2021年7月31日土曜日

コロナワクチン接種状況(4)

コロナワクチン接種状況(3)からの続き

6月中旬の上記記事で,菅首相の話はおかしいのではと指摘したが,その後の遡及入力分を補正すると最終的にはこのころに100万回/日を越えたという彼らの言明の方が正しかった。

ただし,政府の内部データによるシミュレーションは必ずしも正確ではなく,累計接種回数で10%,300万回程度過小評価していた値を当時報告していた。また,6月10日から6月16日の平均ワクチン接種回数は現時点で109万回にまでなっていて,発表時点の週平均104万回という値を上回ったことになる。

そこで首相官邸のコロナワクチンのページで報告されているワクチン接種回数に遡及入力補正を行った現時点でのワクチン総接種回数推定値を求めてみた。遡及入力分がだらだらと指数関数的に登録されると仮定して,7月1日分の一般接種分データの1ヶ月分の推移からざっくりパラメタを求めた。$N(t) = N_0 \{1 - 0.5 * \exp (-t/7) \} $で近似できたことにしよう。

図:ワクチン一般接種回数の遡及入力曲線(7/1データの29日分の推移から)

7/29時点の政府データの総接種回数は,医療従事者等1200万回,一般接種7200万回(うち高齢者5600万回)の合計8400万回になっている。これは遡及分を含んでいない(はず)。



図 一日当たりワクチン接種回数の推移(深いdipはオリンピック開始時)

遡及分を補正すると400万回分くらい増えるので,7月末までの総接種回数は,合計8800万回である(注:こちらの集計では,医療従事者等1070万回,一般7570万回,合計8640万回なので若干の齟齬がある)。結局,現時点の補正後の高齢者ワクチン総接種回数は,5900万回程度なので,当初の予想通り,高齢者については7月末までにワクチン総接種回数ベースでほぼ80%が完了したことになる。

仮にこのまま日本における一日のワクチン接種回数が140万回/日で推移すれば,(2.2億回-8800万回)/140万回/日 = 94日≒3ヶ月かかるので,10月末には希望者への接種がほぼ完了するはずだ。現時点で総接種回数ベースで40%が完了しているので,8月末に60%,9月末に80%,10月末に100%というわけだ。

(注:ここは総接種回数ベースの議論なので,第1回目とか第2回目の割合はまた別の話)

2021年7月30日金曜日

家族的利益共同体

 町山智浩さんの最近のツイートが現在の日本の状況を的確に表現していると思う。すなわち,「電通,自民党,テレビ,メディア,大企業は互いの子息令嬢を互いに就職させたり,結婚による血縁などで結束を深めています。こうして築かれた広告&政治&大企業&メディアの家族的利益共同体が自分たちの利益を優先させ続けた結果が今の日本です」

)「自民党デジタル改革担当大臣平井卓也がまさにその申し子やね。祖父は瀬戸内航空社長・四国電力取締役,親は西日本放送代表・四国新聞社主,電通出身の自民党世襲3世議員。四国の大企業,メディアを一手に握る平井家の御曹司」(なんJ民No.18@nanjno18)


2021年7月29日木曜日

国家社会主義ドイツ労働者党

ちょうど 100年前の1921年7月29日にアドルフ・ヒトラー(1889-1945)が国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)の実権を握り,第一議長→指導者(総統)となった。

NHKの映像の世紀を見ていて,ヒトラーが自殺前に秘書に語った言葉として「100年後には再び自分のような考えの人が現れる」というのがあったような気がした。が,探してみると,五島勉の怪しい言説しか見つからない。

それにしても,橋下徹,吉村洋文,小池百合子など,その候補は日本にもたくさんそろっている。メディア制御による大衆コントロール手法がその典型。NHKアナウンサーの藤井彩子が橋下の北野高校での同級生だったため,最初のインタビュー時に遅刻したことを軽く指摘されたのを逆ギレしてNHKにかみついたのがマスコミ威嚇の嚆矢だったような気がする。

2021年7月28日水曜日

地理教育の道具箱

 国土地理院の地理教育の道具箱のページに,イラストで学ぶ過去の災害と地形の資料ができたとアナウンスされたのは5月27日のことだった。これは,「過去の災害と地形を比較することで災害の危険性を直感的に学び,類似する地形にはどんな災害の危険性があるか把握することを目的としている」。

それが,2ヶ月後の7月28日の日経の夕刊に取り上げられていた。なんの埋草だったのだろうか?


図:十津川の豪雨災害の例(国土地理院のページから引用)


2021年7月27日火曜日

夏休み子ども科学電話相談

夏休み子ども科学電話相談はNHKのラジオ番組だ。毎週日曜日の午前10時05分から午前11時50分まで放送されているが,東京オリンピック2020のせいで今年は8月8日と22日だけになった。夏休みの宿題のヘルプを考えていたこども達にとってはちょっと残念かもしれない。

そこで,インターネットの有志が夏休み子ども科学インターネット相談をYouTube上に立ち上げた(NHKのものとはまったく関係がなく,無保証・無答責です)。7月25日にアップロードされた第1回目は,いきなり考古学で「Q.各文明で大切だった宝石は? Q.書記坐像の人は何を書いてるの?」というものだった。googleドキュメントにこの質問や回答者のリストがみられる。

高校生の時に北陸放送ラジオの番組で,同じような子ども電話相談室があった。児童文学者のかつおきんや(1927-2020)さんと,理系は理科教育センターの先生みたいな人が二人で対応していたと思う。覚えている質問は「仏教の三千大世界とアインシュタインの相対性原理の関係はどうなっているのですか」というものだ。リアルタイムの番組なので,なかなか質問をセレクトするのが難しく,回答者も困っていた。

2021年7月26日月曜日

スティーヴン・ワインバーグ

 7月23日にスティーヴン・ワインバーグ(1933-2021)が亡くなった。88歳だった。ワインバーグ・サラム理論の一片をなす,1967年の A Model of Leptons Phys. Rev. Lett. 19 (1967) 1264–1266 はまともに読んでいない。横尾由松先生の院生向け自主講義を聴講し,E. S. Abers and  B. W. Leeの Physics Gauge Theories Physics Reports Vol. 9 No. 1 (1973) 1-141 を途中まで読んだだけなので,結局のところ十分に理解はしていない。でも,なんだか美しくないと感じてしまうのだった。


2021年7月25日日曜日

水素エネルギー

なぜか今ごろになって水素エネルギーがはやっている。 いや,今ごろだからこそなのかも。東京オリンピックの聖火台は,新国立競技場の10km南東にある,東京臨海部の有明とお台場の間にかかる幅60mの歩行者専用橋「夢の大橋」に設置されている。

聖火台のデザインは,天理市駅前のコフフンを手がけた佐藤オオキのnendoだ。この水素は福島県のたぶん浪江町の施設で製造され,電気分解のエネルギーには太陽光発電が用いられている。なお,着色の必要から炭酸ナトリウムが添加されている。オレンジの炎のもとになるナトリウムD線の二重項は明日の前期最終授業で取り上げるところだった。

ENEOSが東京五輪の公式パートナーなので,聖火リレーや聖火台の水素はここが供給しているようだ。水素エネルギーのパイオニアであるIWATANIではない。

1974年に太田時男(1925-2009)の「水素エネルギー」がクリーム色のカバーにモデルチェンジしたばかりの講談社現代新書から出版されすぐに買って,第1刷がいまも手元にある。そろそろ原発問題が社会化しはじめたときであり,物理学科のクラスで原発をめぐる討論の際に読んだばかりの知識を片手に斜め左上から水素エネルギー論を展開して顰蹙を買っていた。いまから50年近く前の話だ。

太田時男先生は金沢生まれで,京都帝国大学の物理を出た後に,金沢の高等師範や金沢大学に勤めていた。その後,米国を経由して横浜国立大学工学部の教授になったころ,この新書を書いている。あとがきの末尾は「一九四九年七月 多忙に紛れたミスのあることを恐れつつ 太田時男」となっていておもいっきりミスっている。

金沢一中/泉丘の出身なのかあるいは金大附属なのか,はたまた四高だったのかはわからなかった(太田時男先生のご逝去を悼む 岡崎健)。

「水素エネルギー(太田時男)」の目次
Ⅰ 水素エネルギーの登場
 1 太陽と水と人間と
 2 石油エネルギー圏からの脱出
 3 水素エネルギー・システム
Ⅱ 作る・使う・運ぶ
 1 水素を作る
 2 水素システムの青写真
 3 水素を使う
 4 水素を運ぶ
Ⅲ 水素エネルギー時代へ
 1 水素は危険か
 2 水素研究の現状
 3 二十一世紀への展望
ちょうどオイルショックに直撃されつつも,まだ未来に希望があった時代のことである。


写真:太田時男「水素エネルギー」の書影

2021年7月24日土曜日

東京オリンピック(5)

 東京オリンピック(4)からの続き

うちのテレビでは,東京オリンピックの視聴をできるだけしないことになっているので,開会式前後の様子はネットで伝わってくる断片的な(テレビの方が恣意的で断片的かもしれないが)情報だけである。これを脳内で適当に編集しているために,かなり偏向したイメージが固定化されているかもしれない。とりあえず,ここまでの主観的印象をまとめてみる。

(1) 東京の聖火リレー最終点がどうなったかは定かではない。が,開会式の最終場面では,王・長嶋・松井・大坂なおみが富士山型のチンケな聖火台に最終リレー点火したらしい(映像はまったくみていない)。医療関係者もまきもまれていたようだ。ゴジラが遠方の聖火台に点火するという演出は採用されなかったが,松井はゴジラなので微妙にかすったようだ。

(2) ブルーインパルスが昼ごろに新国立競技場上空に五輪を描こうとしたが,雲や風のために1964年のときのようなきれいな五輪を描けなかった。10月と7月の気温・湿度差なども影響しているらしい。これをみようと競技場周辺は人だかりがして超密集状態になっていた。なお,片山さつきが三丁目の夕日の映画で使われた写真を使って偽装ツイートをしていた。

(3) 小林堅太郎の演出は結局ほぼそのまま使われているが,一部変更したという言い訳ができる程度の化粧直しをしたらしい。それにしても全体的な統一にかけるみすぼらしいものであり,開会式予算の165億円がいったいどこの電通関係に吸い込まれたのか。演出のゲーム音楽に感動している人が多数発生したが,任天堂は前回の安倍マリオでこりて使用ゼロ。

(4) 橋本が9分,バッハが13分の非常に長い挨拶が,予定の合計10分以内を越えている意味がわからない。なお,天皇は13秒だった。菅も小池も起立するのがかなり遅れてしまったとのこと(注:小池が立ったために菅がつられて話がややこしくなったらしい。1964の場合は天皇以外みんな着席していたと)。バッハは天皇と対等に並んだ図柄で演出されており,マッカーサーと昭和天皇が並び立ったのを想起させる。

(5) 今回の五輪の出発点が,石原慎太郎や森喜朗や安倍晋三であることから,最初から最期まで差別的な基調トーンでつらぬかれている五輪だった。開会式の演出でも,担当者の辞任に加えて,アフリカ人の排除や差別的言動で有名なすぎやまこういちの楽曲をコアにすえるなど,目も当てられない状況になっていた。

4連休のためにただでさえ抑制されている首都圏のPCR検査が減らされているので,陽性者数はしばらく2000人前にとどまっているかもしれないが,確実にパンデミックが進行していると思われる。五輪関係者の感染もここまでの合計で100名を越え,毎日20名のオーダーとなっている。なお,選手村内がPCR検査なのか定量抗原検査なのかは判然としない。

2021年7月23日金曜日

東京オリンピック(4)

東京オリンピック(3)からの続き

東京2020への道  −「オリンピックをちゃんと開ける国1964が如何にしてオリンピック一つまともに開けない国2021に転落したかの物語」最終章のあらすじについて− 

幻の「コンパクト五輪」が 「震災復興五輪」と銘打って華々しく登場したものの, 「人類がコロナに打ち勝った証としての五輪」に名前をかえて一年延期され, 「(誰が?)コロナと戦う五輪」へと転戦転進し,ついには 「日本社会(≒自民党×電通的価値観)の恥や闇を暴くための五輪」 となった経緯を巻き戻してみる, 

0 2021.7 五輪名誉最高顧問安倍前首相が開会式欠席逃亡
1 2021.7 開会式・閉会式演出担当小林賢太郎ホロコースト揶揄で炎上(謀略?)辞任
2 2021.7 選手村の設備(段ボールベッド,日本語表記リモコン,・・・)問題噴出
3 2021.7 イラン選手団他,バス不足で成田空港で7時間放置
4 2021.7 皇室の開会式出席は天皇だけ,皇室の観戦なし
5 2921.7 トヨタ等大企業五輪CM見送り,五輪特別顧問経済三団体首脳開会式欠席
6 2021.7 文化プログラムまぜこぜアイランドツアーの絵本作家のぶみ炎上辞任
7 2021.7 開会式・閉会式音楽担当小山田圭吾の障害者虐待問題炎上辞任
8 2021.7 サッカー学校観戦の飲料をコカ・コーラに限定する通達に苦情殺到
9 2021.7 高速道路料金加算と罰金付き五輪専用レーン運用開始
10 2021.7 バッハ会長・IOC委員,ヒロシマ・ナガサキ訪問,有観客開催要請
11 2021.7 オリンピックの選手団の空港検疫・バブル方式・プレイブック機能せず
12 2021.7 宇都宮健児らの五輪開催反対署名45万筆突破
13 2021.7 東京・神奈川・埼玉・千葉・北海道・福島での無観客開催決定
14 2021.6 ボランティア全員東京でワクチン接種は時期が遅く免疫獲得間に合わず
15 2021.6 JOC経理部長電車自殺,山下会長否定,ニュース差し替え隠蔽
16 2021.6 東京五輪のコロナ対策アプリ73億円を半額に値切って混乱→全然使えない
17 2021.5 選手村でのコンドーム16万個配布とコロナ感染対策の矛盾を糊塗
18 2021.5 組織委員会,大会会場への旭日旗の持ち込みを禁止せず
19 2021.5 パブリックビューイングすべて中止
20 2021.5 聖火リレーの騒音スポンサー車両。感染拡大で辞退・公道走行中止相次ぐ
21 2021.4 会場運営委託先の高額人件費1人1日30万円計上と中抜き,守秘義務で秘匿
22 2021.3 5者協議で海外観客の受け入れ断念を合意
23 2021.3 開会式・閉会式演出統括佐々木宏(元電通)の渡辺直美ブタ演出問題で辞任
24 2021.2 組織委員会森喜朗会長女性蔑視発言で辞任
25 2020.12 開会式演出責任者MIKIKOら野村万斎チームが簡素化を口実に解散
26 2020.8 安倍晋三,診断書なしの潰瘍性大腸炎を理由に首相の座を放棄
27 2020.3 コロナ禍,安倍首相の強い意向で東京オリンピック2020最悪の1年延期
28 2020.3 元電通専務の高橋治之が招致委員会からの9億円でロビー活動
29 2020.2 五輪開会式にアイヌ民族伝統舞踊不採用
30 2019.11 IOC,猛暑対策のためマラソンと競歩を札幌に変更
31 2019.8 お台場トライアスロン会場の下水臭水質問題改善の見込みなし
32 2019.3 JOC竹田JOC会長退任,IOC委員辞任,組織委員会副会長退任
33 2018.12 フランス金融犯罪局,JOCの竹田恆和会長の贈賄調査開始
34 2017.3 新国立競技場建設現場で過労自殺
35 2016.7 新国立競技場建設のため都営霞ヶ丘住宅解体工事強行
36 2016.1 新国立競技場は隈研吾案に決定,空調なし聖火台なし,陸上サブトラック仮設
37 2015.9 アートディレクター佐野研二郎,東京大会エンブレム盗用疑惑発覚
38 2015.7 工事費膨張を理由に新国立競技場ザハ・ハディド案など白紙撤回
39 2014.5 日本建築家協会,国立競技場解体見直し要望書提出
40 2013.12 猪瀬直樹都知事,5000万円裏金疑惑で辞職
41 2013.9 IOC総会で2020年オリンピック,NBCの都合等のため猛暑の東京で開催決定
   (震災復興五輪)をだしに。温暖でアスリートに理想的な気候と捏造説明
42 2013.9 安倍首相,福島の汚染水はアンダー・コントロールと虚偽スピーチ
43 2012.11 新国立競技場コンペでザハ・ハディド案選出
44 2012.7 猪瀬直樹都知事,国立競技場改築で世界一カネのかからない五輪発言
45 2011.9 石原慎太郎都知事,2020年五輪への立候補申請(賛成47%・反対23%)
46 2009.9 IOC総会で2016年のオリンピックの東京開催落選
47 2007.9 石原慎太郎都知事,2016年五輪への立候補申請(コンパクト五輪)

2021年7月22日木曜日

AlphaFold2(2)

 AlphaFold2(1)からの続き

再びAlphaFold2が話題になっていたのでなにかと思ったら,「米Alphabet傘下の英DeepMindが、遺伝子配列情報からタンパク質の立体構造を解析するAI「AlphaFold v2.0」(以下AlphaFold2)をGitHub上で無償公開し、ネット上で注目を集めている」ということだった。

AlphaFold2解体新書をみれば詳細がわかりそうな気がする。論文は,Highly accurate protein structure prediction with AlphaFoldであり,実装が,alphafold@github となっている。ただし,実際にインストールしようとすると,最低でも,2.5TB以上のSSD/HDD容量 (必須),CUDA11に対応しているNVIDIA製GPU(推奨),大容量(32GB以上)のRAM(推奨)が必要なので素人は手を出してはいけません。

大学に進学するとき,第1志望を物理学科,第2志望を生物学科にしたほど,生物学というか生命科学がこれからは重要だという認識があった。大学の教養部では巌佐耕三先生の生物学を履修した。AlphaFold2のニュースから阪大で受けた生物学の授業が連想された。その授業の先生の名前が思い出せなくて調べていたら,巌佐耕三先生だったということがわかったが,2017年に亡くなられていた(阪大理生物同窓会誌 Vol. 14 2017)。

筑摩書房の「生物学のすすめ」をテキストとしていた巌佐先生の授業でたたきこまれたのが,生物の本質が,DNA/RNAからアミノ酸配列(1次構造)が定まり,これからタンパク質の立体構造(3次構造)が決まって様々な生理機能を果たすということに依拠しているということだった。

つまり,ゲノム配列を簡単に求められるようになった時代に,それからタンパク質の立体構造を容易に推定できることの重要性がどれほどのものかということだろう。

それにしても,物理科学も生物科学も機械学習全盛の時代に相転移しつつある。

2021年7月21日水曜日

MCMCへの道(3)

 MCMCへの道(2)からの続き

次は,MCMC法#3マルコフ連鎖である。昼食のメニューが3種類に限られていて,なおかつ当日のメニュー選択の確率が,前日のメニューだけによって定まるという例があげられていた。はい,この例は非常によくわかる。

問題は,Juliaの配列と行列の扱いだ。MahthematicaはすべてListと考えればよいのでわかりやすかったが,Juliaでは型として,ArrayもMatrixもある。見様見真似でとりあえずコードを書いたのだけれど,まだ十分理解できていない。このため,3x3行列の配列であるbをベクトルvにかけて得られる配列の転置ができなかったので,手動で転置している。

#using LinearAlgebra
using Plots

x=[zeros(3) for i in 1:11]
y=[zeros(11) for i in 1:3]
#
a=[0.2 0.1 0.3 ; 0.2 0.6 0.5 ; 0.6 0.3 0.2]
b=[zeros(3,3) for i in 1:11]
b[1]=[1 0 0 ; 0 1 0 ; 0 0 1]
v=[0.3,0.2,0.5]
#
for i in 2:11
  b[i]=a*b[i-1]
end

for j in 1:11
  x[j]=b[j]*v
end
#
for i in 1:11
  for j in 1:3
    y[j][i]=x[i][j]
  end
end
#
plot(y,legend=:bottom, xlim=(0,10),ylim=(0,0.6))




2021年7月20日火曜日

奈良文化財研究所

 奈良文化財研究所文化財総覧WebGISが今日から公開された。さっそく自宅の近所を調べてみたけれど,荒蒔古墳星塚古墳岩室池古墳も出てきません。橿原考古学研究所ではないので,古代には弱いのかもしれない。おなじ奈文研の全国遺跡報告書総覧のほうが有用な感じである。


図:文化財総覧WebGISの文化財一覧(奈文研より引用)



2021年7月19日月曜日

MCMCへの道(2)

 MCMCへの道(1)からの続き

さて,MCMC法#2棄却サンプリングである。手順は次の通り。

(1) 目標分布 p(x) を事後分布ともいう。これは既知の関数。

(2) 乱数発生計算が容易な分布 q(x) で, k q(x) ≧ p(x) を満たすものを選ぶ。 kは正定数。例えば,一様分布とか正規分布。

(3) q(x) にしたがう乱数 x' を発生する。

(4) [0, k q(x)] の一様分布にしたがう乱数 y' を発生する。

(5) y' ≦ p(x') ならx' を採用する。そうでなければ棄却する。

この(3) から(5) を必要なだけ繰り返す。


using Plots

function beta(x,a,b)
  return x^(a-1)*(1-x)^(b-1)
end

x= [k for k in 0.0:0.001:1.0]
y= beta.(x,10.2,5.8)
z= [0.00013 for k in 0.0:0.001:1.0]
scatter(x,y,xlim=(0,1.0),ylim=(0,0.00015),
  markershape = :circle,
  markersize = 1,
  markeralpha = 0.75,
  markercolor = :blue,
  markerstrokewidth = 0.1,
  markerstrokealpha = 0.1,
  markerstrokecolor = :white)

g1=scatter!(x,z,xlim=(0,1.0),ylim=(0,0.00015),
  markershape = :circle,
  markersize = 1,
  markeralpha = 0.75,
  markercolor = :orange,
  markerstrokewidth = 0.1,
  markerstrokealpha = 0.1,
  markerstrokecolor = :white)

n=3000
p=rand(n)
r=0.00013*rand(n)
q=ones(n)
for i in 1:n
  f=beta(p[i],10.2,5.8)
  q[i]=ifelse(f <= r[i],0,r[i])
end

g2=scatter(p,q,xlim=(0,1.0),ylim=(0,0.00015),
  markershape = :circle,
  markersize = 1,
  markeralpha = 0.75,
  markercolor = :green,
  markerstrokewidth = 0.1,
  markerstrokealpha = 0.1,
  markerstrokecolor = :white)

plot(g1,g2,legend=:left,aspect_ratio=6000)


図:ベータ分布 p(x) と一様分布 q(x) と定数 k=0.00013 による棄却法の例


2021年7月18日日曜日

女紅場

 法事で京都の街を歩いていたら,丸太町の鴨川縁に女紅場(にょこうば)の碑があった。京都府立第一高女がなんとかとあったので,調べてみた。

女紅場とよばれた女子の教育機関にはいくつかの類型があるようだが,この京都の女紅場は1872年に設置された日本最初の公立の女学校であり,後の京都府立第一高等女学校の前身だった。現在は京都府立鴨沂高等学校である。

大阪でこれに対応するのが,1874年に堺県に設置された女紅場であり,後の大阪府立泉陽高等学校だ。ここは大阪で2番めに古い高等女学校となった。なお,大阪で最も古い女学校というのは,1882年に設置された府立大阪師範学校の附属裁縫場を起源として大阪府女学校となった,現在の大阪府立大手前高等学校である。


写真:丸太町鴨川西岸にある女紅場の碑(Wikipediaより引用)

[1]女学校(Wikipedia) 

2021年7月17日土曜日

定偏角分散プリズム

ペラン・ブロッカなのかペリン・ブロッカなのかペロン・ブロッカなのかよくわからないが,定偏角分散プリズムというものがあることがわかった。いやあまりわかっていない。幾何光学をまともに勉強していないので。

とりあえず,イメージを掴むために,Mathematicaでプリズムの光路シミュレーションプログラムを書いてみた。わかったような,わからないような・・・それでも高等学校で学ぶ幾何光学の法則さえ知っていればコードは書ける。

プリズムは四角形であり原点(0,0)の内角は90度(直角),y軸上の点(0,2√3-2)は75度,(√3,1)にある点は135度,x軸上の点(√3+1/√3,0)は60度となっていて,その屈折率をnとする。

aは入射光の入射面からはかった入射角度,tbは入射光が屈折した光線の進行方向のプリズム底面に対する傾き,(x1, y1)は全反射する点の座標,tcは反射光の底面に対する傾きの絶対値,tdはプリズムからの出射光の底面からはかった出射角度の勾配,x2は出射点の座標である。

n = 1.6; a = 36.8699;
t1 = Tan[15 Degree]; t2 = Tan[30 Degree]; x3 = Sqrt[3] + 1/Sqrt[3];
tb[n_, a_] := Cos[a Degree]/Sqrt[n^2 - Cos[a Degree]^2]
x1[n_, a_] := Sqrt[3]*t1/(t1 + tb[n, a])
y1[n_, a_] := 1 + Sqrt[3]*t1*tb[n, a]/(t1 + tb[n, a])
tc[n_, a_] := (t2 + tb[n, a])/(1 - t2*tb[n, a])
td[n_, a_] := Sqrt[tc[n, a]^2 - n^2 + 1]/n
x2[n_, a_] := x1[n, a] + y1[n, a]/tc[n, a]

ro = Point[{(1 + 2*t1)/(1 + t1), (1 + 2*t1)/(1 + t1)}];
pol = Polygon[{{0, 0}, {0, 1 + t1}, {1, 1}, {x3, 0}}];

lin[n_, a_] := Line[{{- Sin[a Degree], 1 - Cos[a Degree]}, {0, 1.0}, {x1[n, a], y1[n, a]}, {x2[n, a], 0}, {x3, -td[n, a]*(x3 - x2[n, a])}}]
das[n_, a_] := Line[{{x2[n, a], 0}, {-0.5, -td[n, a] (-0.5 - x2[n, a])}}]

f[n_, a_] := Graphics[{LightGray, pol, Thick, Red, lin[n, a], Dashed, Blue, das[n, a],PointSize[0.03],ro}]

{f[n, a], td[n, a]/Tan[a Degree]}
Manipulate[{f[n, a], n, a, td[n, a]/Tan[a Degree]}, {a, 25, 50}]
図 Pellin-Broca PrismのMathematicaシミュレーション

なお,td[n,a]/Tan[a Degree] = 1ならば入射光と出射光が直交することになる。



2021年7月16日金曜日

人間国宝

例年このころに人間国宝(文化財保護法の重要無形文化財の各個認定保持者)の新規認定が発表される。今年は,人形浄瑠璃文楽人形の桐竹勘十郎さんが入っていた。

Wikipediaで調べてみると,文楽ではこれまでに次の方々が人間国宝に認定されていた。なお,初回は1955年である。文楽協会のページでは,太夫:三味線:人形=21:21:43で人形遣いの人数が多いのだけれど,人間国宝になるのは難しい。(以下は生年-人間国宝認定年-没年 を表す)

人形浄瑠璃文楽太夫
1 豊竹山城少掾(1878-1955-1967)
2 八世竹本綱太夫(1904-1955-1969)
3 六世竹本住太夫(1886-1955-1959)
4 十世豊竹若太夫(1888-1962-1967)
5 四世竹本津太夫(1916-1973-1987)
6 四世竹本越路太夫(1914-1971-2002)
7 七世竹本住太夫(1924-1989-2018)
8 九世竹本綱太夫→九世竹本源太夫(1932-2011-2015)
9 八世豊竹嶋太夫(1932-2015-2020)
10 豊竹咲太夫(1944-2019-)

人形浄瑠璃文楽三味線
1 四世鶴澤清六(1889-1955-1960)
2 六世鶴澤寛治(1887-1962-1974)
3 野澤松之輔(1902-1972-1975)
4 二世野澤喜左衛門(1891-1962-1976)
5 十世竹澤彌七(1910-1972-1976)
6 四世野澤錦糸(1917-1988-1988)
7 五世鶴澤燕三(1914-1985-2001)
8 八世竹澤團六→七世鶴澤寛治(1928-1997-2018)
9 鶴澤清治(1945-2007-)

人形浄瑠璃文楽人形
1 二世桐竹紋十郎(1900-1965-1970)
2 二世桐竹勘十郎(1920-1982-1986)
3 初代吉田玉男(1919-1977-2006)
4 吉田文雀(1928-1994-2016)
5 吉田簑助(1933-1994-)
6 吉田和生(1947-2017-)
7 三世桐竹勘十郎(1953-2021-)
なお,人形浄瑠璃文楽座は,重要無形文化財の芸能分野の総合認定を受けており,ユネスコの無形文化遺産にもなっている。大阪府・市の維新行政からはひどい扱いを受けているが・・・

2021年7月15日木曜日

カレル大学

石橋や池田に住んでいたころ,あるいは天王寺に通っていたころは,仕事帰りに本屋に寄るのが日課だった。天理に引っ越してからも,大和八木にはかろうじて本屋らしきものがあったので,毎日新刊をチェックすることができた。

でも本屋の消滅が進み始めたころに定年となったたため,本屋にいくのは2,3ヶ月に1度のペースになってしまった。アマゾンやグーグルでは目的の本を探せるかもしれないが,目的としない本に出会うことができない。ネット上でこれを可能にするにはVRが次の段階まで進化して,アーサー・C・クラーク(1917-2008)のダイアスパーの世界が実現するのを待たなければならない。

そんなとき,YouTubeの読書系チャンネルが未知の本を探すための補完になるかもしれない。ヨビノリたくみと斎藤明里のほんタメをみていたら,【全10冊】小説1000冊読んだ私が最近読んだ本というタイトルで,アンナ・ツィマ(1991-)のシブヤで目覚めてを先月末に紹介していた。そうか,深緑野分によればコニー・ウィリス(1945-)なのか。ますます読んでみたくなる。

そのアンナ・ツィマと訳者の阿部賢一・須藤輝彦を招き,実践女子大学文学部准教授のブルナ・ルカーシュが司会をする特別トーク・イベントがあった。アンナ・ツィマとブルナ・ルカーシュが卒業しているのが,プラハにあるカレル大学だ。1348年創設のドイツ語圏最古の大学である。

カレル大学は知らなかったけれど,ヤン・フス,ニコラ・テスラ,カレル・チャペック,フランツ・カフカ,ミラン・クンデラや,多くのノーベル賞学者を輩出しているヨーロッパの主要大学のひとつだった。アルバート・アインシュタインやエルンスト・マッハもこの大学の教員だった。


写真:歴史地区にある旧校舎=チェコ国立図書館(Wikipediaから引用)

2021年7月14日水曜日

MCMCへの道(1)

 そういえば,機械学習をまともに勉強していなかった。いや,そもそも統計学も確率論もあれもこれもである。先日の水素原子波動関数の可視化についても進んでいないのだけれど,どうやら,メトロポリス・ヘイスティング法を使うのが望ましいらしい(by tsujimotter)。そういえば,モンテカルロ法もまともに勉強してこなかった。

そこで,反省してMCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ法)の全体像をマスターすべく,いろいろ探したが,おこちゃま向けの適当なテキストがない。こうなるとYouTubeだのみだ。機械学習基礎理論独習というサイトがあったので,このPythonコードをJuliaで再現しながら学ぶことにした。

その1回目はMCMC法#1モンテカルロ法なので,これを再現してみた。

using BenchmarkTools
using Random
using Plots

function findpi(n)
  rng = MersenneTwister(0)
  count = 0
  for i in 1:n
    count += ifelse(rand(rng)^2+rand(rng)^2<=1.0,1,0)
  end
  return 4*count/n
end

#@btime findpi(10^6)
#@benchmark findpi(10^8)

function circle(n)
  x=rand(n)
  y=rand(n)
  c=zeros(n)
  for i in 1:n
    c[i]=ifelse(x[i]^2+y[i]^2<=1.0,0.0,1.0)
  end
  scatter(x,y,
  marker_z = c,
  markershape = :circle,
  markersize = 1,
  markeralpha = 0.2,
  markercolor = :grey,
  markerstrokewidth = 0.1,
  markerstrokealpha = 0.1,
  markerstrokecolor = :white,
  markerstrokestyle = :dot,
  aspect_ratio = 1.0,
  xlim=(0.0,1.0),
  ylim=(0.0,1.0),
  legend=:topright
  )
end

circle(10000)

jupyterlabを使っているが,多数のデータの描画で表示が重くなってかたまる現象がみられる。黒木さんは400msで10^8点のデータが計算できるとしていたが,こちらではメルセンヌツイスターアルゴリズムを用いて300msくらいかかってしまう。




図:単純なモンテカルロ法による円周率の計算

2021年7月13日火曜日

知の巨人

先日,立花隆(1940-2021)がなくなったときに, NHKをはじめてとしてマスコミが一斉に知の巨人というフレーズで紹介していたのが気持ち悪くて仕方なかった。たぶん田中角栄からはじまる政治・社会問題で名を上げた後に,科学の領域の評論に手を広げたことで,文系のジャーナリストたちが一目置いた的なことが発端のような気がする。あほらしい。

立花隆は,たしかにジャーナリストの嗅覚を働かせて様々な分野に興味を持ったのだけど,あくまでも表層をなぞっていただけとみえる。著書やNHK特集のタイトルとあらすじをみているとわかる。そもそも田中角栄の案件でさえ,アメリカの日本に対する謀略の中の一つの役割を担ったものであり,それが日本にとってよかったのかどうだか。

それでは,知の巨人にふさわしいのは誰かと考えてみたが,原子爆弾や電子計算機の開発や数学・量子力学の基礎論に重要な寄与をしたジョン・フォン・ノイマン(1903-1957)くらいであまり思い浮かばなかった。たまたま,田中康夫の横浜市長選挙出馬にかかわって茂木健一郎が話しているのをきいて,哲学者・論理学者・数学者・社会批評家・政治活動家のバートランド・ラッセル(1872-1970)を忘れていたことに気づいた。

高等学校では理数科だったため,社会の時間は少なくて,1年地理,2年世界史,3年倫理という選択をした。3年のときの倫理の先生は眼鏡の細川先生だった。1971年なのでちょうどバートランド・ラッセルが亡くなったところだったが,授業に分厚い箱入りのみすず書房の西洋哲学史市井三郎(1922-1989)訳の本を持ってきていて,なんだかすごいと感動したことがある。

細川先生は,学校を抜け出してとなりの食堂から帰ってきた生徒たちを発見しても,そのまま沈黙して通過させてしまうようなことで,寡黙で特徴のない方だったが,倫理の授業というか教科書は非常におもしろくて,現代国語の次に集中して受講した科目だった。


写真:バートランド・ラッセル(ノーベル文学賞のページから引用)

[1]Bertrand Russel(Stanford Encyclopedia of Philosophy)

2021年7月12日月曜日

三島喜美代

 晩夏・小暑・蓮始開(はすはじめてひらく)

先週の日曜美術館で,大阪の十三に住んでいる三島喜美代が取り上げられていた。88歳という年齢を感じさせない意欲を持つパワフルなおばちゃんだった。日本語のWikipediaページはないが,英語版はあるので訳してみた。

三島喜美代(1932-)は、日本の現代美術家であり,新聞や漫画、箱などの「壊れやすい印刷物」を陶土で再現した作品で知られている。1960年代初頭に画家として活動を開始した三島は、1971年から陶芸を始めた。 この頃から,新聞や広告ポスターのイメージをシルクスクリーンの技法で粘土に刷り込むようになる。製造物を用いた作品は、クレス・オルデンバーグやアンディ・ウォーホルの作品、戦後の日本の具体や独逸美術協会の作品と類似している。

三島喜美代は1932年に大阪で生まれ,1951年に大阪の公立扇町高校を卒業した。1986/87年、ロックフェラー奨学金ACCの助成を受けてニューヨークに留学。現在は大阪に在住。

夫の三島茂司(1920-1985)も画家であり,二人展が最近開かれていた。岐阜県の土岐市のアトリエはほとんどゴミの集積場のようだ。

東京の倉庫街にあるART FACTORY城南島に展示されている陶器製の新聞の束は天井まで高く積み上げられて迷路になっている。また,1万個の新聞記事を印刷したレンガが敷き詰められる作品を見て,1つ3000円でも3千万円かと思ったが,市場価格は1つ30万円のオーダーだった。

この情報の化石は,ハードディスクや半導体と違って,長く残り続けるのかもしれない。


写真:三島喜美代 《作品 21-A》2021年
陶にシルクスクリーン印刷,鉄(婦人画報から引用)