2024年3月11日月曜日

13年

2011年3月11日(金) 14時46分に,東日本大震災が発生してから13年が経過した。

日経朝刊では特集が組まれていた。そのなかで気になったのが東京電力福島第一原子力発電所の現状だ。説明図がわかりやすかったので,下記に引用する。


図:福島第一原子力発電所の現状(日本経済新聞から引用)

・メルトダウンしてデブリ(合計880トン)がたまっているのは1から3号機
・1号機(392体)と2号機(615体)にはまだ燃料プールに核燃料が残ったまま
・デブリ取り出し試験を予定して延期されているのは2号機
・廃炉の完了は2041-2051年としているが,たぶん今の計画だと無理
・したがって,汚染水(処理水)の放出も30年で終るわけはない

そうこうしているうちに,国内の原子力関係学科の改編は進行し,原子力技術者がいなくなってしまう。はやめに石棺化したほうがよいと思うが,政治的には困難な話だろう。



2024年3月10日日曜日

洗濯マーク

ズボンの洗い方で揉めたので,洗濯表示タグのピクトグラムで確認することになった。

早速調べてみると,全国クリーニング生活衛生同業協同組合の説明がわかりやすかった。日本産業規格の JIS L0001(繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法)で定義されていた。ISOと整合させるために,旧規格から数年前に変更されたものだ。

図:JISL0001 の洗濯表示

問題になったのは,真ん中の欄にあった複雑な×記号だ。これは家庭での洗濯禁止なのかとおもったら,回転式乾燥機がだめということだった。ドラム式洗濯機がある逸般の御家庭にとっては紛らわしい記号かもしれない。PとかFとかWなどは商業クリーニングの業者さんが理解していればよい。洗濯×と漂白剤×と乾燥×とアイロン×だけ憶えればいいか。

2024年3月9日土曜日

少年オルフェ

五次元世界のぼうけんからの続き

小学校の時にであったもう一つのSF児童文学は,米沢幸男の「少年オルフェ」だった。これは本屋(ヨコノ書店かな)で見つけて買ってもらったものだった。たぶん。あらすじは次の通り。
小学五年生の堀田すすむ(進)と、その妹ふうちゃん(ふじ子)は大の仲良し。しかしある日ふうちゃんは突然風邪をこじらせて死んでしまう。すすむが原っぱで途方にくれていると、突然一台のロケットが現れる。「妹に会いたい」というすすむの願いを神様が受け入れたのか、このロケットは黄泉の国へ向かうという天の取り船だった。黄泉の国へ行けばふうちゃんを生き返らせることができるかもしれないと信じたすすむは、単身ロケットに乗り込み、長い長い冒険の旅に出た。
天国に対応するフラワー星と地獄に対応するアイス星があるのだけれど,そのフラワー星のほうにいる妹を見つけて,最後は連れ戻す(オルフェ神話とは違う)ハッピーエンドになっていた。

子供のときに持っていた本の中で最も気に入っていたものの一冊だったけれど,いつのまにかなくなってしまった。大阪モノレールが開業したとき,千里中央駅に図書コーナーのモノレール文庫ができていた。そこでたまたまこの本の新書版を見つけた。このコーナーは本の出し入れが自由になっていて,自宅でいらなくなった本などを勝手に置いておけるシステムだった。


写真:古書店で流通している自分が持っていた判型の単行本

2024年3月8日金曜日

5次元世界のぼうけん

日本SFシリーズからの続き

犬も歩けば棒に当たる。の良い場合。ときどきおもしろいブログに当たる。前回の覆面座談会事件の参考文献[1]にあげたしろくま日記もその一つ。海外SFを中心とした詳しい読書記録が見つかった。2003年1月にはじまり,2019年1月まで続いていた。筆者は40代とあるので,20代から40代にかけての読書記録ということになる。

その最終回が,マデレイン・レングルの「五次元世界のぼうけん」だ。久しぶりに出会った。自分も小学校の5年か6年の時に図書室で借りて読んだ。SFというとヴェルヌくらいで,むしろ子供向けの全集の翻訳物ミステリーに親しんでいた頃だ。

もちろん,SF的な物語には大いに興味があったので,この児童文学もそれなりに面白かった。谷先生の図画工作の時間に,自分が読んだ本の表紙カバーをデザインするという課題があったので,この「五次元世界のぼうけん」を題材にした。残念ながら,そのイメージはテレビでおなじみの「タイムトンネル」だったけれど。

あれ,調べてみるとタイムトンネルがNHKで放映されていたのは,1967年の春から秋にかけてである。それは自分の中学2年のころだ。ということは記憶のどちらかが間違っている。表紙カバーデザインの課題は中学校の美術の時間のテーマだったか,あるいは,表紙の楕円形のグラデーションのイメージがタイムトンネルとは関係なかったかのどちらかだ。


写真:しろくま日記にあった「五次元世界のぼうけん」の書影


2024年3月7日木曜日

日本SFシリーズ

世界SF全集(2)からの続き

早川書房は,世界SF全集(1968.10-1971.8)が刊行される前に,日本SFシリーズ(1964.8−1969.7)を刊行していた。自分の手元にあるのは,第1巻の復活の日小松左京)と第11巻の百億の昼と千億の夜光瀬龍)だけだ。その一覧は次のようになる。なお,このうち,2,5,8,9,10,は世界SF全集にも採用された。
1 復活の日(小松左京:人類破滅テーマ)1964年 ◎1
2 たそがれに還る(光瀬龍:宇宙テーマ)1964年
3 夢魔の標的(星新一:侵略テーマ)1964年
4→地球強奪計画(都筑道夫:スペースオペラ)1967年12月刊 ×※1
4 EXPO'87(眉村卓:?)1968年
5 人間そっくり (安部公房:宇宙人テーマ)1967年
6 透明受胎(佐野洋:突然変異テーマ)1965年
7 エスパイ(小松左京:超能力テーマ)1966年
8 48億の妄想(筒井康隆:架空事件テーマ)1965年
9 幻影の構成(眉村卓:未来社会テーマ)1966年
10 果てしなき流れの果てに(小松左京:宇宙・時間テーマ)1966年
11 百億の昼と千億の夜(光瀬龍:宇宙破滅テーマ)1967年 ◎2
12 モンゴルの残光(豊田有恒:時間テーマ)1967年
13 馬の首風雲録(筒井康隆:宇宙戦争テーマ)1967年10月刊
14→なすよしもがな(福島正実:次元テーマ)1968年2月刊 ×※2
14 メガロポリスの虎(平井和正:?) 1968年
15 イブの時代(多岐川恭:?) 1969年
○ SF入門(福島正実) 1966年
○ SF英雄群像(野田昌宏) 1969年
※1 ついに太陽系をねらう超人類との対決の時がきた。大宇宙を股にかけて展開される虚々実々のスパイ合戦の結末はいかに?スペース・オペラの決定版!
※2 にくみぬいていたその男に我知らず打ってかかってから気がついた—その男はつい最近,病気で死んでいたはずなのだ!現実と非現実のダブルイメージか?
これは,1967年10月に発行された ハヤカワSFシリーズ 3159 泰平ヨンの航星日記(スタニスラフ・レム) の巻末の広告に掲載されていたものである。このうち,4の都筑道夫と14の福島正実の本は刊行されないままであった。前者は眉村卓の「EXPO'87」に替わり,後者は平井和正の「メガロポリスの虎」と多岐川恭の「イブの時代」に変わった。同様に,世界SF全集で予定されていた別巻のSF講座(多分,福島正実が書くはずだった)も未刊行のままで終ってしまっている。 なお,シリーズ番外扱いの「SF入門」は買っていたがどこかのタイミングで処分したように思う。

これらの件と直接に関係があるのかどうかわからないが,1969年2月号(1968年12月)のSFマガジンの「覆面座談会 日本のSF '68~'69」に起因する覆面座談会事件による福島正実の失脚があった。ちょうどSFマガジンを定期購読しだして半年ぐらいの出来事だったが,その後も影響は続いていた。

福島正実のSFは何冊か買ったのだが,やや苦い味がしてそれほど好きにはなれなかった。ジュビナイルは一定の評価がされていたし,SFマガジンの編集長としての存在感も大きかった。1976年に47歳の若さでなくなってしまったが,日本の主要なSF作家達との関係を壊してしまっていたので,十分な弔いもできなかった。


写真:古書として流通している日本SFシリーズのセット

P. S. 
日本SFシリーズ(ショートショートの…)によると,日本SFシリーズ初版の「百億の昼と千億の夜」には,編集ミスで元原稿からごっそり脱落している章があるようだ。どうりで話がつかめなかった。

P. P. S. 
・1969年02月号 (通巻117号) 覆面座談会『日本のSF '68~'69』
・1969年05月号 (通巻120号) 矢野徹『架空匿名座談会「SF界に新風よ吹け!」』
・1969年06月号 (通巻121号) 山野浩一『SF論壇 日本SFの原点と指向』
・1969年08月号 (通巻123号) 福島正実『それでは一応さようなら』
・1969年12月号 (通巻128号) 福島正実『特別日記』
・1970年01月号 (通巻129号) 豊田有恒『福島正実氏に答える』

[1]覆面座談会事件(しろくま日記)

2024年3月6日水曜日

世界SF全集(2)

世界SF全集(1)からの続き

第31巻から第35巻までは,短編のアンソロジーである。この第32巻「世界のSF現代篇」と第35巻「日本のSF現代篇」が当時の最も良質なSFの入門コースであった。

ダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」中編版も第32巻に収録されている。最初にこれで読んで吃驚した。映画化された「まごころを君に」もテレビで観た。日本で話題になって流行したのは初出の世界SF全集から20年以上経てからであった。

第34巻「日本のSF古典篇」の,海野十三久生十蘭(ひさおじゅうらん),夢野久作江戸川乱歩小酒井不木などは今では青空文庫で読むことができるようになった。稲垣足穂まではまだまだ時間がかかる。
31 世界のSF 古典篇 ◎21

第一部 危険な創造
 金剛石のレンズ(フィッツ・ジェイムズ・オブライエン)
 ロス・アミゴスの大失策(アーサー・コナン・ドイル)
 新加速剤(H・G・ウエルズ)
 万能図書館(クルト・ラスヴィッツ)
 フェセンデンの宇宙( エドモンド・ハミルトン)

第二部 空想の旅路
 霊の内なる難船(アンブロウズ・ビアス)
 オノレ・シュブラックの失踪(ギヨーム・アポリネール)
 火星の月のもとで(エドガー・ライス・バロウズ)
 龍(ドラゴン)の鏡(A・メリット)
 異次元の色彩(H・P・ラヴクラフト)
 四次元方程式(マイルズ・J・ブルウアー・M・D)
 宇宙の住人たち(レイモンド・Z・ガラン)
 混沌空間(クラーク・アシュトン・スミス)
 シャンブロウ(C・L・ムーア)
 火星のオデッセイ(スタンリイ・G・ワインボウム)

第三部 未来への予感
 メロンタ・タウタ(エドガー・アラン・ポー)
 来たるべき能力(エドワード・ベラミイ)
 2889年(ジュール・ヴエルヌ)
 赤死病(ジャック・ロンドン)
 ジョン・ジョーンズ基金(ハリイ・スティーヴン・キーラー)
 金星の人類(オラフ・ステープルドン)
 最終進化(ジョン・W・キャンベル・Jr)
 バビロンの水のほとりに(スティーヴン・ヴィンセント・ベネー)

第四部 諷刺の世界
 天空広告(ヴィリエ・ド・リラダン)
 戦争請負います(フランク・R・ストックトン)
 もう一つの世界(J・H・ロニー兄)
 人間の出現(ジョン・D・ベレズフォード)
 歩行者族の反乱(D・H・ケラー)

32 世界のSF 現代篇 ◎22

第一部 黄金の時代
 愛しのヘレン(レスター・デル・リィ)
 歪んだ家(ロバート・A・ハインライン)
 夜来たる(アイザック・アシモフ)
 トオンキイ(ヘンリー・カットナー)
 存在の環(P・スカイラー・ミラー)
 最初の接触(マレイ・ラインスター)
 クリスマス・プレゼント(ウィリアム・テン)
 ベティアンよ帰れ(クリス・ネヴィル)
 こわい(ジャック・フィニイ)
 野生の児(ポール・アンダースン)
 表面張力(ジェイムズ・ブリッシュ)
 悪夢の兄弟(アラン・E・ナース)
 母( フィリップ・ホセ・ファーマー)
 にせ者(フィリップ・K・ディック)
 壁の中(シオドア・R・コグスウェル)
 種の起源(キャサリン・マクリーン)
 冷たい方程式(トム・ゴドウィン)
 唯我論者(フレドリック・ブラウン)
 星(アーサー・C・クラーク)
 吹きわたる風(チャド・オリヴァー)
 危険の報酬(ロバート・シェクリイ)
 誰が人間にとってかわられる(ブライアン・W・オールディス)
 次元断層(リチャード・マティスン)
 アルジャーノンに花束を(ダニエル・キイス)
 交通戦争(フリッツ・ライバー)
 終着の浜辺(J・G・バラード)

33 世界のSF ソ連東欧篇 ◎23

第一部 ソ連
 宇宙翔けるもの(イワン・エフレーモフ)
 創造の第一日(ゲオルギー・グレーヴィッチ)
 宇宙船ポリュス号の船長(ワレンチン・ジュラヴリョーワ)
 人間の公式(アナトーリイ・ドニェプロフ)
 ベルン教授のめざめ(ウラジーミル・サフチェンコ)
 六本のマッチ(ストルガツキー兄弟)
 雪つぶて(M・エムツェフ&E・パルノフ)
 湾の主(セーベル・ガ+ンソフスキー)
 不可能の方程式(E・ヴォイスクンスキー&I・ルコジヤノフ)
 予備研究( イリヤ・ワルシャフスキ)

第二部 ポーランド
 事故(スタニスワフ・レム)
 絶対兵器(アンジェイ・チェホフスキ)
 最後の可能性(コンラド・フィアウコフスキ)
 クヴィン博士の治療法(ヤヌシュ・ザイデル)
 この世のふたつの果て(チェスワフ・チュルシチェフスキ)

第三部 チェコスロバキア
 飛ぶことのできた男(カレル・チャペック)
 クセーネミュンデの精薄児(ヨゼフ・ネスヴァドバ)
 炎の大陸(イワン・フォウストカ)
 ヴォラフカのセロリ(ヴァーツラフ・カイドシ)

第四部 ルーマニア
 魔術師(O・シュルパヌ)

第五部 ブルガリア
 コルネリウス教授の帰還(V・ライコフ)

34 日本のSF 古典篇◎24

十八時の音楽浴(海野十三)
地底獣国(久生十蘭)
兵隊の死(渡辺 温)
振動魔(海野十三)
特許多腕人間方式(海野十三)
髪切虫(夢野久作)
人間レコード(夢野久作)
卵(夢野久作)
鏡地獄(江戸川乱歩)
一千一秒物語(稲垣足穂)
似而非物語(稲垣足穂)
押絵と旅する男(江戸川乱歩)
恋愛曲線(小酒井不木)
人造人間(平林初之輔)
音波の殺人(野村胡堂)
覺海上人天狗になる事(谷崎潤一郎)

35 日本のSF 現代篇 ◎25

第一部 限りなき空間
宇宙救助隊2180年(光瀬 龍)
宇宙塵(高橋泰邦)
ハイウェイ惑星(石原藤夫)
耳鳴山由来(矢野 徹)
神への長い道(小松左京)

第二部 来たるべき明日
白い服の男(星 新一)
万国博がやってくる(眉村 卓)
ベトナム観光公社(筒井康隆)
世代革命(生島治郎)
二十一世紀の教養(谷川俊太郎)
機関車、草原に(河野典生)
イメージ冷凍業(都筑道生)
贅沢(北 杜夫)
意地悪爺さん(北 杜夫)

第三部 人間を越えて
落陽2217年(光瀬 龍)
傍のあいつ(手塚治虫)
合成美女(倉橋由美子)
砂上の影(久野四郎)
ブルドッグ(筒井康隆)

第四部 地球を侵すもの
収穫(半村 良)
悪夢のかたち(平井和正)
紙か髪か(小松左京)

第五部 時間と次元への旅
影が重なる時(小松左京)
ちがう(福島正実)
魔法つかいの夏(石川喬司)
パチャカマに落ちる陽(豊田有恒)

第六部 イマジネーション・その他の世界
人脳培養事件(佐野 洋)
待っている女(山川方夫)
鍵(星 新一)
逢いびき(石川喬司)
過去への電話(福島正実)
夜に別れを告げる夜(樹下太郎)
X電車で行こう(山野浩一)
空地(北 杜夫)
人魚伝(安部公房)

2024年3月5日火曜日

世界SF全集(1)

第26巻,オールディスバラードグレイベアド結晶世界が家の書棚に見つからない。

そういえば,このマンションに30年前に引っ越してから何度かの模様替えの際に,その巻が見あたらなかった記憶がうっすらと残っている。いったいどこに消えてしまったのだろう。

早川書房の世界SF全集は,1968年の10月から1971年8月までに渡って全35巻が刊行された。第1回配本は,第10巻ハックスリイオーウェルすばらしい新世界1984年であり,これを含めて全25巻を購入している。ほとんどは高校時代に買っていたが,古書として後に求めたものも一部ある。

これを整理していて気づいたこと。
(1) 第16巻:シオドア・スタージョンは「人間以上」だと思っていた。実際は,「夢見る宝石」と短編の「雷鳴と薔薇」だった。「人間以上」はハヤカワ文庫SFの方だ。
(2) 第27巻:安部公房は,「第四間氷期」と「人間そっくり」だけだと思っていたら,11篇の短編が含まれていた。
(3) 第28巻:星新一の「作品100」は,昔友達に貸したままになっていたのを,古書で買い直したもの。ここには,「白い服の男」も「」も含まれていなかった。

1 ヴェルヌ
 地底世界・海底二万リーグ

2 ウエルズ ◎1
 タイム・マシン・透明人間・宇宙戦争

3 ドイル
 ロスト・ワールド・毒ガス帯・マラコット海淵・物質分解機・地球の叫び

4 ガーンズバック/テイン
 ラルフ124C41+・ミュンヒハウゼン男爵の科学的冒険 / 鉄の星

5 ワイリイ/ライト ◎2
 闘士/時を克えて

6 ステープルドン/リュイス ◎3
 シリウス/沈黙の惑星より

7 スミス
 銀河パトロール・宇宙のスカイラーク

8 ベリャーエフ
 ドウエル教授の首・無への跳躍

9 エレンブルグ/チャペック ◎4
 トラストD・E/山椒魚戦争

10 ハックスリィ/オーウェル ◎5
 すばらしい新世界/1984年

11 ハミルトン/ラインスター
 時果つるところ/オペレーション外宇宙

12 ハインライン ◎6
 人形つかい・夏への扉

13 ブラッドベリ ◎7
 火星年代記・華氏四五一度

14 アシモフ
 宇宙気流・鋼鉄都市

15 クラーク ◎8
 幼年期の終り・海底牧場

16 スタージョン/ブラウン ◎9
 夢見る宝石・雷鳴と薔薇/火星人ゴーホーム・みみず天使

17 ヴォクト
 スラン・宇宙船ビーグル号

18 ベスター/ディック ◎10
 虎よ!、虎よ!/宇宙の眼

19 ウィンダム
 トリフィドの日・地衣騒動

20 シマック/ブリッシュ ◎11
 都市/地球人よ、故郷に還れ

21 ポール&コーンブルース/アンダースン/ファーマー ◎12
 宇宙商人/タイム・パトロール/恋人たち

22 エフレーモフ
 星の船・アンドロメダ星雲

23 レム ◎13
 砂漠の惑星・ソラリスの陽のもとに

24 ゴール/グロモワ/ストルガツキー ◎14
 クムビ/自己との決闘/神様はつらい

25 バルジャベル/フリック/フランケ ◎15
 荒廃/パーティナ/思考の網

26 オールディス/バラード ◎16?行方不明
 グレイベアド/結晶世界

27 安部公房 ◎17
 第四間氷期・人間そっくり・R62号の発明・赤い繭・闖入者・人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち・永久運動・魔法のチョーク・デンドロカカリヤ・詩人の生涯・完全映画(トータル・スコープ)・盲腸・鉛の卵

28 作品100 星 新一 ◎18
 ボッコちゃん・おーいでてこーい・症状・福の神・おみやげ・最初の説得・なぞの青年・鏡・暑さ・マネー・エイジ
 宇宙の男たち・ジャックと豆の木・豪華な生活・財産への道・こん・お地蔵さまのくれた熊・不景気・暗示・デラックスな拳銃・冬の蝶
 ハナ研究所・闇の目・オアシス・賢明な女性たち・ピーターパンの島・アフター・サービス・贈り主・情熱・謎の女・友を失った夜
 誘拐・おみやげを持って・貴重な研究・小さくて大きな事故・キツツキ計画・薄暗い星で・クリスマス・イブの出来事・調査・春の寓話・死の舞台
 肩の上の秘書・その夜・ひとつの装置・ねむりウサギ・変な薬・壁の穴・指導・羽衣・繁栄の花・古風な愛
 黒い棒・コビト・宇宙の英雄・ごきげん保険・サーカスの秘密・分工場・人間的・夢と対策・唯一の証人・箱
 スピード時代・幸運への作戦・品質改良・もたらされた文明・ゆきとどいた生活・危機・殺し屋ですのよ・華やかな三つの願い・そそっかしい相手・隊員たち
 恋がたき・災害・さまよう犬・人形・無料の電話機・追い越し・帰郷・妖精・反応・いじわるな星
 フィナーレ・狂的体質・災難・欲望の城・契約時代・雪の女・ネコ・午後の恐竜・にこやかな男・あるエリートたち
 依頼・善意の集積・語らい・けちな願い・あるノイローゼ・テレビシート加工・進歩・ガラスの花・あすは休日・臨終の薬

29 小松左京 ◎19
継ぐのは誰か?・果てしなき流れの果てに

30 筒井康隆/眉村 卓/光瀬 龍 ◎20
48億の妄想/幻影の構成/たそがれに還る
(続く)


写真:古書店で流通する世界SF全集


2024年3月4日月曜日

相対論的な速度の合成則

慣性系S $(ct,x,y,z)$ に対して,時刻 $t=t'=0$ で重なっている慣性系S' $(ct',x'y'z')$を考える。S'がSに対して$x$軸方向に速度$v$で等速直線運動している。このときガリレイ変換では,各座標成分は次式で結ばれる。
$\begin{cases} ct'= c t\\ x'= x - v t  \\ y'= y \\ z'= z \end{cases}$
ローレンツ変換では,$(ct')^2-x'^2-y'^2-z'^2 = (ct)^2-x^2-y^2-z^2$ となることから,
$\begin{cases} ct'= \gamma (c t - \beta x) \\ x'=\gamma (x - \beta ct)  \\ y'= y \\ z'= z \end{cases}$
である。ただし,$\beta = \dfrac{v}{c} , \ \ \gamma = \dfrac{1}{\sqrt{1-\beta^2}}$とする。

(1) 任意の方向のローレンツ変換

2つの慣性系に共通である座標系基本ベクトルを$\ (\bm{e}_x,\ \bm{e}_y,\ \bm{e}_z)\ $とすると,
それぞれの位置ベクトルは,$\bm{r}= x \bm{e}_x + y \bm{e}_y + z \bm{e}_z$と$\bm{r'}= x' \bm{e}_x + y' \bm{e}_y + z' \bm{e}_z$ で与えられる。そこで,ローレンツ変換の式をベクトルで表現すると次のようになる。
$\begin{cases} ct'= \gamma (c t - \beta \bm{e}_x\cdot\bm{r}) \\ \bm{e}_x \cdot \bm{r'} =\gamma ( \bm{e}_x \cdot \bm{r} - \beta ct) =\bm{e}_x \cdot \bm{r} + (\gamma-1)\bm{e}_x \cdot \bm{r}  - \gamma  \beta ct  \\ \bm{e}_y \cdot \bm{r'}=  \bm{e}_y \cdot \bm{r} \\ \bm{e}_z \cdot \bm{r'}=  \bm{e}_z \cdot \bm{r} \end{cases}$
空間成分の3式の各々に対応する成分の基本ベクトルを掛けて加えると次式となる。
$\begin{cases} ct'= \gamma (c t - \beta \bm{e}_x\cdot\bm{r}) \\ \bm{r'} = \bm{r}+(\gamma-1)\bm{e}_x \cdot \bm{r} \bm{e}_x- \gamma \beta ct  \bm{e}_x\end{cases}$
さらに,$ \beta \bm{e}_x = \bm{\beta}$として速度ベクトルを表現すると,$\bm{e}_x = \dfrac{\bm{\beta}}{\beta}$ であるから,
$\begin{cases} ct'= \gamma (c t - \bm{\beta} \cdot \bm{r}) \\ \bm{r'} = \bm{r}+\dfrac{\gamma-1}{\beta^2}\bigl( \bm{\beta} \cdot \bm{r} \bigr) \bm{\beta}- \gamma ct  \bm{\beta} =  \bm{r}+\dfrac{\gamma^2}{\gamma + 1}\bigl( \bm{\beta} \cdot \bm{r} \bigr) \bm{\beta}- \gamma ct  \bm{\beta}\end{cases}$

(2) ローレンツ変換における速度の合成則

S系とS'系とS"系を考える。S'系はS系に対して速度$\bm{v}$,S"系はS'系に対して速度
$\bm{u}$で運動している。$\bm{\beta}=\bm{v}/c,\ \gamma=1/\sqrt{1-\beta^2},\ \bm{\beta}'=\bm{u}/c,\ \gamma'=1/\sqrt{1-\beta'^2} $とする。

$\begin{cases} ct'= \gamma (c t - \bm{\beta} \cdot \bm{r}) \\ \bm{r'} = \bm{r}+\dfrac{\gamma-1}{\beta^2}\bigl( \bm{\beta} \cdot \bm{r} \bigr) \bm{\beta}- \gamma ct  \bm{\beta} =  \bm{r}+\dfrac{\gamma^2}{\gamma + 1}\bigl( \bm{\beta} \cdot \bm{r} \bigr) \bm{\beta}- \gamma ct  \bm{\beta}\end{cases}$
$\begin{cases} ct''= \gamma' (c t' - \bm{\beta'} \cdot \bm{r'}) \\ \bm{r''} = \bm{r'}+\dfrac{\gamma'-1}{\beta'^2}\bigl( \bm{\beta'} \cdot \bm{r'} \bigr) \bm{\beta'}- \gamma' ct'  \bm{\beta'} =  \bm{r'}+\dfrac{\gamma'^2}{\gamma' + 1}\bigl( \bm{\beta'} \cdot \bm{r'} \bigr) \bm{\beta'}- \gamma' ct'  \bm{\beta'}\end{cases}$
$ct''$に第1式と第2式を代入する。
$ct''= \gamma'  \gamma (c t - \bm{\beta} \cdot \bm{r})-\gamma' \bm{\beta'} \cdot \Bigl\{ \bm{r}+\dfrac{\gamma-1}{\beta^2}\bigl( \bm{\beta} \cdot \bm{r} \bigr) \bm{\beta}- \gamma ct  \bm{\beta}\Bigr\}$
$\quad =  \gamma'  \gamma (1 + \bm{\beta'}\cdot\bm{\beta} ) ct -\gamma'(\gamma\bm{\beta}+\bm{\beta'})\cdot \bm{r} - \dfrac{\gamma'(\gamma-1)}{\beta^2}(\bm{\beta'}\cdot \bm{\beta}) \bm{\beta}\cdot \bm{r}$
$\quad \equiv \gamma'' (c t - \bm{\beta''} \cdot \bm{r})$
これから,
$\begin{cases} \gamma''  = \gamma'  \gamma (1 + \bm{\beta'}\cdot\bm{\beta}) \\ \gamma'' \bm{\beta''} =  \gamma'(\gamma\bm{\beta}+\bm{\beta'})+ \dfrac{\gamma'(\gamma-1)}{\beta^2}(\bm{\beta'}\cdot \bm{\beta}) \bm{\beta} \end{cases}$
$\therefore \bm{\beta''} = \dfrac{1}{\gamma (1 + \bm{\beta'}\cdot\bm{\beta})}\Bigl\{ \bm{\beta'} + \gamma \bm{\beta} +  \dfrac{(\gamma-1)}{\beta^2}(\bm{\beta'}\cdot \bm{\beta}) \bm{\beta}  \Bigr\}$
$ \bm{\beta''}$ が合成された速度ベクトルを光速$c$で割った量となる。

(3) 1次元の場合の速度の合成則

上の式のベクトルの一方向成分だけを取り出して扱うと,
$\displaystyle \dfrac{w}{c}= \dfrac{1}{\gamma \Bigl(1+\dfrac{u v}{ c^2}\Bigr)} \Bigl\{ \dfrac{u}{c} + \gamma \dfrac{v}{c} + (\gamma-1) \dfrac{u}{c} \Bigr\} = \dfrac{u + v}{c \Bigl( 1 + \dfrac{u v}{c^2} \Bigl)} $

2024年3月3日日曜日

「自分の考え」(あるいは課題発見力の重要性)

デジタル化と「考える力」の喪失からの続き

MacBookAirのメモ大掃除シリーズ第2段である。これは2014年6月24日の夜のメモ。

「自分の考え」(あるいは課題発見力の重要性)
というのは「問いと答えのセット」のことであり,いかに適切な問いを立てそれに答えるか,が「自分の考え」の実体である。「自分の考え」は,問いにおいて,あるいは,答えにおいて,同じ世界を生きる他者のそれらと共通する部分を持っているだろう。人々に共通する問いに対して十分に納得のできる答えを用意すること,あるいは,人々が潜在的に感じていて言語化できなかった問いを発掘して磨き上げ,それに対して十分に推敲された適切な解答を提示しようとする態度が,人々の信頼や関心を集めることになる。

「会話」は,このような潜在的な問いと答え,あるいは,顕在的な問いと答えが編み込まれたストリームとして存在する。繰り返される問いと答えに感情の絵の具が塗られたタペストリーとしての会話。「自分が考える」ということは「問いと答えのセット」の往還を持続することであり,その適応範囲を拡げながら問いや答えの質を高めるためにも,他者との「問いと答えの交換」は不可欠なものである。

常に問いを準備せよ,常に答えを準備せよ,それは対話の中で次のステップへと歩みを進めることを可能にする。大学の将来像については,それを巡る問いと答えの膨大な集積の中に解決を探るしかない。しかし,自然現象とは異なり,社会的な制度として,人為的な境界条件の制約を課されていることから,問いは問いたりえず,答えは答えたりえない場合も少なからず存在している。あらかじめ答えが限定された問いを自らに強制され,あたかも自発的にその答えを発見したかのように擬制されるケースは列挙に事欠かない。

「問いと答えのセット」を既存の知識と論理の中で延長し拡大しようというのが哲学
「問いと答えのセット」を対象操作的な実験や観測により発見しようというのが科学
「問いと答えのセット」を主体と環境との相互作用の中で現しようというのが芸術
言語化されない「自分の考え」=「問いと答えのセット」も世界には存在している

言語で表現された「問いと答え」からは捨象されて見えるかもしれないが,すべての問いと答えには,その問いや答えが発せられた時空(世界)における,時間(歴史)と空間(構造)と情報(主体)のラベルが貼られているのであって,それによって問いの意味も文脈も相互作用もすべてが規定されてくることになる。

従来であればマスコミや知的権威などの,あるいは最近であればインターネットメディアで増幅された「他者」によって発せられる仮想の問いと仮想の答えに毎日さらされている私たちは自らの問いと答えを作り出す力が衰えている。「他者」の問いに「他者」が答えることを学ぶ(まねする)。
一箇所修正した。芸術の定義は,「実現」となっていたが「表現」の方が適切だ。最後は尻切れトンボで終っている。課題発見力というのが問いを立てる力だということかな。

2024年3月2日土曜日

デジタル化と「考える力」の喪失

MacBookAirのメモを整理し始めた。もっと暖かくなったら,本の整理も始めよう。

この過程で,古くなったテキスト断片を貼り付けてみる。以下は2013年5月5日のもの。

手書き(アナログ)かタイプ(デジタル)かというのは本質ではない。
一方で,思考過程における身体性の意味を押さえる必要がある。
「身体化された心の人類学的解明」

ウェブやスマホのSNSに没入して,他者の言葉の断片とその連鎖の中を漂うとき,自分は他者の言葉で考えている。それらをなぞることで,疑似的に「自分」の考えを紡いでいる。いや,「自分で考える」ということも,本質的にはこれと替わらないのかもしれない。既存の言葉と概念を材料として,自分で積み木を組み上げる作業が「考える」ということ。DNAプールから長い年月をかけて「試行」を繰返し,その環境や相互作用の中で最適化を進めるプロセスと類似している「思考」の過程。言葉と概念の並び替えと繋ぎ替えが,考えることの本質だとするとき,デジタル化は何を奪うことになるのだろうか。言葉と概念のストックを自分の脳の中から,インターネット空間に拡大し,リンクの作業を既存のリンクで代替する。「本を読む」ことや「論文を読む」ことは,他人の思考過程を追試することであった。それは「自分で考える」ための練習でもあったわけだが,そのような完成した思考過程の成果の学習ではなく,思考のためのトレーニングあるいは非トレーニングがデジタル化された情報空間で展開される。アナログ情報空間とデジタル情報空間の差異は何か。我々はどの空間に生息しているのか。重なり合う2つの宇宙の狭間で,乗り移りを図る知性体のありようは,小松左京のSF短編で示された,宇宙からの脱出の実体を表現しているのかもしれない

言葉を紡ぐ,音を紡ぐ,色と形を紡ぐ,論理を紡ぐ,身体運動を紡ぐ,すべてが考えるということであり,そこに,身体性が・・・
まだ,孫の紡木くんが生まれる前だ。多分,引用されている「身体化された心の人類学的解明」にインスパイアされて考えたことをメモしたもの。もちろん生成AI登場以前だ。表題についての考えはこれっぽっちも進んでいないのだ。

2024年3月1日金曜日

1.58ビット

大規模言語モデルの新しい論文が話題になっている。


深層学習の計算には膨大な量のニューラルネットの係数行列の演算が必要だが,時間がかかるのは行列の積の計算である。ところで,その係数を64bit実数値ではなく,{-1,0,1}の3値で置き換えてしまうというのが,BitNet 1bit大規模言語モデルの発想だ。これにより,行列における積の計算が和の計算に置き換わってしまう。

果たして,そんなことがうまくいくのかと思うのだけれど,これを実際にやってのけたのが上の論文であり,その概要は次のようになっている。
BitNetのような最近の研究は、1ビット大規模言語モデル(LLM)の新しい時代への道を開いている。この研究では、1ビットLLMのバリエーションであるBitNet b1.58を紹介する。BitNet b1.58では、LLMのすべてのパラメータ(重み)が3値{-1, 0, 1}である。このLLMは、同じモデルサイズと同じ学習トークンを持つ全精度(FP16またはBF16)Transformer LLMとパープレキシティとエンドタスクパフォーマンスの両面で一致し、レイテンシ、メモリ、スループット、エネルギー消費の点で大幅にコスト効率が高い。さらに深いことに、1.58ビットLLMは、高性能でコスト効率に優れた新世代のLLMを訓練するための新しいスケーリング則とレシピを定義している。さらに、新しい計算パラダイムを可能にし、1ビットLLMに最適化された特定のハードウェアを設計するための扉を開く。

もし,これが本当ならば,現在のNVIDIAのGPU ブームは一過性のモノになってしまうかもしれない。LLMには新しいアーキテクチャの半導体チップが必要になるのだから。

なお,1.58bit は {-1,0,1}の3値の情報量,$\log_2 3 = \dfrac{\log 3}{\log 2} = 1.58...$ から来ている。

[1]驚異の1ビットLLMを試す。果たして本当に学習できるのか?(shi3z)

2024年2月29日木曜日

赤ちゃんコンピュータ

スマートキャップからの続き

日本でも小学生はGIGAスクール構想で,普段からコンピュータを使う環境が与えられることになった。そうなると,こどもたちがウェラブルコンピュータを使うようになる日も近い。まあ電脳コイルではすでに予言済みだ。

ではその下限年齢はどこまで行くのか?赤ちゃんがゴーグルをするわけにはいかない。老人が,Apple Watchで心拍数や不整脈の検知をするように,赤ちゃんのバイタル情報で健康管理というのはありえなくはない。その場合は,おむつや肌着のセンサーと連動させるのだろうか。

赤ちゃんがハイハイをして立ち上がりだして,喃語を発する頃には,スマートベビーサークルで活動ログをとり,これをAIで分析するというようなこともできそうだ。お金持ちはベビーシッターを雇うことになるので,普通の保育所での異常検知サポート用システムのほうがリアリティがあるかもしれない。

こんな想像は,開発途上国には縁のない,"先進国"のお遊びにすぎないものだろうか。

Q(自分):赤ちゃんや幼児がウェラブルデバイスを身に付けて,健康情報の取得や,成長支援等に使うような時代はくるでしょうか。

A(Gemini):はい、将来的には、赤ちゃんや幼児がウェアラブルデバイスを身に付けて、健康情報の取得や成長支援に活用する時代が到来する可能性が高いです。以下、その可能性について詳しく考察するとともに、具体的なユースケースや課題についてご紹介します。

1. 健康情報の取得

体温、心拍数、呼吸数、睡眠状態などの生体情報をリアルタイムでモニタリング
収集したデータを分析することで、病気の早期発見・早期治療に役立てる
発熱や脱水症状などの異常を早期に検知し、保護者に通知
アレルギー症状の出現を予測し、予防措置を講

2. 成長支援

運動量や睡眠時間の記録
発達段階に合わせた育児アドバイスの提供
乳児の泣き声の分析によるニーズの推測
親子間のコミュニケーション促進

3. 具体的なユースケース

スマートおむつ:おむつ濡れ検知だけでなく、体温や皮膚の状態もモニタリング
ベビー服に内蔵されたセンサー:体の動きを記録し、発育状況を分析
スマートおもちゃ:遊びを通して、赤ちゃんの知育を促進

4. 課題

デバイスの小型化、軽量化、安全性
プライバシー保護
データの正確性
ユーザーインターフェースの開発

5. 技術開発の進展

近年、ウェアラブルデバイスの技術は目覚ましい進歩を遂げており、小型化、軽量化、高機能化が進んでいます。また、センサー技術や人工知能(AI)技術の発展により、より精度の高いデータ収集と分析が可能になりつつあります。

6. 社会的な受容

将来的には、これらの技術開発の進展と社会的な受容が進み、赤ちゃんや幼児向けのウェアラブルデバイスが広く普及していく可能性があります。

7. まとめ

赤ちゃんや幼児向けのウェアラブルデバイスは、健康情報の取得や成長支援など、様々な可能性を秘めています。課題を克服し、技術開発と社会的な受容が進めば、将来的な育児のあり方を変える革新的なツールとなる可能性を秘めています。

写真:赤ちゃんがセンサーをつけるときのイメージ(Natureから引用[1])

写真の話は,直接関係ない件なのだけど,斜め右上で近い話なのかもしれない。

[1] This AI learnt language by seeing the world through a baby’s eyes(Nature)

2024年2月28日水曜日

束縛力のする仕事

束縛された質点の運動において,その進行方向と垂直な抗力(束縛力)が働いているとき,位置ベクトル$\bm{r}$にある質点に対して,束縛力$\bm{F}_R$がする仕事$W$はゼロになる。これは,$\displaystyle W=\int \bm{F}_{R}\cdot dr = 0\ $からくる。


図:束縛運動をするバネで結ばれた2質点系とその重心

上図のように,2つの質点がバネで結ばれ互いに内力を及ぼしている系を考える。それぞれの質点は原点を通る2本の直線上を運動するように束縛されている。2つの質点の質量が等しく,初期位置として原点から等距離に静止していたとする。このときのバネの長さが自然長より短ければ,$x$軸方向に弾性力(斥力)が働く。この斥力(内力)の直線方向の成分によって,質点は$y$軸正方向の運動成分を持つことになる。

一方,束縛された質点が直線方向に運動するのは,各質点に働く束縛力(外力)とバネの弾性力(内力)の合力が直線方向を向くからである(摩擦力はないとする)。ところで,この外力(束縛力)は,質点の移動において仕事をすることはない。仕事をするのは,内力(バネの弾性力)である。

この系における質点の重心の運動を考えてみる。重心の運動には系の内力(弾性力)は寄与せず,外力の和だけが運動を決定する。ところで,先ほど見たように外力(束縛力)は仕事をしないはずだ。それにもかかわらず重心は$y$軸方向に運動し,運動エネルギーを持つことになる。これはなぜかというのが,よく問われる定番の問題だ。

外力と内力が働く質点系の運動方程式は次のようになる。
$\displaystyle m_i \dfrac{d^2 \bm{r}_i}{dt^2} = \bm{F}^{ex}_i + \sum_{j=1}^{N} \bm{F}^{in}_{ji} \quad (i = 1 \cdots N)$
すべての粒子に対して加えると,内力が作用反作用の法則から打ち消しあうので,重心座標($\bm{r}_G = (1/M) \sum_{i=1}^N \bm{r}_i, \quad M=\sum_{i=1}^N m_i$)と相対座標($\bm{\tilde{r}}_i = \bm{r}_i -\bm{r}_G$)に対する運動方程式が得られる。
$\displaystyle M \dfrac{d^2 \bm{r}_G}{dt^2} = \sum_{i=1}^N \bm{F}^{ex}_i = \bm{F}^{ex}$,$\displaystyle m_i \dfrac{d^2 \bm{\tilde{r}}_i }{dt^2} = \bm{F}_i^{ex} +\sum_{j=1}^N\Bigl( -\dfrac{m_i}{M} \bm{F}_j^{ex} + \bm{F}_{ji}^{in} \Bigr)\ \  (i = 1 \cdots N)$
それぞれの式の両辺に,重心の速度や相対速度をかけて積分することによって,運動エネルギー(全体は$T$,重心運動は$T_G$,相対運動は$\tilde{T}$)の変化と仕事$W$の関係を表わす式(エネルギー保存則につながるもの)が得られる。

$ \displaystyle T(t_2)-T(t_1)= \sum_{i=1}^N \int_{t_1}^{t_2} \bm{F}_i^{ex}\cdot \dfrac{d\bm{r}_i}{dt} dt + \sum_{i=1}^N \sum_{j=1}^N  \int_{t_1}^{t_2} \bm{F}_{ij}^{in} \cdot \dfrac{d\bm{r}_i}{dt} dt $
$\displaystyle \hspace{2.5cm} = \sum_{i=1}^N W_i^{ex}(t_1 \rightarrow t_2) + \sum_{i=1}^N \sum_{j=1}^N W_{ij}^{in}(t_1 \rightarrow t_2)$
$\displaystyle \hspace{2.5cm} = W^{ex}(t_1 \rightarrow t_2) + W^{in}(t_1 \rightarrow t_2)  $
$ \displaystyle T_G(t_2)-T_G(t_1)  = \int_{t_1}^{t2}\bm{F}^{ex}\cdot \dfrac{d \bm{r}_G}{dt} dt = \overline{W}_G(t_1 \rightarrow t_2) $
$ \displaystyle \tilde{T}(t_2)-\tilde{T}(t_1) = W^{ex}(t_1 \rightarrow t_2) - \overline{W}_G(t_1 \rightarrow t_2) + W^{in}(t_1 \rightarrow t_2)$ 

ここで,$\overline{W}_G^{ex} =  \sum_{i=1}^N \sum_{j=1}^N \dfrac{m_i}{M} \bm{F}_{j}^{ex} \cdot \dfrac{d\bm{r}_i}{dt} dt$ は外力に由来しているが,各要素に分解してみると仕事の形はしておらず(作用する外力と座標の番号は等しくない$\ i \neq j\ $の$\ \bm{F}_{j}^{ex} \cdot d\bm{r}_i\ $が含まれる),このため擬仕事(pseudo work)とよばれることがある。

これらの式を今の問題に当てはめるとどうなるか。束縛力(外力)の和は,重心に対して仕事$\overline{W}_G^{ex}$をする。しかし,束縛力(外力)によって各粒子がなされる仕事の和$W^{ex}$は0である。重心の運動エネルギーの増加に寄与するのは,$W^{ex}$ではなく,$\overline{W}_G^{ex}$であり,これは必ずしもゼロにならないのだ。$\overline{W}_G^{ex} =\dfrac{1}{2} \Bigl( \int  \bm{F}_1^{ex}\cdot d\bm{r}_2 + \int \bm{F}_2^{ex}\cdot d\bm{r}_1 \Bigr)$

問題の設定では,束縛条件から,外力(束縛力)と内力(弾性力)の間に条件式が課されるため,外力を内力によって表すことができる。これによって,擬仕事を内力の仕事の形で表せるのだが,一般的には重心の運動エネルギーの増加を各粒子に対する内力による仕事だけで表すことはできない。

2024年2月27日火曜日

人民の敵

今日,YouTubeのお奨めに現れたのは,外山恒一のチャンネル「人民の敵」だった。

外山恒一のYouTubeというと,我々団ものがあったはずだ。今回のはプロの手が入ったのか,標準的できれいな仕上げになっておりたいへん見やすい。

2007年春の東京都知事選における外山恒一の政見放送は生テレビで見て,いたく感動したのを覚えている。これまでも,東郷健とかありましたが,外山のそれは群を抜いた仕上がりだった。彼の新しいYouTubeチャンネルではその制作裏話を聞くことができた。

(1) あの原稿は,外山が最初に鹿児島県隼人町議会議員選挙に立候補したときに原付街宣用に制作したもので,ほとんどその内容が都知事選で使われることになった。
(2) 都知事選でその原稿を政見放送に使うということは,当初は考えていなかったが後で思いついたことだった。
(3) 原稿の読み方は,カラオケボックスで一文一文周到に吟味しながら,もっとも笑える表現をつなぎあわせたものだった。ものすごい回数練習している。
(4) 政見放送の収録は,NHKと民放1社(2007年はテレビ朝日)の2つ行われ,それぞれ放送される。NHKバージョンとテレビ朝日バージョンは微妙に違うところがある。
(5) 両バージョンの前に東京で行った選挙出馬を模索する集会で試行版のVHSビデオを放映している。それによってようやく供託金の目処がつき始めた。
(6) 政見放送のインパクトは大きかったが,これによって彼の狙っていた対話が拡がることはなかった。ミーハーが集まっただけ。しかし後の教養強化合宿には繋がっていく。

久しぶりに,教養強化合宿の募集案内を眺めていた。過去の学生さん達の体験記が沢山掲載されていて,それらを眺めているとなんだか懐かしい気持ちになってくる。9泊10日正味8日×8時間=64時間講義(+2-3時間/日のメディア視聴)のテキストは,外山恒一『マルクス主義入門』,立花隆の『中核vs革マル』(上),笠井潔の『ユートピアの冒険』,絓秀実の『1968年』である。

外山恒一の政見放送におけるあのような表現が公共の電波に乗せられることが,日本の民主主義の健全性の現れだという言説がよくみられる。ファシストを自称する外山恒一にいわせれば,それはまったく逆だ。今や,日本では選挙制度の中(内側)でしか自由な言論や表現は保障されていない。日常的な活動においてある特定の組織がちょっとビラ撒きをしただけで,選択的に検挙される時代だ。もちろん選挙演説で外からやじるだけでも警察権力によって排除されてしまうのだ。

2024年2月26日月曜日

スフイアハンドブック

2024年2月26日,二・二六事件から88年。NHKはサブチャンネルも活用して国会中継をもっと放送すべきだとかぶつくさいいながら,朝9:00からNHKの国会中継が始まるとすぐテレビを消してしまう悪子の老人だ。

今日の衆議院予算委員会の国会中継のトップバッターが石破茂で,久しぶりにまともに聞こえる質疑が行われていたので思わず見入ってしまった。農林族なので食糧安保について聞いているのかな。哲学系ユーチューバ−のじゅんちゃんが笑いながら期待していたような,いわゆる裏金問題について,政治資金規正法の本義に基づいての言及などはもちろんなかった。

石破茂が,二・二六事件の蘊蓄を語った次に話したのは,避難所の在り方の話である。その説明で,スフィアハンドブックを持ち出していた。スフィアのホームページには次のようにその概要が示されていた。
スフィア運動は1997年、災害対応における人道的活動の質の向上を目指す人道専門家のグループによって始まった。この目標を念頭に、彼らは人道憲章を策定し、人道的対応に適用すべき一連の人道基準を特定した。

当初は赤十字・赤新月運動とともに非政府組織によって策定されたスフィアの基準は、国内外の NGO、ボランティア、国連機関、政府、ドナー、民間セクター、その他多くの人々にとって、主要な参照ツールとなった。今日、スフィアは、人道支援の質と説明責任を向上させるために、実務者を集め、力を与える世界的なコミュニティとなっている。

スフィアの主要出版物である「スフィアハンドブック」は、人道的対応における共通原則と普遍的な最低基準のセットとして、最も広く知られ、国際的に認知されているもののひとつである。


図:スフィアハンドブック2018日本語版の表紙

2024年2月25日日曜日

博士人材と女性理工系人材

2024年2月20日に経団連が,「博士人材と女性理工系人材の育成・活躍に向けた提言」を公表した。

ネット上では,いまさら,おまゆう,どのくちが,とブーイングであふれていた。まあそうなるわね。Claudeに概要版を要約させると次の通りである。つまらない。味も素っ気も反省もない。
この文書は、経団連が2024年2月に公表した「博士人材と女性理工系人材の育成・活躍に向けた提言」の概要版です。主な内容は以下の通りです。 
・博士人材の育成・活躍について、日本の現状は諸外国に比べて遅れていることが指摘されている。産学官が連携・協働して取り組む必要がある。
・企業が博士人材に求めるのは、高度な専門性に加え、課題解決能力や主体性などの高度な汎用的能力である。しかし企業の博士人材への採用意欲は必ずしも高くない。
・女性理工系人材の裾野拡大も重要課題である。今後5年での採用拡大する企業が6割を超える。
博士人材、女性理工系人材の育成・活躍には、産学官それぞれの取組が不可欠である。経団連として今後も教育改革の議論を深めていく。

 ただその提言の元になった経団連による調査はそれなりに面白い情報が含まれている。「博士人材と女性理工系人材の育成・活躍に関するアンケート結果」の調査対象は経団連の関係委員会所属企業441社であり,123社が回答している。バイアス高目かもしれない。従業員規模5000人以上が6割弱,1000〜5000人が3割で,製造業と非製造業が半々だ。

博士人材,文系修士人材などへの採用意欲は依然としてあまり強くないが,女性理工系人材については一定の採用拡大の傾向が見られた。博士人材等が選択可能なキャリアパスの事例や企業が大学と連携して取り組んでいる大学院教育プログラムの事例紹介が紹介されているところは評価できる。

2024年2月24日土曜日

東京株式市場

2024年2月21日,東京株式市場で日経平均株価が 39,098.68円(終値)となって,1989年12月29日に記録したこれまでの最高値 38,915.87円(終値) を34年ぶりに更新した。翌日の日経朝刊の一面はたいへん興奮した紙面になっていた。

さっそく,Geminiにおうかがいをたててみた(太字はGemini自身による強調部分)。

Q(koshi):東京株式市場での株価指標が最高値を記録しましたが,同じ期間で他国では株価指標が数倍から十数倍になっています。現在の日本の経済は必ずしも社会の全ての階層にとってプラスの方向にあるとはみえません。今後の日本社会はどのようになるでしょうか。

A(Gemini):東京株式市場の株価指標が最高値を更新している一方で、他国の株価指標との比較で、日本の経済状況が必ずしも全ての階層にとってプラスの方向にあるとは言い切れない状況ですね。確かに、一部の指標は過去最高値を更新していますが、日本社会全体が豊かになっているとは言い難い現状は、多くの方が感じていることでしょう。

 今後、日本社会がどのように変化していくのか、いくつかの観点から考察してみましょう。

 1. 人口減少と高齢化社会

 日本は世界でもトップクラスの人口減少と高齢化社会に直面しており、労働力人口の減少は経済成長の大きな阻害要因となります。このまま何も対策を講じなければ、社会保障制度の崩壊や経済の停滞など、様々な問題が発生する可能性が高いです。

 2. イノベーションの加速

 一方、AIやロボットなどの技術革新は、労働力不足を補うだけでなく、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性を秘めています。これらの技術を積極的に活用することで、日本の経済活性化に繋がる可能性があります。

 3. 格差拡大

 近年、日本社会では所得格差や富の格差が拡大しており、社会の不安定化を招く懸念があります。格差拡大を抑制するためには、教育や社会保障制度の改革など、様々な取り組みが必要となります。

 4. グローバル化

 グローバル化が進む現代において、日本は国際社会における競争力を強化していく必要があります。そのためには、規制緩和や外国企業の誘致など、経済活性化に向けた政策が必要となります。

 5. 地方創生

 人口減少が進む地方では、地域経済の活性化が喫緊の課題となっています。地方創生に向けた取り組みとしては、観光業の振興や新規事業の創出などが挙げられます。

 これらの課題を克服し、持続可能な社会を実現するためには、政府、企業、そして国民が一体となって取り組んでいくことが必要不可欠です。

 今後の日本社会は、様々な課題を乗り越え、より良い方向へ変化していく可能性を秘めています。

 以下、いくつかの可能性を挙げます。

・AIやロボットなどの技術革新により、労働力不足を補い、経済成長を実現する。
・格差拡大を抑制し、全ての人が豊かさを享受できる社会を目指す。
・国際社会における競争力を強化し、世界に貢献する国となる。
・地方創生により、地方と都市の格差を縮小し、活気ある地域社会を実現する。
 これらの課題は決して簡単ではありませんが、解決に向けて努力することで、より良い未来を築くことが可能となるでしょう。

 未来は私たちの手で創り出すものです。

 一人一人が積極的に社会に関心を持ち、行動していくことが、日本社会の未来を形作る重要な鍵となるのです。

昔,眉村卓の短編SFで,インチキ未来予測師の話があったような気がする。本棚を探しても見つからない。未来が予測できますという触れ込みで,核戦争で世界が終るというニセビデオを見せる商売をしているうちに,社会全体にその意識が浸透してしまい,本物の核戦争が到来しそうになるというものだ。もしかすると著者名も概要も若干?間違っているかもしれないのだが,自分の記憶の中ではそのように格納されている。

なにをいいたいかというと,上のGeminiの回答における太字の調子がそれを想起させてしまったということ。みんながAIに頼るようになると,自分たちの無意識の集合が危険なフィードバックループを作ってしまうかもしれないということ。テレビや週刊誌などのマスメディアやSNSなどのネットメディアだってそれに負けない作用をしているのだろうが,必ずしも具体的で十分な検証はされていないような気がする。

2024年2月23日金曜日

お水おくり

東大寺修二会からの続き

東大寺二月堂修二会のお水取りは3月12日の深夜に行われる。二月堂前の若狭井(閼伽井)という井戸から観音菩薩にお供えする「お香水」を汲み上げる儀式である。

この「お香水」は若狭国から10日かけて地下を通って若狭井へ届くという伝説がある。福井県小浜市の若狭神宮寺では毎年3月2日に若狭井へ水を送る「お水おくり」の神事が行われている。

若狭井というのは聞いたことがあったけれど,小浜で「お水おくり」しているというところまで考えが及ばなかった。写真をみるとばかなり本格的な神事が行われていた。


写真:3月2日に行われる「お水おくり」(おばまナビから引用)

[1]「若狭井」から香水をくみ二月堂本尊にお供え(読売新聞オンライン)
[2]二月堂の謎の井戸「若狭井」(東大寺・御朱印)
[3]お水おくり(おばまナビ)

2024年2月22日木曜日

東大寺修二会

工場跡事務室からの続き

工場跡事務室の前の道路をそのまま東にまっすぐ進むと,奈良公園管理事務所を左手に見ながら,東大寺の大仏殿の裏を通り過ぎて,東大寺の二月堂まで十分弱で到着する。石畳の階段をたらたらと上ると二月堂の入り口だ。


写真:修二会(お水取り)のお松明(撮影 2024.02.18)

入り口の前の広場には,3月1日から始まる修二会で使われるお松明の長い竹が並べられていた。寄進者の名前などが書かれている。二月堂の階段を上がると,ニュースでよくみる練行衆がお松明を持って走り回る回廊に至る。東大寺の修二会は,お水取りの3月12日ではない平日に一度だけ見に来たことがあった。冷え込んだ夜だったような気がするが,今日は暖かい。

帰宅してテレビをつけると,東大寺修二会の油量りの行事のニュースがあった。修業中にともす燈油を計量する行事だ。3つの桶に合計63Lの専用の油が量り取られていたけれど,お松明の火もこれで点火するのだろうか。この燈油を納めているのが,愛知県岡崎市の太田油脂株式会社で,宮内庁・伊勢神宮・東大寺御用達,日本の灯り お灯明油「和灯(わあかり)」というものらしい。過去の写真では一斗缶5缶(72L)が並べられていた

お松明に使われる竹は京田辺市の講社などから納められる。その真竹は長さ7m,太さ10cm,重さ40kg程度である。毎日10本,3月12日だけ11本使われる。ChatGPTやGeminiに尋ねてみても正しい答えは得られない。

[2]<お水取り>「お松明」用 二月堂へ直進(読売新聞オンライン)
[3]修二会(東大寺二月堂お水取り)(奈良観光通信)
[4]東大寺二月堂のお水取り、修二会(しゅにえ)(東京木材問屋協同組合)



2024年2月21日水曜日

工場跡事務室

このあたりの梅の名所はどこかしらとGeminiに聞くと,一番に出てきたのが片岡梅林(奈良市高畑町1149)だった。Google mapで確認すると,奈良公園の浮御堂の隣である。早速向かった。人類はますますコンピュータに支配されつつある。知識も行動も感情も戦争も。

片岡梅林は梅の香りがして,白梅,白梅,紅梅,白梅とまばらに花盛りだった。さらに歩くと奈良国立博物館の裏手の仏教美術資料研究センターの横を抜けて東大寺の参道入口までやってくる。ここまでくるとあたりは冬枯れの鹿と外人観光客でいっぱいだ。鹿のフンを掃除してくれているおばさんと,中国語のピンポンの中をかき分けて南大門をくぐり,右に曲がり丘を越えて左に曲がると,喫茶スペース工場跡事務室に到着した。

普段はあまり営業していないらしいが,無事にそこで昼食にありつけることになった。乳酸菌飲料のフトルミンの製造や,食料菌類の研究をしていた工場が製造を中止して30年後,今から15年ほど前に工場跡のカフェとしてオープンしたものだ。外観は今にも壊れそうな昔ながらの古びた建物である。

奈良市の登録有形文化財喜多家住宅(主屋・蔵・離れ)と旧長壽會細菌研究所(工場・製品庫)から成り立っている。大正末期から昭和初期に立てられた建物だ。主家の方はモダンなデザインの洋館だが公開していないのかもしれない。


写真:喫茶スペース工場跡事務室立ち入り禁止区画