2021年11月30日火曜日

防災省

 NHK午前の「みみより暮らし解説」で,富士山噴火における火山灰被害が取り上げられていた。首都圏の人にとっては非常に重要なテーマだ。調べてみると,NHKではしばらく前から,富士山噴火のリスクについての番組が多くなっている。どんな意図なのかわからないが(改憲時の緊急事態条項がらみか)キャンペーンを繰り広げている。

2001年の中央省庁再編の際に,運輸省,建設省,北海道開発庁,国土庁が統合して国土交通省ができたが,このときに国土庁にあった防災局が内閣府に移管されている。その内閣府の防災情報の火山対策のページの中に,2020年3月まで設けられていた大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループの資料がある。

これによれば,風向きにもよるが首都圏では最大10cmの降灰が数日でおこる。桜島の近くの鹿児島市の場合でもここ10年間の1月あたりの最大値が1650g/m^2なので(火山灰の平均密度を1g/cm^3として)高々1 mmの降灰である。その100倍のオーダーの火山灰が首都圏の4000万人に降りかかることになる。

その結果,(1) 電力網の漏電,(2) 火力発電所のエアフィルタ詰まり,(3) 上水道の汚染,(4) 下水道の詰まり,(5) 電車・列車運行の停止,(6) 自動車交通の渋滞・停止,(7) 航空機の停止,(8) 呼吸器などへの健康被害,(9) 火山性ガスによる金属腐食 などなど,社会生活への致命的ダメージが懸念される。沖縄などの軽石被害もたいへんだが,その比ではない。

どう考えても,防衛省の5兆や6兆の防衛費は,災害防衛費(感染症対策含む)に統合(組織も含めて)したほうが,日本の国土とそこに住む人々を守るにふさわしいような気がして,防災省で検索したところ,関西広域連合や石破茂によってそんな話題がすでに出ているのだった。


写真:1707年の宝永噴火絵図(NHK 富士山噴火降灰シミュレーションから引用)

2021年11月29日月曜日

スマートヘルメット

NHKスペシャル「中国新世紀(3)実験都市深圳 メイドインチャイナの行方」を見た。流通用AIロボットの会社である,Dorabot(ドラえもんにインスパイアされている)もすごかったけれど,びっくりしたのはスマートヘルメットだった。

スマートフォンの次に来る新しいイノベーションツールは何かとずっと考えていた。時代はズレるがストリンガーに潰されたSONYの旧AIBO(1999-2005)や,電脳コイル(2007)の電脳メガネが実体化したようなGoogleグラス(2013-2015)はその候補だった。けれど,いまだに登場していない。

いや,ドローンバーチャルリアリティヘッドセットのように,それは既に登場しているのかもしれない。しかし,スマートウォッチは,それだけでは完結しないものなので違うような気がする。やはり,スマートフォンを代替する単一のウェラブルデバイスが必要だ。

視覚や聴覚へのアクセスと常時身に付けられるという条件で思い浮かんだのが帽子である。スマートキャップ ,これならば常時装着することが可能だ。バイザーのところを工夫すればディスプレイにもなるし,将来的には脳インターフェースをとることもできる。

表面に可塑性を持つ太陽電池をコートすれば,充電もより容易になる。計算すると太陽定数から数Wというオーダーになったが,晴れた日に外にいる時間は短いだろうから現実的ではなかった。そもそも事故の時のスマートキャップのバッテリー破損の問題をクリアするほうが大変だろうか。それはスマートフォンでも同じか。

そんなところに,スマートヘルメットがでてきたので,先を越されたかと思った次第。紹介されていた自転車用のものはたいした機能はなかったが,バイク用は,日本製のCROSS HELMETもオーストラリア製のForciteも,それなりのポテンシャルを秘めているように見える。ヘッドアップディスプレイには,速度やルート,さらには後方の映像などの補助情報を準視線上に投影でき,外音取り込み可能なインナーイアーヘッドセットも使える。


写真:NSウェスト&SHOEIのスマートヘルメット(NSウェスト株式会社から引用)

2021年11月28日日曜日

中村歌右衛門

人間国宝の歌舞伎の中村歌右衛門(六代目:1917-2001)といえば,文化勲章受章者でもあり女形の最高峰として過去の映像をみるくらいなのだが,初代の中村歌右衛門(1714-1791)は,医師の子として金沢に生まれた。そんなわけで,屋号は加賀屋だったのが,四代目のときに成駒屋にかえている。

その初代中村歌右衛門の墓所が金沢にある。知りませんでした。東山寺院群の一角にある日蓮宗の真成寺(しんじょうじ)は,鬼子母神が祀られていることで有名とのこと。寺町寺院群にも浄土真宗の寺はなかったが,このあたりもそうなのか。


写真:金沢東山の真成寺(@19960912_maruさんのtwitterから引用)

2021年11月27日土曜日

21世紀への旅行

1960年代前半,自分が子供のころは日本の高度経済成長の時代と重なっていて,未来への夢や希望が色濃く感じられたものだ。やがて,万博が終わりオイルショックや不況を迎える1970年代にはその反動からか「モーレツからビューティフルへ」というCMが流れ,地球の寒冷化が話題になる短調の時代だった。

1962年(小学校3年のころ)に刊行された読売新聞科学報道本部と手塚治虫による「21世紀への旅行」は,鉄腕アトムのノンフィクション版のような趣があって,むさぼるように読んだものだ。

リアルな社会予想に基づく未来の世界のイメージは,小学館の科学図説シリーズの「未来の世界」でも読むことができた。まあ,台風の進路をコントロールするとか,原爆で運河を掘るとか,ベーリング海峡をつないでダムにするというたいそうな話も満載。

その科学図説シリーズは,ちょっと大人びたデザインで文字による情報量の多い図鑑であり,これも何冊か買ってもらって愛読した。たぶん太字のものは持っていたはずだがこの記憶にも若干微妙なところがある。

1) 動物の世界 (科学図説シリーズ ; 1) / 高島春雄, 今泉吉典 著[他] (小学館, 1960)
2) 昆虫と植物 (科学図説シリーズ ; 2) / 古川晴男, 矢島稔 著[] (小学館, 1962)
3) 生命のふしぎ (科学図説シリーズ ; 3) / 八杉竜一, 大滝哲也, 日高敏隆 著[他] (小学館, 1961)
4) 人類の誕生 (科学図説シリーズ ; 4) / 石田英一郎, 寺田和夫 著[他] (小学館, 1960)
5) 人体のすべて (科学図説シリーズ ; 5) / 岡本彰祐, 岡本歌子 著[他] (小学館, 1964)
6) 宇宙のすがた (科学図説シリーズ ; 6) / 畑中武夫 等著[他] (小学館, 1960)
7) 地球の科学 (科学図説シリーズ ; 7) / 畠山久尚 等著[他] (小学館, 1962)
8) 宇宙旅行 (科学図説シリーズ ; 8) / 原田三夫 著[他] (小学館, 1961)
9) 数の世界 (科学図説シリーズ ; 9) / 矢野健太郎 著[他] (小学館, 1963)
10) エネルギーと原子力 (科学図説シリーズ ; 10) / 崎川範行, 遠藤一夫, 島田豊治 著[他] (小学館, 1962)
11) 科学の歴史 (科学図説シリーズ ; 11) / 菅井準一 等著[他] (小学館, 1961)
12) 未来の世界 (科学図説シリーズ ; 12) / 高木純一, 岸田純之助 著[他] (小学館, 1963)


写真:21世紀への旅行の書影(復刻版しかみつからなかった)

2021年11月26日金曜日

世界の都市総合力ランキング

 最初に竹中平蔵の顔写真が出てきて辟易するのだが,森記念財団 都市戦略研究所が出している世界の都市総合力ランキング(GPCI)の2021年度版が公開された。

ここで注目したいのが,大阪維新に牛耳られるようになった大阪市の凋落ぶりである。橋下徹が2008年から2011年まで大阪府知事,2011年から2015年まではスイッチした大阪市長として君臨し,松井や吉村に引き継がれた時代である。世界の他の都市には類を見ないようなランキングの低下(2012年の17位から2021年の36位までの19ランクダウン)が認められる。

大阪のマスコミは完全に維新と一体化しているため,こうした状況やコロナの死亡数対人口比が全国でダントツであることは報じられず,吉村知事礼賛に終始するのであった。

2012->2021
1->1 London
2->2 New York
4->3 Tokyo
3->4 Paris
5->5 Singapore

7->6 Amsterdam
8->7 Berlin
6->8 Seoul
22->9 Madrid(+13)
14->10 Shanghai

xx->11 Melbourne
15->12 Sydney
9->13 Hong Kong
xx->14 Dubai
20->15 Copenhagen

23->16 Los Angels
11->17 Beijing
13->18 Barcelona
10->19 Vienna(-9)
21->20 Toront

18->21 Zurich
16->22 Stockholm
31->23 San Francisco
19->24 Brussels
12->25 Frankfurt(-13)

28->26 Chicago
27->27 Boston
xx->28 Dublin
24->29 Vancouver
xx->30 Helsinki

26->31 Geneva
37->32 Moscow
29->33 Mikan
25->34 Istanbul(+9)
35->35 Bangkok

17->36 Osaka(-19)
30->37 Washington, DC
32->38 Taipei
34->39 Kuaka Lumpur
xx->40 Buenos Aires

2021年11月25日木曜日

六人部暉峰

 日本経済新聞朝刊の文化欄に六人部暉峰(1879-1956)の話があった。他に情報がないかと探してみると,京大人文科学研究所の論文で「六人部暉峰について --竹内栖鳳門の女性画家--(2021)」が見つかった。著者は向日市文化資料館の里見徳太郎さんで,何のことはない日経文化欄の記事を書いた本人だった。

六人部暉峰は,京都の向日神社の神職の娘であり,10代前半に竹内栖鳳(1862-1942)に弟子入りして本格的に日本画を学び始めた。15歳から各種展覧会に出品し,パリ万博に出展された京都の女性画家の3名に,上村松園(1875-1949)と並んで選ばれるほど高い評価を得ていた。1898年から7人の竹内栖鳳の子供を産み,20代半ばにはその活動を終息させている。

栖鳳は,1942年に湯河原で最期を迎えるが,暉峰は晩年まで湯河原の栖鳳のそばで彼を支えていたようだ(京都の本邸には本妻の奈美がいる)。熱海の保善院には,栖鳳の筆塚や爪塚があり,暉峰の代表作である「白川殿攻落」が所蔵されている。


写真:六人部暉峰白川殿攻落」(向日市文化資料館ポスターより引用)

2021年11月24日水曜日

天狗刺し

 NHKの新人落語大賞NHK新人演芸大賞から派生している。今年は奇数年なので,大阪のNHKホールで開催された。東西107名の参加者から勝ち抜いた6名のファイナリストの中に,笑福亭松鶴(六代目)の弟子の笑福亭松喬(六代目)の弟子の笑福亭生喬の弟子の笑福亭生寿が出るというので珍しく落語の録画を見ていた。

抽選で最後になった,桂米朝(三代目)の弟子の桂米二の弟子の桂二葉が「天狗刺し」で大賞を獲得した。5名の審査員の評価は納得のいくもので,二葉は全員から満点の10点を得て,女性初の大賞となった。なお,笑福亭生寿は第2位の得点だった。

主人公が,新しい商売としててんすき屋(天狗のすき焼き屋)を始めるといって,材料の天狗を捕獲する(刺す)ために鞍馬山へ行く。奥の院の坊さんを天狗と間違えて捕まえた主人公は,京都の町に下りてくる。

さて,米朝の話では次のような下げになる。向うから大きな青竹を10本ばかり担いで来る奴がある。男はもう真似する奴が現れて天狗を捕まえに行くとのかと思い,商売仇を呼び止める。男「お前も鞍馬の天狗さしか」竹を持った男「いやあ、わしは五条の念仏ざしじゃ」

念仏尺(ねんぶつざし)とは,「近江の伊吹山から念仏塔婆が掘り出され,それに精確な尺度が刻んであったので,これを模して念仏尺と名づけた」あるいは「西本願寺大谷本廟のあたりで採れる竹を使っていたことから「念仏」の名称になったという。精密、精巧であったため、緒方洪庵もメートル法を尺貫法に換算する際、基準として用いた」という竹の物差しのことだ。しかし,今では誰も知らないので,これでは落ちない。そこで,二葉は,坊主の衣と天ぷらの衣をかけた下げにうまくアレンジしていた。


写真:鞍馬の天狗像(京都旅屋のページから引用)

2021年11月23日火曜日

三角関数の積

その鈴木貫太郎の問題で次の式の値を求めよというのがあった。

$\cos{\dfrac{\pi}{33}}\cos{\dfrac{2\pi}{33}}\cos{\dfrac{4\pi}{33}}\cos{\dfrac{8\pi}{33}}\cos{\dfrac{16\pi}{33}}$

三角関数の積和の式を繰り返し使うのか,それにしても面倒だろう,どうするのかなあと解答を見ると,$\sin{\dfrac{\pi}{33}}$をかけて倍角の公式からドミノ倒しのようにしてあっという間に解けてしまった。なるほどね。

そこでMathematicaで一般化してみた。

f1[n_, m_] := Product[Cos[2^k Pi/(2^n + 1)], {k, 0, m}] // Simplify
g1[j_] := Table[f1[j, i], {i, j - 1, 20, j}]
g1[5]
{1/32, -(1/1024), 1/32768, -(1/1048576)}

f2[n_, m_] := Product[Cos[2^k Pi/(2^n - 1)], {k, 0, m}] // Simplify
g2[j_] := Table[f2[j, i], {i, j - 1, 20, j}]
g2[5]
{-(1/32), -(1/1024), -(1/32768), -(1/1048576)}


2021年11月22日月曜日

フェルマーの小定理

フェルマーの小定理は,素数を$p$とし,$p$とは互いに素な整数を$a$として,$a^{p-1} \equiv 1 \quad (\mod p \ ) $というものである。

頭の体操のためによく見ている鈴木貫太郎の YouTubeチャンネルでは,ちょっと目には解きにくそうな整数問題に,縦横無尽にmodを使って条件を絞り込んでいくというパターンがよく見られる。自分が,高校生のときには,こんなふうにしてmodを活用するということがなかったので,新鮮な感じがしている。ここまで自由に使えれば便利には違いない。

そんなわけで,フェルマーの小定理あるいは,その他のmod問題の勘を養成するための1行コードをMathematicaで書いてみた。

f[n_] := Table[ Table[Mod[i^k, Prime[n]], {i, 1, Prime[n]}], {k, 1, Prime[n] - 1}]
g[n_] := Table[Table[Mod[i^k, n], {i, 1, n}], {k, 1, n - 1}]

Do[{Print[g[i], " "]}, {i, 2, 7}]
{{1,0}}
{{1,2,0},{1,1,0}}
{{1,2,3,0},{1,0,1,0},{1,0,3,0}}
{{1,2,3,4,0},{1,4,4,1,0},{1,3,2,4,0},{1,1,1,1,0}}
{{1,2,3,4,5,0},{1,4,3,4,1,0},{1,2,3,4,5,0},{1,4,3,4,1,0},{1,2,3,4,5,0}}
{{1,2,3,4,5,6,0},{1,4,2,2,4,1,0},{1,1,6,1,6,6,0},{1,2,4,4,2,1,0},{1,4,5,2,3,6,0},{1,1,1,1,1,1,0}} 


2021年11月21日日曜日

安倍晴明

安倍晴明(921-1005)といえば,先日はライバルの道魔法師(蘆屋道満)が活躍する芦屋道満大内鑑を国立文楽劇場で見たところだ。桜井市にある安倍文殊院を訪ねたとき,お堂の中に安倍晴明の坐像があったので,ここが出身地かと思っていたがそうではなかったようだ。

阪堺電車に乗って,大阪阿倍野の北畠あたりに散歩に行った帰りに,安倍晴明神社を発見した。それによると,出身地には諸説あるが(大和は含まれていない),大阪説が一番有力と主張している。その根拠は「葛の葉伝説」なのだが,それでいいのか。なお,京都の晴明神社は,安倍晴明の没後に邸跡に御霊を鎮めるために設けられたので,生誕地とは関係ない。

日曜午後の安倍晴明神社は,お参りの人や学習ツアーの団体などでかなり賑わっていた。よくわからないが,社務所の横にちょっと怪しい占いコーナというのがあって日替わりで相談に応じていた。

P. S. 神社の近所には,The MARKET Grocery というお店がオープンしたばかりで,美味しいリンゴとミカンを試食させてもらった。ミカンを買ってしまったのは,もしかすると葛の葉の狐に化かされたからかもしれない。


写真:安倍晴明神社の石碑(撮影 2021.11.21)


2021年11月20日土曜日

ギリシャ文字の斜体

統計力学のテキストつながりで,冨田博之先生のウェブサイトを見ていると,2021年度の大学入試共通テストの「物理」「物理基礎」の話題が出てきた。

数年前の阪大・京大の個別学力検査の物理で,波動(音)の問題の出題ミスが話題になった。その当時,日本物理教育学会の近畿支部長だったので,あれやこれやの対応に追われたような,それほどでもなかったような。

その出題ミスを指摘した人の一人が予備校講師の吉田弘幸さんであり,これが契機となって,入試制度や社会問題などにも関わって広く発言されている。

その吉田さんが,2021年度の共通テストの物理の問題の問題点を指摘した。特に,薄膜干渉の問題が出題ミスであると指摘しているのだが,これに対して冨田さんが反論している。これは,冨田さんの方に分があるわ。

ところで,吉田さんの些細な指摘の方が気になった。「数学や物理では変数 $X$ の変化を $\varDelta X$ で表します。$\varDelta$ はギリシャ文字の $\Delta$ を斜体で表したものです。ところが,この問題(第1日程)では斜体でない $\Delta$ を使っています」

これまで,自分がLaTeXで $\Delta$を出力する際は,斜体かどうかなんて気にしていなかったのだ。この点は吉田さんが正しいかもしれない。ということで,確かめてみると,ちょっと面倒なことになっていた。

\begin{equation} \alpha \ \beta \ \gamma \ \delta \ \epsilon (\varepsilon) \ \zeta \ \eta \ \theta (\vartheta) \ \iota \ \kappa \ \lambda \ \mu (\umu) \ \nu \ \xi \ o \ \pi \ \rho (\varrho) \ \sigma (\varsigma) \ \tau \ \upsilon \ \phi (\varphi) \ \chi \ \psi \ \omega (\varpi)\end{equation}

\begin{equation} {\rm A} \ {\rm B} \ \Gamma \ \Delta (\varDelta) \ {\rm E} \ {\rm Z} \ {\rm H} \ \Theta \ {\rm I} \ {\rm K} \ \Lambda \ {\rm M} \ {\rm N} \ \Xi \ {\rm O} \ \Pi \ {\rm P} \ \Sigma \ {\rm T} \ \Upsilon \ \Phi \ {\rm X} \ \Psi \ \Omega \end{equation}

\begin{equation} A \ B \ \mathit{\Gamma} \ \ \mathit{\Delta} \ \ E \ Z \ H \ \mathit{\Theta} \ \ I \ K \ \mathit{\Lambda} \ \ M \ N \ \mathit{\Xi} \ \ O \ \mathit{\Pi} \ \ P \ \mathit{\Sigma} \ \ T \ \mathit{\Upsilon} \ \ \mathit{\Phi} \ \ X \ \mathit{\Psi} \ \ \mathit{\Omega} \end{equation}

P. S. \umu は,単位のミクロン(μ)で使うための立体のミュー(オイラーフォント)であるが,blogspotの環境では出力できない。

2021年11月19日金曜日

少年少女ものがたり百科

偕成社の「少年少女ものがたり百科」のシリーズは,子供の頃に何冊か買ってもらった。調べてみると次のリストのようなタイトルが並んでいる。出版されたのが,1961年から1963年ということは,自分が小学校2年から4年のころにかけてだ。

当時は,夕方になると毎日のように父親に本屋(十一屋のヨコノ書店)に連れて行ってもらったので,本を買ってもらう機会も多かった。太字の本は家にあって読んだ記憶がある。下線の本は,もしかしたらあったかもしれないし,なかったかもしれない,というわけで60年前の記憶のほぼ50%くらいは不確かで怪しいのだった。

三石巌さんの「発明とくふうの光」はアマゾンの中古書で 12,990円もする。


写真:発明とくふうの光の書影(amazonから引用)

1) 日本のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 1) / 宮下正美 著[他] (偕成社, 1961)
2) 世界のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 2) / 中山光義 著[他] (偕成社, 1961)
3) 発明とくふうの光 (少年少女ものがたり百科 ; 3) / 三石巌 著[他] (偕成社, 1961)
4) 十二人の探検家 (少年少女ものがたり百科 ; 4) / 野田開作 著[他] (偕成社, 1961)
5) 星と伝説 (少年少女ものがたり百科 ; 5) / 野尻抱影 著[他] (偕成社, 1961)
6) 日本の英雄 (少年少女ものがたり百科 ; 6) / 中沢巠夫 著[他] (偕成社, 1961)
7) 世界の英雄 (少年少女ものがたり百科 ; 7) / 浅野晃 著[他] (偕成社, 1961)
8) 偉人の光 (少年少女ものがたり百科 ; 8) / 久保喬 著[他] (偕成社, 1961)
9) 宇宙のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 9) / 日下実男 著[他] (偕成社, 1962)
10) 数のふしぎ・形のなぞ (少年少女ものがたり百科 ; 10) / 宮下正美 著[他] (偕成社, 1962)
11) 日本の伝説 (少年少女ものがたり百科 ; 11) / 山本和夫 著[他] (偕成社, 1962)
12) 世界の伝説 (少年少女ものがたり百科 ; 12) / 小出正吾 著[他] (偕成社, 1962)
13) 偉人の少年時代 (少年少女ものがたり百科 ; 13) / 二反長半 著[他] (偕成社, 1962)
14) 日本一・世界一 (少年少女ものがたり百科 ; 14) / 中山光義 著[他] (偕成社, 1962)
15) 動物のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 15) / 小林清之介 著[他] (偕成社, 1962)
16) 植物のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 16) / 真船和夫 著[他] (偕成社, 1962)
17) 日本歴史のひかり (少年少女ものがたり百科 ; 17) / 中沢巠夫 著[他] (偕成社, 1962)
18) 世界歴史のひかり (少年少女ものがたり百科 ; 18) / 浅野晃 著[他] (偕成社, 1962)
19) 理科のふしぎ (少年少女ものがたり百科 ; 19) / 三石巌 著[他] (偕成社, 1963)
20) 世界のオリンピック (少年少女ものがたり百科 ; 20) / 大島鎌吉 著[他] (偕成社, 1963)
21) 日本をめぐる (少年少女ものがたり百科 ; 21) / 本木修次 著[他] (偕成社, 1963)
22) 世界をめぐる (少年少女ものがたり百科 ; 22) / 飛田正夫 著[他] (偕成社, 1963)

2021年11月18日木曜日

お化け煙突

 NHKの映像の世紀プレミアムの再放送,第15回の「東京 夢と幻想の1964年」では,オリンピック前後の東京の様子が映し出されていた。もちろんオリンピックの話題が中心なのが,その前後には意外な都市の表情があった。

1つは,当時の東京が非常に汚かったということだ。家庭のゴミはその辺の道路や川に無造作に捨てられて,街中に腐臭が漂っているようだ。また,血液銀行という名の売血制度があった時代でもあり,日銭を稼ぐための建設労働者が行列していた。その中で,首都高速道路が建設され,東海道新幹線が開業している。

エピソードの一つにお化け煙突の解体というのがあった。隅田川沿いの足立区にあった東京電力の千住火力発電所の4本の煙突のことだ。もちろん現物を見たことはないが,子供のころから知っていた。

それは,偕成社の少年少女ものがたり百科(10)「数のふしぎ・形のなぞ」で取り上げられていたからだ。お化け煙突は,4本の煙突が2本づつ平行に配置されていて,見る方向によって,1本,2本,3本,4本に見えるというものだ。

この他にも,曽呂利新左衛門の褒美の話(等比数列の和),地球の鉢巻の話(円周と半径の関係),一億まで数えるのにかかる時間の話,ガウスのレンガ積みの話(等差数列の和),アルキメデスの原理の話,パスカルの三角形の内角の和の話などが印象深かった。

1962年の出版で,小学校低学年で買ってもらったお気に入りの本の一つで何度も何度も繰り返して読んでいた。


写真:「数のふしぎ・形のなぞ」の書影(日本の古本屋から引用)

2021年11月17日水曜日

オカジマサエ

 非常勤の授業からの帰り。今日はたまたま家人の用務先が大学の近くだったので,車でピックアップしてもらい,どこかで昼食をとることになった。

選んだのが,広陵町のCafe OMO屋。着いてみれば,田んぼの中にある昔の紡績工場の跡を改装した渋い建物だった。平日にも関わらず駐車場はほぼ満杯であり,店の入口で20分くらい待ってからようやく席につくと周りは若い人ばかりだ。

ランチの牛すじ煮込みカレーを食べながら隣の席の女性グループを見ると,いつの間にかワークショップが始まっていた。そういえば,待ち席の壁に,ひらがな絵本の原画が並んでいたのを思い出した。その作者本人が,絵本のイラストの切り抜きを小さなフレームにコラージュするコツを指導しているのだった。

食後のコーヒーを飲み終わって帰ろうとしたら,出口のあたりでオカジマサエさんが描いた絵本「いいもんみーつけた」を販売している。著者のサインがもらえるとあったので,早速,ワークショップの手を止めてお願いしてみたところ,快く孫のすーちゃん宛のサインをしていただいた。

オカジマサエさんの,声がとびだすひらがな絵本「あいうえお」は,現在た行まできている。帰って,Cafe OMO屋のことを調べていたら,今年の12月26日で閉店になるようだ。残念。


写真:オカジマサエの絵本「いいもんみーつけた」の書影(2021.11.17撮影)

2021年11月16日火曜日

taknal

 NHKの夕方の定番,ニュースほっと関西を見ていたら,大阪ガスの人が開発したスマホ用アプリが紹介されていた。taknalというものだ。「ユーザー同士がすれ違うことで,お互いがオススメする本が交換されるアプリです」ということだが,SNS機能はあえてつけていない。

本屋がまだ健在だったころ,しかもその本屋に通うことができていたころは,新しい本との出会いは毎日のようにあった。今では,インターネットで検索できるとはいうものの,残念ながら,インターネットの検索では思いがけない出会いを得ることが難しい。あくまでも自分の関心空間の近傍でしか探索が進まない。

そこで,スマートフォンの位置情報と,ユーザーのおすすめ情報を掛け合わせて,偶然の出会いを演出したのがこのアプリである。ユーザの情報は100字以内の感想文しか交換されないので(もちろんソーシャルセキュリティホールは色々と作れるだろう),比較的安心して利用できそうだ。

が,残念ながらアプリのバク出しが不十分なのか,iPhone SE2(iOS 14.8)では,自分のおすすめ本を登録できなかった。また,自宅に閉じこもっていると,位置情報による発見の確率も低いままで止まってしまうのも仕方がない。


図:taknalアプリアイコンのイメージ(taknalホームページから引用)

P. S. なお,taknalという名称は「読みたくなる」からきている。やっぱり使えなかった

2021年11月15日月曜日

ピクミンブルーム

日本でテレビ放送が始まった 1953年の生まれなので,テレビ環境には十分適応している。ラジオはどうかというと,遅ればせながら高校生から大学生にかけて深夜放送を聞いて育った。もちろん小学生時代の貸本屋から始まって漫画雑誌も大丈夫。コンピュータが登場するのは大人になってからだったが,これもなんとかクリアできた。

ところが,残念ながら自分が適応できなかった種目がある。コンピュータゲームだ。そのはしりのアーケードゲームは1979年に大流行したスペースインベーダー。柳田さん夫妻が新婚旅行でハマったやつだ。喫茶店のようなところで何回か遊んだことはあるが,はまるにはほど遠かった。

やがて,1983年の任天堂ファミリーコンピュータを嚆矢に,次々と家庭用ゲーム機が登場する。残念ながら,結婚してそろそろ子供ができようかという頃であり,全く興味も関心もなかった。子供たちが成長する過程でも,ゲーム機の類を買い与える機会はなかった。1996年のたまごっちをのぞいては。自宅には,PC-9801があり,後にはMacBookなども使えたのだけれど,ポストペットで遊ぶ程度だった。

やがて,スマートフォンの時代になり,子供から強く勧められて,コロプラ(コロニーな生活☆プラス)を始めた。位置情報ゲームとよばれるジャンルのはしりだ。これは10年経った今も愛用している。その後,ギークの間で流行るイングレスを生み出したNIANTICが2016年にポケモンGOを産み出し,これは1〜2年楽しんだ。

この間,ジャンルとしてのアクションゲーム,ロールプレイングゲーム,シミュレーションゲーム,アドベンチャーゲーム,スポーツゲーム,レースゲーム,音楽ゲームなどは全くの未踏の地として残ってしまった。残念なことである。

PC-9801が登場したころに,ASCIIかOhPCに掲載されていたフライトシュミレータの機械語のプログラムを2ページびっしり必死で打ち込んだ。モノクロ線画で,5MHzの8086(128kBRAM)上で動作するコックピットがすぐクラッシュしていた時代から,はや40年になる。

さて,最近ピクミンブルーム(NIANTIC 任天堂)の宣伝に騙されて,これをiPhoneにインストールした。11月1日公開のところを11月6日にスタートしたので,珍しく早い対応だった。散歩の歩数がゲームのポイントに直結するスマートフォン向けARアプリなので,老人には相応しいものかもしれない。


写真:ピクミンブルームのスナップショット

2021年11月14日日曜日

ゆきだるさん

 「ゆきだるさん」で検索しても,その語源や出典が判然としない。ワンピースに「雪だるさん」が出てきているようだが,これなのか。自分が子供のころはなかったので,最近発明されたような気もする。

プログラミングの練習として,「ゆきだるさん」を描画するProcessingのコードが落ちていたので,写経してみた。

size(600, 600);
background(200, 200, 200);

strokeWeight(4);
stroke(60, 60, 60);
ellipse(300, 200, 150, 150);
ellipse(300, 380, 240, 240);
rect(-10, 480, 610, 480);

fill(0, 0, 0);
arc(270, 200, 20, 30, -0.6, 5);
arc(330, 200, 20, 30, -0.6, 5);

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quad(280, 130, 370, 170, 390, 90, 320, 60);

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stroke(144, 64, 36);
line(220, 330, 160, 240);
line(380, 330, 450, 240);


図:Processingによる「ゆきだるさん」

2021年11月13日土曜日

準衛星

準衛星とは,小惑星のうち,ある惑星を周回している衛星のように見えるもの。衛星と準衛星の区別は,惑星の重力圏にあるかどうかで判定され,ヒル圏の内側ならば衛星であり,外側ならば準衛星となる。

ヒル圏(ヒル半径)は,質量の大きな天体$M_1$と小さな天体$M_2$が,距離$r$で周回している時に,非常に軽い天体$m$が天体$M_2$からヒル半径$a (a \ll r)$の距離にあるとして,この$a$に対する条件から決まるものだ。

そのヒル半径 $a$ の位置にある小天体$m$には,天体$M_2$からの重力と,$M_2$に固定された$M_1$の周りの回転系における遠心力が$m$に加わるとして足したものが,天体$M_1$からの重力と釣り合うという条件から求める。

$\dfrac{G M_1 m}{(r-a)^2} = \dfrac{G M_2 m}{a^2}  + m (r-a) \omega^2 , \ \ \ \omega = \sqrt{\dfrac{G M_1}{r^3}}$

この式で,$\dfrac{1}{(r-a)^2} \simeq \dfrac{1}{r^2}(1+\dfrac{2 a}{r})$と近似すれば,$\dfrac{3 a^3}{r^3} = \dfrac{M_2}{M_1}$が得られ,ヒル半径は,$a=r \sqrt[3]{\dfrac{M_2}{3 M_1}}$と求まる。

大陽質量を $M_1=2 \times 10^{30} {\rm kg}$,地球質量を $M_2=6 \times 10^{24} {\rm kg}$,地球の公転軌道半径を $r = 1.5 \times 10^{11} {\rm m}$ とすると,ヒル半径は $a=1.5 \times 10^9 {\rm m}$となり,月の公転半径の約4倍になる。

地球の準衛星の1つ((469219) 2016 HO3)が月のかけらではないかというアリゾナ大学の論文のが今日のポイントだ。2024年の打ち上げが計画されている中国の小惑星探査機鄭和がサンプルリターンに成功すればこの問題を検証することができるかもしれない。


図:2016HO3 の軌道(NASAから引用)

2021年11月12日金曜日

神戸:西東三鬼

対面授業が始まってくれたおかげで,電車の中で読書する時間が戻ってきた。

西東三鬼(1900-1962)の神戸・続神戸を読了。これは,昔,NHKのドラマ人間模様で見た「冬の桃」(1977,脚本:早坂暁,演出:深町幸男,全7回)の原作である。早坂=深町コンビといえば,夢千代日記(1981)も新婚当時よく見ていたが,それと同じフレーバーの名作だった。

冬の桃は1977年の放送だったが,M2の頃に見ていたのではないかもしれない。とすると総合テレビで夜9:00に再放送された1990年だろうか。小林桂樹の渋い演技や,時々挟まる西東三鬼の俳句が,戦時中の神戸の怪しいホテル人々の様子と相まってとても印象的だった。

小説(著者はフィクションではないと書いている)の方も,小説より奇なりのエピソードが積み重ねられる。歯科医の著者が,弾圧によって俳句から距離を置いた,戦中戦後の生活模様が描かれる。

その後,1948年には山口誓子(1901-1994)を主宰とする雑誌「天狼」の編集にあたる。名前は耳にしたことがある雑誌だが,創刊時は奈良県丹波市町(現天理市)の養徳社から出版されている。西東三鬼が編集に携わっていた頃は先鋭的だったのが,後に微温的な雑誌になってしまったとのこと。

養徳社は,天理時報社の出版部門が1944年に株式会社として独立したもので,現在は,天理教関係の一般雑誌などを出版している(天理時報社=印刷会社には,個人の名刺を印刷してもらったことがある)。天理教の出版物といえば,天理道友社だが,こちらは宗教法人格を持っている。


写真:西東三鬼(津山市西東三鬼賞のページより引用)

[1]第三俳句集 今日(西東三鬼,青空文庫)
[2]西東三鬼賞(津山市)

2021年11月11日木曜日

接種済証ケース

 天理市から新型コロナウイルスワクチンの接種済証ケースを送ってきた。色々と気がつく市長さんである。もちろん,本来ならば接種済証明アプリがあれば良いのだけれど,COCOAで懲りたのか,新たな利権構造ができていないのか。地域独自のものはあるようだが全国版がない模様で,厚生労働省もやる気なし。

調べてみると,民間ベースのワクパスというのがある。いいのだけれど,これが乱立したら真正性をどうやって保証するのだろうか?ちょっと試してみると,登録がうまく進行しない。アイコンのデザインもイマイチなのでもう少し様子を見たほうがいい。


写真:天理市の接種済証ケース(2021.11.11撮影)

2021年11月10日水曜日

忌日

 11月10日は特異日だ。母と祖母二人(父の義母と実母)の命日が重なっている。したがって,我が家の女性陣は,特に注意して過ごさなければならない日になっている。

朝の散歩で,らじるらじるから今日は何の日というのが流れてくる。それによると,11月10日は,2009年に森繁久彌,2012年に森光子,2014年に高倉健が亡くなった日らしい。まあ,それはどうでもいいのだけれど・・・


2021年11月9日火曜日

フェルミ分布

 $N$個の粒子系の全エネルギーを$E$とする。$i$番目の箱には,$g_i$個の 区別できない状態 があり,1粒子エネルギー$u_i$を持つ$n_i$個の粒子がこれらの状態に配置されている。ただし,$i=(1,...,M)$とする。各粒子は区別できず,$g_i$個の状態には 1個まで入ることができる。Maxwell=Boltzmann分布の場合と同様の式で,このエネルギー分配の場合の数の対数$\log W$の極値問題を考えればよい。

粒子の区別がないので,その個数だけに着目しなければならない。$i$番目の箱に,$g_i$通りの状態があって,$n_i$個の粒子を配置する場合の数$W_i$を考える。

$n_i$個の粒子とスリットをセットにしたものと,残りの$g_i-n_i$個の状態のスリットを混ぜて並べ,区別できない同種のパターンの数で割ることにすると,$W_i=C_{n_i}^{n_i+g_i-1}=\frac{g_i!}{n_i! (g_i-n_i)!}$とすればよい。

スターリングの公式を適用すると,$\log W = \sum_{i=1}^M \log W_i = \sum_{i=1}^M (g_i\log g_i-g_i -n_i \log n_i +n_i -(g_i-n_i) \log (g_i-n_i) +g_i -n_i)$。これから,$\delta \log W = (\log(g_i-n_i) -\log n_i ) dn_i$となる。

また,粒子数とエネルギーの制約条件をラグランジュ未定乗数法で取り込めば,

$\delta \{ \log W +\alpha (N-\sum_{i=1}^M n_i) + \beta (E - \sum_{i=1}^M u_i n_i) \} = 0$より,$\sum_{i=1}^M(\log(g_i-n_i)-\log n_i -\alpha -\beta u_i)dn_i = 0$。したがって,$\log(g_i-n_i)-\log n_i -\alpha -\beta u_i = 0$

より,$\frac{g_i-n_i}{n_i}=e^{\alpha + \beta u_i}$であり,状態の占有率は$f_i=\dfrac{n_i}{g_i}= \dfrac{1}{e^{\alpha + \beta u_i}+1} = \dfrac{1}{e^{\frac{u_i-\mu}{k_B T}}+1}$となる。

2021年11月8日月曜日

伝書鳩

 日曜日の朝,ベランダにハトがいた。ヒヨドリやその仲間はときどきやってきて手すりに留まっているが,人の気配がするとすぐに逃げてしまう。家の近所はスズメやカラスだけでなく,セキレイやツグミ,池や田んぼにシロサギ,アオサギ,カモなどをたくさん見かける環境だ。

マンションには時々厄介なカワラバト(ドバト)が増える年があって,捕獲駆除サービスをお願いすることもある。ところが,このハトは逃げないのである。よく見ると赤と白の脚輪が左右にあり,何やら文字や数字が書かれている。近寄って写真を撮っても平気で餌になる金木犀の花びらをついばんでいた。

調べてみると,伝書鳩(レース鳩)のようだ。日本伝書鳩協会日本鳩レース協会があって,それぞれ固有の番号をつけている。家に来たハトはどうやら伝書鳩協会山口県周南支部の所属らしい。白い脚輪には連絡先が書いてあるのだけれど,汚れが固着している上にハトが逃げるので読み取れない。

伝書鳩協会のページには,迷い鳩の対処方法が書いてあった。どうしましょうどうしましょうと困っているうちに,夕方にはどこかに行ってしまったので,めでたしめでたしとなった。

月曜日の朝,ベランダにハトが帰ってきた。流石に居付かれると困るので,東京の伝書鳩協会本部に電話してみた。どうやらハトを捕獲してその番号を確認しないことには次の手順に進めないらしい。ハトは賢いし素早いので,カメのような爺さんには簡単に捕まらないのである。

何度も失敗を重ねた末に,ベランダに落ちている草の実などを食べているところを背後から掴むことに成功した。早速,脚輪の番号を確認してもらうと,山口県の飼い主の電話番号が判明したので連絡してみた。滋賀県琵琶湖畔からのレースで迷ったものらしい。調べてみると今年の春にも坂本発の400kmレースがあった。平均分速300mで,20-21時間かけて400km離れた自宅まで帰るものらしく,36羽放って2羽しか帰還していない。おいおい。

どうやら京都の支部(都クラブ)の人が取りに来てくれるらしいが,それまで米粒でもやっといてくださいとのリクエストだった。

P. S. 道に迷ったとかで,夜7時過ぎに取りに来られた。協会の規約ということで,お礼をいただく。やはり長距離のレースでは多くのハトが戻ってこないようで,こういうのはレアケースとのこと。山口県までは郵便局のハト専用パッケージで返送されるらしい。


写真:日曜日のハト(赤が協会脚輪,白が個人脚輪)

2021年11月7日日曜日

ボース分布

ボルツマン分布からの続き 

$N$個の粒子系の全エネルギーを$E$とする。$i$番目の箱には,$g_i$個の区別できない状態があり,1粒子エネルギー$u_i$を持つ$n_i$個の粒子がこれらの状態に配置されている。ただし,$i=(1,...,M)$とする。各粒子は区別できず,$g_i$個の状態には何個でも入ることができる。Maxwell=Boltzmann分布の場合と同様の式で,このエネルギー分配の場合の数の対数$\log W$の極値問題を考えればよい。

粒子の区別がないので,その個数だけに着目しなければならない。$i$番目の箱に,$g_i$通りの状態があって,$n_i$個の粒子を配置する場合の数$W_i$を考える。

$g_i-1$個の状態のスリットと$n_i$個の粒子を混ぜて並べ,区別できない同種のパターンの数で割ることにすると,$W_i=C_{n_i}^{n_i+g_i-1}=\frac{(n_i+g_i-1)!}{n_i! (g_i-1)!}$とすればよい。

スターリングの公式を適用すると,$\log W = \sum_{i=1}^M \log W_i = \sum_{i=1}^M ((n_i+g_i)\log (n_i+g_i)-(n_i+g_i) -n_i \log n_i +n_i -g_i \log g_i +g_i)$。これから,$\delta \log W = (\log(n_i+g_i) -\log n_i ) dn_i$となる。\\

また,粒子数とエネルギーの制約条件をラグランジュ未定乗数法で取り込めば,

$\delta \{ \log W +\alpha (N-\sum_{i=1}^M n_i) + \beta (E - \sum_{i=1}^M u_i n_i) \} = 0$より,$\sum_{i=1}^M(\log(n_i+g_i)-\log n_i -\alpha -\beta u_i)dn_i = 0$。したがって,$\log(n_i+g_i)-\log n_i -\alpha -\beta u_i = 0$

より,$\frac{n_i+g_i}{n_i}=e^{\alpha + \beta u_i}$であり,状態の占有率は$f_i=\dfrac{n_i}{g_i}= \dfrac{1}{e^{\alpha + \beta u_i}-1} = \dfrac{1}{e^{\frac{u_i-\mu}{k_B T}}-1}$となる。

2021年11月6日土曜日

白骨の御文

本願寺第八代の 蓮如上人(1415-1499)が,布教のために教義を手紙の形で書いたものが御文(御文章)である。小学校6年の修学旅行は東尋坊へのバス旅行だった。その途中で蓮如の北陸布教の中心地であった吉崎御坊に立ち寄っている。金沢も浄土真宗(一向宗)の重要な活動地域の一つだったので,蓮如に関わる事跡には事欠かない。

さて,法事では,終盤に御文の中でも有名な白骨の御文を読み上げられることが多い。なんだかよくわからないお経(阿弥陀経,無量寿経,観無量寿経)や正信偈の後にこれが来ると,何回も耳にしているうちになんとなく意味というか雰囲気がわかってくる。

真宗大谷派では,以下のような文節の区切りの最後の一字を下げて読み上げることになっていた(浄土真宗本願寺派の御文章のyoutubeを見るとやはりちょっと違うようだ)。

夫(それ),人間の浮生(ふしょう)なる相をつらつら観ずるに↓,おほよそ,はかなきものはこの世の始中終(しちゅうじゅう)↓,まぼろしのごとくなる一期(いちご)なり↓。

さればいまだ萬歳(まんざい)の人身(にんじん)ノうけたりとゆう事をきかず↓。一生すぎやすし↓。いまにいたツてたれか百年の形躰(ぎょうたい)をたもつべきや↓。我やさき人やさき↓,きょうともしらずあすともしらず↓,おくれさきだつ人は↓,もとのしずく,すえの露よりもしげしといえり↓。

されば朝(あした)には紅顔あツて↓夕(ゆうべ)には白骨となれる身なり↓。すでに,無常の風きたりぬれば↓,すなわちふたつのまなこたちまちにとじ↓,ひとつのいきながくたえぬれば↓,紅顔むなしく変じて↓,桃李(とうり)のよそおいをうしないぬるときは↓,六親眷属(ろくしんけんぞく)あつまツてなげきかなしめども↓,更にその甲斐あるべからず↓。

さてしもあるべき事ならねばとて↓,野外(やがい)に送ツて夜半(よわ)のけむりとなしはてぬれば↓,ただ白骨のみぞのこれり↓。あわれといふも中々おろかなり↓。されば,人間のはかなき事は↓,老少不定(ろうしょうふじょう)のさかいなれば↓,たれの人も早く後生(ごしょう)の一大事を心にかけて↓,阿弥陀佛トふかくたのみまいらせて↓,念彿もうすべきーものなり。 あなかしこ,あなかしこ。

2021年11月5日金曜日

ボルツマン分布

図:ボルツマン分布のイメージ

$N$個の粒子系の全エネルギーを$E$とする。$i$番目の箱には,$g_i$個の区別できる状態があり,1粒子エネルギー$u_i$を持つ$n_i$個の粒子がこれらの状態に配置されている。ただし,$i=(1,...,M)$とする。各粒子は区別できるとして,$g_i$個の状態には粒子がいくつでも入ることができる。このエネルギー分配の場合の数$W$($W$自身は非常に大きな数なので,その対数$\log W$で考える)が最大になるのはどのような粒子配置$\{ n_i / g_i \}$のときかという問題を考える。この条件を式で表すと,

$\displaystyle \delta \log W = \sum_{i=1}^M \frac{\partial \log W}{\partial n_i} \delta n_i = 0, \ \  \sum_{i=1}^M n_i = N\  (\sum_{i=1}^M \delta n_i = 0), \ \  \sum_{i=1}^M u_i n_i=E\ (\sum_{i=1}^M u_i \delta n_i = 0)$

1番目の箱に$N$個の粒子から取り出した$n_1$個の粒子を入れて,$g_1$個の状態に配置する場合の数は,$W_1=C_{n_1}^N g_1^{n_1}$である。続いて,2番目の箱に残りの$N-n_1$個の粒子から取り出した$n_2$個の粒子を入れて,$g_2$個の状態に配置する場合の数は,$W_2=C_{n_2}^{N-n_1} g_2^{n_2}$となる。従って,$i$番目の箱$g_i$に$n_i$個の粒子を入れて配置する場合の数は,$W_i=C_{n_i}^{N-\sum_{k=1}^{i-1}n_k} g_i^{n_i}$となる。これを続けると,最終的な場合の数は,各箱の場合の数$W_i$の積で,$W=\prod_{i=1}^M W_i = \dfrac{N!g_1^{n_1} g_2^{n_2} \cdots g_M^{n_M}}{n_1! n_2! \cdots n_M!}$となる。

自然数$n$の階乗$n!$の対数$\log n!$についてのスターリングの公式は,$n!=n \log n -n \ (n \gg 1)$であるから,これを用いて $\log W$を表すと,$\log W = N \log N - N +\sum_{i=1}^M (n_i \log g_i - n_i \log n_i - n_i )$。そこで,$\delta \log n_i = \frac{1}{n_i} \delta n_i$を用いると,$\delta \log W = \sum_{i=1}^M (\log g_i - \log n_i)\ \delta n_i$となる。

ところで,$n_i$は独立ではなくて制約条件がついている。これを簡単に処理するためにラグランジュの未定乗数法を用いれば,$n_i$を独立変数のように扱うことができる。$\alpha$と$\beta$を,それぞれ粒子数一定,エネルギー一定の制約条件に対応する2つの未定乗数として,

$\delta \{ \log W + \alpha (N-\sum_{i=1}^M n_i) + \beta (E-\sum_{i=1}^M u_i n_i) \}=0$, $\sum_{i=1}^M (\log g_i -\log n_i - \alpha - \beta u_i) \delta n_i = 0$。$\delta n_i$は独立にとってよいので,$\log g_i-\log n_i - \alpha - \beta u_i=0$であり,$n_i = g_i e^{-\alpha} e^{-\beta u_i}$となる。

ここで,状態の占有率$f_i$は,$f_i=\frac{n_i}{g_i}=\frac{1}{e^{\alpha + \beta u_i}}$となる。この$\alpha,\ \beta$は,統計力学的なエントロピーと熱力学的なエントロピーの関係式から定まる。すなわち,$S=k_B \log W, dS = k_B\ d\log W = k_B \sum_{i=1}^M \log \frac{g_i}{n_i} d n_i = k_B  \sum_{i=1}^M (\alpha + \beta u_i) d n_i$

$\therefore dS= k_B (\alpha dN + \beta dU) = -\mu \frac{dN}{T} + \frac{dU}{T}$から,$\alpha = -\frac{\mu}{k_B T},\ \beta = \frac{1}{k_B T}$であり,$f_i = e^{-\frac{u_i - \mu}{k_B T}}$となる。

2021年11月4日木曜日

TikZの反復と分岐

数理的なモデルと関連した 図を書くのにPowerPointはちょっと使いにくい。MathematicaJuliaでも表現力の自由度が足りない。そこで,PGF/TikZの登場となる。その機能を十分に生かそうとすると,TikZ環境でのプログラミングが必要であり,変数の処理や反復・分岐などが求められる。

PGF/TikZについては,Tantauの1300pを超えるマニュアルがあるのだけれど,これがまた詳しすぎて読みにくい。そんなわけで,日本語の適当な解説書を探すのだけれどこれがまたないのだった。そんなわけで,ボルツマン分布の概念図を作図しようとしていきなりつまづいた。

反復の方は\foreachを使うというところまではいいのだが,これに条件分岐を入れるとなんだかやヤコしい。しかも,堪え性のない老人は,最近の大学生のように真面目に調べずにネット情報を漁ってつまみ食いしようとするものだから,訳がわからない状態になるのであった。

小学生からのプログラミング教育は,いっそのことLaTeX+PGF/TikZにしたらいいのではないかとしみじみ思う今日この頃です。Pictogrammingと合体できないものか。まあグダグダ言いながらなんとか,解決方法の1つが見つかった。

/begin{tikzpicture}
\draw[step=2, dotted] (0,0) grid (13,2);
\foreach \x [count=\i]in {1,3,...,13}
{
\draw (\x,-0.5) node{\$(n_\i,u_\i)\$};
\foreach \y in {1,...,8}
\pgfmathsetmacro{\col}{ifthenelse(rnd*8 > \y,"white",ifthenelse(rnd*8 <\y,"gray","white"))}
\draw[fill,\col] (\x+rnd*1.6-0.8, rnd*1.6+0.2) circle(0.05);
}
\end{tikzpicture}

少し違うタイプの問題が出ても対応できる自信はまったくない,勉強不足なのであった。


図:TikZの例,\foreachとifthenelseとrndを組み合わせたもの


2021年11月3日水曜日

平均自由行程(3)

平均自由行程(2)からの続き

2種類の気体分子A(密度$\rho_{\rm A}$,質量  $m_{\rm A}$,速度 $\bm{v}_{\rm A}$)と気体分子B(密度$\rho_{\rm B}$,質量$m_{\rm B}$,速度 $\bm{v}_{\rm B}$)からなる温度$T$の気体中の分子の平均自由行程を考える。両分子の衝突断面積を$\sigma_{\rm AB}$とし,それぞれはマクスウエル分布$F_{\rm A}(\bm{v}_{\rm A}),\  F_{\rm B}(\bm{v}_{\rm B}) $に従って運動しているとする。

つまり,単位体積中で,速度$\bm{v}_{\rm K} \sim \bm{v}_{\rm K}+d\bm{v}_{\rm K}$にある${\rm K}$種の分子の数は,$dn_{\bm K}= \rho_{\rm K} F(\bm{v}_{\rm K}) d\bm{v}_{\rm K} = \rho_{\rm K} \Bigl( \frac{m_{\rm K}}{2\pi k_B T} \Bigr)^{3/2} \exp (-\frac{m_{\rm K} \bm{v}_{\rm K}^2}{2 k_B T}) d\bm{v}_{\rm K} $となる。

そこで,上記の速度空間にある分子の衝突回数は,相対速度を$\bm{u}=\bm{v}_{\rm A}-\bm{v}_{\rm B}$として,$dZ_{\rm AB} = \sigma_{\rm AB} |\bm{u}| dn_{\bm A} dn_{\bm B}$となる。そこで,単位体積,単位時間当たりの全衝突回数は,$Z_{\rm AB} = \int d n_{\rm A}  \int d n_{\rm B}  \ \sigma_{\rm AB} |\bm{u}| $となる。

次に,衝突する各分子の速度$\bm{v}_{\rm A},\ \bm{v}_{\rm B}$を相対速度$\bm{u}$と重心速度$\bm{V}$で表す。重心速度は,$\bm{V}=\frac{m_{\rm A} \bm{v}_{\rm A}+ m_{\rm B} \bm{v}_{\rm B}}{m_{\rm A}+m_{\rm B}}= \frac{m_{\rm A} \bm{v}_{\rm A}+ m_{\rm B} \bm{v}_{\rm B}}{M}$であり,$\bm{v}_{\rm A}=\bm{V}+\frac{m_{\rm B}}{M}\bm{u},\ \bm{v}_{\rm B}=\bm{V}-\frac{m_{\rm A}}{M}\bm{u}$となる。ただし衝突する2分子の全質量は,$M=m_{\rm A}+m_{\rm B}$であり,換算質量 を$\mu = \frac{m_{\rm A} m_{\rm B}}{M}$とする。

このとき,速度空間での積分は,$\int d \bm{v}_{\rm A} \int d \bm{v}_{\rm B} = \int d \bm{V} \int d \bm{u}$であり,衝突する2分子の運動エネルギーの和も重心運動と相対運動に分離される,$\frac{1}{2}(m_{\rm A}\bm{v}_{\rm A}^2 + m_{\rm B}\bm{v}_{\rm B}^2) = \frac{1}{2}( M\bm{V}^2 + \mu \bm{u}^2)$

そこで,単位体積・単位時間当たりの2種の分子の全衝突回数を,重心・相対座標で表すと,$z_{\rm AB} = \rho_{\rm A} \rho_{\rm B} \sigma_{\rm AB} \Bigl( \frac{m_{\rm A}}{2\pi k_B T} \cdot \frac{m_{\rm B}}{2\pi k_B T} \Bigr)^{3/2} \int d\bm{V} \int d\bm{u}  |\bm{u}| \exp (-\frac{M \bm{V}^2}{2 k_B T}) \exp (-\frac{\mu \bm{u}^2}{2 k_B T})  \\ = \rho_{\rm A} \rho_{\rm B} \sigma_{\rm AB} \Bigl( \frac{M}{2\pi k_B T}  \Bigr)^{3/2}  \int  d\bm{V} \exp (-\frac{\mu \bm{V}^2}{2 k_B T}) \cdot \Bigl( \frac{\mu}{2\pi k_B T}  \Bigr)^{3/2}  \int d\bm{u}  |\bm{u}|  \exp (-\frac{\mu \bm{u}^2}{2 k_B T})$ となる。

$\therefore z_{\rm AB} = \rho_{\rm A} \rho_{\rm B} \sigma_{\rm AB} \Bigl( \frac{\mu}{2\pi k_B T}  \Bigr)^{3/2} 4\pi \int_0^\infty u^3 \exp (-\frac{\mu \bm{u}^2}{2 k_B T}) du = \rho_{\rm A} \rho_{\rm B} \sigma_{\rm AB} \sqrt{\frac{8 k_B T}{\mu \pi}} $

そこで,ある1つのA分子がB分子と単位時間に衝突する回数は,$z_{\rm A(\rm B)}=n_{\rm B} \sigma_{AB} \sqrt{\dfrac{8 k_B T}{\pi \mu}}$

また,A分子=B分子として,ある1つのA分子が他のA分子と単位時間に衝突する回数は,換算質量が $\mu = m_{\rm A}/2$となって,$z_{\rm A}= \rho_{\rm A} \sigma_{AA} \sqrt{\dfrac{16 k_B T}{\pi m_{\rm A}}} = \rho_{\rm A} \sigma_{AA} \sqrt{2} \Bigl( \dfrac{2}{\sqrt{\pi}} \sqrt{\dfrac{2 k_B T}{m_{\rm A}}} \Bigr) = \rho_{\rm A} \sigma_{AA} \sqrt{2} \langle v_{\rm A} \rangle$

したがって,平均自由行程は$\lambda=\dfrac{\langle v_{\rm A} \rangle}{z_A} = \dfrac{1}{\sqrt{2} \rho_{\rm A} \sigma_{\rm AA}}$となり,$\sqrt{2}$が現れる。


2021年11月2日火曜日

錦秋文楽公演2021(2)

 錦秋文楽公演2021(1)からの続き

久しぶりに1日3部通して観劇の日(11:00-20:00)。10月31日が初日で,2日目の月曜日は平日なのでお客さんは少ない。二,三割くらいの入りだろうか。それにしては座席の割り振りがよろしくなく疎密のアンバランスが気になる。ウェブ上の予約システムを改修するだけの予算がないのだろう。

定年後は以前のように国立文楽劇場の定期公演をぜんぶ見るということは無くなったが,コロナのせいでさらに足が遠のいていた。今回は,まだ見ていない段のある蘆屋道満大内鑑ひらかな盛衰記の組み合わせが良かったので,早速予約したのだ。しかし,三分の一くらいは夢うつつだった。

第一部:「葛の葉子別れの段」の咲寿太夫は高音の発声で言葉もはっきりしていて聞きやすい。奥の竹澤宗助の三味線は丁寧な音がすごいなあ,安心して聞いていられる。道行の「蘭菊の乱れの段」は,狐の葛の葉が踊っているのだけれど,もう一つピンとこないのであった。これもできれば通しに近い構成で見たい。

第二部:ひらかな盛衰記の「逆櫓の段」は何度か見ているけれど,「大津宿屋の段」と「笹引きの段」から「松右衛門内の段」とつながることで,ようやく物語の意味とイメージがわかってきた。子どもの取り違えが起因する話だったのね。靖太夫は残念ながら声が出ていなかった。あるいはそうでなかったのかもしれないけれど,そのころは既にこちらが夢の中だった。一方,呂太夫は今日はよく声が出ていたし,清介の力強いバチ捌きとあいまって,感情表現がなかなか良かった。なお,睦太夫と清志郎も頑張っていたのではないでしょうか。

第三部:「辻法院の段」のようなチャリ場が藤太夫には似合う。さて,「神崎揚屋の段」は今回が初めてだった。千歳太夫と富助という安定したペアのおかげで,勘十郎の梅ヶ枝が苦悩するストーリーに没入することができたけれど,これは大変良かったですね。梶原源太の困ったちゃんの男性像との対比も今風で面白いし。そういえば,「神崎揚屋の段」は橋本治プロデュースの竹本駒之助のDVDを持っていたのだった。


写真:国立文楽劇場錦秋文楽公演2021のポスター



2021年11月1日月曜日

錦秋文楽公演2021(1)

   寝る前のNHK開票速報では,自民党過半数割れか?だったはずなのに,朝起きて11月になると,自民党安定多数,維新4倍に,立憲共産惨敗ということだった。野党共闘は1:1の選挙区では確かに効果を発揮したが,1:1:1の場合はそうではなかった。

維新的なムードは洗脳TVが支配する大阪や関西エリアだけではなく,全国にジワリと浸透している。おまけに国民民主と維新の合同会派話が持ち上がり,こうなると改憲勢力は自民261+公明32+維新41+国民11=345であり,楽々と2/3=315を超えているのだった(もちろん国民民主がなくてもだけれど)。こうなると,立憲民主からぼろぼろと崩れ落ちる層が出てくる。維新のような右翼ポピュリズムに対抗するには,れいわのような左翼ポピュリズムを持ってくるしかないのかも。

制度疲労による日本の没落を埋めるのが,一億総非正規化や,公共資産・サービスの民間・外資への切り売り,これが,改憲後に力をさらに増す差別的な右翼イデオロギーと戦争準備経済に支えながら進行するという目も当てらない状況が出現しそうだ。戦後蓄積してきた経済・文化資産はあっという間に消尽されていく。

金木犀香る晩秋の晴れの日,気落ちしながら,久々に維新政権の下でまだかろうじて開かれている文楽公演へと向かうのだった。街は賑わっており,横断歩道は剥げていなかったがペイントされた幅は狭くなっていたかもしれない。

2021年10月31日日曜日

平均自由行程(2)

 平均自由行程(1)からの続き

クラウジウスは,衝突する気体分子の速度は一定だが,相対速度の方向は一様に分布しているとして,平均自由行程の式を導いている。正確にはその速度分布まで含めた考察が必要になるが,とりあえず方向についての平均を考える。

平均自由行程は,分子の相対速度の大きさ$\langle u \rangle$を単位時間当たりの衝突回数$z$で割ったものであるが,相対速度($\bm{u}=\bm{v}-\bm{v}'$)の大きさの向きによる平均値は次のようになる。

$\langle u \rangle = \dfrac{2\pi \int_0^\pi \sqrt{v^2 + {v'}^2 - 2 v v' \cos \theta }\ sin\theta d\theta}{2\pi \int_0^\pi sin\theta d\theta} = \frac{1}{2} \int_{-1}^1 \sqrt{v^2 + {v'}^2 - 2 v v' t} \ dt $

$\therefore \langle u \rangle = \frac{1}{2} \frac{2}{3} \dfrac{1}{-2 v v'} \Bigl | (v^2+{v'}^2 -2 v v' t)^{3/2} \Bigr |_{-1}^1 = \dfrac{1}{6 v v'} \Bigl\{ |v+v'|^3 - |v-v'|^3 \Bigr\}$

ここで$v=v'$とすれば, $\langle u \rangle = \dfrac{4}{3} v $となり,クラウジウスの平均自由行程は,$\lambda = \dfrac{1}{\frac{4}{3} \rho \sigma }$


2021年10月30日土曜日

マクスウェル分布

平均自由行程の計算にはやはり気体分子速度のマクスウェル分布が必要かもしれない。これは,気体分子運動論でもボルツマン統計正準集団)の一般論からも求められる。ここでは前者についてまとめる。

ある領域内のN個の気体分子が速度 $\bm{v} \sim \bm{v} + d\bm{v}$にある確率を$P(\bm{v})$とし,それが速度分布関数$F(\bm{v})$によって,$P(\bm{v}) = F(\bm{v}) d\bm{v}$ で与えられるとする。このとき,$\int P(\bm{v}) d\bm{v} = 1$であり,物理量 $Q(\bm{v})$の期待値は,$\langle Q \rangle = \int  Q(\bm{v}) P(\bm{v}) d\bm{v} $となる。

ここで,速度の独立性と等方性を仮定すると,$F(\bm{v}) = f(v_x) f(v_y) f(v_z) = F(v^2)$ となる。すなわち,各成分の速度分布関数は共通の関数形の$f(v_i)$で与えられるとともに,$F(\bm{v})$は,速度ベクトルの二乗 $v^2=v_x^2+v_y^2+v_z^2$の関数となる。

先の式の両辺を$v_x$で微分すると,$F'(v^2) 2v_x = f'(v_x) f(v_y) f(v_z) = \dfrac{f'(v_x) }{f(v_x)} F(v^2)$となる。したがって,$\dfrac{F'(v^2) }{F(v^2)} = \dfrac{f'(v_x) }{2 v_x f(v_x)}=-\alpha$となる。最初の等式の両辺は異なった変数の関数なので,その値は定数でなければならず,それを$-\alpha$とおいた。

この微分方程式を解くと,$F(v^2)=A e^{-\alpha v^2},f(v_x)=A_x e^{-\alpha v_x^2}$となる。規格化のための積分をすると,$4\pi \int_0^\infty A e^{-\alpha v^2} v^2 dv = A\bigl( \dfrac{\pi}{\alpha}\bigr) ^{3/2} =1$となるので,$A=\bigl( \dfrac{\alpha}{\pi} \bigr) ^{3/2}$。したがって,$P(\bm{v}) = \bigl( \dfrac{\alpha}{\pi} \bigr) ^{3/2} e^{-\alpha v^2}$

気体分子の運動エネルギーの平均値が,$\int \dfrac{m v^2}{2} P(\bm{v}) d\bm{v} = \frac{3}{2}k_B T$となることから,$\dfrac{m}{2}\bigl( \dfrac{\alpha}{\pi} \bigr) ^{3/2}\dfrac{3}{2\alpha}\bigl( \dfrac{\pi}{\alpha} \bigr) ^{3/2} = \dfrac{3}{2}k_B T$。したがって,$\alpha = \dfrac{m}{2 k_B T}$であり,$F(v^2) = \Bigl( \dfrac{m}{2\pi k_B T} \Bigr) ^{3/2}  e^{-\frac{m v^2}{2 k_B T}} $

25℃1気圧の窒素気体の平均速度は$\langle v \rangle =\sqrt{\frac{8 k_B T}{\pi m}}= 475 {\rm m/s}$,平均自由行程は$9.3 \times 10^{-8} {\rm m}$である。

図:マクスウェル分布の概形


2021年10月29日金曜日

立体角

 平均自由行程を考えるために色々試行錯誤していたら,立体角の計算が必要になった。球の外側にある点から球を見込む立体角である。図のように,半径$a$の球の中心${\rm Q}$から,$\overline{\rm PQ}=\ell (>a)$の距離に点${\rm P}$をとる。

${\rm P}$から球を見込んだ時の球との接円が$x-y$平面にできるとする。接円と$y$軸の交点を${\rm A, B}$とすると,$\overline{\rm PA} = \overline{\rm PB} = \sqrt{\ell^2-a^2}$となる。

立体角$\Omega$は次の積分で与えられる。$\Omega = \int_0^{2\pi} \int_{\pi/2}^{\pi/2+\alpha} \sin\theta d\theta d\phi = 2\pi [-\cos \theta]_{\pi/2}^{\pi/2 + \alpha} = 2\pi \sin \alpha$ 。ただし,$ \alpha = \angle {\rm QPA}$であり,$\sin \alpha = \frac{a}{\ell}$。


図:球を見込む立体角

2021年10月28日木曜日

平均自由行程(1)

ラジオメーター(2)からの続き

平均自由行程の式は,$\lambda=\dfrac{1}{\sqrt{2} \rho \sigma}$とした,$\rho$は気体分子密度,$\sigma$は気体分子の衝突断面積である。で,$\sqrt{2}$がどこから出てきたのかは,簡単そうな難しそうな話だった。

固定された分子群に平均速度$v$の粒子が進んでいるとき,単位時間当たり,長さ直径$d$の円筒内の分子とは衝突することができる。静止している気体分子密度が$\rho$なので,単位時間当たりの衝突回数は,$n=\rho \pi d^2 v$である。そこで一回当たりに進む距離は,$\dfrac{v}{n}=\dfrac{1}{\rho \pi d^2} = \dfrac{1}{\rho \sigma}$となる。ただし,衝突断面積は $\sigma = \pi d^2$である。

簡単そうな話では次のようになっている。全ての粒子が動いている場合,衝突する2分子の速度ベクトルを$\bm{v}$と$\bm{v}'$とすると,相対速度ベクトルは,$\bm{u}=\bm{v}-\bm{v}'$となり,$u=|\bm{u}|$の平均値を先ほどの$v$に当てはめる必要がある。そこで,$\overline{\bm{u}^2}=\overline{\bm{v}^2}-2\overline{\bm{v}\cdot\bm{v}'}+\overline{\bm{v}'^2}$より,$u^2=v^2+v^2$となる。先ほどの$v$は$u=\sqrt{2} v$に置き換えられるから,$\sqrt{2}$があらわれる。ただし,速度ベクトルの相対的な向きはランダムであるとして,$\overline{\bm{v}\cdot\bm{v}'}$=0を用いた。

実のところはもう少し複雑な計算が必要らしいが,その前提として気体分子速度のマクスウェル・ボルツマン分布が必要なのかどうか。混合気体のマクスウェル・ボルツマン分布はどうなるかなど疑問が続く。

[1]衝突頻度と平均自由行程(山崎勝義)

2021年10月27日水曜日

ラジオメーター(2)

 ラジオメーター(1)からの続き

実験的な事実として,ラジオメーターの羽根車が一番よく回転するのは,1Paぐらいの圧力の場合であり,高真空では回転しない。これから,光の放射圧が原因ではないといえる。また,紫外線や白色LEDライトではあまり回転せず,熱を持つハロゲンランプや蝋燭ではよく回転する。さらに,ガラス面に接触した掌でもわずかに回転することやガラス面を冷却すると逆回転することから,赤外線の吸収や放出による残留気体の熱効果であることがわかる。

つまり,羽根車面の色の違いから生ずる温度勾配による内部の残留気体の運動が回転の原因ということになる。それでは,これを記述するのは流体力学の基礎方程式なのか,気体分子運動論の基礎方程式なのか。これを判定するのがクヌーセン数 $K_n$になる。

$K_n = \dfrac{\lambda}{L} = \dfrac{k_B T}{\sqrt{2} \pi d^2 P L}$

ここで,$\lambda$は平均自由行程,$k_B, T, P$はボルツマン定数及び気体の温度と圧力,$\pi d^2=\sigma$ は気体分子の断面積である。また,$L$は問題の系に対する代表的長さである。なお,$\dfrac{k_B T}{P}=\dfrac{V}{N}= \dfrac{1}{\rho}$であり,$\rho$は気体の数密度になる。これから,平均自由行程(速度 / 単位時間当たり衝突回数)は,$\lambda = \dfrac{1}{\sqrt{2} \rho \sigma}$とも表される。

気体の温度を300K,圧力を1Pa,系のサイズを0.1m,気体分子サイズ$d$=1 Å =$10^{-10}$mとして,$K_n=0.9$となる。$K_n$ <0.01 連続領域,0.01 < $K_n$ < 0.1 近連続領域,0.1 < $K_n$ < 10 遷移領域,10 < $K_n$ 自由分子領域 ということなので,これは流体力学よりも気体分子運動論的なボルツマン方程式で扱うのが適当なのではないか。


2021年10月26日火曜日

ラジオメーター(1)

 物理学科同期の同窓会関係の連絡をしていたら,楠本君からクルックス・ラジオメータについての質問があった。

真空に引いた(1 Torr程度)ガラス球の中に,羽根車が取り付けられており,4枚の羽根の片面が黒,他面が銀になっている。これに外部から光(赤外線)を当てると,熱の吸収の不均衡から温度勾配が生じる。それが残留空気の対流?を引き起こして,その反作用で羽根車が軸の周りに回転する。これにより,光の光度を調べることができるというのがラジオメータだ。現在では主に観賞用になっている。

羽根車の回転の原因として,光圧や面上の残留気体の分子運動による説明がされていたことがあったが,いずれも否定されているのか。柳田君からは,でんじろう先生のYouTubeを紹介された。色々な種類の光源による実験や,手作りラジオメータの実験はどは,非常に興味深いものだった。

ただ,まだ完全に理解できているわけではない。熱ほふく流,radiometric force,Knudsen force,エッジ効果と面効果,2Dシミュレーションの妥当性,などなど次々と芋づる式に疑問ワードが湧いて出てくるのであった。


写真:ラジオメーター(共立電子産業から引用)


2021年10月25日月曜日

光の雨:立松和平

 夜の谷を行く:桐野夏生からの続き

一年かかって,ようやく立松和平光の雨を読了。まとまった時間がないと本が読めないのだが,法事で金沢まで往復したサンダーバードの時間を使うことができた。

狂言回しの周辺ストーリーは本質的なものではないと思うので,そこを批判するのはあまり当たらないのではないか。ただ,勾留中の坂口弘死刑囚の著作からの盗作疑惑を指摘されたため,大幅に改訂して文庫本となっているとのこと。

物語の主人公は,玉井潔(坂口弘 1946.11-)である。彼が80歳になっていて,死刑制度が廃止された2026年という時点に時代設定がなされている(Wikipediaには2030年とあるが,玉井が80歳になったばかりで,55年前の事件というキーワードがあることから2026年と推定できる)。その思い出語りの形で,連合赤軍事件(真岡銃砲店襲撃事件印旛沼事件山岳ベース事件)を中心に事件の概要を肉付けしたストーリが描写されている。

前半を印旛沼事件までに費やしていたが,こちらはよく知らなかった。後半の山岳ベース事件は,朝刊に載った写真が生々しくショッキングだったことを憶えている。早岐やす子(21歳) ,向山茂徳(20歳);尾崎充男(22歳) ,進藤隆三郎(21歳) ,小嶋和子(22歳) ,加藤能敬(22歳) ,遠藤美枝子(25歳) ,行方正時(25歳) ,寺岡恒一(24歳) ,山崎順(21歳) ,山本順一(28歳) ,大槻節子(23歳) ,金子みちよ(24歳) ,山田孝(27歳) の14名を概ねカバーした記述がされていた。

立松和平の湿っぽさが内容にマッチしていたのかもしれないが,あらためて山本直樹のレッドをまとめて読んでみたくなる。


写真:光の雨の書影(Amazonから引用)

[1]連合赤軍事件スクラップブック


2021年10月24日日曜日

ルーシー

 木星の5つのトロヤ群小惑星を探査する宇宙探査機ルーシーが先週の土曜日(10月16日)にケープ・カナベラル宇宙軍基地から打ち上げられた。あれ,ケープ・カナベラルはケープ・ケネディに改名されていたのではなかったかと思ったが,どうなったのか。

ケネディ暗殺1週間後の1963年11月29日に,NASAの発射管制施設はケネディ宇宙センターに名称が変更されている。マーキュリー計画やジェミニ計画では,隣接するケープカナベラル空軍基地の発射施設が使われていたので,小学生の自分にはケープ・カナベラルは馴染みの名前だった。そのケープカナベラルもケープケネディという地名に変更されたと思っていたが,地名の方は1973年に元に戻されたようだ。知りませんでした。

フロリダ半島中部東岸のこの地域は,ジュール・ベルヌの「月世界旅行」の中で発射砲が設置されたフロリダ半島中部西岸のタンパに近かったので,アポロ計画のころにはちょっとした話題になっていた。

さて,ルーシーという名称は最初期のアウストラロピテクス人骨のルーシーからきているということだが,これはさらにビートルズのルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズが由来ということで,なんだか巡り巡って複雑なことになっている。


写真:サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(Amazonから引用)



2021年10月23日土曜日

中性子の寿命パズル

原子核から飛び出した自由中性子の寿命は,宇宙初期の元素合成の話や標準模型におけるCMK行列の値などに関わる非常に重要な物理量である。実験的には,磁場や重力で閉じ込められた超冷中性子の数(ベータ崩壊している電子の数なのか?)を数えるボトル法と,飛行中の中性子が崩壊してできる陽子数を数えるビーム法に分けられる。

ところが,この2つの方法で得られる実験値は,ビーム法 が 888.0 ± 2.0 秒,ボトル法が 879.4 ± 0.6 秒であり,そ の差は 8.6 秒 (4σ) と大きな乖離がある。なお,ボトル法(超冷中性子)の最新のデータは,τn = 877.75 ± 0.28(stat.) + 0.22 / − 0.16(sys.) 秒であり,差は埋まっていない。

これに対して,KEKでは電子を計数する新しいビーム法の実験の準備がされている。また,全く独立な方法として,惑星/月探査機に積んだ表面組成分析用の中性子検出器を用いる方法が提案されている。精度は十分ではないが,水星や金星のフライバイのデータから,τn = 780 ± 60(stat.) ± 70(sys.) 秒を,月探査機のデータからτn = 800 +40/-50(stat.) ± 17(sys.) 秒が得られた。

なお,最新のLunar Prospectorのデータでは,τn = 887 ± 14(stat.) +7 / -4(sys.) 秒となっている。

図:今回の値は電子を測定するビーム法(京都大学のプレスリリースより)

[1]中性子寿命の謎の解明に向けて(KEK,2021.2.17)

2021年10月22日金曜日

原子の四重極能率

 原子核は,構成粒子間の力が面倒なテンソル力だったりする関係で,球形以外の回転楕円体などの形(フットボール型,パンケーキ型)が普通に見られるのだけれど,現代物理学の授業で「原子はみんな球形なのですか?」という質問があった。

原子は,原子核を中心としたクーロン力が支配的なので,どうなのか考えたこともなかった。もちろんE2遷移はあるけれど,基底状態で静的な四重極能率を持つ原子があるのだろうか。さっそく検索してみるのだけれど,なかなかこれといった情報にたどりつかない。分子はいいんですよ,ほとんど自明だから。

そもそも原子の基底状態で,全角運動量が 1 以上のものがあるのだろうか。たかだか100個しかないのだからどこかに簡単なテーブルが見つかるはずだ。あ,電子が奇数個であってその価電子が 0 でない(できれば2以上の)軌道角運動量を持てばばいいわけか。となると3d軌道や4d軌道に奇数個の電子があれば(Sc, V, Mn, Co, Y, Tc)J=3/2か5/2が作れそうなので,原子の電気四重極能率が 0 でない可能性がある。

周期表をあれこれみても電子配置はかいてあるものの,肝腎の全角運動量の情報がないのだ。どうなっているの?四重極能率の計算に全角運動量は関係ないのか?そんなこんなで少しだけかすっているような情報があったけれど,これは原子単体の話ではないかも。


図:電気四重極子の等ポテンシャル面(Wikipediaより引用)

2021年10月21日木曜日

フォトグラメトリ

 水中考古学の山舩幸太郎の話がテレビで流れていた。NHKのカネオ君だったのかな。YouTubeチャンネルもある。沈没船の様子を記録するためには,長期間のダイビング作業が必要であり,コストもたいへんなものになるところ,フォトグラメトリの技術を使って圧倒的に時間と費用が削減できたという印象的な話だった。

そういえば,大学の地学実験の授業ではじめてみたステレオグラムの写真に感動したことを思い出した。ここでは狭義に「デジタルカメラ等で多面的に撮影した複数のデジタル写真をコンピュータで画像解析し,3次元コンピュータグラフィックス等を得るプロセス」のことを考えたい。

AppleのMacBook発表会をみて,ほとんどのYouTuberが単純な性能や機能談義に終始していたところ,トバログ氏が,MacBook Proからみえる今後のAppleの方向性を議論していたのがおもしろかった。それは,Appleが出遅れている 3DCGを利用したVRARなどのMRが重要な役割を果たす世界である。

その兆候は,iPhoneカメラにおけるLiDARセンサーや,次期macOSのMontereyにおけるObjectCaptureという開発者向けAPIなどにみられる。そう,住宅・建築・土木関係や美術館・博物館・考古学あたり,あるいは自動運転・ロボティックス業界の皆様にとってはフォトグラメトリ最強かもしれませんが,一般コンシューマにtiktokのように浸透するには何が必要なのだろうか。VR/ARヘッドセットをかぶるのはちょっと勘弁してほしいのだけれど。


図:photogrammetryのイメージ(lecture.nakayasu.comから引用)

[1] Sketchfab(The Leading Platform for 3D & AR on the web)

2021年10月20日水曜日

MacBook Pro

 4月にMacBook Pro (mid 2012)を壊してしまって MacBookAir (2020 M1)に乗り換えてから半年たった。M1 MacBook Air は大変快調に動作している。夏場に少し熱くなったファンレスマシンだけれど,バックグラウンドで動いていたソフトを1つ外したところ,全く問題なくなった。これからはむしろ掌に冷たいボディの心配をする必要があるかもしれない。

さて,昨日(日本時間2021年10月19日未明)のAppleEventで,新しいM1 Pro/MAX チップを搭載した MacBook Pro が発表された。ネット上ではかなり盛り上がっている。新しいチップは,従来のM1チップに比べて面積が2〜3.5倍(トランジスタ数がMAXで570億個)。CPUコア数は8(高性能4+省電力4)から10(高性能8+省電力2)へ,GPUコア数は8から16/32へと増えている。メモリ帯域幅は200GB/s または 400GB/sで,従来のM1チップの3〜6倍である。

今のM1チップとシングルコアでの性能は変わらないそうで,マルチコアによる性能が1〜2倍の範囲で強化されるということになる。Appleの宣伝では大変素晴らしいことになっているが,あくまでも旧いIntelチップとの比較であり,実運用上どこまで確かなのかは試してみないとわからない。最も,動画編集をしない自分にはそもそも関係ない話かもしれない。

というわけで,新しいMacBookで一番良かったのは,TouchBARの廃止。TouchIDの採用,1080pのフロントカメラ,USB-C (Thunderbolt 4) × 3ポート,Magsafeの復活かな。3.5mmヘッドフォンジャックも残った。それに+10万円の価値があるかどうかという問題だけど・・・。

(1) MacBook Air  13":21.2 × 30.4 × (0.4-1.6) 1.3kg, 8CPU+8GPU, 16G+1T = 20万円

(2) MacBook Pro 14" (Pro):22.1 × 31.3 × 1.5 1.6kg, 10CPU+16GPU,16G+1T = 30万円

(3) MacBook Pro 14" (Pro):22.1 × 31.3 × 1.5 1.6kg, 10CPU+16GPU,32G+2T = 39万円

(4) MacBook Pro 14" (MAX):22.1 × 31.3 × 1.5 1.6kg, 10CPU+16GPU,32G+2T = 43万円

(5) MacBook Pro 14" (MAX):22.1 × 31.3 × 1.5 1.6kg 10CPU+32GPU,64G+4T = 54万円


写真:MacBook Pro 2021 のサイドビュー(Appleより引用)


写真:M1チップの面積(Appleより引用)

2021年10月19日火曜日

ルジャンドル変換(4)

 ルジャンドル変換(3)からの続き

ルジャンドル変換の例題を考えていて,$f(x=0)=f^*(p=0)=0$ならば,積分の図とうまく整合するのだが,そうでない場合にどうなるのかちょっと困った。そこで,簡単な2次関数の例で試してみた。

図:定数分の補正で説明できるルジャンドル変換の例

図左のように元の関数を,$f(x)=(x-a)^2+b$とする。このとき$x$が増加して$f(x)$が減少する部分があるので,正の面積だけでは表現できない。実際,図中で$f'(x)$は$0<x<a$で負になる。そこで,$f(x) = \int_0^x f(y) dy + C$として,初期値を$f(0)=(a^2+b)=C$,$x$軸以下の部分の面積を負の量として考える。

このとき,$f^{*}(p)= \int_{-2a}^p {f^{*}}'(q) dq - C$として,$f(x) + f^{*}(p) = x\,p$が成り立つことになる。図右には,結果としての$f^{*}(p)$のグラフを示している。このように積分領域や定数を適当に調整することで,面積によるルジャンドル変換の解釈はそのまま使えると思われる。

この例では,$x$の範囲は,$0<x$としているが,$x_\min < x < x_\max$の範囲で$f(x)$を定義し,これに対応する $p_\min < p < p_\max$ の範囲の$f*(p)$を考えて,定数分の補正をすれば良い。

2021年10月18日月曜日

ルジャンドル変換(3)

 ルジャンドル変換(2)からの続き

田崎さんの熱力学の付録HのLegendre変換によれば(変数$\alpha \rightarrow p$として),$f(x)+f^*(p) \ge x p$ というYoungの不等式が成り立つとある。ルジャンドル変換を一般化した凸共役性のところでも,フェンシェル=ヤングの不等式として示され,これらはルジャンドル変換の定義(min/maxを用いるもの)から直ちに導かれるとしている。

ところが,積分で表示した場合はどうなのかちょっと困った。まあ,不等号でmin/maxの条件に当てはまらないところを考えるということならば,単調増加する連続関数の積分における不等式で説明できたということにすれば良いのかな。

(例1)$f(x)=a x^2 + b x$のルジャンドル変換。$f'(x)=2 a x+ b =p$から$x=\frac{p-b}{2a}$が最小値を与える$x$である。これを用いて,$f^*(p) = x p - f(x) = x p - (a x^2 + b x) |_{x=\frac{p-b}{2a}} = \frac{(p-b)^2}{4a}$

(例2)$\alpha, \beta > 1, \frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta}=1$として,$f(x)=\frac{1}{\alpha}x^\alpha$のルジャンドル変換。$f'(x)=x^{\alpha-1}=p$から$x=p^{1/(\alpha-1)}$が最小値を与える$x$である。これを用いて,$f^*(p) = x p - f(x) = x p -\frac{1}{\alpha}x^\alpha |_{x=p^{1/(\alpha-1)}} = p^{\alpha/(\alpha-1)} - \frac{1}{\alpha}p^{\alpha/(\alpha-1)} = \frac{\alpha - 1 }{\alpha} p^{\alpha/(\alpha-1)} = \frac{1}{\beta} p^\beta$となる。すなわち,$\dfrac{x^\alpha}{\alpha} + \dfrac{p^\beta}{\beta} \ge x p$ が成り立つ。

(例3)対応する変数を$(\dot{x}, p)$として,$f(\dot{x})=L(\dot{x},x)=\frac{1}{2}\dot{x}^2-\frac{1}{2}x^2$のルジャンドル変換。$\frac{\partial L(\dot{x},x)}{\partial \dot{x}}=\dot{x} = p$となる。これを用いて,$f^*(p)=H(p,x)=\dot{x} p - L(\dot{x},x) = p^2 - L(p,x) = \frac{1}{2}p^2 +\frac{1}{2} x^2$となる。

2021年10月17日日曜日

ルジャンドル変換(2)

 ルジャンドル変換(1)からの続き

ルジャンドル変換にかかわる関数として,2階微分が正であるC1級関数ではなくて,凸関数という表現を使っているのは,相転移点で微分可能でなくなるような熱力学的関数に対してもルジャンドル変換をしたいがためだとあった。

ということで,ある関数$f(x)$の1階微分$f'(x)$が不連続になるような場合を図示してみると次のようになる。この場合も$f(x)$は連続になっている。

通常,このような場合の関数$f(x)$のルジャンドル変換$f^*(p)$は,次の式で表現されている。

$f^*(p) = - \underset{x}{\min} \{ f(x) - p\, x \} =  \underset{x}{\max} \{ p\, x - f(x) \}$

一階微分できる点の場合はカッコ内を$x$で微分すれば,$p$と$x$が一意的に対応する。そうでない点の場合は,その点の左微分から右微分の値の範囲の$p$に対して,上記の条件から$f^*(p)$を定めることになる。


図:一階微分が不連続な場合のルジャンドル変換のイメージ


2021年10月16日土曜日

ルジャンドル変換(1)

 ルジャンドル変換は,積分を使って表現するとわかりやすいという説と通常の説明の対応について考えてみたい。この過程でtikzにおける塗りつぶし方法を練習した。


図:ルジャンドル変換のための説明図

原点を通る単調増加関数上の点C $(x,p)$があって,図のように矩形の領域をとる。矩形領域内で関数の下の部分の面積を$f(x)$,上の部分の面積を$f^*(p)$とすると,$f(x)+f^*(p)=xp$が成り立つ。$f^*(p)$が$f(x)$のルジャンドル変換になる。同様に,$f(x)$は$f^*(p)$のルジャンドル変換である。$f^*(p)$のルジャンドル変換は$f^{**}(x)$とも書けるから,$f^{**}(x)=f(x)$となって,ルジャンドル変換を2回繰り返すと元の関数に戻る。

この単調増加関数は,$x$の関数とすると$f'(x)$であり,$p$の関数と見れば${f^{*}}'(p)$となる。そこで,$f^*(p)$を求めるには,$p=f'(x)$を$x$について解いて,$x=\varphi(p)$を求めてから,$f^*(p) = x p - f(x) = \varphi(p) \cdot p - f(\varphi(p))$として求めることができる。

いいかえれば,$f(x) = x p - f^*(p) |_{p=f'(x)}$ として,元の関数$f(x)$が,傾き$p$と切片$ - f^*(p)$でも表現されるということになる。
/begin{tikzpicture}
\tikzstyle{every node}=[font = \Large];
\filldraw (0,0) circle(1pt) node[below left]{O};
\draw[->] (-2,0) -- (8,0) node[right]{$x$};
\draw[->] (0,-2) -- (0,8) node[above]{$p$};
\draw[step=1.0, dotted] (-2,-2) grid (8,8);
\draw [dotted, pattern=north west lines, pattern color=blue] (0,0) -- (1,1.3) -- (2,2) -- (3,2.4) -- (4,3)-- (5,4) -- (6,5.4) -- (6,0);
\draw [dotted, pattern=north west lines, pattern color=red] (0,0) -- (1,1.3) -- (2,2) -- (3,2.4) -- (4,3) -- (5,4) -- (6,5.4) -- (0,5.4);
\draw[domain=0:3, thick] plot(\x,{-0.2*(\x-3.5)^2+2.45});
\draw[domain=3:7, thick] plot(\x,{0.2*(\x-2)^2+2.2});
\filldraw (6,0) circle(1pt) node[below]{$x$};
\filldraw (3,2.4) circle(1pt);
\filldraw (6,5.4) circle(1pt) node[right]{C};
\node[below right] at (6.5,5.4) {$f^{'}(x)$};
\node[above left] at (6,5.4) {$f^{*'}(p)$};
\filldraw (0,5.4) circle(1pt) node[left] {$p$};
\draw[blue] (4,1) node{$f(x)$};
\draw[red] (2,4) node{$f^*(p)$};
\end{tikzpicture}

2021年10月15日金曜日

日本人のノーベル賞

日本における最近の科学や経済の衰退傾向から,将来,日本人の自然科学系のノーベル賞受賞者が出なくなるのではといわれることがある。一方,最近の中国や韓国は日本より科学技術,経済分野で先んじてはいるけれど,まだノーベル賞受賞者をどんどん輩出するようにはなっていない。

ある研究や発明がなされたときと,それが評価されて普及するようになるまでには時差があることが,その一因と考えられる。そこで,日本人(日本出身)の自然科学系のノーベル賞受賞者25名の,研究・発明年と受賞年をグラフに書いてみた。研究発表の時点から受賞までには平均で約26年かかっているようだ。

図: 日本人の受賞年(横軸)と研究発表年(縦軸)
(赤は時差が25.9年,オレンジは25.9±5年を表す)

湯川秀樹が最初に受賞してからの50年間では5名だけだったのが,2000年以後の20年間余で20名ということになる。1970年代から1990年代にかけて,日本の経済や科学を取り巻く環境が良かった時代を反映しているのかもしれない。

なお,上記のグラフを書くためのJuliaのコードは以下の通りであり,Gadfly.jl でグラフをオーバレイする方法がわかった。

using Gadfly
using Compose
using DataFrames
X = [1949,1965,1973,1981,1987,2000,2001,2002,2002,2008,2008,2008,2008,2010,2010,2012,2014,2014,2014,2015,2015,2016,2018,2019,2021]
Y = [1935,1947,1957,1952,1976,1976,1987,1985,1987,1962,1973,1973,1960,1977,1979,2006,1985,1985,1992,1997,1996,1992,1992,1985,1967]
Labels = ["湯川","朝永","江崎","福井","利根川","白川","野依","田中","小柴","下村","小林","益川","南部","根岸","鈴木","山中","赤碕","天野","中村","大村","梶田","大隅","本庶","吉野","真鍋"]

p1=layer(x=X, y=Y, label=Labels, Geom.point, Geom.label, Theme(major_label_font="CMU Serif",minor_label_font="CMU Serif",major_label_font_size=12pt,minor_label_font_size=12pt))
p2=layer(x->x-25.9, 1949,2035, color=[colorant"red"])
plot(p1,p2)
p3=layer(x->x-20.9, 1949,2035, color=[colorant"orange"])
plot(p1,p2)
p4=layer(x->x-30.9, 1949,2035, color=[colorant"orange"]) 
plot(p1,p2,p3,p4)

2021年10月14日木曜日

凸関数

 ルジャンドル変換について調べようと,田崎さんの熱力学谷村さんの資料を見ていたら,事前知識として凸関数(Convex Function)が要求された。それは次のようなものだった。

(1) 定義:ある区間で定義された実数値関数 $f(x)$ において,区間内の任意の点,$x_1 < x_2$に対して,$0 < \lambda < 1$ として,$f((1 - \lambda) x_1 + \lambda x_2) \le (1 - \lambda) f(x_1) + \lambda f(x_2)$ を満足する$f(x)$は凸関数であるという。

(2) 凸関数は連続である。

(3) 凸関数が2回微分可能な点$x$では,$f''(x) >0$である(2回微分できない点もある)。

(4) 任意の点$x_0$ で右微分$f'_{-}(x_0)$と左微分$f'_{+}(x_0)$が存在し,次の条件,$f'_{-}(x_0) < \alpha < f'_{+}(x_0)$を満足する定数$\alpha$に対して,$f(x) \ge f(x_0) + \alpha (x - x_0)$となる。

(5) 一階微分可能な点$x_0$では,$f(x) \ge f(x_0) + f'(x_0) (x - x_0)$ が成り立つ。


図:凸関数の定義のための補助図


2021年10月13日水曜日

請願権

衆議院選挙の東京8区における,山本太郎と立憲民主党の間での出馬問題についてのトークで,安富歩が請願権について述べていた。新自由主義的な日本維新の会推しで潜在的に学歴差別的傾向を持つ朝日新聞が,あれほどまで山本太郎をディスるのは,2013年の園遊会における天皇への手紙問題以来ではという説だ。

その山本太郎の問題点は,法律上の手続きにあるのであって,天皇への請願が禁止されているわけではないということだった。

日本国憲法第十六条

何人も,損害の救済,公務員の罷免,法律,命令又は規則の制定,廃止又は改正その他の事項に関し,平穏に請願する権利を有し,何人も,かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

請願法

第1条 請願については,別に法律の定める場合を除いては,この法律の定めるところによる。

第2条 請願は,請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合は居所)を記載し,文書でこれをしなければならない。

第3条 請願書は,請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。天皇に対する請願書は,内閣にこれを提出しなければならない

第2項 請願の事項を所管する官公署が明らかでないときは,請願書は,これを内閣に提出することができる。

第4条 請願が誤つて前条に規定する官公署以外の官公署に提出されたときは,その官公署は,請願者に正当な官公署を指示し,又は正当な官公署にその請願書を送付しなければならない。

第5条 この法律に適合する請願は,官公署において,これを受理し誠実に処理しなければならない。

第6条 何人も,請願をしたためにいかなる差別待遇を受けない。

附則 この法律は,日本国憲法施行の日から,これを施行する。


2021年10月12日火曜日

フレッツ光 vs eo光

 最近,自宅のネットワークが遅いというクレームが上がってきている。コロナによる在宅勤務が進んでいるからなのか,なんとなくトラフィックが混んでいるような気がする。より大きな問題は,現在利用しているKCNの集合住宅向けインターネットサービス「Kブロードマンションプレミアム320特割」が下り最大320Mbps,上り最大10Mbpsのベストエフォートサービスであることだ。非対称はいいとしても上りが遅すぎるので,まともなビデオ会議が成立しにくいのだ。

ところでマンションの玄関にはフレッツ光(プラン2)とeo光の案内が貼っている。これでFTTHを実現すれば,速くなるんじゃないかなと思ったがいくつか懸念事項がある。(1) ほんとに速くなるのか,(2) アクセスポイントの機器(ONU)はどこに設置されるのか,(3) KCNのメールは使えるのか,などなど。

(1) フレッツ光eo光遅いを組み合わせて検索すると,出るわ出るわ,こりゃダメだ。前者はユーザが多すぎて,分岐が多いことが理由として挙げられている。マンションの共用部の光スプリッタあたりは1Gbpsと書いてあるが,これもベストエフォートなのでどうだか微妙だ。eo光の方は電話してみると,VDSL上下100Mbpsとのこと。なーんだ,紛らわしい。

(2) アクセスポイントが,現在の同軸線(TV)と電話線(NTT)のどちらあたりになるのかを知りたくてフレッツ光(NTT)のサポートに問い合わせたが,対応の官僚的なこと甚だしで,何にもヒントを教えてくれなかった。ウェブサイトもeo光の方が断然親切なのである。これなら同じNTT回線でもソフトバンク光にしたほうがマシかも。

(3) KCNのメールであるが,KCN側にフレッツ光ネクスト対応プランがあるので,これを使えばなんとかなる。最悪は,別プロバイダ回線でもアクセスできるようにKCN側に問い合わせて設定すればいいはずだが面倒だ。KCNのTV共同視聴設備点検に来たお兄さんに聞いてみたが,弱小KCNではマンションのFTTHになかなか手が出せなさそうだ。

(4) 別の解はないかと,Nuro光を調べたが,残念ながら天理市はサービス対象外。ふと,SoftBank Air はどうかと思ったら,これが思いのほか良さげである。いちいち無線ルータを買わなくてこれ一つで済むし,中継機も使える。問題は,天理市のこの辺りが最大200Mbps程度までであり5Gも使えないこと(これだから田舎は悲しい)。ソフトバンクの5G次第でこれも今後の選択肢になりそうだ。

いずれにせよ,現在のKCNのインターネットは2年縛りで継続されているので,解約できるのは,オリンピック開催年(2000+4n)の7月から9月の間だけである。さもなければ,8800円の解約金が取られるという寸法だ。


図:現在のKCNのKブロードプレミアム320の回線速度(朝7:00)

2021年10月11日月曜日

mas

 macOSのアプリは,Mac App Soreを経由してインストールするのが普通である。このためのアプリ名がApp Soreでなので,iOSやiPadOS用のサービス兼アプリの App Storeと同じ名前になっている。微妙にややこしい。

macOSのApp Storeアプリは普通のアプリケーションソフトウェアなので GUI(グラフィッカルユーザインターフェイス)でアクセスする。可もなし不可もなし。この CLI=CUI(コマンドラインインターフェース)版で mas(mas-cli)というものがあることがわかった。しかも,homebrewで簡単にインストールできた。使用例は次の如し。

$ mas list

863486266 SketchBook (8.7.0)
539883307 LINE (7.2.0)
640199958 Developer (9.2.3)
409222199 Cyberduck (7.10.2)
409183694 Keynote (11.2)
405399194 Kindle (1.33.0)
895264364 DjVu Reader Pro (2.5.8)
1380563956 辞書 by 物書堂 (1.2.15)
682658836 GarageBand (10.4.3)
1482454543 Twitter (8.82)
1496833156 Playgrounds (3.4.1)
425424353 The Unarchiver (4.3.3)
1168254295 AmorphousDiskMark (3.1)
1055273043 PDF Expert (2.5.18)
409203825 Numbers (11.2)
497799835 Xcode (13.0)
1153157709 Speedtest (1.22)
409201541 Pages (11.2)
721540800 PDF to DjVu (1.3.0)
1465576485 GraphicConverter 11 (11.5.2)
408981434 iMovie (10.2.5)
1438772273 Cinebench (23.2)
1024640650 CotEditor (4.0.8)
405843582 Alfred (1.2)
1444383602 GoodNotes (5.7.36)
1272842196 egword Universal 2 (2.2.11)
古くなってしまった(outdated)アプリケーションを更新する(upgrade)こともできるらしいのだが,どうもそれはうまくいかなかった(できたのもあるが)。