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2024年6月14日金曜日

合計特殊出生率(3)

合計特殊出生率(2)からの続き

物理学者の白石さんが,合計特殊出生率の件で強い主張をしていたので確認してみる。ようは,合計特殊出生率を決めているのは有配偶率であって,人口学的に確かめられている。それ以外の恣意的な原因を持ち出しているのはみんな出鱈目だ。ということだった。

仮にそうであっても,有配偶率自身を規定する原因は考えられるのだから,そこまで強く主張する必要はまったくないのに,と思う。まあいつものことだ。

都道府県別の合計特殊出生率と直近の国勢調査で得られた都道府県別の15-49歳女性の有配偶率を散布図にしてみる。1953年から2022年までの両者の関係も出せないかと調べるのだけれど,必要な情報はデータの海に埋もれてしまっていて,簡単には見つかりそうになかった。どの生成AIも簡単には探しだしてはくれない。

とりあえず,Juliaでコーディングしてみる。
using Gadfly
using Compose
using DataFrames
X = [46.6,47.4,49.4,47.7,49.9,51.2,50.0,50.4,50.9,49.9,49.3,49.0,44.2,49.0,50.4,52.0,50.4,52.3,49.5,51.7,51.4,51.6,51.9,51.4,52.2,44.4,43.5,48.8,47.0,48.5,49.2,51.9,48.9,50.7,49.9,49.3,51.1,49.6,46.1,46.2,48.5,48.6,48.5,49.5,49.4,49.2,45.8]
Y = [1.06,1.23,1.16,1.07,1.10,1.22,1.21,1.22,1.19,1.25,1.14,1.14,0.99,1.13,1.23,1.35,1.34,1.46,1.32,1.34,1.31,1.25,1.29,1.29,1.38,1.11,1.19,1.29,1.21,1.33,1.44,1.46,1.32,1.33,1.40,1.36,1.40,1.31,1.30,1.26,1.46,1.49,1.47,1.39,1.49,1.48,1.60]
Labels = ["北海道","青森","岩手","宮城","秋田","山形","福島","茨城","栃木","群馬","埼玉","千葉","東京","神奈川","新潟","富山","石川","福井","山梨","長野","岐阜","静岡","愛知","三重","滋賀","京都","大阪","兵庫","奈良","和歌山","鳥取","島根","岡山","広島","山口","徳島","香川","愛媛","高知","福岡","佐賀","長崎","熊本","大分","宮崎","鹿児島","沖縄"]

plot(x=X, y=Y, label=Labels, Geom.point, Geom.label, Theme(major_label_font="CMU Serif",minor_label_font="CMU Serif",major_label_font_size=12pt,minor_label_font_size=12pt), Guide.xlabel("女性有配偶率"),Guide.ylabel("合計特殊出生率"))

沖縄は特異点になっているが,合計特殊出生率とこれに対応する年代の女性の有配偶率には正の相関がみられる。

図:女性の有配偶率と合計特殊出生率の関係

P. S.  x軸とy軸の日本語ラベルのつけ方は,ChatGPT-4oに教えてもらった。

2024年6月10日月曜日

のんき度

のんき度とは,本川裕(1951-)さんが命名した指標だ。

毎年行われる国民生活基礎調査(厚生労働省)の3年ごとの大規模調査(前回令和4年)では健康票の質問12で「こころの状態」に関する設問がある。過去1ヶ月に,(1) 神経過敏に感じましたか, (2) 絶望的だと感じましたか,(3) そわそわ落ちつきなく感じましたか,(4) 気分が沈み込んで,何が起こっても気が晴れないような感じがしましたか,(5) 何をするのも骨折りだと感じましたか,(6) 自分は価値のない人間だと感じましたか,を尋ねる6つの質問がある。結果の合計点は,いつも,たいてい,ときどき,すこしだけ,まったくないの5段階から1つ選んで丸をつける。問題が全くないを0点から,いつもを4点とすれば,合計点は0〜24点に及ぶ。

報告書では,これを3区分にした集計がある。0~4点を「精神状態が良好」と捉え,各都道府県別あるいは年齢別の「精神状態が良好」の割合が示されている。本川は,これを精神的な問題が少ないほど心が平安あるいは健全だとして「のんき度」と名前をつけている。

のんき度を都道府県別に見ると,68%から74%でそれほど大きな違いはないが,東北,特に太平洋側が低いレベル,そして九州・沖縄が高いレベルにあり,西高東低の地域構造がある。さらに,九州では佐賀だけ特に低い,北陸では石川・福井が高いのに富山だけ低い,など謎に特異な構造がみられる。

一方,年齢別にみればはっきりとした特徴がでてくる。自分は今人生における第二ののん気ピークにあるが,このあと転落が待っているらしい。どうしよう。


図:年齢別ののんき度(本川裕さんの記事[1]より引用)

[1]「60代は人生の楽園だが、70代以降は一転」多くの日本人が天国から地獄へ

2024年6月7日金曜日

合計特殊出生率(2)

合計特殊出生率(1)からの続き

去年の今ごろ,奥村晴彦さんの合計特殊出生率Rプログラムを写経していた。すっかり忘れていたけれど,2023年の新しい合計特殊出生率が過去最低の1.20人を記録したいうニュースで思い出すことになった。

都道府県別でみれば,東京都の0.99や北海道の1.06をはじめ,大都市部や東北地方で低く,沖縄の1.60を筆頭に,九州,山陰,北陸などで高い。

今年は,コマンドラインで実行すべく,Rプログラムを修正した。あいかわらず日本語表示でつまづいたので,ChatGPT-4oに聞きながら試行錯誤した結果,何とか解決できた。なお,スタートを自分が生まれた1953年にしてみた。

修正したRプログラムのtfr.rの内容(注:remove \ before copy and paste)は

library(showtext)

font_add("Hiragino", "/System/Library/Fonts/ヒラギノ角ゴシック W3.ttc")

showtext_auto()


X <- read.table('/Users/koshi/Desktop/birth.txt', header = TRUE)

par(family = "Hiragino")  # 利用可能なフォントを指定

plot(X\$年, X\$合計特殊出生率, type="o", pch=16, xlab="", ylab="")

t = c(range(X\$合計特殊出生率), X\$合計特殊出生率[length(X[,1])])

axis(4, t, t)

title("合計特殊出生率", line=0.5)

#title("Total Fertility Rate", line=0.5)


# x軸とy軸のメモリの位置を手動で指定

x_ticks <- pretty(X$年, 15)  # 15個のメモリを生成

y_ticks <- pretty(X$合計特殊出生率, 16)  # 16個のメモリを生成


# x軸に対してグリッド線を描画

for (i in x_ticks) {

  abline(v = i, col = "lightgray", lty = "dotted")

}


# y軸に対してグリッド線を描画

for (i in y_ticks) {

  abline(h = i, col = "lightgray", lty = "dotted")

}

これで,Rscript tfr.r とすると,pdfの出力,Rplots.pdf が得られる。なお,showtextというライブラリは,コマンドラインで R として立ち上げたプロンプトに,install.packages("extrafont") としてインストールしておく。また,データは birth.txt にあらかじめ入れてある。

年    出生数 合計特殊出生率

1953 1868040           2.70

1954 1769580           2.48

1955 1730692           2.37

1956 1665278           2.22

1957 1566713           2.04

1958 1653469           2.11

1959 1626088           2.04

1960 1606041           2.00

1961 1589372           1.96

1962 1618616           1.98

1963 1659521           2.01

1964 1716761           2.05

1965 1823697           2.14

1966 1360974           1.58

1967 1935647           2.23

1968 1871839           2.13

1969 1889815           2.13

1970 1934239           2.13

1971 2000973           2.16

1972 2038682           2.14

1973 2091983           2.14

1974 2029989           2.05

1975 1901440           1.91

1976 1832617           1.85

1977 1755100           1.80

1978 1708643           1.79

1979 1642580           1.77

1980 1576889           1.75

1981 1529455           1.74

1982 1515392           1.77

1983 1508687           1.80

1984 1489780           1.81

1985 1431577           1.76

1986 1382946           1.72

1987 1346658           1.69

1988 1314006           1.66

1989 1246802           1.57

1990 1221585           1.54

1991 1223245           1.53

1992 1208989           1.50

1993 1188282           1.46

1994 1238328           1.50

1995 1187064           1.42

1996 1206555           1.43

1997 1191665           1.39

1998 1203147           1.38

1999 1177669           1.34

2000 1190547           1.36

2001 1170662           1.33

2002 1153855           1.32

2003 1123610           1.29

2004 1110721           1.29

2005 1062530           1.26

2006 1092674           1.32

2007 1089818           1.34

2008 1091156           1.37

2009 1070036           1.37

2010 1071305           1.39

2011 1050807           1.39

2012 1037232           1.41

2013 1029817           1.43

2014 1003609           1.42

2015 1005721           1.45

2016  977242           1.44

2017  946146           1.43

2018  918400           1.42

2019  865239           1.36

2020  840835           1.33

2021  811622           1.30

2022  770759           1.26

2023  727277           1.20

図:1953-2023  の合計特殊出生率の推移


2024年5月2日木曜日

消滅可能性自治体

今から10年前の2014年5月,増田寛也(1951-)がやっていた日本創成会議が,人口再生産力に着目した市区町村別将来推計人口についてをまとめた。
合計特殊出生率のうち 95%は 20~39歳の女性によるものなので,20〜39歳の女性の減少率に着目した。2010年から2040年の30年で,「20~39 歳の女性人口」が5割以下に減少する自治体数は, 896自治体,全体の 49.8%にものぼり,これらを「消滅可能性都市」とした。
10年経って,この話がまた蒸し返された。日本創成会議は休止中で,かわりに人口戦略会議(議長 三村明夫,副議長 増田寛也,ウェブサイト不明)が新しいデータ令和6年度・地方自治体「持続可能性」分析レポート(2024.4.24)を示した。この度は,2020年度から2050年度の30年間に,20-39歳の女性人口が50%以上減少する自治体を消滅可能性自治体としている。前回から99自治体が加わり,239自治体が脱却した結果,744 自治体となった(注:前回は福島県を含まず,今回は含む)。
全国1729自治体の持続可能性分析結果

1.自立持続可能性自治体(65)
20~39歳の若年女性人口の自然減・社会減の影響が抑えられている自治体
千葉県流山市、静岡県長泉町、沖縄県宜野湾市

2.ブラックホール型自治体(25)
人口の増加分を他地域からの人口流入に依存しており、しかも当該地域の出生率が非常に低い
千葉県浦安市、東京都新宿区・渋谷区・品川区、京都市

3.消滅可能性自治体(744)
20~39歳の若年女性人口における減少率が大きい自治体
北海道函館市、茨城県日立市、大阪府門真市、鹿児島県南九州市

4.その他(895)
詳細な区市町村別のデータが掲載されたエクセルデータをみると,奈良県は,ワースト15自治体に,5自治体(黒滝村,吉野町,御杖村,下市町,野迫川村)が含まれている。青森県や北海道に並んで全国最悪レベルである。

菅野完によれば,若い女性が定着しない地域はミソジニーを何とかするのが先だといっている。そうだよなあ,人口問題の第1歩は人権問題の解決であり,びっしりと根を張っている宗教右翼勢力の根絶だ。夫婦別姓や同性婚に手を付けられない自民+公明+維新勢力がブイブイいわせているうちは,人口問題は解決しない。



[1]人口ビジョン2100(人口戦略会議,2024年1月)

2024年4月28日日曜日

関係人口

関係人口という耳慣れない言葉がでてきて,石川県が全国一だという。なんだそれは。

総務省に関係人口のポータルサイトには次のように説明されている。
関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。
地方圏は、人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面していますが、変化を生み出す人材が地域に入り始めている例も多くあり、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が、地域づくりの担い手となることが期待されています。
とても曖昧な定義だけれど,人口減少社会で地方圏の活性化を図るためのツールにしたいという気持ちはわからないでもない。図の例示をみると,「行き来する者(風の人)」「地域内にルーツがある者(近居・遠居)」「何らかの関わりがある者(過去の勤務や居住、滞在等)」なのだ。自分は石川県の関係人口にカウントされる。少しだけわかった気がする・・・わけでもない。なお,肝腎の石川県は,マッチングナビのリンク無し4県に含まれていて,まったくやる気無しだった。

さて,今回関係人口を持ち出したのが,株式会社ブランド総合研究所の関係人口意識調査2024である。詳細データが欲しければ10万円必要となる。2021年から始めているが,よくある商売だ。ニュースリリースでは,「石川など北陸の関係人口は増加。32都道府県で減少」となっている。調査日は,2024年2月2日〜4日で,インターネット上の19歳から79歳,17686人の有効回答を分析したものだ。

トップの石川県の関係人口は,1831.1万人であり昨年の95.6万人から1815%増えている。あほらしい。これは令和6年能登半島地震の効果を調べているだけで,特異値を拾うほとんど意味を成さない統計データになっている。これを10万円で買う自治体はどこなのか。

そもそも観光で何度か訪れたも関係人口に含めているように見え,総務省の定義とも齟齬があるのだ。もう少しまじめにやってほしい。

図:総務省がイメージしている関係人口(総務省から引用)

[1]関係人口とは何か?(自治体・公共Week)
[2]関係人口地方創成フォーラム(内閣府地方創成推進事務局)
[3]全国の関係人口は1800万人超(国土交通省,2021年)
[4]関係人口の実態把握(国土交通省国土政策局,2021年)
[5]現代日本社会における「関係人口」の実態分析(杉本あおい他,2020年)

2024年4月9日火曜日

国立大学法人化20年

2004年4月に国立大学が法人化されてから20年がたった。

各新聞では,国立大学法人化20年の功罪をとりあげている。大半は,正確な分析や反省を抜きにして,研究を強化しようというなまぬるい無内容なスローガンを掲げたものだ。

驚いたのは朝日新聞の国立大学学長アンケートだ。86国立大学の79人が回答し,その7割が法人化によって大学は教育研究機関として悪い方向に進んだと回答した。記事のタイトルもそのようになっている。びっくりしたのはそうではなくて,3割26人がよくなったと回答していることのほうだ。すごいよね。

中日新聞でも同様の傾向が出ていた。中部圏16大学の学長の4割が法人化を評価しているというものだ。現体制の勝者としての学長達の多くはこのシステムを評価しているのか。なるほど,闇が深いわけだ。

日本経済新聞の4月8日朝刊教育面では,ボストンカレッジのフィリップ・アルトバック名誉教授を引っ張り出してきて,日本の大学の国際競争への課題を語らせていた。いいのだけれど,明らかな誤認が含まれていた。「日本の問題は,学生の80%近くが私立大学の通っていることだ。これらの多くは規模が小さく,人口が急速に減る地方に位置している。・・・」

前段は正しいが,後段は誤り。日本の私立大学の学生定員の多くは都市部にある。地方にはそもそも私立大学も少ないのだ。確かめた結果が以下の表。

国公立大学私立大学合計(%)
北海道0.600.921.53 
青森県0.660.571.23 
岩手県0.540.360.90 
宮城県0.611.522.13 
秋田県0.760.150.91 
山形県0.740.351.09 
福島県0.370.430.80 
茨城県0.610.340.96 
栃木県0.210.861.07 
群馬県0.610.861.47 
埼玉県0.111.351.47 
千葉県0.181.541.72 
東京都0.374.514.88 
神奈川県0.141.761.90 
新潟県0.680.601.28 
富山県0.960.101.06 
石川県0.921.532.45 
福井県0.800.501.30 
山梨県1.030.931.97 
長野県0.630.220.85 
岐阜県0.340.661.00 
静岡県0.380.540.92 
愛知県0.352.002.35 
三重県0.360.410.77 
滋賀県0.491.782.27 
京都府0.834.885.71 
大阪府0.362.292.64 
兵庫県0.371.732.10 
奈良県0.371.081.45 
和歌山県0.570.370.94 
鳥取県1.170.061.23 
島根県1.090.001.09 
岡山県0.661.362.02 
広島県0.621.321.94 
山口県1.090.271.36 
徳島県0.890.711.59 
香川県0.630.310.94 
愛媛県0.630.641.27 
高知県1.250.121.37 
福岡県0.531.602.13 
佐賀県0.710.240.95 
長崎県0.800.481.27 
熊本県0.560.831.39 
大分県0.450.891.34 
宮崎県0.560.330.89 
鹿児島県0.590.390.98 
沖縄県0.680.551.23 
平均値0.610.961.58
標準偏差0.260.970.93

平成5年度の各都道府県の本部所在大学の学部学生数を,当該自治体の人口で除したもの(%)。上位は黄色,下位は水色で示した。明らかに私立大学学生の割合が高いのは首都圏,近畿圏と名古屋なのである。なお,国公私立全大学生数の対人口比は,京都-東京-大阪-石川-名古屋の順で高い。江戸時代の都市の文化度順なのか?


図:各都道府県の国公立大学の学生率(横軸)と私立大学の学生率(縦軸)

東京と京都が私立大学の突出した2点に対応している。私立大学の全国での偏りは非常に大きい。国立大学は関東圏の数県を除けば,高々1:3の範囲に収まっている。