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2024年9月9日月曜日

公益通報者保護法

今,話題の公益通報者保護法である。単純に考えると兵庫県側がアウトなのはほとんど自明に思われる。ところが,元総務官僚と顧問弁護士の一見それらしい答弁によって,新聞やテレビ等のマスコミの追求力はほとんど無効化されて,両論併記状態に持ち込まれてしまう。

兵庫県議会に設置された文書問題調査特別委員会地方自治法の百条委員会)は,正副委員長と理事5名を含み計15名で構成され,予算500万円で6月13日にスタートした。審議事項は,「令和6年3月 12 日付け元県民局長の文書に記載されている7項目の内容の真偽 に関連する事項」である。

9月5日には上智大学文学部新聞学科の奥山俊宏教授,9月6日には山口利昭法律事務所代表の山口利昭弁護士がそれぞれ参考人として証言されていたが,いずれも非常にわかりやすい話だった。ようは兵庫県は公益通報保護法に違反しているということだ。


話はかわるが,最近は,次のようなことになっている。検索は PerplexityGenSpark らしい。そこで,GenSparkで調べてみる。時間は少しかかるけれど,確かにちゃんとした引用がされている。
Q(koshix):
公益通報者保護法について

A(GenSpark):
公益通報者保護法について
公益通報者保護法は、労働者や退職者、役員が事業者の法令違反を通報した際に、その通報を理由として解雇や不利益な取扱いを受けることを防ぐための法律です。この法律の目的、保護対象、手続きおよび保護措置について以下に詳述します。

目的
公益通報者保護法の目的は、事業者の法令違反行為を早期に発見し是正することで、国民生活の安心や安全を確保することです。これにより、公益通報者が不利益な取扱いを受けることなく、安心して通報できる環境を整備します。

保護対象
公益通報者保護法の保護対象は以下の通りです
・労働者:正社員、派遣労働者、アルバイト、パートタイマー、公務員など。
・退職者:通報日前1年以内に雇用元または派遣先で働いていた者。
・役員:法人の取締役、監査役など。

手続きと保護措置
通報先
公益通報は以下のいずれかに対して行うことができます
・事業者内部:役務提供先またはその指定する者(社外弁護士や労働組合等)。
・権限を有する行政機関等:通報対象事実について処分や勧告等を行う権限を有する行政機関。
・その他の外部通報先:報道機関や消費者団体等。
保護要件
公益通報が保護されるためには以下の要件を満たす必要があります
・通報対象事実が生じている、またはまさに生じようとしていると信じるに足りる相当の理由があること。
・通報に不正の目的がないこと。
・必要な事項を記載した書面を提出する場合など。
保護措置
公益通報者は以下の保護措置を受けられます
・解雇の無効:公益通報を理由とした解雇は無効となります。
・不利益な取扱いの禁止:解雇以外にも降格、不自然な異動など不利益な取扱いは禁止されます。
・損害賠償請求の禁止:事業者は公益通報によって損害を受けたことを理由に公益通報者に対して賠償請求することはできません。

このように、公益通報者保護法は労働者や退職者、役員が安心して法令違反行為を通報できる環境を整備し、その結果として国民生活の安全と安心を守るための重要な法律です。

GenSparkによって,出典として挙げられたのは
(1)公益通報者の保護(厚生労働省)
(4)公益通報者保護法(e-Gov法令検索)
(5)企業も通報者も守ります! 公益通報者保護法(政府広報オンライン)

[2]公益通報ガイドブック(改正法(令和4年6月施行)準拠版)(消費者庁)

2024年8月30日金曜日

敵国人抑留

NHKクローズアップ現代で,「敵国人抑留」が取上げられていた。

日系人の強制収容(1942-1949)については,規模も大きく(12万人),レーガン大統領時代からバイデン大統領に至るまで米国政府が正式に謝罪したり補償したことがニュースでとりあげることが多かったが,日本での敵国人の抑留については十分には認知されていなかった。

日本では,1941年の真珠湾攻撃以降,連合国側の敵性外国人1100人ほどが,全国各地の教会,修道院,ミッションスクールの校舎など,数十ヶ所に抑留された。1ヶ所あたりは1人から50人ほどであり,数人規模のところも多かった。1943年にイタリアが降伏すると,イタリア人も抑留された。

NHKで取上げられていたのは,イタリア人の作家であるダーチャ・マライーニ(1936-)である。彼女の父は,東洋学者のフォスコ・マライーニ(1912-2004)といって,日本への留学後,京都帝大のイタリア語教師をしていた人物だ。彼女の家族は,1943年に名古屋の収容施設にスーツケース一つで連行され,収容施設を管理する警察官に酷い仕打ちを受けることになる。特に,食糧がなくて困ったようだ。米国の日系人の収容施設でも食糧はなかったが,広大な敷地の中の農地で自作することは可能だった。

その後,ダーチャさんら16人は,名古屋市内の空襲を避けるため,山あいの寺に移され,そこでは日本人とも良好な関係を築くことができた。



図:DALL-E3と格闘したがこれが限界だったイメージ


図:ImageFXに英語でお願いした場合のイメージ


[1]太平洋戦争下の「敵国人」抑留(小宮まゆみ)
[2]さまざまな色合いの抑留(バクストン・A・カーリー)

2024年8月25日日曜日

夫婦別氏

学士院からの続き

津田大介がtwitter(X)で(差別の温床のXを持続させる方向はなるべくやめてほしいが・・・),日本評論社法律編集部の以下のツイートを引用していた。
今週の #虎に翼 小ネタ🐯
寅子のモデル・三淵嘉子が、航一のモデル・乾太郎と再婚したのは1956(昭和31)年のことでした。当時、夫婦同氏はどう捉えられていたのでしょうか。
戦後民法改正で臨時法制調査会委員も務めた民法学者・中川善之助の著書『法学』に、婚姻に伴う改姓に関する記述がありました。
中川善之助先生は,金沢一中の先輩である。金沢大学の学長をされていたときに,金沢泉丘高校で生徒向けの講話をされたことがある。そこで述べられた普遍的な真理「私がこれからする話は,将来きっと忘れてしまうと思うけれど」の部分だけは憶えている。もちろん本論はきれいに消去されている。これに匹敵する自分の人生の真理は,子供のときに読んだマンガの一休さんが,茶わんを壊して池の鯉を食べてしまい,「形あるものは必ず壊れる,命あるものは必ず死ぬ」だけだ。

日本評論社の法学(中川善之助)から引用された文書をClaude 3.5 Sonnet で文字起ししてみると,精度は50%ほどしかなかったが,自力で補完した。

あるいはまた,氏すなわち苗字についても興味ある変化が認められる。旧法では,妻は婚姻によって夫の家,すなわち戸籍に入るとされ,妻は当然に夫の氏に改称させられた。夫が妻の氏に改める場合は,婿養子か入夫婚姻の場合だけであった。

 しかし,こうした妻が夫の氏に改称するという規範は,むしろ西洋的ないしキリスト教的のものであり,東洋の妻は,決して夫の氏を名乗らず,婚姻しても,生来の氏を称したものである。それは,氏が血統を表す称号である以上,結婚によって血統が改まるはずがないことの当然の結果でもあった。ところが西洋文明の流入につれて,夫婦は一つの氏を称すべきものであり,その一つの氏は,夫の氏でなければならぬという考えが,漫然と浸みこんで来た。同時にまた,氏そのものも,血統を示すというより,家族共同体の屋号のようなものに変わって来たため,人々はいつのまにか,夫婦の氏は,夫の氏一本にならねばならぬと考えるようになった。旧法は正にこの思想の上に規範を立てている。

 新法は,憲法のいう両性平等の原則にしばられて,夫婦の氏は,夫の氏でも妻の氏でもよく,そのどちらかに選択決定して,婚姻の際に届け出ろということにした。

 いかにも,この規定は両性に平等である。しかし,長い父系尊重思想に慣れた人々の常識では,夫婦の氏は当然夫の氏に統一すべきものということになる。したがって実際の結果は,旧法のときと,少しも変わらない。男はもちろん,女自身までもが,結婚後は夫の氏を称するのを当然と思い,また願望さえしているのである。

 私は,夫婦だからといって,氏を一つにしなければならぬ必要は少しもなく,夫は夫の氏を,妻は妻の氏を称すること,アジア古来の慣行通りであっていいと思うむしろそれこそ個人の尊厳の上にたつ婚姻共同生活の呼称上の在り方だとも思う。しかし今日はまだ,日本の男も女も,一方には西洋人が古くからのキリスト教的伝統に従って夫婦同氏の原則を守っているに安心し,他方では,自分たちの胸底に残る家父長制意識に支えられて,夫婦別氏ということを考えないようである。人々に法的確信が浦いて来ない間は,法規範も生れて来ないし,生れても育たないのだから,その意味で,新法の規定を非難する積りは,私にないが,近い将来には問題となるべきことだと思う。(中川善之助,法学から引用)

というわけで,自民党等の親米宗教右派やその取り巻きのネトウヨがSNSにばらまいている「日本古来の」という修飾語で,夫婦別氏制度を否定する言説は,間違っているわけだ。が,そんなことを指摘されてもびくともしないのは,天皇制=象徴的家父長制を錦の御旗として振り回しているということからくるのかもしれない。それが日本社会の女性差別につながっているのだけれど,自分の身体にもその空気は染みついているので困ったものである。

P. S. 正式には「選択的夫婦別氏(べつうじ)制度」である。

[2]氏姓制度(Wikipedia)

2024年7月15日月曜日

女帝 小池百合子:石井妙子

女帝 小池百合子(2)からの続き

4年前に出版されたときには立ち読みだった,石井妙子の「女帝 小池百合子」,都知事選挙中にkindle割引サービスがあったので,ポチってしまった。

立ち読みの記憶と,この本が様々なSNSに取上げられたときの派生情報から,過去の物語のおさらいのような読み方ができた。実際,石井は次のように考えている。
彼女がキャスターから政治家に転じ、東京都知事に上り詰めた平成という30年間を、小池氏という人物を通じて描けるのではないか。小池氏という政治家をここまで押し上げたのは、小池氏自身の罪なのか、この時代の私たちの罪なのか? そういう視点でなら本にできるという感じはしていました。
日本新党におけるポピュリスト政治家小池百合子の誕生から,前々回の都知事選を経て,希望の党騒動で日本の野党中核勢力を破壊して,2020年の都知事選直前までの歴史を,小池を軸としてなぞるという読書体験だった。その中で,謎のまま終っている水田昌宏の話だけが,微妙に浮いていた。韓国ドラマならば続編ができるやつだ。

また,石井の執筆のきっかけとなった,カイロ時代の同居人の北原百代さんや,小池によって足蹴にされたさまざまな人々への共感が,執筆動機の背景にあることは間違いないと思う。

問題は,斎藤美奈子香山リカ井戸正枝による,ルッキズム+性差別批判をどう受け止めるかだ。もちろん,文庫版=kindle版では,仮名だった早川玲子が北原百代という本名で登場し,彼女自身の語りはYouTubeで聞けるようになったという違いはあるが,彼女らはそれでも主張は変えないだろう。まあ,なんだか言い掛かりのようなコメントもあるのだけれど。

しかし,何をどう考えても,自分は彼女ら批判派の意見に共感することはできなかった。4年前には違和感が残った石井さん側の物語の紡ぎ方に肩入れしてしまう。この本は,小池百合子への悪意というよりむしろ,小池の凄さを浮かびあがらせる結果になっていると思うからだ。だって,ここまで政治的に生き延びている小池は,細川にも小沢にも小泉にも安倍にも勝っているのだから。そんな人いますか。

Q(koshix):
リベラルな論客だと思われていた斎藤美奈子が2020年に石井妙子の著書「女帝小池百合子」を痛烈に批判にした理由がよくわかりません。なにが彼女をそうさせたのでしょうか。また,逆に石井の著書を絶賛していたリベラル派の男性論客のどこに問題があるのでしょうか。小池百合子をどう捉えればよいのでしょうか。

A(Perplexity PRO):
プロサーチ
・リベラルな論客だと思われていた斎藤美奈子の背景を調べる
・石井妙子の著書「女帝小池百合子」の内容を調べる
・斎藤美奈子が石井妙子の著書を批判した理由を調べる
・石井妙子の著書を絶賛していたリベラル派の男性論客の見解を調べる
(回答は略)

Q(koshix):
政策や実績をみても,小池のやってきたことに問題が多いというのは,石井の著書をみるまでもなく,多くの事実が蓄積され,それを我々は目にしていると思います。小池は,カタカナ語を多用し,キャッチフレーズ政治にかまけ,マスコミを誘導し,広報戦略に長けているというのは,ネット上の様々な人物の証言をつなぎあわせてもでてきます。彼女の政策的キャッチフレーズの核をなす,情報公開についても,実際に東京都が行っていることは,その真逆であり,情報を隠蔽しながら,非民主的独断的な振舞いをしているのはあきらかではないでしょうか。あるいは,小池に踏みつけられ,欺かれた多くの市井の人々の声をきけば,どうしても小池を単にフェミニズムの観点だけから擁護する立場が理解できないのです。

A(Perplexity PRO):
プロサーチ
・小池百合子の政策や実績について問題点を検索する
・小池百合子のコミュニケーション手法について情報を検索する
・小池百合子の情報公開や透明性に関する問題点を検索する
・小池百合子に対する一般市民の声を検索する
(回答は略)

Q(koshix):
それらを踏まえて,斎藤美奈子の主張がなぜ発生しているかを分析してください。

A(Perplexity PRO):
プロサーチ
・斎藤美奈子の主張の背景を理解する
・斎藤美奈子の小池百合子に対する批判の内容を分析する
・齋藤の批判と小池の政策・実績との関連性を明らかにする
回答
斎藤美奈子の主張が生まれた背景には、以下のような要因があると分析できます:
ジェンダーバイアスへの敏感な視点
 斎藤は長年フェミニズム批評の第一人者として活動してきました。そのため、『女帝 小池百合子』の内容に潜むジェンダーバイアスや性差別的な表現に対して、特に敏感に反応したと考えられます。
リベラル派知識人の盲点の指摘
 斎藤は、自身もリベラル派として知られていますが、同じリベラル派の男性知識人たちが本書を無批判に絶賛していることに違和感を覚えました。これは、リベラル派内部にも存在するジェンダーバイアスや、政治的党派性による批評眼の曇りを指摘する意図があったと推測されます。
ステレオタイプな女性描写への批判
 斎藤は、本書が小池百合子を描く際に用いている「女を売りにしている」「媚びを売って地位を得た」といった表現が、能力のない男性が口にする典型的な悪口と同じであると指摘しています。これは、女性政治家を評価する際のステレオタイプな見方に対する批判です。
個人的な物語の過度な強調への懸念
 斎藤は、社会で活躍する女性を描く際に、個人的な動機や過去のトラウマなどを過度に強調することで、その人物を矮小化していると指摘しています。これは、女性リーダーの能力や業績よりも個人的な背景に注目してしまう傾向への警鐘です。
政策批判と人格批判の混同への警告
 斎藤の批判は、小池百合子の政策や実績に対する批判と、個人的な属性や背景に基づく批判を明確に区別する必要性を示唆しています。政策や実績に対する批判は正当であっても、それが性差別的な表現や個人攻撃に陥ってはならないという主張です。
メディアリテラシーの重要性の強調
 斎藤の主張は、ベストセラーとなった本書の内容を批判的に読み解く必要性を示しています。これは、メディアリテラシーの重要性を強調するものであり、特に政治的な文脈において重要な視点です。

斎藤美奈子の主張は、単に一冊の本を批判するだけでなく、社会に潜在するジェンダーバイアスや、政治的党派性によって曇らされた批評眼、そしてメディアリテラシーの重要性を広く問いかけるものだと言えます。
P. S. この答えに自分が納得できたかどうかは別にして,Perplexity PRO は何かを調べようとしたときには最適の生成AIだとおもう。事実に基づいたこのような整理は,他者の追随をゆるさない。Claude 3.5 Sonnet は言葉遣いは丁寧で,表現力にも優れているが,大きなテキストを読み込むことができない。それが添付できるのは,ChatGPT-4oであり,プロンプトをさぼるとワンパターンだけれど,DALL-E3のイメージも生成してくれる。



2024年7月5日金曜日

角川人質司法違憲訴訟(2)

角川人質司法違憲訴訟(1)からの続き

記者会見では,弁護団から,訴状は公開されているので見てくださいとのことだった。印鑑を捺して個人情報などを黒塗りしたものをスキャンした形のpdfファイルになっている。全108ぺージの訴状の目次は以下の通り。
はじめに
請求の趣旨
請求の原因
 第1 当事者
 第2 原告が受けた人質司法による被害
 第3 人質司法の運用
 第4 人質司法の実態
 第5 人質司法が違憲であり国際人権法違反であること
 第6 検察官の逮捕状請求及び勾留請求が違憲・違法であること
 第7 裁判官の逮捕状発付及び勾留決定の違憲・違法
 第8 検察官が身体拘束を継続させたことに関する違法
 第9 裁判官による保釈請求却下の違憲
 第10 人質司法の運用違憲
 第11 損害
 第12 結語

(1) ChatGPT-4oとClaude 3.5 Sonnetはこのpdfファイルを読むことができなかった。OCRを使うように指示してもだめだった。そこで,macOS上のPDF Expertを使うとテキストファイルに変換することができたので,このpdfファイルをChatGPT-4oに読ませることで次の結果が得られた。
Q(koshix):
添付の訴状の内容を整理して教えてください

A(ChatGPT-4o):
添付された訴状は、原告である角川歴彦氏が日本の「人質司法」による不当な身体拘束や人権侵害を受けたとして、国家賠償を求めるものです。以下に内容を整理します。

訴訟の概要
・事件名:国家賠償請求事件
・訴訟物の価額:2億2000万円
・貼付用印紙額:68万円
原告と被告
・原告:角川歴彦氏(元株式会社KADOKAWA会長)
・被告:日本国

訴訟の背景
1.拘束の経緯:
・角川氏は、東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー選定に関する贈賄容疑で逮捕起訴されました。
・2022年9月14日に逮捕され、東京拘置所に収容されました。
・その後、複数回の保釈請求がすべて却下され、226日間にわたり身体拘束を受けました。
2.人質司法の問題:
・「人質司法」とは、無罪を主張する被疑者が長期間にわたり拘束されることで、罪を認めさせる実務運用を指します。
・角川氏の場合も、健康状態が悪化する中で何度も保釈請求が却下され、結果的に多大な苦痛と損害を被りました。

主な人権侵害と被害
1.身体拘束による人権侵害:
・角川氏は拘置所内で劣悪な環境に置かれ、健康状態も悪化しました。
・高齢でありながら適切な医療を受けられず、心房細動などの持病が悪化しました。
2.防御権の侵害:
・拘束中に十分な防御準備ができず、検察官の取調べに応じざるを得ない状況でした。
・証拠収集や弁護士との協議が制限され、十分な防御が困難でした。
3.社会活動の自由の侵害:
・身体拘束により、家族や友人との時間、経済活動が制限されました。
・経済人としての活動を断念せざるを得ない状況に追い込まれました。

訴訟の目的
この訴訟は、角川氏が「人質司法」の問題を明らかにし、二度と同じような悲劇を生まないための公共訴訟として提起されました。憲法や国際人権法に基づき、日本の刑事司法の現状を問い直すことを目的としています。

求める判決
・被告に対し、2億2000万円及び令和5年4月27日から支払い済みまで年3分の割合による金員の支払いを求める。
・訴訟費用は被告の負担とする。
このように、訴状は角川氏が受けた人質司法による被害と、その背景にある日本の刑事司法の問題を詳細に述べ、国家賠償を求めるものです。
ほぼ正しい答えがでてくる。

(2) Perplexity PRO では,PDF Expertに通す前のスキャンpdfファイルを読み込ませると,多少時間はかかるものの,勝手にOCR変換してほぼ正しい読解を行うことができる。すごい。
Q(koshix):
添付の訴状の内容を整理して教えてください。
訴訟の概要,原告と被告,訴訟の背景はどうですか。

A(Perplexity PRO):
訴訟の概要、原告と被告、および訴訟の背景は以下の通りです:

訴訟の概要
この訴訟は、いわゆる「人質司法」に対する国家賠償請求訴訟です。原告は、長期間の身体拘束によって被った精神的苦痛や社会的・経済的損失に対する賠償を求めています。具体的には、慰謝料2億円と弁護士費用2000万円の合計2億2000万円を請求しています。

原告と被告
・原告:角川歴彦氏(KADOKAWAの元会長)
・被告:国(日本政府)

訴訟の背景
1.逮捕・勾留の経緯
・角川氏は2022年9月に逮捕され、約7か月間勾留されました。
・2023年4月27日に保釈されるまで、長期間の身体拘束を受けました。
2.人権侵害の主張
・原告は勾留中に健康状態が悪化し、死の淵に瀕する経験をしたと主張しています。
・保釈請求が繰り返し却下され、身体的・精神的苦痛を受けたとしています。
3.人質司法の問題
・日本の刑事司法制度では、被疑者が自白しない限り長期間拘束されることが多く、これが「人質司法」として批判されています。
・原告は、この人質司法によって基本的人権と尊厳を侵害されたと主張しています。
4.違憲・違法性の主張
・原告は、人質司法が憲法や国際人権法に違反していると主張しています。
・国家賠償請求権(憲法17条)および自由権規約9条5項、国家賠償法1条に基づいて賠償を求めています。

この訴訟は、日本の刑事司法制度、特に長期勾留の問題を提起し、その改善を求める意図も含んでいると考えられます。原告は、自身の経験を通じて人質司法の問題点を指摘し、刑事司法制度の改革を促すことを目指しているようです。
これもほぼ正しい結果だ。最初の問いではすこし抽象的な答えを出していたが,補完可能だった。


写真:人質司法違憲訴訟弁護団(弁護士ドットコムから引用)

[1]「人質司法」の解消を求める意見書(日本弁護士連合会)

2024年7月4日木曜日

角川人質司法違憲訴訟(1)

 角川歴彦(1943-)が,東京オリンピンクのスポンサー契約を巡る贈賄事件で,2022年9月に逮捕され,東京地検から贈賄罪で起訴されたとき,そんなものかとぼんやりニュースを聞いていた。


2024年6月27日,角川歴彦は,無罪を主張するほど身柄拘束が長引く「人質司法」によって精神的苦痛を受けたとして,国に2億2000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。その記者会見の様子が流れていたが,弁護団がすごい顔ぶれだった。しかし,マスコミでの取り扱いは,ごくごく小さなものだった。
村山浩昭:静岡地裁の裁判長として袴田事件の再審開始決定
弘中惇一郎:元自由人権協会代表理事,村木厚子事件
喜田村洋一:自由人権協会代表理事,ジャニーズ文春訴訟事件
海渡雄一:日弁連国際人権条約WG,NPO監獄人権センター代表
伊藤真:伊藤塾塾長
平裕介:行政法研究
西愛礼:元裁判官,著書『冤罪学』
水野遼太:法律事務所ヒロナカ
玉蟲由樹:日本大学法学部教授。専門は憲法学,著書『人間の尊厳保障の法理』
記者会見には,明浄学院事件で冤罪被害にあい,無罪が確定した山岸忍(プレサンスコーポレーション元社長)も並んで参加していた。

角川歴彦は226日間拘束された拘置所の中で体調を崩し,車椅子状態で保釈されることになるが,途中で診断された医師にあなたは死ななければここから出られないといわれたそうだ。

日本の人質司法は酷いものであり,ウィシュマさん死亡事件における名古屋出入国在留管理局などの入管行政と同じ根を持っている。理性的,客観的な判断を無視し,情緒的な監獄法時代の残滓と組織の面子と慣性の法則にのみドライブされるシステムが社会の根本に染みついて,日本の閉塞感を招いているように思える。



図:角川人質司法違憲訴訟(人間の証明ホームページを引用)

2024年5月3日金曜日

社会復帰促進センター

衆議院補欠選挙の立憲民主党3勝,自由民主党3敗,日本維新の会2敗,小池-都民ファ1敗を受けて,菅野完横川圭希DELIあかたちかこちだいの振り返り番組で,少し話題になったのが,社会復帰促進センター

あかたちかこによれば,亀井亜紀子の地元の島根県では,疲弊する地方の雇用創出のために,普通は反対運動がおきる刑務所(島根あさひ社会復帰促進センター,2008-)の誘致運動さえ起きていたという話だった。

時は2006年(平成18年),小泉内閣から安倍内閣にバトンタッチされた年。新自由主義的な政策の核として,郵政民営化,構造改革特と並んで競争の導入による公共サービスの改革に関する法律が制定された。その中で,特定公共サービスのひとつとして,第三十三条の三 (刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律等の特例)がある。これによって,PFI事業による一部民間委託の刑務所が可能となった。社会復帰促進センターの名前で,島根あさひ以外にも,美祢社会復帰促進センター(山口県,2007-),播磨社会復帰促進センター(兵庫県,2007-),喜連川社会復帰促進センター(栃木県,2007-)が特区指定で実現している。

武器や手錠等の特殊な物品を除いた施設など,ほとんどの設備・物品の所有者は民間事業者のものである。しかし,職員が増員されるわけでもなく,刑務所民営化の先進国の米国では,民営化によって利益を受ける集団( 産獄複合体)が形成され,集団の意を受けた厳罰化が進んだという指摘があるとWikipediaには書いてあった。恐ろしや。


写真:島根あさひ社会復帰促進センター(Wikipediaから引用)





2024年3月13日水曜日

ツイッター買収の波紋(2)

ツイッター買収の波紋(1)からの続き

NHKの番組では,PBSフロントラインのディレクターであるジェイムズ・ジャコビーが関係者へのインタビューを重ねていく。そのなかで焦点化していくのが言論の自由の問題である。
合衆国憲法修正第1条(1791)は,
連邦議会は、国教を樹立し、若しくは信教上の自由な行為を禁止する法律を制定してはならない。また、言論若しくは出版の自由、又は人民が平穏に集会し、また苦痛の救済を求めるため政府に請願する権利を侵す法律を制定してはならない。
ということで,連邦議会に対する制限を規定している。これは,私企業が運営するネットコミュニティを対象としたものではない。ところが,ネットメディアは政府と同じもしくはそれ以上の力を持つようになったのではないかというものだ。

Twitter社が,選挙結果の改竄があったと主張するフェイクニュースやヘイトスピーチを制限したことに対して,米国の共和党や親トランプ派がこぞって異議をとなえた。それだけにとどまらず,親トランプメディアを使って,トランプ大統領補佐官がTwitter社の担当者を個人的に糾弾するにまで至った。まったく酷い話だ。

イーロン・マスクによるTwitter買収後は,永久凍結されたトランプや他のヘイターのアカウントは復活されることになった。


同じ構図が,週刊文春の記事についても指摘されることになる。性被害にあった弱者を支えるという名目で,週刊誌が「強者」を越える力を持っているのではないかという話だ。これは,今に始まったことではなく,昔(1978-)からマスコミは第四の権力とよばれていた。

しかし,その様相は変化している。新聞や雑誌の発行部数の構造的な減少とともに,週刊文春などが突出してスクープを追っているように見られる事態が発生している。テレビなども含めてほとんどのマスコミは,意識的もしくは無意識的な権力迎合へと傾いている(資本主義システムの中では当然の帰結かもしれないが)。そして,わずかなスクープは,無責任で抑制の効かないSNSによって大きく増幅されることになった。

一方で,あれもこれもまとめてフェイクニュースというレッテルをはって制限しようという権力側からの動きがある。ファクトチェックという言葉の嘘っぽさ。どうなることか。

2024年2月1日木曜日

曖昧な弱者

1月30日の日経朝刊の経済教室の伊藤昌亮(1961-)の記事が目を引いた。

「弱さ」を競い合う社会 「曖昧な弱者」存在認識をという表題である。



図:今日の左右対立の構造(伊藤昌亮 日本経済新聞から引用して改変)

日本経済新聞に掲載された伊藤の図を引用するが,自分の理解を深めるために若干修正している。一番気になっているのは,マスメディアは政治経済エリート側に包摂されてしまっているのではないかということ,リベラル・保守,左派・右派の従来の定義とスコープが機能しているのかということであり,それぞれ?を付けている。

オカケンさん[1]の助けを借りて,伊藤昌亮の論説を解読すると次のようになる。

左派やリベラル派にとって明白な弱者とは,搾取された労働者や貧困化の女性・若者であり,アイデンティティポリティックスの対象とされる,在日外国人,被差別部落,沖縄・アイヌ,障害者,LGBTQなどである。文化エリートはこれらとの連帯を強く主張する。

一方で,OECD諸国の中でも著しく「小さい」日本政府(OECD諸国最低レベルの社会福祉費と教育費)は,その福祉・教育機能を,企業や家庭に投げてきたが,グローバリズムの嵐の中でそのシステムは崩壊し,いわゆる中流階級は消滅して,激しい二極分化が生じた。

この結果,大量に生じているのが,従来の明白な弱者カテゴリーでは十分にすくい上げられない,曖昧な弱者である。社会的にはっきりと認知・共感されない彼らは,そのフラストレーションを,「あいつらだけ認知されるのはずるい(在日特権言説,生活保護・高齢者バッシング)」と明白な弱者に対して牙をむく。

それは,アメリカのトランプ現象やヨーロッパの移民排斥右翼の台頭とまさに軌を一にする動きになっている。こうして,ネットワーク上には,政治的な意図を持ってDAPPIなどが着火すれば容易に燃え上がるネトウヨ的な素地が醸成されてきたのだ。

ただ,これらに保守・右派というレッテルを貼ってよいかどうかは疑問だ。たしかに,リベラル勢力に対抗するためだけに,宗教右派は明白な弱者たたきを繰り返しているが,日本維新の会に代表されるようなネオリベラリズムは保守とはいえない。むしろ,既存秩序を崩壊させる中で,新しい権益を掠め取ろうという作戦に立っているので話は複雑だ。



2023年9月1日金曜日

関東大震災朝鮮人虐殺事件

今年は,1923年9月1日に発生した関東大震災100年にあたる。

8月30日のNHKクローズアップ現代では「集団の狂気なぜ ~関東大震災100年虐殺の教訓~」というタイトルでこれが取り上げられていた。森達也監督の映画「福田村事件」を軸として,集団化した人間の怖さと,歴史的な教訓にどう向き合うかを中心に話が進んだ。

東京都の小池知事が6年前から,朝鮮人犠牲者追悼碑前で開かれる追悼式典への追悼文を送らなくなったことには触れないだろうなと思って見ていたが,非常に控えめではあるが取り上げられていた。全然斬り込めていなかったけれど。小池知事の影響下の東京都人権部は,さらに悪質なことに,東京都人権プラザ(港区)で2022年11月30日まで開催中の飯山由貴さんの個展「あなたの本当の家を探しにいく」の付帯事業で,関東大震災での朝鮮人虐殺に言及した映像作品《In-Mates》の上映を禁止している

日本政府も同様であって,ロイターによれば
政府は9月1日に発生100年となる関東大震災を巡り、当時の朝鮮人虐殺への論評を避ける構えだ。松野博一官房長官は30日の記者会見で「政府内において事実関係を把握する記録が見当たらない」と強調し、コメントしなかった。反省や教訓の言葉もなかった。虐殺を巡っては、事実そのものを疑問視したり否定したりする言説が後を絶たず、歴史の歪曲や風化が懸念される。

日本会議を始めとする,右側の歴史修正主義者の圧力に次々と屈する事態が発生しているのだった。

本当に,政府内において事実関係を把握する記録がみつからないのかどうか,気になって,google で,朝鮮人虐殺 + 関東大震災 + site:go.jp で検索してみると確かに余り見つからない。衆議院や参議院における代表質問関連,国立国会図書館や科学技術振興機構のJ-STAGEの文献類以外はほとんどない。

一次史料ではないが,内閣府の防災情報のページにある「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 平成21年3月 1923 関東大震災【第2編】」にはかなり詳しい話が載っていた。また,外務省の外交文書デジタルコレクションには,関東大震災関係 2中国人等被害関係 という資料は存在している。当時は韓国併合(1910-1945)の時代だから,朝鮮人は外務省マターにはならなかったのだろう。


追伸:菅野完が,森達也を批判した返す刀で「集団化した人間の怖さ」だけを強調することの問題点を指摘していた。日本では,地震などによる大災害は頻繁に発生している。なぜ,関東大震災のときにこれほどひどい虐殺事件が発生したのか。その特殊性を帝国主義的な社会構造や植民地主義的世界観により以下のように説明している。

その特殊性とはすなわち、正力松太郎が流した官製デマであったり、当時の官憲が震災前から虎視眈々ととりわけ共産主義者を弾圧しようとねらっていた(日本共産党の結成は、1922年つまり震災の前年だ)という時代背景であったり、ロシア革命への介入戦争であったシベリア出兵直後だったという社会背景であったりじゃないのかね?(菅野完,Facebook 2023.9.5)

 

2023年8月15日火曜日

ビジネスと人権

7月24日から8月4日まで,国連連合人権理事会による「ビジネスと人権」ワーキンググループの訪日調査が行われた。

最終日に日本記者クラブで記者会見が行われた。70分の説明の後,30分ほどの質疑応答があったけれど,申し訳程度に1件だけダミーの質問があった以外は,すべてジャニーズ事務所セクシャルハラスメント問題に費やされていた。なんなのだろう。

実際には,訪日調査の速報は下記引用部のような配分になっていた。()内は当該節の文字数である。

つまり,ジャニーズ問題より多くの部分が,技能実習生制度(雇用主による度重なるヘイトスピーチなど,韓国人・中国人労働者に対する外国人差別の事例を含むや,自然環境=東京電力福島原発の廃炉作業に関わる多重下請けと強制労働の問題に費やされていた。さらに,福島原発の処理水の排出と米軍基地周辺におけるPFASも取り上げられている。

リスクのあるグループとして最初に取り上げられているのは,女性とLGBTQI+の話題であって,日本会議や統一教会と強く相互作用している自由民主党宗教右派が頑強に抵抗しているテーマであった。なお,ジャニーズ問題を含むメディアとエンターテインメント産業の項でも女性記者に対するハラスメントや差別が言及されている。

最初に,GPT-4のプラグインを使ってこの英文報告ファイルを読み込んで要約させたが,どうもおかしいので原文を確認したところ,その要約は全く的を外していた。それで,DeepLに和訳させて下記のデータを整理したのだけれど,実は,報告の日本語版もちゃんと存在していたのだった。
国連ビジネスと人権作業部会訪日ミッション(7月24日~8月4日) (14160)

【1】はじめに(1084)

【2】日本におけるビジネスと人権の一般的背景(5140)
2−1 人権を保護する国家の義務(1193)
2−2 人権を尊重する企業の責任(3766)
2−3 救済へのアクセス(2088)
・国家に基づく司法メカニズム(528)
・国家に基づく非司法的苦情処理メカニズム(777)
・国家を基盤としない苦情処理メカニズム(705)

【3】利害関係者グループおよび問題関心分野(6605)
3−1 リスクのあるステークホルダー・グループ(2804)
(1)・女性(565)
(2)・LGBTQI+(467)
(3)・障害者(514)
(4)・先住民族(632)
(5)・部落(457)
(6)・労働組合(117)
3−2 テーマ別分野(3451)
(1)・健康、気候変動、自然環境(1662)
(2)・技能実習生訓練プログラムと移民労働者(927)
(3)・メディアとエンターテインメント産業(804)

【4】結論(825)


図:ビジネスと人権の関係(ヒューマンライツ・ナウから引用)


2023年6月26日月曜日

通俗道徳と日本資本主義


日本会議の研究でおなじみ,天理市出身の菅野完(1974-)が,FaceBookおよびYouTubeで展開していた論(1:08:30あたり->)が腑に落ちた。

その趣旨は次のようなものだ。欧米ではプロテスタンティズムが資本主義を産み出したが,日本では江戸時代に上方で商品経済の勃興とともに発生した通俗道徳がその後の資本主義発展に大きな役割を果たした。

通俗道徳というのは,「勤勉・倹約・礼儀・孝行などの道徳的規範を履行していれば富や幸福が訪れる」というものだ。それ以前は「全ては前世の宿業」という仏教的な因縁思想が主流だった。通俗道徳により,成功している人=道徳的規範を履行した人,不幸な人=道徳的規範の履行に欠損がある人,という認知が進むことになる。

ある人が不幸な場合,その原因は本人の道徳的瑕疵に着せられ,社会構造への批判的検討や歴史的経緯に対する考察は入りえない。不幸な人が告発する行為は,礼儀という徳目違反と見なされて,さらに不道徳ポイントが追加される。それだけでなく,成功者がこの不道徳事例を見逃すことによる減点をさけるために,不幸な告発者への道徳的批判に邁進することになる。

このような通俗道徳の土壌の上には「人権」や「権利」などの意識は芽生えようがない。欧米(プロテスタンティズム)では全ての人が神との平等な契約にさらされており,これによって人権意識が育まれたのとは大きな違いがある。

そのため,日本の資本主義は欧米のそれとは異なり,人権という片方の車輪を欠いたまま成長してしまったというわけだ。1945年の敗戦で,脱輪はいったん解消されたが,その後75年経過して再び脱輪の道を進んでいる。実際,女性差別,外国人差別,LGBTQ差別,などは放置されたまま,いや悪化の一途を辿っている。これが菅野完の論のあらすじだった。

結論:通俗道徳論 ≒ 自己責任論 ≒ 日本型新自由主義(自民党・維新支持者の論理)
noiehoieさんには「通俗道徳の倫理と資本主義の精神」という新書をはやく書いてほしい。


2022年8月24日水曜日

ファシズムの初期兆候

アメリカ・ワシントンD.C.にあるアメリカ合衆国ホロコースト記念博物館の"Early Warning Signs of Fascism"と題された展示ポスターに掲げられているファシズムの初期兆候の14項目は以下のとおりである。 
01.  強力かつ継続的なナショナリズム(Powerful and Continuing Nationalism)
02.  人権の蔑視(Disdain for Human Rights)
03.  団結させるための敵の設定(Identification of Enemies as a Unifying Cause)
04.  軍事の最優先(Supremacy of the Military)
05.  はびこる性差別(Rampant Sexism)
06.  支配されたマスメディア(Controlled Mass Media)
07.  国家安全保障への執着(Obsession with National Security)
08.  宗教と政治の結合(Religion and Government Intertwined) 
09.  企業の力の保護(Corporate Power Protected)
10.  労働者の抑圧(Labor Power Suppressed)
11.  知性や芸術の蔑視(Disdain for Intellectuals and the Arts)
12.  刑罰強化への執着(Obsession with Crime and Punishment)
13.  身びいきや汚職の蔓延(Rampant Cronyism and Corruption)
14.  不正な選挙(Fraudulent Elections)
ワシントン・マンスリーの2017年1月の記事(The 12 Early Warning Signs of Fascism)では,上記のうち04と14を除いた12項目が,トランプ政権にあてはまる兆候だとしている。安倍政権以降の自公政権+維新についても同様かもしれない。その項目の多くが統一教会,日本会議,神道政治連盟などの活動と共鳴しているように見える。

2022年3月3日木曜日

水平社宣言

1922年の3月3日に,京都市の岡崎公会堂で,全国水平社の創立大会が開かれ,そこで, 水平社宣言が採択された。その100周年になる。奈良県御所市にある水平社博物館もリニューアルされて,3月3日にオープンする。

全國に散在する吾が特殊部落民よ團結せよ。

 長い間虐められて來た兄弟よ、過去半世紀間に種々なる方法と、多くの人々によつてなされた吾らの爲めの運動が、何等の有難い効果を齎(もた)らさなかつた事實は、夫等のすべてが吾々によって、又他の人々によつて毎に人間を冒涜されてゐた罰であつたのだ。そしてこれ等の人間を勦(いたは)るかの如き運動は、かへつて多くの兄弟を堕落させた事を想へば、此際吾等の中より人間を尊敬する事によつて自ら解放せんとする者の集團運動を起せるは、寧ろ必然である。

 兄弟よ、吾々の祖先は自由、平等の渇仰者であり、實行者であつた。陋劣なる階級政策の犠牲者であり、男らしき産業的殉教者であつたのだ。ケモノの皮剝ぐ報酬として、生々しき人間の皮を剝取られ、ケモノの心臓を裂く代價として、暖い人間の心臟を引裂かれ、そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられた呪はれの夜の惡夢のうちにも、なほ誇り得る人間の血は、涸れずにあつた。そうだ、そして吾々は、この血を享けて人間が神にかわらうとする時代にあうたのだ。犠牲者がその烙印を投げ返す時が來たのだ。殉教者が、その荊冠を祝福される時が來たのだ。

 吾々が穢多である事を誇り得る時が來たのだ。

 吾々は、かならず卑屈なる言葉と怯懦なる行爲によつて、祖先を辱しめ、人間を冒瀆してはならぬ。そうして人の世の冷たさが、何んなに冷たいか、人間を勦る事が何なんであるかをよく知つてゐる吾々は、心から人生の熱と光を願求禮讃(がんぐらいさん)するものである。

 水平社は、かくして生れた。

 人の世に熱あれ、人間(じんかん)に光あれ。    

大正十一年三月


写真:水平社創立の綱領と宣言(水平社博物館から引用)

2022年2月6日日曜日

反知性主義(2)

反知性主義(1)からの続き

問題は,大阪・関西である。橋下徹と大阪維新によって,反知性的主義的な空気が横溢している。 かつて,上岡龍太郎が関西のテレビ界のご意見番だった時代があった。いまでは,右翼的な政権擁護発言や陰謀論発言によって,ホンコンを中心とした吉本軍団が報道バラエティ番組を牛耳っており,吉村とのタッグで連日洗脳活動を続けている。維新が関西の議席を席捲するわけなのだ。

橋下は,自らの言動への批判に対して「学者のいうことなんて」と反知識人的な言辞を振りまいて対抗した。そして,大阪府立国際児童文学館を解体し,文楽協会に対する大阪府・市の補助金をだまし討ちのような形で引き上げ,大阪人権博物館をつぶした。公共空間を民営化の名のもとに売り渡し続けた。それが松井,吉村によって継続されている。

橋下とそのまわりの維新メンバーらが,民族差別や病弱者差別をふりまくさまは,ほとんどナチスの前兆現象と重なって見えてくる。トランプや安倍を例にあげるまでもなく,反知性主義とレイシズムは容易に結合する。

町山智弘水道橋博士との対談で指摘していた話が興味深かった。1961年に来日したデイヴィッド・リースマンが日本には反知性主義がないことに驚いていたが,国民の多くがドストエフスキーの小説に親しんでいるような知性的な国は他にはなかったとの見立てだ。この知的・文化的な集積の中で日本の高度成長も可能になった。

その文化的な集積の中心であった関西には1500年の歴史があって,畿内は常に東国よりも文化的に上位に位置していた。ところが,大阪維新の台頭によってこれが見る影もなくなってしまった。大阪には本来豊かな文化的風土があったのだが,いつのまにか,最近の吉本芸人による下品な笑いが大阪の文化だといわれるまでになってしまった。

2021年8月1日日曜日

人権と多様性

 教養学科が廃止させられ=教育協働学科に改組したときの,教養基礎教育のカリキュラム改正で,流行に便乗してダイバーシティ教育をキーワードの一つにした。まあ,もう一つ何かあったかもしれなけれど,ほとんどそれしかなかった。このとき,大阪教育大学の人権教育の歴史を背景としてという説明を考えていた。あまり強調する機会はなかったかもしれない。

きょうのTwitterで@metsaihmisetさんや@ShinHori1さんが次のように語っている。

Shin Hori :最近は,「権利」「平等」「差別否定」等という"強い"言葉を使いたくないので,「多様性」という"弱い"言葉を使ってごまかしているケースが目立つように思える。

Shin Hori :「多様性を実現するために差別を解消しよう」という訳のわからないことを言ってる人さえいる。差別解消はそれ自体で完結しており,"多様性"のための手段ではない。例えば女声に参政権が付与されたのは,多様性を実現するためではないし,"多様性"という言葉を使う必要さえない。

Albert Rasimus:生まれながらにして人は全て同等の権利(自然権としての人権)を持つため多様性とは無関係に人権は守られるべき権利とされています。結果として多様になるのであって権利が同等だからです。

Albert Rasimus:現行日本国憲法は自然権としての人権を認めていますが自民党はこれを気に入らないので改正したいのです。九条は建前です。危険を煽ることで九条は賛否両論となります。人権を奪いたいと言えば反対されるのは明白だからそちらに目を向けて賛成を増やしたいのです。憲法は人権という観点から見るべきです。

一方で,自分も陥りがちな観点として,生物多様性による環境適応の柔軟性や進化を念頭に,「人間社会においても多様性が実現しているほうが,社会としての安定性や継続性に寄与することが可能だろう」という準(疑似?)科学的な見方がある。

こちらのほうは,いわゆる「新自由主義」と親和性が高く,ともすれば多様性+自由競争という選択が,既存権益の温存につながるという残念な帰結をもたらしてしまう。そんなわけで,多様性の議論には人権というしっかりと地に足のついた観点が欠かせない。

あるいは,多様性=人権に気付いているからこそ,自民党宗教右派は,LGBTに反対し,選択的夫婦別氏制度を拒否し,多様な家族のあり方を否定する。


2019年9月14日土曜日

関東大震災とジェノサイド

法被婆酢泥が迫る今日この頃。

東京オリンピック2020は,旭日旗を振り回すだけでなく,無意味なかき氷ばらまきまで行うことになりそうな始末。目も当てられない。毎年9月1日に東京で開かれている関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典に3年連続で追悼文を送らずして虐殺否定論者を支援している小池百合子東京都知事は,橋本聖子五輪担当相と口をそろえてオリンピックへの旭日旗の持ち込みを推奨している。

千葉の台風15号停電断水被害を見聞きするにつけ,あらためて関東大震災のときのことを学ばなければと痛感する。加藤直樹(鹿島拾市)の「九月,東京の路上で―1923年関東大震災 ジェノサイドの残響」は,外山恒一がどこかで書いていたからだろうか,買って読んだのだけれど,もうひとつピンと来なかった。

内閣府の防災情報のページには,「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 平成18年7月1923 関東大震災」があるので,とりあえず,第4章 混乱による被害の拡大の「第1節 流言蜚語と都市」と「第2節 殺傷事件の発生」を読めとどこかにあったような気もしたが,これでは全く不十分なのだと思われる。2003年の日弁連の勧告書「資料 関東大震災人権救済申立事件調査報告書」なども。

[1]関東大震災時の朝鮮人虐殺について参考となる資料・書籍やサイト一覧

2019年9月6日金曜日

徴用工判決をめぐって

2018年の11月5日に「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」が出されている。

その内容は,いたってシンプルであり納得できるものだ。
1 元徴用工問題の本質は人権問題である
2 日韓請求権協定により個人請求権は消滅していない
3 被害者個人の救済を重視する国際人権法の進展に沿った判決である
4 日韓両国が相互に非難しあうのではなく,本判決を機に根本的な解決を行うべきである

しかし,日本中の多くの人々は政府の説明(国どうしの約束は守らなければならない)のほうを支持しているようだ。

2019年8月5日月曜日

表現の自由

日本国憲法

第二十一条 集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。
○2 検閲は,これをしてはならない。通信の秘密は,これを侵してはならない。
日本国憲法の下でも,表現行為が他者とのかかわりを前提としたものである以上,表現の自由には他人の利益や権利との関係で一定の内在的な制約が存在する。内在的制約とは,第一には人権の行使は他人の生命や健康を害するような態様や方法によるものでないこと,第二には人権の行使は他人の人間としての尊厳を傷つけるものであってはならないことを意味する。 (Wikipedia 日本語版「表現の自由」より)


2019年5月6日月曜日

日本国憲法

5月3日は,憲法記念日だった。インターネットには,まだ自分の知らない興味深いコンテンツがいろいろと埋蔵されている。発見したのは「最高法規の意志」。日本国憲法の体系的な構造をわかりやすく図解するとともに(下図参照),憲法九条改正議論の問題点,あるいは,人権の根拠に対する具体的な例による楽しい解説など,深く考えられたサイトだ。

一つのポイントは,体系的な憲法の構成を考えると,安易な部分的改正は憲法の体系に大きな不整合と意味の変質をもたらしてしまうということ。第九条がもともと全文として位置づけられていて,「総則規程」として「統治規程」全体を縛るものであることから,そこに,三権の一つである行政権配下の一行政組織としての自衛隊を書き込むことのバランスの悪さは際立っている。と同時に国の方向性を大きく歪めてしまう。

図:日本国憲法の体系(「最高法規の意志」からの引用)