質量公式といえば,森田先生の友達だった早稲田大学の山田勝美先生を思い出す。いろいろお世話になったことも。ベータ崩壊の大局的理論から,精密な質量公式の導出へとつながる研究に進み,日本の原子核理論分野ではユニークな位置にいたような気がする。
ベーテ・ヴァイツゼッカ—の質量公式からペアリング項を除いた束縛エネルギーの表式は次のようになる。
B(A,Z)=aV⋅A−aO⋅A2/3−aC⋅Z2A1/3−aS⋅(N−Z)2A
順に,体積項,表面項,クーロン項,対称項となっている。
教科書にあるような,一核子当たりの束縛エネルギーB(A)/Aのグラフを書くためには,陽子数と質量数の関係Z(A)が必要である。これは,ddZB(A,Z)=0を与えるZ∗(A)として求まり,
Z∗(A)=A2+aC/(2aS)A2/3となる。
ここで,aV=15.8, aO=17.8, aC=0.70, aS=23.3 という経験値(単位はいずれも MeV)を代入すると,
b[a_, z_] :=
15.6 a - 17.2 a^(2/3) - 0.70 z^2/a^(1/3) - 23.3 (a - 2 z)^2/a
sol1 = NSolve[D[b[a, z], z] == 0, z];
z[a_] := z /. sol1[[1]]
e[a_] := b[a, z[a]]/a
v[a_] := 15.6
o[a_] := v[a] - 17.2 a^(-1/3)
c[a_] := o[a] - 0.70 z[a]^2/a^(4/3)
s[a_] := c[a] - 23.3 (1 - 2 z[a]/a)^2
Plot[{v[a], o[a], c[a], s[a]}, {a, 1, 216}, PlotRange -> {0, 20}]
sol2 = NSolve[D[e[a], a] == 0, a]
z[a] /. sol2[[2]]
{{a -> 4.66671*10^7}, {a -> 61.2878}}
27.4402
この近似式では,A=61,Z=27 が核子当たり結合エネルギー最大の核種となる。実際は鉄Fe(A=56, Z=26)なので少しズレている。
当初は,自分でグラフを書くには,A=2Z+kZ2という近似が簡単かなと考えていた。鉛Pb(A=208, 82)を代入すれば,1/k=153からZ(A)=−153+√1532+153A となる。概ねよい近似ではあるが,それほどメリットはなかった。
図:ベーテ・ヴァイツゼッカ—質量公式による核子当たり結合エネルギー
(上から,体積項,−表面項,−クーロン項,−対称項)
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