(1%未満) + 処理途上水(7割) + ALPS処理水(3割) である(タンク総容量は137万㎥)。ここで用いるトリチウム汚染水とは,上の簡易定義からわかるように他の放射性物質を含まないということを含意しない。
(2) タンクのトリチウム汚染水の平均トリチウム濃度は,62万Bq/L = 6.2×10^8 Bq/㎥ である。これらのタンクに存在するトリチウム総量は,8.3×10^14 Bq=830兆ベクレルとなる。(東京電力の2021.4時点の平均濃度を援用し現在のトリチウム汚染水の総量をかけたもの)
(3) 1,2,3号機の約880tのデブリを冷却するための注水(3㎥/時)+流入地下水・雨水等が合わさって,毎日約90tの汚染水が新たに発生している。上の平均トリチウム濃度をかけると(本当は発生時のトリチウム濃度をかけるべき),年間のトリチウム汚染水増加量は,3.28万㎥/年(20兆ベクレル/年の増加)となる。
(4) 一方,東京電力は年間トリチウム排出総量は22兆ベクレル以下(事故前の福島第一原発冷却水の放出管理値,放出実績は2.2兆ベクレル/年)という条件を自らに課しているので,最大で3.55万㎥/年 までALPS処理水を放出できることになる。134万㎥ /(3.55万㎥ - 3.28万㎥) = 500年でタンクをほぼ空にすることができる。あれっ?
→これはおかしいので,トリチウム半減期を考慮した計算をする必要がある(宿題)。
(5) なお,トリチウム濃度を1500Bq/L以下にするため海水で400倍に希釈しているならば,最大1400万t/年の海洋放出となるが,希釈の意味があるのかどうなのか・・・
で,初回はALPS処理水7800t(0.58%,1.1兆ベクレル)を17日間かけて流す(460t/日)。放出される希釈前のALPS処理水の平均トリチウム濃度が14万Bq/Lとされる。海水で400倍に希釈すれば,350Bq/Lとなり,8000㎥/h (19万㎥/日)の速度で放出されている。今年度中にはALPS処理水3.1万 t (2.3%, 5兆ベクレル) を放出するということらしい( 9/11/2023 7800tの放出完了)。
経済産業省のページには,「(3)水産庁は、明日から、魚のトリチウム濃度を当分の間、毎日サンプリング・分析を行い、明日の取得分は、26日の夕方、結果を公表する予定です。」とあった。一方,東京電力の処理水ポータルサイトには,魚の分析には1ヶ月半を要するとまじめに書いてある。いくら簡易速報値とはいえ,こういう情報公開のアンバランスが信頼性を損なっている。
[1]処理水ポータルサイト(東京電力)
[2]福島第一原子力発電所 特定原子力施設に係る実施計画(東京電力)
[3]多核種除去設備等処理水の海洋放出にあたって(東京電力)
[4]アルプス処理水について(経済産業省,2021.3)
[5]福島第一原子力発電所 廃炉と未来(経済産業省)
[6]廃炉・汚染水・処理水対策ポータルサイト(経済産業省)
・・・8/27の新着情報が6/15なのでほとんどやる気が感じられない
[7]ALPS処理水に含まれるトリチウムとは何か(鳥養祐二)
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