2025年9月10日水曜日

次期学習指導要領(3)

次期学習指導要領(2)からの続き

9月5日に,中央教育審議会の初等中等教育部会の教育課程部会の教育課程企画特別部会から,上記の諮問に対する12回の議論における論点整理の素案が出てきた。4.8MB 113ページもある。ぱらぱらと見ただけで,その文科省構文的なポンチ絵の複雑さに圧倒されて読む気が失せる。

確認すると,ChatGPT-5はこのpdf全文を読み込めるといって,実際それなりの要約もしてくれた。ところが最近「ChatGPTは全文ちゃんと読んでいない疑惑」が持ち上がっている。どうしよう。読む気がしないけど,えらい人たちはみなこれを参照せよとつぶやいているし。

しかたがないので,とりあえず目次と第一章の次期学習指導要領に向けた基本的な考え方を写経してみる。古来,困ったときは音読と写経が一番だ。ということで,中教審資料から引用。もちろん写経といってほとんどはコピペで整形するだけのインチキ写経。

第一章 次期学習指導要領に向けた基本的な考え方(5)
第二章 質の高い、深い学びを実現し、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方(18)
(1)中核的な概念等を活用した一層の構造化・表形式化・デジタル化
(2)「学びに向かう力、人間性等」の再整理
(3)「見方・考え方」の再整理
(4)デジタル学習基盤を前提とした学びの在り方
   学習指導要領と「個別最適な学びと協働的な学び」の関係の在り方
第三章 多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方(22)
(1)検討の前提(児童生徒の実態と現行制度の枠組み)
(2)義務教育段階(「調整授業時数制度」の創設等)
(3)高等学校段階における教育課程の柔軟化
(4)個別の児童生徒に係る教育課程の編成・実施の仕組み
第四章 情報活用能力の抜本的向上と質の高い探究的な学びの実現(15)
(1)情報活用能力の抜本的向上
(2)質の高い探究的な学びの実現
第五章 「余白」の創出を通じた教育の質の向上の在り方(8)
第六章 豊かな学びに繋がる学習評価の在り方(9)
第七章 その他諮問で提起された事項の在り方(21)
(1)カリキュラム・マネジメントの在り方
(2)高等学校入学者選抜
(3)産業教育
(4)特別支援教育
(5)幼児教育
(6)子供のより主体的な社会参画に関わる教育の改善
第八章 今後の検討スケジュールや検討の在り方等(3)

第一章の内容は以下のとおり 
令和6年12月の文部科学大臣による諮問やこれまでの検討を総合的に踏まえ、次期学習指導要領に向けた今後の検討の基盤となる基本的な考え方として、以下を提起する。

1.改訂論議を貫く三つの方向性
生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる、民主的で持続可能な社会の創り手を「みんな」で育むため、
①「主体的・対話的で深い学び」の実装(Excellence)
② 多様性の包摂(Equity)
③ 実現可能性の確保(Feasibility)
の3つの方向性を踏まえて議論を行う。これらの3つの方向性に基づく改善は、教育課程内外のあらゆる方策を用いつつ、三位一体で具現化されるべきものである。
 このうち、
「主体的・対話的で深い学び」の実装は、現行学習指導要領が目指している、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善を通じた資質・能力の育成について、一層の具現化・深化を図るものである。
 このため、学習指導要領の目標・内容の構造化・表形式化・デジタル化、学びに向かう力、人間性等の重要概念の整理等により、分かりやすく、使いやすい学習指導要領を目指す。思考力、判断力、表現力等を発揮する中で、知識の概念としての習得や深い意味理解を促すこと、他の学習や生活の場面でも活用できるような、生きて働く「確かな知識」を習得すること、学びに向かう力、人間性等を育成することが一層重要となる中、「主体的・対話的で深い学び」の実装は、次期学習指導要領に向けた第一の方向性とすべきものである。
 このような授業改善に不可欠であるデジタル学習基盤の効果的活用は、育成すべき資質・能力が十分に意識されず「深い学び」に繋がっていない事例もあるなど道半ばである。また、デジタルの負の側面への対応も含め情報活用能力の育成にも様々な課題が見られる。このため、小学校の総合的な学習の時間への「情報の領域(仮称)」の付加、中学校での「情報・技術科(仮称)」の創設等の具体的方策を示した上で、情報活用能力を各教科等における探究的な学びを支える基盤と位置付け、抜本的な向上を図る。こうしたことを進めるに当たっては、知・徳・体のバランスや、人間ならではの身体性や実体験の重要性を十分に踏まえる必要がある。 (※)「Excellence」は、「主体的・対話的で深い学び」の実装により実現される質の高い教育を意味する。

 ② 多様性の包摂は、多様な個性や特性、背景を有する子供が多くなっている実態に向き合うとともに、こうした多様性を個人及び社会の力に変える観点から、一人一人の意欲が高まり、可能性が開花し、個性が輝く教育の実現を目指すものであり、第一の方向性と両立させることが不可欠な第二の方向性である。
 このため、「裁量的な時間」をはじめとする「調整授業時数制度」の創設、学年区分の取扱いの柔軟化、高等学校段階における単位制度の柔軟化、不登校児童生徒や特定分野に特異な才能のある児童生徒のための特別の教育課程編成を可能とする制度の創設等により、教育課程全体を包摂的な仕組みに改め、その具現化を図る。
こうした取組は、一人一人の個性や特性、背景を踏まえた対応が可能な仕組みを整えるという意味で、公正性(equity)の拡大と言える。 3

 ③ 実現可能性の確保は、第一・第二の方向性の両立を支え、実現可能とする観点であり、教育課程以外の勤務環境整備とも相まって審議全体に通底させるべき第三の方向性である。
 このため、教育課程の枠組みや教科等横断的な事項、今後行われる教科等WGを含む審議全般にわたって、教育課程の実施に伴い教師に過度な負担・負担感が生じにくい、持続可能な在り方を追求し、教師と子供の双方に「余白(※)」を創出することで、豊かな学びに繋げる方向を踏まえた検討を行う必要がある。 (※)教育の質の向上のための時間的余裕
● こうした3つの方向性を現時点で端的に表現すれば、「多様な子供たちの『深い学び』を確かなものに」と言える。第一の方向性は「深い学び」、第二の方向性は「多様な子供たち」、第三の方向性は「確かなもの」という言葉に主に託されている。
● さらに、「みんな」が示す主体は、学校教育の未来を切り拓く中心的存在である学校の教職員はもとより、学びの当事者である子供、人口減少の中で学校を支える主体でもある、保護者や地域住民、地方公共団体の職員、民間の担い手も含まれ、「社会に開かれた教育課程」の理念とも深く関わる。今後、各WG等を中心に具体の議論を進める中で、こうした考え方もさらに深めていく必要がある。

2.自らの人生を舵取りする力と民主的な社会の創り手育成
 諮問で「正解主義」や「同調圧力」への偏りから脱却し、民主的かつ公正な社会の基盤としての学校を機能させる必要性が指摘された背景には社会全体の構造変化がある。生成AIなどデジタル技術の発展が相まって、皆と同じことができることも重要だが、それ以上に独自の発想や視点に価値が置かれるようになってきている。現在の学校教育の中で主体的に学びに向き合えていない子供も多くなっている。少子化に伴う入試による動機付けの変化、学習時間の減少等も踏まえ、学びの動機づけをアップデートする必要もある。予測困難な時代に、労働市場の流動化や就業期間の長期化、マルチステージの人生モデルへの転換が進む中、しなやかに「自らの人生を舵取りできる力」が不可欠となりつつある。また、内なる国際化で人口の多様性が増すとともに、SNSや生成AIの負の側面の影響もあり社会分断の可能性等も指摘される中、デジタル時代に主体的に社会参画する「民主的な社会の創り手」の育成も喫緊の課題である。
 このため、全ての児童生徒に育むべき資質・能力育成の具体化・深化と並行して、一人一人の「好き」(興味・関心)を育み、「得意」を伸ばしながら、それらを原動力として学び全体への動機づけを図っていく取組と、当事者意識を持って、自分の意見を形成し、多様な他者と対話や合意を図る取組を同時に進め、これらが有機的に関わり合い高まっていく教育課程に変革していく必要がある。
 こうした問題意識の下、本部会では、学びに向かう力、人間性等の概念の再整理、総合的な学習・探究の時間を中心とした質の高い探究的な学びの実現、デジタル化の負の側面への対応を含む情報活用能力の抜本的向上、特別活動を中心とした主体的な社会参画に関わる教育の改善、個性・特性に応じた学びの充実に繋がる裁量的な時間の創設等を主な具体策として議論してきた。今後、各WG等で更に検討を深める必要がある。

なお、これらは、 ①「主体的・対話的で深い学び」の実装、②多様性の包摂、という方向性について、社会全体の構造変化を踏まえて具現化するものであり、①②の一部を構成するものである。また、「よりよい学校教育」を通じて「よりよい社会」への移行を図るという意味で、「社会に開かれた教育課程」の理念とも深く関わる。

補足イメージ:
次期学習指導要領に向けた検討の基盤となる考え方
多様な子供たちの「深い学び」を確かなものに
あらゆる方策を活用し、三位一体で具現化

生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる 自らの人生を舵取りすることができる民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育む

①主体的・対話的で 深い学びの実装(Excellence) 主に第2,3,4,6章
(生きて働く「確かな知識」の習得、資質・能力育成の具体化・深化、「好き」を育み「得意」を伸ばす、情報活用能力の抜本的向上、個別最適な学び・協働的な学び 等)
②多様性の包摂(Equity) 主に第3,7章
(調整授業時数制度、裁量的な時間、個別の児童生徒に係る教育課程の仕組み、デジタル学習基盤を活用した学習環境デザイン、個別最適な学び・協働的な学び 等)
③実現可能性の確保(Feasibility) 主に第5,7章
(授業時数の適正化・平準化、教科書の精選、構造化、裁量的な
時間など様々な方策による教師・子供双方の「余白」の創出 等)

・学びをデザインする高度専門職としての教師
・「裁量的な時間」をはじめ柔軟な教育課程による余白
・デジタル学習基盤
・教育課程以外の勤務環境整備
ごちゃごちゃしていると思ったけれど,主張の骨格は結構明確でスッキリしていた。

P. S. やっぱりごちゃごちゃしているのはなぜかというと,たぶん前回の学習指導要領改定で教育課程課長の合田哲雄が教育内容だけでなく教育方法までやたらめったら書き込みすぎて,収集がつかなくなってきたのをそのまま捨てきれず,これを整理して見やすくするために表形式の学習指導要領にするということだと推察できる(三角関数(3)から)。なんだかなあである。

本当に余白を設けたいならば,まず,学習指導要領に理念部分を十分書き込んだ上での大幅な単純化からだと思う。構造化でも表形式化でもデジタル化でもない

[2]AIが読むのは記事の一部だけだった!?(SEO研究チャンネル)

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