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2024年5月16日木曜日

教員の働き方改革

5月13日,中教審の特別部会(初等中等教育分科会 質の高い教師の確保特別部会 )が,「令和の日本型学校教育」を担う 質の高い教師の確保のための環境整備に関する 総合的な方策について(審議のまとめ) を答申した。黒い爪の部会長が,文部科学大臣に手交していた。

ニュースでは,教育公務員特例法じゃなくて公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の第三条の教育職員の教職調整額の4%が10%になる(そのかわりに時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給しない)というところだけ強調されていた。

審議のまとめのpdfファイル(59p,761kB)をGPT-4oに読み込ませて,要約をお願いした。

Q(koshix):
添付ファイルの内容を章ごとに簡潔に要約してください。

A(ChatGPT):
令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について

はじめに
概要: 文部科学大臣からの諮問を受け、質の高い教師の確保のための環境整備を目的とした特別部会の設立とその議論の経緯が述べられています。これに基づき、教師の働き方改革や処遇改善に向けた施策が提言されています。

第1章:我が国の学校教育と教師を取り巻く環境の現状
学校教育の現状:日本の学校教育の歴史や、国際的な学力調査での高評価が紹介されています。
対応すべき課題の複雑化:不登校やいじめの増加、特別支援を必要とする児童生徒の増加など、学校が直面する課題が複雑化していることが述べられています。
教師を取り巻く環境の現状:長時間労働や教師不足、メンタルヘルスの問題など、教師の労働環境の厳しさが指摘されています。

第2章:教師を取り巻く環境整備の基本的な考え方
教師の役割と専門性:教師が学びに関する高度専門職としての使命を持ち、自己研鑽を続ける重要性が強調されています。
養成・採用・研修の改革:教職課程の改革や教員採用選考試験の改善、教員研修の充実など、教師のキャリアを通じた学びの環境整備が提言されています。
環境整備の目的と方向性:教師の働き方改革や処遇改善、指導・運営体制の充実を通じて、教師の健康とウェルビーイングを向上させることが最終目的として述べられています。

第3章:学校における働き方改革の更なる加速化
改革の取り組み状況:これまでの働き方改革の取り組みやその成果、残された課題について説明されています。
業務の適正化の推進:学校・教師が担う業務の適正化を進めるため、業務の分担と協働の重要性が述べられています。

第4章:学校の指導・運営体制の充実
教職員定数と配置:教職員定数の改善や配置の在り方について述べられています。
支援スタッフの配置:支援スタッフの配置の在り方について議論されています。
質の高い教職員集団の形成:多様な専門性を持つ教職員集団の形成が求められています。

第5章:教師の処遇改善
これまでの経緯:教師の処遇改善に関するこれまでの経緯がまとめられています。
処遇改善の在り方:教師の処遇改善の具体策が提案されています。

第6章:環境整備の着実な実施とフォローアップ
環境整備の実施とフォローアップ:教師を取り巻く環境整備の着実な実施とそのフォローアップの重要性が述べられています。

おわりに
まとめ:教師を取り巻く環境整備の総合的な方策の重要性が再確認され、今後の取り組みへの期待が述べられています。


Q(koshix):
この提案の問題点を指摘してください。

A(ChatGPT):
この提案の問題点は以下の通りです:

1.教師の長時間勤務
概要:教師の長時間勤務が依然として解消されていない。
問題点:「働き方改革」が進められているが、実際の勤務時間の短縮が十分でないため、教師の健康や家庭生活に悪影響を及ぼす可能性がある。

2.メンタルヘルスの問題
概要:教師のメンタルヘルス問題が深刻化している。
問題点:精神疾患による病気休職者が増加しており、適切なサポート体制が整っていないことが課題となっている。

3.教師不足
概要:教師不足が深刻な問題となっている。
問題点:教師の採用倍率が低下し、必要な教員数を確保することが難しくなっている。これにより、教育の質が低下するリスクがある。

4.多様なニーズに対応するための支援不足
概要:不登校、いじめ、特別支援を必要とする児童生徒への対応が求められている。
問題点:多様な課題に対応するための支援スタッフや専門職の配置が不十分であり、教師一人ひとりの負担が大きい。

5.教師の処遇改善の遅れ
概要:教師の処遇改善が進んでいない。
問題点:教師の給与や福利厚生が他の職業に比べて低い場合、優秀な人材の確保が困難になる。また、処遇改善の具体的な施策が不足している。

6.働き方改革の実効性の低さ
概要:働き方改革の取り組みが教育委員会や学校によってばらつきがある。
問題点:地域や学校ごとに働き方改革の進捗に差があり、一部の学校では改革が十分に進んでいない。これにより、全国的な教育の質向上が妨げられる可能性がある。

7.教職の魅力向上の不足
概要:教職の魅力を高めるための施策が不足している。
問題点:教職の魅力を向上させるための具体的な施策が不十分であり、結果として教職志願者が減少し続ける可能性がある。 
これらの問題点を解決するためには、具体的な施策の導入と実行の徹底が求められます。また、各教育委員会や学校が協力して、全国的な改革を推進することが重要です。
 
Q(koshix):
上記の1〜7について優先順位をつけてください。また,問題点を解決するための具体的な提案をしてください。

A(ChatGPT):
優先順位付け
1.教師の長時間勤務
2.教師のメンタルヘルスの問題
3.教師不足
4.多様なニーズに対応するための支援不足
5.教師の処遇改善の遅れ
6.働き方改革の実効性の低さ
7.教職の魅力向上の不足 
具体的な提案
1.教師の長時間勤務
業務の適正化:教師が行うべき業務を見直し、事務作業や雑務を支援スタッフに任せる。例えば、教員業務支援員や学校事務職員を増員し、業務の分担を促進する。
ICTの活用:授業準備や管理業務にICTを導入し、効率化を図る。特に出欠管理や成績処理などの業務をデジタル化する。
勤務時間管理の徹底:教師の勤務時間を厳密に管理し、時間外勤務の上限を遵守する。超過勤務が発生した場合の対応策を明確にする。

2.教師のメンタルヘルスの問題
定期的なメンタルヘルスチェック:教師全員に対して定期的なメンタルヘルスチェックを実施し、早期に問題を発見する。
相談窓口の設置:メンタルヘルスに関する相談窓口を設置し、専門のカウンセラーや精神科医と連携する。
メンタルヘルスケアの研修:教師自身がストレス管理やメンタルヘルスケアの技術を習得できるよう、研修プログラムを実施する。

3.教師不足
採用試験の見直し:教師採用試験の内容やスケジュールを見直し、柔軟かつ効率的な選考を実施する。
臨時教員の確保:臨時教員の待遇を改善し、常勤教員と同等の福利厚生を提供することで、臨時教員の確保を図る。
教職課程の充実:大学と連携し、教職課程の内容を充実させ、教職志願者の育成を強化する。

4.多様なニーズに対応するための支援不足
専門スタッフの増員:特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの専門スタッフを増員する。
地域との連携強化:地域の福祉施設や医療機関と連携し、家庭や地域を巻き込んだ支援体制を構築する。
研修の実施:教師に対して特別支援教育や多様なニーズに対応するための研修を定期的に実施する。

5.教師の処遇改善の遅れ
給与体系の見直し:教師の給与を他の専門職と比較し、適正な水準に引き上げる。また、地域差や学校規模による格差を是正する。
福利厚生の充実:休暇制度や退職金制度の見直しを行い、福利厚生を充実させる。
キャリアパスの明確化:教師のキャリアパスを明確化し、昇進や昇格の機会を増やす。

6.働き方改革の実効性の低さ
実施状況のモニタリング:働き方改革の進捗状況を定期的にモニタリングし、改善が必要な箇所を特定する。
ベストプラクティスの共有:成功事例を全国で共有し、他の学校や教育委員会でも実施できるようにする。
現場の声の反映:教師や学校管理者の意見を積極的に取り入れ、実効性のある改革を実施する。

7.教職の魅力向上の不足
広報活動の強化:教職の魅力を発信するための広報活動を強化し、社会的な評価を高める。
教育現場の魅力化:教職の魅力を高めるために、教育現場の改善を進める。例えば、校舎のリニューアルや設備の充実を図る。
キャリア支援:教職志願者に対するキャリア支援を強化し、教師としてのキャリアパスを明確にする。 
これらの提案を実行することで、教師の働きやすい環境を整備し、教育の質を向上させることが期待されます。

この程度のことならば,中教審の特別部会など開かずに,直接生成AIの御宣託をお伺いしても変わらないのではないか。といいたいところだけれど,怪しいエコーチェンバー「世論」をすくい上げる危険性が大きいので要注意。
Q(koshix):
日本の学校教育における教員の働き方の問題点と解決法を考えています。
1.現状を分析しその大きな特徴となる現象を3点上げて下さい。
2.上記の問題現象が発生する根本原因を3点上げて下さい。
3.この問題点を解決するための鍵となる具体的施策を3点上げて下さい。
A(ChatGPT):
1.現状の分析と大きな特徴となる現象
a. 長時間労働
 教員が通常の勤務時間を大幅に超える時間まで働くことが多い。特に、授業準備、部活動指導、保護者対応などで遅くまで残業するケースが一般的です。
b. メンタルヘルスの問題
 教員のメンタルヘルス不調が増加しており、精神疾患による病気休職者が増えている。ストレスや過労が原因となり、仕事に対する意欲や能力が低下するケースが多いです。
c. 教師不足
 教員採用の倍率が低下し、必要な教員数を確保できない状況が続いている。これにより、授業の質が低下し、教育の効果が十分に発揮されないことが懸念されています。 
2.問題現象の根本原因
a. 業務の過多と複雑化
 教員が抱える業務が多岐にわたり、授業以外にも部活動指導や保護者対応、校務分掌など多くの業務を一手に担っているため、時間的・精神的な負担が大きくなっています。
b. 支援体制の不足
 教員をサポートするスタッフ(事務職員、カウンセラー、部活動指導員など)の数が不足しており、教員自身が多くの付随業務を処理しなければならない状況です。
c. 教職の魅力低下
 給与や福利厚生が他の専門職と比べて低い、働き方が過酷であるといった理由で、教職に就こうとする人が減少し、採用難が続いています。 
3.解決のための鍵となる具体的施策
a. 業務の適正化と分担の促進
 教員の業務を見直し、教育活動に専念できる環境を整える。具体的には、事務職員や支援スタッフを増員し、授業準備や評価業務、部活動指導などを分担させる。また、ICTを活用して業務の効率化を図る。
b. メンタルヘルスサポートの強化
 メンタルヘルスチェックの定期的な実施と、専門のカウンセラーによるサポート体制の確立。さらに、教員向けのストレス管理やメンタルヘルスに関する研修を実施し、予防的な対策を講じる。
c. 教職の処遇改善
 教員の給与水準を他の専門職と同等以上に引き上げ、福利厚生を充実させる。具体的には、給与のベースアップ、退職金制度の見直し、休暇制度の拡充など。また、キャリアパスを明確にし、教職の魅力を高める広報活動を強化する。 
これらの施策を実施することで、教員の働き方の問題を解決し、教育の質を向上させることが期待されます。

2024年4月8日月曜日

学校事故対応に関する指針

朝のNHKニュースで,文部科学省が学校事故対応に関する指針を改定したと伝えていた。

学校事故対応に関する指針【改訂版】という4.3MBのpdfのはじめに(1p)を読ませて200字程度でその内容を要約するよう生成AIに指示した。ChatGPT 210字,Gemini 415字(箇条書き),Claude280字,Perplexity 526字,CommandR+ 392字という結果が出た。条件をほぼ満たしたのは,ChatGPTだけれど,ここではわかりやすかったCommandR+のものを採用して,さらに人間が手を加えた(279字)。
文部科学省は、学校管理下での事件・事故への対応を向上させるため、平成26年度に有識者会議を設置し、調査やヒアリングを実施、平成28年に「学校事故対応に関する指針」が策定された。その後、被害児童や家族への支援が不十分であることや、死亡事故の報告漏れなどの課題が指摘された。そこで、令和4年度に「学校安全の推進に関する有識者会議」を改めて設置し、指針の見直しに着手した。令和6年3月に指針の改訂版がまとめられ、事前の体制整備や事故発生時の対応、心のケア、再発防止など、児童や教職員の安全を確保し、児童が安心して活動できる環境を整えるより実効性のある内容となった。
NHKのニュースでは,事故が発生した学校が直接文部科学省に連絡するようなフリップが示されて,そのような説明があった。設置者や教育委員会などが関与しないようなスキームがあるはずがないわけで,改訂版の指針を確認したら案の定だった。それは本質ではないかもしれないけれど,もう少し丁寧なニュースをつくってもらわないと,信頼性がまったく高まらないのだ。

テレビでは,有識者会議のズーム会議の様子が映っていたが,久しぶりに見る大阪教育大学学校安全推進センター長の藤田大輔先生の顔があった。藤田先生は,有識者会議の「学校事故対応に関する指針の見直しワーキンググループ」の主査でもある。


図:報告支援要請系統図(改訂版指針から引用)

2023年12月18日月曜日

モーリーの定理

真鍋さんのウェブサイトMIPOのブログには,算数・数学コラムというのがあって,おもしろい算額の問題などがしばしば取り上げられている。

で,先日モーリーの定理という,三角形の内角の三等分線がつくる図形が正三角形になるという問題を証明していた。なるほど。図形の問題は苦手なので,解析幾何学の手法でできないか考えてみた。

1辺と両端の2角を与えれば三角形は定まる。現れるすべての座標はその辺の長さに比例するので,辺の長さAB=1とする。∠A=$3\alpha$,∠B=$3\beta$,∠C=$3\gamma$とすると,$\gamma = \frac{\pi}{3}-\alpha-\beta$で定まる。結局全ての量が2つの角度$\alpha,\beta$で表される。

これは実は問題の対称性を損ねるので,標準解答と比較しても良策ではないのだけれど,乗り掛った舟なのでやってみる。


図:モーリーの定理の証明

まず三角形ABCの頂点Aを原点(0,0)とし,頂点Bを(1,0)とする。このとき頂点C$(p,q)$は,$y=\tan 3\alpha$と$y=-\tan 3\beta (x-1)$の交点として求まり,$(p,q) =\Bigl( \dfrac{\tan3\beta}{\tan3\alpha+\tan3\beta},\dfrac{\tan3\alpha \tan3\beta}{\tan3\alpha + \tan3\beta} \Bigr)$となる。

同様にして,∠の三等分線の交点として(P,Q,R)の3点求めればよい。

(1) ABからの三等分線の交点P
$y=\tan \alpha\ x \ \&\  y = -\tan \beta\ (x-1)\ $の交点は,
$(p_1,q_1) =\Bigl( \dfrac{\tan\beta}{\tan\alpha+\tan\beta},\dfrac{\tan\alpha \tan\beta}{\tan\alpha + \tan\beta} \Bigr)$

(2) ACからの三等分線の交点Q
$y=\tan 2\alpha\ x \ \&\  y = -\tan (3\beta+2\gamma)(x-p)+q\ $の交点は,
$(p_2,q_2) =\Bigl(\dfrac{p \tan(3\beta+2\gamma) + q}{\tan2\alpha+\tan(3\beta+2\gamma)},\dfrac{\tan2\alpha \{p \tan(3\beta+2\gamma)+q\}}{\tan2\alpha + \tan(3\beta+2\gamma)}\Bigr)$

(3) BCからの三等分線の交点R
$y=-\tan 2\beta\ (x-1) \ \&\  y = -\tan (3\beta+\gamma)(x-p)+q\ $の交点は,
$(p_2,q_2) =\Bigl( \dfrac{p \tan(3\beta+\gamma) -\tan2\beta + q}{\tan(3\beta+\gamma)-\tan2\beta}, -\dfrac{\tan2\beta\{(p-1) \tan(3\beta+\gamma)  +q\}}{ \tan(3\beta+\gamma) -\tan2\beta } \Bigr)$

これから3点の距離を計算すれば良いのだけれど,ちょっと人間の手には負えなかった。
Mathematicaで計算すると,なんとか確認することができた。

In[1]:= c[a_, b_] := Pi/3 - a - b

In[2]:= p[a_, b_] := Tan[3 b]/(Tan[3 a] + Tan[3 b])
q[a_, b_] := Tan[3 a] Tan[3 b]/(Tan[3 a] + Tan[3 b])

In[3]:= p1[a_, b_] := Tan[b]/(Tan[a] + Tan[b])
q1[a_, b_] := Tan[a] Tan[b]/(Tan[a] + Tan[b])

In[4]:= 
p2[a_, b_] := (p[a, b] Tan[3 b + 2 c[a, b]] + q[a, b])/(Tan[2 a] + Tan[3 b + 2 c[a, b]])
q2[a_, b_] := 
 Tan[2 a] (p[a, b] Tan[3 b + 2 c[a, b]] + q[a, b])/(Tan[2 a] + Tan[3 b + 2 c[a, b]])

In[5]:= 
p3[a_, b_] := (p[a, b] Tan[3 b + c[a, b]] - Tan[2 b] + 
    q[a, b])/(Tan[3 b + c[a, b]] - Tan[2 b])
q3[a_, b_] := -Tan[
    2 b] (((p[a, b] - 1) Tan[3 b + c[a, b]] + 
      q[a, b])/(Tan[3 b + c[a, b]] - Tan[2 b]))

In[6]:= (p1[a, b] - p2[a, b])^2 + (q1[a, b] - 
     q2[a, b])^2 - (p2[a, b] - p3[a, b])^2 - (q2[a, b] - 
     q3[a, b])^2 // Simplify

Out[7]= 0

In[8]:= (p2[a, b] - p3[a, b])^2 + (q2[a, b] - 
     q3[a, b])^2 - (p3[a, b] - p1[a, b])^2 - (q3[a, b] - 
     q1[a, b])^2 // Simplify

Out[9]= 0


[1]三角形の外角の三等分線の場合(時岡郁夫さん)

2023年12月15日金曜日

Duolingo

今年の春に始めた iPhoneアプリDuolingoでの韓国学習である。

最近は,朝起きて新聞とテレビのニュースをチェックした後に,Duolingoで韓国語のレッスンをするのが日課になっている。iPhoneの先週のアクセスログをみると,一日平均3時間のうち,Facebookが45分,Duplingoを30分,Pikmin Bloomが20分,GoogleとLineが15分ということになっている。

単語の表記と発音と意味,韓国語の和訳あてはめ,韓国語読み上げのハングルあてはめ,日本語の韓国語訳ハングルあてはめ,など15問ほどで1セットである。単語ごとにヒントを確認できるので,覚えていないあるいは理解できていなくても,勘だけで何となく答えられてしまう。いいようなわるいような。

ヒント頼りなので,ほとんど実力がつかない。ハチマン,毎日繰り返していると記憶に残る単語も少しはあるので,韓国ドラマを見ていても,以前よりは意識に引っかかる会話が増えてきた。


図:今年11月30日時点のDuolingoの成績(実はソコまで出来ていない)

2023年12月12日火曜日

四角形

三角形(3)からの続き

小学生の問題から離れられない。

長方形($a \times b$)があって,その1つの角が小さな長方形($p \times q$)の形に欠けている。この図形の面積を2等分する直線を求めよというものだ。問題では辺の長さの情報が与えられていない。どうするのかと思って解答をみた。それは,与えられたL型の図形を2つの長方形の組み合わせとみなし,それぞれの長方形の中心点を結ぶ直線を引けばよいというものだ。なるほど,小学生でも理解できる。この直線の図形内の中点を中心に,図形の角を越えない範囲で直線を回転させればそれらも解になる。

ところで,その欠けた部分が大きくなると,この方法ではうまくいかない。というのも直線で分割される角の欠けた側の領域が連結領域ではなくなり,バラバラになってしまうからだ。これを避けるためには,欠けた側と反対側の角を通る直線で,面積が等しくなるものを探せば良い。中学生レベルの問題になる。


図:直線APによる四角形の面積の二等分($\frac{a}{b}>\frac{p}{q}$の場合)

直線ACは四角形ABCDの面積をS1(△)とS2(△)に2等分するが,左図形から引き去る部分は台形CEFR,右図形では三角形CGRなので,S1(左) <  S2(右)となる。そこで,分割線をAPにずらせば,S(左)=S(右)となる点が見つかるはずだ。

ずらす距離PC=$x$とおいて立式すると,$2S_1 = b(a-x)-q\bigl\{ 2(p-x)+\dfrac{q(x-a)}{b}\bigr\}$,$2S_2 = (b-q)\bigl\{ a+\dfrac{x(b-q)+aq}{b}\bigr\}$となる。これを等しいとして$x$を求めると,$x=\dfrac{q(a q- b p)}{(b-q)^2}$と求まった。

めでたしめでたしというところだ。ところで,$\frac{a}{b}=\frac{p}{q}$でもとの四角形と切り欠きの四角形が相似となる。このため,最初の対角線が2等分線となって$x=0$になる。ということは,$x<0$の場合が出てくるということか。おかしいのでしばらく悩んだ。

良く考えると,この場合は,欠けた図形の角が対角線より右側になるので,P点はCG上に持ってきてCP=$y$と置く必要がある。すなわち,この場合は,$a$と$b$,$p$と$q$を入れ替えて同じ式を解くことになるので,$y=\dfrac{p(b p- a q)}{(a-p)^2}$とすればよいことになる。




2023年12月10日日曜日

PISA2022

PISA2018からの続き

OECD生徒の学習到達度調査(PISA)は,3年に1回実施されていた。新型コロナウィルス感染症の影響で,2021年の予定が1年延期されて2022年になり,その結果がこの度公表された。

PISA2022には,81か国・地域から約69万人が参加した。前回より2カ国ふえたのだが,トップだった中国の北京・上海・江蘇・浙江地域がはずれている。なぜか,生成AIのいくつかに聞いてみたがはっきりしない。日本からは,全国の高等学校,中等教育学校後期課程,高等専門学校の1年生のうち,国際的な規定に基づき抽出された183校(学科)約6,000人が参加して,2022年6月から 8月に実施された。

日本の順位(今回/前回)は,数学的リテラシー(1位/5位),読解力(2位/3位),科学的リテラシー(1位/2位)の3分野全てにおいて平均得点や順位が上昇した。コロナの影響で,全体の平均得点は下がったが,日本では,新型コロナウイルス感染症のため休校した期間が他国に比べて短かったことが影響した 可能性があるとの指摘がなされている。



図:PISAの平均得点の推移(国立教育政策研究所の報告から引用)

テレビで田中博之さんが,Facebookで,芳賀さんや豊福さんがコメントしていたけれど,思うところはあまりない。順位が低下していたらもわもわしていただろうか。そもそもPISAで一喜一憂しているところに問題があるのだろか。GIGAスクールの行く末の方がキニナルのか。はたまた,生成AIのインパクトのほうか。日々感受性が劣化しているのかもしれないけれど。

2023年12月9日土曜日

三角形(3)

三角形(2)からの続き

小学生向けの簡単な図形の問題を見かけた。a, b が与えられたときにx を求めれば良いというものだ。適当な補助線を引いてもわからなかったので,思わずピタゴラスの定理を使った複雑な方程式を立てて解いてしまった。

塾の先生のようなしゃべり方の人の解答をみると,どうやら,45度の三角形の解法パターンというのがあるらしい。そこで,問題を一般化したのが次の図である。これで,台形の面積の出し方や三角形の合同についての知識さえあれば,ピタゴラスの定理無しで問題が解けることになった。

日々,思考の水準が弱っていくのがわかる。そのうち小学生の問題も解けなくなりそうだ。


図:45度の三角形を含む簡単な問題

2023年12月3日日曜日

球形キャパシタ

球形キャパシタの問題を物理科学概説の中間テストで出題した。

教科書の例題と同じ単純な問題のつもりだったけれど,2つの球殻に与える電荷の記述を省略したため,アースの取り方によって話が変わるのだった。それが教科書の章末課題に書いてあったので,良く勉強した学生さんはそちらを参照していた。


図:球形キャパシタのイメージ

半径$a$と$b$の同心の導体球殻があり,それぞれに電荷$q_a$と$q_b$を与えたとき,それぞれの電位が$V(a)$と$V(b)$になったとする。内球殻の電荷がつくる電場は,$E_a=\dfrac{q_a}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{1}{r^2}\quad (a<r<b)$,であり,これによって誘導される電荷が外球殻の内面に$-q_a$,外面に$q_a$だけ生ずる。これによって,外球殻の外面には$q_a+q_b$の電荷が分布するので,この電荷が作る電場は,$E_b=\dfrac{q_a+q_b}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{1}{r^2}\quad (b<r)$となる。

これから,外球殻の電位は,$\displaystyle V_b(r) = -\int_\infty^r \dfrac{q_a+q_b}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{1}{r^2}\ dr = \dfrac{q_a+q_b}{4 \pi \varepsilon_0} \dfrac{1}{r} \quad (b<r)$ となり,$V(b) =  \dfrac{q_a+q_b}{4 \pi \varepsilon_0} \dfrac{1}{b}$
内球殻の電位は,$\displaystyle V_a(r) = V(b) -\int_b^r \dfrac{q_a}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{1}{r^2}\ dr = V(b) + \dfrac{q_a}{4 \pi \varepsilon_0}\dfrac{1}{r} -  \dfrac{q_a}{4 \pi \varepsilon_0}\dfrac{1}{b}$
$\therefore V(a) =  \dfrac{1}{4 \pi \varepsilon_0} \Bigl( \dfrac{q_b}{b} +  \dfrac{q_a}{a} \Bigr)$

(1) 外球殻が接地されている場合
$V(b)=0$より$q_b = -q_a$となる。$\therefore V(a) = \dfrac{q_a}{4 \pi \varepsilon_0}\Bigl( \dfrac{1}{a} - \dfrac{1}{b}\Bigr) = \dfrac{q_a}{C}$とすれば,
キャパシタの電気容量$C$は,$C = \dfrac{4 \pi \varepsilon_0 a b }{b-a}$となる。

(2) 内球殻が接地されている場合
$V(a)=0$より$q_a = -\dfrac{a}{b} q_b$となる。$\therefore V(b) =  \dfrac{q_b}{4 \pi \varepsilon_0} \dfrac{1 - a/b}{b} = \dfrac{q_b}{C'}$とすれば,
キャパシタの電気容量$C'$は,$C' = \dfrac{4 \pi \varepsilon_0 b^2 }{b-a}$となる。

このとき,$C' = C +  4 \pi \varepsilon_0 b$となって,外球殻をキャパシタと考えたときの電気容量とCとの並列接続の式となっている。

2023年11月18日土曜日

三角形(2)

三角形(1)からの続き

半径$r$の円が内接する直角三角形で,円の接点が斜辺を$a,\ b$に分割するものの面積が,簡単な表式 $S=ab$で与えられるので,ピタゴラスの定理を経由せずに幾何学的に説明できそうな気がする。


図:長方形への図形断片の埋め込み

そこで,一辺が$a,\ b$の長方形を対角線で分割した△AQB=$ab/2$に,前回の図における図形の断片がきれいに埋め込めるのではないかないかと思ってトライしてみる。2種類の三角形は底辺の$a, \ b$と高さ$r$をそのままにして頂点の位置をずらせばきれいにおさまる。すなわち,△BCQ=$ar/2$と△ACQ=$br/2$である。

長方形を対角線で分割した三角形△AQBからこれらの面積を除けば,薄い三角形△ABCが余る。したがって,この面積は,△ABC $= \frac{1}{2}\{ab -(a+b)r\}$である。前回の円を内接する直角三角形の面積条件は,$S=r(a+b+r)$だったので,△ABC $= \frac{1}{2}\{(ab -S) + r^2\}$となる。つまり,△ABC =$r^2/2$を満足する場合に$S=ab$となって,断片が長方形に収まることになる。

何だか回りくどい話になって,図形からすんなりと説明できたとはいいにくかった。上の例では,面積を保ったままA→Eに変形すれば,△ABC=△EBCになっているのだけれど,それは特別な場合である。

2023年11月17日金曜日

三角形(1)

三角形の面積を求めるという小中学生向けの問題があったので,ちょっと一般化してみた。逆行進化している自分のレベルにふさわしいかもしれない。

次のような直角三角形OABと内接円Cがあって,斜辺ABと円Cの接点をQとする。与えられているのは,AQとBQの長さであり,このとき直角三角形ABCの面積を求めるのが課題だ。


図:三角形の面積の問題

円の半径を$r$として三平方の定理から$r$の方程式を作れば簡単に解ける。この方程式は次の形になる。$(a+r)^2+(b+r)^2= (a+b)^2$。これを整理すると,$r*(r+a+b) = ab$となる。これから二次方程式の解の公式を使ってモチャモチャしていたのだけれど,その必要はなかった。

三角形OABの内接円の中心CからA,B,P,Q,R点と結ぶ線を切り離して並べ替えると,高さがrで幅が(r+a+b)の細長い長方形ができる。この長方形の面積$ r*(r+a+b)$がもとの三角形OABの面積と等しい。すなわち先ほどの式の右辺である$ab$が答えの面積になるのだった。

2023年11月16日木曜日

相似形

同志社大学田辺キャンパスの交隣館でおにぎりをほおばりながら,Facebookをみていたら,芳賀さんが,盛大に算数の教科書をディスっていた。

教科書にあるのは,相似の例題だ。校舎の高さを影の長さと相似の関係で求めたり,校舎を挟んで立っている2本の木の距離を,運動場の一点から見た角度を測って求めるといった問題だ。目的がその値を求めることなら,屋根から降ろしたロープの長さをはかるとか,学校の設計図面で確認するほうが早いだろうという主張である。みんなで便乗して,算数教育の在り方を批判していた。

そこまで,いじめなくてもよいのにと思ってしまう。自分がこどものときに読んだ「数のふしぎ・形のなぞ」では,ピラミッドの高さの図り方としてこの方法が説明されていた。ピラミッドの横に棒を立ててその影の長さと棒の長さの比を求めておく。ピラミッド頂上の影の長さに相当する距離を測って,先ほどの比を当てはめればピラミッドの高さが推定できるというものだ。

小学校の算数の時間に運動場で測量を行ったときは,確かに角度を正確に求めるのが難しかった。なので,気持ちがわからないこともない。しかし,この方法を理解しておけば,簡単にいろいろな量の概算ができるので,それはそれでよいのではないでしょうか。最も効率のよい方法だけに固執する必要はない。環境次第では,何かの役に立つこともあるかもしれない。

そんなことを考えながら,キャンパスを歩く学生さんを見ていたら,みんな自分の身長の1.3倍くらいの影をずるずる引きずりながら,スイスイ進んでいた。今ごろの太陽高度は南中時刻でも40度はないのだろう。ところが自分の視線の方向を変えると,短くなった影はお団子のように人の後に張り付いていた。そうだ,影を観察する方向によってその見かけの長さを制御できるのだ。

ということで,身長と影の長さが等しくなる方向を選択すれば,ややこしい計算なしに,目標とする高いものの高さがほぼ水平距離に置き換えることができる。それはそれで学びの成果になるだろうか?

図:高さ2の影が4のとき,方向によって長さ2にできる

[1]太陽高度(一日の変化)(CASIO高度計算サイト)

2023年10月13日金曜日

PBL

 PBLというのも紛らわしい言葉だ。対話型AIにきいてみよう。

Q;問題解決型学習(Problem Based Learning)と課題探究型学習(Project based Learning)の違いを詳しく教えてください。定義,適用学年,適用教科,意義,課題などを比較してほしいです。

ChatGPT,Bard,Bing のそれぞれが適当な答えを返してきた。ネットで人力検索してもサイトごとにマチマチな見解が示されている。そしてみんなそれに躍らされている。自分も踊っていた。そのせいで,「物理課題研究プロジェクト」なる学部科目を担当することになった。自業自得である。しかし,非常勤講師の自分は与えられた条件で,普通の物理学問題演習の時間をこなしていくことになるのだった。

仕方がないので,更問いを加えてみたところ,いちおうChatGPTの見解が得られた。
Q:「課題の設定者が教員か生徒か」「課題が教科限定的か学際的か」「評価のポイントはプロセスかアウトプットか」「期間は短いか長いか」という観点では,問題解決型学習(Problem Based Learning)と課題探究型学習(Project based Learning)の違いがどうなりますか。
A:以下は、問題解決型学習(PBL)と課題探究型学習(PjBL)の違いをそれぞれの観点で比較したものです。

課題の設定者が教員か生徒か:
PBL: 問題の設定者は通常教員であり、学習者に対して特定の問題を提供します。
PjBL: 学習者が自ら興味や関心に基づいてプロジェクトを選び、課題を設定します。

課題が教科限定的か学際的か:
PBL: 問題は通常特定の教科に関連しており、その教科における問題解決を中心に学習が行われます。
PjBL: 課題は学際的であり、複数の教科を組み合わせてプロジェクトを通じて学習が行われます。

評価のポイントはプロセスかアウトプットか:
PBL: 評価の重点は、問題解決のプロセス、つまり学習者がどれだけ効果的に問題に取り組んだかに置かれます。
PjBL: 評価はプロジェクトのアウトプット、つまり成果物やプロジェクトの完成度に焦点を当てます。

期間は短いか長いか:
PBL: 問題解決の期間は比較的短い場合が多く、特定の問題に対処する短期的な活動が一般的です。
PjBL: プロジェクトの期間は通常長く、複数の週や学期にわたって続く場合があります。

これらの要素に基づいて、PBLとPjBLは異なるアプローチを取ります。PBLは特定の問題に焦点を当て、その解決策を見つけるためのプロセスに重点を置きます。一方、PjBLは学習者の興味や関心を反映したプロジェクトを通じて、幅広い学際的な学びを促進します。

これはあくまでもChatGPTの見解 (もしかすると平均的な世論)であることに注意が必要。これにアクティブラーニングの定義をどうするか問題を加えるとさらに混乱は必至である。


[1]今、求められる力を高める総合的な探究の時間の展開(小学校編,文部科学省)
[3]今、求められる力を高める総合的な探究の時間の展開(高等学校編,文部科学省)

2023年9月22日金曜日

フィンランドの教育(2)

フィンランドの教育(1)からの続き

有馬さんが国立大学法人化にゴーを出した1998年の学習指導要領(「生きる力」と基礎基本)が,ゆとり教育のピークだった。

2000年,2003年,2006年のOECD生徒の学習到達度調査(PISA)では,日本の読解力が急速にランクを下げていた。2003年PISA調査の結果から,学習意識や学校外での学習時間が低水準であること,学習離れ,習熟度の低い層の増加,学力格差などの課題が浮き彫りになった(PISAショック)。

これによって,2008年の学習指導要領(「生きる力」と思考力・判断力・表現力の育成)では揺り戻しが発生し,授業時数が10%増やされた。

このころ,PISAの読解力,数学リテラシー,科学リテラシーで上位を占めていたフィンランドが日本の改革のモデルとされ,多くの教育関係者がフィンランドを訪問していた。フィンランドは,教員の質も高く,修士課程の修了が必要とされていたことも,後に民主党政権時の教職大学院の制度設計に影響を及ぼした。

当時の自分は,人口規模が500万人のフィンランドの制度をそのまま日本に適応するのは難しいのではないかとやや冷ややかに横目で眺めていた。

フィンランドと日本のPISA順位を並べてみたのが次の図だ。横軸の1-7は2000年から3年ごとに2018年までのPISA調査に対応している。


図:PISA国際順位の推移(2000-2018,フィンランドと日本)

東アジア地域の新規参入などで,両国とも順位を下げた部分もあるが。フィンランドの数学リテラシーが顕著にランクを落としているのが目に付く。また日本の読解力は一時盛り返したが,再びランクを落としている。まあ,ともにパッとしなくなったのだ。

フィンランド幻想が消えたとはいえ,そこまで貶さなくてもいいのにとは思う。

2023年9月21日木曜日

フィンランドの教育(1)

フィンランドの教育・文化省が, 現状をレビューした報告を2023年1月に出していて,その英文要約を見ることができる。これをChatGPTで更に要約して,DeepLで翻訳したものを次に示す。

フィンランドの教育・文化省は、フィンランドの教育・文化セクターの過去数十年の変遷に焦点を当てた初の「ビルドゥング・レビュー」を発表した。主なポイントは以下の通り:

歴史的概観: 1950年代から1990年代初頭にかけて、フィンランドの教育部門は大きな成長を遂げた。総合学校、高等教育の改革、高等教育の拡大により、より多くのフィンランド人が教育を受けられるようになった。1990年代初頭には、図書館や芸術機関のネットワークも充実した。

1990年代の課題1990年代には教育資金が削減され、若者の教育レベルの上昇が止まり、学習成果が低下した。図書館もまた、様々な芸術分野への助成が減少し、利用者の減少という課題に直面した。

最近の動き: 2010年代半ば以降、就学前義務教育が導入され、義務教育が延長された。特にコロナウイルス危機の際には、高等教育の機会も拡大した。2030年までに研究開発資金を増強する必要性についてはコンセンサスが得られている。

学習成果フィンランドでは2000年代前半、特に読解力と数学の学習成果が急速に低下した。しかし、国際比較では、フィンランドの学生の成績は依然として良好である。社会的背景や性別による学習成果の格差が拡大している。

教育レベル: フィンランド国民の教育レベルは低下しており、1978年生まれは最も教育水準が高い。しかし、最近の傾向では、より若い年齢層がこのレベルを上回る可能性がある。

教職: フィンランドの教職は年々尊敬を集めており、フィンランドの教育制度の学術的教育と国際的評価が重要な役割を果たしている。

研究開発: 研究者の数は、特に企業部門で急増している。大学も研究範囲を広げている。

公共図書館: 1990年代には公共図書館への資金援助が減少し、図書購入の減少や貸出者数の減少につながった。

文化・芸術: 文化分野は、雇用の減少など困難に直面している。しかし、映画など様々な芸術の観客は増加している。

スポーツ: 成人のスポーツ参加率は依然として高いが、学童の有酸素運動能力は低下している。自治体によるスポーツ施設の建設は、年々変動している。

学資援助: 学生支援:1990年代の不況以降、学生支援にかかる費用は減少している。

これが,いまさらながらネットで取り上げられて(フィンランド教育は失敗だったとフィンランド政府が公式に認めました), フィンランド教育をディスる輪が広がっている。まあ,こういう自己分析ができるだけよいと思う。日本の文部科学省や政府は自分の政策が間違っていたとは絶対に認めないだろう。

[1]OECD生徒の学習到達度調査(PISA)(国立教育政策研究所)

2023年8月22日火曜日

教育と倫理(6)

教育と倫理(5)からの続き

小学生のころ道徳の時間はもっとも苦手だったのに,高校の倫理は最も真剣に授業をうけていた。そんなわけで,倫理という言葉にはなぜか過剰反応してしまうのかもしれない。

そもそも教育基本法がよくないのである。2006年12月,第一次安倍政権で公布された改正教育基本法だけではなく,戦後まもない1947年3月に公布された教育基本法もである。

教育基本法の第1条が教育の目的であり,改正前後とも「教育は、人格の完成を目指し(めざし)」となっている。改正によって前文を含めてこのあたりも微妙に日本国憲法の精神や歴史を切り離すような改変が加えられたという問題もあるのだが,そもそも人格の完成のところで自分の違和感メータが振り切れるのであった。

人格とは?それは完成するものか。それは目指すべきものか。いきなり疑問符があふれ出す。自分の中で人格という言葉とその周辺に形成されている意味群が標準的ではないからなのかもしれない。人格者=偽善者じゃないんですか。人格が完成した大人を見たことがありますか。人格=心理学のパーソナリティではないですよね。などなど。

それ以上は真面目に調べていなかったのだけれど,教育基本法の成立過程でもかなりの議論があったようだ。そもそも教育基本法における人格は心理学的概念ではなくて哲学的概念である


文部科学省にある,昭和22年教育基本法制定時の経緯等に関する資料によれば,教育刷新委員会による教育基本法案要綱案(1946年11月29日)では,教育の目的として「教育は、人間性の開発をめざし、」となっていた。

これを審議した教育刷新委員会の第一特別部会のメンバーは,芦田均羽渓了諦天野貞祐務台理作関口鯉吉森戸辰男河井道島田孝一であった。当初の8月から9月の文部省案には人格の完成という言葉があったが,教育刷新委員会における議論の末にこれは人間性の開発に変更された。

ところが,1947年3月の文部省最終案では,人格の完成に戻ってしまっている。これには時の文部大臣の田中耕太郎の意志が大きく働いている。田中はカトリックの法哲学者で後に最高裁判所の長官をつとめている。

宮村悠介[1]によれば,
なお,田中はカトリックの自然法論を思想的背景としており,「人格」の理解にも宗教的な色合いが濃い.つまり「人格の概念」は,人間が「自己の中にある動物的なものを克服して,神性に接近する使命を担っていることを内容とする」のであり,「人格の完成」も,人間を超える完全な人格の模範を必要とするから,「超人間的世界すなわち宗教に求めるほかはない」.今日の教育基本法の「人格の完成」という表現の背後には,こうした宗教的な人格理解がある.
また,山口意友[6]によれば,
人格は自由と分離すべからざる関係にある。人間が本能、衝動、情欲等を制御克服し、道徳的に行動する場合において、自由であり、自主的である。・・・以上のべたところによって人格は、教育基本法第一条の前身ともいうべき教育刷新委員会の建議中にいわれている「人間性の開発」の人間性と同じ意義のものではないことがわかる。・・・人間性の開発という表現は現実の人間性を意味するものと誤解される懸念があるから、人格の完成を以て一層適当とするのである。(田中耕太郎『教育基本法の理論』72~78頁参照)
というわけだ。さらに,
このように人格の完成という目的達成のためには、道徳的自由、すなわち意志の自律の存在が必須となるのです。さらにカントは、『単なる理性の限界内における宗教』という著作の中で、人間の素質を、①「生物としての人間の動物性の素質」、②「生物であると同時に理性的な存在者としての人間性の素質」、③「理性的であると同時に引責能力のある存在者としての人格性の素質」の三つに区分します。ここで示された三つの素質は、教育基本法における教育の目的が「人間性の開発」ではなくて「人格の完成」となった理由を理解するには有用です。恐らく田中耕太郎もカントのこの3区分を知っていたのではないかとも考えられます。
このように,ある教育の目的が「人格の完成」だということは,その教育の本質が道徳教育だと表明していることに他ならない。だから,教育基本法改正で細かな外堀が全部埋められたことを問題にする以前に,そもそもの出発点がおかしかったのである。

いや,もちろんおかしくないという意見もあるのだろう。AIアシスタントの時代に,教育の本質として要請されるのは,再定義された道徳教育=市民教育以外にはないのかもしれない。とすればなおさら人格の完成という言葉は馴染まないし使いたくないものだ。


追伸:単純にいえば,"Education is the transmission of knowledge, skills, and character traits. " (Wkipedia)なのだ。なお,道徳教育(3)における我流の教育の定義ではキャラクター≒性格のことは全くふれていないかった。それは教育という意識的な伝達過程を経るべきものなのだろうか。

追伸2:そうか,田中耕太郎は,砂川事件の最高裁裁判長だったのか。もう最悪ですね。日本の戦後教育の出発点はこんなところにあるのだった。

[2]教育基本法資料室へようこそ(文部科学省)
[5]「人格の完成」の思想的含意(田中智志)


2023年8月21日月曜日

教育と倫理(5)

教育と倫理(4)からの続き

デジタル技術によって生徒や学生の学習活動情報が容易に取得できるようになった。例えば,LMSへのアクセス情報,資料の参照ページ情報や,教材動画の視聴情報などである。それだけではなく,CBTにおける視線情報などが考えられるが,このような身体的情報についてはさらに可能な範囲がひろがる。

身体的情報として,脈拍や体表面温度,手や身体や頭の動作運動情報などもセンサーで取得できるだろう。さらに下手をすると,尿や血液の化学成分とか脳波情報にまで至るかもしれない。それが学習支援につながるかどうかは仮説と検証の結果次第である。

これまで生徒の発話情報や動作情報は,教員が直接に見聞きして確認できていた。そこまでは問題ないが,それを録音や録画する場合には許諾が必要かもしれない。これらは生徒が意識的に制御できる身体=言語情報だ。ところで上記にあげたような,学習場面において自分が意識で制御できない身体的情報の取得はそもそも倫理的に許されるのだろうか。

個人情報保護法と同じような原則で考えれば良いのかもしれない。「目的明示の原則」「利用範囲の原則」「収集過程の原則」「真正情報の原則」「情報保護の原則」「過程公開の原則」「個人参加の原則」「管理責任の原則」がその基本原則である。
目的明示の原則
 個人情報を収集する際には,その利用目的を明確にし,その目的の範囲内でのみ情報を使用する。不必要な情報を収集しないよう努めることも含まれる。
利用範囲の原則
 収集した個人情報は,事前に明示または公表した利用目的の範囲内でのみ使用し,その目的外での利用や第三者への提供は原則として行わない。
収集過程の原則
 個人情報は,適切な方法で,利用目的を達成するために必要な範囲内で収集する。不正な手段や偽りの手段での収集は禁止される。
真正情報の原則
 収集した個人情報は,利用目的を達成するために必要な正確性と最新性を持つように努める。不正確な情報は適切に訂正や削除を行う。
情報保護の原則
 個人情報は適切に管理し,不正アクセス,紛失,破壊,改ざん,漏洩などのリスクから保護するための措置を講じる。
過程公開の原則
 個人情報の取扱いに関する方針や手続きを公開し,透明性を確保する。また,収集した情報の内容や利用目的などを適切に開示する。
個人参加の原則
 個人が自らの情報にアクセスしたり,訂正や削除を求めることができるような仕組みを提供する。これにより,情報の正確性や適切な利用を保証する。
管理責任の原則
 個人情報の取扱いに関する責任を組織全体で負う。組織のリーダーや管理者は,適切な管理や教育を行い,情報の適切な取扱いを確保する。
やはり個人参加の原則あたりがポイントかもしれないが,テクニカルな問題に帰着する。

そういえば脳波は40年以上前に,理科教育の松本勝信先生がやっていたのだった。一番センシティブなのは脳波かと思っていたら,すでにそれを使ったアプリまであった。例えば,脳波を用いた学習者のモーティべーションの可視化のようなもの。

[2]FocusCalm
[3]Muse2・・・瞑想フィードバック,ちょっと違う?

2023年8月20日日曜日

教育と倫理(4)

教育と倫理(3)からの続き

仲矢さん自身が,「もし居眠りするのであれば,それはその人に居眠りする理由が存在するのだ」として,居眠り検出器であることを否定しているのだが,一般には個人を特定した居眠り検出器のようにみられている。立ち歩きなどの問題行動検出器だとは説明しにくいし,実際それが授業支援に役立つというのは理解しにくいだろう。

そこで「これ国会で使ってください」という皮肉なコメントがつくことになる。


中学校時代の国語の教生の先生で,学期にわたってクラスに入ってくれた方がいた。度のきつい眼鏡をかけた先生だったが,もう名前も忘れてしまった。彼女が,授業を始める前に最初に全員に向かって話したのが,「私は寝ている生徒がいても起して叱ることはありません」ということだった。それぞれの生徒には色々な事情があって,授業中に眠ってしまうことがあるかもしれないけれど,それは認めますということだ。中学3年の東京修学旅行の最後の訪問地が羽田飛行場で,すでにやめていたその先生が久しぶりにみんなに会いに来てくれていた。


一方,豊福さんの原理主義的な主張もなかなかハードルが高い。インフォームドコンセントまではよいけれど,はたしてデータハンドリングを学習者当事者に任せることが可能なのだろうか。

テキストデータとしての学習履歴などは可能だと思うが,センサーから取得した生データのようなものはどうなるのだろうか。一律ONとOFF以外のケースはなかなか面倒なことになりそうだし,データの完備性は損なわれざるを得ない。

教育という営みの非対称性は認めるにしても,完全にイーブンな形は想像しにくい。それは,これまでの古い教育観に完全に染まった自分に学習者視点が欠けているからかもしれないし,あるいは過度なポリティカルコレクトネスのようにも思う。芦田宏直さんならまた別の物語を展開するだろう。

2023年8月19日土曜日

教育と倫理(3)

教育と倫理(2)からの続き

もう一度出発点に立ち戻ってみる。仲矢さんがこのシステム開発を始めたのは,同じ大阪教育大学の庭山和喜さんの研究がきっかけになっている。

その論文は,2020年度の日本教育心理学会の城戸奨励賞を受賞した,「中学校における教師の言語賞賛の増加が生徒指導上の問題発生率に及ぼす効果 ―学年規模のポジティブ行動支援による問題行動予防― 」である。公立中学校2年生を対象として,授業中の教師の言語賞賛回数の増加によって,生徒の授業参加行動が促進されることで, 相対的に問題行動は減少するのかについて検証したものだ。

その問題行動というのが居眠りではなくて,「授業中に複数の生徒が立ち歩いたり,離れた席の生徒間で私語をしたり,物を投げたりといった様子が観察されていた」というレベルのものであり,研究のためにはこれを定量的に記録する必要があったのだ。

ただし,研究遂行上の作業負荷としては,教員の言語称賛回数の記録の方が大きいので,教員の発話を全て記録してこれを分析するシステムを開発するほうが有効だったような気がするが,そのあたりの事情はわからない。

ともかく,このサーマルカメラAIシステムを分かりやすく説明するために居眠りの例を持ち出したため,話が面倒になっている。そもそも,研究段階では立ち歩く生徒数の定量的に把握することは意味があるのだけれど,これを一般に利用される授業支援システムとして考えるというのはどうもしっくり来ない。

(1) 一般論として,隠れたデータの可視化が授業改善に資することはあるだろう。
(2) サーマルカメラAIシステムは研究目的では有効な場合があると思う。
(3) しかしこれを常時使用することで授業改善につながるとは考えにくい。
   検出される問題行動は定量化以前の課題として教員に認識されているからだ。
(4) むしろ教室の常時監視状態を実現することが及ぼす影響のほうが気になる。
(5) これが生徒もしくは教員のパフォーマンスの評価に用いられる危険性は高そうだ。

庭山さんの論文の最後は次のようになっている。
また本研究では,問題行動の指標として,学校現場で日常的に記録されている生徒指導上の問題の記録をデータ化して用いた。これは,問題行動予防のための取り組みの成果を,学校現場内で常にモニタリングするために有効かつ比較的低コストなデータ収集方法である。児童生徒の問題行動予防のための効果的な取り組みが求められる中で,今後は学校内で日常的に運用可能なデータ収集システムを確立し,問題行動を予防するための組織的支援の効果について,実践研究を積み重ねていく必要がある。
これが影響したのかもしれないが,本質は個人ごとのテキスト形式ワークシートの共有化なので,今回の匿名化されたサーマルカメラAIシステム的なデータのことではないはずなのだけれど。

2023年8月18日金曜日

教育と倫理(2)

教育と倫理(1)からの続き

そこで次のような問いを,最近バカになってきているとあまり評判が芳しくないGPT-4(August-3)に投げてみてた。

Q:User
教室全体の様子を赤外線カメラにおさめて,学生や生徒が居眠りしているかどうか(個人までは識別しない)をAIによって(深層学習システムを用いて)画像解析し,これを授業改善に結びつけるシステムの開発に成功したという教員養成系大学の研究グループからの発表がありました。

これに対して,賛否両論があって議論が盛り上がっています。教育工学あるいは教育倫理学の立場から,このシステムの可能性をどのように評価すべきでしょうか。あるいはどのような問題点を抱えているでしょうか。具体的に箇条書きによって解説してください。
 
A:ChatGPT
このようなシステムには確かに多くの可能性がありますが、同時に多くの問題点も考慮する必要があります。教育工学や教育倫理学の視点から考慮すべきポイントを以下に箇条書きでまとめます。

可能性

1. 授業改善:生徒の反応をリアルタイムでキャッチすることで、教師が授業の内容やペースを調整する手助けとなる。

2. データ駆動の教育:長期的なデータ分析により、特定のテーマや時間帯に生徒の興味が低下する傾向などを発見できる。

3. 個人情報保護:個人を識別しないシステムであれば、プライバシーの懸念が少なくなる可能性がある。

問題点

1. プライバシーの侵害:個人を識別しないとしても、生徒の行動を監視することはプライバシーの侵害と見なされる可能性がある。

2. 圧力とストレス:このようなシステムが導入されると、生徒が常に監視されていると感じることでストレスを感じる可能性がある。

3. 評価基準の偏り:居眠りをする生徒が授業に興味がないとは限らない。体調や前夜の睡眠不足など、多くの要因が考慮されるべきである。

4. 技術的誤検知:AIの誤検知や技術的な制約により、正確なデータが得られない場合が考えられる。

5. 教育の本質:授業の質を生徒の居眠りの有無で判断することは、教育の本質から逸脱する恐れがある。

6. 倫理的な問題:教育現場での技術導入は、その目的や手段が明確である必要があり、適切なガイドラインや枠組みのもとで行われるべきである。

以上のように、このシステムの導入には様々な側面が考慮される必要があります。教育現場での技術の利用は、その利点とリスクを十分に評価し、関係者全員の合意のもとで慎重に進めることが求められます。

2023年8月17日木曜日

教育と倫理(1)

ことの発端は,8月3日の大阪教育大学の記者発表である。

その内容は,サーマルカメラのAI画像分析によって,生徒の活動状況(寝ているかどうか等)を判別して授業改善に利用しようというものだ。NHKの関西版ニュースにも「授業中の居眠りをAIで検出,大阪教育大学がシステム開発」として取り上げられていた。このご時世なのでなんであれ,大学がニュースに取り上げられるのは結構なのですが・・・。

さっそく反論があった。最も本質的なものの一つが,豊福晋平さんのFacebookのコメントツリーの中にある彼自身の発言だ。
テクノロジーは道徳のない増幅機である
学習者の学びを支えたいのか、それとも、相手の行動を好き勝手にコントロールしたいのか、テクノロジーは人の欲望をグロテスク化させる。 
この事例は開発者のかなりアレな学習観を暴露していて痛快ですらあるのだが、もっと踏み込んで言えば、大学広報として公式に扱う以上、組織の教育・学習観も所詮その程度のものということだ。

・・・途中のレスにもあったように、彼らの価値観は教師主導の授業改善がベースで(朝日新聞にはそう説明したんでしょう)、実はそこにあるデータ所有の非対称性や恣意的な解釈・権威付けが批判されているのに、それに気付けない。問題はそこにあります。

研究だから何でもイノセントでよいわけではなく、その背景や価値の方向付けにはこと自覚的であるべきで、倫理的・社会的にそれが許容されるのか否かについては余計に慎重であらねばならない、ということですね。 

これはぜひ覚えておいて欲しいのですが、学習者視点の欠如はかなり深刻な問題です。

データの取得・分析・フィードバックが学校のような非対称の関係性のなかで行われれば、インフォームドコンセントの欠如、データの強制取得、データの恣意的運用による不利益が生じる可能性があります。これはテストデータや学習履歴についてもまったく同じです。

学習者側の直接的なメリットがあること、データハンドリングを学習者当事者に任せることが条件になると思います。一方的にデータを吸い上げて授業改善は理由になりません。


一方,その他の様々な批判に対してFacebookの仲矢史雄さんは次のように語っている。
教育改革は教師だけの責任にしたり、学生の努力不足と決めつけてはならない。
本当に改善を進めるためには、客観的な観察と記録が必要で、これは細部にわたる長時間の作業を要求する。 
これまでは人間がその役割を担ってきたが、その作業負荷は大きすぎた。
現代の技術を活用して、これらのプロセスをデータ化することが望まれていた。
それは表面的な応用ではないという理解が必要だ。 
だれが特に居眠り検出装置のような短絡的な目的のためにこれを作るのだろうか。もし居眠りするのであれば、それはその人に居眠りする理由が存在するのだ。しかし、今回の取組が報道によって、分かりやすい部分だけ切りとられることは、メディアの性質として避けられない現実。 
もし私たちのプロジェクトがそのような切り取り方で紹介されることを嫌がるのであれば、情報を公開しなければいい。しかし、新たな取り組みが他の人々に利用されるためには、予想外の解釈をされる可能性を理解した上で、腹をくくって情報を公開しなければならない。道のりは遠い。

お二人ともを良く知っているだけになかなか考えさせられる。

仲矢さんは昔から附属で表情分析システムのようなことをやっていて,そのころの自分は深く考える前に「なかなか面白いですね」と応援していた。ただ,今回のシステムがどれほど価値があるのかはよくわからない。日立の研究者によるウェラブルセンサーによる長時間動作解析の可能性については,何年か前に読んだことがあって,たいへん面白いと思ったことがあるのだが。

自分が40-200人規模の大学の授業で「サーマルカメラシステム」を使えるとなったときに,果たして使うだろうか。居眠りしているかどうかは学生をみればわかる。授業のどの場面で集中が切れるかを細かく分析してなくとも,ある程度は直感的に全体像をつかみながら,テーマの選択や話の展開の改善にはぼんやりとつなげていた。いらないかな。

これがウェラブルセンサーであって,普通は見えにくい学生の活動情報を収集できるというのであれば,ちょっと面倒だが試そうと思ったかもしれない。しかしその場合,取得データを評価と結びつけたいという誘惑から逃れる自信はない。さらに,自分が大学管理者の側に立ったときに,これを教員の教育評価と結びつけようと積極的に主張し始めるかもしれない。地獄に続く道への第一歩。

豊福さんの「テクノロジーは人の欲望をグロテスク化させる」というのは自分に当てはめてみるとよくわかる。