2024年11月16日土曜日

フェイクの時代

カモになるな維新的なものの勝利からの続き

兵庫県知事選挙の投票日を前にした11月14日,兵庫県市長会の有志(代表 蓬萊務 小野市長)からの記者会見案内が発出された。タイトルは「稲村和美さんを支持する表明について」であり,つぎのような内容だ。
兵庫県内の市長会有志21名は(後に22名)、県政の安定と発展を願い、稲村和美氏への支持を表明しました。稲村氏は尼崎市長時代に財政健全化を果たし、幅広い支持を得ています。特定の政党に依存せず、県民に寄り添った政策を掲げる姿勢が評価され、県政の混迷を収束させるリーダーとしての資質が期待されています。この動きは、自民党県議団の一部からの支持も含め、兵庫県の新たな出発に向けた重要な一歩です。
なぜ,このような異例の声明が出されたかというと,「兵庫県政は混乱、混迷し、現在行われている兵庫県知事選挙においても誹謗中傷が行われるなど、大変愛うべき状況です。」 だからである。

兵庫県の西播磨県民局長の内部告発文書を発端として,斎藤元彦兵庫県知事とその取り巻きによる追求や,維新の会議員による圧力によって,県民局長が亡くなられてしまった。その結果,兵庫県議会に百条委員会が設置されて,公益通報者保護に関する問題が焦点化,兵庫県議会で全員一致の知事不信任案が叩きつけられた。

普通は,兵庫県知事が責任を取って辞職することで話は終るのだが,今回はそうならずに,斎藤元彦がしゃあしゃあと新たな知事選挙に出馬してきたわけだ。そこに,NHKから国民を守る党の立花孝志が参戦し,斎藤の応援に回ったことから風向きが変わった。

当初は,元尼崎市長の稲村和美が有利だと考えられていたはずが,立花とその取り巻きに,右翼イデオローグや,維新の会や,旧統一協会らしき有象無象が雪だるまのように加わって,広範なネット宣伝と,立ち会い演説聴衆動員(暴力付き)を図ってきたため,選挙情勢は微妙なところに来てしまった。彼らの言い分は,斎藤ははめられたのであり,マスコミと既得権者によって迫害されているというアンチフェイクデマの拡散と浸透である。

まあ,いつも判断を間違ってしまうというかあえて逆張りをするのが得意な自称リベラルの東浩紀が,(ぼくは兵庫県知事選については情報が錯綜していて判断できないという立場です)といいながら市長会有志のメッセージをディスるくらいである。最低ですね。

兵庫10区の自由民主党の衆議院議員,渡海紀三朗が,この状況を静観しておられず,「知事の資質」として斎藤の再選への危機感を率直に語る事態にまで至っているわけだ。兵庫県民どうするのよ。


問題は何かというと,斎藤支持グループが明らかなデマをSNS経由で広範に発信し,それがいとも簡単に浸透し,十分に否定できない状況が続いていることだ。それまでのテレビや新聞の報道をきいて冷静に判断すれば,デマの悪質性はわかりそうなものなのだが,マスコミ不信と既得権益批判と斎藤の巧妙な作戦にいとも簡単に騙されて,トランプが米国で勝利したように,フェイクが正義として受け入れられていくのだった。


AIによるフェイクが云々以前の問題なのである。いまこそ,水越先生のように,教科情報における学習のキモはプログラミングではなくてメディアリテラシーであると主張しなければならない時代がきたのかもしれない。

兵庫県市長会のうち有志22市長○のリスト(22/29)

_神戸市長 久元喜造
○姫路市長 清元秀泰
○尼崎市長 松本眞
_明石市長 丸谷聡子(泉・西村)
○西宮市長 石井登志郎
○洲本市長 上崎勝規
_芦屋市長 髙島崚輔(維新)
○伊丹市長 藤原保幸
○相生市長 谷口芳紀
_豊岡市長 関貫久仁郎
○加古川市長 岡田康裕
○赤穂市長 牟礼正稔
_西脇市長 片山象三
○宝塚市長 山﨑晴恵
○三木市長 仲田一彦
○高砂市長 都倉達殊
○川西市長 越田謙治郎
○小野市長 蓬萊務
_三田市長 田村克也(泉)
○加西市長 高橋晴彦
○丹波篠山市長 酒井隆明
_養父市長 大林賢一
○丹波市長 林時彦
○南あわじ市長 守本憲弘
○朝来市長 藤岡勇
○淡路市長 門康彦
○宍粟市長 福元晶三
○加東市長 岩根正
○たつの市長 山本実

2024年11月15日金曜日

聴力チェック

AirPods Pro2にヒアリングチェックとヒアリング補助機能が追加されたというので試してみた。iOS17.7のままではだめだったので,夜中のうちにiOS18.1にアップグレードした。朝起きてiPhone SE2を立ち上げると無事に新機能が使えるようになっていた。

ヒアリングチェックしますかというので,OKして進んでいくと,まず音漏れチェックや周囲の騒音チェックがある。これをパスすると,左耳と右耳それぞれ5分づつのチェックが始まる。音の高さや大きさを変化させながら,ピー・ピー・ピーという三連音が発せられて,きこえると画面をタップする。いつもの人間ドックのアバウトな検査とはえらい違いだ。

最終結果は図のようになって,難聴ではなかった。ただし,4000Hzをこえると急に聞こえにくくってしまい,8000Hzはもうほとんどわからない。これは既に別の簡易テストでもわかっていたことだ。まあいいか。

ヒアリングチェックの結果,軽度から中程度の難聴が認められるとパーソナライズされた聴力プロファイルによるヒアリング補助機能が利用できる。もう高価な補聴器は不要の時代がやってきたのかもしれない。



写真:iPhoneのAirPods Pro設定画面から(2024.11.15早朝)


2024年11月14日木曜日

人工超知性

人工超知能(2)からの続き

10月4日のSoftBank World 2024における孫正義の特別講演が公開された。タイトルは「超知性は10年以内に実現する」。その内容をがんばって人力でまとめると次のようになる。

彼の定義によれば,AGI(Artificial General Intelligence)は人間と同等の知能をもつAIであり,2-3年後に実現する。ASI(Artificial Super Intelligence)は人間の1万倍の知能を持つAIであり,10年以内に実現する。そのASI(人工超知能)は,人工超知性へと進化するというのがそのビジョンである。下図の1-5はAGIの進化レベルを表しており,6-8はASIの進化レベルに対応している。

人間の脳にある神経細胞ニューロンは1000億個あり,それらが接続するシナプスは100兆個ある。しかしこれは20万年前から変化しておらず,また今後も増えることはない。一方,これに対応する大規模言語モデルのパラメタは数兆個のオーダに達しており,さらに増える可能性がある。

こうした前提のもとに,情報を検索する(Google)→知識として理解する(GPT)→知能により推論する(o1)→知性で調和させる(ASI+)という一連のAIの進化の流れを想定している。

まず,最近のo1が,複数の分野の博士レベルの能力を持つに至ったことを紹介し,AIが速さから深さ(Chain of Though)の段階に移行しているとする。その例として,o1-preveiwに「一千万円を一億円にするための戦略とメカニズムは?」と聞いて回答に75秒かかって感動したということを披露していた(自分でも同様に試してみたが,あっという間に答えが出てしまった。どうやら知識不足で設問の表現が単純すぎたようだ)。

次に,(広義の)強化学習が,並列に動作する数千エージェントの数十億回の試行によるQ関数(行動価値関数)の進化を促すことを示し,自分でモデルを考えることができるAIへの進化が鍵となることを説明した。

さらに,個人によりそったAI=パーソナルエージェント(PA)の時代が来ることを予測し,人や物に対応した人工知能エージェント同士がやりとりするA to Aの時代が来るとした。ソフトバンクがほぼ所有しているARMのチップは年間320億個出荷されていて,世界人口1人当たりにすれ4個になる。このようにすべての人や物(AoT = Agent of Things)にAIが行き渡る。

パーソナルエージェントとは,個人のライフログを分析するようになるが,そのためには,感情,重要度,時間帯等から評価される感情インデックスにあわせた情報の記憶が重要になってくる。高いスコアのものは動画や音声で,中程度は静止画で,低スコアならばテキストで保存されるというわけだ。大切な想い出や日常の記憶が長期に保存される。

こうして,人工知能は人間の感情を理解して長期記憶を持ち,最終的には,PAはパーソナルメンターに進んでいく。そして,人工知能は自らの意思を持つ人工知性の段階に到達する。その際のQ関数の最大の報酬は,自分の喜びファーストではなく,あなたの喜び,あなたの幸せ,家族の幸せ,社会の人々の幸せとなって,調和のとれた超知性が実現する。それをソフトバンクは目標にするというものだった。なかなかここまで大風呂敷を展開できる日本人の現実の経営者はいない。

小規模LLMや省電力LLMをディスりすぎているきらいはあり,ソフトバンク自身のLLMが3000億パラメタ程度しか実現できていないので,どうよとは思うけれど,各地にデータセンターを構築しながら,ロボティックスや自動運転も視野に入れながら着実に前進しているので目が離せない。



図:孫正義によるAIの進化のイメージ(SowfBank World 2024 から引用)


2024年11月13日水曜日

月面上の重力

月面上の重力加速度$\ g_{\rm m}\ $は,地表面上の重力加速度$\ g \ $の六分の一である。ロケットや人工衛星が開発される前の観測事実からこれを導けるかという話をみかけた。

次のような前提で考えてみよう。
ケプラーの第三法則とニュートンの万有引力の法則運動の法則は既知である。
・地球と月の距離 $\ D \ $ は三角測量によってわかっている。
・地球の半径$\ R \ $と月の半径$\ r \ $は緯度観測と三角測量からわかっている。
(直接不要だが,地球質量$\ M \ $,月質量$\ m \ $,万有引力定数を ${\  G \ }$とする。)

まず,$\displaystyle g = \dfrac{GM}{R^2}, \quad g_m = \dfrac{Gm }{r^3},  \quad \dfrac{g_m}{g} = \dfrac{m}{M} \Bigl( \dfrac{R}{r} \Bigr)^2 \ $が成り立つ。

また,地球−月系における万有引力の法則とケプラーの法則からは次式が得られる。
$\displaystyle \mu D \bigl( \dfrac{2\pi}{T} \bigr)^2 = \dfrac{G m M}{D^2}$
ただし,$\mu \ = \dfrac{m}{1+m/M} \ $は月の換算質量,$\ T\ $は月の公転周期である。
したがって,$\displaystyle \bigl( \dfrac{2\pi}{T} \bigr)^2 = \dfrac{GM (1+ m/M) }{D^3}  = \dfrac{g R^2 (1+ m/M) }{D^3}$

この式に,$T=27.32 {\ \rm d},\quad g=9.81 {\ \rm m/s^2}, \quad R = 6.37*10^6 {\ \rm m}, \quad D = 3.844 * 10^8 {\ \rm m}$を代入すると,$m/M = 0.0111$を得る(ちょっと足りないか,現在わかっている質量を入れると,$m/M = 7.35*10^22 {\ \rm kg} / 5.97*10^24 {\ \rm kg} = 0.0123 \ $である)。

この質量比の値と,地球と月の半径の比の値がわかれば,重力加速度の比が求まる。地球から月までの距離 $\ D \ $ を三角測量で求めたり,月の直径 $\ 2r \ $を逆三角測量で与えるためには,月の直径$\ 2r = 3470 {\ \rm km}$と,地球から月の距離 $D = 384400 {\ \rm km}$の比率の逆正接の値が必要となるが,その角度は 約 0.5度である。



図:月までの距離の三角測量(参考文献 [2]からの引用)




2024年11月12日火曜日

八犬伝


12月まで有効の映画券をもらったのだけれど,なかなか面白そうな映画がみあたらない。消去法で残ったのが,八犬伝だ。テレビでも宣伝していたのでちょっと観たいと思った。原作は山田風太郎の「八犬傳」であり,なんのことはない自宅の本棚に収まっていた。

原作の八犬傳は,南総里見八犬伝の著者の曲亭馬琴葛飾北斎の対話が中心となる実の世界と,八犬伝の物語のダイジェストに相当する虚の世界が14章にわたって交互に描かれている。実の世界は,物語の中心部分をなす鶴屋南北との問答を含めてほぼ映画で再現されている。一方,虚の世界はそもそももとの八犬伝が長編なので,映画の時間では全く収まらず,ごく少数のエピソードとSFXだけで最後まで突っ走っていった。

江戸時代に二日がかりで,歌舞伎の東海道四谷怪談が上演されていたという場面があり,これは,仮名手本忠臣蔵の中に,東海道四谷怪談が埋め込まれるという構成になっていた。四谷怪談が忠臣蔵の外伝だということは知っていたけれど,上演方法がこんなことになっているとはビックリだ。

高校時代の教科書に載っていた,芥川龍之介戯作三昧はまさにこの滝沢馬琴だった。最後に八犬伝の口述筆記を行った滝沢家の嫁の土岐村路のくだりも,馬琴の誇張だったという説があったけれど,どうなのだろうか。路女日記を読んだらわかるのかもしれない。



写真:映画「八犬伝」のポスターを引用


2024年11月11日月曜日

仮名手本忠臣蔵(第一部)


11月7日(木)吉田簑助が91歳で亡くなった日。そうとは知らないまま開場40周年記念11月文楽公演に行く。立冬の前日,急に寒くなったのだけれど晴れていれば大丈夫。国立文楽劇場の西側の入口で高校生の団体に遭遇する。聞いてみれば天王寺高校の2年生全員(360名)で,第1部(4時間!)を観るとのこと。文楽劇場の後半分と前半分のうち左1/3が高校生だった。皆さんおとなしく最後まで観劇していた。

今回2024年11月公演では忠臣蔵の大序から七段目までが2部にわけて上演される。来年2025年の1月公演で,8段目と9段目がかかり,ほぼ通し狂言となる。国立文楽劇場の前回の仮名手本忠臣蔵の通しは,2019年の春,夏,秋の3回に分割されたバージョンであり,2012年には1日通しの公演が行われた。いずれもすべてクリアしている。今回は,体力の関係で,第1部の大序から四段目までということで勘弁してもらう。

2012年/2019年/2024年の仮名手本忠臣蔵の通し狂言

大序
○○○鶴が岡兜改めの段(25分/24分/23分)
○○○恋歌の段(12分/13分/11分)

二段目
×○○桃井館力弥使者の段(_/23分/22分)
○○○本蔵松切の段(18分/18分/17分)

三段目
○○○下馬先進物の段(20分/20分/19分)
○○○腰元おかる文使いの段(14分/14分/14分)
○○○殿中刃傷の段(28分/28分/30分)
○○○裏門の段(16分/15分/14分)

四段目
○○○花籠の段(17分/17分/16分)
○○○塩谷判官切腹の段(53分/49分/46分)
○○○城明渡しの段(8分/7分/8分)

五段目
○○○山崎街道出合の段(15分/16分/15分)
○○○二つ玉の段(20分/17分/18分)

六段目
○○○身売りの段(27分/25分/26分)
○○○早野勘平腹切の段(47分/45分/41分)

七段目
○○○祇園一力茶屋の段(85分/93分/87分)

八段目
○○○道行旅路の嫁入(33分/34分/**分)

九段目
○○○雪転しの段(15分/14分/**分)
○○○山科閑居の段(96分/97分/**分)

十段目
×○×天河屋の段(_/68分/_)

十一段目・大詰
○××花水橋引揚の段(11分/_/_)
×○×花水橋引揚より光明寺焼香の段(_/23分/_)


写真:塩谷判官(国立文楽劇場第176回パンフレットから引用)

塩谷判官切腹の段(通さん場)は,前回2019年に観たときすごい緊張感があって良かったのだが,今回はそこまでではなかった。上演時間がこれまで3回の通しで,毎回減少している(53分→49分→46分)のがちょっと気になる。「遅(おそかり)し由良助」というセリフが出てくるのかと期待していたら,これは歌舞伎バージョンの浄瑠璃台本だけのようだ。

由良之助が到着した後「由良助。この九寸五分は汝へ形見。わが鬱憤を晴らさせよ。」として息絶えたところで,「御台を始め,並みゐる家中,目を閉ぢ息をつめ,歯を喰ひ縛り控ゆれば」とあるのだけれど,肝腎の顔世御前の人形は別室に隠れている。歌舞伎だと衣裳交換の時間稼ぎだとの説があるけれど,人形浄瑠璃ではどうなのよという疑問は残ったまま。

下馬先進物の段の豊竹亘太夫(大序鶴ケ岡兜改めの段も)と腰元お軽文使いの段の豊竹睦太夫(恋歌の段も)が今回の良かったでしょう。塩谷判官切腹の段の豊竹若太夫はちょっと声がでていなかったかなあ。

元禄十四年(1701年)の赤穂事件が,元禄十五年(1703)の吉良邸討ち入りに至る。この事件の47年後の寛延元年(1748年)に,二代目竹田出雲・三好松洛・並木千柳による人形浄瑠璃「仮名手本忠臣蔵」として上演され,それ以来「忠臣蔵」がこの事件の代名詞となった。

2024年11月10日日曜日

太陽光発電所

近所にある水上太陽光発電所の資本関係が変更されるということで,近隣住民向けの説明会の案内が届いた。暇なので,ちょっとどんなものか偵察に出かけてみた。

開始5分前に近所の住民会館に到着すると受付は一番乗り。20席ほどの一番前に座るように促された。説明側のテーブルには4名ほどならんでいる。開始時間になって参加者が5名ようやく集まったが,どうやら体裁を整えるために出席するよう市から依頼された近隣自治会役員といった風情である。

印刷されたPowerPoint資料(27p)に基づいて説明が始まった。マイクもプロジェクターもなし。事業計画概要,発電所概要,事業の影響と予防措置,変更事項(株主変更)がさらさらと読み上げられて15分で片づいてしまう。予定では1時間の説明会となっていたけど。最前列は自分だけだったので,穏やかな笑顔の座長からそっと質問を促された。「本題とは関係ないのですが,この規模の発電設備でどのくらい収入がありますか」と尋ねた。どうやら企業秘密だとのことでしばらくモゴモゴしていたけれど,結局3000万程度だという返事をいただいた。

さて,問題の水上太陽光発電所は,出力973kW,賃貸契約土地面積2万9千㎡,パネル3700枚,フロート10600式,産業廃棄物総計150t程度の規模である。そう言えば,現地の宣伝パネルに250世帯の1年分の電力をまかなえるとあったので,一世帯の年間電気代を12万円とすれば3000万円という推定ができる。まあそんなものだろう。株主総会ではないので財務諸表は出てこない。採算が取れているのものなのかどうかはよくわからない。

水上太陽光発電.comのため池でどれぐらい発電できるの?というページ等によれば,次のようなことがわかった。
・日本にあるため池の数は20万ヶ所,4481㎢である(1ヶ所平均2.2万㎡)。
・水上太陽光発電に使えるのは上記の10%,448㎢
・パネル出力は1㎡あたり0.08kWなので,1ヶ所1760kW,全国で38GW(計算では36GW?)。
・実際の太陽光発電所の出力合計は,70GW(Perplexity調べ)。ほんとかな。
・稼働可能な原子力発電所の出力合計は,全国33ヶ所33-36GW(ChatGPT調べ)。ほんとかな。

片道30分の散歩コース圏内には,ため池が20ほどあって,このうち太陽光発電所があるのが2ヶ所だ。この他に田んぼや空き地などに小規模な太陽光発電所が10ヶ所ほどあり,2つの水上太陽光発電所と同じくらいのパネル数になりそうである。したがって太陽光発電所の出力合計70GWの半分の36GWが水上太陽光発電所だというのは,妥当な推計のようにと思われる。



写真:ため池太陽光発電所の例(大和郡山市625kW,ため池ソーラ社から引用)


2024年11月9日土曜日

シンバル

NHKの探検ファクトリーはとても興味深い番組だ。バラエティー生活小百科の後番組で,定時の土曜日お昼時だけでなく再放送でもよくみかける。今日は大阪市平野区のシンバル工場だった。

小出製作所は,金属のヘラ絞り加工を専業とする10人ほどの小企業だが,従業員からの提案で,20年ほど前からシンバルの製造を行っている(シンバル部門は社長を含めて4名だけ)。日本でただ一つのシンバル製造メーカーで,小出シンバルのブランドで有名なのだった。

番組では,製造工程をていねいに紹介していた。気になったのは,同じ直径のシンバルでは,重いほうが音が高いというところだ。弦の固有振動の場合は,振動数は張力を線密度で割ったものの平方根に比例する。つまり重い弦の方が振動数は低くなるわけだ。円盤の振動では,そうなっていない。これは重いシンバルのほうが,その曲げ剛性が大きくなるからのようだ。たぶん。



写真:小出のクラシックシンバル(Amazonストアから引用,10万5千円)

2024年11月8日金曜日

火星19

弾道ミサイルの軌道(5)からの続き

ロイターが伝えた朝鮮中央通信のニュースによれば,10月31日に発射したのは大陸間弾道ミサイル「火星19」だとのこと。ICBMの最終完結形態で世界最強のミサイルをうたっている。知らんけど。飛行距離は1001.2km,飛行時間は5156秒,最高高度は7687.5km だ。

無意味なアラートを出すよりも,こういった基本的な情報がほしいところだ。しかし,防衛省が韓国軍や米軍からこれらの情報を入手してもことさらにマスコミに流す必要はないと考えているのだろう。日本政府にしてみれば,アラートを出すだけで危機意識の醸成という目的は達成される。

2年前の「火星17」については,同じロフテッド軌道で,飛行距離 999.2 km ,飛行時間 4135 秒,最高高度 6040.9 km だった。これに比べると,今回は飛行時間が1000秒伸びて,最高高度も1600kmほど高くなっている。

そこで,忘れかけていたMathematicaのコードを引っ張り出して再計算してみた。目の子でパラメータサーチをした。単純なモデルなので,そんなにピッタリ再現できるわけではないが,ほぼほぼ雰囲気は得られる。飛行時間を5156秒=86分あたりに固定すると,最高高度は170kmほど高くなって7850km(+2.1%)になってしまう。最高高度を7600km台にするためには,飛行時間を2分ほど減らして84分にする(-2.3%)必要がある。燃焼時加速度a,燃焼時間τ,燃料重量比pなどを変えても,飛行時間で制約がかかる範囲では,飛行高度を再現するには至らなかった。

これらのパラメタのままで,投射角度だけを45度にすれば(飛行時間Tは,地表に到達する点で調整する),大円到達距離は16500kmを越えてくる。

g = 0.0098; R = 6350; τ = 90.8; p = 0.75; a = 0.045; s = 86.7 Degree; T = 5160;
g = 0.0098; R = 6350; τ = 90.8; p = 0.75; a = 0.045; s = 45 Degree; T = 7050; 
(* g=0.0098; R=6350; τ=90.4; p=0.75; a=0.045;s=86.7Degree;T=5160-120; *)
(* g=0.0098; R=6350; τ=90.4; p=0.75; a=0.045;s=45 Degree;T=6850; *)

fr[t_, τ_] := a*Sin[s]*HeavisideTheta[τ - t]
ft[t_, τ_] := a*Cos[s]*r[t]*HeavisideTheta[τ - t]
fm[t_, τ_] := -p/(τ - p*t)*HeavisideTheta[τ - t]
sol = NDSolve[{r''[t] == -fm[t, τ]*r'[t] + h[t]^2/r[t]^3 - g R^2/r[t]^2 + fr[t, τ], 
r[0] == R, r'[0] == 0,  h'[t] == -fm[t, τ]*h[t] + ft[t, τ], h[0] == 0}, {r,  h}, {t, 0, T}]
f[t_] := r[t] /. sol[[1, 1]]
d[t_] := h[t] /. sol[[1, 2]]
Plot[{6350, f[t]}, {t, 0, T}]
Plot[{f[t + 1] - f[t], d[t]*R/f[t]^2, d[t]/f[t]}, {t, 0, T}, 
 PlotRange -> {-8, 8}]

{f[T/2] - 6350, tyx[T], v[T]/0.340}
→ {7851.42, {5160, -46.3658, 1007.58}, 24.5585}
g0 = ParametricPlot[{NIntegrate[R d[t]/f[t]^2 , {t, 0, tt}], f[tt] - R}, {tt, 0, T}]
→ {8231.43, {7050, 121.626, 16657.9}, 25.6423}
g9 = ParametricPlot[{NIntegrate[R d[t]/f[t]^2 , {t, 0, tt}], f[tt] - R}, {tt, 0, T}]



図:北朝鮮のミサイルの軌道(ロイター記事から引用)

2024年11月7日木曜日

世代効果

日経クロストレンドの「30年のデータで解析!生活者の変化潮流 第52回ポパイ・JJ世代が時代の節目?日本人の価値観変化をデータで検証」という記事が目に入った。自分にはあまり関係ない話かとチラチラみていると,どうやらポパイ・JJ世代のというのは私達の世代のことだった。

日経新聞の支払いを日経ID決済にしているので,1ヶ月のみの日経クロストレンド無料購読が可能になる。そこで全文を読んでみた。もっとも 3/4 くらいは無料部分で読めるのだが。

簡単に言うと,生活に関する長期時系列データに対して,ある集団に着目するコーホート分析をした結果,年齢効果,時代効果,世代効果を取り出すことができる。これから1952-1956年生まれの世代が価値観の境界にあるということがわかった,というものだ。

もう少し詳しく説明するために,ChatGPT-4oに全文ファイルを読み込ませて内容を要約させよう。
Q(koshix):
(第52回及び関連する第50回の2ファイルをアップロードした上で)
これらの内容をまとめて教えてください。

A(ChatGPT-4o):
以下に2つのレポート内容をまとめます。

1.「ポパイ・JJ世代が時代の節目? 日本人の価値観変化をデータで検証」
概要:このレポートは、日本人の価値観がどのように変遷してきたかを「生活定点」データを基にしたコウホート分析によって考察しています。博報堂生活総合研究所が1992年から定点観測を行ってきた長期時系列データを活用し、「年齢効果」「時代効果」「世代効果」の3つの要因を分離して、特定の世代が持つ特徴や時代の影響を解析しています。
主な発見
1952年から56年生まれの世代に、価値観の変わり目が見られるとされており、日本社会において「世代的な節目」を形成していると考えられます。
コウホート分析の結果により、消費や価値観の変化が進み、特に「消齢化」(年齢によるライフスタイルの固定化の希薄化)が進行していると指摘されています​(第52回)。

2.「人前でのキスに抵抗はない」は6% 調査で見えた若者の実像
概要:若者の価値観や行動が実際にどれほど変わったのか、30年間の「生活定点」データに基づき、コウホート分析を通じて若者の特徴が世代固有か、時代的な影響かを検証しています。
主な発見
若者に見られる行動や価値観のうち、約4割が「年齢効果」(年齢に基づく変化)で、世代固有のものは3割程度であると示唆されています。
特に「音楽や美容に対する関心」などは若者特有の特徴である一方、「人前でのキスに対する抵抗感」など、恋愛観に関しては世代を超えて一貫している要素もあるとされています​(第50回)。

これらのレポートから、長期間にわたるデータを基に日本人の価値観の変遷が年齢や時代、世代ごとにどのように影響されるかが詳細に分析されており、特定の世代における消費傾向や価値観の変化が明らかにされています。


Q(koshix):
1952年から56年生まれの世代に、価値観の変わり目=日本社会における「世代的な節目」だということですが,その前後でどんな価値観が変化しているのか複数の例をあげて説明してください。

A(ChatGPT-4o):
1952年から56年生まれの世代が日本社会における「価値観の節目」を形成している理由について、いくつかの具体例を挙げて説明します。この世代は「ポパイ・JJ世代」とも呼ばれ、従来の価値観から新たな価値観へとシフトする過程で、以下のような変化が見られました。

個人主義の台頭
戦前や戦中生まれの世代が保守的・伝統的な価値観を持っていたのに対し、1952年から56年生まれの世代では「個人の自由」が重要視されるようになりました。この世代は、家庭や組織への従属よりも、個人の自己実現を追求する傾向が強まり、特に家庭や職場での上下関係の在り方に対する意識が変わり始めました​。

食生活の変化
伝統的な魚料理が好まれていた世代から、次第に肉料理が一般化され、特に1970年代以降は肉が日常的な食材となっていきました。この変化は、価値観が個人の嗜好に寄り添う傾向へと移行したことを示しており、戦後の欧米文化の影響も加わった結果と考えられます​。

仕事と生活のバランス
1952年から56年生まれの世代以降、仕事中心の生き方から、家庭やプライベートを重視する価値観へのシフトが見られるようになりました。具体的には「予定があれば残業しない」「仕事よりも家庭が大事」といった意識が若い世代ほど顕著になり、組織よりも個人生活を重視する傾向が進んでいます​。

社会貢献意識の揺れ
「社会のために役立つことをしたい」という意識は、この世代で一旦上昇した後、後続世代では減少しつつも再び波打つような傾向を示しています。これは、個人の幸福追求と社会への貢献の間で揺れ動く日本人の価値観の変化を表しています​。

このように、1952年から56年生まれの世代は、個人の自由と多様な価値観が受け入れられる社会への移行期として重要な役割を果たし、従来の伝統的な価値観を一部保ちながらも、大きく社会が変容していく時代の礎となりました


図:各世代での世代効果の標準偏差(博報堂生活総研・日経XTRENDから引用)
(世代効果の谷間の部分(1952-1956年生まれ)が価値観の境界をなしている)


2024年11月6日水曜日

鍵屋資料館

11/2,3,4の三連休,NHKにブラタモリが帰ってきた。東海道五十七次の旅というタイトルで,京都から大阪までの旧街道筋をたどるものだ。東海道五十三次は江戸の日本橋から京都の三条大橋までの53宿であり,53番目が大津宿。大津から京都へ向かう山科追分(髭茶屋追分)で,大津街道が分岐して五十七次の54番の伏見宿に至る。大坂−伏見間は京街道であり,55番の淀宿,56番の枚方宿,57番の守口宿と淀川の南東岸の文禄堤を大坂の高麗橋へと街道が続いた。これが,今回の番組の舞台だった。

11月4日の放映前に,予習のため枚方宿に向かった。枚方市駅あたりから,南西の枚方公園駅まで,旧東海道をたらたらと歩く。途中で昼食のため万年寺山をまわったが,残念ながら目的の渋いお店は小学生未満お断りで,他のしゃれたお店も皆お休み。結局,ひらかたパーク最寄り駅前にある昔ながらの一力食堂で一息ついた。

その後再び旧東海道に戻って,市立枚方宿鍵屋資料館を訪ねる。下足箱に靴がびっしりとつまっていたが,人の気配はない。受付にいくと,今日は2階で琵琶の会が催されているので上がれないとのこと。1階の資料館の部分だけを見る。淀川下りの三十石船にごんぼ汁を売りに来るくわらんか舟のやりとりの3Dディスプレイや実物大モデルがおもしろい。

中山道(六十九次)は,草津追分で東海道(五十三次)に合流するが,69番大津宿,68番草津宿の1つ手前が67番守山宿になる。うちの子供たちはこれまで旧街道沿いの,守山宿,伏見宿,枚方宿,守口宿あたりに住んだり,関係したりするのだった。なお,我々は東海道や中山道より1000年ほど昔からある大和の古道(下ツ道・中ツ道)の間に住んでいる。



写真:東海道五十七次枚方宿(撮影:2024.11.4)


2024年11月5日火曜日

リュカ数列

フィボナッチ数列と1/89からの続き

ときどきネット上のフリーの教科書で掘り出し物があって楽しい。昨日散歩していた犬棒は,Sheldon Axler の Linear Algebra Done Right という線形代数のpdf教科書に当たった。Springerからも紙版が出版されている。その pdf ファイルの,クリエイティブコモンズ  表示-非営利 4.0 国際ライセンスのトップページには,次の式がでかでかと護符のように貼り付けられていた。
$\displaystyle F_n = \dfrac{1}{\sqrt{5}} \Bigl\{ \Bigl( \dfrac{1+\sqrt{5}}{2} \Bigr)^n - \Bigl( \dfrac{1-\sqrt{5}}{2} \Bigr)^n \Bigr\}$

この式がフィボナッチ数列を表しているというのを知ったのは,ずいぶん遅くて大学4年生のころだ。自宅で塾を開いて,中学生や高校生に数学を教えていたきのこと。大学進学のためのマイナーで難しそうな問題集を解かせていた北野高校の生徒が,フィボナッチ数列の問題を上記の式を使って一発で解いてきた。田舎の高校生時代に,近所に住んでいた数学乙の西野先生にしこまれた数列の漸化式の標準解法しか知らなかった物理学科の学生は見たこともない式にどぎまぎしてしまったのだった。確かに答えはあっていた。

その思い出の式を眺めていたら,$\sqrt{5}$の中を変えたらどうなるのかが初めて気になってきた。早速試してみよう。ということで,Mathematicaで答えを当たってみると,ルートの中身が4の倍数+1の場合に整数の数列が得られることがわかった。

そこで,軟弱なGさんは,久々にOpenAI o1-previewを取り出してその理由を聞いてみた。
Q(koshix):
数列 a_n = f[n_, m_] :=  1/Sqrt[m] (((1 + Sqrt[m])/2)^n - ((1 - Sqrt[m])/2)^n) // Expand がすべて整数の項からなる数列になるのは,n がどのような値をとる場合かを説明してください。

A(o1-preview):
(日本語による不十分で誤った説明→略)
Answer: Because all terms a_n  are integers if and only if n is the square of an odd integer—that is, when m =k^2 with odd k.

Q(koshix):
あなたのおっしゃる条件からはずれる場合,例えばn=5を確かめてみてください。この場合も全て整数の項からなる数列になりますよね。

A(o1-preview):
(日本語によるやや不十分でも正しい結果→略)
Answer: Because all terms a_n are integers if and only if n leaves a remainder of 1 when divided by 4 —that is, when m≡1 mod 4.

すっきりしないので,しぶしぶ人間の脳で考えることにしてみた。
$\alpha_m = \dfrac{1+\sqrt{m}}{2}, \ \beta_m = \dfrac{1-\sqrt{m}}{2}$と置いて,$\displaystyle F(m)_{n}=\dfrac{1}{\sqrt{m}}\Bigl( {\alpha_m}^n - {\beta_m}^n \Bigr)$である。
そこで,$F(m)_{0} = 0, \quad F(m)_{1} = \dfrac{1}{\sqrt{m}}\Bigl( {\alpha_m} - {\beta_m} \Bigr) = 1$
さて,${\alpha_m}^n - {\beta_m}^n = (\alpha_m + \beta_m) \Bigl( {\alpha_m}^{n-1} - {\beta_m}^{n-1} \Bigr)  - \alpha_m \cdot \beta_m \Bigl({\alpha_m}^{n-2} - {\beta_m}^{n-2} \Bigr)$ 
いいかえれば,$F(m)_n = F(m)_{n-1} - \dfrac{1-m}{4} F(m)_{n-2} $
したがって,$m=4k+1$であれば,$F(m)_n = F(m)_{n-1} + k F(m)_{n-2} $が成り立つので,初期値からすべての$F(m)_n$は整数となる。

これはどうやら,リュカ数列という,整係数の2次方程式の2つの解から定義される漸化式による二階線形回帰数列の一種だということだ。フィボナッチ数リュカ数ペル数フェルマー数メルセンヌ数など数論に現れる重要な数列がこれに属するとWikipediaには書いてあった。

2024年11月4日月曜日

再現性

清水亮(1976-)による「人格のコンピュータ再構成」というnoteの記事がおもしろかった。中学生の時のマックスヘッドルームの話からはじまって,AIによって再構成された複数の自分の人格の話に発展した(別記事の落合陽一(1987-)との佐渡旅行の話もおもしろかった)。

そういえば,高校の数学で大数の法則中心極限定理を学んだ後に,米島君と話題になったのは次のようなことだ。「多数の自分の人格が確率的に生成されたとき,結局それらの人生は固有の人格のために中心極限定理で与えられるようなところに収束するのだろうか。」それは単なる思考実験だったけれど,いまや,それが実現するところにまで来ているのかもしれない。

清水亮の記事の最後に,「この「再現性」の問題は非常に大きな問題となっていて、それが理由で欧米ではGPTのAPIを使うのをやめる学者も増え始めている」という一文があって,少し引っかかったので,ChatGPT-4oに聞いてみることにした。その結果を以下に報告する。対話相手として申し分ないのかもしれない。

Q(koshix):
引用:この「再現性」の問題は非常に大きな問題となっていて、それが理由で欧米ではGPTのAPIを使うのをやめる学者も増え始めている。
という文章がありますが,この意味を教えてください。

A(ChatGPT):
この文章にある「再現性の問題」は、特に研究や学術的な活動において非常に重要な概念です。再現性とは、同じ条件下で実験や研究を繰り返すと、同じ結果が得られることを指します。再現性が担保されていない場合、研究結果の信頼性や正当性が疑わしくなります。

GPTのAPIを使う学者が減り始めているという文脈では、次のような背景が考えられます。

1.出力の一貫性が低い
GPTのような大規模な生成AIモデルは、入力が同じでも必ずしも同じ出力を生成するとは限りません。特に、生成されたテキストは確率的に決定されるため、同じプロンプトに対して異なる結果が得られることがあります。この特性は、再現性が求められる研究の場では問題となり、学者が同じ実験を再現できないことに繋がる可能性があります。
2.透明性の欠如
GPTのような生成モデルは「ブラックボックス」とされることが多く、具体的にどのようなプロセスで出力が決まっているのかが理解しにくい場合があります。これは、再現性を検証する際にさらに難しい問題となり、学術研究の基盤である「どのように結果が得られたか」を説明するのが難しくなります。
3.モデルの進化と変更
APIで提供されるモデルが定期的に更新される場合、過去のバージョンと同じ挙動を保証できなくなります。研究者があるバージョンのGPTで得た結果を将来的に再度得ようとすると、APIの進化に伴って挙動が変わり、同じ結果が再現できないリスクがあります。

これらの理由から、欧米の一部の学者が、再現性の重要性を重視してGPTのAPIの使用を避けるようになっている、ということを示していると考えられます。特に科学的な研究や論文で使用する場合、再現性が確保されていないと、その研究結果に信頼性を持たせるのが難しくなるためです。


Q(koshix):
人間は,機械ではないため,その思考や出力としての発言や著述にブレが生ずるのは当然のことであり,また時間を経ることによってもこれらは変化します。なぜ,人間のアウトプットにおける再現性の重要性にそこまでこだわるのかが,少し理解できません。

A(ChatGPT):
人間のアウトプットは確かに変動しやすく、時間や状況によって異なるのは自然なことです。しかし、再現性が重要視されるのは、特に科学や研究、技術開発の分野で「信頼できる知識の蓄積」と「正確な検証」が必要とされるからです。この観点から、なぜ再現性にこだわるのか、以下のような理由が挙げられます。

1.信頼性の確保
科学や学術研究では、ある実験や分析結果が「再現」できることが、その結果が正しいと信じられるための基本的な条件です。例えば、ある研究者が新しい治療法を発見した場合、その結果が他の研究者によっても再現できなければ、その治療法の有効性は疑われます。再現性があることで、研究が単なる偶然や一時的な誤差ではなく、一般的に通用する真実に基づいていると確認できます。

人間のアウトプットが時間や状況で変わることが許容される領域、例えば芸術や文学では、その「変化」こそが価値や深みを生みます。しかし、科学や技術では、何が原因で変わるのかをはっきりさせ、同じ条件下で同じ結果が出せることが極めて重要です。機械やプログラムは、まさにこのような「ブレ」をなくすために開発されています。

2.誤差やバイアスの排除
人間の思考には、しばしば無意識の偏見や感情的な要因が入り込むことがあります。このため、同じ状況においても異なる結論や発言が生まれます。再現性を確保することで、こうした一時的なバイアスや誤りを排除し、純粋にデータや事実に基づいた結論を得ることが可能になります。

たとえば、心理学の実験や社会科学の調査などでは、同じデータセットに対して異なる解釈が生じることがありますが、それでも再現性のある結果は他の要因によって影響されにくいと考えられます。これにより、学問的な議論や検証が可能になり、結論に対する信頼性が高まります。

3.新しい発見の検証と信頼性
再現性が確保されていないと、新しい発見や理論が検証されないまま広まる危険性があります。もし結果が再現できないのであれば、それは偶然や誤った方法論に基づく可能性があり、信頼できるものではありません。再現性を重視することで、確かな基礎の上に新たな理論や発見を積み重ねることができるのです。

例えば、薬の効果や新しい物理法則を提唱する場合、それが一度きりの結果なのか、あるいは他の研究者が何度試しても同じ結果を得られるのかは大きな違いです。再現性があることで、その発見が科学的に有効であることが裏付けられ、実用化に進む道が開けます。

4.技術やシステムの安定性
生成AIなどのシステムにおける再現性の重要性は、技術の安定性や信頼性を高めるためです。たとえば、自動運転車のシステムや医療用AIが、同じ状況で異なる判断をしてしまうと大きな問題につながります。このため、システムの動作が一貫して再現性を持つことが求められます。人間とは異なり、こうした技術においては、予測可能で一貫した結果が必須となります。

最後に
確かに、日常生活や芸術、創造的な活動においては人間のアウトプットの変動や変化は自然であり、しばしば価値があるものです。しかし、科学的検証や技術開発の場では、再現性がないと、偶然や誤りに基づいた結論を広めてしまうリスクがあります。これが、人間の思考と機械のアウトプットにおける再現性の違いに対するこだわりの理由だと考えられます。


Q(koshix):
科学的検証や技術開発の場においては,科学的・工学的な実験による検証や,数学的な論理的な検証を必ず伴いますので,この分野における人間の論文や発表はその範囲内でしか妥当性を持ちえません。したがって,揺らぎや変化はこの範囲を逸脱することはできません。それは当然のことです。したがって,生成AIを利用したとしても,このような現実のデータや現象や論理や数学による制約の範囲に留まるはずです。それにもかかわらず,危機感を抱く根拠がいまひとつわからないのです。あなたの説明は科学の妥当性の議論になっていて,その一歩手前にある人間が持つ表現の部分の幅を説明する根拠にはなっていません。

A(ChatGPT):
あなたの指摘は非常に鋭いと思います。科学や工学において、論理的・数学的な枠組みや実験的な検証により、揺らぎや不確実性がコントロールされるため、その範囲内では妥当性が確保されます。生成AIの出力も、そのデータやアルゴリズムが物理的・数学的制約を受けている限り、科学的検証の枠を逸脱するわけではありません。そのため、生成AIを使用した場合でも、同じ制約の中で妥当性が保たれるべきだという考えはもっともです。

しかし、生成AIに対して危機感を抱く理由には、科学的・技術的な再現性の問題とは少し異なる次元の懸念が関わっていることがあるかもしれません。それをいくつかの観点から整理してみましょう。

1.確率的生成による予測不可能性
生成AI、特にGPTのようなモデルは、基本的に確率的な手法でテキストを生成します。これは、同じ入力に対しても、異なる結果が生じうるという特性を持っているため、再現性が完全には保証されないことがあります。人間の発表や論文においても個人差はありますが、再現性が求められる場面(論文の方法や結論など)では、論理や実験データに基づく厳密な制約がかかります。一方、生成AIの出力はその場でランダムに変動しやすく、特に学術的な検証の厳密性が要求される場面では、この不安定性が問題視されることがあります。

2.ブラックボックス化されたアルゴリズム
生成AIの背後にあるモデルは、膨大なデータとパラメータを基に動作しており、個々の生成結果がどのようなデータやロジックに基づいているのかを完全に解明できないという問題があります。人間の論文や発表は、背後に論理的・実験的なプロセスが明示され、その検証方法もクリアに説明されます。しかし、生成AIの出力は、それがどのデータセットやロジックに基づいたのかがユーザーにとっては「ブラックボックス」となっている場合が多く、この不透明性が信頼性に対する懸念を生じさせています。

3.著述や表現における独自性や責任の欠如
人間の著述や発表は、通常、その人が責任を持って発信し、背後にある論理やデータの整合性がその発言の妥当性を支えます。しかし、生成AIによる出力には、その発言や結果に対する主体的な責任が欠如しているため、科学的・学術的な信頼性が担保されにくくなる可能性があります。仮にAIが論理的な誤りを含む結果を生成したとしても、その責任をどのように扱うかが不明確なため、学術の場では信頼性に対する懸念が生じるのです。

4.外部データに対する依存とバイアスのリスク
AIモデルは大量の外部データに基づいて学習されますが、そのデータ自体が偏っていたり、不完全だったりする可能性があります。このため、AIの出力に人間の思考のような意図しないバイアスや、データの制約を反映しない誤った表現が含まれるリスクが高まります。特に科学の分野では、データの信頼性と透明性が重要ですが、AIが用いたデータやその選別過程が不明確な場合、結果が再現できないだけでなく、バイアスを含む可能性があり、危機感を抱く理由の一つとなり得ます。

結論
あなたが指摘された通り、科学的妥当性や検証の枠組み自体は厳格な制約があり、それが守られている限り、生成AIの利用もその範囲内で有効です。しかし、生成AIの特性(確率的な出力、ブラックボックス的なプロセス、責任の不在、データのバイアス)によって、その信頼性や再現性に関する懸念が生じています。このため、特に再現性が求められる分野では、AIの出力に依存しすぎることに対して懸念があるのです。

この懸念は、学術的な信頼性や透明性を損なう可能性に対する防衛的な姿勢ともいえるでしょう。


図:「再現性」というタイトルの絵(Imagen3による)

2024年11月3日日曜日

フレイル予防

天理市から「フレイル予防のための食事」というタイトルで,管理栄養士による講演会の案内がやってきた。気になっていたので早速申し込んでおいた。

天理市立メディカルセンターの2Fにある地域包括ケア広場で,奈良県栄養士会の会長の講演があった。タイトルは「栄養講座〜高齢期のフレイル及び骨粗鬆症予防〜(リンク先は同趣旨の厚生労働省資料)」だ。35pのPowerPoint資料が配られ,健康アンケートと簡易骨密度測定(結果はBで問題なさそう)がついてくる。

25席用意されていて,おしゃべりで元気そうなお婆さん達が20名ほど集まっている。爺さんは,自分を含めて2-3名程度だ。日本は超高齢社会となり100歳以上が 9万5千人いるが,男女比はという質問があった。婆さんらは元気に答える。教室では黙ってしまう若者と大違いだ。答えは1-2割が男で8-9割が女というもの,婆さんら正解。うーむ,男性12%女性88%なのか

講師は,女性の長生きが多いのは皆さんのように活動的でぺちゃくちゃしゃべりし,コミュニティを形成する能力の高さからくるのだとのこと。うーん,確かに爺さんはコミュニケーションが苦手だ。人によるのかもしれないけれど。

厚生労働省の5年ごとに改定される食事摂取基準が,2020年版からその目的に「高齢者の低栄養・フレイル予防」をうたうようになった。そもそも用語としてもフレイルティからフレイルに変更された。ここでのフレイルの定義は「健常状態と要介護状態の中間に位置するもの」である。なお,高齢者の年齢区分も,従来の70歳以上から,前期高齢者65-74歳と後期高齢者75歳以上の2区分に詳細化されている。

食事摂取基準の対象は,,歩行や家事などの身体活動を行っている者であ り、体格〔body mass index:BMI、体重(kg)÷身長(m)2〕が標準より著しく外れていない者」だ。指標としてBMIが頻繁に登場する。自分の平均BMIは18.9であり,幽明の境目だ。高齢者のBMI基準も2020年度版からは若者より高く設定されて BMI=22,自分の場合体重 72 kg が必要なので,10 kgも足りない。

フレイルから元気な状態へは,がんばれば戻れるらしい。そのためには,(1) 筋量の増加のためにたんぱく質摂取量を増やし,(2) 筋力の増加のために筋トレをすること。適切なたんぱくしつ摂取量は,1.3〜1.5/kg/日 なので自分の場合 80g にも達する(食事摂取基準では60 g)。

たんぱく質の多い食品でコレステロールのリストとして挙げられたのが次のものだった。
とりささみ100g,ぶたもも肉100g,牛ひき肉100g,たまご1こ,まぐろ赤身5切れ(トロはダメよ),焼き魚1切れ,木綿豆腐1/2丁,納豆1パック,牛乳200mL,チーズ20g,ヨーグルト100g 等々。1食で 25gとれば3食で目標が達成できる。

後半には,女性も多かったので骨粗鬆症の話が中心になる。血液中には1%のカルシウムが定常的に含まれている必要があって,これを維持するためには1日に700mg程度のカルシウム摂取が必要だ(そのうち実際に吸収されるのは野菜20%小魚30%乳製品50%程度である)。
牛乳1本で1/3はまかなえる。小松菜,ひじき,じゃこ,豆腐,納豆もよい。このとき,魚とキノコを摂取してビタミンDも忘れずに。

ビタミンDの合成は日光にあたった皮膚で行われるため,若い子が日焼け止めクリームを塗りすぎるのもよくないとのことだった。将来の骨粗鬆症を招くことになる。


写真:天理市の栄養講座(2024.10.28撮影)k

2024年11月2日土曜日

フォルクスワーゲン

衆議院議員総選挙の後の政権枠組みの話で浮かれていると,目前に迫ったアメリカ大統領選挙ではトランプ優勢との声が聞こえてきた。それだけではない。

北朝鮮軍のウクライナ派兵は単なる傭兵問題ではなくて,6月に結ばれたロシアと北朝鮮の包括的軍事パートナーシップ条約に基づくものだと,そうなると「いずれか一方が武力侵攻を受けて戦争状態におかれた場合(もう一方の国が),遅滞なく保有するすべての手段を用いて軍事その他あらゆる援助をする」ため,もし北朝鮮有事が勃発するとそれは一気に韓国・北朝鮮・日本・米国・中国・ロシアを巻き込む軍事衝突に発展する危険性がある,ということを菅野完が指摘していた。


さて,フォルクスワーゲンだ。中国メーカーとのEV競争激化や欧州市場での需要減によって,1937年の創業以来初めてドイツ国内の主力3工場を閉鎖すると発表した。このニュースでNHKが労働組合と従業員で作る団体の代表という言葉を使い分けていたので,なんで?となった。
Q(koshix):
フォルクスワーゲンの工場閉鎖を巡るニュースで
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241028/k10014622371000.html
労働者を代表する団体」という言葉と「労働組合」という言葉が2種類区別されて用いられているのは何故ですか。

A(ChatGPT-4o):
「労働者を代表する団体」と「労働組合」という言葉が区別されて使われているのは、主に役割や対象の違いを強調するためです。それぞれの言葉が指す内容に微妙な違いがある場合があります。

1.労働者を代表する団体:この言葉は、労働者の利益を代表する広い意味で使われます。特定の組織を指すのではなく、労働者全体や一部のグループの権利や利益を代弁する組織や団体を広く指します。したがって、労働組合以外にも、例えば従業員代表委員会や企業内の労働者代表団体なども含まれる可能性があります。
2.労働組合:これは、労働者の権利や待遇を改善するために組織された正式な団体を指します。労働者が自主的に集まり、法律に基づいて認められた団体であり、交渉権やストライキ権などの法的な権利を持っています。

ニュース記事においてこの二つの表現が区別されている理由は、具体的な状況に応じた異なる団体や組織が関与している可能性があるためです。フォルクスワーゲンのような大規模企業では、労働組合だけでなく、労働者代表委員会(従業員代表など)も交渉に関与することがあります。従って、ニュースでは、どの団体が関与しているのかを明確にするために、このような異なる表現が使われていることが考えられます。

Q(koshix):
https://edition.cnn.com/2024/10/28/business/volkswagen-factory-closures-layoffs/index.html を踏まえると先ほどの回答はどのように修正されますか。
日本語に直して説明してください。

A(ChatGPT-4o):
今回のフォルクスワーゲンの事例では、**「労働者を代表する団体」は、主に「ワークスカウンシル(従業員代表委員会)」**を指していると考えられます。ドイツの企業では、ワークスカウンシルは法的に義務付けられた組織で、企業内部で従業員の意見を代表し、特に解雇や工場閉鎖などの重要な決定において経営陣と交渉する役割を持っています。

一方、**「労働組合」は、例えばIGメタル(IG Metall)**のような、賃金や労働条件の交渉を行う伝統的な組合です。労働組合はストライキや抗議活動を通じて、より広範な労働者の権利を守る役割を果たします。

フォルクスワーゲンの場合、ワークスカウンシル(ダニエラ・カヴァロなどが代表)は、会社内部での意思決定に関与しており、特に経営との交渉に焦点を当てています。一方で、IGメタルのような労働組合は、労働者の権利を守るためにストライキなどを準備しているという点で、異なる役割を持っています​。

このため、ニュースでこれらの言葉が区別されて使用されているのは、労働者の利益を守るために異なる立場やアプローチを取る組織が関与しているためです。

CNNに含まれる情報がNHKでは欠落しているためわけがわからなくなる。こんな細かな話が日々着実に積み重なって,モノを考えられない日本人が大量に生産されることになる。のかな?


写真:フォルクスワーゲンの工場(Wikipediaから引用)

2024年11月1日金曜日

年収の壁

年収の壁をめぐる議論が活発にされているが,あの玉木のいうことだからどうせ怪しいに決まっている!という予断と偏見を持ってニュースをみているので,あまり健全な態度とはいえない。少しくらいは勉強する必要がある。Gさんそれすら面倒なので,Perplexityに聞いてみるわ(ChatGPT-4oはイマイチだったので)。

Q(koshix):
年収の壁という言葉があります。パートで働く主婦などが,働きすぎると社会保険料や税金が課されることで,一定の収入以上の労働を抑制してしまう現象です。これについて,住民税,所得税,社会保険料,配偶者特別控除などの様々な壁の存在が指摘されています。また,一律に制度を変更すると,低所得者だけではなく高所得者の減税につながることで,国家財政への負担が恒久的に増大することも懸念されます。このような状況を踏まえて,その全体像を,できるだけ具体的,詳細,かつ客観的な視点で解説し,可能な改革案とその問題点を整理して説明してください。

A(Perplexity Pro):
年収の壁は、主にパートタイムで働く配偶者(多くの場合は主婦)の労働意欲に影響を与える現象です。この問題は、税制や社会保険制度の複雑な相互作用によって生じており、以下にその全体像を詳細に解説します。

年収の壁の種類と影響
年収の壁には主に以下の種類があり、それぞれが異なる影響を及ぼします。

100万円の壁
この壁は住民税に関するものです。年収が100万円を超えると、住民税が課税されます。これにより、100万円を少し超える収入を得ても、手取りが減少する可能性があります。

103万円の壁
この壁は所得税配偶者控除に関連しています。年収が103万円を超えると、以下の変化が生じます:
・所得税が課税されます。
・配偶者控除が適用されなくなり、配偶者特別控除に切り替わります。
これにより、世帯全体の税負担が増加する可能性があります。

106万円の壁
この壁は社会保険に関するものです。年収が106万円を超えると、条件(注:勤務先従業員数51名以上)次第で社会保険への加入が必要になります。社会保険料の負担が発生するため、手取り収入が減少する可能性があります。

130万円の壁
この壁は扶養(注:社会保険)に関するものです。年収が130万円を超えると、配偶者の扶養から外れ、自身で健康保険や年金保険に加入する必要が生じます。これにより、保険料負担が増加します。

150万円の壁
この壁は配偶者特別控除に関するものです。年収が150万円を超えると、配偶者特別控除が段階的に減額されます。これにより、世帯全体の税負担が増加します。

年収の壁がもたらす問題
1.労働意欲の抑制:これらの壁により、パートタイム労働者が収入を一定以下に抑えようとする傾向が生じ、潜在的な労働力が活用されない。
2.経済的非効率:能力や意欲があっても、制度上の理由で労働時間を制限せざるを得ない状況が発生。
3.ジェンダー不平等:主に女性がパートタイム労働に従事する傾向があるため、この問題は女性の経済的自立を阻害する要因となっている。
4.企業の人材活用の制限:企業側も、従業員の年収が壁を超えないよう調整する必要があり、人材の有効活用が難しくなる。

改革案とその問題点
1.配偶者控除の廃止(略)
2.壁の段階的な緩和(略)
3.社会保険料の負担軽減(略)
4.給付付き税額控除の導入(略)

結論
年収の壁の問題は、税制、社会保険制度、労働政策が複雑に絡み合った結果生じています。一律の制度変更は高所得者の減税につながる可能性があり、国家財政への負担増大も懸念されます。
したがって、改革にあたっては以下の点を考慮する必要があります:

1.段階的な制度改革:急激な変更を避け、影響を見極めながら段階的に改革を進める。
2.多角的なアプローチ:税制、社会保険、労働政策を総合的に見直し、整合性のある改革を行う。
3.所得再分配機能の維持:低所得者への配慮を忘れず、公平性を保つ。
4.労働市場の活性化:女性や高齢者の労働参加を促進する政策と連動させる。
5.財政への影響考慮:改革による税収への影響を慎重に検討し、持続可能な制度設計を行う。

これらの点を踏まえ、慎重かつ包括的な議論と検討が必要です。単純な制度変更ではなく、社会全体の利益を考慮した総合的なアプローチが求められます。


Q(koshix):
給与所得の課税対象についてのみ,基礎控除の合計を103万円から178万円に増やせばよいと主張している政党がありますが,その案の意味と問題点を具体的かつ詳細に指摘してください。なお,178万円という数字の根拠も理論的に解説してください。

A(Perplexity):
この政策提案は、給与所得者の基礎控除を現行の103万円から178万円に引き上げるというものです。この提案の意味と問題点、そして178万円という数字の根拠について詳細に解説します。

提案の意味 
基礎控除引き上げの目的
1.手取り収入の増加:基礎控除額を引き上げることで、より多くの収入が非課税となり、給与所得者の手取り収入が増加します。
2.「年収の壁」の緩和:現行の103万円の壁を大幅に引き上げることで、パートタイム労働者などの就労意欲を高める効果が期待されます。
3.消費喚起:手取り収入の増加により、消費拡大を促す狙いがあります。

178万円の根拠
この数字は、1995年からの最低賃金の上昇率1.73倍に基づいているとされています。つまり、 103万円 × 1.73 ≈ 178万円 という計算によって導き出されています。これは、基礎控除額を最低賃金の上昇に合わせて調整する考え方に基づいています(注:なんだよそれは,嘘かと思ったよ)。

提案の問題点 
1.財政への影響
基礎控除額の大幅な引き上げは、税収の大幅な減少をもたらす可能性があります。これは国家財政に重大な影響を与える可能性があります。
2.公平性の問題
給与所得者のみを対象とした控除額の引き上げは、他の所得形態(事業所得、不動産所得など)との間に不公平を生じさせる可能性があります。
3.社会保険制度との不整合
税制の変更だけでは、社会保険料の「壁」は解消されません。106万円の社会保険加入の壁や130万円の扶養からの離脱の壁は依然として残ります
4.高所得者への恩恵
基礎控除の一律引き上げは、高所得者にも同様の恩恵を与えることになり、所得再分配機能を弱める可能性があります。
5.労働市場への影響
178万円まで非課税となることで、パートタイム労働者がこの金額を超えないように就労時間を調整する新たな「壁」が生じる可能性があります。
6.最低賃金との連動の妥当性
最低賃金の上昇率を基礎控除額の引き上げに直接適用することの妥当性には疑問が残ります。最低賃金と基礎控除額は異なる経済的・社会的機能を持つため、単純な連動は適切でない可能性があります。
7.制度の複雑化
税制の一部分のみを大幅に変更することは、全体の税制をより複雑にする可能性があります。
8.他の控除との整合性
基礎控除のみを大幅に引き上げることで、他の所得控除(配偶者控除、扶養控除など)との整合性が取れなくなる可能性があります。

結論
この提案は、給与所得者の手取り収入を増やし、「年収の壁」問題に対処しようとする意図は理解できます。しかし、財政への影響、公平性の問題、社会保険制度との不整合、労働市場への影響など、多くの課題が存在します。
また、178万円という数字の根拠は最低賃金の上昇率に基づいていますが、この連動の妥当性には疑問が残ります。税制改革は、より包括的かつ慎重なアプローチが必要であり、社会保険制度や労働政策との整合性を考慮しながら、全体的な制度設計を行う必要があります。




図:年収の壁がわかる(日本経済新聞から引用)


P. S. 図では103万円で段差が発生しているが,1人分の所得税だけならば,控除額との差額に税率がかかって差額の1次関数分だけ減少するのであるから,階段関数にはならない。ただし,同時に生ずる扶養控除分についてはその限りではないため段差を産む。社会保険についてはしきい値を境に有限の負担がでるので,図のようなギャップが現われる。

[1]NHKによるまとめ:社会保障経済政策子ども・子育て