2023年10月31日火曜日

積分(1)

今日で10月も終わり。10月1日では遅すぎるもとっくに過ぎ去ってしまった。気分が滅入る日は,写経か積分に限るのが七十を過ぎた人の常である。

昨日の最後の積分はこんな形をしていた。$\displaystyle I = \int _{-\pi}^{\pi} \dfrac{R^2-a^2}{R^2+a^2-2 a R \cos\theta} d\theta$ ただし,$a>R$である。三角関数を含む積分は有理関数の積分に変換でき,有理関数の積分は必ず解ける。というのが,水野先生が担当していた教養の解析学の最も重要な教えの一つだった。

そのセオリーに従うと,まず,$t = \tan \dfrac{\theta}{2}$とおく。このとき,$d\theta = \dfrac{2 dt}{1+t^2}$,$\cos\theta = \cos^2 \dfrac{\theta}{2} - \sin^2 \dfrac{\theta}{2} = \dfrac{1-t^2}{1+t^2}$。今回は使わないけれど,なんならば,$\sin\theta = 2 \sin \dfrac{\theta}{2} \cos \dfrac{\theta}{2} = \dfrac{2 t}{1+t^2}$である。

これを代入すると,$\displaystyle I = \int_{-\infty}^{\infty} \dfrac{R^2-a^2}{R^2+a^2-2aR \dfrac{1-t^2}{1+t^2}}\dfrac{2 dt}{1+t^2} = \int_{-\infty}^{\infty} \dfrac{\gamma}{\alpha(1+t^2)-\beta (1-t^2)} dt$
ただし,$\alpha=R^2+a^2, \beta = 2aR, \gamma = 2(R^2-a^2)$ とおいた

したがって,$\displaystyle I = \int_{-\infty}^{\infty} \dfrac{\gamma}{(\alpha-\beta)+(\alpha + \beta) t^2} dt = \dfrac{\gamma}{\alpha -\beta}\int_{-\infty}^{\infty} \dfrac{1}{1+\frac{\alpha + \beta}{\alpha - \beta} t^2} dt $

$\displaystyle \int \dfrac{dx}{1+x^2} = \tan^{-1}x$であるから,$\displaystyle I = \dfrac{\gamma}{\alpha -\beta} \sqrt{\frac{\alpha - \beta}{\alpha + \beta}} \Biggl [ \tan^{-1} \sqrt{\frac{\alpha + \beta}{\alpha - \beta}}\ t \Biggr ]_{-\infty}^{\infty} = \dfrac{\gamma\pi}{\sqrt{\alpha^2-\beta^2}} = \dfrac{2\pi(R^2-a^2)}{|a^2-R^2|} = -2\pi $



2023年10月30日月曜日

鏡像法(5)

鏡像法(4)からの続き

接地された円筒導体について鏡像法を使う例を考える。原点Oを中心として半径$R$の円筒導体が$z$軸方向に無限に延びている(円筒面上では,$x^2+y^2=R^2$が満たされている)。$x$軸上の$(a,0,0)$を通って,$z$軸に平行で線電荷密度$\lambda$の直線がおかれている。これを鏡像法で解く際に,$x$軸上の(b,0,0)$を通って,z$軸に平行で線電荷密度$-\lambda'$の直線があると考える。円筒導体面では等電位になっており,これを基準に取る。


図:接地された円筒導体と直線電荷に対する鏡像法

円筒面上の電位は,$V(x,y) = \dfrac{\lambda}{2\pi \varepsilon_0} \log \sqrt{(x-a)^2+y^2} - \dfrac{\lambda'}{2\pi\varepsilon_0}\log \sqrt{(x-b)^2+y^2}+C$
$= \dfrac{1}{4 \pi\varepsilon_0} \Bigl\{\lambda \log (R^2+a^2-2 a x) - \lambda' \log(R^2+b^2 -2 b x) \Bigr\} +C=0$ である。

これが$x$によらずに成立するためには,$\log$の中の$x$依存性が消える必要がある。そこで,第2項を$\lambda' \log(R^2+b^2 -2 b x) = \lambda' \log \frac{b}{a}(\frac{a}{b} R^2+a b -2 a x) $と書き換えると,$V(x,y) = \dfrac{\lambda}{4 \pi\varepsilon_0} \Bigl\{ \log (R^2+a^2-2 a x) - \frac{\lambda'}{\lambda} \log (\frac{a}{b} R^2+a b -2 a x)\Bigr\}+C'$
つまり,$\lambda = \lambda',\ R^2+a^2 = \frac{a}{b} R^2+a b$ であれば$x$によらず定数になる。
これから鏡像となる直線電荷に対して,$\lambda = \lambda', R^2=a b$という条件が得られる。

この鏡像電荷が円筒導体上に分布する。導体面上の単位長さ当たり面電荷密度は$\sigma(\theta) = \varepsilon_0 E_r(\theta) R d\theta =- \varepsilon_0 \dfrac{\partial V(R)}{\partial R}R d\theta $で与えられる。$x=R \cos\theta$であることに注意して,
$E_r(\theta)=  -\dfrac{\lambda}{2 \pi\varepsilon_0} \Bigl\{ \dfrac{R-a \cos\theta}{R^2+a^2-2 a R \cos\theta}  - \dfrac{R-b \cos\theta}{R^2+b^2-2 b R \cos\theta} \Bigr\}$
$-\dfrac{\lambda}{2 \pi\varepsilon_0} \Bigl\{ \dfrac{R-a \cos\theta}{R^2+a^2-2 a R \cos\theta}  - \dfrac{R-b \cos\theta}{R^2+b^2-2 b R \cos\theta} \Bigr\}$

第2項の$b$を$b=R^2/a$によって消去して整理すると,
$E_r(\theta) = -\dfrac{\lambda}{2 \pi\varepsilon_0} \Bigl\{ \dfrac{R-a \cos\theta}{R^2+a^2-2 a R \cos\theta}  - \dfrac{R-b \cos\theta}{R^2+b^2-2 b R \cos\theta}\Bigr\}$
$= -\dfrac{\lambda}{2 \pi\varepsilon_0} \Bigl\{ \dfrac{R-a \cos\theta}{R^2+a^2-2 a R \cos\theta}  - \dfrac{R-R^2/a \cos\theta}{R^2+R^4/a^2-2 R^3/a \cos\theta}\Bigr\}$
$= -\dfrac{\lambda}{2 \pi\varepsilon_0} \Bigl\{ \dfrac{R-a \cos\theta}{R^2+a^2-2 a R \cos\theta}  - \dfrac{a^2/R- a \cos\theta}{a^2+R^2-2 a R \cos\theta}\Bigr\}$
$\therefore \sigma(\theta) = \dfrac{\lambda}{2 \pi}\dfrac{R^2-a^2}{R^2+a^2-2 a R \cos\theta} d\theta,   \ \  \int_0^{2\pi} \sigma(\theta) d\theta = - \lambda$

つまり導体円筒面には静電誘導によって単位長さ当たり$-\lambda$の電荷が誘起されることが確認できた。これは,鏡像電荷(青線)の仮定と辻褄が合っている。なお,積分の第1項はゼロであり,第2項がこの結果を与えている。また,接地されていない場合は,導体円筒の中心軸上に単位長さ当たり$+\lambda$の直線をおけば,円筒導体に誘起される電荷の総和はゼロにすることができる。

2023年10月29日日曜日

AI現状リポート

昨年の11月30日にOpenAIChatGPTが公開されてから11ヶ月が経過した。有料のGPT4版を止めて,最近ではAnthropicClaudeを使うことが多い。大量のテキストを簡単に読み込めるからだ。

AI投資家のネイサン・ベナイチとエア・ストリート・キャピタルのチームによって作成されたのが,State of AI Report 2023である。163ページのpdfで,導入,研究,企業,政策,安全,予測の各章から成り立っている。

導入部で2023年のAIの現状は,次のようにまとめられている。
1. GPT-4の登場で,企業モデルとオープンソースのモデルの差が明確になった。強化学習の力が実証された。
2. 小さなモデルやデータセットで企業モデルを克服しようとする試みが進む。データが不足する可能性が指摘される。
3. 生命科学分野での応用が進み,分子生物学等のブレイクスルーが起きている。
4. NVIDIAの株価が1兆ドルを超え,GPU需要が高まる。輸出規制が進む。
5. ChatGPTなどの一般向けAIサービスが普及し,投資が180億ドルに。
6. 各国のAI規制の動きが分かれる。大手研究所がガバナンスの空白を埋める。
7. チップをめぐる各国の争いが続く。AIの社会への影響が懸念される。
8. AIの存在リスク論争が一般にも広がる。安全性確保の取り組みが進む。
9. 性能向上に伴いモデルの一貫した評価が困難に。直感的判断だけでは不十分。
また,今後12ヶ月で起こり得ることが次のように予測されている。
1.  ハリウッド映画で,生成AIによる視覚効果が使われるようになる。
2.  2024年の米大統領選で,生成AIメディア会社の不正使用が調査される。
3.  自己改良型AIエージェントが,複雑なゲームや科学ツールの分野で最高精度を更新する。
4.  技術系新興企業の未公開株の公開市場が回復し,AI企業の新規上場がある。
5.  生成AIの大規模モデル開発で,1社が10億ドル以上を費やす。
6.  マイクロソフトとオープンAIの提携が、,英の規制当局により競争阻害で調査される。
7.  国際的なAIガバナンスは,任意の高度な合意にとどまる。
8.  金融機関がGPU向け融資ファンドを立ち上げ,AI企業の資金調達を支援。
9.  AI生成の楽曲がビルボードチャート上位にランクインする。
10.  推論需要の拡大で,OpenAIなどが推論に特化したAIチップ企業を買収する。

一方,Claude単体での将来予測はこんな感じだ。たいへん穏当な見解である。
・ChatGPTなど一般向けAIサービスの利用が更に広がる。画像や動画などでの生成能力が向上。
・企業ではAIを活用して,顧客対応や文書作成などの業務効率化が進む。
・AIチップの需要が高まり,NVIDIAなど関連企業の業績が伸びる。
・学術分野でのAI活用が加速し,生命科学や材料開発でのブレイクスルーが起きる。
・AIの存在リスクに関する議論が活発に。AIの安全性確保が喫緊の課題に。
・各国の規制動向が注目される。EUがAI規制法を策定するなど,ルール作りが本格化。
・一方で、GAFAなど大手IT企業も自主規制に乗り出す。業界内での調整が進む。
・この1年でAIは自動運転や翻訳などで精度が向上するが,真の汎用AIは実現しない。


2023年10月28日土曜日

鏡像法(4)

鏡像法(3)からの続き

鏡像法による電場の境界問題が簡単に解けそうなものとして,(点電荷,直線電荷)と(導体平面,導体円筒面,導体球面)の組み合わせを考えることができる。このうち,点電荷と導体平面,点電荷と導体球面を扱った。残りの組み合わせで簡単に解けそうなのが,無限線電荷と導体平面の例である。

導体平面に平行で一様な線電荷密度の直線が距離$a$を隔てておかれている場合,平面を挟んで反対側の鏡像の位置に逆符号の線電荷密度をもった直線を考えれば,導体平面上の境界条件が満たされる。これを図で表すと下記のようになる。

図:直線電荷と導体平面がつくる系の場合

$y-z$平面に導体平面があり,点P$(a,0,0)$を通って$x-y$平面に垂直な線電荷密度$\lambda$の直線がある。この系が作る導体平面での境界条件を満たす電場は,鏡像である点Q$(-a,0,0)$を通って$x-y$平面に垂直な線電荷密度$-\lambda$の直線を考えればよい。

無限に伸びた線電荷密度$\lambda$の直線がつくる電場は直線に対して軸対称であり,直線からの距離を$r$として,$E_r(r)=\dfrac{\lambda}{2\pi \varepsilon_0 r}$となる。したがって,$y-z$平面における電場の$x$成分は,$E_x(r) = -2 E_r \cos\theta = - \dfrac{\lambda \cos\theta}{\pi \varepsilon_0 r} = - \dfrac{\lambda \cos^2 \theta}{\pi \varepsilon_0 a}$となる。ただし,図右の∠OPRを$\theta$として,$r= a/ \cos \theta$である。

点R$(0,y,0)$ 近傍における微小面積にたまる電荷を考えたい。$y=a \tan\theta$であり,$dy = \dfrac{a d\theta }{\cos^2 \theta }$であることに注意する。$z$軸方向が単位長さで$y$軸方向の微小長さ$dy$に分布する電荷量$\delta q(\theta)$は,$\delta q(\theta)=1\times dy \times \varepsilon_0 E_x= - \dfrac{\lambda a}{\pi a} \dfrac{\cos^2\theta}{\cos^2\theta} d\theta$である。これを積分すると,$\displaystyle \int_{-\pi/2}^{\pi/2}\delta q(\theta) = -\dfrac{\lambda}{\pi}  \int_{-\pi/2}^{\pi/2} d\theta =-\dfrac{\lambda}{\pi} \times \pi = -\lambda$となる。


2023年10月27日金曜日

鏡像法(3)

鏡像法(2)からの続き

前回は,導体球が接地されている状況を考えた。$z$軸上の電荷$+q$の鏡像電荷$-q'$に相当する電荷は導体球表面に分布しており,これを鏡像電荷が代表して表わしていることになる。

次に,接地されておらず,電荷を持たない導体球を考える。導体球の中心を通る$z$軸上の点A$(0,0,d)$に電荷$+q$を置くと,静電誘導によって導体球表面には偏った電荷分布が生ずるとともに,球表面の電位は一定になる。ただし,この電荷分布を球表面について寄せ集めるとゼロになっている。

この状況を表現するためには,前回のモデルに加えて,導体球の中心に$+q'$相当の電荷を置けば良い。これによって,導体球の合計電荷はゼロになると同時に,導体球表面での電位一定の条件が満足されることになる。実際には,これらの電荷は導体球表面に分布しているのである。

図1:接地しない導体球と鏡像電荷

原点を中心とする半径$R$の接地していない導体球に対して,電荷$+q$とこれによって生ずる鏡像電荷$-q'$,$+q'$がつくる導体球外の電位の式は次のようになる。

$V(\bm{r}) = \dfrac{1}{4\pi\varepsilon_0}\Bigl\{ \dfrac{+q}{\sqrt{r^2+d^2-2 r d \cos\theta}} + \dfrac{-q'}{\sqrt{r^2+d'^2-2 r d' \cos\theta}} + \dfrac{+q'}{r} \Bigr\}$

接地しない導体球表面の誘導電荷密度は,$\sigma(\theta) = -\varepsilon_0 \dfrac{\partial V(r)}{\partial r}\Biggr |_{r=R}$で与えられる。
したがって,$\sigma(\theta) = \dfrac{1}{4\pi} \Bigl\{\dfrac{+q (r-d \cos\theta)}{(r^2+d^2-2 r d \cos\theta)^{3/2}} + \dfrac{-q' (r - d' \cos\theta )}{(r^2+d'^2-2 r d' \cos\theta )^{3/2}} + \dfrac{+q'}{r^2} \Bigr\}\Biggr |_{r=R}$
また,これによる導体球面上の全電荷は,$\displaystyle \int_0^{2\pi} \int_0^\pi \sigma(\theta) R^2 \sin \theta d \theta  d\phi$,すなわち$\ t = \cos\theta\ $とおけば,$\displaystyle 2\pi R^2 \int_{-1}^{1} \sigma(t) \bm{dt} $で与えられる。各項を$\ q_1,\ q_2,\ q_3 \ $とすると,$d>R>d'$なので,

$\displaystyle q_1 = \dfrac{q R^2}{2} \int_{-1}^{1} \dfrac{R - d\ t}{(R^2+d^2 - 2 R d\ t)^{3/2}} \bm{dt}$
$\displaystyle =  \dfrac{q R^2}{2} \Bigl [ \dfrac{R - d\ t }{Rd (R^2+d^2-2R d\ t)^{1/2}} \Bigr ]_{-1}^{1}- \dfrac{q R^2}{2} \int_{-1}^1 \dfrac{ -d}{Rd (R^2+d^2-2R d\ t)^{1/2}} \bm{dt}$
$\displaystyle =  \dfrac{q R^2}{2} \Bigl [ \dfrac{1}{Rd}\Bigl\{ \dfrac{R-d}{d-R}-\dfrac{R+d}{d+R} \Bigr\}- \dfrac{q R^2}{2} \Bigl [ \dfrac{ d}{(Rd)^2} (R^2+d^2-2R d\ t)^{1/2} \Bigr ]_{-1}^{1}$
$\displaystyle =  -\dfrac{q R}{d} - \dfrac{q}{2d} \Bigl\{ (d-R)-(d+R) \Bigr \} = -\dfrac{q R}{d} +\dfrac{q R}{d} = 0$

$\displaystyle q_2 = \dfrac{-q' R^2}{2} \int_{-1}^{1} \dfrac{R - d'\ t}{(R^2+d'^2 - 2 R d'\ t)^{3/2}} \bm{dt}$
$\displaystyle =  \dfrac{-q' R^2}{2} \Bigl [ \dfrac{R - d'\ t }{Rd' (R^2+d'^2-2R d'\ t)^{1/2}} \Bigr ]_{-1}^{1} + \dfrac{q' R^2}{2} \int_{-1}^1 \dfrac{ -d'}{Rd (R^2+d'^2-2R d'\ t)^{1/2}} \bm{dt}$
$\displaystyle =  \dfrac{-q' R^2}{2} \Bigl [ \dfrac{1}{Rd'}\Bigl\{ \dfrac{R-d'}{R-d'}-\dfrac{R+d'}{R+d'} \Bigr\} + \dfrac{q' R^2}{2} \Bigl [ \dfrac{ d'}{(Rd')^2} (R^2+d'^2-2R d'\ t)^{1/2} \Bigr ]_{-1}^{1}$
$\displaystyle =  \dfrac{q'}{2d'} \Bigl\{ (R-d')-(R+d') \Bigr \} = -q'$

$\displaystyle q_3=\dfrac{q' R^2}{2}\int_{-1}^{1} \dfrac{1}{R^2} \bm{dt}= q'$


図2:z軸からの角度 t=cos θの関数としての球表面電荷密度









2023年10月26日木曜日

鏡像法(2)

鏡像法(1)からの続き

鏡像法で電場を求める際の典型的な例は,点電荷と電荷を持たない導体球の系である。
これは次のような条件から幾何学的に求めることができる。

(0) 導体球の表面は等電位面である。
(1) 2次元(3次元)のユークリッド空間で2点からの距離が一定の比$k(\neq1)$となる点の集合は円(球面)である。
(2) 点電荷のつくる電位は測定点までの距離に反比例するので,2つの逆符号で大きさが異なる点電荷のつくる電位の和がゼロになる点は,距離が一定(電荷の絶対値)の比になる点の集合となる。


図:接地した導体球と点電荷が作る電場

原点$(0,0,0)$に中心Oがある半径$R$の接地された導体球面上の点をP$(x,y,z)$とする。球面上の電位はゼロで,$x^2+y^2+z^2=R^2$である。電荷$q$が点A$(0,0,d)\ (d>R)$にあり,電荷$-q'$が点B$(0,0,d')\ \ (d'<R)$に置かれている。

球面上の任意のP点の電位が0になる条件式は,$\displaystyle V(\bm{r})=\dfrac{q}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{1}{\sqrt{x^2+y^2+(z-d)^2}} + \dfrac{-q'}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{1}{\sqrt{x^2+y^2+(z-d')^2}} = 0 $である。したがって,$ R^2+d'^2-2zd' = \bigl(\dfrac{q'}{q}\bigr)^2 (R^2+d^2-2zd) $で,これが$z$によらずに成立するので次の2つの条件式が得られる。

$d' = \bigl(\dfrac{q'}{q}\bigr)^2 d \ $,$R^2+d'^2 =  \bigl(\dfrac{q'}{q}\bigr)^2 (R^2+d^2) \ $,$\therefore R^2 = d d'$,$|\dfrac{q'}{q}| =R/d = d'/R$
つまり,$(q,\ q',\ d,\ d',\ ,R)$の5変数に対して2条件式があるので,3つの量を与えると残りの2つが決定される。例えば,導体球$R$の外に1つの電荷$(q,d)$を置けば,導体球が等電位面となるのに必要なもう一つの電荷$(-q',d')$が定まる。

2023年10月25日水曜日

鏡像法(1)

しばらく前に一度だけ電磁気学の授業を担当したとき,静電場についてはポアッソン方程式の導出までで完結していた。鏡像法などで境界値問題を解くのはあまり好きになれないのでスキップした。

$xy$平面に導体面があって,$z$軸上の点$(0,0,a)$に電荷$q$を置くと,導体平面に誘導電荷が生ずる。導体平面上では電位は一定になり,電場は面に垂直な方向を向く。この境界条件を満足させるため,$(0,0,-a)$に電荷$-q$をおいて,電位と電場を計算する。

電位は,$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{q}{4\pi \varepsilon_0} \Bigl\{ \dfrac{1}{\sqrt{r^2+a^2-2 a r  \cos\theta}} - \dfrac{1}{\sqrt{r^2+a^2+2 a r \cos\theta}} \Bigr\}$であり,電場$\bm{E}(\bm{r})$の$z$成分は,$E_z = -\dfrac{\partial V(\bm{r})}{\partial z} = -\dfrac{\partial V(\bm{r})}{\partial r}\dfrac{\partial r}{\partial z} - \dfrac{\partial V(\bm{r})}{\partial \theta}\dfrac{\partial \theta}{\partial z} $となる。

$\dfrac{\partial r}{\partial z} = \dfrac{z}{r} = \cos \theta$なので,後に$\theta =\frac{\pi}{2}$を代入すると0となって,第1項の寄与はない。$\dfrac{\partial \theta}{\partial z} = \dfrac{\partial}{\partial z} \tan^{-1} \dfrac{\sqrt{x^2+y^2}}{z} = \dfrac{-\sqrt{x^2+y^2}}{x^2+y^2+z^2} = -\dfrac{\sin\theta}{r} \rightarrow -\dfrac{1}{r} \ (\theta = \pi/2)$

第2項の前半は,$- \dfrac{\partial V(\bm{r})}{\partial \theta}= \dfrac{q}{4\pi\varepsilon_0} \Bigl\{ \dfrac{ a r  \sin \theta}{(r^2+a^2-2ar\cos\theta)^{3/2}} + \dfrac{a r  \sin \theta}{(r^2+a^2+2ar\cos\theta )^{3/2}}\Bigr\} $

したがって,導体平面上の$\theta = \frac{\pi}{2}$における電場の$z$成分は,
$E_z = - \dfrac{\partial V(\bm{r})}{\partial \theta}\dfrac{\partial \theta}{\partial z} = - \dfrac{q}{4 \pi \varepsilon_0}\dfrac{2 a r }{(r^2+a^2)^{3/2}}\dfrac{1}{r}$
原点を中心とした導体面上の半径$r$の円環面$dS$の電荷面密度を$\sigma(r)$とすると,ガウスの法則から,$E_z(r) dS = \dfrac{\sigma(r) dS}{\varepsilon_0}\quad \therefore \sigma(r)  = \varepsilon_0 E_z(r) = - \dfrac{q }{2 \pi }\dfrac{a}{(r^2+a^2)^{3/2}}$

この誘導電荷の面密度をすべて加えると
$\displaystyle Q= - \dfrac{2 \pi q }{2 \pi } \int_0^\infty \dfrac{a r dr}{(r^2+a^2)^{3/2}} = -q \Bigl [  \dfrac{-a}{(r^2+a^2)^{1/2}} \Bigr ]_0^\infty = -q $

$z$ 軸上においた電荷と絶対値が等しく逆符号の電荷が導体面に誘導されることが確かめられた。

2023年10月24日火曜日

因果関係(2)

因果関係(1)からの続き

物理法則が時間を含む微分方程式で表されている場合はどうなるだろう。

ある量$A(t)$の時間での一階微分が,$\dfrac{dA(t)}{dt}=B(t)$として与えられているとする。このとき,$A(t+dt)=A(t)+B(t) dt$とかけるので,次の時間ステップにおける$A(t+dt)$を決めているのは,その直前の自分自身の値$A(t)$と$B(t)$であり,$B$が$A$の原因を構成しているといえるかもしれない。

一方,$C(t) \equiv \dfrac{dA(t)}{dt}$と定義すると,$B(t)=C(t)$であり,$B(t+dt)=B(t)+\dfrac{dB(t)}{dt}dt$,すなわち,$B(t+dt)=B(t)+\dfrac{dC(t)}{dt}dt=B(t)+\dfrac{d^2A(t)}{dt^2}dt$ と書ける。これを$A(t)$が原因で,$B(t)$が結果として得られたということは可能なのだろうか?


さて,ファラデーの電磁誘導の法則の微分形は,
$\nabla \times \bm{E}(\bm{r},t) = -\dfrac{\partial \bm{B}(\bm{r},t)}{\partial t}$であり,磁石をコイルに近づけたり遠ざけたりすれば,コイルにつながったランプを点灯させることができる。多くの場合これは,磁石の移動(磁場の時間的変化)が原因で,その結果ランプが点灯する(電場の回転の発生)と解釈している。太田さんらを除いて。

しかし,変位電流を含むアンペール=マクスウェルの法則の微分形は,
$\nabla \times \bm{H}(\bm{r},t) = \bm{J}(\bm{r},t)) + \dfrac{\partial \bm{D}(\bm{r},t)}{\partial t}$であり,上記の式と同形であることから,電束密度の変化が原因で磁場の回転が結果として生ずるというふうに解釈したくなる。また実際,電磁波の伝搬はこれによって説明してきた。しかしながら,それがおかしいというのが最近のトレンドになっているのだった。

ところで,これらは$\ \bm{B}(\bm{r},t)$と$\bm{D}(\bm{r},t)\ $が一階の時間微分を含んだ式になっているので,そちら側が因果関係の結果側でなければならないということにはならない傍証としてもよいのだろうか。

謎はつきない。

2023年10月23日月曜日

因果関係(1)

因果と相関(2)からの続き

変位電流が磁場を作るか否かいう議論において,因果と相関の区別ということが強調されることがある。これがなかなかやっかいだ。それが,電場や磁場を遅延時間の電荷密度や電流密度で記述するというジェフィメンコ式の評価につながり,近接相互作用による電場と磁場のからみあいのイメージを放棄させようと迫ってくる。

谷村省吾さんのように,相対論的な因果律(光速度を超える情報の伝搬はない)以外の因果関係を物理法則の中に読み取るべきではないという立場はクリアなのだけれども,そう簡単に割り切ることもできないのが凡人の浅ましさである。


最初に出てくるのが,ニュートンの運動方程式である。$\displaystyle m \dfrac{d^2 \bm{r(t)}}{d t^2}=\bm{F(t)}$は,力が原因が加速度がその結果だというのは疑いのないことで,逆にして,加速度が原因で力が結果として生ずるとは読めないだろう。当然だよね。というのが大方の意見である。

水平面内に摩擦がない誘導路で軌道をつくって小球を走らせるとする。その軌道は自分で設計することができ,摩擦が非常に小さければエネルギー損失はないので,速さは一定になる。加速度はその軌道を設計することで自由に与えることができる。3次元で考えればジェットコースターの設計だ。このときに働く誘導路の壁に与える力(慣性力と等しい)は,軌道による加速度を与えた結果として定まるということはできないだろうか。


2つの時間に依存する物理量$A(t), B(t)$を法則的に結ぶ関係式(方程式)$f(A(t), B(t))=0$があれば,その間には常に同時刻の相関関係が存在し,2つの物理量を変数とした座標でグラフを書くことができる。これを因果関係として理解できるためにはどのような条件が必要だろうか。

一つは,一方の物理量を人為的に自由に設定・制御できる場合,これが原因で他方の物理量が結果といえるというものだ。この場合でも法則は常に満足されるように現象は進行している。ということは,両方の物理量が設定・制御可能であれば,因果関係は関係式(方程式)では決まらず,実際の現象を実現する状況に依存するということになる。

これに近いのが,関係式(方程式)では因果関係は決まらず,初期条件や境界条件などが因果関係を決めるというものだ。確かにニュートンの運動方程式では普通,初期条件を与えて初めて運動が定まる。先ほどの誘導路の設定も広義の初期条件や境界条件の設定といえなくはない。

2023年10月22日日曜日

変位電流

変位電流が磁場をつくるか」という問題は過去からしばしば話題にされてきた。日本ではこの10年ほど,一つは半直線電流+端点のモデルにおける球対称電場を作る磁場がないことを根拠とした議論,もう一つは,ジェフィメンコ式(もしくは相対論的な4次元反対称テンソルによるマクスウェル方程式の表現)から,磁場が源としての実電流だけで記述されることを根拠とした議論が,鈴木,兵頭,中村・須藤などから提起されてきた。


太田浩一(1944-, 1970年代のOhta-Wakamatsuの太田さん)の電磁気学の基礎にもこのモデルを用いて,変位電流が磁場を作らないということが詳しく書かれていたため,その信奉者は増えてしまった。しかしその後,石原,斎藤,北野らによってこのモデルの問題点が明らかにされている。


そこで,主な議論をたどってみた。下記の他に,菅野礼司先生(変位電流と磁場の関係について)や高橋憲明先生の議論もある。最新の兵頭さんの論文にはまだ手が付いていない。


(1) マクスウェルアンペールの法則と変位電流

鈴木亨(物理教育60-1, 2012, 38-43

点電荷の変位電流から求めた磁場と半直線電流からビオ-サバールの法則で求めた磁場は等しくなる。球対称性から変位電流からの磁場は存在しない。

 

(2) 変位電流は磁場を“ 作る” 

兵頭俊夫(物理教育 62-1, 2012, 44-51

点電荷を小導体球に置き換えたモデルだが,本質的に(1)と同じ。球対称性が維持されるので点電荷(クーロン電場)の変位電流は磁場を作らない。

 

(3) 「変位電流は磁場を創らない」を考察するモデルについて

斎藤吉彦(物理教育 60-3, 2012, 209-2012

(1) (2)では荷電粒子の運動を無視していることになる。このためモデルの妥当性が失われていて誤った結論を導いている。ビオ-サバールの法則は近似法則である。↓(7)で訂正。

 

(4) 変位電流は磁場を作るのか?

中村哲・須藤彰三(物理教育 60-4, 2012, 268-273

電流(変位電流)が磁場をつくるというとき,源(source)としてか,作る(presence)としてかを区別する必要がある。因果関係としての源となるのは電流であり,変位電流はそれにあてはまらない。

 

(5) 変位電流と重ね合わせの原理について

石原諭(物理教育 61-4, 2013, 187-189

マックスウェル方程式の重ね合わせの原理を適用するには,それぞれの部分系で電荷保存則が満たされていなければ,正しい結果を与えない。半直線電流を点電荷と電流部分に分割した(2)は電荷保存則を満たしておらず誤った結論を導いている。

 

(6) 変位電流密度の役割

中村哲・須藤彰三(物理教育 62-4, 2014, 23-29

電流密度だけが磁場の因果的源(source )であり変位電流密度は源ではない。電場の時間微分(変位竃流密度)と磁場の空間微分(回転)は時空の属性である電磁場四次元テンソルの微分として統一的に扱うべき。因果律はマックスウェル方程式に内在せず,遅延解の選択で導入される。

 

(7) 半直線電流による電磁場の厳密解

斎藤吉彦(物理教育 62-4, 2014, 155-162

無限遠方から端点までの加速度運動する電荷の集合体がつくる磁場を計算した結果,(1) (2) のビオ-サバール法則の結果と一致した。これは電荷保存則を満たしマックスウェル方程式と矛盾しない。また,磁場の回転が球対称な解であり,Diracの磁気単極子解と同じ構造を持っている。

 

(8) 変位電流をめぐる混乱について

北野正雄(大学の物理教育 27, 2021, 22-25

非定常電流では,「電流がつくる磁場」「変位電流がつくる磁場」は定義できない。

変位電流と伝導電流は不可分でありこれを無視した分割はできない。

ビオ-サバールの式で計算される磁場には変位電流の効果が含まれる。
まだ少し気になっていることなど:

・閉回路(無限直線)でなくても,定常状態や準定常状態ならビオ-サバールの公式は使えて,しかもそれは変位電流の効果を含むものなのか
・微分方程式には因果律は含まれず,境界条件に含まれるのか。

2023年10月21日土曜日

磁気単極子

磁気単極子(ディラックの量子化条件)の話を耳にしたのは大学時代のことだった。基礎工学部の図書館でディラックの原論文を眺めていたような気もするが,ちゃんと読んだことはなかった。その書架には3つのクォークがトポロジカルな結び目の絵で表現されている本も並んでいた。

「変位電流が磁場を作るか」という物理教育の問題に関連して,半直線電流とその先端に電荷がたまる系がしばしば取り扱われる。このとき,磁場の回転が変位電流の球対称場となるような解が必要になる。これが,ディラックの磁気単極子で登場するベクトルポテンシャルの回転が球対称な磁場になる解と同じ構造をもっているという指摘がされていた[1]。

そこで,磁気単極子が作る磁場とベクトルポテンシャルの計算を確かめてみた。

3次元極座標系($\bm{e}_\rho,\ \bm{e}_\theta, \bm{e}_\phi$)では,
$\bm{A} = g \dfrac{ 1 - \cos \theta }{r \sin \theta} \bm{e}_\phi  = g \dfrac{\sqrt{x^2+y^2+z^2}-z}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}\ (x^2+y^2)} (-y \bm{e}_x + x \bm{e}_y )$
このとき,
$\nabla \times \bm{A} = g \dfrac{\bm{r}}{r^3}$

ところで,これは$z$軸上では特異的であるから,その部分の構造を極限操作で取り出す。
以下では,円筒座標系($\bm{e}_\rho, \bm{e}_\phi, \bm{e}_z$)で考える。
$\bm{A}_\epsilon = \dfrac{g\ \theta(\rho - \epsilon) }{\rho} \Bigl( 1 - \dfrac{z}{\sqrt{\rho^2+z^2+\epsilon^2}} \Bigr) \bm{e}_\phi = A_\epsilon \bm{e}_\phi$
$\nabla \times \bm{A}_\epsilon = -\dfrac{\partial A_\epsilon}{\partial z} \bm{e}_\rho + \dfrac{1}{\rho} \dfrac{\partial(\rho A_\epsilon)}{\partial \rho} \bm{e}_z$
$=\dfrac{g\ \theta(\rho - \epsilon)}{\rho}\Bigl\{ \dfrac{\rho^2+\epsilon^2}{(\rho^2+z^2+\epsilon^2)^{3/2}}\bm{e}_\rho + \dfrac{\rho z}{(\rho^2+z^2+\epsilon^2)^{3/2}}\bm{e}_z \Bigr\}$
$ + \dfrac{g\ \delta(\rho-\epsilon)}{\rho}\Bigl\{ 1 - \dfrac{z}{\sqrt{\rho^2+z^2+\epsilon^2}}\Bigr\}\bm{e}_z$
$=\dfrac{g\ \theta(\rho - \epsilon)}{\rho^2+z^2+\epsilon^2}\Bigl\{\dfrac{\rho \bm{e}_\rho + z \bm{e}_z}{\sqrt{\rho^2+z^2+\epsilon^2}}\Bigr\}+ \dfrac{g\ \delta(\rho-\epsilon)}{\rho} \Bigl\{2 - 1 - \dfrac{z}{\sqrt{\rho^2+z^2+\epsilon^2}}\Bigr\}\bm{e}_z$
ここでは $z < 0$ という条件を課しているので,最後の$\{\ \}$の中の第2項と第3項の和はゼロになる( $\lim_{\epsilon \rightarrow 0}$ で $\dfrac{\rho\delta(\rho)}{2z^2}$となるため )。
また2次元のデルタ関数について次の関係式が成り立つ。
$\delta(\bm{\rho}) = \dfrac{\delta(\rho)}{\rho} \delta(\phi) = \delta(x) \delta(y)\quad \therefore  \dfrac{\delta(\rho)}{\rho} = 2\pi \delta(x)\delta(y)$
したがって,この条件を保証する$\theta(-z)$を含め,$r^2=\rho^2+z^2$として,
$\lim_{\epsilon \rightarrow 0} \nabla \times \bm{A}_\epsilon =  \nabla \times \bm{A} = g \dfrac{\bm{\hat{r}}}{r^2} + 4\pi g\  \delta(x)\delta(y) \theta(-z) \bm{e}_z$

この式の発散を計算すると,
$\nabla \cdot \nabla \times \bm{A} = - g \nabla \cdot \nabla \dfrac{1}{r} + 4 \pi g \delta(x) \delta(y)  \dfrac{\partial \theta(-z)}{\partial z} = 4 \pi g \delta(\bm{r}) - 4\pi g \delta (\bm{r})= 0$


[1]半直線電流による電磁場の厳密解(斎藤吉彦,2014)

2023年10月20日金曜日

円筒座標のベクトル解析

円筒座標系の基本ベクトルは,$\bm{e}_\rho, \bm{e}_\phi, \bm{e}_z$であり互いに直交している。
$\bm{e}_\rho = \bm{e}_x \cos\phi + \bm{e}_y \sin\phi $, $\bm{e}_\phi = -\bm{e}_x \sin\phi + \bm{e}_y \cos\phi$から,$\dfrac{\partial \bm{e}_\rho }{\partial \phi} = \bm{e}_\phi,\ \  \dfrac{\partial \bm{e}_\phi }{\partial \phi} = - \bm{e}_\rho$ が成り立つ。その他の基本ベクトルの各変数での微分はゼロ。

ここで,$\nabla = \bm{e}_\rho \dfrac{\partial}{\partial \rho} + \bm{e}_\phi \dfrac{1}{\rho} \dfrac{\partial}{\partial \phi}  + \bm{e}_z \dfrac{\partial}{\partial z} $であり,任意のベクトルは,$\bm{A}= \bm{e}_\rho A_\rho + \bm{e}_\phi A_\phi  + \bm{e}_z A_z$とかける。

したがって,円筒座標系での発散や回転は,この演算子とベクトルの内積や外積を機械的に計算すれば良い。ただし,微分演算が基本ベクトルに作用して現れる項があることだけ注意が必要となる。今回は,$\bm{e}_\rho,\ \bm{e}_\phi$を$\phi$で微分する項の存在に気をつける。

発散は,$\nabla\cdot\bm{A} = \Bigl(  \bm{e}_\rho \dfrac{\partial}{\partial \rho} + \bm{e}_\phi \dfrac{1}{r} \dfrac{\partial}{\partial \phi}  + \bm{e}_z \dfrac{\partial}{\partial z}\Bigr) \cdot \Bigl( \bm{e}_\rho A_\rho + \bm{e}_\phi A_\phi  + \bm{e}_z A_z \Bigr)$
余分の項は,$\bm{e}_\phi \dfrac{1}{\rho} \dfrac{\partial}{\partial \phi} \cdot  \bm{e}_\rho A_\rho = \bm{e}_\phi \dfrac{1}{\rho} \cdot  \bm{e}_\phi A_\rho = \dfrac{1}{\rho} A_\rho$である。
$\therefore \  \nabla\cdot\bm{A} = \dfrac{1}{\rho}\dfrac{\partial}{\partial \rho} \bigl(\rho A_\rho \bigr) + \dfrac{1}{\rho}\dfrac{\partial}{\partial \phi} A_\phi + \dfrac{\partial}{\partial z} A_z$

回転は,$\nabla \times \bm{A} = \Bigl(  \bm{e}_\rho \dfrac{\partial}{\partial \rho} + \bm{e}_\phi \dfrac{1}{\rho} \dfrac{\partial}{\partial \phi}  + \bm{e}_z \dfrac{\partial}{\partial z}\Bigr) \times \Bigl( \bm{e}_\rho A_\rho + \bm{e}_\phi A_\phi  + \bm{e}_z A_z \Bigr)$
余分の項は,$\bm{e}_\phi \dfrac{1}{\rho} \dfrac{\partial}{\partial \phi} \times  \bm{e}_\phi A_\phi = \bm{e}_\phi \dfrac{1}{\rho}  \times  (-\bm{e}_\rho ) A_\phi  =  \dfrac{1}{\rho} A_\phi \bm{e}_z$である。
$\therefore \  \nabla \times \bm{A} = \Bigl( \dfrac{1}{\rho} \dfrac{\partial A_z}{\partial\phi}- \dfrac{\partial A_\phi}{\partial z}\Bigr) \bm{e}_r + \Bigl(  \dfrac{\partial A_\rho}{\partial z}- \dfrac{\partial A_z}{\partial \rho}\Bigr) \bm{e}_\phi +  \dfrac{1}{\rho} \Bigl(  \dfrac{\partial (\rho A_\phi )}{\partial \rho}- \dfrac{\partial A_\rho}{\partial \phi}\Bigr) \bm{e}_z $

2023年10月19日木曜日

処理水と廃炉

10月18日(水)のNHKあさイチは「処理水は?廃炉は?みんなのキニナルに答えます」という特集だった。

どうせ,政府東京電力の提灯持ち番組だろうと思って,期待せずにみていた。確かに,ALPS処理水で育てているヒラメが元気に跳ねていたり,茨城大学理工学部の鳥養祐二が魚のトリチウム分析をしている映像を見せて(長時間の事前処理が必要だという話はどこへいった),安全性を印象づけるものではあった。

一方で,ALPSのフィルターや廃材,使用済み防護服などの放射性廃棄物を敷地内に保管する必要があって,それがどんどん増えていくところ(処理水タンクすらその対象の放射性廃棄物になる)が印象的だった。また,2号機と同型の5号機の原子炉内部を撮影しながら,損傷してデブリが880トンもたまっている1-3号機の廃炉プロセスがほとんど進んでいないこともリアルに伝わってきた。

2号機では,ロボットアームを使って,今年度中に数グラムのデブリ採取を初めて実施する予定だ。そのアクセスのための格納容器内部への貫通路(直径55cm)の蓋のボルトを外すのに5ヶ月かかり,昨日ようやく蓋が開いたのだが,堆積物でそのほとんどが埋っていた。6年かけて開発してきたロボットアームがそもそも入るのかという問題になっている。

チェルノブイリは100年持つ石棺で固めたが,廃炉はできていない。スリーマイル島は事故後45年近く経過したが,こちらも完了しておらず,2079年(事故から100年後)を廃炉目標としている。一方,全く進んでいない福島第一原子力発電所は,当初の2051年廃炉目標がそのまま示されたままだ。この調子ならば,ALPS処理水の排出も100年続くということかもしれない。

日本全国の公共土木インフラや工場地帯が静かに朽ちて行くのと同様に,原子力発電所の跡地も管理できなくなって,日本中の廃虚から有害化学物質や放射性廃棄物がたれ流しになる時代がくるのかもしれない。大阪万博や辺野古等にリソースをつぎ込んでいる場合ではない。


写真:福島第一原発2号機の貫通路ハッチ蓋の内部(YahooNewsから引用)

2023年10月18日水曜日

恒星間天体

オウムアムアという天体が,大陽系の外から飛来した恒星間天体だとして話題になったのは2017年のことだった。当初推定されていたその形が,全長800mの非常に細長い棒状のものであり,なんらかの人工物ではないかという議論まであった。

コズミックフロントのはずなのだが,最近NHKで見たのは次のようなことだった[1, 2]。
・オウムアウアの変光は,サイズが45m×44m×7.5mの円盤型でアルベドが0.64とすれば説明できる。このアルベドは冥王星やトリトンの凍った窒素表面と一致する。
・オウムアウアの加速で,ガスがみえないことは,窒素だとすれば説明できる。
・したがって,オウムアウアは太陽系外惑星のかけらかもしれない

これに対する反論もあって,どこにそんなたくさん窒素があるものか,というようなものだった[3]。

もうひとつのポイントは,オウムアウアの他にも恒星間天体が見つかっているというものだ。2019年のボリソフ彗星や,2014年のパプアニューギニア火球である。さらに,100m級の恒星間天体は,海王星軌道内に1万個程度定常的に存在し,その平均滞在時間は10年ということになるらしい[4]。


図:オウムアウアの軌道(Wikipediaから引用)

[4]Interstellar Interloper 1I/2017 U1: Observations from the NOT and WIYN Telescopes
(D. Jewitt, J. Luu, J. Rajagopal, R. Kotulla, S. Ridgway, W. Liu, T. Augusteijn)


2023年10月17日火曜日

久々のJulia

プログラミングはAIに任せる時代になってしまったので,自分でコードを書くのは棋士の卵が詰め将棋の練習をしているようなことかもしれない。

Homebrewでmacにインストールされているソフトウェアを定期的に更新しているが,jupyterlabは,毎回,手動により brew link jupyterlab をすることを強いるのでうっとうしい。そんなこともあって,しばらくJuliaから足が遠のいていた。

鈴木貫太郎のYouTubeの数学の問題では,しばしば,整数の冪を比較するような問題が登場する。そこで,2^m と3^n が非常に近くなるような整数を探してみようと思った。m,nを1から順に条件を判定しながら増やしていけばよいかと思ったけれど,実際にコードを書いてみると,面倒なロジックは組まずに虱潰しに調べたほうが簡単そうであった。

久々にプログラミングすると,浮動小数点数から整数への変換がどうなっているかなど,基本的なところを忘れてしまっている。困ったものだ。これはconvert(T, x)だと書いてあったのだが,エラーになる。ChatGPTに相談してみたら,floor(T,x)とceil(T,x)を使いなさいとのことだった。その結果が次のコードである。
function dt(N,eps)
# N=1000000
# eps = 1.0e-6
ratio = log(2)/log(3)
    for i in 1:N
        jmin = floor(Int64,i*ratio)
        jmax = ceil(Int64,i*ratio)
        for j in jmin:jmax
            sol = i*log(2) - j*log(3)
            if abs(sol) < eps
                println("  2**",i,"/","3**",j," = ",exp(sol))
            end
        end
    end
end

for k = 1:8
    N=10^k
    eps=1/N
    println("N=",N," eps=",eps)
    @time(dt(N,eps))
end
N=10 eps=0.1
  2**8/3**5 = 1.0534979423868305
  0.000176 seconds (98 allocations: 2.750 KiB)
N=100 eps=0.01
  2**84/3**53 = 0.9979140462573083
  0.000160 seconds (97 allocations: 2.562 KiB)
N=1000 eps=0.001
  0.000003 seconds
N=10000 eps=0.0001
  2**1054/3**665 = 0.9999563468421858
  2**2108/3**1330 = 0.9999126955899699
  0.000351 seconds (207 allocations: 5.609 KiB)
N=100000 eps=1.0e-5
  2**50508/3**31867 = 0.9999927350845753
  0.000408 seconds (103 allocations: 2.656 KiB)
N=1000000 eps=1.0e-6
  2**301994/3**190537 = 1.0000000644940903
  2**603988/3**381074 = 1.0000001289881848
  2**905982/3**571611 = 1.0000001934822835
  0.003297 seconds (311 allocations: 8.562 KiB)
N=10000000 eps=1.0e-7
  2**301994/3**190537 = 1.0000000644940903
  0.027930 seconds (105 allocations: 4.938 KiB)
N=100000000 eps=1.0e-8
  2**85137581/3**53715833 = 0.9999999925494194
  0.264204 seconds (229 allocations: 17.953 KiB)

 いちおうできたことにしておこう。

2023年10月16日月曜日

導体球(4)

導体球(3)からの続き

ついでに,電場を取り除いて,導体球に電荷を与えて導体球表面に球対称一様電荷分布が生ずる状況を考える。

先ほどと同様に,観測点の位置ベクトル$\bm{r}$方向に$z$軸をとる。球対称性から$x$軸は自由に設定することができる。この結果,電位は次式で与えられる。

$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{\sigma R^2}{4\pi\varepsilon_0} \int \dfrac{ \sin \theta' d\theta' d\phi'}{ \sqrt{r^2+R^2-2rR \cos \theta'}} =  \dfrac{\sigma R^2}{2\varepsilon_0} \int \dfrac{ \sin \theta' d\theta'}{ \sqrt{r^2+R^2-2rR \cos \theta'}}$

再び,$\alpha = r^2+R^2 $,$\beta = 2 r R\ $と置いて,$\sqrt{\alpha -\beta}=| r-R |,\ \sqrt{\alpha + \beta}= r + R\ $である。$t = \cos \theta'$と変数変換して,$ dt = -\sin \theta' d\theta' \ $ なので,
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{\sigma R^2}{2 \varepsilon_0} \int_{-1}^1 \dfrac{dt}{\sqrt{\alpha - \beta t }} = \dfrac{\sigma R^2}{2 \varepsilon_0} \Bigl\lvert \dfrac{-2}{\beta} \sqrt{\alpha - \beta t}\Bigr\rvert_{-1}^1 = \dfrac{\sigma R}{2 \varepsilon_0 r}(\sqrt{\alpha+\beta}-\sqrt{\alpha-\beta})$
$\displaystyle =  \dfrac{\sigma R}{2 \varepsilon_0 r} (r+R -|r-R|)$

したがって,$Q=4\pi R^2 \sigma$と置くと,次のように正しい静電ポテンシャルが得られた。
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{Q}{4\pi \varepsilon_0 R}\quad (r<R)$
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{Q}{4\pi \varepsilon_0 r} \quad (r>R)$

2023年10月15日日曜日

導体球(3)

導体球(2)からの続き

物理科学概説の授業で,表面に一様な電荷が分布する球殻内部の電場や電位の問題を説明しようとした。積分にまで踏み込めないが,立体角を使えばなんとか説明できる。ところでこれを真面目に積分計算しようとすると,電場中の導体球と同じ問題(面倒な楕円関数の積分が必要)が生ずることに今さらながら気がついた。

力学の重力ポテンシャルの場合も同じ問題があったはずで,これまでどうやって回避していたか思い出してみると,観測点の位置ベクトルの方向をz軸にとっている。これにより球対称性から簡単に積分ができていた。この方法が,一様電場中の導体球による表面電荷分布に対しても使えそうな気がしたので再挑戦してみる。

(1) 導体球の中心に置いた原点から観測点Pへの位置ベクトル$\bm{r}$の方向を$z$軸にとる。
そこで,$\bm{r} = (0,\ 0,\ r)$

(2) 一様電場ベクトル方向の導体球面上の位置ベクトル$\bm{e}$の$x-y$平面への射影を$x$軸にとる。このとき,$\bm{e}=(R \sin\lambda,\ 0,\  R \cos\lambda )$,ここで導体球の半径を$R$としている。

(3) 導体球面上の点Qへの位置ベクトルを,$\bm{r'}=(R \sin\theta' \cos\phi',\ R\sin\theta' \sin\phi',\ R\cos\theta')$とする。Qにある電荷要素は,$\rho(\bm{r'}) dS = \sigma R^2 \cos \omega \sin \theta' d\theta' d\phi'$である。ここで,$\sigma$は電荷面密度,$\cos\omega$は,$\bm{e}$と$\bm{r'}$のなす角度であり,$\cos\omega = \frac{\bm{e}\cdot\bm{r'}}{R^2} =  \sin \lambda \sin\theta' \cos\phi' + \cos \lambda \cos\theta' $である。

(4) 観測点Pと電荷要素点Qを結ぶ距離は,$|\bm{r} - \bm{r'}| = \sqrt{r^2+R^2-2rR \cos \theta'}$となる。

そこで,この電荷密度分布$\rho(\bm{r'})$がつくる静電ポテンシャル$V(\bm{r})$は次のようになる。
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{\sigma R^2}{4\pi\varepsilon_0} \int \dfrac{(\sin \lambda \sin\theta' \cos\phi' + \cos \lambda \cos\theta' ) \sin \theta' d\theta' d\phi'}{ \sqrt{r^2+R^2-2rR \cos \theta'}}$

ここで,積分のうち,$\int_0^{2\pi} d \phi'$を実行すると,分子の$\cos\phi'$ を含む項はゼロになり,残りの項は$2\pi$倍となるので,
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{2\pi \sigma R^2}{4\pi\varepsilon_0} \int \dfrac{( \cos \lambda \cos\theta' ) \sin \theta' d\theta'}{ \sqrt{r^2+R^2-2rR \cos \theta'}}$

さらに,$\alpha = r^2+R^2 $,$\beta = 2 r R\ $と置くと,$\sqrt{\alpha -\beta}=| r-R |,\ \sqrt{\alpha + \beta}= r + R\ $である。$t = \cos \theta'$と変数変換して,$ dt = -\sin \theta' d\theta' \ $ なので,
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{\sigma R^2 \cos\lambda}{2 \varepsilon_0} \int_{-1}^1 \dfrac{t dt}{\sqrt{\alpha - \beta t }}$

この積分$I$は部分積分によって実行され,次のような結果を得る。
$\displaystyle I = \int_{-1}^1 \dfrac{t dt}{\sqrt{\alpha - \beta t}} = -\dfrac{4 \alpha}{3 \beta^2}\bigl(  \sqrt{\alpha -\beta} - \sqrt{\alpha + \beta} \bigr) -\dfrac{2}{3\beta} \bigl( \sqrt{\alpha - \beta} + \sqrt{\alpha + \beta}\bigr)$
すなわち,$\displaystyle I= \dfrac{2r}{3 R^2}\ (r<R),\quad I=\dfrac{2R}{3r^2}\ (r>R)$
最終的に,導体球の中の電位は線形になり,電場は一定になる。
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{\sigma \cos\lambda}{3 \varepsilon_0} r  \quad (r<R)$

2023年10月14日土曜日

物理学科同窓会(2)


先週の土曜日に新大阪のワシントンホテルプラザで,阪大物理学科の同窓会があった。1972年(昭和47年)入学なので,昨年が50年目だった。10年前からこの同窓会が概ね毎年開催されるようになった。参加者は順次定年を迎えていくので,だんだん変化に乏しい日々が続き,健康や病気の話題の割合が増えてくる。

今年は,藤原さんのリクエストに端を発して,元原研の佐藤さんに「核融合の最近の現状」というタイトルで話をしていただいた。慣れないzoom経由で,音声トラブルがあったけれど,わかったことは次のとおり。

・ITERもJT60SAも何だかトラブっている。
・ステラレーターは連続だけれど,トカマクは準パルス的な動作をする。
・レーザー核融合のQ=1は,実質は1/100程度になるので,トカマクが有利。
・国内ベンチャーには,研究者がかんでいるが,まとまった炉システムを目指していない。

尾崎さんの,太陽光発電パネルにつけて効率アップする集光シートの特許の顛末もおもしろかった。実用化しようとするとほんの小さな金型だけで2000万円くらいになって,なかなかうまくいかなかったらしい。

2023年10月13日金曜日

PBL

 PBLというのも紛らわしい言葉だ。対話型AIにきいてみよう。

Q;問題解決型学習(Problem Based Learning)と課題探究型学習(Project based Learning)の違いを詳しく教えてください。定義,適用学年,適用教科,意義,課題などを比較してほしいです。

ChatGPT,Bard,Bing のそれぞれが適当な答えを返してきた。ネットで人力検索してもサイトごとにマチマチな見解が示されている。そしてみんなそれに躍らされている。自分も踊っていた。そのせいで,「物理課題研究プロジェクト」なる学部科目を担当することになった。自業自得である。しかし,非常勤講師の自分は与えられた条件で,普通の物理学問題演習の時間をこなしていくことになるのだった。

仕方がないので,更問いを加えてみたところ,いちおうChatGPTの見解が得られた。
Q:「課題の設定者が教員か生徒か」「課題が教科限定的か学際的か」「評価のポイントはプロセスかアウトプットか」「期間は短いか長いか」という観点では,問題解決型学習(Problem Based Learning)と課題探究型学習(Project based Learning)の違いがどうなりますか。
A:以下は、問題解決型学習(PBL)と課題探究型学習(PjBL)の違いをそれぞれの観点で比較したものです。

課題の設定者が教員か生徒か:
PBL: 問題の設定者は通常教員であり、学習者に対して特定の問題を提供します。
PjBL: 学習者が自ら興味や関心に基づいてプロジェクトを選び、課題を設定します。

課題が教科限定的か学際的か:
PBL: 問題は通常特定の教科に関連しており、その教科における問題解決を中心に学習が行われます。
PjBL: 課題は学際的であり、複数の教科を組み合わせてプロジェクトを通じて学習が行われます。

評価のポイントはプロセスかアウトプットか:
PBL: 評価の重点は、問題解決のプロセス、つまり学習者がどれだけ効果的に問題に取り組んだかに置かれます。
PjBL: 評価はプロジェクトのアウトプット、つまり成果物やプロジェクトの完成度に焦点を当てます。

期間は短いか長いか:
PBL: 問題解決の期間は比較的短い場合が多く、特定の問題に対処する短期的な活動が一般的です。
PjBL: プロジェクトの期間は通常長く、複数の週や学期にわたって続く場合があります。

これらの要素に基づいて、PBLとPjBLは異なるアプローチを取ります。PBLは特定の問題に焦点を当て、その解決策を見つけるためのプロセスに重点を置きます。一方、PjBLは学習者の興味や関心を反映したプロジェクトを通じて、幅広い学際的な学びを促進します。

これはあくまでもChatGPTの見解 (もしかすると平均的な世論)であることに注意が必要。これにアクティブラーニングの定義をどうするか問題を加えるとさらに混乱は必至である。


[1]今、求められる力を高める総合的な探究の時間の展開(小学校編,文部科学省)
[3]今、求められる力を高める総合的な探究の時間の展開(高等学校編,文部科学省)

2023年10月12日木曜日

導体球(2)

導体球(1)からの続き

一般の電荷密度分布$\rho(\bm{r'})$がつくる静電ポテンシャル$V(\bm{r})$は次のようになる。
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{1}{4\pi\varepsilon_0} \int \dfrac{\rho(\bm{r'}) d\bm{r}'}{|\bm{r} - \bm{r'}|}$
ここで,ポテンシャルの位置座標は,$\bm{r} = (r \sin \theta \cos \phi, r \sin \theta \sin \phi , r \cos \theta)$,電荷素片の位置座標は,$\bm{r'} = (R \sin \theta' \cos \phi', R \sin \theta' \sin \phi' , R \cos \theta')$であり,$R\ $は導体球の半径。
また,静電誘導で導体球表面に誘起される電荷は $\rho(\bm{r'}) d\bm{r}' = \sigma \cos \theta' \sin \theta' d \theta' d\phi'$である。

したがって,
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{\sigma}{4\pi\varepsilon_0} \int \dfrac{\cos \theta' \sin \theta' d\theta' d\phi'}{\sqrt{r^2+R^2-2rR (\sin \theta \sin \theta' \cos \phi' + \cos\theta \cos \theta')}}$
ただし,$\bm{r}$を含む平面内に$x$座標をとって,$\phi = 0$となるようにした。

$\alpha = r^2+R^2 -2rR  \cos\theta \cos \theta' \ge 0$,$\beta = 2 r R \sin \theta \sin \theta' \ge 0$と置くと,
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{\sigma}{4\pi\varepsilon_0} \int \dfrac{\cos \theta' \sin \theta' d\theta' d\phi'}{\sqrt{\alpha - \beta \cos \phi'}}$
この$\phi'$による積分のところ$I_{\phi'}$は楕円積分となる。$\cos \phi' = 1- 2 \sin^2 \frac{\phi'}{2}$とすれば,
$\displaystyle I_{\phi'} = \int_0^{\pi/2} \frac{d\phi '}{\sqrt{(\alpha - \beta) + 2\beta \sin^2 \frac{\phi'}{2}}} = \int_0^{\pi/2} \frac{d\phi '}{\sqrt{(\alpha + \beta) - 2\beta \cos^2 \frac{\phi'}{2}}} $

仮にここまでできたとしても,$\alpha, \beta$に$\theta'$が含まれているものをさらに積分するのはどうしましょうとなった。チーン。