2023年10月20日金曜日

円筒座標のベクトル解析

円筒座標系の基本ベクトルは,$\bm{e}_\rho, \bm{e}_\phi, \bm{e}_z$であり互いに直交している。
$\bm{e}_\rho = \bm{e}_x \cos\phi + \bm{e}_y \sin\phi $, $\bm{e}_\phi = -\bm{e}_x \sin\phi + \bm{e}_y \cos\phi$から,$\dfrac{\partial \bm{e}_\rho }{\partial \phi} = \bm{e}_\phi,\ \  \dfrac{\partial \bm{e}_\phi }{\partial \phi} = - \bm{e}_\rho$ が成り立つ。その他の基本ベクトルの各変数での微分はゼロ。

ここで,$\nabla = \bm{e}_\rho \dfrac{\partial}{\partial \rho} + \bm{e}_\phi \dfrac{1}{\rho} \dfrac{\partial}{\partial \phi}  + \bm{e}_z \dfrac{\partial}{\partial z} $であり,任意のベクトルは,$\bm{A}= \bm{e}_\rho A_\rho + \bm{e}_\phi A_\phi  + \bm{e}_z A_z$とかける。

したがって,円筒座標系での発散や回転は,この演算子とベクトルの内積や外積を機械的に計算すれば良い。ただし,微分演算が基本ベクトルに作用して現れる項があることだけ注意が必要となる。今回は,$\bm{e}_\rho,\ \bm{e}_\phi$を$\phi$で微分する項の存在に気をつける。

発散は,$\nabla\cdot\bm{A} = \Bigl(  \bm{e}_\rho \dfrac{\partial}{\partial \rho} + \bm{e}_\phi \dfrac{1}{r} \dfrac{\partial}{\partial \phi}  + \bm{e}_z \dfrac{\partial}{\partial z}\Bigr) \cdot \Bigl( \bm{e}_\rho A_\rho + \bm{e}_\phi A_\phi  + \bm{e}_z A_z \Bigr)$
余分の項は,$\bm{e}_\phi \dfrac{1}{\rho} \dfrac{\partial}{\partial \phi} \cdot  \bm{e}_\rho A_\rho = \bm{e}_\phi \dfrac{1}{\rho} \cdot  \bm{e}_\phi A_\rho = \dfrac{1}{\rho} A_\rho$である。
$\therefore \  \nabla\cdot\bm{A} = \dfrac{1}{\rho}\dfrac{\partial}{\partial \rho} \bigl(\rho A_\rho \bigr) + \dfrac{1}{\rho}\dfrac{\partial}{\partial \phi} A_\phi + \dfrac{\partial}{\partial z} A_z$

回転は,$\nabla \times \bm{A} = \Bigl(  \bm{e}_\rho \dfrac{\partial}{\partial \rho} + \bm{e}_\phi \dfrac{1}{\rho} \dfrac{\partial}{\partial \phi}  + \bm{e}_z \dfrac{\partial}{\partial z}\Bigr) \times \Bigl( \bm{e}_\rho A_\rho + \bm{e}_\phi A_\phi  + \bm{e}_z A_z \Bigr)$
余分の項は,$\bm{e}_\phi \dfrac{1}{\rho} \dfrac{\partial}{\partial \phi} \times  \bm{e}_\phi A_\phi = \bm{e}_\phi \dfrac{1}{\rho}  \times  (-\bm{e}_\rho ) A_\phi  =  \dfrac{1}{\rho} A_\phi \bm{e}_z$である。
$\therefore \  \nabla \times \bm{A} = \Bigl( \dfrac{1}{\rho} \dfrac{\partial A_z}{\partial\phi}- \dfrac{\partial A_\phi}{\partial z}\Bigr) \bm{e}_r + \Bigl(  \dfrac{\partial A_\rho}{\partial z}- \dfrac{\partial A_z}{\partial \rho}\Bigr) \bm{e}_\phi +  \dfrac{1}{\rho} \Bigl(  \dfrac{\partial (\rho A_\phi )}{\partial \rho}- \dfrac{\partial A_\rho}{\partial \phi}\Bigr) \bm{e}_z $

2023年10月19日木曜日

処理水と廃炉

10月18日(水)のNHKあさイチは「処理水は?廃炉は?みんなのキニナルに答えます」という特集だった。

どうせ,政府東京電力の提灯持ち番組だろうと思って,期待せずにみていた。確かに,ALPS処理水で育てているヒラメが元気に跳ねていたり,茨城大学理工学部の鳥養祐二が魚のトリチウム分析をしている映像を見せて(長時間の事前処理が必要だという話はどこへいった),安全性を印象づけるものではあった。

一方で,ALPSのフィルターや廃材,使用済み防護服などの放射性廃棄物を敷地内に保管する必要があって,それがどんどん増えていくところ(処理水タンクすらその対象の放射性廃棄物になる)が印象的だった。また,2号機と同型の5号機の原子炉内部を撮影しながら,損傷してデブリが880トンもたまっている1-3号機の廃炉プロセスがほとんど進んでいないこともリアルに伝わってきた。

2号機では,ロボットアームを使って,今年度中に数グラムのデブリ採取を初めて実施する予定だ。そのアクセスのための格納容器内部への貫通路(直径55cm)の蓋のボルトを外すのに5ヶ月かかり,昨日ようやく蓋が開いたのだが,堆積物でそのほとんどが埋っていた。6年かけて開発してきたロボットアームがそもそも入るのかという問題になっている。

チェルノブイリは100年持つ石棺で固めたが,廃炉はできていない。スリーマイル島は事故後45年近く経過したが,こちらも完了しておらず,2079年(事故から100年後)を廃炉目標としている。一方,全く進んでいない福島第一原子力発電所は,当初の2051年廃炉目標がそのまま示されたままだ。この調子ならば,ALPS処理水の排出も100年続くということかもしれない。

日本全国の公共土木インフラや工場地帯が静かに朽ちて行くのと同様に,原子力発電所の跡地も管理できなくなって,日本中の廃虚から有害化学物質や放射性廃棄物がたれ流しになる時代がくるのかもしれない。大阪万博や辺野古等にリソースをつぎ込んでいる場合ではない。


写真:福島第一原発2号機の貫通路ハッチ蓋の内部(YahooNewsから引用)

2023年10月18日水曜日

恒星間天体

オウムアムアという天体が,大陽系の外から飛来した恒星間天体だとして話題になったのは2017年のことだった。当初推定されていたその形が,全長800mの非常に細長い棒状のものであり,なんらかの人工物ではないかという議論まであった。

コズミックフロントのはずなのだが,最近NHKで見たのは次のようなことだった[1, 2]。
・オウムアウアの変光は,サイズが45m×44m×7.5mの円盤型でアルベドが0.64とすれば説明できる。このアルベドは冥王星やトリトンの凍った窒素表面と一致する。
・オウムアウアの加速で,ガスがみえないことは,窒素だとすれば説明できる。
・したがって,オウムアウアは太陽系外惑星のかけらかもしれない

これに対する反論もあって,どこにそんなたくさん窒素があるものか,というようなものだった[3]。

もうひとつのポイントは,オウムアウアの他にも恒星間天体が見つかっているというものだ。2019年のボリソフ彗星や,2014年のパプアニューギニア火球である。さらに,100m級の恒星間天体は,海王星軌道内に1万個程度定常的に存在し,その平均滞在時間は10年ということになるらしい[4]。


図:オウムアウアの軌道(Wikipediaから引用)

[4]Interstellar Interloper 1I/2017 U1: Observations from the NOT and WIYN Telescopes
(D. Jewitt, J. Luu, J. Rajagopal, R. Kotulla, S. Ridgway, W. Liu, T. Augusteijn)


2023年10月17日火曜日

久々のJulia

プログラミングはAIに任せる時代になってしまったので,自分でコードを書くのは棋士の卵が詰め将棋の練習をしているようなことかもしれない。

Homebrewでmacにインストールされているソフトウェアを定期的に更新しているが,jupyterlabは,毎回,手動により brew link jupyterlab をすることを強いるのでうっとうしい。そんなこともあって,しばらくJuliaから足が遠のいていた。

鈴木貫太郎のYouTubeの数学の問題では,しばしば,整数の冪を比較するような問題が登場する。そこで,2^m と3^n が非常に近くなるような整数を探してみようと思った。m,nを1から順に条件を判定しながら増やしていけばよいかと思ったけれど,実際にコードを書いてみると,面倒なロジックは組まずに虱潰しに調べたほうが簡単そうであった。

久々にプログラミングすると,浮動小数点数から整数への変換がどうなっているかなど,基本的なところを忘れてしまっている。困ったものだ。これはconvert(T, x)だと書いてあったのだが,エラーになる。ChatGPTに相談してみたら,floor(T,x)とceil(T,x)を使いなさいとのことだった。その結果が次のコードである。
function dt(N,eps)
# N=1000000
# eps = 1.0e-6
ratio = log(2)/log(3)
    for i in 1:N
        jmin = floor(Int64,i*ratio)
        jmax = ceil(Int64,i*ratio)
        for j in jmin:jmax
            sol = i*log(2) - j*log(3)
            if abs(sol) < eps
                println("  2**",i,"/","3**",j," = ",exp(sol))
            end
        end
    end
end

for k = 1:8
    N=10^k
    eps=1/N
    println("N=",N," eps=",eps)
    @time(dt(N,eps))
end
N=10 eps=0.1
  2**8/3**5 = 1.0534979423868305
  0.000176 seconds (98 allocations: 2.750 KiB)
N=100 eps=0.01
  2**84/3**53 = 0.9979140462573083
  0.000160 seconds (97 allocations: 2.562 KiB)
N=1000 eps=0.001
  0.000003 seconds
N=10000 eps=0.0001
  2**1054/3**665 = 0.9999563468421858
  2**2108/3**1330 = 0.9999126955899699
  0.000351 seconds (207 allocations: 5.609 KiB)
N=100000 eps=1.0e-5
  2**50508/3**31867 = 0.9999927350845753
  0.000408 seconds (103 allocations: 2.656 KiB)
N=1000000 eps=1.0e-6
  2**301994/3**190537 = 1.0000000644940903
  2**603988/3**381074 = 1.0000001289881848
  2**905982/3**571611 = 1.0000001934822835
  0.003297 seconds (311 allocations: 8.562 KiB)
N=10000000 eps=1.0e-7
  2**301994/3**190537 = 1.0000000644940903
  0.027930 seconds (105 allocations: 4.938 KiB)
N=100000000 eps=1.0e-8
  2**85137581/3**53715833 = 0.9999999925494194
  0.264204 seconds (229 allocations: 17.953 KiB)

 いちおうできたことにしておこう。

2023年10月16日月曜日

導体球(4)

導体球(3)からの続き

ついでに,電場を取り除いて,導体球に電荷を与えて導体球表面に球対称一様電荷分布が生ずる状況を考える。

先ほどと同様に,観測点の位置ベクトル$\bm{r}$方向に$z$軸をとる。球対称性から$x$軸は自由に設定することができる。この結果,電位は次式で与えられる。

$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{\sigma R^2}{4\pi\varepsilon_0} \int \dfrac{ \sin \theta' d\theta' d\phi'}{ \sqrt{r^2+R^2-2rR \cos \theta'}} =  \dfrac{\sigma R^2}{2\varepsilon_0} \int \dfrac{ \sin \theta' d\theta'}{ \sqrt{r^2+R^2-2rR \cos \theta'}}$

再び,$\alpha = r^2+R^2 $,$\beta = 2 r R\ $と置いて,$\sqrt{\alpha -\beta}=| r-R |,\ \sqrt{\alpha + \beta}= r + R\ $である。$t = \cos \theta'$と変数変換して,$ dt = -\sin \theta' d\theta' \ $ なので,
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{\sigma R^2}{2 \varepsilon_0} \int_{-1}^1 \dfrac{dt}{\sqrt{\alpha - \beta t }} = \dfrac{\sigma R^2}{2 \varepsilon_0} \Bigl\lvert \dfrac{-2}{\beta} \sqrt{\alpha - \beta t}\Bigr\rvert_{-1}^1 = \dfrac{\sigma R}{2 \varepsilon_0 r}(\sqrt{\alpha+\beta}-\sqrt{\alpha-\beta})$
$\displaystyle =  \dfrac{\sigma R}{2 \varepsilon_0 r} (r+R -|r-R|)$

したがって,$Q=4\pi R^2 \sigma$と置くと,次のように正しい静電ポテンシャルが得られた。
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{Q}{4\pi \varepsilon_0 R}\quad (r<R)$
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{Q}{4\pi \varepsilon_0 r} \quad (r>R)$

2023年10月15日日曜日

導体球(3)

導体球(2)からの続き

物理科学概説の授業で,表面に一様な電荷が分布する球殻内部の電場や電位の問題を説明しようとした。積分にまで踏み込めないが,立体角を使えばなんとか説明できる。ところでこれを真面目に積分計算しようとすると,電場中の導体球と同じ問題(面倒な楕円関数の積分が必要)が生ずることに今さらながら気がついた。

力学の重力ポテンシャルの場合も同じ問題があったはずで,これまでどうやって回避していたか思い出してみると,観測点の位置ベクトルの方向をz軸にとっている。これにより球対称性から簡単に積分ができていた。この方法が,一様電場中の導体球による表面電荷分布に対しても使えそうな気がしたので再挑戦してみる。

(1) 導体球の中心に置いた原点から観測点Pへの位置ベクトル$\bm{r}$の方向を$z$軸にとる。
そこで,$\bm{r} = (0,\ 0,\ r)$

(2) 一様電場ベクトル方向の導体球面上の位置ベクトル$\bm{e}$の$x-y$平面への射影を$x$軸にとる。このとき,$\bm{e}=(R \sin\lambda,\ 0,\  R \cos\lambda )$,ここで導体球の半径を$R$としている。

(3) 導体球面上の点Qへの位置ベクトルを,$\bm{r'}=(R \sin\theta' \cos\phi',\ R\sin\theta' \sin\phi',\ R\cos\theta')$とする。Qにある電荷要素は,$\rho(\bm{r'}) dS = \sigma R^2 \cos \omega \sin \theta' d\theta' d\phi'$である。ここで,$\sigma$は電荷面密度,$\cos\omega$は,$\bm{e}$と$\bm{r'}$のなす角度であり,$\cos\omega = \frac{\bm{e}\cdot\bm{r'}}{R^2} =  \sin \lambda \sin\theta' \cos\phi' + \cos \lambda \cos\theta' $である。

(4) 観測点Pと電荷要素点Qを結ぶ距離は,$|\bm{r} - \bm{r'}| = \sqrt{r^2+R^2-2rR \cos \theta'}$となる。

そこで,この電荷密度分布$\rho(\bm{r'})$がつくる静電ポテンシャル$V(\bm{r})$は次のようになる。
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{\sigma R^2}{4\pi\varepsilon_0} \int \dfrac{(\sin \lambda \sin\theta' \cos\phi' + \cos \lambda \cos\theta' ) \sin \theta' d\theta' d\phi'}{ \sqrt{r^2+R^2-2rR \cos \theta'}}$

ここで,積分のうち,$\int_0^{2\pi} d \phi'$を実行すると,分子の$\cos\phi'$ を含む項はゼロになり,残りの項は$2\pi$倍となるので,
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{2\pi \sigma R^2}{4\pi\varepsilon_0} \int \dfrac{( \cos \lambda \cos\theta' ) \sin \theta' d\theta'}{ \sqrt{r^2+R^2-2rR \cos \theta'}}$

さらに,$\alpha = r^2+R^2 $,$\beta = 2 r R\ $と置くと,$\sqrt{\alpha -\beta}=| r-R |,\ \sqrt{\alpha + \beta}= r + R\ $である。$t = \cos \theta'$と変数変換して,$ dt = -\sin \theta' d\theta' \ $ なので,
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{\sigma R^2 \cos\lambda}{2 \varepsilon_0} \int_{-1}^1 \dfrac{t dt}{\sqrt{\alpha - \beta t }}$

この積分$I$は部分積分によって実行され,次のような結果を得る。
$\displaystyle I = \int_{-1}^1 \dfrac{t dt}{\sqrt{\alpha - \beta t}} = -\dfrac{4 \alpha}{3 \beta^2}\bigl(  \sqrt{\alpha -\beta} - \sqrt{\alpha + \beta} \bigr) -\dfrac{2}{3\beta} \bigl( \sqrt{\alpha - \beta} + \sqrt{\alpha + \beta}\bigr)$
すなわち,$\displaystyle I= \dfrac{2r}{3 R^2}\ (r<R),\quad I=\dfrac{2R}{3r^2}\ (r>R)$
最終的に,導体球の中の電位は線形になり,電場は一定になる。
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{\sigma \cos\lambda}{3 \varepsilon_0} r  \quad (r<R)$

2023年10月14日土曜日

物理学科同窓会(2)


先週の土曜日に新大阪のワシントンホテルプラザで,阪大物理学科の同窓会があった。1972年(昭和47年)入学なので,昨年が50年目だった。10年前からこの同窓会が概ね毎年開催されるようになった。参加者は順次定年を迎えていくので,だんだん変化に乏しい日々が続き,健康や病気の話題の割合が増えてくる。

今年は,藤原さんのリクエストに端を発して,元原研の佐藤さんに「核融合の最近の現状」というタイトルで話をしていただいた。慣れないzoom経由で,音声トラブルがあったけれど,わかったことは次のとおり。

・ITERもJT60SAも何だかトラブっている。
・ステラレーターは連続だけれど,トカマクは準パルス的な動作をする。
・レーザー核融合のQ=1は,実質は1/100程度になるので,トカマクが有利。
・国内ベンチャーには,研究者がかんでいるが,まとまった炉システムを目指していない。

尾崎さんの,太陽光発電パネルにつけて効率アップする集光シートの特許の顛末もおもしろかった。実用化しようとするとほんの小さな金型だけで2000万円くらいになって,なかなかうまくいかなかったらしい。

2023年10月13日金曜日

PBL

 PBLというのも紛らわしい言葉だ。対話型AIにきいてみよう。

Q;問題解決型学習(Problem Based Learning)と課題探究型学習(Project based Learning)の違いを詳しく教えてください。定義,適用学年,適用教科,意義,課題などを比較してほしいです。

ChatGPT,Bard,Bing のそれぞれが適当な答えを返してきた。ネットで人力検索してもサイトごとにマチマチな見解が示されている。そしてみんなそれに躍らされている。自分も踊っていた。そのせいで,「物理課題研究プロジェクト」なる学部科目を担当することになった。自業自得である。しかし,非常勤講師の自分は与えられた条件で,普通の物理学問題演習の時間をこなしていくことになるのだった。

仕方がないので,更問いを加えてみたところ,いちおうChatGPTの見解が得られた。
Q:「課題の設定者が教員か生徒か」「課題が教科限定的か学際的か」「評価のポイントはプロセスかアウトプットか」「期間は短いか長いか」という観点では,問題解決型学習(Problem Based Learning)と課題探究型学習(Project based Learning)の違いがどうなりますか。
A:以下は、問題解決型学習(PBL)と課題探究型学習(PjBL)の違いをそれぞれの観点で比較したものです。

課題の設定者が教員か生徒か:
PBL: 問題の設定者は通常教員であり、学習者に対して特定の問題を提供します。
PjBL: 学習者が自ら興味や関心に基づいてプロジェクトを選び、課題を設定します。

課題が教科限定的か学際的か:
PBL: 問題は通常特定の教科に関連しており、その教科における問題解決を中心に学習が行われます。
PjBL: 課題は学際的であり、複数の教科を組み合わせてプロジェクトを通じて学習が行われます。

評価のポイントはプロセスかアウトプットか:
PBL: 評価の重点は、問題解決のプロセス、つまり学習者がどれだけ効果的に問題に取り組んだかに置かれます。
PjBL: 評価はプロジェクトのアウトプット、つまり成果物やプロジェクトの完成度に焦点を当てます。

期間は短いか長いか:
PBL: 問題解決の期間は比較的短い場合が多く、特定の問題に対処する短期的な活動が一般的です。
PjBL: プロジェクトの期間は通常長く、複数の週や学期にわたって続く場合があります。

これらの要素に基づいて、PBLとPjBLは異なるアプローチを取ります。PBLは特定の問題に焦点を当て、その解決策を見つけるためのプロセスに重点を置きます。一方、PjBLは学習者の興味や関心を反映したプロジェクトを通じて、幅広い学際的な学びを促進します。

これはあくまでもChatGPTの見解 (もしかすると平均的な世論)であることに注意が必要。これにアクティブラーニングの定義をどうするか問題を加えるとさらに混乱は必至である。


[1]今、求められる力を高める総合的な探究の時間の展開(小学校編,文部科学省)
[3]今、求められる力を高める総合的な探究の時間の展開(高等学校編,文部科学省)

2023年10月12日木曜日

導体球(2)

導体球(1)からの続き

一般の電荷密度分布$\rho(\bm{r'})$がつくる静電ポテンシャル$V(\bm{r})$は次のようになる。
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{1}{4\pi\varepsilon_0} \int \dfrac{\rho(\bm{r'}) d\bm{r}'}{|\bm{r} - \bm{r'}|}$
ここで,ポテンシャルの位置座標は,$\bm{r} = (r \sin \theta \cos \phi, r \sin \theta \sin \phi , r \cos \theta)$,電荷素片の位置座標は,$\bm{r'} = (R \sin \theta' \cos \phi', R \sin \theta' \sin \phi' , R \cos \theta')$であり,$R\ $は導体球の半径。
また,静電誘導で導体球表面に誘起される電荷は $\rho(\bm{r'}) d\bm{r}' = \sigma \cos \theta' \sin \theta' d \theta' d\phi'$である。

したがって,
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{\sigma}{4\pi\varepsilon_0} \int \dfrac{\cos \theta' \sin \theta' d\theta' d\phi'}{\sqrt{r^2+R^2-2rR (\sin \theta \sin \theta' \cos \phi' + \cos\theta \cos \theta')}}$
ただし,$\bm{r}$を含む平面内に$x$座標をとって,$\phi = 0$となるようにした。

$\alpha = r^2+R^2 -2rR  \cos\theta \cos \theta' \ge 0$,$\beta = 2 r R \sin \theta \sin \theta' \ge 0$と置くと,
$\displaystyle V(\bm{r}) = \dfrac{\sigma}{4\pi\varepsilon_0} \int \dfrac{\cos \theta' \sin \theta' d\theta' d\phi'}{\sqrt{\alpha - \beta \cos \phi'}}$
この$\phi'$による積分のところ$I_{\phi'}$は楕円積分となる。$\cos \phi' = 1- 2 \sin^2 \frac{\phi'}{2}$とすれば,
$\displaystyle I_{\phi'} = \int_0^{\pi/2} \frac{d\phi '}{\sqrt{(\alpha - \beta) + 2\beta \sin^2 \frac{\phi'}{2}}} = \int_0^{\pi/2} \frac{d\phi '}{\sqrt{(\alpha + \beta) - 2\beta \cos^2 \frac{\phi'}{2}}} $

仮にここまでできたとしても,$\alpha, \beta$に$\theta'$が含まれているものをさらに積分するのはどうしましょうとなった。チーン。

2023年10月11日水曜日

導体球(1)

非常勤講師をとして勤めるのも最後のセメスターになった。物理学概説という科目を担当することになり,原康夫さんの物理学基礎第5版のテキストを使っている。

講義の内容は,電磁気学現代物理学の範囲だ。以前,電磁気学の授業を担当したとき,静電気については,電荷分布から電場と電位(静電ポテンシャル)を導くという展開だった。時間の関係もあって,導体の概念や関連部分は飛ばしてしまっていた。これはだめです。

外部から一様電場をかけた導体球内部には電場が存在せず,電位は一定になる。これを簡単に求めるためには,導体球の中心に電気双極子を置いて,外部電場と重ね合わせるのが普通の教科書の手順だ。砂川さん理論電磁気学では静電ポテンシャルのルジャンドル展開を使ってもっとスマートに導出していた。

このとき,導体表面には球の中心Oを原点とし,電場方向を結ぶ座標軸からの角度の余弦に比例する電荷が分布することになる。それではこのような電荷分布から一様な電場が直接計算できるはずだが,残念ながら探してもその計算を具体的にしている資料はみつからない。

この計算では表面電荷分布を表す2つの角度について積分する必要がある。1つの変数での積分は楕円積分になるが,これをさらに積分するのはちょっと無理そうだ。しかたがないので,数値積分してみると,外部電場方向に垂直な等電位面が現れた。

f[r_, u_] := NIntegrate[ Cos[t] Sin[t]/
     Sqrt[r^2 + 1 - 2 r*(Sin[u] Sin[t] Cos[s] + Cos[u] Cos[t])],
             {t,  0, Pi}, {s, 0, 2 Pi}] / (r*Cos[u])

ここで,導体球の半径をR=1として,内部の点を(r sin u, 0, r cos u ),導体球面上の電荷要素の位置を (R sin t cos s, R sin t sin s, R cos t ) として,変数tと変数sで積分している。電荷分布は σ cos t で,積分結果を内部点のz座標 r cos u で割った。この結果が,内部点の座標変数 r, u を変えても一定になったので,等電位面が出現したことになる。



図:一様電場中の導体球(前野昌弘さんのテキストから引用)



2023年10月10日火曜日

2023年10月9日月曜日

2023年10月8日日曜日

2023年10月7日土曜日

(秋休み 6)

黄・緑・紫・藍
노랑 (norang)・녹색 (nokseok)・보라 (bora)・남색 (namseok)

2023年10月6日金曜日

(秋休み 5)

赤・白・黒・青
빨강 (ppalgang)・하양 (hayan)・검정 (geomjeong)・파랑 (parang)

2023年10月5日木曜日

(秋休み 4)

虎・鹿・狐・猿
호랑이 (horangi)・사슴 (saseom)・여우 (yeowoo)・원숭이 (wonsungi)

2023年10月4日水曜日

2023年10月3日火曜日

2023年10月2日月曜日

2023年10月1日日曜日

中秋の名月

「今年の中秋の名月は満月です」というニュースが流れて「?」となった。中秋の名月=満月ではなかったのか。

ベランダに出て見ると,今年は雲も少なく綺麗な満月が見えていた。もっとも,自分の眼だと満月はぼやけて形もはっきりしない。なお,月見団子も食べてはいない。

国立天文台暦計算室にその説明があった。月の満ち欠け周期に基づく陰暦では,毎月15日が満月となる。中秋の名月とは旧暦の秋(7月,8月,9月)の中央日である中秋=8月15日の月を指すので,太陰暦的には満月になっているはずなのだ。

ところで,今使われている太陽暦では,その辺にズレがあるために,中秋の日=満月にならないということらしい。ただし,この誤差はたかだか-1〜+2日程度なのでほぼ満月といっておけば問題なかった。


写真:中秋の名月(SKYWARD+からの引用