日本の新型コロナ感染症対策がみごとに失敗している件。これまで,厚生労働省の医系技官やネット上の医療系クラスターによって,1) PCR検査は感染を拡大するからなるべく避けるべきという抑制論,2) コロナは空気感染しない=飛沫感染論が跋扈してきた。
ようやくこれに対する揺り戻しがはじまった。一つは,科学社会学系の東北大学の本堂毅さんとKEKの平田光司さんが世話人となった最新の知見に基づいたコロナ感染症対策を求める科学者の緊急声明である。例のごとく3行で要約すると
「新型コロナウイルス感染拡大を受け,政府や一部医学関係者から「策が尽きた」との声が聞こえている。早期発見と隔離やワクチンなど有効な施策がないとの意見には同意できない。未だ様々な方法が残されており,それらによる感染拡大の阻止は可能である」
またつぎの3点を提案している。
A)ウイルス対応マスク装着についての市民への速やかな周知と必要な制度的措置
B)熱交換換気装置や空気清浄機,フィルター等の正しい選択と有効な活用についての行政の理解と市民一般への十分な周知
C)効果の科学的証明には時間を要するため,最新の知見から有効と予想できる対策は,中立的組織による効果の検証を平行しつつ,公平性や安全性に配慮して実施する
Scienceの論文 [1] でも空気感染の定義が再検討されて,COVID-19における空気感染=エアロゾル感染を再認識することの重要性が指摘されている。
今後の展望:病原体の空気感染は,これまで十分に評価されていませんでした。その理由のほとんどは,エアロゾルの空気中での挙動に関する理解が不十分であったことと,少なくとも部分的には,極めて重要な観察結果が誤って伝えられていたことによります。飛沫感染や付着物による感染の証拠がないことや,エアロゾルによる多くの呼吸器系ウイルスの感染の証拠がますます強くなっていることを考えると,空気感染はこれまで認識されていたよりもはるかに広く行われていることを認識しなければなりません。SARS-CoV-2の感染について分かったことは,すべての呼吸器系感染症においてエアロゾルによる感染経路を再評価する必要があるということです。換気,気流,空気ろ過,紫外線消毒,マスクの装着など,近距離と遠距離の両方でエアロゾルの透過を緩和するための予防措置を講じなければならない。これらの対策は、現在のパンデミックを終わらせ、将来のパンデミックを防ぐための重要な手段である。
また,PCR検査抑制論への反論については朴勝俊先生の [3] が詳しい。
[1]Airborne transmission of respiratory viruses[2]FAQs on Protecting Yourself from COVID-19 Aerosol Transmission
[3]クロス表とベイズの公式に基づく新型コロナPCR検査抑制論の検討(朴勝俊)