2019年6月9日日曜日

三平方の定理(1)

twitterで次の問題をみかけた。

正方形の対角線に2点${\rm P, Q}$を取り,$∠{\rm POQ}=\frac{\pi}{4}$として,$\overline{\rm AP}=x, \overline{\rm PQ}=z,  \overline{\rm QB}=y$ とすると,$x^2+y^2=z^2$が成り立つことを示せ。


Mathematicaでこれを解いてみた。
∠APOと∠OPQ,および,∠BQOと∠OQPに対する余弦定理を等置した式に,△POQに対する余弦定理から得られた式を用いて z を消去する。ただし,PO=√p,QO=√qと置いた。
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In[1]:=  sol =  Solve[{(a^2 - x^2 - p)/(2 x Sqrt[p]) == (z^2 + p - q)/(2 z Sqrt[p]), 
     (a^2 - y^2 - q)/(2 y Sqrt[q]) == (z^2 + q - p)/(2 z Sqrt[q])}, {p, q}]

Out[1]:= {{p -> a^2 - x y - x z, q -> a^2 - x y - y z}}

In[2]:= (z^2 - p - q)^2 == 2 p q /. sol[[1]]

Out[2]= (-2 a^2 + 2 x y + x z + y z + z^2)^2 ==  2 (a^2 - x y - x z) (a^2 - x y - y z)

In[3]:= % /. {z -> Sqrt[2] a - x - y}

Out[3]:= (-2 a^2 + x (Sqrt[2] a - x - y) + (Sqrt[2] a - x - y)^2 + 2 x y + (Sqrt[2] a - x - y) y)^2 
   == 2 (a^2 - x (Sqrt[2] a - x - y) - x y) (a^2 - x y - (Sqrt[2] a - x - y) y)

In[4]:= Simplify[%]

Out[4]:= (a^2 - x y) (a^2 + x y - Sqrt[2] a (x + y)) == 0

In[5]:= z^2 - x^2 - y^2 /. {z -> Sqrt[2] a - x - y} // Simplify

Out[5]:= 2 (a^2 + x y - Sqrt[2] a (x + y))
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余弦定理を組み合わせて得られた式 Out[4]と三平方の定理からzを消去した式Out[5]は一致したので,問題は解決する。

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\begin{tikzpicture}
\draw(0,0) rectangle(4,4);
\draw[thin, -] (0,4)--(4,0) node at(-0.15,-0.15){O};
\draw[thin, -] (0,0)--(1.464,2.536) node at(1.64,2.72){P};
\draw[thin, -] (0,0)--(3.155,0.845) node at(3.28,1.02){Q};
\draw(0.20,3.55) circle(0.08) node at(-0.15,4.15){A};
\draw(0.38,0.28) circle(0.08);
\draw(3.55,0.20) circle(0.08) node at(4.15,-0.15){B};
\draw[dotted] (0,4) to [out=335,in=115] (1.464,2.536) node at(1.05,3.5) {$x$};
\draw[dotted] (1.464,2.536) to [out=335,in=115] (3.155,0.845) node at(2.6,1.9) {$z$};
\draw[dotted] (3.155,0.845) to [out=340,in=110] (4,0) node at(3.75,0.7) {$y$};
\draw[dotted] (0,0) to [out=110,in=250] (0,4) node at(-0.2,2) {$a$};
\draw[dotted] (0,0) to [out=340,in=200] (4,0) node at(2,-0.2) {$a$};
\end{tikzpicture}
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2019年6月8日土曜日

アップルと私

なんだかこの40年間ずっと影響・翻弄され続けてきたような・・・

1980年代初頭,私はPC-9801ユーザで研究室のコンピュータもPC-9801シリーズ(まわりを見回してもみんなそうだった)。ところが,1988年に大阪教育大学に40台のMacintoshII (Mathematica, Fortranつき)+ LaserWriterが導入されたのをきっかけとして,マックユーザに転向してしまった(PC-9801RAくらいまではフォローしていた・・・)。

最初にMacintoshを見たのは日本橋の上新電機の1階だった。PC-9801本体+8087プロセッサが30万円の時代に,小さなモノクロディスプレイ一体型のMacintoshPlusが60万円以上していた。これはコストパフォーマンスが悪いと思い,その後近づかないようにしていた。それでも何か気になって,Mac+(1986-)やMacLife(1987-)などの雑誌を買い始めたところに,各国立大学へ貿易黒字対策のための外国製コンピュータ導入の話が降ってわいた。

いまから思えば,これが日米貿易戦争の端緒であり,半導体産業やコンピュータ産業の凋落の第一歩であったように思う。この米国の作戦に自ら進んで飛び込んで成長力を失った日本は,さらに竹中マジックで骨の髄まで外資にしゃぶられる今日の体たらくになるのであった。当時はバブルとも重なって毎週のようにDRAM技術の革新が報じられ,日本の半導体は少なくとも量的には完全無敵の状態に見えていたにもかかわらず。

さて,大学にMacintoshIIが導入されてからは,ジョブズのいないアップルの業績は下り坂で,その方針も混迷を極めた。日本経済新聞は何かある度にこれでもかというようにアップル叩きに勤しんでいた。その後の手のひら返しをみて,つくづくジャーナリズムにいやけがさすのであった。

なにやかやいっても,おおむねアップルの動きに追随してきたつもりだった。ところがApple Watchを見送ったあたりから,様々な技術や製品についていけなくなった。アーリーアダプターとしてiPhoneを卒業生らに見せびらかしていた時代がなつかしい。

P. S. 池田分校の新しい情報科学専攻に1教室分のMacintoshIIが設置され,ここでMathemacaの授業を1コマ持っていた。毎週朝早く到着して,全台手作業でDisinfectantでウイルス除去をするのが私の仕事だった。

年代 事項    製品      私は       
1976 創業 Apple I 大学院進学
1977 アップルコンピュータ設立 Apple II
1978
1979 Lisaプロジェクト
1979 Macintoshプロジェクト
1981
1982 大阪教育大学
1983
1984 Macintosh PC-9801導入
1985 ジョブズ追放→NeXT
1986
1987 Newtonプロジェクト HyperCard
1988 MacintoshII×40台
1989 MacintoshIIfx導入
1990 (NeXTstation)
1991
1992 Newton MP NeXTstation導入
1993
1994 PowerMacintosh PowerBookDuo270導入
1995
1996 NeXT買収
1997 ジョブズ復帰 漢字Talk7 PowerBook2400購入
1998 iMac/AppleWorks
1999 iBook
2000
2001 アップルストア MacOSX/iPod
2002 iPod購入
2003 iTunes Music Store
2004
2005 スタンフォード卒業式
2006 Apple TV
2007 iPhone
2008 iPhone購入
2009
2010 iBookstore iPad
2011 ジョブズ死去
2012 MacBookPro購入
2013
2014 Apple Pay開始
2015 Apple Watch
2016
2017 ApplePark
2018 定年退職
2019 iPadPro購入
2020

2019年6月7日金曜日

組体操の危険性

NHKをみていたら,大阪経済大学名誉教授の西山豊先生(数学者)が,卵はなぜ卵形なのかの解説をしていた。角度5度以下の斜面で転がり落ちず,振動しながら下ることで,卵がわれないようにするからだ。ところで,西山先生のホームページには他にも重要な論文があった。「組体操・人間ピラミッドの巨大化を考える」である。各教育委員会ではこれを熟読して早急に対策する必要がある。

[1]西山豊:2016年広島移動ピラミッド死亡事故を検証する,大阪経大論集,第69巻5号1-32,2019
[2]西山豊:都道府県別組体操事故統計(2018 年版)


2019年6月6日木曜日

WWDC19(3)

WWDC19(2)からの続き)

Gizmodo Japanで,林信行(1967-)と松村太郎(1980-)が対談していた。
AR kitの話,AppleTVとゲームコンソールの話,Apple Watchの話など興味深い。
Appleの #WWDC19 を著名ジャーナリスト2人とギズ編集長が語る動画ができました

ARグラス=電脳メガネが実用化されるまではまだ時間がかかりそう。でもそれまでに社会の分断化が進んでしまって,この技術は誰のためのものということになるのか。

nobiさんからプログラミング教育で,Swiftを使ったらどうかという提案があった。それで思い出したが,大阪教育大学の新しい理事・事務局長(名称復活...orz)の新津勝二さんは,文部科学省初等中等教育局教育課程課課長補佐の時代にプログラミング教育に関わっていたようだ

2019年6月5日水曜日

WWDC19(2)

WWDC19(1)からの続き)

macOS 10.14 Mojaveはインストールしていない。まだ,High Sierraのままである。当初の不具合に加えて,ダークモードが好きじゃないのだ。もちろんモバイル環境で節電できるというメリットはあるのかもしれないが,この歳になると暗い背景では字が読みにくいのです。

macOS 10.15 Catalinaについての情報もいろいろと入ってきた。ベータリリースノートには,正式版ではScript言語のランタイムが同梱されなくなるとあるようだが,どうなんだろうか。Homebrewさえインストールできれば問題ないのかな。

あと,ハードウェアもソフトウェアもデザイン的な統一感が失われていることが残念。

WWDC19(3)へ続く)

2019年6月4日火曜日

WWDC19(1)

毎年,WWDCなどアップルの発表がある度にkeynotesを見ている。最初に見たのは,スティーブ・ジョブズがアップルに戻ってきて,1998年にiMacを発表したときだったろうか。その約10年後の2007年に最初のスマートフォンであるiPhoneが発表されたときははっきり憶えている。それから1年後に日本で発売されて1ヶ月後にiPhoneを購入したときの高揚感も忘れられない。

残念なkeynotesもあった。iMacの最終段階で,ろくな製品がなくJobsが水玉模様のiMacで一瞬お茶を濁していたのがその最たるものだ。最近のWWDCもそれに匹敵すると言えるかもしれない。OSやアプリケーションの細かな改良とハードウェアの漸進的な更新が続き,場合によっては,改良ではなく後退や悪化にもみえるものもあった。

今回のWWDC19はどうだったろうか。iPadOSができてMacのサブディスプレイや入力となるのはよいかもしれないが,どこまで使うだろうか。新しいMacProはデザインと価格は最悪だが,拡張性が高いことは評価できる。ただし,プロユースでフルセットにすれば数百万円のシステムになるので,我々一般ユーザにはもう関係のない世界に入ってしまった。iOS13のセキュリティ関連やApple SignInはちょっと面白いかもしれない。あとは,TwitterのネイティブアプリがMacに帰ってくるかもしれないことかな。


2019年6月3日月曜日

ウルフラムとペレス

辰己さんが,Jupyterの発音は,ジュパイターではなく,ジュピターじゃないのとFacebookでつぶやいていた。これに対して中野さんは,普通はジュピターでしょと。あれ・・・,pythonオリジンだからジュパイターだと思い込んでいた私はどうしよう・・・

ということでさっそくYouTubeに尋ねてみると,いきなりIPythonJupyterの開発者のフェルナンド・ペレス2017年のJupyterConの講演にぶちあたった。はい,正解はジュピターでした。Project Jupyterにもちゃんと Jupyter=/ˈdʒuːpɪtər/ と書いてある。

ところで,そのペレスは,Pythonの対話型環境であるIPythonを,Wolfram Notebookにインスパイアーされて開発したとある。つまり,ノートブック型インターフェースの始まりは,スティーブン・ウルフラムによるMathematicaであった。その後,IPythonからスピンオフしたプロジェクトがJupyterを創り出す。Jupyterの意義は単に特定の言語の対話型環境をつくることではなく,「Project Jupyterは,オープンソースソフトウェア,オープンスタンダード,そして何十ものプログラミング言語にわたるインタラクティブコンピューティングのためのサービスを開発するために存在します」であった。Jupyter+Julia+α連合軍をみて,Wolfram言語も開放政策に舵をきったのではないか。

スティーブン・ウルフラム(1959-)はイギリス生まれで,17歳でオックスフォードに入学し,ゲルマンに誘われて18歳でカリフォルニア工科大学に入り,1979年に20歳でPh. D.をとる。専門分野は素粒子物理学の理論であったが,1981年にはMathematicaの前身のSMP(Symbolic Manupilation Program)を商業化し,複雑系の物理学の研究(Celuller Automata)を進めた。

一方,フェルナンド・ペレスはコロンビア生まれで,コロンビアのアンティオキア大学で物理学を学び,コロラド大学で素粒子物理学(格子QCD理論)のPh. Dをとる。それ以前には,フラクタル,半古典カオスなども研究しているようだ。2008年にはカリフォルニア大学バークレー校に移り,ソフトウェア開発に主軸を置くことになる。

なんだかよく似たところがある2人である。

2019年6月2日日曜日

AI Feynman(4)

AI Feynman(3)からの続き)

2018年に発表されたウーとテグマークの論文 "Toward an AI Physicist for Unsupervised Learning"は,AI Feynman 論文に先行するものだ。2018年のインターネットでは,AI物理学者が仮想現実の物理法則を発見したものとして話題になっていた。

その要約は次のようなものである。
物理学でよく用いられる4つの戦略を使用して,教師なし機械学習を改善するという課題に挑戦する。その4つは,分割統治,オッカムのかみそり,統一,そして絶え間ない学習である。1つのモデルを使ってすべてを学ぶのではなく,学習と「理論」の操作を中心に置いた新しいパラダイムを提案する。それは(過去の観測から)将来を予測し,その予測が正しい領域を定めるものだ。特に,各理論がその比較的有利な領域に特化するための新しい一般化平均損失,および不良データを除いて理論を単純な数式にまとめることを目指す区別可能な記述長を導入する。理論は「理論ハブ」に格納され,そこでは学習された理論を継続的に統合し,新しい環境に出会ったときに理論を提案することができる。我々は,実装した「AI Physicist」学習エージェントを,しだいに複雑化する環境でテストする。重力,電磁気力,調和運動,弾性衝突などのランダムな組み合わせを含む仮想世界における物体の軌道の教師なし学習を行う。我々の学習エージェントは,同等の複雑さの順伝搬型ニューラルネットより速く学習し,約10億分の1の平均二乗予測誤差を与える。また,整数や有理数の理論パラメータを正しく予言する。この学習エージェントは区分的に一定の力が働く場における非線形カオス二重振り子についても,異なる運動則をもつ領域をうまく同定することができた。

2019年6月1日土曜日

AI Feynman(3)

AI Feynman(2)からの続き)

機械学習と物理で紹介したように,日本物理学会誌では,人工知能と物理学というシリーズが始まっている。第1回目に神嶌敏弘さんが,機械学習の分野の全体像と歴史の概観をしているが,データマイニング・機械学習分野の概要という資料もわかりやすい。

神嶌さんの物理学会誌の特集記事に「変わりゆく機械学習と変わらない機械学習」というのがある。機械学習の自然科学での活用の節で,ドミンゴの "The Master Algorithm" からの引用として,自然科学の研究をブラーエ,ケプラー,ニュートンの業績になぞらえて三段階に分類してとらえることができると紹介している。なんのことはない武谷三男の三段階論ではないか。

「実験データを集めるブラーエの段階, 経験則を発見するケプラーの段階,そしてその経験則の背後の理論を見つけ出すニュートンの段階である」というのは武谷三段階論の現象論,実体論,本質論に対応している。それぞれに対して,データマイニング・機械学習・深層学習・AI(それぞれの分野の概念的な構造関係が十分理解できていないので暫定的に並列にしている)で何ができるかを考えることができる。

テグマークのAI Feynmanは,実体論なのだろうか,本質論なのだろうか。あるいは階層の異る現象論なのだろうか(広重徹ならばそのような三段階論による当嵌めの構図それ自体に意義をとなえるかもしれない)。

AI Feynman(4)に続く)


2019年5月31日金曜日

AI Feynman(2)

AI Feynman(1)からの続き

ニューラルネットワークあるいはディープラーニングを自然科学とくに物理学に応用するという話は昔からあった。30年近く前にもニューラルネットワークで原子核の結合エネルギーを分析するような話題を見かけたことがあるような気がする。

物理科学でのニューラルネットワーク/ディープラーニングの利用というと次のようなものが想像できた。望遠鏡や加速器で得られたデータを分析してシグナルを発見する。物質の合成過程の膨大なデータから目的の性質を持つ組み合わせを推定する。などなど。

で,最近は こんな本が出版されるまでに至る。

ディープラーニングと物理学 原理がわかる、応用ができる(田中・富谷・橋本)

 もう一歩進めると,いわゆるAI(機械学習)で物理学の法則を発見することができるのかが問題になる。理論が予め存在しその方程式のパラメータを探すのではなく,理論それ自身を作り出すことができるかだ。テグマークの論文はその方向の試みなのだろう。

(AI Feynman(3)に続く)

2019年5月30日木曜日

AI Feynman(1)

2019年5月29日にarxivのphysics.comp-phに,MITのTegmarkとUdrescuの論文がアップロードされた。そのタイトルは,"AI Feynman: a Physics-Inspired Method for Symbolic Regression"である。なんだかおもしろそう。

さて,その要約は,次のようなものだった。
物理学と人工知能(AI)の双方にとって核心的な課題の一つは数式回帰である。つまり,未知関数からのデータに一致する数式表現を発見することである。 この問題は原理的にNP困難である可能性が高いが,実用的な興味の対象となる関数はしばしば対称性,分離性,合成性および他の単純化できる特性を示す。 この精神のもとで,我々は,ニューラルネットワークと物理学に着想を得た技術を組み合わせた再帰的多次元記号回帰アルゴリズムを開発した。 我々はそれを「ファインマン物理学講義」からの100の方程式に適用し,そのアルゴリズムはすべてを発見する。従来のソフトウェアでは71だけが見つかった。より困難なテストセットでも,到達水準を15%から90%に向上させた。
AI Feynman(2)に続く)

2019年5月29日水曜日

ラテン語の独習

インターネットでラテン語を独習できるかどうか調べてみた。なぜそんなことを思いついたのだろうか。twitterにソクラテスについての話題があったからだ。無知の知と不知の知は違うのかどうか云々・・・。ソクラテスは高等学校の倫理の時間に出てきたが,なぜ毒杯を仰がなければならなかったのか,どうしても理解できないままだった。いまでもそのレベルです。それがなぜラテン語に結びついたのかはよくわからない。

ラテン語
Wikipediaラテン語版
ラテン語の世界にようこそ
山下太郎のラテン語入門

などがあったので,まあ,根気さえあれば多少はできるのかもしれない。それよりも韓国語・中国語がさきだろうか。

昨日の事件の学校法人カリタス学園カリタスはラテン語のcaritasから来ており,キリスト教の愛や慈善を表している。チャリティ(charity)=慈善の語源である。

2019年5月28日火曜日

「加賀」と「かが」

昔(昭和30年代後半),「少年」か「ぼくら」の付録に帝国海軍連合艦隊の紙模型がついてきたことがあった。月間漫画雑誌の付録なので,イ号潜水艦から空母,戦艦大和までのミニ模型の数は揃っていてもそれほどたいしたものでない。だがなんだかワクワクした。まだ戦後20年もたっていないころである。逆コースは始まっているにせよ,子ども向けの雑誌の付録にこれというのは今ではなかなか想像しにくいかもしれない。合衆国海軍の空母エンタープライズ(1961年就役)の大きな紙模型がついてきたこともある。

プラスチックモデルでも戦争物は多く,小学生の時分にはいろいろ買ってもらった。大きな木の模型の戦艦大和にも1度挑戦したが,低学年だったので最後まで作りきれなかった。一回り小さい70-80cmクラスのプラスチックモデルの戦艦大和やもう少し小振りの航空母艦大鳳などは最後までちゃんと作って水槽に浮かべることもできた。戦車のプラモデルも作ったような気もするが,友達のを手伝っていたのかもしれない。

そんなわけで,昭和30年代の子どもを取り巻く環境はなかなか楽しいものであった。それは一方で,憲法九条や防衛費GNP1%以下などの枠組みに守られた中のサンドボックスのようなものだった。

ところが,いつのまにか,ミッドウェー海戦で沈没した空母加賀(238m,29500トン)はヘリコプター搭載護衛艦かが(248m,26000トン)に生まれ変わり,さらに昨年度末はF35Bを搭載できるよう改修されることが決定し,事実上の空母化といわれるようになった。1年前には恐る恐る「かが」全容を報道していたマスメディアは安倍内閣のもとで変質した。いまや,トランプ大統領の視察にあわせてその内部でTV中継までするはしゃぎよう。過去の長期にわたって積み重ねられてきた政府の説明とはまったく異る,攻撃能力を持った空母の所有と運用が大手を振ってまかり通る時代になってしまった。


(写真:「艦船の戦い〜ミッドウェー海戦(NAVERまとめ)」から引用)


2019年5月27日月曜日

古墳密度


大阪の百舌鳥・古市古墳群が2019年の登録審査候補に推薦され世界遺産に登録されることになった。NHKのブラタモリでも堺市の古墳が取り上げられており古墳ブームかもしれない。

ところで,kofun.jpの埋蔵文化財包蔵地数(古墳・横穴数)の全国ランキングでは,兵庫県が1位で大阪府は13位である。面積が広ければ古墳の数も多くなるので,古墳の面密度で比較する必要があるのではないのか。Wikipediaに都道府県の面積一覧があった。山や森林は対象にはならないので,それらを除いた可住地面積で比べることにしよう。

ExcelのVLOOKUPで両方のテーブルを比較して計算してみた。
大阪府は13位から10位に上昇して多少順位は入れ替わるが,大勢に影響はなかった。
奈良・京都はやはり密度が高い。特徴的なのは,鳥取県(なぜ出雲の島根県ではないの?)及びそれにつながる岡山県と広島県と兵庫県に古墳が多いこと。

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順位 県名 古墳数 可住面積 古墳密度
2 鳥取県 13486   912 14.79
8 奈良県 9700   851 11.4
3 京都府 13016 1155 11.27
1 兵庫県 18851 2756 6.84
5 岡山県 11810 2210 5.34
6 広島県 11311 2255 5.02
7 福岡県 10754 2737 3.93
4 千葉県 12765 3488 3.66
9 三重県 7025 2022 3.47
13 大阪府 3427 1314 2.61

10 岐阜県 5140 2145 2.4
18 香川県 2256   991 2.28
17 島根県 2571 1256 2.05
11 群馬県 3993 2295 1.74
19 石川県 2107 1383 1.52
12 静岡県 3829 2731 1.4
21 和歌山県1486 1097 1.35
15 埼玉県 3100 2566 1.21
23 徳島県 1120 1022 1.1
14 愛知県 3101 2952 1.05

16 長野県 2831 3334 0.85
24 神奈川県1098 1460 0.75
28 滋賀県   897 1289 0.7
32 山梨県   651   950 0.69
25 愛媛県 1083 1670 0.65
31 東京都   714 1396 0.51
36 福井県   541 1066 0.51
29 大分県   893 1769 0.5
22 熊本県 1364 2746 0.5
20 茨城県 1862 3976 0.47
30 宮崎県   832 1835 0.45
34 佐賀県   566 1340 0.42
26 栃木県 1081 2946 0.37
35 山口県   552 1749 0.32
39 長崎県   470 1617 0.29
27 福島県 1041 4218 0.25
40 高知県   229 1168 0.2
37 鹿児島県  529 3243 0.16
38 宮城県   508 3130 0.16
33 新潟県   632 4481 0.14
41 富山県   216 1850 0.12
42 山形県   134 2850 0.05
43 岩手県     64 3710 0.02
44 北海道       0 21899 0
45 青森県       0 3203 0
46 秋田県       0 3155 0
47 沖縄県       0 1159 0
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(1) 順位は都道府県別の古墳・横穴数
(2) 古墳数=古墳・横穴数は埋蔵文化財包蔵地数のこと
(3) 可住地面積=総面積−林野面積−湖沼面積 の単位はkm^2
(4) 古墳密度=古墳数÷可住地面積

(注1)結婚してまもない頃神戸の五色塚古墳を訪れた。日本ではじめて復元整備されたもので,古墳が造られた当時の森に包まれていない状態を見ることができる。
(注2)奈良県天理市にも古の重要な古墳が多いが,天理駅前広場にはコフフンというものがあって子どもたちが遊べる。

写真:天理駅前広場 CoFuFun のページから引用


2019年5月26日日曜日

Wolfram Engine

MathematicaWolfram|Alphaでおなじみのウルフラム(昔はウルフラム・リサーチだった)が,それらのコアになる計算エンジンをWolfram Engineという名前で,開発者向けに無償で開放した。すごい。pythonやC++で開発するアプリにライブラリとして組込むことができ,Wolfram Knowledgebaseへのアクセスができるとのこと。

各プラットフォーム用に3GB程度のアプリケーションをダウンロードし,Wolfram IDを取得すれば使用ライセンスが得られる。Mathematicaをコマンドラインから利用できるだけでなく,jupyter notebookから使える。これらのノートブック・インターフェースも元々は,Mathematica Notebook に習ったものではないかと思う。

さて,twitterで教えてもらったjupyterを使えるようにする手順は次の通り。まずWolfram Engineをインストール,ライセンスを取得しコマンドラインで起動することを確認する。
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git clone github.com/WolframResearch/WolframLanguageForJupyter.git
cd WolframLanguageForJupyter
./configure-jupyter.wls add
jupyter notebook
 または
jupyter lab
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黒木さんの「Free Wolfram EngineをJupyterで使う方法」が例題紹介も含めて詳しい。


2019年5月25日土曜日

マレー・ゲルマン

クォーク模型の提唱者の一人で「クォーク」の命名者であるマレー・ゲルマン(1929-2019)が亡くなった。

リーとヤンによる弱い相互作用におけるパリティ非保存の提案とウーによるコバルト60のベータ崩壊における実験的検証を受けて,ゲルマンはファインマンとともに弱い相互作用のV−A理論をつくる。大学院では原子核の弱い相互作用(ベータ崩壊)をテーマとしていたので,このV−A理論を出発点として計算を進めることになった。ワインバーグ・サラムの電磁相互作用と弱い相互作用の統一理論はようやく実験的なエビデンスが固まって確立しつつある時期だったが,原子核の低エネルギーの電弱過程でかつ中性カレントも関係ないとすれば,V−A理論で十分なのであった。

ゲルマンといえば,ゲルマン=大久保の質量公式中野・西島・ゲルマンの法則など,日本人物理学者との関連も深い。もちろんクォーク模型自身が坂田模型や池田・大貫・大久保対称性などからつながるものだった。

クォークはジェイムズ・ジョイスの小説「フィネガンズ・ウェイク」の一節"Three quarks for Muster Mark!"から来ているが,ゲルマンによるクォーク模型の前段階の理論のEightfold Way(八道説)は仏教のNoble Eightfold Path(八正道)を暗示して命名されている。


(付 5/30/2019)かつてCalTechに在学していたスティーブン・ウルフラムゲルマンへの長い追悼文を書いている。

2019年5月24日金曜日

キロノヴァ

原子核物理でつむぐrプロセスからの続き)

冨永さんの話に「キロノヴァ」というキーワードが登場し,疑問符のままにしていたが,やはり気になるので調べてみた。

新星(nova):白色矮星と主系列星の近接した連星で,主系列星からの水素が降着円盤を経由して白色矮星の表面に蓄積している。その核融合連鎖反応によって白色矮星の表面が爆発して光度が千倍から数百万倍に急激に増光するもの。銀河系内の発生頻度は年に数十例(観測は数例)とされている。

超新星(supernova):大質量の恒星の中心部の核反応が進んだ結果,中心核の圧力が低下し中心部に中性子星やブラックホールを形成する最に,爆発的に外層を吹き飛ばすことできわめて大量のエネルギーを放出するもの。新星の1万倍から十万倍の明るさとなる。銀河系内の発生頻度は数十年に1度(観測頻度は数百年に1度)とされている。他の銀河系も含めると年に数百例程度観測される。

キロノヴァ(kilonova):中性子星の連星,または中性子星とブラックホールの連星が融合する際におこる大規模な爆発。新星の千倍程度の明るさになる。超新星の10分の1から100分の1の明るさである。これまでに数例観測されている。元素合成のr過程を担う重要な現象だと考えられるようになった。

追伸:「ノヴァ」といえばサミュエル・R・ディレーニーのSFですね。地中海に響くシリンクスの音色が今も記憶に残っている。

2019年5月23日木曜日

原子核物理でつむぐ r プロセス

元素合成のr過程からの続き)

原子核物理でつむぐ r プロセス 」という研究会が,5/22-24の日程で京都大学の基礎物理学研究所で開催されている。国広さんのtwitter情報によれば,四月以降グレードアップしたLIGO-Virgo O3が,多いときには毎日1個の割合で重力波を観測しているらしい。京大の久徳浩太郎さんの資料「多粒子観測から原子核物理へ:ブラックホール・中性子星連星を例に」を参照のこと。

(キロノヴァへ続く)

2019年5月22日水曜日

他力本願とは

どこかの政治家がまた「他力本願」というキーワードをもちいて,何か発言したのか,他力本願の正しい理解を促すための過去の資料に関するツイートが流れてきた。門徒?なのに自分自身が「他力本願」をちゃんと理解できていませんでした。ごめんなさい。

さて,Wikipediaの知識を切り貼りして構成すると次のようなことになる。
他=阿弥陀如来,力=如来の本願力,本願=仏や菩薩が一切の生あるものを救おうとして悟りを得て仏や菩薩になる前に立てた誓願(誓願が完成することで仏や菩薩になる)。つまり阿弥陀様を信じようというムーブメントなのだった・・・違うか(現時点での俗流理解)。

P. S. 今日は10年に1度だけ開かれるのホーランエンヤ(松江)中日祭である。

2019年5月21日火曜日

ねじまき少女:バチガルピ

ハヤカワ文庫 SF1809/SF1810の「ねじまき少女パオロ・バチガルピ)」を読了した。
奥付の日付は2011年なので,そのころに買っているはずだが,長らく積ん読く状態が続き,今年になって8年ぶりにようやく読み始めた。それでもだらだらと時間がかかってしまった。アマゾンの書評はさんざんであった。ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞・キャンベル記念賞を総なめにしているのだが,翻訳が悪いだの,世界観の欠陥だの,どとまるところを知らないコメントがついていた。

最近,細切れにしか本を読めなくなっていたのだが,この小説も,5人(レイク・アンダーソン,タン・ホクセン,ジェイディー,カニヤ,エミコ=ねじまき少女)の視点を移動しながら語られるので,その分読みやすかった。未来のバンコクのイメージや物語の設定もおもしろかったので,なんでそんなに評判が悪いのだろうか?映画化するには,エミコが暴れるシーンが最後にほしいところではあるが,それはそれ,これはこれ。