2月3日,石破首相に孫正義(1957-)と来日したサム・アルトマン(1985-)が面会しているニュースやサム・アルトマンの東大での対話集会などをみていてもピンと来なかった。ところが同日,日本企業500社などを集めてソフトバンクが開催したイベント「AIによる法人ビジネスの変革」の動画をYouTubeでみてあっと驚いた。
ソフトバンクとOpenAIが50%ずつ出資して企業向けAIシステムを開発するSB OpenAI Japanという合弁会社を設立する。その会社の製品名が,クリスタル・インテリジェンス(Cristal Intelligence)である(注:Cristal や type ではなくて商標用の単語)。
クリスタル・インテリジェンスについての孫さんの説明はたいへんわかりやすかった。このAIシステムに企業(企業グループ)が持つ千オーダーのデータベースのソースコードを全部ぶち込むのだ。そして,それぞれのモジュールが何を意味するのかをAIに完全に把握させ,バク出しや改良を行う。これによってソフトウエア維持開発費用が圧倒的に縮減できる。もちろん過去のレガシーCOBOLプログラム問題も解決する。
この他にも,社内の全会議にAIを参加させてその内容を記録するとともに提案させる。全コールセンターをAIで代替する。外部との全ネゴシエーションにAIを同席させるなどなど。このクリスタル・インテリジェンスは各企業専用に準備され,先の合弁会社SB OpenAI Japanが導入とメンテナンスを行う。もちろん企業の秘密は完全に守られる。データーセンターは,スターゲート計画の一環として日本に設置される。しかも,これらの情報は長期記憶として保存されて当該企業AI(クリスタル・インテリジェンス)の推論や判断に利用される。
話を聞きはじめたときには,1000万円くらいのシステムをつくるのかと思っていたが,とんでもない。年間使用料は,最初にこのシステムを導入するソフトバンクグループ(売上高6.7兆円,従業員数6.5万人,総資産46.7兆円)で4500億円/年だというのだ。これがSB OpenAI Japanの手元に入る。世界にあるこの規模の企業グループ100社が導入すれば年間45兆円の収益が得られ,OpenAIのビジネスモデルが確立することになる。
もちろん,政府や行政等の組織へのバリエーションも考えられるだろう。問題は中国製の安価な対抗馬の発生にどう対応するかだろうが,情報の秘匿性の問題があるため,現行体制の中国ならば対応可能ではないか。
本当の問題は,このようなシステムが普及したときに人間に残されるのはどんな仕事なのかということだ。組織の意思決定や情報システムや研究開発やマーケティングや法務などの中核部分はすべて置き換えられてしまう。残されたのは投資家と周辺の雑務労働者だけとなる。電力会社のエリート層が動かす原子力発電所の維持が,結局のところ多重下請けで放射性物質に汚染されざるを得ない労働者なしには進まないように。
図:Cristalのイメージ(ソフトバンクから引用)
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