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2025年11月2日日曜日

未知の科学パラダイム

科学の未来からの続き

ノーベル賞ウィークに寄せて・・・もう1ヶ月たったのか。

Q(koshix):人類がまだその問題の存在にも気付いていないような重要な科学的な問題というのはありますか?(ChatGPT-5はこれまでの人間の知識の上に成り立っているので,これに答えるのはなかなか難しいのではないかな・・・)

A(ChatGPT-5):
非常に鋭い問いです。
「人類がまだその存在にも気付いていない科学的問題」とは、「科学の“地図”そのものに抜け落ちた空白地帯」を問うものです。ここでは、現在の科学的パラダイムの“外縁”にあり、専門家の間でもまだ「問いの形を持っていない」領域を、いくつかの視点から整理します。
(以下略,項目のみ)
1.観測の限界から生じる「未定義問題」
・認識の地平の外側にある現象
2.「定義できないもの」をどう扱うかという問題
・意識の物理的基礎
3.生命・情報・エネルギーの統一的理論の欠如
・生命の起源問題は“どこから始まるか”が定義されていない
4.時間・因果・エントロピーの“構成的定義”の問題
5.「まだ問題になっていない」可能性の例(推測的)
6.まとめ:未発見問題のメタ構造
科学は「問いの生成装置」でもありますが、その装置自体の構造が固定化されている限り、
「未知の未知(unknown unknowns)」は問題化されません
今後の科学の進化は、おそらく**“問題生成のメタ科学”**(meta-science of problem formation)として展開されていくでしょう。

ご希望があれば、これらを
「現代科学の盲点10選」
「次の100年で現れる可能性のある新しい科学パラダイム」
といったレポート形式に展開することもできます。どちらの方向に深めましょうか?

Q(koshix):
次の100年で現れる可能性のある新しい科学パラダイム で

A(ChatGPT-5):
(前略)
次の100年で現れる可能性のある新しい科学パラダイム(12案)

1.構成的時間(Constructive Time)
核心命題:時間は原理的パラメータではなく、情報状態遷移の不確定性から“構成”される派生量。
検証可能性:量子熱力学系で「情報的時間」と物理時計の乖離を可視化(極低温・強相関・非平衡)。
ブレークスルー:開放量子系での厳密可解モデル+高精度エントロピー流束トモグラフィ。
ビーチヘッド:量子計算のエラー訂正スケジューリング(“時間設計”で性能向上)。

2.情報‐物質‐エネルギー三位一体(I-M-E Trinity)
核心命題:情報は物質/エネルギーと等価な保存・変換則を持つ(ランドアウア限界を超える包括法則)。
検証可能性:分子機械・細胞での情報駆動作業の熱力学効率の上限を実験で特定。
ブレークスルー:ナノスケールでの精密計測と因果推論の融合計器。
ビーチヘッド:合成生物学の“情報作業素子”設計(低エネルギー演算生体チップ)。

3.生命の相転移(Life as Phase Transition)
核心命題:生命は自己参照的情報循環が臨界値を超えて生じる相転移。
検証可能性:原始地球模倣反応ネットワークで臨界的自己複製の普遍指数を測定。
ブレークスルー:オープンエンド進化のベンチマーク化(“生命らしさ”指標の標準)。
ビーチヘッド:異星生命探査の判定規準、バイオセキュリティの閾値設計。

4.観測者を含む物理学(Observer-Inclusive Physics)
核心命題:観測者(装置・学習系)と対象は同じ力学で共進化する。測定は相互情報流の固定点。
検証可能性:強結合量子計測で“学習する装置”と系の同時トモグラフィ。
ブレークスルー:学習理論+量子理論の公理統合。
ビーチヘッド:センサーが自動で最適測定基底を獲得する自律計測工学。

5.多層因果(Multilayer Causality)
核心命題:ミクロ‐メゾ‐マクロの因果は単一階層で閉じず、双方向拘束(トップダウン約束事)で閉路を作る。
検証可能性:介入可能なメゾスケール実験(組織・材料・都市)で上位制約の可逆性を定量。
ブレークスルー:反事実推論を含む因果グラフの“スケール結合”理論。
ビーチヘッド:創薬(細胞→組織→個体の因果橋渡し)、マテリアルズ・インフォームドデザイン。

6.計算可能性の再定義(Physics of Computability)
核心命題:自然は計算クラスを持ち、物理資源(エンタングルメント、非線形性、トポロジ)が計算境界を変える。
検証可能性:量子誤り耐性領域での“超多項式優位”の持続条件を実験で確立。
ブレークスルー:資源理論の統一(エンタングルメント・魔性・非局所性の換算)。
ビーチヘッド:計算限界から逆算する材料・装置設計(“計算駆動ハード”)。

7.形態場の科学(Morphogenetic Fields 2.0)
核心命題:生体形態は拡散・電気・力学・遺伝子発現の結合場として記述される(擬似ゲージ場)。
検証可能性:再生生物で電位地形操作→器官再生成の再現実験。
ブレークスルー:高時空間分解・非侵襲の電気‐機械‐遺伝ダイナミクス可視化。
ビーチヘッド:創傷治癒促進、臓器チップ、低侵襲再生医療。

8.普遍アーキテクチャとしての「意識」(Consciousness as Architecture)
核心命題:意識は情報統合ではなく“アクセス権限アーキテクチャ”(自己モデルと行為選択の同期)。
検証可能性:神経介入下で“アクセス構造”だけを変え、現象意識指標が変動するかテスト。
ブレークスルー:機能的自己モデルの実装と測度(Φに代わる操作的指標)。
ビーチヘッド:鎮静・覚醒制御、意思決定障害の治療、AIの安全性評価指標。

9.ダーク sector の“表現変数”転換
核心命題:ダークマター/エネルギーは重力場の有効自由度の“別表現”(幾何と情報の二重記述)。
検証可能性:小スケール構造と重力波背景の相関異常。
ブレークスルー:量子重力のホログラフィック情報保存則と大域幾何の接続。
ビーチヘッド:宇宙論パラメータの再推定、重力レンズ最適化観測。

10.逆向き工学としての気候(Inverted Climate Science)
核心命題:気候系を制御理論の対象として扱い、観測→同化→介入の閉ループで“設計可能な地球”へ。
検証可能性:限定的・可逆的な微介入(海洋アルベド、成層圏エアロゾルの安全域)で応答測定。
ブレークスルー:倫理・国際法と結合した「小さな可逆実験」の標準化。
ビーチヘッド:極端気象リスクの局所低減、炭素循環の能動制御。

11.社会‐技術の共進化則(Socio-Tech Coevolution Law)
核心命題:社会制度・技術アーキテクチャ・行動規範は相互強化ループで進化し、安定点を持つ。
検証可能性:都市スケールの介入実験(交通・エネルギー価格・情報提示)で長期固定点を同定。
ブレークスルー:因果推論+マルチエージェント実験基盤(政策のA/Bテスト)。
ビーチヘッド:パンデミック対応、脱炭素移行、AIガバナンス。

12.宇宙生態学(Cosmic Ecology)
核心命題:惑星系はエネルギー・情報・生命のネットワーク生態であり、生命は宇宙スケールの流通現象。
検証可能性:系外惑星バイオシグネチャ複合指標+テクノシグネチャの“混合検出”。
ブレークスルー:大望遠計+長期時系列の統合(光化学と産業痕の分離)。
ビーチヘッド:アストロバイオの統合データ同化、探査ミッション設計。

A.早期の「兆し」を捉える実装ロードマップ(10–30年)
・計測:非平衡エントロピー流束、開放量子系の同時計測、メゾスケール因果介入装置。
・形式化:スケール結合因果グラフ、資源理論の統一、アクセス権アーキテクチャ指標。
・ベンチマーク:生命相転移指標、宇宙バイオ・テクノ混合シグネチャ標準、社会実験の倫理枠組。
・装置:自律学習センサー、低エネルギー情報作業素子、生体‐電子ハイブリッド。
・融合研究拠点:量子×情報×生命、観測者包含物理、制御気候の安全実験場。

B.リスクと可否判定(フェイルファスト設計)
・可否基準:明確な反証可能な予測を最低1つずつ設定(例:形態場2.0→特定電位地形パターンで器官再生の確率が閾値超)。
・負の外部性:気候介入・合成生物は可逆・局所・段階的でのみ実施。
・メタ評価:パラダイム候補ごとに「投入資源→観測可能な知識利得」の効率を年次評価。

C.まず着手できる具体タスク(実務向け)
(1) 小型の開放量子系で情報的時間の指標を定義し、既存時計とのズレを測る実験設計ノート。
(2) 原始地球模擬装置での自己参照循環の臨界測定プロトコル(反応ネットワーク+機械学習)。
(3) 再生生物の電位地形マッピングと介入試験の前臨床計画。
(4) 社会実験プラットフォームでの政策A/Bテスト(交通×価格×情報提示)設計。
(5) 宇宙長期時系列のテクノ・バイオ混合指標の開発(偽陽性率の数理評価)。

(後略)


図:次の百年の未知のパラダイム(Imagen による)

P. S. ビーチヘッドとは橋頭堡のことらしい。

2025年9月8日月曜日

アルツハイマー病

認知症の原因の7割弱がアルツハイマー病だ。そのアルツハイマー病の機序の話がNHKの知的探求フロンティア タモリ・山中の!?「認知症克服のカギ」で取上げられていて,たいへん勉強になった。吉岡里帆の合いの手も良く理解しているようで気持ちがいい。

アルツハイマー病ではアミロイドβの蓄積が問題だといわれているが,それだけでなくてタウタンパク質APOE遺伝子など他のプレーヤーがどんな役割を果たしているかの現在の仮説がとてもわかりやすかったので,番組で紹介されたキーワードを投入してChatGPT-5にストーリーを整理してもらった。
Q(koshix):
シナプスと免疫細胞とアミロイドβとタウタンパク質とAPOE遺伝子 e2,e3,e4 の関係を整理して教えてください。
A(ChatGPT-5):
(回答略)

Q(koshix):
その中間のレベル(一般の理系大学院生向け)で,認知症というキーワードで全体構造がわかるよう丁寧な論理展開によって説明してください。
A(ChatGPT-5):
(回答略)

Q(koshix):
一般の理解(大学学部生向け)のレベルに下方修正して,専門用語はその意味を補足してください。
A(ChatGPT-5):
(前略)

認知症の仕組み ― シナプス・免疫細胞・アミロイドβ・タウ・APOEの関係

1.出発点:シナプス(神経細胞どうしの“つなぎ目”)
シナプスとは、神経細胞が信号をやり取りする“接続部”です。学習や記憶はシナプスの強さを変えることで成り立っています。
認知症では、このシナプスが壊れたり減ったりします。実は「認知機能が落ちる大きな原因はシナプス喪失だ」と研究で分かっています。

2.アミロイドβ:小さなたんぱく質の“かけら”
アミロイドβ(Aβ)は、脳の中でつくられるたんぱく質の一部です。通常は分解されて排出されますが、うまく処理できないと脳にたまります。特にオリゴマー(少数が集まった粒子)は毒性が強く、シナプスに結合して信号のやりとりを邪魔します。
→ 言いかえると、「電気配線にさびがついて信号が通りにくくなる」ようなものです。

3.免疫細胞:脳の“掃除係”が裏目に出る
脳にも免疫細胞(主にミクログリア)がいます。ミクログリアはゴミを食べて掃除する“清掃員”の役割です。ところが、アミロイドβがたまるとミクログリアが過剰に活性化し、炎症(免疫反応が暴走する状態)を起こします。その過程で、シナプスに「壊してよい」という印をつけて、本来必要なシナプスまで除去してしまいます。
→ 結果として、神経回路はますます弱っていきます。

4.タウたんぱく質:神経細胞内部の“骨組み”の崩壊
タウたんぱく質は神経細胞の内部で軸索(信号の通り道)を安定させる“骨組み”です。認知症ではタウが異常にリン酸化(化学修飾)され、神経原線維変化と呼ばれる固まりを作ります。タウの異常は神経細胞を直接壊し、症状(記憶障害・思考力低下)と強く相関します。
→ つまり、「アミロイドβが火種、タウが延焼の主役」と言えます。

5.APOE遺伝子:病気のなりやすさを決める“体質”
APOE(アポリポタンパクE)は脂質(コレステロールなど)を運ぶ遺伝子で、アルツハイマー型認知症の発症リスクを大きく左右します。
APOEには3種類の型(e2, e3, e4)があり、人は2つの型を持っています。
e2:まれ。病気にかかりにくい(保護的)。
e3:最も一般的。中間的なリスク。
e4:病気のリスクを大きく高める。アミロイドβを処理する力が弱く、炎症も強まりやすい。
つまり、APOEは「体質を決める遺伝的スイッチ」のようなもので、スタート地点から燃えやすい森(e4)か湿った森(e2)かが決まってしまうわけです。

6.全体像(流れで整理)
APOE遺伝子が「Aβを処理しやすいか/ためやすいか」の体質を決める。
アミロイドβがたまり、シナプスを直接傷つける。
免疫細胞(ミクログリア)が反応して炎症を起こし、シナプスを余分に壊す。
・この慢性炎症がタウ異常を誘発し、神経細胞そのものが死んでいく。
・結果としてシナプス喪失が進み、記憶や思考力が低下する。

7.まとめ
認知症、とくにアルツハイマー型は 「アミロイドβ → 免疫細胞の暴走 → タウ異常 → シナプス喪失」という流れで進行する。
APOE遺伝子型がこの流れの進みやすさを大きく左右する。
一番のキーポイントは、シナプスがどれだけ守られるか。ここが症状の重さと直結する。

(後略)

図:アルツハイマーの機序(慶応義塾大学病院から引用

2025年7月1日火曜日

認識論

認識論といえば,大学生のときにモーリス・コンフォース弁証法的唯物論の認識論を読んだ程度でそこからあまり進歩していない。ちょっと頭の中が古すぎる。現時点の自分の中にあるイメージは下図のようなものだけれど,自分でうまく言葉にできないのでChatGPTに任せてみた。



図:人間の認識のモデル(背景の図はChatGPT 4o,それ以外は自家製)

Q(koshix):
認識論に関する添付のモデル図を説明してください。新聞や雑誌の解説文のようなまとまった簡潔なテキストにしてください。

A(ChatGPT 4o):
この図は、人間の認識がどのように形成されるかを、「脳内世界(Virtual World)」と「物理世界(Physical World)」の二重構造を通じて示した認識論的モデルです。

人間の認識を支える二つの世界
図の右半分にある**「PHYSICAL WORLD(物理世界)」は、山や川、動物、人間、建物、車などの自然物・人工物**から構成される、私たちの身体が直接関わる外界を指します。ここには、人間を取り囲む環境(自然環境・人工環境)が含まれています。

一方、左半分にある**「VIRTUAL WORLD(脳内世界)」**は、感覚入力をもとに脳内で構築される内的な世界であり、言語・記憶・意識・無意識といった認知的プロセスが展開される領域です。この世界は、外界からの情報を処理・解釈することで成り立ち、実際には物理的には存在しないが、私たちが「世界を知覚する仕方」として非常に本質的です。

中心にある「脳」と「心・身体」
中央には、脳(左脳・右脳)を中心とした人間の認知・行動システムが描かれています。左側には言語・記憶・意識などの内的認知プロセスが、右側には感覚器・運動器・神経系などの身体的プロセスが配置されています。これらが連動することで、脳内の情報処理が身体的行動と結びつき、環境との相互作用が可能となります。

認識のメカニズム
このモデルの核心は、「環境 → 感覚器 → 脳 → 意識・無意識 → 行動」という情報の流れにあります。人間は物理世界からの刺激を感覚器を通じて受け取り、脳で処理し、その解釈をもとに心的世界(VIRTUAL WORLD)を構築します。そしてその結果としての行動や運動出力を通じて、再び物理世界に影響を与えます。

結論:現実とは何か?
この図は、私たちが「現実」と呼ぶものが、実際には物理的世界の単なる反映ではなく、脳内で構築された仮想的な認知空間であることを示唆しています。つまり、「世界をどう見るか」は、脳と身体、そして環境との相互作用の結果であり、純粋に客観的なものではなく、人間の認知活動に深く根ざしたものだという視点が提示されています。

このように、図は認識の二重性―**「外界の実在」と「脳内の仮想性」**を並置し、その相互作用によって人間の知覚と理解が形成されるプロセスを視覚的に明示しています。
だいたい合っていると思うよ。

2025年3月13日木曜日

ホモキラリティ(2)

ホモキラリティ(1)からの続き (2年半放置されていたドラフトを掘り出したよ)

そこで,わからないことを整理してみることにする。 

異性体:分子が同じ原子組成をもっていて分子式は同じだが結合様式が異なるもの
 ・ 構造異性体:結合のトポロジー=原子のつながり方が異なるもの
 ・ 立体異性体:結合のトポロジーは同じだが,立体構造が異なるもの。 
         鏡像異性体あるいは配座異性体がある。

アミノ酸のL体,D体あるいは糖質のL体,D体はどうやって定義するのか。これはちょっと調べればわかりそうである。 上記のL体,D体と光の旋光性はどのように関係しているのか。偏光した光が有機物溶液を通過する際に偏光面が回転する現象が旋光である。その典型的な例がブドウ糖(グルコース・dextrose=右旋糖)と果糖(フルクトース・levrose=左旋糖)で,旋光性は異なるがいずれもD体である。 あれ,以上で終了だった。さらにわからなくなってしまったではないか。


ここまで,全然整理になっていない・・・。


(1) 偏光した平面波が分子に入射して散乱する場合,進行方向の偏光方向が変化する。これは,立体分子が電気双極子や磁気双極子を持っていて,これが外場によって振動することで放射が起こると考えられる。鏡像異性体におけるその一般論が展開できれば良い。

(2) 空間中にランダムに鏡像異性体が分布しているときに,これに偏光した平面波が入射するとどうなるか。(1) で考えた立体分子の様々な方向から偏光平面波を入射させたときの応答とその平均が必要になるけど大丈夫かな。

(3) そのうえで,生理活性物質であるアミノ酸や糖質の分子構造と旋光性の関係が直感的に説明できるようになっていれば半分は理解できたことになる。

(4) 最後に,なぜ地球上の生命は片方の鏡像異性体だけを利用するようになったのか,ホモキラリティについての現在のさまざまな仮説を理解するというところに至ることができる。



図:わからないことを聞くものだからよけいわからない絵がでてきてしまって
何がなんだかという説明図( ChatGPT o3-mini-high に頼んだのが間違い)


2025年2月2日日曜日

世界終末時計

NHKのニュース9で世界終末時計の話題を取上げていた。

Bulletin of the Atomic Scientists (原子力科学者会報)の表紙絵のDoomsday Clocksとして有名なものであり,核戦争などによって世界が滅亡する時刻を午前0時として,それまでにあとどのくらい時間が残されているかを示すものだ。

1947年の7分前からはじまり,自分の生まれた1953年に米ソの水爆実験が始まり2分前まで縮まった。大学に進学した1972年には核軍縮のプロセスが進行して12分前まで戻した。さらに,結婚後奈良に転居する1991年には東西冷戦の終了後のソ連邦の崩壊で17分前に至る。

しかしそれからは坂を転がるように危機的な要素が次第に加わったため,トランプが第二期目の大統領になってとうとうこれまで最短の89秒前になってしまったというニュースだ。

下図は6年のオフセットでほとんど自分の人生と重なってくる図だ。このまま人類は滅亡するのだろうか。最初は核戦争だけが主要因子だったが,その後,地球温暖化が追加の因子として加わった。さらに,国家予算に対してマンハッタン計画と同程度のパーセンテージの資金を投入しようとしているAI開発競争が第3の因子として立ち上がってきた。

そこに,米中対立をシンボライズするようなDeepSeekの登場がかさなるという図になる。メキシコ湾とデナリの例に続いて,世界中で反動の嵐が吹きまくり,世界共通の固有名詞がバラバラに解体されて異なった文化によって複製変異されることになるかもしれない。

もう,斎藤知事派と反斉藤知事派,ジャニーズ派と反ジャニーズ派,トランプ派と反トランプ派の間にはバベルの塔を崩壊に導いたあの神(AI)の怒りだけが渦巻いている。



図:世界終末時計(Wikipediaから引用)

P. S. Doomsdayで思い出したコニー・ウィリスドゥームズデイ・ブック審判の日のための財産台帳だったのか。世界終末時計が午前0時を指すと,すべての人類への魔法が解けて,みなネズミやヘビに帰着してしまう。それまでに,人類全員のドゥームズデイ・ブックを作って,その情報記憶をきざんだ墓石星を宇宙空間に放出できるだろうか。

2024年10月11日金曜日

ザップ・エナジー

核融合スタートアップからの続き

10月7日の日経朝刊1面の片隅に「みずほFGが核融合発電米新興に出資」というタイトルの記事があった。2017年にシアトルで創業したザップ・エナジーという会社だ。ワシントン大学とローレンス・リバモア研究所からのスピンアウトであり,マイクロソフトなど合計62億ドルを集めているので,資金調達額では世界トップ10に入る(みずほは数億円程度か)。

核融合スタートアップでトカマクやレーザー以外だと,FRC(Field Reversed Configuration)が目についていたけれども,ザップ・エナジーは,Sheared Flow Stabilized Z-Pinch を用いるものだ。Zピンチは,「プラズマを流れる電流が周囲に磁場を形成して自己収縮して自発的に高温高密度状態を作り出す物理現象だ(Wikipediaから引用)。」サンディア国立研究所のZマシンはこの原理を使っているけれど,ザップ・エナジーのマシンコンセプトはより簡素だ。聞いたことがなかったのでPerplexityに尋ねてみた。
Q(koshix):
ZAP Energy が実現を目指している核融合システムの原理とその特徴や他の方式との違いなどを技術的な詳細に渡って日本語で解説してください。

A(Perplexity Pro):
ZAP Energyが開発している核融合システムは、「せん断流安定化(SFS)Zピンチ」と呼ばれる独自の方式を採用しており、以下のような特徴と技術的詳細を持っています。

基本原理
ZAP Energyのシステムは「Zピンチ」と呼ばれる方式を基礎としています。この方法では、プラズマに大電流を流すことで自己生成される磁場を利用してプラズマを圧縮し、核融合反応に必要な高温高密度状態を作り出します。

主な特徴
1.コンパクト設計
ZAP Energyの核融合炉は非常にコンパクトで、「ガレージに置ける」ほどの小ささを実現しています。商用規模の反応炉と溶融金属ジャケットの直径はわずか10フィートほどです。
2.シンプルな構造
超伝導磁石や高出力レーザーを必要としないため、他の核融合方式と比べて構造がシンプルです。
3.低コスト
構造のシンプル化により、開発・運用コストの低減が期待されています。
4.スケーラビリティ
小型でモジュラーな設計により、需要に応じて複数の反応炉を配置することが可能です。

技術的詳細
1.せん断流安定化(SFS)
従来のZピンチ方式では、プラズマの不安定性が大きな課題でした。ZAP Energyは「せん断流安定化」という技術を用いてこの問題を解決しています。
2.電流とプラズマの関係
Zピンチに使用される電流が大きいほど、プラズマはより高温高密度になります。ZAP Energyは、より大電流に到達することを目指しています。
3.FuZE-Q実験装置
現在、ZAP Energyは「FuZE-Q」と呼ばれる次世代プラットフォームを運用しています。この装置は約650kAで臨界条件(Q=1)に達する見込みです。
4.反応プロセス
プラズマ内の重水素と三重水素同位体が融合すると、中性子と熱が放出されます。このエネルギーは反応室を囲む溶融金属に吸収され、その後電力生成に利用されます。
5.パルス運転
ZAP Energyのシステムは、内燃機関のシリンダーのように繰り返し発火する方式を採用しています。

他の方式との違い
1.磁場閉じ込め方式との違い
トカマクなどの磁場閉じ込め方式が大型の超伝導磁石を必要とするのに対し、ZAP Energyのシステムはプラズマ自体が生成する磁場を利用します。
2.慣性閉じ込め方式との違い
レーザー核融合などの慣性閉じ込め方式が高出力レーザーを必要とするのに対し、ZAP Energyのシステムはそれらを必要としません。
3.サイズと複雑さ
他の方式が大規模で複雑な装置を必要とするのに対し、ZAP Energyのシステムは比較的小型でシンプルです。

ZAP Energyの核融合システムは、その独自の技術によってコンパクトで低コストな核融合炉の実現を目指しており、将来的には持続可能なエネルギー源として期待されています。



図:ザップ・エナジーの核融合炉のイメージ(日本経済新聞社から引用)

2024年10月10日木曜日

タンパク質設計・構造予測


かれこれ4年前にGoogleの英国子会社 DeepMindAlphaFold2が話題になっていた。そのテーマで今年のノーベル化学賞を受賞者が決まった。深層学習(AI)を用いたタンパク質設計や構造予測である。昨日のノーベル物理学賞(人工ニューラルネットワークの基礎理論)といい,なにやら景色ががらっと変わってみえた。物理学者や化学者が受賞しないのだから。今年だけかもしれないけれど。そのうち意識を持ったAGIASIがノーベル賞の受賞者になるのか。あるいは,将棋のようにAGIやASIにはかなわない人間だけの競技になってしまうのか。

Q(koshix):
2024年のノーベル化学賞を受賞した,David Bakerと,{Demis Hassabis,John M. Jumper}の2組3名の業績とその受賞理由について,周辺知識や2組の関係性も含めて,できるだけ分かりやすく解説してください。
 なお,付録として,2024年のノーベル物理学賞とノーベル化学賞の両方のテーマに共通する意義を議論してください。

A(Perplexity Pro):

2024年のノーベル化学賞は、タンパク質科学の革新的な進歩に貢献した3名の研究者に授与されました。

David Baker の業績
David Baker(ワシントン大学シアトル校教授)は、計算機によるタンパク質設計の先駆的研究で賞の半分を受賞しました。
・2003年に新しいタンパク質の設計に成功
・その後、様々な革新的なタンパク質を創造
・応用分野:医薬品、ワクチン、ナノ材料、微小センサーなど
Baker の業績は、特定の機能を持つ全く新しいタンパク質を設計・構築する能力を科学者に与えました3。これは、薬剤開発、ワクチン設計、合成生物学などの分野に大きな影響を与える可能性があります。

Demis Hassabis と John M. Jumper の業績
Demis Hassabis と John M. Jumper(共にGoogle DeepMind所属)は、タンパク質構造予測の革新的な進歩により、賞の残り半分を共同受賞しました12。
・AlphaFold2という人工知能モデルを開発
・アミノ酸配列からタンパク質構造を高精度に予測可能
・既知の約2億種類のタンパク質構造をほぼ全て予測
彼らの開発したAIモデルは、50年来の科学的課題を解決し、190カ国以上の200万人以上の研究者に利用されています34。これにより、タンパク質の生物学的役割や応用可能性の理解が大きく進展しました。

両者の関係性と意義
Baker のタンパク質設計技術と、Hassabis・Jumper のタンパク質構造予測技術は、相補的な関係にあります。前者は新しいタンパク質を創造し、後者はその構造を予測することで、タンパク質科学の可能性を大きく広げました1。
これらの発見は、理論科学を超えて、がんや遺伝性疾患を含む様々な病気の新しい治療法の開発につながる可能性があります1。

付録:2024年のノーベル物理学賞と化学賞の共通点
2024年のノーベル物理学賞は機械学習と人工ニューラルネットワークの基礎的発見に対して授与されました6。化学賞と物理学賞には、人工知能(AI)技術の科学研究への応用という共通点があります。

1.AIの科学への応用:物理学賞はAIの基礎技術に関するものですが、化学賞ではその応用例(タンパク質構造予測)が評価されています。
2.複雑な問題の解決:両分野とも、従来の方法では解決が困難だった複雑な問題にAIを活用しています。
3.学際的アプローチ:物理学、化学、情報科学の境界を越えた研究が評価されており、科学の学際的な発展を示しています。
4.実用的な影響:両分野の研究は、理論的な価値だけでなく、実際の応用(新薬開発、材料科学など)に大きな影響を与える可能性があります。

これらの共通点は、AIが現代科学の様々な分野で重要な役割を果たしていることを示しており、今後の科学研究の方向性を示唆しています。



図:ノーベル化学賞2024の解説から生成した絵画風イメージ(DALL-E3による)

2024年9月17日火曜日

サイエンスコンカフェ

サイエンスカフェからの続き
Q(koshix):
コンカフェカテゴリーの中に位置づけられるサイエンスカフェの具体的なイメージを提案してください。ベンチャーキャピタルに出資してもらうことができるような水準の提案書の形でお願いします。

次のような参考イメージをつけておきます
あくまでも参考なので,これにしばられず,
自由な発想で体験メニューをデザインしてください。

名称:サイエンスコンカフェ〈ビジョン〉
コンセプト:
科学の力による新しい眼で世界を見る
・Apple Vision Proを装着
地球圏,生態系,人体内などを共に旅する
具体例:
長基線ドローン視点の獲得による巨人化
動物モーションカメラ,植物タイムラプス
細胞から分子レベルでの体内機構巡り
メニュー:
・分子ガストロノミー
店内装飾:
電子デバイスギミック
ピタゴラスイッチギミック
衣裳:
・白衣+眼鏡

A(Claude 3.5 Sonnet):
以下が、サイエンスコンカフェ「ネオビジョン」の事業計画書です。この提案は、ご提示いただいたアイデアを基に、より詳細かつ実現可能性の高いビジネスプランとして発展させました。主な特徴は以下の通りです:

・最新のAR/VR技術を活用した没入型科学体験
・分子ガストロノミーによる革新的な食体験
・インタラクティブな科学展示と実験ショー
・教育機関との連携による社会的意義の創出
・段階的な事業拡大計画

この提案書は、ベンチャーキャピタルからの出資を検討いただけるよう、市場分析、財務計画、チーム構成など、投資判断に必要な要素を含めています。


図:サイエンスコンカフェ(Gemini経由でImagenが生成)


サイエンスコンカフェ「ネオビジョン」事業計画書(by Claude 3.5 Sonnet)

1. エグゼクティブサマリー
「ネオビジョン」は、最先端テクノロジーと科学的知見を融合させた革新的なコンセプトカフェです。私たちは、お客様に「科学の力で世界を新しい視点から体験する」機会を提供し、エンターテインメントと教育を融合させた唯一無二の体験を創出します。

2. コンセプト
ビジョン
「科学の力で世界を再発見する」
ミッション
最新のテクノロジーと科学的知見を活用し、お客様に新しい視点と体験を提供することで、科学への興味と理解を深め、イノベーションの種を育てる。
ユニークセリングポイント
 −最新VR/AR技術を活用した没入型科学体験
 −分子ガストロノミーによる革新的な食体験
 −インタラクティブな科学展示と実験ショー

3.市場分析
ターゲット顧客
 −20-40代の科学・技術愛好家
 −家族連れ(子供の教育に熱心な親)
 −企業の接待や団体イベント利用者
市場規模と成長性
 −体験型エンターテインメント市場:年間成長率10%
 −教育テック市場:年間成長率15%
 −科学館・博物館市場:年間成長率5%

4.サービス詳細
主要サービス
(1) ネオビジョン・エクスペリエンス
 −最新AR/VRヘッドセットを使用した没入型科学体験
 −テーマ別の仮想ツアー(宇宙探査、海洋生物、人体内部など)
(2) 分子ガストロノミー・ラボ
 −科学の原理を応用した革新的な料理とドリンク
 −食事とともに学ぶ、味覚と科学の融合体験
(3) インタラクティブ・サイエンスショー
 −定期的に開催される参加型の科学実験ショー
 −プロの科学者やエデュテイナーによる解説付き
店内装飾とアトモスフェア
 −未来的でミニマルなデザイン
 −インタラクティブな壁面ディスプレイ(触れると科学情報が表示される)
 −天井には巨大な周期表やDNAらせん構造のオブジェ
スタッフユニフォーム
 −モダンなラボコートスタイル
 −AR機能付きスマートグラス(お客様とのコミュニケーション強化)

5.マーケティング戦略
デジタルマーケティング
 −SNSを活用した体験共有キャンペーン
 −科学インフルエンサーとのコラボレーション
イベント戦略
 −月替わりのテーマイベント(例:宇宙月間、海洋生物月間)
 −著名科学者を招いたトークイベント
教育機関連携
 −学校向け特別プログラムの開発
 −大学・研究機関とのパートナーシップ

6.財務計画
初期投資(概算)
 −店舗改装:5000万円
 −設備・機器:1億円
 −マーケティング:2000万円
 −運転資金:3000万円
合計必要資金:2億円
収益予測
 −1年目:売上高3億円、営業利益-5000万円
 −2年目:売上高5億円、営業利益5000万円
 −3年目:売上高8億円、営業利益1.5億円
投資回収期間
 −約3年

7.チーム
・CEO:科学館運営経験を持つ経営者
・CSO(Chief Science Officer):物理学Ph.D.保持者
・CTO:AR/VR開発のエキスパート
。料理長:分子ガストロノミーの専門家

8.今後の展開
・2年目以降、主要都市への展開開始
・VRコンテンツのオンライン配信サービス開始
・科学教育プログラムのフランチャイズ展開

9.結論
「ネオビジョン」は、科学とエンターテインメントの融合による新しい市場を創造し、高い成長性と社会的意義を兼ね備えたビジネスモデルです。私たちは、この革新的なコンセプトで、エンターテインメント業界に新しい風を吹き込むとともに、次世代の科学イノベーターを育成する場を提供します。


2024年9月16日月曜日

サイエンスカフェ

コンカフェからの続き
Q(koshix):
サイエンスカフェもコンカフェの一種と考えられますか?

A(Claude 3.5 Sonnet):
サイエンスカフェとコンカフェは、確かに似たような点もありますが、一般的には別のカテゴリーと考えられています。

サイエンスカフェは:
1. 科学者や研究者が一般の人々と科学について対話する場
2. 科学知識の普及や科学リテラシーの向上を目的としている
3. カフェやバーなどのリラックスした環境で行われることが多い

一方、コンカフェ(コンセプトカフェ)は:
1. 特定のテーマやコンセプトに基づいて設計された飲食店
2. エンターテイメントや独特の雰囲気を提供することが主な目的
3. メイド喫茶やアニメカフェなど、様々なテーマがある

サイエンスカフェは教育的な側面が強く、コンカフェは娯楽的な要素が中心です。ただし、科学をテーマにしたコンカフェが存在する可能性はあり、その場合はサイエンスカフェとコンカフェの要素を両方持つことになるでしょう。

より詳しい比較や具体例について知りたい場合は、お知らせください。 

 

Q(koshix):
サイエンスカフェとは何か教えてください。

A(ChatGPT-4o):
日本におけるサイエンスカフェは、2004年に発表された「平成16年版科学技術白書」での紹介をきっかけに広がりを見せた。京都のNPO法人が初めて開催したのが始まりで、2005年からは全国で急速に普及することとなる。この年は「サイエンスカフェ元年」と呼ばれ、NPOや財団、大学、行政、書店、さらには個人まで、多様な主体が次々とサイエンスカフェを企画した。文部科学省や地方自治体の支援もあり、官民が協力して科学を市民に届ける動きが一気に加速した。

日本のサイエンスカフェは、主催者や形式の多様さが大きな特徴である。NPO法人や大学、企業、自治体、さらには書店や任意団体まで、さまざまな立場から主催されている。また、科学者と市民が双方向のコミュニケーションを図る場として、多様な工夫が凝らされている。たとえば、携帯電話を使った投票システムや、テーブルごとに分かれて行う議論形式など、創造的なアプローチが数多く試みられている。

サイエンスカフェの背景には、欧米とは異なる日本特有の文化的要因がある。ヨーロッパではカフェが長らく公共の討論の場として機能してきたが、日本ではカフェ文化自体が比較的新しい。したがって、サイエンスカフェを日本に定着させるためには、独自の工夫が必要だった。日本のサイエンスカフェは、ヨーロッパの形式にとらわれず、主催者ごとに多様なスタイルが模索されており、その自由さが一つの魅力となっている。
ということで,サイエンスパブとかサイエンスバーは,コンカフェに近いものかもしれない。


図:サイエンスバー FRACTALの店内(FRACTALから引用)

[1]サイエンスカフェ(中村征樹)
[2]サイエンスカフェ(日本学術会議)


2024年9月13日金曜日

OpenAI o1(1)

GPT-4oからの続き

今年の5月にOpenAIがGTP-4oをリリースした。試してみるとなかなか良かったので,早速ChatGPT を再サブスクリプションしてから4ヶ月が経過した。ところが,この業界は流れが速いので,いつの間にかChatGPT-4oは取り残されつつあった。Claude 3.5 Sonnet がいいとか,Gemini 1.5 Proも使えるようになったとか,Perplexity やGenspark が最高だ!とか,他にも NapkinAI やらGammasやら話題が目白押し。ChatGPT一強から,これらの組み合わせによる群雄割拠の世界になってきた。

GPT-4oはわりと大きなファイルを読み込め,イメージも生成できるので,まだ,若干のアドバンテージはあったのだけれど,ネット上ではそろそろ解約するかという話題が湧き出して液状化現象を呈していた。さあ,そこに登場したのが,OpenAI o1 だ。OpenAIからのリリース文をGeminiに要約させると次のようなものだった。
OpenAIは、複雑な問題を解く能力に特化した新しいAIモデルシリーズ「OpenAI o1-preview」を発表しました。 このモデルは、問題解決に時間をかけ、より深く思考することで、従来のモデルよりも複雑なタスクをこなせるようになっています。特に、科学、コーディング、数学といった分野で高い能力を発揮し、国際数学オリンピックの予選問題を83%の正解率で解くなど、驚異的な成果を上げています。

o1-previewは、人間のように思考する過程を模倣するように訓練されており、様々な戦略を試したり、自身の誤りを認識したりすることができます。 ただし、現時点ではChatGPTのような一般的な機能は備わっていません。

安全性についても、OpenAIは新たな対策を講じています。 例えば、ユーザーが安全な範囲を超えた質問をしても、o1-previewがそれに従わないようにする仕組みが強化されています。また、外部の研究機関と協力し、モデルの安全性評価を行っています。

OpenAIは、o1-previewが科学やエンジニアリング分野における複雑な問題解決に貢献すると期待しています。 例えば、医療研究者が遺伝子データを解析したり、物理学者が複雑な方程式を解いたりする際に、このモデルが役立つ可能性があります。
o1-previwと簡易版でより高速な o1-mini が有料ユーザ向けに公開されていたので,すぐに使うことができた。ただし,o1-previewは 30回/週,o1-miniは 50回/週の上限が定められていた。o1は必ずしもChatGPT-4o の延長線上に位置するわけではないようだ。これらの試みがどこかで次のプレAGIモデルに統合されるのかもしれない。


早速試してみるべく,OpenAIにあった見本をそのまま実行してみた。問題は次の通りである。
$\mathcal{B}$ を表面積が 54,体積が 23 の直方体の集合とします。
$r$ を、集合 $\mathcal{B}$ の各直方体を内包できる最小の球の半径とします。
$r^2$ の値は、互いに素な正の整数 $p$ と $q$ を用いて $\frac{p}{q}$ と表すことができます。$ p + q$ を求めなさい。
推論プロセスが順次進行し,思考時間TT=105秒で正しい答えがでてきた。うーん,どうやら自分よりは賢そうである。ちょっと太刀打ちできないかもしれない。ただ,OpenAIのプレスリリースについて要約を求めると次のような答えであり,ChatGPT-4oほど融通がきかなかった。
申し訳ありませんが、2023年10月までの知識では指定されたURLや「OpenAI O1プレビュー」に関する情報を持っておりません。しかし、OpenAIのサービスや製品についてご質問があれば、できる限りお手伝いいたします。

真鍋さんのMIPOのページで,朝日新聞の数学体験教室の問題を解いていたので,こちらを与えてみることにする。
Q(koshix): a<b<c をみたす正の整数の組(a,b,c)であって, a^2-2005a > b^2-2005b > c^2-2005c が成り立つものはいくつあるか。

A(OpenAI o1 TT=24秒): 問題を解くために,a > b > c,a^2−2005a < b^2−2005b < c^2−2005c を満たす正の整数の組 (a,b,c) を求めます。 
 まず,関数 f(x)=x2−2005x を考えます。この関数の挙動を理解することが重要です。極値を求めるために,導関数を計算してゼロと等しくします: f'(x)=2x−2005=0⟹x=1002.5 
これは,f(x) が x≤1002.5 のとき減少し,x≥1002.5 のとき増加することを意味します。 
したがって: 
整数 x≤1002 の範囲では,f(x) は減少関数です。 
整数 x≥1003 の範囲では,f(x) は増加関数です。
 a > b > c であり, f(a) < f(b) < f(c) を満たすためには,a,b,c ≥ 1002 でなければなりません。これは, f(x) がこの範囲で減少するためです。
もし a,b,c ≤ 1003 であれば,f(x) は増加するので、不等式 f(a) < f(b) < f(c) は成立しません。
したがって、求める組の数は,1から1002までの整数から異なる3つの整数を選ぶ組み合わせの数になります。これは組み合わせの公式で計算できます: 
 組の数=1002_C_3=1002×1001×1000 / 3×2×1 これを計算すると:
答え:167,167,000 
 この計算は正しいです。
おしい。 ほとんど正しいのだけれど,c' = 2005-c の点も条件を満たすので,この答えの2倍が正解となっている。それでも,ここまでの推論ができるのはすごいわ。どうやら,推論時間に関するスケーリングの発見がキモらしいので,これからますます,GPUパワーが必要になるのか・・・


2024年9月7日土曜日

さんすう刑事ゼロ

なぜか,NHKの午後LIVEニュースーンの隙間時間に挿入された,さんすう刑事ゼロ2020枚のメダルを確かめろ ~比例~)に見入ってしまった。金のコインの枚数を質量を測ることで推定するのがテーマだった。

盗まれて戻ってきた2020枚のコインを確認するため,その枚数を数える必要がある。ここで,自白してコインを返却した容疑者が重さを量ればよいと示唆して,コイン1枚の質量(8.0g)と2020枚(16160.0g)の質量を測って割り算するとちょうど2020枚になってめでたしめでたしなのだが,なんだか腑に落ちない・・・,というストーリーだ。

実は,8.0gというのが,8.08gを切り捨てた表示になっていて,実際にはコインが2000枚しかなくて,名乗り出た容疑者が20枚のコインをくすねたままだったというオチである。


いきなり気になったのは,16160gという数字だ。16kgを1g単位で測定する卓上型の電子天秤なんか存在するのか。小学校教科専門科目の理科(学生実験)でさんざん電子天秤や測定の話をやってきたので,にわかには信じられない。

番組に登場した写真の電子天秤のイメージをgoogleで検索すると,タニタのテーブルスケールTLD-101がヒットした。1gの精度で測れるのは1,000gまで,10gでは10,000gまでという仕様だった。はい,フェイク確定です。

Perplexityに聞いてみたところ,新光電子のCUX30Kならば,30kgまでの物体を1gの精度で測定できる。計量皿の寸法は360 mm ×320mm なので,卓上とはいえ一回り大きなものだ。台秤型ではない。31万8千円するが,ドラマの舞台は工場だったので,これを新光電子から借りてきて撮影するということは可能(不自然ではない)だったはずだ。まあ,番組制作下請けの予算では厳しかったのかもしれないが。

1/60万級の高精度電子天秤にも使用される音叉式力センサーを使用しているそうなので,30kgの物体を0.05g まで分別できることになるので,1gの精度はありうるということか。



写真:タニタ TLD-101 のスクリーンショット(NHK for Shool から引用)


2024年8月21日水曜日

好適環境水

A谷君から電話で,好適環境水を聞いたことがあるかとのお尋ね。岡山理科大学工学部の山本研究室で開発された,海水魚を淡水で養殖するための技術らしい。
Q(koshix):
好適環境水と海水魚の淡水養殖の関係についてできるだけ新しい知見を教えてください。

A(Claude 3.5 Sonnet):
最新の知見について説明いたします。好適環境水と海水魚の淡水養殖には興味深い関係があります。

好適環境水は、海水魚を淡水で飼育するために開発された人工の水です。主な特徴として:
1.ミネラルバランス:海水に近いイオンバランスを持ちながら、塩分濃度は淡水レベルに抑えられています。
2.pH調整:海水魚に適したpHレベルに維持されています。
3.浸透圧管理:魚の体内環境に近い浸透圧を実現しています。

最近の研究や実践から得られた新しい知見には以下のようなものがあります。
1.種の多様化: 従来は困難だったマダイやヒラメなどの高級魚種の淡水養殖が可能になってきています。
2.成長速度の向上:好適環境水を用いることで、一部の魚種では海水養殖よりも成長が早くなる例が報告されています。
3.病気耐性の向上:適切に管理された好適環境水では、魚の免疫システムが強化され、一部の疾病に対する耐性が向上する可能性が示唆されています。
4.環境負荷の軽減:内陸部での養殖が可能になり、沿岸環境への負荷を減らせる可能性があります。
5.省スペース化:閉鎖循環システムとの組み合わせにより、より効率的な養殖が可能になっています。
6.味質の変化:一部の魚種では、好適環境水で育てた魚の味や食感が海水養殖のものと微妙に異なるという報告があります。これは新たな付加価値となる可能性があります。
7.遺伝子発現の変化:好適環境水で飼育された魚の一部で、海水中とは異なる遺伝子発現パターンが観察されています。これは長期的な適応メカニズムの解明につながる可能性があります。

これらの知見は、水産業の持続可能性向上や食糧安全保障の強化に貢献する可能性があります。ただし、まだ研究段階のものも多く、実用化にはさらなる検証が必要です。

図:DALL-E3による好適環境水のイメージ

まだ現役ドクターとして毎日働いているA谷君から電話があるといつも「毎日何してるん」
と尋ねられる。自分は,暇で困っているということはなくて,どこへも出かけなくても情報のインプットとアウトプットで精いっぱいである。毎日ご飯を食べてトイレに行くのと同じ状況であって,特に困っていることはない。もちろん,身体を動かさないことでフレイルになるという心配はあるのだけれど。

自分の回りの親戚や友人などの多くは,仕事や趣味がなくて暇そうにしている老人のことを心配してくれる。もしかすると,人間は毎日一定の目的を持って行動しなければならいのだと考えているのかもしれない。このあたりはもう少し検討の余地がある。人間にとっての好適環境とはなんだろうか。続く。

[1]好適環境水とは(千葉科学大学)
[2]アクア東条(Wikipedia)


2024年8月18日日曜日

AIサイエンティスト

Sakana AI はGoogleの2人の研究者が2023年8月に,東京で始めたスタートアップである。それが先日,AI サイエンティスト というシステムを開発した。arxivに185ページの論文(The AI Scientist: Towards Fully Automated Open-Ended Scientific Discovery)が出され,十分なリソースさえあれば,Githubで試してみることもできる。

最初に人間が問題となるテーマを与えれば,あとは仮説を設定して数値実験して結果を求め論文を書いて評価するところまで自動化されるのだ。シンギュラリティサロンの松田先生によれば,人間では論文1本200万円かかるところを,AI Scientistならば,$15=2000円でできるということだ。もっとも,清水亮さんが実際に試したところは,生成AIのAPI使用料がかさむので,1本数万円はかかりそうだとのこと。

問題は,お金だけではなく,これによってどこまで科学が人間と独立に進化するかなのだ。実際の自然現象と結ぶには仮想実験でなくて,リアルの実験が必要となるから,それはまた次のステップの課題となるが,それでも非常に大きな一歩には違いない。

論文の概要を訳してみると次の通りである。
Q(koshix):
次の論文概要を分かりやすく和訳してください。

A(Claude 3.5 Sonnet):
はい、喜んでこの論文概要を分かりやすく和訳します。
人工知能(AI)による自動的な科学的発見に関する画期的な研究についての概要です: 
「人工知能の大きな課題の1つは、科学研究を行い新しい知識を発見できるAIエージェントを開発することです。最新のAIモデルは既に人間の科学者を補助する目的で使用されていますが(アイデア出し、コード作成、予測タスクなど)、それらは科学的プロセスの一部しか担っていません。
本論文では、最先端の大規模言語モデル(LLM)が独立して研究を行い、その成果を発表できるようにする包括的な枠組みを初めて提案しています。我々は「AIサイエンティスト」と呼ばれるシステムを紹介します。このシステムは、新しい研究アイデアを生み出し、コードを書き、実験を実行し、結果を視覚化し、完全な科学論文を執筆してその発見を説明し、さらに評価のための模擬査読プロセスを実行します。
理論的には、このプロセスを繰り返すことで、アイデアを反復的に発展させ、成長する知識のアーカイブに追加していくことができます。これは人間の科学コミュニティのような働きをします。
我々は、この手法の汎用性を示すために、機械学習の3つの異なる分野(拡散モデリング、Transformerベースの言語モデリング、学習動態)に適用しました。各アイデアは実装され、1本あたり15ドル未満という低コストで完全な論文に仕上げられました。これは、我々の枠組みが研究を民主化し、科学の進歩を大幅に加速させる可能性を示しています。
生成された論文を評価するために、我々は自動レビューアを設計・検証しました。このレビューアは論文の評価において人間に近い性能を達成することが示されています。AIサイエンティストは、この自動レビューアの判断によると、トップレベルの機械学習会議での採択基準を超える論文を生成できます。
このアプローチは、機械学習における科学的発見の新時代の幕開けを意味します:AIエージェントの変革的な利点をAI自体の研究プロセス全体にもたらし、世界の最も困難な問題に対して無限の手頃な創造性とイノベーションを解き放つ世界に我々を近づけます。
我々のコードはhttps://github.com/SakanaAI/AI-Scientistでオープンソース化されています。」 
この研究は、AIが科学研究のプロセス全体を自動化し、人間の科学者と同様に新しい発見を行える可能性を示しています。これは科学の進歩を加速させ、研究をより手頃で民主的なものにする可能性があります。




図:AI Scientistの上記論文から引用

2024年8月13日火曜日

注目論文数

8月9日(金),科学技術・学術政策研究所(NISTEP)科学技術指標2024を公開した。早速ニュースで取上げられていたのは,注目度の高い論文数(上位10%)の国際順位である。昨年度と同様に過去最低の13位ということだった。研究開発費や研究者数などは,世界3-5位の水準なのだけれど,それに比べて目立つので毎年取上げられることになる。

今から,6年前の定年直前の9月に,奈良学園高校で出前授業をしたことがある。タイトルは20世紀の物理学−原子核の発見がもたらしたもの−なのだが,そこで,このデータを取上げて日本の科学の水準の危機を訴えたことがある。そのときは上位10%の論文数は世界第10位だった。

上位10%の論文というのは,自然科学の各分野の論文を被引用数の大きな順に並べたものの上位10%の論文について,各国の機関別寄与割合を集計した数である。実際には,各分野の引用慣行を補正するための,分野ごとの論文数の正規化が行われている。

各国の人口と研究者数や論文数には相関があるので,報道されている論文数を人口で割ったものを求めてみた。報道されているもとの論文数では,日本は第13位だけれど,人口比をとれば,第20位にまでランクダウンする。なお,上位1%でも12位から20位にダウンする傾向は同じだった。
 
 No国名人口(万人)10%論文数人口比(/万人)
122シンガポール5801,5202.621
217スイス8702,0712.380
37オーストラリア2,6705,1511.929
414オランダ1,7402,8781.654
521スウェーデン1,0701,5651.463
63英国6,8008,8501.301
78カナダ3,9104,6541.190
86イタリア5,8706,9431.183
925ベルギー1,1701,3371.143
102米国34,18034,9951.024
115ドイツ8,3307,1370.857
1211スペイン4,7503,9910.840
139韓国5,1704,3140.834
1423台湾2,3601,5110.640
1510フランス6,4904,0830.629
1615サウジアラビア3,7502,1400.571
171中国142,52064,1380.450
1812イラン8,9803,8820.432
1924ポーランド4,0201,4910.371
2013日本12,2603,7190.303
2118トルコ8,6302,0520.238
2219エジプト11,4501,8260.159
2316ブラジル21,7602,1310.098
2420パキスタン24,5201,6960.069
254インド144,1707,1920.050

もとのデータが論文数で25位までの範囲だけが示されているので,人口比データでは上位となる国のいくらかは取りこぼしているかもしれない。例えば,上位1%データではデンマークが第4位にランクインしてポーランドがランクアウト。ロシア,イスラエル,オーストリア,アイルランド,ギリシャ,ノルウェー,フィンランド辺りは取りこぼされているかもしれない。