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2023年5月18日木曜日

大学教育とChatGPT(5)


連休明けも,各大学から生成系AIの利用に関する注意が公開されている。もうすぐ東京外国語大学のアナウンスから2ヶ月近くになるが,現時点で100大学/790大学≒13%に達する。もちろん,学内だけの公開で観測されていない大学も多いかもしれない。

そろそろこれはという目新しい表現はなくなってきた。坂根弦太氏のブログによれば,92大学になっている。gmorikiさんはデータをExcelでまとめているのはすごいが,55大学にとどまっていた。

なお,データ収集は,google検索で,"生成系AI | 生成AI | ChatGPT +site:ac.jp" の結果から目視で選別している。
5月9日
ChatGPT等の生成系AI利用に関して
北海道科学大学 学長 川上敬

5月10日
対話型AI サービスの利用について
山梨県立大学教育改革推進室室長・副学長 八代一浩

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5月11日
筑波大学における生成系AIの使用に関する基本方針
筑波大学

5月11日
生成系AIの使用について
総合研究大学院大学

5月11日
生成系AI(ChatGPT等)の使用について
宮崎産業経営大学 学長 大村昌弘

5月11日
生成AIツールと教育についての教員向けガイド
大阪公立大学高等教育研究センター

5月11日
ChatGPTをはじめとする生成AIの利用に関して
神戸大学 海洋政策科学部・海事科学部・海事科学研究科

5月12日
生成系AI(ChatGPT等)の取り扱いについて
横浜国立大学 副学長(教育担当)髙木まさき・副学長(研究・情報担当)四方順司

5月12日
チャットGPT等の生成系AI(人工知能) 利用に関する対応について
常葉大学 副学長 安藤雅之・磯貝香・小田寛人 教務部長 笛木茂雄

5月12日
ChatGPT等生成系AI利用上の注意事項について
城西国際大学 学長・教務部長

5月12日
ChatGPTなどの生成系AI利用について
平安女学院大学学長 谷口吉弘

5月12日
APU における生成系 AI の利活用について
立命館アジア太平洋大学 教学部長 MEIRMANOV Serik

5月12日
生成系人工知能をはじめとするAIの利活用について
立教大学

5月12日
教育研究上における Chat(チャット)GPT 等の利用に関する注意事項
九州産業大学 学長 北島己佐吉

5月15日
ChatGPT等生成AIの利用について
慶應義塾大学

5月15日
ChatGPT等(AIチャットボット)の取扱いについて
独協大学

5月16日
生成系AIの利用について
和光大学 学長 半谷俊彦

5月16日
ChatGPT などの生成系人工知能(AI)について
順天堂大学 学長 新井一

5月17日
生成系AI(ChatGPT等)利用に関する注意事項について
新潟大学 学務部教務課

5月17日
生成系AIに対する大東文化大学の対応について
大東文化大学

5月17日
生成系AIの利活用について
関東学院大学 学長 小山嚴也

5月17日
ChatGPTをはじめとする生成系AIの利用について
明治大学 学長 大六野耕作

5月18日
ChatGPT等の生成AIへの対応について
敬愛大学 学長 中山幸夫

5月18日
生成系 AI(Generative AI)の利用に関する注意事項について
大分県立看護科学大学 学長 村嶋幸代

5月18日
大学での生成系AIの活用について
文教大学 学長 中島滋

2023年5月14日日曜日

教員向けChatGPT講座

5月13日の午後13:00から17:00過ぎまで,東京大学の工学系研究科国際工学教育推進研究機構吉田塁さんが,オンラインイベント「教員向けChatGPT講座」を開催していた。昼寝をしながらEarPodsで聞いていたが,充実した資料があったので大変参考になった。

その目次はつぎのようなものだ。
 • ChatGPT について
• ChatGPT の活用に関連する注意点
• ChatGPT に関連する知識
• ChatGPT と教育
• 国内外における大学の対応
• ChatGPT が教育に与える影響
• 影響1: ChatGPT は評価を揺るがす
• 影響2: ChatGPT は学習者の学習プロセスを支援し得る
• 影響3: ChatGPT は教員の授業作りを支援し得る
• 影響4: その他
• おわりに

最後のChatGPTが教育に与える影響部分が目新しい。この項目をGPT-4で膨らませてみた。
Q:User
ChatGPT が教育に与える影響として,(注:これが吉田さんの最後のスライドのポイントをほぼそのまま入力したたところ)
• AI リテラシー教育のニーズが高まる?
• 高次な認知能力が高まる?
• メタ認知能力がより重要になる?
• マネージメント・ファシリテ—ション能力が高まる?
• 専門性の重要性が認知される?
• 操作する人間の専門性や思考能力が試されている?


A:ChatGPT
AIの進歩とともに教育のパラダイムも変わってきていることは間違いありません。具体的には、ChatGPTや他のAI技術が教育に与える可能性のある影響を以下に挙げます。
AI リテラシー教育のニーズが高まる:
 現代の社会ではAI技術が多くの領域に浸透しており、それに対する理解と適切な使用が必要とされています。教育では、AIリテラシー教育のニーズが増大し、学生たちはAIの基礎的な理解を得るとともに、それをどのように活用するかを学ぶ必要があります。
高次な認知能力が高まる:
 AIが情報検索や基本的なタスクを行うことが可能になったため、人間の役割はより高次の認知能力にシフトする可能性があります。これには、批判的思考、創造性、問題解決能力などが含まれます。
メタ認知能力がより重要になる:
 AIと共同作業するためには、自分の思考と学習プロセスを理解し、それを調整する能力、つまりメタ認知能力が必要となります。これは自己調節、自己反省、自己認識などを含みます。
マネージメント・ファシリテーション能力が高まる:
 AIツールを効果的に使用するためには、それらを適切に管理し、指導する能力が必要です。これは、AIを学習プロセスに統合し、他の人々との協働を促進するためのスキルも含みます。
専門性の重要性が認知される:
 AIは多くの一般的なタスクを自動化することができますが、特定の専門知識やスキルを持つ人間の役割は依然として重要です。そのため、教育は専門性の開発とそれを活用する能力を高めることを目指すかもしれません。
操作する人間の専門性や思考能力が試されている:
 AIの効果的な活用は、その操作者の技術的な知識だけでなく、倫理的な判断や高次の思考能力をも試すことになります。これはAIが社会の多くの面で活用され、倫理的な問題や困難な決定を伴う可能性があるためです。これには、AIのバイアスの理解、プライバシー問題、情報セキュリティなどが含まれます。したがって、教育は技術的なスキルを超えた範囲で学生を準備することを求められるかもしれません。

全体として、AIは教育の領域において革新的な変化をもたらし、新たなスキルと理解を求めるようになります。しかし、これは教育者や学生にとってチャンスでもあり、学習の効率を高め、より深い理解を達成し、新しい方法で問題を解決する機会を提供します。これらの変化は、教育の方法だけでなく、我々が学ぶべき内容にも影響を及ぼし、未来の学習者が21世紀の社会で成功するために必要なスキルを持つことを保証するためには、教育システム自体の進化が必要となるでしょう。

2023年5月11日木曜日

大学教育とChatGPT(4)

大学教育とChatGPT(3)からの続き

大型連休を挟んで前回から2週間経過したので,4月27日以降の追加リスト(前回の取りこぼしを含む)をまとめてみた。大学ではないが,今年の4月に開校した徳島県の神山まるごと高等専門学校が,全学生・教員にChatGPTの有償ライセンスを付与というのが目に付いた。全学生44名と教職員に対して,月額$20を負担するということだ。

明確に禁止のメッセージを出すのも憚られるので,学生の本分は・・・的な道徳論に逃げ込みながら,それでも生成系AIの(この表現の方が生成AIより学術的だとアピールしつつ)重要性はわかっていますよ,といったおためごかしのメッセージであふれているのだった。

武蔵野美大のものは,メディア制作の現場に出る学生さんを預かっているだけに,思慮にとんだメッセージになっている。自分の目で確かめること,現状を知ること,概念的理解と法整備について考えること,危険な側面を考えること(ヘイトスピーチや差別にも言及している)など,後発組だけにこれまでの中でも出色のものだ。
4月12日
学修及び研究活動における AI の取り扱いについて
京都芸術大学大学院芸術研究科長 上村博

4月18日
ChatGPT等の生成系AIの使用に関する留意事項について
兵庫教育大学長 加治佐哲也

4月25日
ChatGPT 等の AI 対話サービスの利用について
山梨大学学長

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4月27日
ChatGPTをはじめとする生成AIの利用に関して
神戸大学 教育担当理事 大村直人

4月27日
人工知能の利用について(方針)
駒澤大学長 各務洋子

4月27日
ChatGPT など生成系 AI について
芝浦工業大学長 山田純

4月27日
生成系 AI(Generative AI)の利用に関する注意事項について
大分大学 教育マネジメント機構長 藤井弘也

4月28日
ChatGPT等の生成系AIに対する本学の方針について
北見工業大学 学長 鈴木聡一郎

4月28日
生成AIの利用について
⾼崎健康福祉⼤学 学⻑ ⽯⽥朋靖

4月28日
生成系AI利用に関する注意喚起の発出について
島根県立大学 学長 山下一也

4月28日
生成系AI(ChatGPT等)の使用に関する注意事項(第1報)
東京都市大学 副学長(教育担当) 大上浩

4月28日
ChatGPT 等生成 AI の修学上での利用について
宇都宮大学 理事(学務・社会共創担当)・副学長 吉澤史昭

5月1日
生成系AI(Chat GPT等)と「大学生としてのあり方」について
国士舘大学 学長 佐藤圭一

5月1日
全学生・教員にChatGPTの有償ライセンスを付与
神山まるごと高等専門学校

5月2日
生成系AI(ChatGPT、BingAIなど)の利活用について
近畿大学 学長 細井美彦

5月8日
対話型の生成系AI の利用について
流通科学大学 学長 藤井啓吾

5月8日
生成系AIについての基本的な考え方
神戸女子大学 学長 栗原伸公 副学長(研究・情報担当) 山根千弘

5月8日
宮崎国際大学の生成系AI(主に対話型AI)への対応について
宮崎国際大学 学長 村上昇

5月8日
ChatGPT等の生成系AIの学習での利用について
神奈川工科大学 副学長・教務主任 井上哲理

5月8日
勉学におけるChatGPT の利用について
清泉女子大学 学務部部⻑ 鈴木卓 情報運営委員会委員⻑ 福田健

5月9日
生成系AIへの対応について
武蔵大学長 高橋徳行

5月9日
鹿児島大学における生成系AIの利用について
鹿児島大学長 佐野輝

5月9日
学長メッセージ ~ChatGPT等生成AIについて~
広島修道大学 学長 矢野泉

5月10日
生成人工知能の学修利用に関するガイドライン
工学院大学副学長(教学担当) 教育開発センター

5月10日
東京農業大学における生成AI(ChatGPT等)の取扱いについ
東京農業大学 学長 江口文陽

5月10日
ChatGPT 等(生成系 AI)の利用についての注意喚起
名古屋市立大学 学長

5月10日
ChatGPT等の生成系AIの使用に関する留意事項
神奈川大学

5月10日
生成系AIを学生が利用することに対する本学の考え
湘南工科大学 学長 木枝暢夫

5月10日
本学における生成AIの取り扱いについて
武庫川女子大学 武庫川女子大学短期大学部 学長 瀬口和義

5月10日
ChatGPTなどの生成系AIの利用について
東京経済大学

5月10日
生成系AI(ChatGPT等)の利用に関する留意事項について
植草学園大学・植草学園短期大学 教学改革推進センター長

5月11日
ChatGPT等の生成系AIの使用に関する取り扱いについて
滋賀県立大学 副学長(教育・学生支援担当) 小泉尚嗣

5月11日
学修におけるAIツール利用に関する宮崎公立大学の考え方
宮崎公立大学 学長 辻利則

5月11日
生成系人工知能(生成AI)についての学長からのメッセージ
武蔵野美術大学 学長 樺山祐和

2023年5月10日水曜日

対話型AIと教育(4)

対話型AIと教育(3)からの続き

Q:どうもありがとうございました。大変参考になる意見ばかりでした。最後に,対話型AIと教育に係わって,これまでに誰も考えていないような,奇抜で突飛なアイディアや予想や盲点というのが,もしありましたら教えてください。

A:対話型AIと教育に関連して、これまでにあまり考慮されていない奇抜で突飛なアイディアや予想をいくつか提案します。

AI教育アバター:
生徒たちがそれぞれに専用のAIアバターを持ち、それが生徒自身の学習スタイルや興味に合わせて進化し、学習体験をパーソナライズする。このAIアバターは生徒が学んだ内容を覚え、彼らの知識やスキルを継続的にサポートする役割を果たす。

AI駆動の実世界学習環境:
教室や学校の中だけでなく、実世界の様々な場所でAI技術を活用し、生徒が学ぶ場を拡大する。たとえば、AIが動植物や歴史的建造物に関する情報を提供し、博物館や公園、遺跡などでの学習体験を向上させる。

AIを使った異文化交流:
対話型AIを活用して、言語や文化の壁を越えた異文化交流が容易になる。生徒たちは、世界中の他の生徒や教師とリアルタイムでコミュニケーションを行い、異文化理解やグローバルな視野を育む。

脳波を利用した学習効果の最適化:
AI技術と脳波センサーを組み合わせて、生徒の学習効果を最適化する。AIは生徒の脳波を解析し、学習状況や集中度を把握。それに基づいて、最適な学習方法やタイミングを提案する。

バーチャルリアリティ(VR)とAIの融合:
VR技術と対話型AIを組み合わせ、生徒が没入感のある仮想環境で学ぶことができる。例えば、歴史の授業で生徒が過去の時代にタイムトラベルし、AIガイドと会話しながら学ぶことができる。

これらのアイディアは、現在の技術や教育環境からはかなり先進的であるかもしれませんが、将来的には、これらのアイディアが現実の教育環境で実現される可能性があります。それにより、教育の質や学習体験が大幅に向上し、生徒の個々のニーズに応える柔軟性が増すでしょう。

ただし、これらの革新的なアイディアを実現するためには、以下のような課題や懸念事項に対処する必要があります。

テクノロジーのコスト:
新しい技術の導入には、しばしば高額なコストがかかります。教育機関は、技術の導入と維持に必要な資金調達や効果的な運用方法を検討する必要があります。

データセキュリティとプライバシー:
個人情報や学習データの取り扱いに関しては、適切なセキュリティ対策やプライバシー保護が重要です。また、AIが持つ潜在的なバイアスや不正確な情報に対処する方法も検討する必要があります。

教育者の研修とサポート:
教育者は、新しい技術を効果的に活用するために継続的な研修やサポートが必要です。彼らがテクノロジーに対する理解を深め、教育に適切に取り入れることができる環境を整えることが重要です。

社会的スキルや人間関係の維持:
AIやVR技術を教育に導入する際には、生徒が対面でのコミュニケーションや社会的スキルを維持・発展させることができるよう配慮する必要があります。技術の導入は、人間関係や共同体を築く重要な要素を犠牲にしないように慎重に進めることが求められます。

これらの課題や懸念事項を考慮しながら、教育機関や関係者は、AIやその他の先進技術を効果的かつ安全に活用する方法を模索していくでしょう。このような革新的なアプローチが取り入れられることで、教育の未来は、より包括的で効果的なものとなるでしょう。新しい技術の導入により、従来の教育システムや方法に限界があった場合でも、個々の生徒が自分に合った学習方法で成長できる機会が増えることが期待されます。

また、対話型AIやVR技術が普及することで、地理的な制約や経済的な制約を克服し、より多くの人々が質の高い教育を受けることができるようになるでしょう。これにより、教育機会の平等化が促進され、世界中で知識やスキルの向上が図られます。

さらに、異文化交流やリアルタイムでのコミュニケーションが容易になることで、生徒たちは異なる文化や価値観を理解し、グローバルな視野を身につけることができます。これは、グローバル化が進む現代社会で、ますます重要となるスキルです。

しかし、これらの未来のビジョンを実現するには、先述した課題や懸念事項に対処し、技術と教育のバランスを適切に保つことが重要です。教育者、技術者、政策立案者などが協力して、効果的で包括的な教育環境を創出し、教育の未来を切り開いていくことが求められます。

2023年5月9日火曜日

対話型AIと教育(3)

対話型AIと教育(2)からの続き

Q:今のスマートフォンのように,対話型AIアシスタントを子供たちが常時使えて,生活の中で対話的な学習(広義の)を進めることも考えられます。あるいは,学校で使用するAIアシスタントが,子供や教師のSNS上のコミュニケーションに介在するようなこともあるかもしれません。さらに単なるテキストではなく,アバターが生成された動画イメージとの対話に発展することが想定されます。この場合,どんな新しい世界が展開することになりますか。

A:対話型AIアシスタントが子供たちの日常生活に組み込まれ、さらにアバターや動画イメージといった視覚的要素が加わることで、新しい学習環境やコミュニケーションの形態が展開されるでしょう。以下に、そのような状況で期待される新しい世界の特徴をいくつか挙げます。

学習の自然な統合:
子供たちが常時AIアシスタントを使えることで、学習が自然に日常生活に組み込まれ、形式的な教育だけでなく、インフォーマルな学習も進むでしょう。

個別化された学習経験:
AIアシスタントは、子供たちの興味や学習スタイルに応じて個別化されたサポートを提供し、より効果的な学習が可能になります。

コミュニケーションの拡大:
教師や生徒がSNS上でAIアシスタントと連携できることで、より効果的なコミュニケーションが可能になり、教育の質が向上するでしょう。

エンゲージメントの向上:
アバターや動画イメージを利用した対話は、子供たちのエンゲージメントを高め、学習意欲を向上させる効果があります。

クリエイティビティの促進:
AIアシスタントとの対話やアバターを活用したインタラクションを通じて、子供たちのクリエイティビティや想像力が刺激されるでしょう。

学習のアクセシビリティ向上:
AIアシスタントは、障害や特別な学習ニーズを持つ子供たちにもアクセシブルな学習環境を提供し、教育の機会均等を促進します。

しかしこのような新しい世界が展開される一方で、プライバシーやデータセキュリティ、バイアスの問題、過度な画面時間や技術依存に関する懸念も生じます。そのため、こうした技術を導入する際には、これらの問題に対処する方法や適切な利用規範を確立することが重要です。以下に、これらの懸念に対処するためのいくつかの方法を提案します。

データプライバシーとセキュリティ:
AIアシスタントの使用に関連するデータプライバシーとセキュリティの問題に対処するために、適切なデータ保護ポリシーや規制を導入し、個人情報の取り扱いに注意を払いましょう。また、保護対象となるデータの範囲や、第三者との情報共有に関するポリシーを明確にすることが重要です。

バイアスの問題:
AIアシスタントが持つ潜在的なバイアスを認識し、その影響を最小限に抑えるために、多様なデータセットを使用してAIを訓練し、定期的な監査を行いましょう。また、AIアシスタントのバイアスに対する教育プログラムを実施し、子供たちや教師がその問題を理解できるようにすることも効果的です。

画面時間と技術依存:
過度な画面時間や技術依存のリスクを軽減するために、適切な使用ガイドラインを設定し、子供たちに健康的なデバイスの使用習慣を教えましょう。また、学校や家庭でのデバイス使用に制限を設けることで、子供たちがオフラインでの活動や対面でのコミュニケーションを維持できるようにしましょう。

教育者の役割の再定義:
AIアシスタントが教育環境に導入されることで、教育者の役割も変化するでしょう。教師は、AIアシスタントを効果的に活用する方法を学び、教育の質を高めるための新しいスキルや戦略を習得する必要があります。

これらの対策を適切に実施することで、子供たちが対話型AIアシスタントを安全かつ効果的に利用し、より豊かな学習環境やコミュニケーションの形態を享受できるようになります。


Q:対話型AIアシスタントが教育で大きな役割を果たすようになると,教育のために学校というシステムが不要ではないかという意見があります。これについては,どう考えられるでしょう。未来の学校はどんなシステムに進化しますか?

A:対話型AIアシスタントが教育で大きな役割を果たすようになっても、学校というシステムが不要になるとは必ずしも言えません。学校は教育だけでなく、子供たちが社会的スキルやコミュニケーション能力を身につける場でもあります。しかし、AI技術の発展によって、未来の学校は従来とは異なるシステムや機能に進化する可能性があります。

ブレンディッドラーニング:
未来の学校では、オンライン学習と対面学習が組み合わさったブレンディッドラーニングが一般的になるでしょう。これにより、生徒は自分のペースで学習を進めることができ、個々のニーズに合わせた学習が可能になります。

より個別化された教育:
AIアシスタントの活用により、教師は生徒一人ひとりの学習進度や理解度に合わせた指導ができるようになります。これにより、従来の「一斉指導」から、個別化された教育へとシフトする可能性があります。

学習者中心のアプローチ:
教師の役割が、情報を伝達するだけでなく、生徒の学習を促進・支援するファシリテーターとして変わります。これにより、生徒は自分自身で問題解決や研究を行い、よりアクティブな学習者となるでしょう。

学習環境の多様化:
学校がオンラインとオフラインの両方で学びの場を提供することで、生徒は様々な環境で学ぶことができます。これにより、生徒が自分に合った学習環境を選択できるようになります。

無境界な学習:
テクノロジーの発展により、生徒は世界中の専門家や他の生徒と繋がることが容易になります。これにより、学習が地域や国境を超えたものになり、より広い視野を持った人材が育ちます。

これらのを踏まえた未来の学校は、従来のシステムや機能から大きく進化し、教育の質やアクセシビリティが向上するでしょう。しかし、その一方で、以下のような課題も考慮する必要があります。

デジタルデバイドの問題:
テクノロジーへのアクセスが不均等である場合、デジタルデバイドが教育格差を拡大させる恐れがあります。そのため、すべての生徒が同等の教育機会を享受できるよう、インフラやアクセスの向上が求められます。

社会的スキルの育成:
AIアシスタントの導入によって、学習が個別化される一方で、生徒間のコミュニケーションや協力が減る可能性があります。未来の学校は、生徒が社会的スキルを育成できる環境やカリキュラムも重視する必要があります。

教育者の役割と研修:
AI技術の導入に伴い、教師の役割が変化することから、教育者向けの研修や支援が重要になります。教師が新しい役割に適応し、技術を効果的に活用できるようサポートが求められます。

倫理的・法的問題:
AIアシスタントを教育に導入する際には、プライバシーやデータ保護、バイアスなどの倫理的・法的問題に対処する必要があります。適切なポリシーや規制を策定し、問題を最小限に抑えることが重要です。

未来の学校は、これらの課題を解決しながら、より効果的で包括的な教育環境を提供することを目指すでしょう。AI技術が教育の質を向上させる一方で、学校は生徒が社会的スキルや対人コミュニケーションを磨く場として、引き続き重要な役割を果たすことが期待されます。

2023年5月8日月曜日

対話型AIと教育(2)


Q:対話型AIシステムが学校教育に及ぼす影響やどのような形で導入すべきかあるいはすべきでないか,についていくつかの立場があります。その立場ごとに主張の要点を整理しながら,どれがもっともらしいかを説明してください。

A:対話型AIシステムが学校教育に及ぼす影響や導入の形態に関しては、いくつかの立場が存在します。ここでは、主要な立場を整理し、それぞれの主張の要点を挙げてから、最もらしいと思われる立場を提案します。

積極的導入派
要点:
・AIは個々の生徒の学習ニーズに対応でき、パーソナライズされた学習経験を提供する。
・教師の負担を軽減し、より効果的な教育を実現できる。
・生徒たちに21世紀のスキル(プログラミングやデータ解析など)を身につけさせることができる。
適切なバランス派
要点:
・AIシステムは教育の一部として活用すべきだが、人間の教師に代わるものではない。
・教育の質を向上させるために、AIと教師の協力が重要である。
・AIの導入に際しては、倫理的・社会的問題に十分な配慮が必要。
消極的導入派
要点:
・AIシステムは生徒のデータを収集し、プライバシー問題を引き起こす可能性がある。
・AIが教育に携わることで、教師と生徒の間の人間関係が損なわれる恐れがある。
・AIシステムはバイアスがあり、不公平な教育結果をもたらす可能性がある。 
最もらしい立場としては、「適切なバランス派」が挙げられます。この立場では、AIシステムは教育の一部として活用すべきであることを認めつつ、人間の教師に代わるものではないと主張しています。教育の質を向上させるためには、AIと教師の協力が重要であり、また導入に際しては倫理的・社会的問題に配慮が必要であるとしています。これにより、教育の効果を最大化しつつ、潜在的な問題を最小限に抑えることができると考えられます。


Q:学校教育へのAI対話システムあるいはその派生システムの具体的な導入イメージを教えてください。どのようなアプリケーションやプラグインがありうるか,各教科の授業シーンで使用される実践例などを知りたいです。

A:学校教育へのAI対話システムや派生システムの導入イメージには、さまざまなアプリケーションやプラグインが考えられます。以下に、いくつかの教科の授業シーンで使用される実践例を挙げます。

数学:
 個別の学習サポート:AI対話システムは生徒が数学の問題を解決する際に、ステップバイステップの指導やヒントを提供できます。
 自動採点・フィードバック:教師の負担を減らすために、AIシステムは生徒の回答を自動的に採点し、適切なフィードバックを提供できます。
言語学習:
 対話型練習:AIシステムは生徒と対話を行い、会話能力を向上させるための練習相手となります。
 文法チェック:AIが生徒の文章をチェックし、文法やスペルの間違いを指摘して、改善する機会を提供します。
科学:
 仮想実験:AIシステムは生徒が仮想環境で実験を行い、科学的な概念を理解する手助けをします。
 シミュレーション:生物学や物理学の複雑なシミュレーションをAIシステムが実行し、生徒が理解しやすい形で結果を提示します。
社会科学・歴史:
 インタラクティブな資料:AIシステムは生徒がインタラクティブな地図や歴史的資料にアクセスし、学習を深める手助けをします。
 論文の添削:AIシステムは生徒の論文をチェックし、論理的な構造や引用の正確さを評価し、改善点を提案します。
芸術・音楽:
 作品の分析:AIシステムは芸術作品や音楽作品を分析し、生徒が理解を深める手助けをします。
 クリエイティブな支援:AIシステムは生徒が独自の芸術作品や音楽作品を制作する際に、インスピレーションやテクニックの提案を行います。

これらのアプリケーションやプラグインは、教師の指導力を補完し、生徒たちがより効果的な学習経験を得ることができます。さらに、AI対話システムや派生システムは、教育環境全体をサポートするために以下のような機能も提供できます。

学習管理システム (LMS) との統合:
AIシステムは、学習管理システムと連携して、教師が生徒の進捗状況を追跡し、必要に応じて個別のサポートを提供できるようにします。
パーソナライズされた学習経験:
AIは生徒の学習履歴や能力に基づいて、個別の学習プランを作成し、学習効果を最大化します。
学習者のモチベーション向上:
AIシステムは、ゲーミフィケーションやインタラクティブな要素を導入し、学習者のモチベーションを維持します。
アクセシビリティの向上:
AIは、障害のある生徒や特別な学習ニーズがある生徒に対して、よりアクセシブルで個別化された学習経験を提供できます。

これらのアプリケーションやプラグインを導入することで、学校教育がより効果的で個別化されたものになり、生徒の学習成果が向上する可能性が高まります。ただし、AIシステムを導入する際には、データプライバシーやバイアスの問題に対処することが重要であることを念頭に置く必要があります。

2023年5月1日月曜日

ChatGPTの認知度

4月に入ると毎日のように生成系AIのニュースが新聞やテレビで流れている。テレビ東京がサム・アルトマンの独占インタビューを最初に流したのを別にすれば,玉石混交というかあいかわらずネットからつまみ食いしてフィルターをかけたものばかりだ。

3月中旬のGPT-4が登場した頃の各種調査では,2/3が知らない,1/4は聞いたことがあり,1割弱が使っているというような傾向だった。そこで,先週(4/17)の3回生中心の授業の際に生成AIに関するアンケートをMoodleのアンケートシステムを使って実施してみた。

ところで,学生さん達の情報源は新聞でもテレビでもなかった。それを伝えるネット上のニュース記事やSNSのようだ。各分野の専門家やブロガーのネット上の記事を大手マスコミの記者がとりあげてマスメディアのニュースにする。それがネット上のニュース記事となって拡散していくというルートができあがっているような気がする。

さて「ChatGPT/Bing chatのような最近のAI対話システムを知っていますか」という問いに対して,結果は,聞いたことがないが1/6弱,聞いたことはあるが使ったことはないが2/3強,使ったことがあるが1/6という結果になった。


図:ChatGPT認知度アンケートの結果

なお,問2では,画像生成AIについても聞いているが,こちらのほうは,聞いたことがないと聞いたことはあるが使ったことはないが半々だった。また,DeepLやGrammeryは半数以上が使ったことがあるかよく使っている。

なお,生成AIの教育利用の問題点としては,次のような認識だった。
(1) レポートや課題を自分の代わりに書かせてしまえること。 6
(4) ニセの情報や不正確な情報が正しいとして拡散すること。 6
(3) 個人情報や組織情報等をうっかりと提供してしまうこと。 4
(5) 特定の考え方に無意識に染まってしまう危険があること。 1
(2) AIとの対話にはまってしまいひきこもりが発生すること。 0

 まあこんなものかもしれない。

2023年4月27日木曜日

大学教育とChatGPT(3)

大学教育とChatGPT(2)からの続き

前回は4月20日公開分までの大学のURLを集めたが,少し見落としていた。とくに早稲田大学の4月18日公開のものは,ああしろこうしろとはいわずに丁寧に説明している。東大のものからテクニカルな部分を引いて精神論をトッピングしたものだが,チョアヨ。トップランナーの東京外国語大学公式の体験コーナーを設けていてこれはこれですごい。

その他で注目したいのが,三条市立大学のメッセージだ。『対話型AIサービスは「認める」「認めない」などと許可のもとで行うものではなく,自己責任,自己判断のもとで適切に活用されるものである』。そのとおりだ。それがうまくいかないことを見越して,安全牌の留意事項を書きたがるのが凡大学の浅知恵だ。多分自分も同じ立場なら安全牌を引いて誤魔化しているに違いない。

東京工科大学の檄文もすごかった。『様々な情報を学生自身の頭の中で処理し表現する(=学習する)というプロセスこそが教育上最も重要なのであり、このプロセスを経ていない出力物は教育上の一切の価値を持たないということです』。自分では本当にそうなのかどうかまったくわからなくて,GPT-4に聞いてみたのだが,やはりよくわからなかった。

なお,Bing chat にこのような大学のURLリストを作ってもらうように頼んだところ,5個で挫折していた。Bardには拒絶された。参考URLを出してくれるPerplexity はわりと優秀で何回か繰り返して頼むと15個ほどのサイトを上げてくれた(現在42サイトあり,全大学の5%に達している)。だが,それ以上お願いするともう無理だとギブアップしていた。

東大の吉田塁さんが情報をまとめていたはずだけれど,最初の7大学のままでフリーズしていた。この手のまとめ情報は,Noteのサイトでみることができる。各大学のChatGPT等生成系AIへの対応・方針・留意点を調べてみた(手羽イチロウ|美大愛好家)とかChatGPT/生成AIへの対応を表明した国内の大学一覧(Pogo/gmoriki)に多くの大学URLが集約されていた。

4月10日
生成AI(ChatGPT)などへの対応について
横浜商科大学

4月17日
ChatGPT等の自然言語処理モデルの利用に関する注意
高崎経済大学 学長 水口剛

4月18日
生成AIなどの利用について
早稲田大学 副総長(教学担当・プロボスト) 須賀晃一

4月20日
ChatGPT体験コーナーを設置しました
東京外国語大学 教育情報化支援室

4月20日
生成系 AI(ChatGPT 等)の授業等における利用について
会津大学⻑

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4月21日
教育における ChatGPT 等の生成系 AI 利用にかかる留意事項について
富山大学⻑ 齋藤滋 / 学務部学務課修学支援チーム

4月21日
三条市立大学における『ChatGPT』を含む対話型AIサービスの活用ポリシー
三条市立大学

4月21日
生成系AIについての学長声明文を発表しました
大阪女学院大学・大阪女学院短期大学 学長 加藤映子

4月21日
学修におけるAI利用に関する注意事項
電気通信大学 理事(教育・国際戦略担当) 阿部浩二 副学長(教育担当) 村松正和

4月21日
授業における生成AIツールの使用について
日本大学

4月21日
学習・教育における生成系AIの利用について
本学教職員の生成系AI利用に関する留意事項について
岡山大学長 那須保友

4月21日
ChatGPT等の利用に関する注意喚起
北海学園大学 学長 森下宏美

4月24日
生成系AI(人工知能)について
学習院大学長 荒川一郎

4月24日
レポート作成等での生成系AI(ChatGPT等)の利用について
東洋大学 教務部長 東海林克彦

4月25日
生成系AI(人工知能)の利用にあたって
立命館大学教学部

4月25日
生成系AI(ChatGPT等)の利用に関する注意事項
東京農工大学 副学長(教学総括担当)

4月25日
ChatGPT 等生成系 AI への対応について
長崎大学 理事(教学担当)

4月25日
ChatGPT等の生成型AIの利用について
彿教大学長 伊藤真宏

4月25日
ChatGPT 等の生成系 AIに関する注意
白百合女子大学学長 髙山貞美 教学担当副学長 海老根龍介

4月26日
生成系AIの利用について
東京工科大学 学長 香川豊

4月26日
ChatGPT 等をはじめとする生成系 AI への対応について
中京大学

4月26日
ChatGPT 等の生成型 AI 利用に関する留意事項
就実大学大学院・就実大学・就実短期大学 教務課

4月26日
大学で学ぶということ~生成AIをめぐって~
同志社大学長 植木朝子

2023年4月20日木曜日

大学教育とChatGPT(2)

大学教育とChatGPT(1)からの続き

その後,いくつかの大学から生成系AIの利用に関する注意喚起が公開されている。全国の大学数が約800だとすれば,2%というところか。学内向けだけのアナウンスにとどめているところはもっとあるのかもしれない。いずれにしても,感度が低いような気がする。ウェブブラウザが登場して,大学のホームページが立ち上がり始めたころに似ているかもしれない。

おおむね共通しているのは,レポートに使うな(剽窃になる),危ないぞ(個人情報が漏洩する,著作権を侵害する),自分で書く力=考える力が重要だ。というあたりか。ただ,生成系AIの重要性はなんとなく理解しているらしいので,なんとも歯切れの悪い表現になっている。なお,これらの危険度は,普通の検索やSNSの場合と同レベルだと思われるし,剽窃だと断定するのも微妙な気がする。

ChatGPT(生成系AIシステム)を使いたおすようでないと,就職もできなくなると煽っているのは,シンギュラリティサロンの松田卓也先生くらいか。神戸大学の塚本昌彦先生は授業で,ChatGPTを積極的に使うという課題を出しているが,これは下記の東洋大学の坂村健さんも同様であり,情報系の先端研究者には多いパターンだ。

P. S.  東京外国語大学のガイドラインを見落としていた。実は,これが現時点における最良の回答になっている。後発の大学は少なくともこれを参照した上で議論すべきだった。なお,東京工業大学も前向きでシンプルなものになった(4.21)
3月22日
大学教育における AI について 東京外国語大学としての教員向けガイドライン
東京外国語大学 総合戦略会議

3月27日
ChatGPT等のAIチャットボット(生成AI)への対応について
上智大学

3月31日(4月11日)
ChatGPT等の生成系AI利用に関する留意事項(学生向け)
ChatGPT等の生成系AI利用に関する留意事項(教員向け)
東北大学 デジタル教育アドバイザリ・グループ

4月3日
生成系AI(ChatGPT, BingAI, Bard, Midjourney, Stable Diffusion等)について
東京大学 理事・副学長(教育・情報担当) 太田邦史

4月4日
武蔵大学の知名度を上げる方法←AIに聞いてみた
Musashi Web Magazine(学生がイマを伝えるウェブマガジン)

4月7日
京都大学令和5年度学部入学式 式辞
京都大学 第27代総長 湊長博

4月7日
学生の皆さんへ:生成系AIの使用についての注意(第1報)
神戸市外国語大学

4月11日
法政大学情報科学部・情報科学研究科 生成系AIの利用に関する指針
法政大学 情報科学部長 藤田悟  情報科学研究科長 小池崇文

4月13日
ChatGPTなどの生成系AIについての注意喚起
群馬大学 理事(教育・評価)・副学長

4月14日
生成系AIに関するINIADの見解
東洋大学INIAD (東洋大学情報連携学部) 学部長 坂村健

4月14日
島根大学におけるChatGPT等の生成系AIの利用におけるリスク管理について ―教職員及び学生のみなさんへの注意喚起―
島根大学長 服部泰直

4月14日
教育研究におけるChat(チャット)GPT等の利用について
北里大学学長 島袋香子  教育委員長 江川徹

4月17日
生成AI(Generative AI)の利用について
大阪大学総長 西尾章治郎

4月17日
教育・学習におけるChatGPT等の生成系AIツールへの対応について
関西大学 副学長(教育推進担当)

4月17日
本学の教育における生成系AIの取扱いについて
兵庫県立大学 副学長(教育担当) 内田 勇人

4月17日
生成系AI(ChatGPT等)に関する留意事項
近畿大学 情報学部長 久夛良木健  情報学部長代理 井口信和
4月18日
教育における生成系AIの利用について
山形大学 理事(教育、入学試験担当)・副学長 出口毅

4月18日
ChatGPT 等の生成系 AI について
群馬県立女子大学 学長 小林良江

4月19日
大学授業課題に対する生成系 AI の取り扱いについて
甲南大学長 中井伊都子  甲南大学 教務部長 小出武
4月19日
生成系AIの使用に関する注意(第1報)
福井工業大学 学務部長 田中智一
https://www.fukui-ut.ac.jp/news/topics/entry-9308.html 
4月20日
学修における生成系人工知能の使用に関する本学の考え方について
東京工業大学 理事・副学長(教育担当) 井村順一
https://www.titech.ac.jp/student/students/news/2023/066590
4月20日
生成系AI(ChatGPT等)の活用について
龍谷大学・龍谷大学短期大学部

 

2023年4月18日火曜日

はずれ値

ChatGPTについて,橋本大也山口周が期せずして似たようなことを語っていた。

橋本によれば,ChatGPTの特徴は,(1) 確率的にありがちな文章を生成するだけのアルゴリズム,(2) あらゆる分野の文章を事前学習して世界を俯瞰している,(3) 人がファインチューニングしておかしなことをいわない,の3つの原則から成り立っていることだ。

その結果,ChatGPTはありきたりでつまらないこと(=優等生的な回答)しかいわない。しかしながら,APIによる利用では,ChatGPTの内部で設定されている温度を調整できるようだ。この温度は,ボルツマン的な意味で,高くするとありがちな文章からはずれた文章が出現する確率を増やすことができるというものだ。ChatGPTが語るのは,低温で秩序が保たれた世界だったのだ。十分に事実が吟味できずにフラストレーションを持ったまま凍結した答えが返ってくる世界も含んでいるが。

一方,山口の体験によれば,「ChatGPTは中央値しか語れない」ということだ。これは,医療診断,法務,会計などの分野では,典型的に必要とされる能力であり,すでに実際の企業などでは実務への導入が進んでいるようだ。1ヶ月かかる業務が1時間で可能になるという程度の生産性の向上が期待される場合もしばしば見られるらしい。

これにより,中央値のアウトプットが求められる多くの分野の業務において,省力化が急速に進行することが予想される。その場合に,人間にできるのは正規分布の裾野に残されたはずれ値の仕事や発想だというのである(これすら,温度の調整次第では危うくなるのかもしれないが)。

そして,そのことの帰結は,教育の目的の大幅な変更につながっていく。これまでのような,短時間に正解を導くことができる能力ではなく,「正解からのはずれ方」が求められることになるという説だった。つまり,教育の分野では,方法論と内容論と目的論の3つの側面から,生成系AIによる挑戦を受けることになる。大丈夫か。

2023年4月16日日曜日

大学教育とChatGPT(1)

いよいよ明日から大阪教育大学の前期の授業がはじまる。コロナ以降,開始日が10日ほど遅くなってしまった。すでに,授業が始まっている大学も多いはずだ。

さて,ChatGPTがそれなりの日本語のレポートを簡単に作ることがわかったため,レポート課題を出していた大学人は慌てているかもしれない。そうでないかもしれない。各大学では,対応を検討しているし,文部科学省も,初等中等教育におけるChatGPTの使い方について,なんらかのアナウンスをする方向らしい。

早かったのは,東京大学と東北大学と上智大学だ。東大の吉田塁さんの「ChatGPT・AIの教育関連情報まとめ」のページに,海外や国内の大学の対応例がある。NHKでもニュースに取り上げていたが,完全に偏っていた。京都大学の入学式における湊総長の式辞での警告(以下にGPT-4に該当部分をまとめさせた)と,上智大学のレポートでの使用禁止のネガティブ事例2件だった。
最近、生成AIであるChatGPTなどの自動文章作成ソフトが話題になっていますが、それらにはいくつかの問題点があります。まず、明らかな誤情報が含まれるリスクがあり、特定の論旨について根拠となる資料を正確に引用できないことも指摘されています。これは、サーチのみでリサーチという検証が欠けているためです。学術レポートとしては致命的な問題であり、主要な国際学術誌はChatGPTを論文の共著主体として認めることはないと言われています。現状では、AIによる自動文章作成には、自ら「文章を書く」という重要な検証プロセスが欠けているとされています。(京都大学湊総長式辞の該当部分をGPT-4で200−300字に要約)
なお,東大は,教育・情報担当の理事・副学長である太田邦史さんからの解説的な注意喚起,東北大は,デジタル教育アドバイザリグループによる,学生向け及び教員向けの留意事項でありいずれも禁止とはしていない。

まあ,実際問題,生成AIの利用は禁止はできないと思う。ただし,無料で使えるChatGPT(GPT-3.5)やBing Chatと有料版のGPT Plus(GPT-4)では大きな差がある。GPT-4のAPIやPlug in 利用では学生によってさらに大きな違いが生ずるかもしれない。現在のように誰でも平等にGoogle検索をできるような状況とは違う。

この情報アクセスの非対称性を放置すると,隣の学生が簡単にレポート代行サービスできるという新たな経済活動=ビジネスチャンスが発生する。まあ,いまでも友達のレポートほとんど丸写しという例があるし,宿題代行サービスはあるといえばあるのだけれど,その閾値が劇的に下がってしまうというかなんというか・・・。

明日は,芳賀さんがやってたような学生の生成AI認知度アンケートをとってみよう。


P. S. 4月17日(月)に大阪大学が,西尾章治郎総長名で「生成AI(Generative AI)の利用について」という注意喚起を発した。情報工学者(自然言語処理ではない)だけれど総長なので無難なメッセージになっている。同い歳の東大の坂村健はNHKでかなりアグレッシブな発言をしていたけれどね。

2023年3月25日土曜日

教育データの利活用

3月22日に,文部科学省の教育データの利活用に関する有識者会議(2020.7-)が「教育データの利活用に係わる留意事項(第1版)」を公表した。

日経新聞では,「学習端末データ授業改善に活用/教師の経験頼み脱却」というタイトルの記事になっていた。BingChatに無理矢理要約させると次のようになった。
文部科学省が公表した指針によると、小中高校の児童生徒が学校で使うデジタル端末に蓄積された情報の活用について、初めての指針を公表したそうです。この指針により、教師が経験に頼ることなく、学習端末に蓄積されたデータを活用し、授業改善につなげることができるようになるそうです。また、ビッグデータの分析力を備えた外部機関との連携が求められるそうです。
日経の記事はかなりバイアスがかかったまとめ方をしていた。「留意事項」はもっと抽象的なものになっていて,(1) 個人情報の適切な取り扱い,(2) プライバシーの保護,(3) セキュリティ対策,について言及しながらシステムを外注する際のチェックポイントを整理したようなものだ。

10年前に,今後の大阪教育大学の方向性とからめて教育ビッグデータの重要性(と危険性)を話題にしていたころから進んでいない。スローガンに伴う具体的なイメージがはっきりしないのだ。いや自分が勉強していないだけかもしれない。

(1) 収集される学習データは非常に多様化し,複雑化するとおもわれる。従来型の成績+デジタルポートフォリオイメージでよいのか。
(2) 授業改善のための分析は結局外注することになるのではないか。あるいは分析ツールを買わされるのだろうか。教師が片手間でできる簡単な仕事ではない。
(3) 対話型AIをインターフェースとすれば,上記2つの課題は解決するのかもしれない。ビッグデータといいなわらしていたころとはかなり違うことになるが,問題解決のヒントくらいは見つかるかもしれない。
(4) この対話型AIシステムクラウドを日本国が自前で準備して無料で使わせるくらいのことをしてもバチはあたらないだろう(かなりこわい話だけれど,米国依存だとさらにマズイ)。

最初のコラムで,牽制するかのように「デジタル・シティズンシップ」を取り上げているのも唐突感が否めないがまあいいか。それにしても,この「留意事項」から感じる息苦しさはなんなのだろうか。個人情報保護法や著作権法にがんじがらめになっている上,自由な空気からほど遠い学校教育現場にこのようなシステムを導入すると,結局壮大な抑圧的管理網がかぶさるだけのような気もする。


P. S.  山本一郎いわく「統計量で教育データを扱うはずが,全量悉皆データをそのまま人工知能にぶち込んでしまい,自ら情報漏洩の危険を冒すお調子者教師」が散見されるそうだ。これはこれでピントがズレているような・・・



2023年3月17日金曜日

対話型AIと教育(1)

ChatGPTと教育(2)からの続き

OpenAIのGPT-4にAI対話システムの教育利用に関わるシナリオについて聞いてみた。ChatGPT Plus($20/month)から使うことができるGPT-4だが,4時間ごとに100回のメッセージまでという制限条件がある。ユーザが増えたため,これが50回になったらしい。なお,GPT-4に聞いてみたところ,1回のメッセージというのはユーザとGPT-4の間の1往復の対話を指しているとのことだ。
Q:GPT-4を学校教育の場で利用することには賛否両論があると思います。教育利用のためには,GPT-4やそれを利用した学習アプリ=チューターアプリをいつでも自由に長時間使うことができなければならないと思います。しかし,GPT-4を利用するためめの費用が高額であれば,経済的な格差が教育格差に直結する危険性もあります。学校教員が仕事を奪われる側面もあって,導入への抵抗が在るかもしれません。このような状況やあなたが持っている情報をふまえ,どのような段階を追ってLLMなどに基づくAI対話システムが教育の場に浸透していくか,考え得るシナリオを提示してください。


A:教育の場でAI対話システムが浸透していくシナリオは、多くの要因が関与するため複雑ですが、以下に考え得る段階を示します。

1.認知度向上と技術検証:
まず、教育関係者や親御さん、学生などの認知度を向上させる必要があります。このために、GPT-4やAI対話システムの技術的優位性や教育に対する利点を広める活動が行われるでしょう。また、技術的な限界や倫理的な問題についても検証し、適切なガイドラインや法規制を策定する必要があります。

2.パイロットプロジェクト:
次に、一部の学校や教育機関でパイロットプロジェクトが実施されるでしょう。これにより、AI対話システムの効果や問題点を具体的に評価し、改善策を検討することができます。

3.費用の削減とアクセスの平等化:
教育格差を防ぐために、AI対話システムの費用を削減し、より多くの人々がアクセスできるようにする必要があります。政府や企業が資金提供を行い、無料または低価格での提供を促進することが重要です。

4.教員との協働:
教員がAI対話システムと協働することで、教育の質を向上させることができます。教員はAI対話システムの導入に抵抗感を持つかもしれませんが、教育効果の向上や業務の効率化が見込まれるため、徐々に受け入れられるようになるでしょう。

5.カリキュラムへの統合:
AI対話システムが効果的であると認識された後、徐々にカリキュラムに組み込まれるようになります。これにより、学習者はAI対話システムを通じて知識やスキルを習得することが一般化されます。

6.継続的な改善と評価:
最後に、継続的な改善と評価が行われます。AI対

続けて

話システムの性能は、時間とともに向上していくでしょう。そのため、教育関係者は継続的にシステムを評価し、改善点を見つけ出す必要があります。また、教育環境や学習者のニーズが変化することを考慮し、システムが適切に対応できるようにアップデートを行います。

7.社会全体への浸透:
最終的に、AI対話システムは教育界だけでなく、社会全体に浸透していくでしょう。企業や団体がAI対話システムを活用することで、職場でのスキル向上や研修プログラムの効率化が期待できます。

8.国際協力と共有:
異なる国や地域での成功事例や問題点が共有されることで、より効果的なAI対話システムの導入が促進されます。国際的な協力により、教育の質を向上させるための共通の目標や基準が策定されることも期待されます。

9.新たな教育手法の開発:
AI対話システムが普及することで、新たな教育手法やアプローチが生まれるでしょう。これにより、従来の教育方法に限界がある学習者や特別な支援が必要な学習者に対しても、適切な教育が提供されるようになります。

10.柔軟な教育環境の実現:
最後に、AI対話システムの普及により、より柔軟で個別化された教育環境が実現されます。学習者は自分に合ったペースで学習ができ、教育機会が平等に提供される社会が目指されるでしょう。

2023年3月11日土曜日

プリマーAI

生成AIの2つの顔(2)からの続き

これら2つの例から考えると,テキスト型生成AIの教育利用のイメージの一つは対話型の本(以下プリマーAI)ということになる(結局,ニール・スティーブンソンダイヤモンド・エイジに出てくるプリマーに帰着する)。デジタルテキストとして提供される本の場合,(1) 当該の本の本文テキストをコアとして,(2) 同じ著者による関連著書である著者テキストの集合,(3) 本文テキストと関連する主題テキストの集合,(4) "世界"全体の背景常識テキストの集合,に適当な重みをつけて学習させたLLMシステムを作る。利用者は,これに対して,ChatAIインターフェースで,対話しながら内容を読解していく。これに,(5) 対話・学習記録テキストの集合が追加できれば問題ない。

プリマーAIを教科書として利用する場合,対話しながら教科書の内容を理解することができる。つまり,解らない部分は,何度でも角度を変えながら「著者」に質問することができるというわけだ。この場合,教科書検定というか内容(対話部分を担う学習データ部分)の正確性はどう担保するのか。あるいは政治問題化するのか。

ある人の著書だけでなく,全会話記録や全テキスト記録をプリマーAIに入力すれば,その人の仮想人格と対話できることになるので,紙に書かれた文章の読解力がなくとも,著者との対話が実現してしまうことになる。教科書から話はそれるが,対話できるタレント・アイドル本みたいなものができてしまうのか。いいのか?

DeepLに加えてChatGPT+BingChatの魔の手からも逃れられなくなりつつある今日この頃。

2023年2月16日木曜日

受益者負担

井深雄二(1952-)さんの教育費の節減合理化と受益者負担論(1996)からの引用をTwitterでみかけた。名古屋大学教育学研究科の博士課程の出身で,名工大を経て,奈良教育大学の教授だった。ご近所さんだったのに存知上げませんでした。そのおわりにを引用する(強調は私)。
1970年代以降の教育費政策における受益者負担主義の展開は,家計負担の教育費を急増させ,いわゆる少子化社会到来の主な要因の一つとさえいわれるに至った。かかる現状に対し,改めて教育財政の合理的な姿とし,教育経費の財源を租税負担に求める方向性を強化する議論が提起されてよいであろう。しかし,問題はそこにとどまらない。教育経費の財源負担のあり方は,国民の教育意識をその深部おいて規定する。受益者負担主義は,子ども・青年を父母に依存させ,教育を経済的成功の手段とし,教育における競争秩序を是認する傾向を促進する。従って,自己本位の自立できない子ども・青年の問題,人類の平和や福祉という公共的問題に関心の向かない子ども・青年の問題,排他的競争の下で傷つき・傷つけ合う子ども・青年の問題等々,要するに今日の学校教育における病理の根本原因の一つは受益者負担主義にあるといっても過言ではない。その意味で,経済的効率性を追求する受益者負担主義は,あたかも教育公害をもたらし,その対症療法に要する経費が嵩む結果,返って経済的にも不効率になるといえるのではなかろうか。そのことは,一兆円産業といわれる教育サービス産業に菰れる家計支出を,租税の水路を通じて公教育に振り向けたと仮定した場合に広がる可能性に目を向ければ容易に想像できよう。しかし,そのためには,受益者負担主義とその表裏の関係にある能力主義的競争とを国民的規模で克服しなければなるまい。
井深さんの論文で,本文が公開されていて興味を引いたのはつぎのようなものだ。ただし,Society5.0については現状をさらっとまとめただけで斬り込んででいるわけではなかった。

[1]教育費の節減合理化と受益者負担論(井深雄二,1996)

2023年2月4日土曜日

ChatGPTと教育(2)

ChatGPTと教育(1)からの続き

ChatGPTがどのような役割を果たして教育のシステムを改善していくのか,あるいはAIの教育利用がどんな問題点をはらんでいるのかについて,様々な議論が始まっている。そこで,よくあるパターンの一つとしてChatGPT自身に聞いてみた(下記Q&A参照)。これは,ChatGPTが学習してきた大量の文書総体≒人類の「意識」の平均的なありようの射影になっている。

その結果は,例によって,もっともらしい単語の羅列であって,一瞥すると的を射たコメントのように見えたりもする。しかし,言葉を十分に吟味してみれば,テレビの時事情報番組のコメンテーターの場合と同様に,論理的にかみあわない単語の連鎖にキーワードをまぶして雰囲気だけを醸し出しているに過ぎない。
Q:大規模言語モデルを用いたAIによるシステムを学校教育に利用しようと思います。どのような活用方法が有用なのか5つあげて,その理由を箇条書きで説明してください。

A:(質問者のコメント:論理的推論の欠如と概念の重複
自然言語生成:大規模言語モデルを使って自然言語を生成することができます。これにより学生が作成した文章の構文や文法のチェックなどが行えます。

自動翻訳:大規模言語モデルを使って多言語の翻訳が可能です。これにより外国語の学習をサポートすることができます。

チャットボット:大規模言語モデルを使ってチャットボットを作成することができます。これにより学生がコミュニケーションスキルを磨くことができます。

機械翻訳:大規模言語モデルを使って機械翻訳を行うことができます。これにより学生が英語など外国語を読む力を向上させることができます。

音声認識:大規模言語モデルを使って音声認識を行うことができます。これにより学生がリスニング力を向上させることができます。


Q:外国語や国語の学習が中心ですね。それら以外の教科を念頭にさらに5項目あげて下さい。

A:(質問者のコメント:単調なパターンの繰り返し,論理の飛躍
数学:大規模言語モデルを使って数学の自動生成や問題の自動解答などができます。これにより学生が数学の要点を理解しやすくなります。

科学:大規模言語モデルを使って科学の説明や解説などを自動生成することができます。これにより学生が科学の概念を理解しやすくなります。

哲学:大規模言語モデルを使って哲学的なトピックの説明や解説などを自動生成することができます。これにより学生が哲学的な観点から物事を考える力を養うことができます。

歴史:大規模言語モデルを使って歴史的なトピックの説明や解説などを自動生成することができます。これにより学生が歴史的な観点から物事を考える力を養うことができます。

社会科学:大規模言語モデルを使って社会科学的なトピックの説明や解説などを自動生成することができます。これにより学生が社会科学的な観点から物事を考える力を養うことができます。


Q:これらの例は,従来のインターネットにおける情報検索でも実現できていたのではないですか。本質的な違いがあるような具体的な方法を知りたいのですが。

A:(質問者のコメント:ChatGPTが主観をシミュレートしているということ?
その例示した内容は従来のインターネット上の情報検索でも実現可能ですが、大規模言語モデルを用いた AI によるシステムは以下のような本質的な違いがあります。

自然な文章生成:大規模言語モデルは自然な文章生成能力があり、学生にとって理解しやすい形式で情報を提示できます。

主観性のある情報提示:従来の情報検索はオブジェクト的な情報を提供しますが、大規模言語モデルは主観性のある情報も提示することができます。これにより学生が様々な観点から物事を考える力を養うことができます。

学習内容のカスタマイズ:大規模言語モデルを使った AI システムは学生の学習状況に合わせて学習内容をカスタマイズすることができます。これにより学生が効率的に学習することができます。

自動的な評価:大規模言語モデルを使った AI システムは学生の課題やテストの解答を自動的に評価することができます。これにより教師の負担が軽減されます。

これらが大規模言語モデルを用いた AI によるシステムが従来のインターネット上の情報検索と本質的に異なる点です。
[3]1/26/2023 教育現場でのChatGPTの利用についてChatGPTに直接聞いてみた(サルタック・シクシャ)

2023年2月3日金曜日

ChatGPTと教育(1)

ChatGPTの近況(2)からの続き

OpenAIはChatGPTの教育利用でつまづくことを懸念し,かなり気をつかった文章を作成していた(Educator Considerations for ChatGPT)。その一部を引用して訳出してみた。

【教育関連のリスクと機会の例】

我々は,この技術がどのように使用され,人々がどのようなアプリケーションを探求するかを理解するための,まだ初期段階にいる。教育の場における生成AIの多くの応用に期待しているが,他のテクノロジーと同様,教育者の監督のもとで教室に導入することが重要だと考えている。また,多くの教育関係者が,この技術に何ができるのか,その限界は何なのかについて疑問を持っていることも理解している。

以下にその概要を紹介する。このリストは包括的なものではないが,この技術を採用する際に何を考慮すべきかについて,さらなる議論と意見の喚起につながることを期待している。なお,これらの検討事項について,添付の入力フォームでご意見を募集している。 
*効率的で個別化された教育

ChatGPTのようなツールを使って,教育者がどのように教え・学ぶかを模索しているいくつかの例を示す。

・授業計画やその他の活動の下書きやブレーンストーミング
・練習問題やその他の演習課題の設計の支援
・カスタム自習ツールの検証
・好みに合わせて教材をカスタマイズ(言語の簡単化,読解レベルの調整,興味に合わせたアクティビティの作成)
・文章読解に対する文法的または構造的なフィードバックの提供
・作文やプログラミングの分野におけるスキルアップ活動での使用(コードのデバッグ,文章の修正,説明の依頼)
・AIが生成したテキストに対する批評

上記のいくつかは,個別学習支援ツールとして求められるChatGPTの可能性を引き出す一方で,学生のプライバシー,偏見のある扱い,不健康な習慣の助長など,個別化に関連するリスクも存在する。学生が直接の指導監督なしにこれらのサービスを提供するツールを使用する前に,学生とその教育者は,以下に概説するツールの限界(以下の*)を理解する必要がある。

同様に,教師はChatGPTを利用して課題の作成を支援したり,学生の作文にコメントを提供したりすることに成功したと報告しているが,それ自体を評価ツールとして信頼すべきではない。むしろ,教師は入力と出力の両方を慎重に確認し,AIシステムを使用したり依存したりした場合は,利用規定に沿って開示する必要がある。

*不正行為と剽窃の検出(略)
*AI倫理とリテラシー(略)
*真実性(略)
*有害なコンテンツ,偏見,ステレオタイプ(略)
*評価(略)
*過度な信頼(略)

*公平性とアクセス

ChatGPTのような技術がますます普及しているため,学生がこれらのツールに等しくアクセスし,効果的に使用する方法を学ぶことが重要である。ChatGPTは,既存の不公平,特にデジタルデバイドに関連する不公平を悪化させる可能性がある一方で,その一部に対処する機会も提供する。例えば,文章を書くのが苦手な学生や英語が第二言語である学生にとって,ChatGPTはスペルミスを減らし,コミュニケーションを向上させるのに役立つ。

しかし,このモデルの性能のばらつきの問題(偏見,他言語での性能,非西洋的視点の取り込みなど)は,学生にとって公平な結果を得る機会にも悪影響を及ぼす可能性があある。さらに,ChatGPTに関連するコストや地理的なアクセス制限は,学生や教育者のアクセスに影響を与える可能性がある。

*雇用機会と展望(略)

*利用の公開

我々は、学生がChatGPTの使用状況をエクスポートし,教育関係者と共有できるような機能を開発中だ。現在,学生はサードパーティのブラウザ拡張機能でこれを行うことができる。
教育者は,学習教材を作成する際にもChatGPTの利用を公開し,課題や活動にChatGPTの利用を取り入れる際には,学生に公開するようお願いする必要がある。
学生はChatGPTを使用したことを以下のようにBibtex形式で引用することができる。

*教育関係者の意見

我々は,教育関係者と協力して,教室で何が起こっているかを知り,ChatGPTの能力と限界について議論している。私たちのアウトリーチでは,まず私たちが本社を置く米国の教育関係者に焦点を当ているが,私たちが学びながらその範囲を広げていく予定だ。

教師,管理者,保護者,学生,教育サービス提供者など,これらの問題に影響を受けている人々が見ているものについて,さらなる視点を歓迎している。この取り組みの一環として,教育関係者の皆様には,フィードバックフォームにご記入の上,開発中のリソースや参考になったリソース(コースガイドライン,オナーコードやポリシーのアップデート,インタラクティブツール,AIリテラシープログラムなど)をご紹介いただけると幸いである。

ChatGPTの月間アクティブユーザー(MAU*)は2022年11月30日の公開開始から2ヶ月の2023年1月には1億人に達した(*Monthly Active User:ある月に1回以上利用したユーザの数)。

※※ChatGPTは,月20ドルの有料版 ChatGPT Plusを米国で提供するとアナウンスした。ピークタイムでもすぐにアクセスできること,高速なレスポンスタイム,新機能や改良の優先的適用等のメリットがある。

[1] OpenAI CEO Sam Altman | AI for the Next EraSam Altman 1985-)

[2]ChatGPT Plus(OpenAI)

2023年1月30日月曜日

京大OCW

高等教育研究センター(2)からの続き

騒動になってから半年たち,京都大学からオープンコースウェアを継続することが発表された。現行OCWコンテンツを維持とし,新しいOCW2.0(仮称)や検索システムKU-Search(仮称)を構築するとのこと。そのために,コンテンツ企画・支援室(仮称)を設けるらしいが,京都大学情報環境機構の情報環境支援センターに位置づけられるのかな。

この機会に他大学のOCWはどうなったかをgoogleにOCW +site:ac.jpを入れて検索した。

  (338通常講義,477公開講義,81最終講義,95国際会議,90その他)
  (5078講義ノート,40動画音声)
  (150学部講義,50大学院講義,170公開講座)
  (48テレビ講義,43ラジオ講義,131テレビC,152ラジオC)
  (269コンテンツ)
  (92学部講義,48大学院講義,264公開講座)
  (136コンテンツ)
  (352授業,251最終講義,)

googleで見つかるのものは,京大,東工大,東大がほとんどを占めていた。阪大と東北大がOCWで引っかからない。なぜなら彼らはMOOCの名前を使って,阪大はedX,東北大はJMOOCにアウトソーシングしているからだった。

それでは,OCWとMOOCの違いはなんなのだろうか。JOCW(日本オープンラーニングコンソーシアム)が解消発展したOEジャパンに定義があった。
OCW(Open Course Ware):大学や大学院などの高等教育機関で正規に提供された教材を,インターネット上に無償で公開する活動

MOOC (Massive Open Online Course):インターネットにアクセスできれば誰でも無償もしくは安価に利用できるオンライン講義

OE(Open Education):世界中のすべての人が質の高い教育経験と資源にアクセスできるようにすることで,人類の発展に貢献しようとする教育ムーブメント


OER(Open Education Resource):教材の作成者が利用者に対し,その教材の修正や改変の許可を与えてる学習資料,クリエイティブ・コモンズ・ライセンスなどにより著作権の一部もしくは全てを放棄することで,他の人々は自由にアクセス・再利用・翻訳・修正できる。
インターネットがブレイクして10年後,今から20年前にOCWは一時流行しかけていたけれど,やがて下火になって現在に至っている。GIGAスクール(一人一端末)の時代に,OERの重要性はますます高まっているはずなのだが・・・


図:MOOCのイメージ(Wikipediaから引用)




2022年12月6日火曜日

ChatGPT(5)

ChatGPT(4)からの続き

この段階のChatGPTにあまりケチをつけても仕方がないのだけれど,記録のために若干の事例を残しておく。それは,教育用対話ツールとしての利用の可能性を探るという観点からだ。小学校の理科と算数で試した記録だ。

Q:小学校5年生の理科の単元で振り子の実験があります。重さがmのおもりに長さLの糸をつけてその一端を固定し,振り子(おもり)を振れ幅θで振らせるのです。その一往復の時間を振り子の周期といいます。振り子の周期は,おもりの重さ,糸の長さ,振り子の振れ幅のどの量によって決まるのか,小学生にわかるような言葉で説明してください。

A:振り子の周期は、おもりの重さ、糸の長さ、おもりが振れる幅によって決まります。重さが大きいほど、振り子が振るのに時間がかかります。また、糸が長いほど、振り子が振るのに時間がかかります。さらに、振り子が大きく振れる幅が広いほど、振り子が振るのに時間がかかります。したがって、振り子の周期は、おもりの重さ、糸の
長さ、振り子が振れる幅の3つの量が全て合わさって決まります。
 
Q:分数の割り算では,割られる分数に,割る分数の逆数をかけた掛け算を計算すればよいのですが,このわけが小学生にでも解るように説明してください。

A:分数の割り算は少し特殊です。通常の整数の割り算とは異なり,分子(割られる数)を分母(割る数)で割ることではなく,分母を分子で割る必要があります。

例えば,分数の2/3を分数の1/4で割りたい場合,通常の整数の割り算のように2を4で割ることはできません。その代わりに,1/4を分数の2/3で割ることができます。このように,分数の割り算では割られる数と割る数を入れ替え,逆数を求める必要があります。

具体的には,2/3を1/4で割る場合,次のように計算します。まず,分数の1/4の逆数は4/1です。つまり,2/3を4/1で割ることになります。通常の整数の割り算と同様に,分子と分母を掛け合わせることで,2/3を4/1で割ることができます。その結果,2/3を1/4で割ることができます。

まとめると,分数の割り算では,割られる分数に,割る分数の逆数をかけた掛け算を計算することで,分数の割り算を行うことができます。
質問部のていねいな導入があだになって,答えがわけのわからないことになっている。このあたりは,ChatGPTの事前学習に使うデータの選択だけでは解決しないのかもしれない。OpenAIではなく,GoogleのPathwaysをベースにしたMinervaだと,小学生レベルの算数問題のデータセットGSM8kの正答率は78.5%,高校と大学レベルの工学,化学,数学,物理学などの問題からなるデータセットMMLU-STEMの正答率は75.0%らしいので,まだ将来は明るいというかなんというか。

2022年12月5日月曜日

ChatGPT(4)

ChatGPT(3)からの続き

ChatGPTは,学習段階では2021年までの様々なテキストを読み込んでいるとして,対話段階で直接ネットの情報を直接参照することがないようだ。そのため,細かな事実関係には嘘がけっこう混入している。ところが口がうまくて極めて巧みにディフェンスする小役人的な答弁をするので,危うく騙されそうになるから本当に困ってしまう。たぶん当該分野の背景知識がなければアウトだ。まあ人間の信頼度の場合と大きく変わらないのかもしれない。

これをベースにして,問題解決システムのミネルバなどと組み合わせれば,もう少しでメタバースという言葉の生みの親であるニール・スティーブンソンダイヤモンド・エイジにでてくる教育用人工知能読本プリマーに手が届く。教育関係者は,プログラミング教育やGIGAスクール構想にうつつを抜かしている場合でなく,こぞって教育用AI対話システムのデザインと応用とさらに派生する問題の洗い出しに注力すべきだろう。

教育用AI対話システムの鍵は,このシステムがStableDiffusionの場合のようにオープンソースで無料開放されるかどうかにかかっているかもしれない。そうでなければ,これまでの多くの教育用ソフトウェア・スイートの二の枚になるだけだ。開放されて誰もが自由に開発や利用ができるとともに,その分散ネットワークをうまく制御しながら構築できた場合,今の教育産業や公教育の在り方がまるっきり違ったものに変質してしまう可能性がある。