2021年10月27日水曜日

ラジオメーター(2)

 ラジオメーター(1)からの続き

実験的な事実として,ラジオメーターの羽根車が一番よく回転するのは,1Paぐらいの圧力の場合であり,高真空では回転しない。これから,光の放射圧が原因ではないといえる。また,紫外線や白色LEDライトではあまり回転せず,熱を持つハロゲンランプや蝋燭ではよく回転する。さらに,ガラス面に接触した掌でもわずかに回転することやガラス面を冷却すると逆回転することから,赤外線の吸収や放出による残留気体の熱効果であることがわかる。

つまり,羽根車面の色の違いから生ずる温度勾配による内部の残留気体の運動が回転の原因ということになる。それでは,これを記述するのは流体力学の基礎方程式なのか,気体分子運動論の基礎方程式なのか。これを判定するのがクヌーセン数 $K_n$になる。

$K_n = \dfrac{\lambda}{L} = \dfrac{k_B T}{\sqrt{2} \pi d^2 P L}$

ここで,$\lambda$は平均自由行程,$k_B, T, P$はボルツマン定数及び気体の温度と圧力,$\pi d^2=\sigma$ は気体分子の断面積である。また,$L$は問題の系に対する代表的長さである。なお,$\dfrac{k_B T}{P}=\dfrac{V}{N}= \dfrac{1}{\rho}$であり,$\rho$は気体の数密度になる。これから,平均自由行程(速度 / 単位時間当たり衝突回数)は,$\lambda = \dfrac{1}{\sqrt{2} \rho \sigma}$とも表される。

気体の温度を300K,圧力を1Pa,系のサイズを0.1m,気体分子サイズ$d$=1 Å =$10^{-10}$mとして,$K_n=0.9$となる。$K_n$ <0.01 連続領域,0.01 < $K_n$ < 0.1 近連続領域,0.1 < $K_n$ < 10 遷移領域,10 < $K_n$ 自由分子領域 ということなので,これは流体力学よりも気体分子運動論的なボルツマン方程式で扱うのが適当なのではないか。


2021年10月26日火曜日

ラジオメーター(1)

 物理学科同期の同窓会関係の連絡をしていたら,楠本君からクルックス・ラジオメータについての質問があった。

真空に引いた(1 Torr程度)ガラス球の中に,羽根車が取り付けられており,4枚の羽根の片面が黒,他面が銀になっている。これに外部から光(赤外線)を当てると,熱の吸収の不均衡から温度勾配が生じる。それが残留空気の対流?を引き起こして,その反作用で羽根車が軸の周りに回転する。これにより,光の光度を調べることができるというのがラジオメータだ。現在では主に観賞用になっている。

羽根車の回転の原因として,光圧や面上の残留気体の分子運動による説明がされていたことがあったが,いずれも否定されているのか。柳田君からは,でんじろう先生のYouTubeを紹介された。色々な種類の光源による実験や,手作りラジオメータの実験はどは,非常に興味深いものだった。

ただ,まだ完全に理解できているわけではない。熱ほふく流,radiometric force,Knudsen force,エッジ効果と面効果,2Dシミュレーションの妥当性,などなど次々と芋づる式に疑問ワードが湧いて出てくるのであった。


写真:ラジオメーター(共立電子産業から引用)


2021年10月25日月曜日

光の雨:立松和平

 夜の谷を行く:桐野夏生からの続き

一年かかって,ようやく立松和平光の雨を読了。まとまった時間がないと本が読めないのだが,法事で金沢まで往復したサンダーバードの時間を使うことができた。

狂言回しの周辺ストーリーは本質的なものではないと思うので,そこを批判するのはあまり当たらないのではないか。ただ,勾留中の坂口弘死刑囚の著作からの盗作疑惑を指摘されたため,大幅に改訂して文庫本となっているとのこと。

物語の主人公は,玉井潔(坂口弘 1946.11-)である。彼が80歳になっていて,死刑制度が廃止された2026年という時点に時代設定がなされている(Wikipediaには2030年とあるが,玉井が80歳になったばかりで,55年前の事件というキーワードがあることから2026年と推定できる)。その思い出語りの形で,連合赤軍事件(真岡銃砲店襲撃事件印旛沼事件山岳ベース事件)を中心に事件の概要を肉付けしたストーリが描写されている。

前半を印旛沼事件までに費やしていたが,こちらはよく知らなかった。後半の山岳ベース事件は,朝刊に載った写真が生々しくショッキングだったことを憶えている。早岐やす子(21歳) ,向山茂徳(20歳);尾崎充男(22歳) ,進藤隆三郎(21歳) ,小嶋和子(22歳) ,加藤能敬(22歳) ,遠藤美枝子(25歳) ,行方正時(25歳) ,寺岡恒一(24歳) ,山崎順(21歳) ,山本順一(28歳) ,大槻節子(23歳) ,金子みちよ(24歳) ,山田孝(27歳) の14名を概ねカバーした記述がされていた。

立松和平の湿っぽさが内容にマッチしていたのかもしれないが,あらためて山本直樹のレッドをまとめて読んでみたくなる。


写真:光の雨の書影(Amazonから引用)

[1]連合赤軍事件スクラップブック


2021年10月24日日曜日

ルーシー

 木星の5つのトロヤ群小惑星を探査する宇宙探査機ルーシーが先週の土曜日(10月16日)にケープ・カナベラル宇宙軍基地から打ち上げられた。あれ,ケープ・カナベラルはケープ・ケネディに改名されていたのではなかったかと思ったが,どうなったのか。

ケネディ暗殺1週間後の1963年11月29日に,NASAの発射管制施設はケネディ宇宙センターに名称が変更されている。マーキュリー計画やジェミニ計画では,隣接するケープカナベラル空軍基地の発射施設が使われていたので,小学生の自分にはケープ・カナベラルは馴染みの名前だった。そのケープカナベラルもケープケネディという地名に変更されたと思っていたが,地名の方は1973年に元に戻されたようだ。知りませんでした。

フロリダ半島中部東岸のこの地域は,ジュール・ベルヌの「月世界旅行」の中で発射砲が設置されたフロリダ半島中部西岸のタンパに近かったので,アポロ計画のころにはちょっとした話題になっていた。

さて,ルーシーという名称は最初期のアウストラロピテクス人骨のルーシーからきているということだが,これはさらにビートルズのルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズが由来ということで,なんだか巡り巡って複雑なことになっている。


写真:サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(Amazonから引用)



2021年10月23日土曜日

中性子の寿命パズル

原子核から飛び出した自由中性子の寿命は,宇宙初期の元素合成の話や標準模型におけるCMK行列の値などに関わる非常に重要な物理量である。実験的には,磁場や重力で閉じ込められた超冷中性子の数(ベータ崩壊している電子の数なのか?)を数えるボトル法と,飛行中の中性子が崩壊してできる陽子数を数えるビーム法に分けられる。

ところが,この2つの方法で得られる実験値は,ビーム法 が 888.0 ± 2.0 秒,ボトル法が 879.4 ± 0.6 秒であり,そ の差は 8.6 秒 (4σ) と大きな乖離がある。なお,ボトル法(超冷中性子)の最新のデータは,τn = 877.75 ± 0.28(stat.) + 0.22 / − 0.16(sys.) 秒であり,差は埋まっていない。

これに対して,KEKでは電子を計数する新しいビーム法の実験の準備がされている。また,全く独立な方法として,惑星/月探査機に積んだ表面組成分析用の中性子検出器を用いる方法が提案されている。精度は十分ではないが,水星や金星のフライバイのデータから,τn = 780 ± 60(stat.) ± 70(sys.) 秒を,月探査機のデータからτn = 800 +40/-50(stat.) ± 17(sys.) 秒が得られた。

なお,最新のLunar Prospectorのデータでは,τn = 887 ± 14(stat.) +7 / -4(sys.) 秒となっている。

図:今回の値は電子を測定するビーム法(京都大学のプレスリリースより)

[1]中性子寿命の謎の解明に向けて(KEK,2021.2.17)

2021年10月22日金曜日

原子の四重極能率

 原子核は,構成粒子間の力が面倒なテンソル力だったりする関係で,球形以外の回転楕円体などの形(フットボール型,パンケーキ型)が普通に見られるのだけれど,現代物理学の授業で「原子はみんな球形なのですか?」という質問があった。

原子は,原子核を中心としたクーロン力が支配的なので,どうなのか考えたこともなかった。もちろんE2遷移はあるけれど,基底状態で静的な四重極能率を持つ原子があるのだろうか。さっそく検索してみるのだけれど,なかなかこれといった情報にたどりつかない。分子はいいんですよ,ほとんど自明だから。

そもそも原子の基底状態で,全角運動量が 1 以上のものがあるのだろうか。たかだか100個しかないのだからどこかに簡単なテーブルが見つかるはずだ。あ,電子が奇数個であってその価電子が 0 でない(できれば2以上の)軌道角運動量を持てばばいいわけか。となると3d軌道や4d軌道に奇数個の電子があれば(Sc, V, Mn, Co, Y, Tc)J=3/2か5/2が作れそうなので,原子の電気四重極能率が 0 でない可能性がある。

周期表をあれこれみても電子配置はかいてあるものの,肝腎の全角運動量の情報がないのだ。どうなっているの?四重極能率の計算に全角運動量は関係ないのか?そんなこんなで少しだけかすっているような情報があったけれど,これは原子単体の話ではないかも。


図:電気四重極子の等ポテンシャル面(Wikipediaより引用)

2021年10月21日木曜日

フォトグラメトリ

 水中考古学の山舩幸太郎の話がテレビで流れていた。NHKのカネオ君だったのかな。YouTubeチャンネルもある。沈没船の様子を記録するためには,長期間のダイビング作業が必要であり,コストもたいへんなものになるところ,フォトグラメトリの技術を使って圧倒的に時間と費用が削減できたという印象的な話だった。

そういえば,大学の地学実験の授業ではじめてみたステレオグラムの写真に感動したことを思い出した。ここでは狭義に「デジタルカメラ等で多面的に撮影した複数のデジタル写真をコンピュータで画像解析し,3次元コンピュータグラフィックス等を得るプロセス」のことを考えたい。

AppleのMacBook発表会をみて,ほとんどのYouTuberが単純な性能や機能談義に終始していたところ,トバログ氏が,MacBook Proからみえる今後のAppleの方向性を議論していたのがおもしろかった。それは,Appleが出遅れている 3DCGを利用したVRARなどのMRが重要な役割を果たす世界である。

その兆候は,iPhoneカメラにおけるLiDARセンサーや,次期macOSのMontereyにおけるObjectCaptureという開発者向けAPIなどにみられる。そう,住宅・建築・土木関係や美術館・博物館・考古学あたり,あるいは自動運転・ロボティックス業界の皆様にとってはフォトグラメトリ最強かもしれませんが,一般コンシューマにtiktokのように浸透するには何が必要なのだろうか。VR/ARヘッドセットをかぶるのはちょっと勘弁してほしいのだけれど。


図:photogrammetryのイメージ(lecture.nakayasu.comから引用)

[1] Sketchfab(The Leading Platform for 3D & AR on the web)

2021年10月20日水曜日

MacBook Pro

 4月にMacBook Pro (mid 2012)を壊してしまって MacBookAir (2020 M1)に乗り換えてから半年たった。M1 MacBook Air は大変快調に動作している。夏場に少し熱くなったファンレスマシンだけれど,バックグラウンドで動いていたソフトを1つ外したところ,全く問題なくなった。これからはむしろ掌に冷たいボディの心配をする必要があるかもしれない。

さて,昨日(日本時間2021年10月19日未明)のAppleEventで,新しいM1 Pro/MAX チップを搭載した MacBook Pro が発表された。ネット上ではかなり盛り上がっている。新しいチップは,従来のM1チップに比べて面積が2〜3.5倍(トランジスタ数がMAXで570億個)。CPUコア数は8(高性能4+省電力4)から10(高性能8+省電力2)へ,GPUコア数は8から16/32へと増えている。メモリ帯域幅は200GB/s または 400GB/sで,従来のM1チップの3〜6倍である。

今のM1チップとシングルコアでの性能は変わらないそうで,マルチコアによる性能が1〜2倍の範囲で強化されるということになる。Appleの宣伝では大変素晴らしいことになっているが,あくまでも旧いIntelチップとの比較であり,実運用上どこまで確かなのかは試してみないとわからない。最も,動画編集をしない自分にはそもそも関係ない話かもしれない。

というわけで,新しいMacBookで一番良かったのは,TouchBARの廃止。TouchIDの採用,1080pのフロントカメラ,USB-C (Thunderbolt 4) × 3ポート,Magsafeの復活かな。3.5mmヘッドフォンジャックも残った。それに+10万円の価値があるかどうかという問題だけど・・・。

(1) MacBook Air  13":21.2 × 30.4 × (0.4-1.6) 1.3kg, 8CPU+8GPU, 16G+1T = 20万円

(2) MacBook Pro 14" (Pro):22.1 × 31.3 × 1.5 1.6kg, 10CPU+16GPU,16G+1T = 30万円

(3) MacBook Pro 14" (Pro):22.1 × 31.3 × 1.5 1.6kg, 10CPU+16GPU,32G+2T = 39万円

(4) MacBook Pro 14" (MAX):22.1 × 31.3 × 1.5 1.6kg, 10CPU+16GPU,32G+2T = 43万円

(5) MacBook Pro 14" (MAX):22.1 × 31.3 × 1.5 1.6kg 10CPU+32GPU,64G+4T = 54万円


写真:MacBook Pro 2021 のサイドビュー(Appleより引用)


写真:M1チップの面積(Appleより引用)

2021年10月19日火曜日

ルジャンドル変換(4)

 ルジャンドル変換(3)からの続き

ルジャンドル変換の例題を考えていて,$f(x=0)=f^*(p=0)=0$ならば,積分の図とうまく整合するのだが,そうでない場合にどうなるのかちょっと困った。そこで,簡単な2次関数の例で試してみた。

図:定数分の補正で説明できるルジャンドル変換の例

図左のように元の関数を,$f(x)=(x-a)^2+b$とする。このとき$x$が増加して$f(x)$が減少する部分があるので,正の面積だけでは表現できない。実際,図中で$f'(x)$は$0<x<a$で負になる。そこで,$f(x) = \int_0^x f(y) dy + C$として,初期値を$f(0)=(a^2+b)=C$,$x$軸以下の部分の面積を負の量として考える。

このとき,$f^{*}(p)= \int_{-2a}^p {f^{*}}'(q) dq - C$として,$f(x) + f^{*}(p) = x\,p$が成り立つことになる。図右には,結果としての$f^{*}(p)$のグラフを示している。このように積分領域や定数を適当に調整することで,面積によるルジャンドル変換の解釈はそのまま使えると思われる。

この例では,$x$の範囲は,$0<x$としているが,$x_\min < x < x_\max$の範囲で$f(x)$を定義し,これに対応する $p_\min < p < p_\max$ の範囲の$f*(p)$を考えて,定数分の補正をすれば良い。

2021年10月18日月曜日

ルジャンドル変換(3)

 ルジャンドル変換(2)からの続き

田崎さんの熱力学の付録HのLegendre変換によれば(変数$\alpha \rightarrow p$として),$f(x)+f^*(p) \ge x p$ というYoungの不等式が成り立つとある。ルジャンドル変換を一般化した凸共役性のところでも,フェンシェル=ヤングの不等式として示され,これらはルジャンドル変換の定義(min/maxを用いるもの)から直ちに導かれるとしている。

ところが,積分で表示した場合はどうなのかちょっと困った。まあ,不等号でmin/maxの条件に当てはまらないところを考えるということならば,単調増加する連続関数の積分における不等式で説明できたということにすれば良いのかな。

(例1)$f(x)=a x^2 + b x$のルジャンドル変換。$f'(x)=2 a x+ b =p$から$x=\frac{p-b}{2a}$が最小値を与える$x$である。これを用いて,$f^*(p) = x p - f(x) = x p - (a x^2 + b x) |_{x=\frac{p-b}{2a}} = \frac{(p-b)^2}{4a}$

(例2)$\alpha, \beta > 1, \frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta}=1$として,$f(x)=\frac{1}{\alpha}x^\alpha$のルジャンドル変換。$f'(x)=x^{\alpha-1}=p$から$x=p^{1/(\alpha-1)}$が最小値を与える$x$である。これを用いて,$f^*(p) = x p - f(x) = x p -\frac{1}{\alpha}x^\alpha |_{x=p^{1/(\alpha-1)}} = p^{\alpha/(\alpha-1)} - \frac{1}{\alpha}p^{\alpha/(\alpha-1)} = \frac{\alpha - 1 }{\alpha} p^{\alpha/(\alpha-1)} = \frac{1}{\beta} p^\beta$となる。すなわち,$\dfrac{x^\alpha}{\alpha} + \dfrac{p^\beta}{\beta} \ge x p$ が成り立つ。

(例3)対応する変数を$(\dot{x}, p)$として,$f(\dot{x})=L(\dot{x},x)=\frac{1}{2}\dot{x}^2-\frac{1}{2}x^2$のルジャンドル変換。$\frac{\partial L(\dot{x},x)}{\partial \dot{x}}=\dot{x} = p$となる。これを用いて,$f^*(p)=H(p,x)=\dot{x} p - L(\dot{x},x) = p^2 - L(p,x) = \frac{1}{2}p^2 +\frac{1}{2} x^2$となる。

2021年10月17日日曜日

ルジャンドル変換(2)

 ルジャンドル変換(1)からの続き

ルジャンドル変換にかかわる関数として,2階微分が正であるC1級関数ではなくて,凸関数という表現を使っているのは,相転移点で微分可能でなくなるような熱力学的関数に対してもルジャンドル変換をしたいがためだとあった。

ということで,ある関数$f(x)$の1階微分$f'(x)$が不連続になるような場合を図示してみると次のようになる。この場合も$f(x)$は連続になっている。

通常,このような場合の関数$f(x)$のルジャンドル変換$f^*(p)$は,次の式で表現されている。

$f^*(p) = - \underset{x}{\min} \{ f(x) - p\, x \} =  \underset{x}{\max} \{ p\, x - f(x) \}$

一階微分できる点の場合はカッコ内を$x$で微分すれば,$p$と$x$が一意的に対応する。そうでない点の場合は,その点の左微分から右微分の値の範囲の$p$に対して,上記の条件から$f^*(p)$を定めることになる。


図:一階微分が不連続な場合のルジャンドル変換のイメージ


2021年10月16日土曜日

ルジャンドル変換(1)

 ルジャンドル変換は,積分を使って表現するとわかりやすいという説と通常の説明の対応について考えてみたい。この過程でtikzにおける塗りつぶし方法を練習した。


図:ルジャンドル変換のための説明図

原点を通る単調増加関数上の点C $(x,p)$があって,図のように矩形の領域をとる。矩形領域内で関数の下の部分の面積を$f(x)$,上の部分の面積を$f^*(p)$とすると,$f(x)+f^*(p)=xp$が成り立つ。$f^*(p)$が$f(x)$のルジャンドル変換になる。同様に,$f(x)$は$f^*(p)$のルジャンドル変換である。$f^*(p)$のルジャンドル変換は$f^{**}(x)$とも書けるから,$f^{**}(x)=f(x)$となって,ルジャンドル変換を2回繰り返すと元の関数に戻る。

この単調増加関数は,$x$の関数とすると$f'(x)$であり,$p$の関数と見れば${f^{*}}'(p)$となる。そこで,$f^*(p)$を求めるには,$p=f'(x)$を$x$について解いて,$x=\varphi(p)$を求めてから,$f^*(p) = x p - f(x) = \varphi(p) \cdot p - f(\varphi(p))$として求めることができる。

いいかえれば,$f(x) = x p - f^*(p) |_{p=f'(x)}$ として,元の関数$f(x)$が,傾き$p$と切片$ - f^*(p)$でも表現されるということになる。
/begin{tikzpicture}
\tikzstyle{every node}=[font = \Large];
\filldraw (0,0) circle(1pt) node[below left]{O};
\draw[->] (-2,0) -- (8,0) node[right]{$x$};
\draw[->] (0,-2) -- (0,8) node[above]{$p$};
\draw[step=1.0, dotted] (-2,-2) grid (8,8);
\draw [dotted, pattern=north west lines, pattern color=blue] (0,0) -- (1,1.3) -- (2,2) -- (3,2.4) -- (4,3)-- (5,4) -- (6,5.4) -- (6,0);
\draw [dotted, pattern=north west lines, pattern color=red] (0,0) -- (1,1.3) -- (2,2) -- (3,2.4) -- (4,3) -- (5,4) -- (6,5.4) -- (0,5.4);
\draw[domain=0:3, thick] plot(\x,{-0.2*(\x-3.5)^2+2.45});
\draw[domain=3:7, thick] plot(\x,{0.2*(\x-2)^2+2.2});
\filldraw (6,0) circle(1pt) node[below]{$x$};
\filldraw (3,2.4) circle(1pt);
\filldraw (6,5.4) circle(1pt) node[right]{C};
\node[below right] at (6.5,5.4) {$f^{'}(x)$};
\node[above left] at (6,5.4) {$f^{*'}(p)$};
\filldraw (0,5.4) circle(1pt) node[left] {$p$};
\draw[blue] (4,1) node{$f(x)$};
\draw[red] (2,4) node{$f^*(p)$};
\end{tikzpicture}

2021年10月15日金曜日

日本人のノーベル賞

日本における最近の科学や経済の衰退傾向から,将来,日本人の自然科学系のノーベル賞受賞者が出なくなるのではといわれることがある。一方,最近の中国や韓国は日本より科学技術,経済分野で先んじてはいるけれど,まだノーベル賞受賞者をどんどん輩出するようにはなっていない。

ある研究や発明がなされたときと,それが評価されて普及するようになるまでには時差があることが,その一因と考えられる。そこで,日本人(日本出身)の自然科学系のノーベル賞受賞者25名の,研究・発明年と受賞年をグラフに書いてみた。研究発表の時点から受賞までには平均で約26年かかっているようだ。

図: 日本人の受賞年(横軸)と研究発表年(縦軸)
(赤は時差が25.9年,オレンジは25.9±5年を表す)

湯川秀樹が最初に受賞してからの50年間では5名だけだったのが,2000年以後の20年間余で20名ということになる。1970年代から1990年代にかけて,日本の経済や科学を取り巻く環境が良かった時代を反映しているのかもしれない。

なお,上記のグラフを書くためのJuliaのコードは以下の通りであり,Gadfly.jl でグラフをオーバレイする方法がわかった。

using Gadfly
using Compose
using DataFrames
X = [1949,1965,1973,1981,1987,2000,2001,2002,2002,2008,2008,2008,2008,2010,2010,2012,2014,2014,2014,2015,2015,2016,2018,2019,2021]
Y = [1935,1947,1957,1952,1976,1976,1987,1985,1987,1962,1973,1973,1960,1977,1979,2006,1985,1985,1992,1997,1996,1992,1992,1985,1967]
Labels = ["湯川","朝永","江崎","福井","利根川","白川","野依","田中","小柴","下村","小林","益川","南部","根岸","鈴木","山中","赤碕","天野","中村","大村","梶田","大隅","本庶","吉野","真鍋"]

p1=layer(x=X, y=Y, label=Labels, Geom.point, Geom.label, Theme(major_label_font="CMU Serif",minor_label_font="CMU Serif",major_label_font_size=12pt,minor_label_font_size=12pt))
p2=layer(x->x-25.9, 1949,2035, color=[colorant"red"])
plot(p1,p2)
p3=layer(x->x-20.9, 1949,2035, color=[colorant"orange"])
plot(p1,p2)
p4=layer(x->x-30.9, 1949,2035, color=[colorant"orange"]) 
plot(p1,p2,p3,p4)

2021年10月14日木曜日

凸関数

 ルジャンドル変換について調べようと,田崎さんの熱力学谷村さんの資料を見ていたら,事前知識として凸関数(Convex Function)が要求された。それは次のようなものだった。

(1) 定義:ある区間で定義された実数値関数 $f(x)$ において,区間内の任意の点,$x_1 < x_2$に対して,$0 < \lambda < 1$ として,$f((1 - \lambda) x_1 + \lambda x_2) \le (1 - \lambda) f(x_1) + \lambda f(x_2)$ を満足する$f(x)$は凸関数であるという。

(2) 凸関数は連続である。

(3) 凸関数が2回微分可能な点$x$では,$f''(x) >0$である(2回微分できない点もある)。

(4) 任意の点$x_0$ で右微分$f'_{-}(x_0)$と左微分$f'_{+}(x_0)$が存在し,次の条件,$f'_{-}(x_0) < \alpha < f'_{+}(x_0)$を満足する定数$\alpha$に対して,$f(x) \ge f(x_0) + \alpha (x - x_0)$となる。

(5) 一階微分可能な点$x_0$では,$f(x) \ge f(x_0) + f'(x_0) (x - x_0)$ が成り立つ。


図:凸関数の定義のための補助図


2021年10月13日水曜日

請願権

衆議院選挙の東京8区における,山本太郎と立憲民主党の間での出馬問題についてのトークで,安富歩が請願権について述べていた。新自由主義的な日本維新の会推しで潜在的に学歴差別的傾向を持つ朝日新聞が,あれほどまで山本太郎をディスるのは,2013年の園遊会における天皇への手紙問題以来ではという説だ。

その山本太郎の問題点は,法律上の手続きにあるのであって,天皇への請願が禁止されているわけではないということだった。

日本国憲法第十六条

何人も,損害の救済,公務員の罷免,法律,命令又は規則の制定,廃止又は改正その他の事項に関し,平穏に請願する権利を有し,何人も,かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

請願法

第1条 請願については,別に法律の定める場合を除いては,この法律の定めるところによる。

第2条 請願は,請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合は居所)を記載し,文書でこれをしなければならない。

第3条 請願書は,請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。天皇に対する請願書は,内閣にこれを提出しなければならない

第2項 請願の事項を所管する官公署が明らかでないときは,請願書は,これを内閣に提出することができる。

第4条 請願が誤つて前条に規定する官公署以外の官公署に提出されたときは,その官公署は,請願者に正当な官公署を指示し,又は正当な官公署にその請願書を送付しなければならない。

第5条 この法律に適合する請願は,官公署において,これを受理し誠実に処理しなければならない。

第6条 何人も,請願をしたためにいかなる差別待遇を受けない。

附則 この法律は,日本国憲法施行の日から,これを施行する。


2021年10月12日火曜日

フレッツ光 vs eo光

 最近,自宅のネットワークが遅いというクレームが上がってきている。コロナによる在宅勤務が進んでいるからなのか,なんとなくトラフィックが混んでいるような気がする。より大きな問題は,現在利用しているKCNの集合住宅向けインターネットサービス「Kブロードマンションプレミアム320特割」が下り最大320Mbps,上り最大10Mbpsのベストエフォートサービスであることだ。非対称はいいとしても上りが遅すぎるので,まともなビデオ会議が成立しにくいのだ。

ところでマンションの玄関にはフレッツ光(プラン2)とeo光の案内が貼っている。これでFTTHを実現すれば,速くなるんじゃないかなと思ったがいくつか懸念事項がある。(1) ほんとに速くなるのか,(2) アクセスポイントの機器(ONU)はどこに設置されるのか,(3) KCNのメールは使えるのか,などなど。

(1) フレッツ光eo光遅いを組み合わせて検索すると,出るわ出るわ,こりゃダメだ。前者はユーザが多すぎて,分岐が多いことが理由として挙げられている。マンションの共用部の光スプリッタあたりは1Gbpsと書いてあるが,これもベストエフォートなのでどうだか微妙だ。eo光の方は電話してみると,VDSL上下100Mbpsとのこと。なーんだ,紛らわしい。

(2) アクセスポイントが,現在の同軸線(TV)と電話線(NTT)のどちらあたりになるのかを知りたくてフレッツ光(NTT)のサポートに問い合わせたが,対応の官僚的なこと甚だしで,何にもヒントを教えてくれなかった。ウェブサイトもeo光の方が断然親切なのである。これなら同じNTT回線でもソフトバンク光にしたほうがマシかも。

(3) KCNのメールであるが,KCN側にフレッツ光ネクスト対応プランがあるので,これを使えばなんとかなる。最悪は,別プロバイダ回線でもアクセスできるようにKCN側に問い合わせて設定すればいいはずだが面倒だ。KCNのTV共同視聴設備点検に来たお兄さんに聞いてみたが,弱小KCNではマンションのFTTHになかなか手が出せなさそうだ。

(4) 別の解はないかと,Nuro光を調べたが,残念ながら天理市はサービス対象外。ふと,SoftBank Air はどうかと思ったら,これが思いのほか良さげである。いちいち無線ルータを買わなくてこれ一つで済むし,中継機も使える。問題は,天理市のこの辺りが最大200Mbps程度までであり5Gも使えないこと(これだから田舎は悲しい)。ソフトバンクの5G次第でこれも今後の選択肢になりそうだ。

いずれにせよ,現在のKCNのインターネットは2年縛りで継続されているので,解約できるのは,オリンピック開催年(2000+4n)の7月から9月の間だけである。さもなければ,8800円の解約金が取られるという寸法だ。


図:現在のKCNのKブロードプレミアム320の回線速度(朝7:00)

2021年10月11日月曜日

mas

 macOSのアプリは,Mac App Soreを経由してインストールするのが普通である。このためのアプリ名がApp Soreでなので,iOSやiPadOS用のサービス兼アプリの App Storeと同じ名前になっている。微妙にややこしい。

macOSのApp Storeアプリは普通のアプリケーションソフトウェアなので GUI(グラフィッカルユーザインターフェイス)でアクセスする。可もなし不可もなし。この CLI=CUI(コマンドラインインターフェース)版で mas(mas-cli)というものがあることがわかった。しかも,homebrewで簡単にインストールできた。使用例は次の如し。

$ mas list

863486266 SketchBook (8.7.0)
539883307 LINE (7.2.0)
640199958 Developer (9.2.3)
409222199 Cyberduck (7.10.2)
409183694 Keynote (11.2)
405399194 Kindle (1.33.0)
895264364 DjVu Reader Pro (2.5.8)
1380563956 辞書 by 物書堂 (1.2.15)
682658836 GarageBand (10.4.3)
1482454543 Twitter (8.82)
1496833156 Playgrounds (3.4.1)
425424353 The Unarchiver (4.3.3)
1168254295 AmorphousDiskMark (3.1)
1055273043 PDF Expert (2.5.18)
409203825 Numbers (11.2)
497799835 Xcode (13.0)
1153157709 Speedtest (1.22)
409201541 Pages (11.2)
721540800 PDF to DjVu (1.3.0)
1465576485 GraphicConverter 11 (11.5.2)
408981434 iMovie (10.2.5)
1438772273 Cinebench (23.2)
1024640650 CotEditor (4.0.8)
405843582 Alfred (1.2)
1444383602 GoodNotes (5.7.36)
1272842196 egword Universal 2 (2.2.11)
古くなってしまった(outdated)アプリケーションを更新する(upgrade)こともできるらしいのだが,どうもそれはうまくいかなかった(できたのもあるが)。

2021年10月10日日曜日

円筒電荷分布の電場(2)

円筒電荷分布の電場(1)からの続き

 直感的な説明はできた(と思う)ので,次に積分を真面目に計算してみる。

$z$軸を対称軸とする半径$R$の円筒に,面密度$\sigma$の電荷が一様に分布している。$x$軸上の点Pは座標$(r,0,0)$であり,この点における電場を計算しようというわけだ。このためには円筒面上のすべての電荷素片がP点に作る電場を重ね合わせればよい。

いま,円筒面上に点Qをとり,その近傍の電荷素片は$\sigma R d\theta dz$の電荷を持っている。なお,$\theta$は電荷素片を$x-y$平面に射影した点と$x$軸のなす角度である。この点Qの座標は,$(R \cos \theta , R \sin \theta , z)$である。そこで電場の式は次のようになる。

$ \bm{E}(P) = \dfrac{ \sigma}{4 \pi \varepsilon_0} \int_{-\infty}^{\infty} \int_0^{ 2\pi} \dfrac{(r-R \cos \theta , - R \sin \theta ,  -z)}{(r^2-2 r R \cos \theta + R^2 + z^2 )} R d \theta dz $

ここで,$z$軸方向の対称性からP点での$E_z$は0,$y$軸方向の対称性からP点での$E_y$も0となる。さらに,$x$軸方向の電場は,$\theta = 0 \sim \pi$と$\theta = \pi \sim 2 \pi$で同じ寄与となるので,片方を計算して2倍すれば良い。つまり,$E_x$だけが残っていて,

$E_x(P) = \dfrac{2 \sigma R}{4 \pi \varepsilon_0} \int_{-\infty}^{\infty} \int_0^\pi \dfrac{r -R \cos \theta}{(r^2-2 r R \cos \theta + R^2 + z^2)^{3/2}}$

ここで,$s^2=r^2 - 2 r R \cos \theta + R^2$,$z=s \tan \phi$ として,変数$z$を$\phi$に書き換えると,\begin{equation*} \begin{aligned} E_x(P) &= \dfrac{2 \sigma R}{4 \pi \varepsilon_0} \int_{- \pi / 2}^{ \pi / 2} \int_0^\pi \dfrac{r -R \cos \theta}{s^3  (1 + \tan^2 \phi )^{3/2} } d \theta \dfrac{s d \phi}{\cos^2 \phi}  \\  &=  \dfrac{2 \sigma R}{4 \pi \varepsilon_0} \int_{- \pi / 2}^{ \pi / 2} \int_0^\pi \dfrac{r -R \cos \theta}{s^2} d \theta \cos \phi d \phi  \\ &=  \dfrac{4 \sigma R}{4 \pi \varepsilon_0} \int_0^\pi \dfrac{r -R \cos \theta}{s^2} d \theta  \end{aligned} \end{equation*}

さらに,$\tan \theta/2 = t $とおいて有理関数の積分にする。このとき,$d\theta = \frac{2 dt}{1 + t^2}$,$\cos \theta = \frac{1 - t^2}{1 + t^2}$であるから,

\begin{equation*} \begin{aligned} E_x(P) &= \dfrac{\sigma R}{\pi \varepsilon_0} \int_0^\infty \dfrac{r -R \frac{1-t^2}{1+t^2}}{r^2 - 2 r R \frac{1-t^2}{1+t^2} + R^2 } \dfrac{2 dt}{1+t^2}  \\  &=  \dfrac{\sigma R}{\pi \varepsilon_0} \int_0^\infty \dfrac{r (1 + t^2) -R (1 - t^2)}{(r^2 + R^2)(1 + t^2) -2 r R (1 - t^2) } \dfrac{2 dt}{1 + t^2}  \\ &=  \dfrac{\sigma R}{\pi \varepsilon_0} \dfrac{1}{r} \int_0^\infty \Bigl\{ \dfrac{1}{1+t^2} - \dfrac{R^2 - r^2}{(R-r)^2 + (R+r)^2 t^2} \Bigr\}dt \\ &=   \dfrac{\sigma R}{\pi \varepsilon_0} \dfrac{1}{r}  \Bigl[ \tan^{-1} t  - \tan^{-1} \frac{R+r}{R-r} t \Bigr]_0^\infty  dt\end{aligned} \end{equation*}

したがって,$R>r$の場合は,$ E_x(P) =0$,$R<r$の場合は,$ E_x(P) =\dfrac{\sigma R}{\varepsilon_0 r}= \dfrac{\lambda}{2 \pi \varepsilon_0 r}$となる。$\lambda=2\pi \sigma R$は円筒の線電荷密度である。


図:円筒電荷分布がP点に作る電場

2021年10月9日土曜日

円筒電荷分布の電場(1)

球殻のような 球対称の電荷分布については,電荷分布の外側ではそのすべての電荷が球の中心に集中したとして,クーロンの法則を適用した電場を考えればよい。また,電荷分布の内側では,電場を計算したい点より外側の(原点からより遠い)電荷による寄与はすべて打ち消しあい,その点より内側の(原点により近い)電荷だけを先ほどの方法で考えれば良いことがわかっている。

これは,同じ距離の逆二乗則に従うニュートンの万有引力についても同様であって,入試問題などでもよく扱われるし,大学初年級の力学の教科書でも取り上げられることが多い。ちょっと面倒だが,丁寧に積分すれば導けるし,球殻内の点から見込む立体角の性質を使えば,2つの領域からくる万有引力の打ち消し合いのイメージは直感的に理解できる。

ところで,電磁気学の問題で,無限に伸びた軸対称の円筒状の電荷分布による電場を求めるというものがある。球の場合と同様に電荷分布内部の点での電場は,その点より内側の電荷だけを考慮してガウスの法則を当てはめると,対称性を用いて簡単に電場を計算できる。

その,電場を計算する点より外側の電荷による寄与が無視できるということは,当たり前すぎるのか,対称性からゼロになると簡単に書いてあるだけで,あまり丁寧な説明にお目にかかったことがない。もちろん,積分による証明もそれほど見かけない。


図:軸対称円筒電荷が作る電場

ということで,簡単なイメージ図を書いてみた。無限円筒状電荷分布をz軸に垂直な面で切ったものであり,対称性から電場ベクトルはこの平面内で円の中心を通って電荷素片から外側または内側に向く成分だけが残ることになる。

ここにガウスの法則を当てはめれば,外側のF点では,DとEの電荷素片が作る電場要素が同じ大きさの寄与をして加えあう。また,内側のC点では,AとBの電荷素片が作る電場要素が互いに逆向きの寄与をするため打ち消しあう。

このとき,電場の大きさかける面積要素が左辺,電荷面密度かける面積要素を真空の誘電率で割ったものが右辺となる。例えば,右図の Fd+Feで考えれば,$E_r \cdot r \delta \Delta z = \dfrac{\sigma R \delta \Delta z}{\varepsilon_0} $。なお,$\delta$ は面積要素を見込む微小角度である。これから,$E_r  =  \dfrac{\sigma R}{r \varepsilon_0} = \dfrac{\lambda}{2 \pi \varepsilon_0}\dfrac{1}{r}$となる。ただし,$\lambda = 2 \pi R \sigma $は,電荷線密度である。

2021年10月8日金曜日

後期の授業

後期の非常勤のオンライン授業が一回りして いよいよ忙しい。後期は,同志社大学の物質の科学2×2コマ+量子物理学+物理学Ⅲ+物理課題研究プロジェクト+理科2 1/2コマの合計5.5コマと,前期の物理実験デザインプロジェクト1コマに比べて集中している。なんとバランスの悪いことか。

大阪教育大学では11月10日までオンライン授業であり,その後は対面授業となるのだが,3基あるエスカレータの1号機と2号機の更新工事があるので,階段を登らなければならない。おまけに12月から始まる夜間学部の理科2は天王寺キャンパスの夜間7限の授業(19:40-21:10)なのであった・・・orz


写真:12月末まで更新工事中のエスカレーター(撮影:2021.10.1)