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2025年4月2日水曜日

アンドロイドと人間

アンドロイドと人間」という,フィリップ・K・ディックの1972年のエッセイがある。これを読むのが面倒なので,pdfからテキストを抽出して,タイトルと著者名を伏せたままQwen2.5-MaxとDeepSeek V3に読みこませた。2種類の要約を1つのテキストファイルとして,ChatGPT o3-mini-highに評価させた(DeepSeek V3 は著者がディックであると見抜いた)。
Q(koshix):
ある英語の文書を2つのAIに解読させたものが,添付ファイルの【テキストA】と【テキストB】です。どちらの方がよりよい解説になっているかを評価してください。

A(ChatGPT o3-mini-high):
以下、評価の前提とプロセスを説明した上で、最終的な結論を述べます。

分析の前提と考察プロセス
1.解説内容の網羅性と明確さ
・テキストAは、原文の主要なテーマを箇条書き形式で整理し、各項目(例:原始的な心と現代心理学、人工環境の「生命化」、若者の反逆など)をシンプルに解説しています。ポイントごとに端的でわかりやすいですが、背景や文脈に踏み込んだ説明はやや不足している印象です。
・テキストBは、同様のテーマを扱いつつも、フィリップ・K・ディックという著者の視点を明示し、サイバネティクスや哲学(例:ノーバート・ウィーナー、スピノザ、宗教的象徴)といった関連知識を取り入れることで、より深い文脈理解とニュアンスある解釈を提供しています。

2.文脈と知的背景の提示
・テキストBは、単にテーマを羅列するだけでなく、どのような知的伝統や理論(サイバネティクス、監視社会、宗教・哲学的考察)に根ざしているかを明示し、読者にとって背景情報が補完される構成になっています。
・これにより、読者は単なるまとめ以上に、原文の意図やその先にある問いに対して多角的に考える手がかりを得ることができます。

3.解説の深みと論理的展開
・テキストAは要点を抑えてはいるものの、各論点間の関係性やより広いテーマとの関連付けに関しては説明がやや表面的です。
・一方、テキストBは「人間と機械の融合」や「人間性の喪失と『アンドロイド化』」など、各テーマが持つ倫理的・哲学的含意についても踏み込んでおり、また若者の役割や未来へのビジョンについても詳細に論じられています。

結論
両解説とも原文のテーマを的確に捉えているものの、より豊かな文脈提示と深い分析を提供しているのはテキストBです。
テキストBは、著者の意図や知的背景(例:サイバネティクス、監視社会、宗教・哲学的考察)を具体的に示すことで、読者が原文の示唆する複雑な問いに対して多面的に考察できるような解説となっており、全体としてより優れた解説であると評価できます。(テキストA・B)

最終評価
テキストBの方が、より深みがあり文脈に富んだ優れた解説であると判断します。
テキストAがQwen2.5-Max,テキストBがDeepSeek V3 である。まあまあ。



写真:Philip K. Dick の肖像(IMDbから引用)


2025年2月28日金曜日

幻想の未来からの続き

筒井康隆の1998年の長編小説「」が吉田大八監督によって映画化された。奈良では上映されていないので,京都か大阪かと迷ったが,大阪梅田スカイビルのテアトル梅田(旧シネ・リーブル梅田)に向かった(2/18のこと)。

昔は操車場の下を潜る長い地下道を通ってスカイビルまで行ったものだけれど,うめきた二期区域再開発のために,地下道はなくなってしまいグラングリーンと公園が整備中だ。


最初に買った筒井康隆は,ハヤカワSFシリーズ(銀背)の「東海道戦争」だったか。あるいは「ベトナム観光公社」とか「アルファルファ作戦」だ。その次が日本SFシリーズの「48億の妄想」と「馬の首風雲録」あたりか。その後,角川文庫の「幻想の未来」,「アフリカの爆弾」,「にぎやかな未来」と続いていった。「霊長類南へ」を含め,このころが最も楽しかった時代だ。

SFマガジンに連載されていた「脱走と追跡のサンバ」以降の1970年代の作品にはどうも乗り切れないと思っているうちに,1980年代の「虚人たち」や「虚構船団」へと飛躍していった。もうあまりSFを読まなくなった時代だ。

さて,小説は未読の映画の「敵」のテーマは老人だ。老人男性だ。自分にぴったりのテーマかな。意識がしだいに妄想に侵食されていく70代後半の爺さんだ。日常のリズムを保とうと努力しているが,それが次第に破綻してしまう年代だ。

全編モノクロだったので食事のシーンがもたれずに進んでいく。女性陣が瀧内公美+河合優美+黒沢あすかというすごい配役を揃えてきた。これに,松尾コンビ(松尾諭+松尾貴史)が加わって,主人公のフランスといえば長塚京三をささえていた。おもしろかったのだが,テアトル梅田のホール2の画面が狭かったので自宅のテレビでも十分だったかもしれない。



写真:映画「敵」のポスターから引用

2025年2月2日日曜日

世界終末時計

NHKのニュース9で世界終末時計の話題を取上げていた。

Bulletin of the Atomic Scientists (原子力科学者会報)の表紙絵のDoomsday Clocksとして有名なものであり,核戦争などによって世界が滅亡する時刻を午前0時として,それまでにあとどのくらい時間が残されているかを示すものだ。

1947年の7分前からはじまり,自分の生まれた1953年に米ソの水爆実験が始まり2分前まで縮まった。大学に進学した1972年には核軍縮のプロセスが進行して12分前まで戻した。さらに,結婚後奈良に転居する1991年には東西冷戦の終了後のソ連邦の崩壊で17分前に至る。

しかしそれからは坂を転がるように危機的な要素が次第に加わったため,トランプが第二期目の大統領になってとうとうこれまで最短の89秒前になってしまったというニュースだ。

下図は6年のオフセットでほとんど自分の人生と重なってくる図だ。このまま人類は滅亡するのだろうか。最初は核戦争だけが主要因子だったが,その後,地球温暖化が追加の因子として加わった。さらに,国家予算に対してマンハッタン計画と同程度のパーセンテージの資金を投入しようとしているAI開発競争が第3の因子として立ち上がってきた。

そこに,米中対立をシンボライズするようなDeepSeekの登場がかさなるという図になる。メキシコ湾とデナリの例に続いて,世界中で反動の嵐が吹きまくり,世界共通の固有名詞がバラバラに解体されて異なった文化によって複製変異されることになるかもしれない。

もう,斎藤知事派と反斉藤知事派,ジャニーズ派と反ジャニーズ派,トランプ派と反トランプ派の間にはバベルの塔を崩壊に導いたあの神(AI)の怒りだけが渦巻いている。



図:世界終末時計(Wikipediaから引用)

P. S. Doomsdayで思い出したコニー・ウィリスドゥームズデイ・ブック審判の日のための財産台帳だったのか。世界終末時計が午前0時を指すと,すべての人類への魔法が解けて,みなネズミやヘビに帰着してしまう。それまでに,人類全員のドゥームズデイ・ブックを作って,その情報記憶をきざんだ墓石星を宇宙空間に放出できるだろうか。

2024年10月30日水曜日

安部公房伝:安部ねり

高校時代,先生がお休みで時間割が変更され早く終了することがあった(ような気もする)。それができない場合は,まれに図書館での自習となる。そんなとき本棚を漁って目についたのが,サルバドール・ダリの画集と安部公房(1924-1993)の短編集だった。

ダリは,中学校の美術の教科書に燃えるキリンが載っていた。山田雄治君と一緒に教科書に掲載されていた世界の名画を眺めながら作者当てをするのが楽しかった。

安部公房はどこから?世界SF全集の第32回配本(1971年5月)が,安部公房の第四間氷期他であり,それ以前から日本初の本格SF小説だとは耳にしていた。あるいは,現代国語の教科書に「赤い繭」か何かが掲載されていたのか?第四間氷期は残念ながら高校生の自分にはピンと来なかった。大学に入ってから読んだ砂の女他人の顔の方が圧倒的によかった。燃えつきた地図箱男密会方舟さくら丸では残念ながらそこまでのものは得られなかった。


その安部公房の伝記が,2011年3月に一人娘の安部ねり(1954-2018)によって出版された。安部公房全集全30巻をだしている新潮社によるこの本は,作家誕生,作家安部公房と人間科学,作家活動の周辺,インタビュー(安部ねりによる25名)の四部で構成されている。断片的な著者の思い出のコラージュという感じで,期待はずれだった。本人は,伝記部分と理論展開の部分から成り立っていると書いているが,ちょっと違う。肉親が故人の伝記を書くというのは難しいことだ。

この少し前に,Kindle版で山口果林(1947-)の「安部公房と私」を読んでいた。安部ねりの伝記では山口果林については一言も触れられていない。まあそんなものだ。山口果林の本も記憶のパッチワークかもしれないが,著者の自分史でもあって,より密度が高くて具体的だ(自分には,山口果林とミニスカートで巨泉・前武ゲバゲバ90分!に出ていた宮本信子のイメージが分離しにくくて困る)。

神奈川近代文学館が,安部公房の生誕100年を記念して「安部公房展−21世紀文学の基軸」を開催している(2024年10月12日〜12月8日)。この展示会公式図録本の方が安部公房の伝記としてふさわしいように思える。末尾には美術家として安部公房の舞台美術や本の装丁を担当した妻の安部真知(1926-1993)も少しだけ登場していて,安部ねりによる真知の略年譜もある。展示物の中にあった山口果林の大量の赤い大入袋はこの本には登場しない。


安部公房は,小説の著述にワードプロセッサを利用した最初期の1人だが,インターネットが商業化する前の1993年に亡くなっている。星新一(1926-1997)もそうだ。もちろんAIも。それにもかかわらず,彼らの小説の中にはほとんどそのイメージが予言されている。



写真:安部公房伝の書影(新潮社から引用,やたら上質の紙を使っている)

P. S.  1958年「世界」の座談会,荒正人,埴谷雄高,武田泰淳,安部公房でのイメージ
〈人工衛星・人工太陽・人工頭脳・人工生命〉 =〈宇宙開発・核融合・AI・バイオテク〉 そのままだ [7]。

[2]科学とフィクションそしてポストモダン(クリストファー・ボルトン)
[8]安部公房論(和田勉)

2024年10月13日日曜日

ピュア:小野美由紀

小野美由紀(1985-)のピュア。SFマガジン掲載時にnoteで公開され歴代一位20万PVをゲットした。という評判だったので早速トライして見た。ピュア,バースデー,To The Moon,幻胎,エイジ,身体を売ることの性科学SF 6編からなる短編集だ。

表題作のピュアは,恐竜のような身体を獲得して軌道上に生活するメスの人間が,蟷螂のように性交後のオスを食べてしまい,そのことによってのみ受胎が可能になった未来を描いている。オスは汚染された地球上で細々と生活している。捕食される側からみた物語がエイジであり,これらが対になっている。

どの作品も,ある種のディスとピアを表現しているのだけれど,そのディスとピアというのはいまだに夫婦別姓制度や同性婚制度に踏み切れない日本そのものに重なる。

巻末の水上文の解説から引用すると,その背景にあるのはこんなものである。
たとえば政治的意思決定の場,社会的に地位の高い職業の多くを占めるのは男性である。性暴力の被害者の大多数を占めるのは女性である。直接的な暴力がなくとも,社会に蔓延る性的対象化はその中で育つ人々の安全を損ない,尊厳を損ない,人生を狭め,また加害を正当化する。賃金格差と貧困,もちろん生殖を巡る問題もある。生殖は国家による管理の対象であり,2023年現在の日本では,明治時代につくられた刑法堕胎罪がいまだに存在し,人工中絶の配偶者同意要件は今も撤廃されないままである。



図:小野美由紀ピュアの書影(早川書房から引用)


2024年10月8日火曜日

AIとSF(2)


AIとSF(1)からの続き

1年4ヶ月ほどかかって,ようやくハヤカワ文庫JA 1551の「AIとSF」を読了した。頭も眼も霞む中,トリッキーなストーリのSF短編を読解するのは,なかなかに骨の折れる技である。この間,生成AIもかなり進歩しているが,この本の内容が時代遅れになっているほどではない。

最近は,テレビドラマをみても短編小説をよんでも,片っ端から記憶領域の外側に溢れ出てしまうので,印象に残ることが無くて困る。いや,困らないかもしれない。何度でも読み返せるのだから。前回の感想は,一編目の大阪・関西万博を扱った「準備がいつまで経っても終らない件」を読んだところまでだった。万博の方はそれらしく形が整ってきたので,始まってしまえば,マスコミの格好のオモチャになるだろう。行かないけど。

目次を見直しても,何が書いてあったかはあまりはっきりしない。津久井五月のナノマシンが東京の一部を汚染する様子とか,野崎まどの智慧錬糸がAI画像つきで笑えたとか,野尻抱介のサイドストーリーの核融合実現のインパクトは納得できるとか,麦原遼の感情を認識するAIの描写がよさげだとか,面白かった部分も。

それにしても,AIが自律的にネットワークにアクセスしてSNSに投稿するようになると,大変ややこしいことが起きるのは間違いない。ただでさえフェイクニュースが蔓延して困っている。そこに持ってきて,フェイクか否か,人間か否か,様々な意図に操られているか否か,がはっきり区別できない大量のテキストとイメージが満ちている情報空間というのはいったい・・・。

P. S. やっぱり円城塔は何度読んでもよくわからない。自分の読解力不足かなぁ。でもブッダ・コード 機械仏教史縁起 はちょっとトライして見たい。



図:AIとSF(ハヤカワ文庫JAから引用)

2024年10月2日水曜日

シュレーディンガーの少女:松崎有理

山手線が転生して加速器になりました。:松崎有理からの続き

先月発表された,文化庁による令和5年度「国語に関する世論調査」の結果は,読書離れの加速というニュースになってメディアを駆け回った。月に1冊も本を読まない人が6割を越えた,読書量が以前より減っているも7割だ,わぉう,というものだ。

この場合,電子書籍は読書した方にカウントされている。自分も正にその6割と7割に該当しているのであった。読書量が減っている理由は,1位:情報機器で時間がとられる(そのとおり),2位:仕事や勉強が忙しくて読む暇がない(これはあてはまらない),3位:視力などの健康上の理由(まあまあ,筋力かもしれない),4位:テレビの方が魅力的である(これも少しあてはまる)。

ただ,1位を選んでいるのはほとんど若者であって,70歳以上では,健康上の理由が1位でテレビの方が魅力的であるが2位なのだ。このあたりは自分と少し違うかもしれないが,確かにYouTubeやBlogと録画した韓国ドラマや映画で閑居老人の暇な時間が完全に溶けてしまう。

しかしながら,まだまだ読みたい本は沢山あって,かといって内容的にあるいは物理的に重い本を読み通すのは難しいので,軽い電子書籍からリハビリを始めることにした。

松崎有理の創元SF文庫の短編集,シュレーディンガーの少女は,6編のうちの2編(六十五歳デス,ペンローズの乙女)が無料でネット上に公開されていたので,ついでにKindle版を購入してしまった。

相変わらず,食へのこだわり(太っていたらだめですか?,秋刀魚,苦いかしょっぱいか)がみられたり,著者の出身の水戸第一高校のモデルが登場していたり(異世界数学),理系蘊蓄が適当に含まれている軽い読み物としては適当かもしれない。

シュレーディンガーの少女はいまひとつぴんとこなかったが,ペンローズの乙女の冒頭部分に,エミル・コノピンスキーの名前が出てきて,あれれと思って調べて見たら,昔,研究室の書棚にあったかもしれない The Theory of Beta Radioactivity の著者のEmil Konopinski だった。テラーと一緒に初期の水爆開発における検討をしていたのか。


図:読書離れの理由(上から16-19,20代,30代,40代,50代,60代,70- 文化庁から引用)

2024年9月10日火曜日

山手線が転生して加速器になりました。:松崎有理

松崎有理(1972-)の名前は,書店の本棚のシュレーディンガーの少女で見かけている。東北大学理学部(生命科学がバックグラウンドという話なのでたぶん生物学科?)の出身のエンタメ(SF)作家である。

タイトルが面白かったので,Kindleで入手してみた。短編集であり,6つの作品が収録されている。そのうち,山手線が加速器に転生する話は2編あるが,それぞれの話は独立だが,一つの仮想歴史世界線上(経済学者の目から見た人類史:行方ユクエ)に位置づけられている。

パンデミックによって,東京から人間が退避してしまった世界で,山手線が,周長34kmの自律運転ミューオンコライダーに,立川−三鷹−新宿の中央線が,全長13km+14kmの自律運転電子陽電子リニアコライダーに転用されたという話だ。これに,高度2000kmの地球周回軌道上の基線長100mのレーザー干渉計宇宙アンテナ自律型観測施設(宇宙重力波望遠鏡)が加わる。

この2編はちょっと状況設定の説明だけで話が空振りに終ってしまい消化不良だった。それ以外の話は軽いけれど,サイエンスの背景があればそこそこ楽しく読める。食べ物の描写と子どもへの視線が印象的だ。あとは,フェルミのパラドックスへの強い思い入れかな。仮想歴史中には,ChatGPTに相当するAIアシスタントが2025年に登場していて,その名称がモラベックである。ハンス・モラヴェックは実在の人物であり,モラヴェックのパラドックスで有名らしい。知らんかったわ。



写真:山手線が転生して加速器になりました。(光文社文庫の書影から引用)

[2]ハンス・モラヴェック(Wikipedia)

2024年8月26日月曜日

金星の蟲:酉島伝法

皆勤の徒からの続き

酉島伝法の短編集の2つ目をKindleで読了。

金星の蟲,環刑錮,痕の祀り,橡,ブロッコリー神殿,堕天の塔,彗星狩り,クリプトプラズムの8作品に,抄録 幻視百景と自作解題,大森望の解題と続いている。

金星の蟲は,著者の印刷工としての経験が膨らんだもの,環刑錮が,蚯蚓状の意識の葛藤が表現されたもので,この2作がメインディッシュかもしれない。なかなかに読みにくいのが楽しいが,皆勤の徒のような言語的なチャレンジは多くない。それでも,これだけの多様なイメージを紡ぎ出している。

痕の祀りは,バラードの溺れた巨人の話かとおもいきや,斉一顕現体と万状顕現体というウルトラマンと怪獣の戦いの後始末をする,加賀特掃会=科学特捜隊の話だった。



写真:金星の蟲(早川書房)の書影を引用


2024年5月1日水曜日

皆勤の徒:酉島伝法

大森望(1961-)の解説はけっこう信頼している。以前,日経新聞で酉島伝法(Torishima Dempow,1970-)を滅法褒めていた。

早速,短編集の「皆勤の徒」をkindleで購入した。ついでに,皆勤の徒の設定資料集「隔世遺傳」もあわせてゲットする。

いきなり,隷重類(れいちょうるい),香水(ようすい),製臓物(せいぞうぶつ),念菌(ねんきん)と,漢字とよみがなと意味の混濁がはじまって,未来世界の蟹工船的な状況が描写されていく。

なんだこれ。短編集の中の4作品,皆勤の徒,洞の街,泥海の浮き城,百似隊商と,これまでのSFでもお目にかかったことのない世界が新しい言葉で展開される。英語や彿語にも翻訳されている。全滅領域のジェフ・ヴァンダーミアによれば(大森望訳),
わお。酉島伝法の『皆勤の徒』はすごいぞ。画期的な作品だ。おそらく、この十年で初めての、百パーセント独創的なSFだろう」と絶賛し、以下のように評している。「『流刑地』と『変身』のカフカが、フィリップ・K・ディックとスティパン・チャップマンとレオノーラ・キャリントンの霊を呼び出して、不気味な地球生物学と遠未来とブラザーズ・クエイをミックスしたコンテクストに放り込んだら?(中略)アンジェラ・カーターがシュールリアリズムに手綱をつけて、プロットのあるストーリーをぎりぎり語れるようにしたのと同様、酉島は、異形の未来に移植されたこの地球で、人間の奇天烈な生態と有機体の奇天烈なライフサイクルをどうにか物語として成立させている。つまり、おそろしく風変わりで先鋭的ではあっても、本書は実験的ではない。実験的な部分があるとすれば、それは、ライフサイクルや生物組織をプロットに組み込む、そのやりかたにある」
自分の感想は,筒井康隆の幻想の未来+ブライアン・オールディスの地球の長い午後+フランク・ハーバートのDUNE+・・・。主題として「宇宙」「意識」「生命」「進化」「情報」「ナノテク」「AI」がてんこ盛りで近江町市場の2700円海鮮丼状態だった。



写真:創元SF文庫「皆勤の徒」の書影


[2]棺詰工場のシーラカンス(酉島伝法)


2024年4月10日水曜日

鉄の星:テイン

早川書房世界SF全集の第4巻はガーンズバック/テインのラルフ124C41+/鉄の星だ。

ラルフ124C41+は小学校時代に友達に借りた学習雑誌の付録で読んだだけ。世界SF大会で毎年選ばれるヒューゴー賞は,1953年に創設された由緒正しいものだが,アメリカSF界の初期の功労者であり,ラルフ124C41+の著者ヒューゴー・ガーンズバック(1884-1967)にちなんで名付けられている。

問題はそちらではなく併録されている「テイン」の「鉄の星」のほうだ。そのころから今に至るまでテインが誰かもよくわからなかったし,鉄の星にもまったく興味がわかなかったので第4巻は買わずにいた。ところがです。この度調べてみると,鉄の星(Iron Star)の著者ジョン・テイン=John Taine は,数学者 Eric Temple Bell (1883-1960)のペンネームだった。


数学者のE. T. ベルの方はよく知っていた。ハヤカワ文庫の「数学を作った人々」の著者である。その3冊組は自分の本棚に並んでいる。E. T. ベルはジョン・テインのペンネームでいろいろとSFを書いているようだ。物理学者でいえば,フレッド・ホイルに少し似ている。

そのベルが数学者としてどんな仕事をしているのかというと,ベル数ベル多項式を考えた人だった。ベル数Bnとは異なったn個の対象を分割する方法の数である。異なったn個の対象をr個のグループに分割するのは第2種スターリング数nSrであり,その和がベル数になる。

n=5のベル数は,B5=52となるが,これは源氏香の数に等しい。源氏香という香道の遊び方は,本質的に異なった5種の香の分類の問題=ベル数5の問題だった。


図:五種の香をかぎ分ける源氏香の52パターン(Wikipediaから引用)

E. T. ベル=ジョン・テインのSFは,日本では前述の鉄の星を除いて出版されていない。カナダのGutenbergプロジェクトにはかろうじて,The Iron Star が公開されていた

2024年4月6日土曜日

言壺:神林長平

海外SF作家からの続き

自分が読んでいる海外SF作家について並べてみると,ほとんどが自分より年上の作家である。まあ,最近はあまり新しい本を買っていないからでもある。日本の作家でもほぼ同じことがいえるかもしれない。

神林長平(1953-)は,自分と同じ歳の作家だけれどもこれまで全く読んだことがなかった。というかあまり読む気もしなかった。たまたま,ハヤカワ文庫JAの「言壺」という短編集を手に取ってみると,はじめて面白そうだと思った。

1988年から1994年に出版されたものなので,まだインターネットが商用化される前の作品だ。ところが,そのごのネットメディアの特徴をうまく予言している。ワーカムというのは,ほとんどテキスト生成AIのことを表わしている。おもしろかったのは,「栽培文」だ。言葉が文字を失って植物という実体によって蓄積,伝達される世界を表わしている。


写真:ハヤカワ文庫「言壺」の書影

2024年4月2日火曜日

海外SF作家


少し偏っていてちょっと古いSF作家のリスト(生年順)

自分が作品を読んだことがある,または読みたいと思ったことのある海外SF作家のリスト。ただしまったく読んでないのは,ハル・クレメント,ジョン・ブラナー,イアン・バンクス,エリザベス・ハンド,N・K・ジェミシン,むむむ。

沢山(5冊以上?)読んでいるのが,コードウェイナー・スミス,アーサー・C・クラーク,レイ・ブラッドベリ,スタニスワフ・レム,カート・ヴォネガット,フィリップ・K・ディック,アーシュラ・K・ル=グウィン,J・G・バラード,T・M・ディッシュ,コニー・ウィリス,オースン・スコットカード,ぐぬぬ。
34 Arkady Strugatsky (1925-1991)
69 Cixin Liu (1963-)     https://ja.wikipedia.org/wiki/劉慈欣

 

2024年3月18日月曜日

サンリオSF文庫

ハヤカワ・SF・シリーズ(2)からの続き

サンリオSF文庫は,1978年から1987年にかけてサンリオが刊行した197冊の文庫だ。マイあっクであまり売れなかったので,希少価値は高い。山野浩一が編集顧問で入っており,NWSFというか英国のSFなどが入っている。アーシュラ・K・ル=グインとかケイト・ウィルヘルムとかディックとかディッシュとか。なかかな良かったけれど,文学的な傾向が強いものも多かったので商業的には成功しなかった。これも本の整理の段階でかなり手放してしまったものが多い。

以下がサンリオSF文庫のリストだ。◎は買ったもの,✓は別のシリーズや文庫で買ったもの。番号は著者順,アルファベットは同一著者の出版順。

番号順サンリオSF文庫全リスト
1 ビッグ・タイム フリッツ・ライバー
1 妻という名の魔女たち フッリツ・ライバー
1 バケツ一杯の空気 フリッツ・ライバー
2 辺境の惑星 アーシュラ・K・ル=グイン
2 天のろくろ アーシュラ・K・ル=グイン2
2 ロカノンの世界 アーシュラ・K・ル=グイン
2 幻影の都市 アーシュラ・K・ル=グイン
2 マラフレナ(上) アーシュラ・K・ル=グイン
2 マラフレナ(下) アーシュラ・K・ル=グイン
2 コンパス・ローズ アーシュラ・K・ル=グイン
2 夜の言葉 アーシュラ・K・ル=グイン
3 時は乱れて フィリップ・K・ディック ◎
3 死の迷宮 フィリップ・K・ディック ◎
3 暗闇のスキャナー フィリップ・K・ディック ◎
3 流れよ我が涙、と警官は言った フィリップ・K・ディック ◎
3 ヴァリス フィリップ・K・ディック ◎
3 聖なる侵入 フィリップ・K・ディック ◎
3 怒りの神 フィリップ・K・ディック&ロジャー・ゼラズニー
3 銀河の壺直し フィリップ・K・ディック
3 ザ・ベスト・オブ・P・K・ディックⅠ フィリップ・K・ディック ◎
3 ザ・ベスト・オブ・P・K・ディックⅡ フィリップ・K・ディック ◎
3 最後から二番目の真実 フィリップ・K・ディック ◎
3 ティモシー・アーチャーの転生 フィリップ・K・ディック
3 ザ・ベスト・オブ・P・K・ディックⅢ フィリップ・K・ディック ◎
3 ザ・ベスト・オブ・P・K・ディックⅥ フィリップ・K・ディック ◎
3 テレポートされざる者 フィリップ・K・ディック ◎
3 あなたを合成します フィリップ・K・ディック
3 シミュラクラ フィリップ・K・ディック
3 虚空の眼 フィリップ・K・ディック ✓
3 アルファ系衛星の氏族たち フィリップ・K・ディック
3 ブラッドマネー博士 フィリップ・K・ディック
3 アルベマス フィリップ・K・ディック
4 ノヴァ急報 ウィリアム・S・バロウズ
4 爆発した切符 ウィリアム・S・バロウズ
5 レベル・セブン モルデカイ・ロシュワルト
6 万華鏡 レイ・ブラッドベリ
6 ブラッドベリは歌う レイ・ブラッドベリ
7 カインの市 ケイト・ウイルヘルム
7 クルーイストン実験 ケイト・ウイルヘルム ◎
7 杜松の時 ケイト・ウイルヘルム ◎
7 鳥の歌いまは絶え ケイト・ウイルヘルム 
8 妖精物語からSFへ ロジェ・カイヨワ
9 ステンレス・スチール・ラット ハリイ・ハリスン
9 囚われの世界 ハリイ・ハリスン
9 ステンレス・スチール・ラットの復讐 ハリイ・ハリスン
9 ステンレス・スチール・ラット世界を救う ハリイ・ハリスン
9 大西洋横断トンネル、万歳! ハリイ・ハリスン
9 ステンレス・スチール・ラット諸君を求む ハリイ・ハリスン
9 ステンレス・スチール・ラット大統領に ハリイ・ハリスン
10 大地への下降 ロバート・シルヴァーバーグ
10 確率人間 ロバート・シルヴァーバーグ
10 内死 ロバート・シルヴァーバーグ
10 内側の世界 ロバート・シルヴァーバーグ
11 ザ・ベスト・オブ・サキ サキ
11 ザ・ベスト・オブ・サキ2 サキ
12 解放された世界 H・G・ウエルズ
12 神々のような人々 H・G・ウエルズ
12 ザ・ベスト・オブ・H・G・ウエルズ H・G・ウエルズ
13 旅に出る時ほほえみを ナターリャ・ソコローワ
14 猿とエッセンス オルダス・ハックスリイ
15 口に出せない習慣、奇妙な行為 ドナルド・バーセルミ
15 罪深き愉しみ ドナルド・バーセルミ
15 アマチュアたち ドナルド・バーセルミ
16 失われた部屋 フィッツ=ジェイムズ・オブライエン
17 クローン リチャード・カウパー
17 大洪水伝説 リチャード・カウパー
18 馬的思考 アルフレッド・ジャリ
19 天国の顔 ブライアン・M・ステイブルフォード
19 地獄の幻影 ブライアン・M・ステイブルフォード
19 無限の煌き ブライアン・M・ステイブルフォード
19 ハルシオン・ローレライ ブライアン・M・ステイブルフォード
19 ラプソディー・イン・ブラック ブライアン・M・ステイブルフォード
19 プロミスト・ランド ブライアン・M・ステイブルフォード
19 パラダイス・ゲーム ブライアン・M・ステイブルフォード
19 フェンリス・デストロイヤー ブライアン・M・ステイブルフォード
19 スワン・ソング ブライアン・M・ステイブルフォード
20 ムーンスター・オデッセイ デイヴィッド・ジェロルド
20 H・A・R・L・I・E デイヴィッド・ジェロルド
21 バロック協奏曲 アレッホ・カルペンティエール
22 334 トマス・M・ディッシュ ◎
22 歌の翼に トマス・M・ディッシュ アマル ◎
22 キャンプ・コンセントレーション トマス・M・ディッシュ ◎
23 ウルフヘッド チャールス・L・ハーネス
24 時は準宝石の螺旋のように サミュエル・R・ディレーニ ◎
24 エンパイア・スター サミュエル・R・ディレーニ
24 アプターの宝石 サミュエル・R・ディレーニ
25 五月革命'86 ジャック・ステルンベール
26 緑色遺伝子 ピーター・ディキンスン
26 キングとジョーカー ピーター・ディキンスン
26 生ける屍 ピーター・ディキンスン ✓
27 ナボコフの一ダース ウラジミール・ナボコフ
28 枯草熱 スタニスワフ・レム
28 天の声 スタニスワフ・レム ◎
28 浴槽で発見された手記 スタニスワフ・レム ◎
29 楽園の崩壊 ジョーン・D・ヴィンジ
30 ロザリンド・アッシュ
30 嵐の通夜 ロザリンド・アッシュ
31 暗黒のすべての色 ロイド・ビッグルJr.
31 暗黒の監視人 ロイド・ビッグルJr.
31 この暗黒化する宇宙 ロイド・ビッグルJr.
31 沈黙は死の匂い ロイド・ビッグルJr.
31 時の復讐 ロイド・ビッグルJr.
32 ラーオ博士のサーカス チャールズ・G・フィニー
33 新しいSF ラングドン・ジョーンズ編 ◎
33 レンズの眼 ラングドン・ジョーンズ
34 女の千年王国 ヴァージニア・キッド編
35 飛行する少年 ディディエ・マルタン
36 不安定な時間 ミシェル・ジュリ
36 熱い太陽、深海魚 ミシェル・ジュリ
37 迷宮の神 コリン・ウィルスン
37 ラスプーチン コリン・ウィルスン
38 影のジャック ロジャー・ゼラズニイ
38 わが名はレジオン ロジャー・ゼラズニイ
38 ロードマークス ロジャー・ゼラズニイ
39 コンピュータ・コネクション アルフレッド・ベスター
40 バドティーズ大先生のラブ・コーラス ウイリアム・コッツウインクル
41 愛しき人類 フィリップ・キュルヴァル
42 アルクトゥールスへの旅 デイヴィッド・リンゼイ
42 憑かれた女 デイヴィッド・リンゼイ
43 伝授者 クリストファー・プリースト
43 逆転世界 クリストファー・プリースト ✓
43 アンティシペイション クリストファー・プリースト編
44 灰と星 ジョージ・ゼブロウスキー
44 オメガ・ポイント ジョージ・ゼブロウスキー
45 ブロントメク! マイクル・コニイ
45 ハローサマー、グッドバイ マイクル・コニイ ✓
45 冬の子供たち マイクル・コニイ
45 カリスマ マイクル・コニイ
46 猫城記 老舎
47 手で育てられた少年 ブライアン・W・オールディス
47 兵士は立てり ブライアン・W・オールディス
47 世界Aの報告書 ブライアン・W・オールディス
47 マラキア・タペストリ ブライアン・W・オールディス
47 突然の目覚め ブライアン・W・オールディス
48 ビアドのローマの女たち アントニイ・バージェス
48 アバ、アバ アントニイ・バージェス
48 どこまで行けばお茶の時間 アントニイ・バージェス
49 殉教者聖ペテロの会 ジョン・ソール
50 どこからなりとも月にひとつの卵 マーガレット・セントクレア
51 コスミック・レイプ シオドア・スタージョン
51 スタージョンは健在なり シオドア・スタージョン
52 パステル都市 M・ジョン・ハリスン
53 二重の影 フレデリック・ターナー
54 この狂乱するサーカス ピエール・プロ
55 深き森は悪魔のにおい キリル・ボンフィリオリ
56 愛の渇き アンナ・カヴァン
56 ジュリアとバズーカ アンナ・カヴァン
56 アンナ・カヴァン ✓
57 メデューサの子ら ボブ・ショウ
57 去りにし日々、今ひとたびの幻 ボブ・ショウ
57 おれは誰だ? ボブ・ショウ
57 眩暈 ボブ・ショウ
57 見知らぬ者たちの船 ボブ・ショウ
58 スリランカから世界を眺めて アーサー・C・クラーク ✓
59 夢幻会社 J・G・バラード ◎
59 ザ・ベスト・オブ・J・G・バラード1 J・G・バラード
60 2018年キング・コング・ブルース サム・J・ルンドヴァル
61 はざまの世界 ノーマン・スピンラッド
62 フィーメール・マン ジョアナ・ラス
63 沈黙の声 トム・リーミイ
63 サンディエゴ・ライトフット・スー トム・リーミイ
64 異星の人 ガードナー・ドゾア
65 マイロン ゴア・ヴィダル
66 フレドリック・ブラウン傑作集 ロバート・ブロック編
67 アースウインド ロバート・ホールドストック
67 リードワールド ロバート・ホールドストック
68 去勢 キングズリイ・エイミス
69 ジョン・コリア奇談集 ジョン・コリア
70 ベストSF1 ハリスン&オールディス編
71 マーシャン・インカ イアン・ワトスン ◎
71 ヨナ・キット イアン・ワトスン ◎
72 夢の蛇 ヴォンダ・マッキンタイア
72 脱出を待つ者 ヴォンダ・マッキンタイア
73 ドロシアの虎 キット・リード
74 人生ゲーム D・G・コンプトン
75 着飾った捕食家たち ピエール・クリスタン
76 マイクロノーツ ゴードン・ウィリアムズ
77 シンディック シリル・M・コーンブルース
78 最新版SFガイドマップ入門・歴史編 デイヴィッド・ウイングローブ編
78 最新版SFガイドマップ作家名鑑編上 デイヴィッド・ウイングローブ編
78 最新版SFガイドマップ作家名鑑編下 デイヴィッド・ウイングローブ編
79 奪われた惑星 ロン・ハバート
79 人類からの使者 ロン・ハバート
79 テレポーテーション作戦 ロン・ハバート
79 侵略惑星サイクロの謎 ロン・ハバート
79 宇宙戦艦キャプチュア ロン・ハバート
79 地球よ、銀河に甦れ ロン・ハバート
80 スラデック言語遊戯短編集 ジョン・スラデック
81 老いたる霊長類の星への賛歌 ジェイムズ・ティプトリーJr.
82 V上 A・C・クリスピン
82 V下 A・C・クリスピン
83 悪魔は死んだ R・A・ラファティ
83 イースターワインに到着 R・A・ラファティ
84 ホースクラン登場 ロバート・アダムス
84 ホースクランの剣 ロバート・アダムス
84 ホースクランの復讐 ロバート・アダムス
85 パヴァーヌ キース・ロバーツ ✓



写真:サンリオSF文庫と創元SF文庫(撮影:2024.3.12)

P. S. 2024年5月4日,サンリオSF文庫161冊が,国立国会図書館デジタルコレクションに収録された。これで全文を読むことができるようになった。素晴らしい。36冊欠落しているけれど,それは何だろうか?→収録されているものの番号を太字にしてみた。

2024年3月17日日曜日

ハヤカワ・SF・シリーズ(2)

ハヤカワ・SF・シリーズ(1)からの続き

ハヤカワ・SF・シリーズの中でも,特別な思い入れがあるのが,SFマガジンベスト No.1 から No.4 である。1960年から1963年のSFマガジンに掲載された短編中で,その年のベスト作品を集めた年刊傑作集である。当時SFマガジンの編集長だった福島正実が次の方針で編集したものだ。
1. 作家別で,同一年に1作家だけ
2. 編集部の評価,読者の感想,海外の評価をこの順に勘案して洗濯
3. ある程度長いものは割愛
4. 翻訳権の関係で収録できないものもあった
5. 他の短編集やアンソロジーなどが予定されるものはそちらにまかせる

SFマガジン・ベスト No.1(1960)
太陽系最後の日, Rescue Party, アーサー・C・クラーク 
愛しのヘレン, Helen o'Loy, レスター・デル・リイ 
世界のたそがれに, At World's Dysk, エドモンド・ハミルトン 
遥かなるケンタウルス, Far Centauri, A・E・ヴァン・ヴォクト 
AL七六号疾走す, Robot AL76 Astray, アイザック・アシモフ 
考える葦, The Plants, マレイ・ラインスター 
エレンへの手紙, The Letter to Elen , チャン・デーヴィス 
生きてる家, The House Dutiful, ウィリアム・テン 
衝動, Impulse, エリック・フランク・ラッセル 
黒い天使, The Dark Angel, ルイス・パジェット 
ママだけが知っている, That Only a Mother, ジュディス・メリル 
犬の散歩も引き受けます, We Also Walk Dogs, ロバート・A・ハインライン 


SFマガジン・ベスト No.2(1961)
時を超えて, Elsewhen, ロバート・A・ハインライン 
消去, 筒井俊隆
フェッセンデンの宇宙, Fessenden's Worlds, エドモンド・ハミルトン 
プルトニウム, Plutonium, C・A・スミス 
宇宙塵, 高橋泰邦
観光案内, The Time Trade, ウィルスン・タッカー 
いつの日か還る, Obligation, ロジャー・ディー 
親しき友へ, Dear Pen Pal, A・E・ヴァン・ヴォクト 
蠱惑の珠, Hypnogriph, ジョン・アンソニイ 
地球エゴイズム, 山田好夫
ナンバー9, Number 9, クリーヴ・カートミル 
人類供応法, How to Serve Man, デーモン・ナイト 
漂流者, Castaway, バートラム・チャンドラー 
睡魔, Sleep in Armageddon, レイ・ブラッドベリ 
エラー, Technical Error, アーサー・C・クラーク 

SFマガジン・ベスト No.3(1962)
大当たりの年, The Year of the Jackpot, ロバート・A・ハインライン 
小鳥の歌声, Bird Talk, ジョン・P・マクナイト 
雷鳴と薔薇, Thunder and Roses, シオドア・スタージョン 
暴風警報, Storm Wanings, ドナルド・A・ウォルハイム 
サリイはわが恋人, Sally, アイザック・アシモフ 
前哨, The Sentinel, アーサー・C・クラーク 
もののかたち, The Shape of Things, レイ・ブラッドベリ 
反対進化, Devolution, エドモンド・ハミルトン 
前哨戦, Skirmish, クリフォード・D・シマック 
男と女から生まれたもの, Borin of Man and Woman, リチャード・マティスン 
次元分岐点, Other Tracks, ウィリアム・セル 

SFマガジン・ベスト No.4(1963)
時の門, By His Bootstraps, ロバート・A・ハインライン 
収穫, 半村良
火星で最後の…, 豊田有恒
対象, Referent, レイ・ブラッドベリ 
死都, THe Dead City, マレイ・ラインスター 
時間がいっぱい, All the Time in the World, アーサー・C・クラーク 
変身処置, The Beautiful Woman, チャールズ・ボーモント 
めざめ, Dormant, A・E・ヴァン・ヴォクト 
トラブル・パイル, Pile of Trouble, ヘンリイ・カットナー 


写真:SFマガジンベスト No.1 〜No.4の書影

中学生から高校生時代に,小松左京やアーサー・C・クラークらの短編集以外で最初に購入したのがこの4冊だった。2001年宇宙の旅の原案にあたるクラークの「前哨」や,手塚治虫の火の鳥にモチーフが使われたブラッドベリの「対象」など貴重な作品が含まれていた。「アルジャーノンに花束」は,ヒューゴー賞傑作集に収録されるとあったが,No.2を買いそびれたため世界SF全集の世界のSF現代篇まで待つことになる。

日本人作家としては,筒井康隆の弟の筒井俊隆の「消去」半村良の「収穫」などが採録されていて印象深かった。しかし,日本人の主要作家はほとんど含まれていない。まだ登場していなかったかもしれない。その中に豊田有恒の「火星で最後の…」があるのがすごいけれど,後に福島正実と豊田有恒は覆面座談会事件で修復不能の関係になってしまう。