2025年10月6日月曜日

芳醇なグレー

国宝:吉田修一からの続き

NHKのスイッチインタビューで,妻夫木聡(1980-)と李相日(1974-)の回があった。李の映画,69 sixty nine(2004),悪人(2010),怒り(2016)に妻夫木が出演している。

新潟生まれの在日朝鮮人三世である李相日が最初にとった映画,青〜chong〜(2001)は在日朝鮮人学校に通う高校生の物語だったが,それ以降,在日をテーマとした作品は封印している。それにもかかわらず,映画に関するインタビューで在日との関係についてYesかNoかで聞かれることが多かったという。

彼は,関係ありませんとは答えているものの,その理由は,Yes/No 白/黒の間にある大きなグレーの領域,芳醇なグレーを理解してもらえないからだという。確かにそうだ。人々は単純な物語を好む。マスコミはその方が売れるからだと思うかも知れないが,その背景には言い古されたナラティブに当てはめて理解したいと渇望している大衆が存在している。

物理学は単純な物語(理論)を指向する典型的な思考法である。だから,自分もその大衆の一部に違いない。ネトウヨもリベラルもトランプも自民党員も反斉藤元彦派もみんなみんな,白黒のはっきりした物語を強い言葉で語りだす。政治的な効果を狙ってもいるが,そもそも我々の脳は,情報を如何に効率的に圧縮して扱うかを迫られている。そこで,単純なナラティブやスローガンやキーワードに落とし込むのだ。いわく「テロリスト,ネトウヨ,サヨク,アベ信者・・・」。問題を複雑なままで抱えて持ち続けるのはたいへんなのだ。



図:上記テキストに対応するChatGPT-5 のイメージ


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