平均自由行程(2)からの続き
2種類の気体分子A(密度ρA,質量 mA,速度 vA)と気体分子B(密度ρB,質量mB,速度 vB)からなる温度Tの気体中の分子の平均自由行程を考える。両分子の衝突断面積をσABとし,それぞれはマクスウエル分布FA(vA), FB(vB)に従って運動しているとする。
つまり,単位体積中で,速度vK∼vK+dvKにあるK種の分子の数は,dnK=ρKF(vK)dvK=ρK(mK2πkBT)3/2exp(−mKv2K2kBT)dvKとなる。
そこで,上記の速度空間にある分子の衝突回数は,相対速度をu=vA−vBとして,dZAB=σAB|u|dnAdnBとなる。そこで,単位体積,単位時間当たりの全衝突回数は,ZAB=∫dnA∫dnB σAB|u|となる。
次に,衝突する各分子の速度vA, vBを相対速度uと重心速度Vで表す。重心速度は,V=mAvA+mBvBmA+mB=mAvA+mBvBMであり,vA=V+mBMu, vB=V−mAMuとなる。ただし衝突する2分子の全質量は,M=mA+mBであり,換算質量 をμ=mAmBMとする。
このとき,速度空間での積分は,∫dvA∫dvB=∫dV∫duであり,衝突する2分子の運動エネルギーの和も重心運動と相対運動に分離される,12(mAv2A+mBv2B)=12(MV2+μu2)
そこで,単位体積・単位時間当たりの2種の分子の全衝突回数を,重心・相対座標で表すと,zAB=ρAρBσAB(mA2πkBT⋅mB2πkBT)3/2∫dV∫du|u|exp(−MV22kBT)exp(−μu22kBT)=ρAρBσAB(M2πkBT)3/2∫dVexp(−μV22kBT)⋅(μ2πkBT)3/2∫du|u|exp(−μu22kBT) となる。
∴zAB=ρAρBσAB(μ2πkBT)3/24π∫∞0u3exp(−μu22kBT)du=ρAρBσAB√8kBTμπ
そこで,ある1つのA分子がB分子と単位時間に衝突する回数は,zA(B)=nBσAB√8kBTπμ
また,A分子=B分子として,ある1つのA分子が他のA分子と単位時間に衝突する回数は,換算質量が μ=mA/2となって,zA=ρAσAA√16kBTπmA=ρAσAA√2(2√π√2kBTmA)=ρAσAA√2⟨vA⟩
したがって,平均自由行程はλ=⟨vA⟩zA=1√2ρAσAAとなり,√2が現れる。
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