Loading [MathJax]/jax/output/CommonHTML/jax.js

2019年1月21日月曜日

角運動量の合成への道(3)

角運動量の合成への道(2)からの続き)

2つの独立な自由度からなる系の別の例として,1つの粒子が軌道角運動量Lとスピン角運動量Sを持つ場合を考える。これらを合成した全角運動量を J=L+Sとする(2粒子系の場合と同様,より正確には通常の3次元空間とスピン空間に作用する演算子のテンソル積 J=L1S+1LS)。

軌道角運動量Lの固有状態を|m,スピン角運動量Sの固有状態を|sとし,その積|m|sを考える。このとき,次の関係が成り立っている。
L2|m=(+1)2|m,S2|s=342|s,Lz|m=m|m,Sz|s=s|s,L±|m=(+1)m(m±1) |m±1,S±|s=34s(s±1) |s±1
また,合成角運動量Jも一般の角運動量の交換関係,[Ji,Jj]=iϵijkJkを満足するので,J2Jzの同時固有状態を|jμとすると,次の関係が成り立つ。
J2|jμ=j(j+1)2|jμ,Jz|jμ=μ|jμ
[J2,L2]=0,[J2,S2]=0,[Jz,Lz]=0,[Jz,Sz]=0などが成立するので,|jμ|m|sから構成することができる([J2,Lz]0[J2,Sz]0なので,一般には単独の|m|sJ2の固有状態ではない)。

(1)Jz|m|sに作用させる。
Jz|m|s=(Lz+Sz)|m|s=(m+s)|m|s
したがって,|m|sは,Jzの固有値μ=(m+s)の固有状態である。以下,m=μsと表記することもある。

(2)J2|μs|sに作用させる。
J2=L2+S2+2LS=L2+S2+2LzSz+L+S+LS+J2|μs|s={(+1)+34+2(μs)s}2|μs|s+(+1)(μs)(μ+s) 2|μ+s|s={j2+2sμ} 2|μs|s+j2μ2 2|μ+s|s
ここで,j=+12とし,s2=14を用いた。これから,J2の固有状態を構成するために,|jμ=α|μ12|12+β|μ+12|12 とする。ただし規格化条件より|α|2+|β|2=1である。この2つの独立な状態に対する固有値方程式は J2|jμ=λ2|jμ であり,α,βを用いると次のように行列形式で表される。
(j2+μj2μ2j2μ2j2μ)(αβ)=λ(αβ)
このα,βに対する連立方程式が自明でない解を持つための条件は,右辺を移行して0にしたときの左辺の行列式が0になることであり,(j2+μλ)(j2μλ)(j2μ2)=0というλの2次方程式になる。(λj(j+1))(λj(j1))=0からJ2の固有値λ2は,j(j+1)2j(j1)2である(したがって,j=jj1)。

(3)固有状態の構成
上記のαβの連立方程式に,固有値λを代入して,規格化条件とともにαβを求めると次のようになる。
λαβαβj(j+1)j+μ2jjμ2j+m2+1m+12+1j(j1)jμ2jj+μ2jm+12+1+m2+1
まとめると,
| j μ=j+μ2j|μ12|12+jμ2j|μ+12|12(λ=j(j+1))|j1μ=jμ2j|μ12|12j+μ2j|μ+12|12(λ=j(j1))

角運動量の合成へ道(4)に続く)

0 件のコメント: