2019年5月11日土曜日

スリンキーの自由落下(3)

スリンキーの自由落下(2)からの続き

スリンキー問題の物理はほぼ解決しているのだけれど。物理的なバネならば,粒子の追い越しは不可能であるが,このモデルではそれが許容されている。そこで,自然長以下の場合にバネ定数が非常に大きくなるとして,物理的なスリンキーにより近いモデルで数値計算してこの状況を確認してみる。このモデルでも初期条件によっては,追い越しの発生を完全に禁止できないが,簡単のためにこの非対称弾性モデルを採用した。なお,非対称バネでなく,自然長やバネ定数を変化させても衝突を避けることは可能であるが・・・

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k = 5; m = 1; g = 10; L = 1;
sol = NDSolve[{x1''[t] == m g + k (x2[t] - x1[t] - L) + 
100*k*HeavisideTheta[- x2[t] + x1[t] + L]*(x2[t] - x1[t] - L), 
x2''[t] == m g - k (x2[t] - x1[t] - L) - 
100*k*HeavisideTheta[- x2[t] + x1[t] + L]*(x2[t] - x1[t] - L), 
x1'[0] == 0, x2'[0] == 0, x1[0] == 0, x2[0] == L + m g / k},
 {x1, x2}, {t, 0, Tmax}]

Plot[Evaluate[{-x1[t], -x2[t], k*HeavisideTheta[ x2[t] 
- x1[t] - L]*(x2[t] - x1[t] - L)} /.sol], {t, 0, Tmax}]
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スリンキーの自由落下(4)に続く


2019年5月10日金曜日

スリンキーの自由落下(2)

スリンキーの自由落下(1)からの続き

念のために,3つの同種粒子が2つの同種バネにつながっている場合を確かめてみる。
各粒子の質量を$m$,バネ定数を$k$,自然長を$L$とする。粒子1のみを原点で支え,粒子2と粒子3が鉛直下方に吊りさがって静止した状態から始める。

運動方程式と初期条件は,
\begin{equation}
\begin{aligned}
m \ddot{x}_1 &= m g + k (x_2-x_1-L)\\
m \ddot{x}_2 &= m g - k (x_2-x_1-L) + k (x_3-x_2-L)\\
m \ddot{x}_3 &= m g - k (x_3-x_2-L) \\
x_1(0) &= 0, \quad \dot{x}_1(0) = 0\\
x_2(0) &= L + 2 m g/k, \quad \dot{x}_2(0) = 0\\
x_3(0) &= 2 L + 3 m g/k, \quad \dot{x}_3(0) = 0\\
\end{aligned}
\end{equation}
$M=3m$とし,重心座標 $x_G=(x_1+x_2+x_3)/3$と2つの相対座標$y_1=x_2-x_1-L,\ y_2=x_3-x_2-L$ を導入すると,運動方程式と初期条件は,
\begin{equation}
\begin{aligned}
M \ddot{x}_G &= M g\\
m \ddot{y}_1 &= - 2 k y_1 + k y_2\\
m \ddot{y}_2 &=  k y_1 -2 k y_2\\
x_G(0) &= L+\frac{5 m g}{3 k}, \quad \dot{x}_G(0) = 0\\
y_1(0) &= \frac{2 m g}{k}, \quad \dot{y}_1(0) = 0\\
y_2(0) &= \frac{m g}{k}, \quad \dot{y}_2(0) = 0
\end{aligned}
\end{equation}
これらは簡単に解くことができて($\omega = \sqrt{k/m}$とした),
\begin{equation}
\begin{aligned}
x_G &= x_G(0)+ g t^2/2\\
y_1 &= \frac{3mg}{2k} \cos \omega t + \frac{mg}{2k} \cos \sqrt{3}\omega t\\
y_2 &= \frac{3mg}{2k} \cos \omega t - \frac{mg}{2k} \cos \sqrt{3}\omega t
\end{aligned}
\end{equation}
 したがって,
\begin{equation}
\begin{aligned}
x_1 &= \frac{5mg}{3k}+ \frac{g}{2} t^2 - \frac{3mg}{2k}\cos \omega t - \frac{mg}{6k}\cos \sqrt{3} \omega t \\
x_2 &= L+ \frac{5mg}{3k} + \frac{g}{2} t^2 + \frac{mg}{3k} \cos \sqrt{3}\omega t\\
x_3 &= 2L+\frac{5mg}{3k} + \frac{g}{2} t^2 + \frac{3mg}{2k} \cos \omega t - \frac{mg}{6k} \cos \sqrt{3}\omega t
\end{aligned}
\end{equation}

Mathematicaで計算してみると,
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xg[t_] := L + 5 m g/(3 k) + g t^2/2
y1[t_] := 3 m g/(2 k) Cos[Sqrt[k/m] t] + m g/(2 k) Cos[Sqrt[3 k/m] t]
y2[t_] := 3 m g/(2 k) Cos[Sqrt[k/m] t] - m g/(2 k) Cos[Sqrt[3 k/m] t]
x3[t_] := xg[t] + L + (y1[t] + 2 y2[t])/3
x2[t_] := x3[t] - L - y2[t]
x1[t_] := x2[t] - L - y1[t]

k = 5; m = 1; g = 10; L = 1;
Plot[{-x1[t], -x2[t], -x3[t]}, {t, 0, Pi/3}]

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スリンキーの自由落下(3)に続く



2019年5月9日木曜日

スリンキーの自由落下(1)

@sekibunnteisuu @irobutsu @Yh_Taguchi @Hal_Tasaki @genkuroki などで以前から話題になっていたスリンキーの自由落下をようやくいまごろ目にした。最も簡単な力学モデルについて,田口さんがすでにQiitaに書いているのだけれど,自分でもやってみた。黒木さんのjuliaの計算は凄いし,田崎さんの物理的説明もわかりやすいし,前野さんの動画もおもしろいのだった。

質量$m_1$の粒子1と質量$m_2$の粒子2が,自然長 $L$,バネ定数 $k$ の軽いバネの両端に取り付けられている。粒子1を原点に置いて支えながら,鉛直下方に静かにバネを垂らすと粒子2は $x=L+m_2 g /k $の位置で静止する。時刻 $t=0$ で粒子1の支えを静かに取り去ると,2つの粒子は重力とバネの弾性力によって運動を開始する。

運動方程式と初期条件は,
\begin{equation}
\begin{aligned}
m_1 \ddot{x} _1 &= m_1 g + k (x_2 - x_1 - L)\\
m_2 \ddot{x} _2 &= m_2 g - k (x_2 - x_1 - L)\\
x_1(0) &= 0, \quad \dot{x}_1(0)=0\\
x_2(0) &= L+\frac{m_2 g}{k}, \quad \dot{x}_2(0)=0
\end{aligned}
\end{equation}
 ここで,重心座標 $x_G=(m_1 x_1 + m_2 x_2 )/M$ と相対座標 $x=x_2-x_1$ を導入する。ただし,全質量を $M=m_1+m_2$ ,換算質量を $\mu = m_1 m_2 /M $ とする。

運動方程式と初期条件は,
\begin{equation}
\begin{aligned}
M \ddot{x}_G &= M g \\
\mu \ddot{x} &=  - k (x - L)\\
x_G(0) &= \frac{m_2}{M} (L+\frac{m_2 g}{k}), \quad \dot{x}_G(0)=0\\
x(0) &= L+\frac{m_2 g}{k}, \quad \dot{x}(0)=0
\end{aligned}
\end{equation}これを解くと,$\omega = \sqrt{k/\mu}$として,
\begin{equation}
\begin{aligned}
x_G(t) &= g t^2 /2 + \frac{m_2}{M} (L+\frac{m_2 g}{k})\\
x(t) &= L+ \frac{m_2 g}{k} \cos \omega t\\
x_1(t) &= g t^2/2 + \frac{m_2 g}{k}(\frac{m_2}{M} - \frac{m_2}{M} \cos \omega t)\\
x_2(t) &= L+ g t^2/2 + \frac{m_2 g}{k}( \frac{m_2}{M} + \frac{m_1}{M} \cos \omega t)
\end{aligned}
\end{equation}

これをMathematicaでグラフ化すると,
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x1[t_] := g/2 t^2 + m2 g/k 
(m2/(m1+m2) - m2/(m1+m2) Cos[Sqrt[(m1+m2)k/(m1*m2)]t])
x2[t_] := L + g/2 t^2 +  m2 g/ k

(m2/(m1+m2) + m1/(m1+m2) Cos[Sqrt[(m1+m2)k/(m1*m2)]t])
k = 5; m1 = 1; m2 = 1; g = 10; L = 1;
Plot[{-x1[t], -x2[t], -x2[t] + L}, {t, 0, Pi/4}]
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[1]積分定数:ばねの落下(togetterまとめ)https://togetter.com/li/1345873
[2]前野昌広:コイルバネの落下 https://twitter.com/irobutsu/status/1125581991645081600
[3]田口善弘:ばねの落下 https://qiita.com/Yh_Taguchi/items/e0d82f28447a8d5a2726
[4]W. G. Unluh:(堀田さん紹介)The Falling Slinky https://arxiv.org/abs/1110.4368
[5]田崎晴明:ばねでつながれた粒子の運動 http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/mathbook/pdf/slinky20190509.pdf
[6]黒木玄:落下するバネ https://nbviewer.jupyter.org/gist/genkuroki/e317b4b2dd5c19e6b228b75f420aa699

スリンキーの自由落下(2)に続く

2019年5月8日水曜日

Nemo.jl

juliaの Nemo.jl パッケージをインストールした。Nemoはjuliaのコンピュータ代数パッケージ

「Nemo.jlパッケージは,Juliaプログラミング言語用の,一般的に使用されているさまざまな環における高速基本算術演算用のライブラリーでる。可換代数,数論,群論の高性能パッケージを提供することが目的とされている。」(Nemo.jlドキュメントより引用)

p-進数(p-adic number)に興味を持ったため,ちょっとだけ試してみた。
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using Pkg
Pkg.add("Nemo")
R = PadicField(7, 30)
a = R(13)
println(a)
println(a*a)
b =  2 + 3*7 + O(R, 7^6)
sqrt(b)
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6 + 1*7^1 + O(7^30)
1 + 3*7^1 + 3*7^2 + O(7^30)
3 + 5*7^1 + 1*7^2 + 1*7^3 + 4*7^5 + O(7^6)

2019年5月7日火曜日

宮崎・早野論文

3ヶ月ほど前に,東電原発事故の事実を伝えるサイト Level7 に掲載されたファクトチェック「今一度「宮崎・早野論文」の誤りを正す」(藍原寛子)。

黒川の論文内容についての指摘=質問(論文データの内部不整合性について)に対する,宮崎,早野からの回答はまだないようだ。

ファクトチェックにある昨年の記事「復興庁の「放射線のホント」を検証する①」(吉田千亜)の「加害−被害」の問題構造(福島大学 後藤忍)における焦点もわかりやすい。あ,福島大学の副読本のひとだった。

2019年5月6日月曜日

日本国憲法

5月3日は,憲法記念日だった。インターネットには,まだ自分の知らない興味深いコンテンツがいろいろと埋蔵されている。発見したのは「最高法規の意志」。日本国憲法の体系的な構造をわかりやすく図解するとともに(下図参照),憲法九条改正議論の問題点,あるいは,人権の根拠に対する具体的な例による楽しい解説など,深く考えられたサイトだ。

一つのポイントは,体系的な憲法の構成を考えると,安易な部分的改正は憲法の体系に大きな不整合と意味の変質をもたらしてしまうということ。第九条がもともと全文として位置づけられていて,「総則規程」として「統治規程」全体を縛るものであることから,そこに,三権の一つである行政権配下の一行政組織としての自衛隊を書き込むことのバランスの悪さは際立っている。と同時に国の方向性を大きく歪めてしまう。

図:日本国憲法の体系(「最高法規の意志」からの引用)

2019年5月5日日曜日

美苑ふう

SFマガジンでその名前をよく見かけていた頃は,美苑(みその)だと思っていた(訂正:「びほう」と読んでいたのだった。記憶が改竄されていた)。このたび,その由来は第一次インドシナ戦争のディエンビエンフーの戦い(フランスのベトナム撤退につながった)から来ているので美苑(びえん)だと知ることになる。

なぜ,美苑ふうに行き着いたかというと,天皇制の持続可能性に端を発する旧皇族の復帰問題が議論されていたため,Wikipediaの旧皇族のページを参照していたから。美苑ふう=鈴木冨久子(1941-2009)は,朝香宮孚彦王の第一王女であった。

SFコンテストの常連ではなかったかと思うが,その作品は読んだ記憶がない。インターネット上には,彼女がまとめた光瀬龍の未来史年表に載っている「光瀬龍を理解する三つのカギ-未来史年表に添えて-」をかろうじて読むことができる。

2019年5月4日土曜日

第七藝術劇場

第七藝術劇場は今日が2回目。前回は,2012年10月27日(土) の「考察・討論「維新の会・橋下徹と大衆、メディア」PART2」だった。豊竹英大夫による「文楽協会と橋下徹」についてと,湯浅 誠・想田和弘・豊竹英大夫・平田オリザによる考察・討論が,今井一の進行で催されたときだ。

今日観た映画の「主戦場」もそれにつながっている。フロリダ州生まれの日系アメリカ人のミキ・デザキ(1983-)が監督し,釜山国際映画祭2018ドキュメンタリー・コンペティション部門に招待された。東京では4月20日から,大阪では4月27日から公開されている。

地下鉄御堂筋線中津駅から淀川(十三大橋)を歩いて渡り,西村道明さんと行って初めて自分の眼鏡を買ったビジョンメガネの前を通過し,やがて劇場に到着。開演30分前で整理券は71番。約100席の会場はほぼ満席で,立ち見もあるというアナウンスだったが,帰りに見回すとそうでもなかった。

ネットでは,失笑や爆笑が起こる場面もあったらしいが,維新支配下の大阪(サンフランシスコ姉妹都市関係解消のご本家)では他人事でない重いテーマでもあり,あまりそんな雰囲気ではなかった。おおむね自分のこれまで見聞きしてきた範囲の事実に即した内容だったが,転向した日砂恵ケネディの誠実な語りや,英語で分かりやすくこの事態を説明できる中野晃一が印象的だった。左右の関係者のインタビューへの回答と過去のビデオ映像等の資料が積み重ねられ,うまく構成されていたと思う。

こうした論争に中立的な立場があるとも必要だとも思わないので,監督の立場や論理展開は明解であったと思う。ネット上では慰安婦へのインタビューが不足しているという指摘もあったが,高齢化されていることや,記録に残されることを踏まえ,オープニングのイ・ヨンスさんとエンディングのキム・ハクスンさんが登場する構成で問題ないという藤岡朝子のパンフレットでの主張に賛同できる。

あらためて,2006年12月22日に交付された改正教育基本法がもたらした影響の深刻さや,安倍晋三と中川昭一に起因する今日のNHKの惨状に思い至る。日本会議を背景とする安倍晋三の出発点がセクシズムと戦争認識の交点である慰安婦問題であり,それが今日の日本の反韓の空気の醸成をもたらしている。

写真:十三大橋から淀川下流を望む(2019.5.4)

[注1]能川元一のツイートより,安倍晋三の国会答弁についての補足等
[注3]デジタル記念館慰安婦問題アジア女性基金 http://www.awf.or.jp/

2019年5月3日金曜日

Grassmann.jl

juliaの Grassmann.jl パッケージをインストールした。

「Grassmann.jlパッケージは,Grassmann-Clifford-Hestenes-Taylor 幾何代数として知られる拡張テンソル代数を使用して,多重線形代数,微分幾何学,およびスピン群に基づいて計算を行うためのツールを提供している。 主な演算は,∧, ∨, ⋅, *, ×, ⋆, ', ~(外積,回帰,内積,幾何積,およびクロス積と,ホッジスター演算,随伴演算,および多演算子反転演算)である」(Grassmann.jlドキュメントより引用)
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using Pkg
Pkg.add("Reduce")
Pkg.add("Grassmann")
using Reduce,Grassmann
using Test

# write your own tests here
@test (@basis "++++" s e; e124 * e23 == e134)
@test [Λ(3).v32^2,Λ(3).v13^2,Λ(3).v21^2] == [-1Λ(3).v for j∈1:3]
@test ((Λ(2).v1+2Λ(2).v2)∧(3Λ(2).w1+4Λ(2).w2))(Λ(2).v1+Λ(2).v2) == 7Λ(2).v1+14Λ(2).v2
@test (@basis "++++"; ((v1*v1,v1⋅v1,v1∧v1) == (1,1,0)) && ((v2*v2,v2⋅v2,v2∧v2) == (1,1,0)))
@test (@basis "-+++"; ((v1*v1,v1⋅v1,v1∧v1)==(-1,-1,0)) && ((v2*v2,v2⋅v2,v2∧v2) == (1,1,0)))
@test (basis"-+++"; h = 1v1+2v2; h⋅h == 3v)
!Sys.iswindows() && @test Λ(62).v32a87Ng == -1Λ(62).v2378agN
@test Λ.V3 == Λ.C3'
@test Λ(14) + Λ(14)' == Λ(vectorspace(14)+vectorspace(14)')
@test ((a,b) = ((:a*Λ(2).v1 + :b*Λ(2).v2),(:c*Λ(2).v1 + :d*Λ(2).v2)); Algebra.:+(a∧b,a⋅b)==a*b)
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Test Passed


2019年5月2日木曜日

忌野清志郎

RCサクセション忌野清志郎(1951.4.2 − 2009.5.2)については,デビュー当時まったく視野の外にあって,存在を認識していなかった。

はじめて心に懸かった歌は「雨上がりの夜空に」だった。大学祭の日に研究室で仕事をしていると遠くから学生のグループが演奏しているのが聞こえてきて,その歌詞とリズムにいつの間にか引き込まれていた。それが,RCサクセションや忌野清志郎と結びつくのはずっと後のことだ。

雨上がりの夜空にと忌野清志郎がリンクした後でも,どんな人物かにはほとんど興味がなかった。記憶の中では日曜美術館だったが,そうでなくて「忌野清志郎,ゴッホを見に行く」というBSプレミアムの特集番組での彼の話ぶりや絵との向き合い方で,こんな人だったのかと驚いた。

やがて,遅まきながら,タイマーズのアルバム等を借りてダビングするに到る。

2019年5月1日水曜日

弘学[ぐがく]

しばらく前にTwitter上で,@gugakuken(羽根弘)と@Yh_Taguchi(田口善弘)の論争があったのを発見した。

田口善弘 @Yh_Taguchi
「科学への投資の成果の享受者は国民であり,人類です。説明責任は科学者にはありません。科学者に投資するかどうかは社会が決めることなので。科学への投資の受益者が科学者だと誤解するからそういう発想になるのだと思いますが、僕は間違っていると考えています」
「その部分は適当な翻訳者が雇用されて担うべきだと考えます。科学者が素人の説明のために時間を割くのは無駄だと思います。難しいことをわかりやすく説明すること自他、特殊技能であり、そのための専門家が要請されて担うのが合理的だと考えています。科学者が片手間にできる作業ではありません」

羽根弘 @gugakuken
「科学はもちろん国民、人類に利益をもたらすものでもありますが、同時に不利益をもたらすこともあります。その功罪を以て『影響力』と表現しています。また、その科学へ投資するかどうかを社会=市民が判断するために、科学者の側の説明責任が必要となるのです」
「その『科学者』と「素人」改め『市民』との対話を仲介し支援する役割、異分野コミュニケーションの専門家の役割は『弘学者』が担うことができると私は考えています。しかし、人が人に成り代われるわけではありません。両者に対話する意志がないと、弘学者には何もできません」


制度化された科学の社会的な意味と,予算配分や説明責任の在り方は,なかなか重い問題なので,ここではこれ以上ふれない。

@gugakukenが提起している「弘学」のコンセプトはなんだか興味深い(小宮山宏の知の構造化に感じるのと同じように眉唾ものではないかと恐る恐る近づきつつ)。ただ,彼の持っている個別の科学についての認識や,彼の怪しい(観念論的な)独自理論にはまったく同意できない。

[注1]そういえば,小宮山宏は「超教育協会」の会長に祭り上げられているのだった。

2019年4月30日火曜日

ARDとZDF

ドイツの全国的な公共放送として,ARD(ドイツ公共放送連盟=第1ドイツテレビ 1950.6-
ZDF(第2ドイツテレビ 1963.4-)がある。受信料制度で徴収されたもののうち前者に6割,後者に4割が配分されている。9つの地域放送局から成るARDは,23,000人の正社員を雇用し,9機関の総予算は年間約63億ユーロである。マインツを本拠地とするZDFは,3,600人の正社員を雇用し,売上高は年間約20億ユーロである。

ZDFが2012年に製作した,「フクシマのうそ(Die-Fukushima Lüge)」という30分弱の番組をYou Tubeで見ることができる(字幕版や日本語訳版もある)。2011年3月の東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所事故について,関係者のインタビューや調査によって構成したものである。当時の状況から,福島第1原発第4号機の燃料貯蔵プールに対する警告が番組では強調されていた。2013年11月から2014年12月にかけて燃料取出は完了し,なんとかこれについての危機的な状況は回避された。しかし決してアンダーコントロールではなく,東京オリンピック2020に国家のリソースを振り向けているような状況ではない。

そこで指摘されている本質的な問題は改善されているわけではなく,政府も経済界も以前の体質のままに原子力発電の推進を再開させようと虎視眈々と狙っている。

[注1]Atsu「文科省の放射線副読本をめぐって思ったこと」(note 2019.4.26)
https://note.mu/atsu_note/n/nca472bf9e907

[注2]福島大学放射線副読本研究会「放射線と被ばくの問題を考えるための副読本」
https://www.ad.ipc.fukushima-u.ac.jp/~a067/SRR/FukushimaUniv_RadiationText_2nd_version.pdf
これに対する田崎晴明の指摘(日々の雑感的なもの 2012.3.27)
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/d/1203.html#27

[注3]nagaya @nagaya2013 の記事(Twitter 2019.4.29)より
https://twitter.com/nagaya2013/status/1122995361511919616

[注4]牧田寛「4・8経団連会長会見に垣間見える経団連の「恫喝」」(ハーバー・ビジネス・オンライン 2019.4.30)
https://hbol.jp/191386

[注5]「テレビ各局の “平成事件振り返り” から「福島原発事故」が消えた! 広告漬けと政権忖度で原発事故をなかったことに」(リテラ編集部 2019.4.30)
https://lite-ra.com/i/2019/04/post-4690-entry.html

2019年4月29日月曜日

検証不能な賃金統計

東京新聞の4月29日朝刊経済欄「平成の賃金 検証不能 統計不正 政府廃棄で8年分不明

(1) 検証させないために本当に廃棄してしまった。
(2) 本当は廃棄していないが検証させないために「廃棄した」と説明し続けている。
どちらがより真実に近いのか・・・orz

2019年4月28日日曜日

A3(2):森達也

A3(1):森達也からの続き)

全文無料公開された「A3」を読み始める前に,連合赤軍が連想されたことはあながち間違いではなかった。両者が戦後日本のある時代を区切る大きな惨劇であったというだけでなく,組織の内部で最初の殺戮へ至る過程や,それが常態化する様子などに何か共通するものが感じられた。そう,階層的な組織で権力の集中を防ぐことができない場合,必ず腐敗は発生するということ。それは最高権力者の絶対悪に帰されるるものではなくて,権力への忖度とそれに呼応する権力の誇示の共鳴によって成長する不可避な構造であるということを,森達也は主張しているように思えた。

オウム真理教の一連の事件,特に地下鉄サリン事件を首謀したのは麻原彰晃なのか,あるいはそれを取り巻いていた幹部連(村井,井上,早川,中川,新美)なのか,いずれの責任が重いのかという問題ではなかった。森はその事件を「本質は分散していた。仮想の特異点の周辺。そこに配置されているのは、側近である幹部信者たち。さらに一般の信者たち。そして外縁には彼らを包囲するこの社会。警察やメディアや司法、そして民意を形成する僕たち一人ひとりだ。この周辺と麻原との相互作用。そこに本質があった」と見立てている。

これは,麻原彰晃とオウム真理教幹部連を絶対悪として断罪してきた日本の司法やマスコミあるいは一般世論の見解とは一致するものではないのだろう。細部では,森のオウム真理教をめぐるジャーナリストとしての活動や考えについての様々な否定的な指摘があるのも事実だ。それにもかかわらず,次のフレーズは印象に残る「サリン事件以降、メディアによって不安と恐怖を煽られながら危機意識で飽和したレセプターは、やがて仮想敵を求め始める。治安状況における意識と実態との乖離を、何とか埋めようとする。検察や警察など捜査権力の暴走は加速し、厳罰化は進行し、設定した仮想敵国への敵意は増大する。隣国との摩擦はこれから増大するだろう。誤認逮捕や冤罪もさらに増えるだろう。自分たちは正義であり、無辜の民であり、害を為す悪を成敗するのだとの意識のもとに」。

あるいは,「人は権威に服従する。集団の動きに従う。あっさりと感覚を停止する。その帰結として惨劇が起きる。だからこそ検証が必要だ。暴走のメカニズムはどのように駆動して、どのように伝播し、最後にはどのように働いたのか。それは事件後の社会の責務のはずだ」ということには同意したかった。残念ながら我々は,いつものように恐怖に駆られ,思考を停止し,法や論理よりも情と空気によって社会を動かし続けている。

2019年4月27日土曜日

阪急西宮ガーデンズ

10連休の初日,阪急西宮ガーデンズで半日過ごす。西宮阪急4階の子ども服おもちゃコーナには来年の小学1年生向けのランドセルがすでに並んでいる。今年の1年生はランドセルをしょって記念写真撮影コーナーでモデル撮影会のよう。ベビーカー子ども連れの親子は,タリーズでお茶の時間を過ごしている。

この30年にわたる日本経済の凋落と日本の階層格差拡大や特殊詐欺の凶暴化とインフラの劣化が話題になっているが,これからこの国はどうなるのだろうか。

2019年4月26日金曜日

じゃじゃ丸・ぴっころ・ぽろりの名前

netgeekによると,「にこにこぷん」じゃじゃ丸・ぴっころ・ぽろりのフルネームが明らかになった。というか,Wikipediaには書いてあったのではないか。子供達が子どものころよく見ていた。自分の子どものころは「ブーフーウー」だったが。孫がみているのは「ガラピコぷ〜」なのか?どうやら違う番組のようだ。「いないいないばあっ!」のワンワンではないだろうか。

2019年4月25日木曜日

みらい翻訳

企業向けの翻訳サービス「みらい翻訳」のクオリティが高いという評判だったので,お試し翻訳で試してみた。

100 years have passed since Ryunosuke Akutagawa published "Spider's thread" in "red bird" in 1918. The theme of the class's costume parade was Spider's Thread at the autumn cultural festival in the second year of high school. In order to procure bamboos for setting up Buddhist paradise, the group worked as a logging party in the bamboo forest near the school. It is not Taketori Monogatari. He also drew several pictures of the flame and smoke of hell surrounding Gokuraku on the bamboo tower in the school yard. It is not an art club. It was the role of the dead in Hell who flocked to the thread of a spider (Red zile in the mountaineering club) after Kendada.

カンダタがKendadaになっているものの,なんとなくうまくできているようだ。
タイトルの On a thread of the web は,はねられた。センテンスにしても何だかダメっぽい。やっぱりだめなのかもしれない...orz

2019年4月24日水曜日

日本アニメーション映画クラシックス

国立映画アーカイブ旧国立近代美術館フィルムセンター)が管理している,日本アニメーション映画クラシックスは,2017年2月にはできていた。国産アニメーションが誕生して100周年を記念して創られたアーカイブサイトである。

日本の初期のアニメーションが64作品収められている。代表的な作家と作品として,
大石郁雄の『動絵狐狸達引(うごきえこりのたてひき)』(1933年)が紹介されているが,アーカイブには収蔵されておらず,you tubeにある。

2019年4月23日火曜日

5! * 6! = 10!

Fermer's Libraryの先日のツイートを受けて,tsujimotterさんが階乗数の間の関係式というブログ記事を書いている。そこでは,rubyのコードで n=200以下で  n!=a! b! となる自明でない,(n, a, b) の組を計算している。自明な組とは, (n, 0, n), (n, 1, n),(n!, n!-1, n) などのことである。これを juliaで計算してみた。

rubyのコードがわかりにくいと思った原因は,階乗の計算のオーバーフローを避けるために,n! を素因数分解した素数の積で表現していたからだったか。以下のjuliaプログラムではBigIntを使ってこの課題をスキップしてしまった。

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f=ones(BigInt,1000)

function fct(n,f)
  for i in 2:n
    f[i]=BigInt(i)*f[i-1]
  end
end

function bin(n,f)
  for k in 2:n
    for i in 2:n-1, j in i:n
      if(f[k]==f[i]*f[j])
        println(i,"! * ",j,"! = ",k,"!")
      end
    end
  end
end

n=1000
fct(n,f)
@time bin(n,f)
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

3! * 5! = 6!
6! * 7! = 10!
4! * 23! = 24!
5! * 119! = 120!
6! * 719! = 720!
2017.072241 seconds (1.50 G allocations: 476.873 GiB, 2.13% gc time)

2019年4月22日月曜日

ライプチヒ動物園

NHK BSで「探検!世界の動物園の舞台裏~ドイツ・ライプチヒ動物園~」の再放送をみた。熱帯雨林やアフリカの自然環境を再現した檻のない動物園。WikipediaのZoo Leipzigには日本語版はない。英語版も情報は少なかった。動物園のウェブサイトはこちら